連載記事:水の事故から子どもを守る!

もし溺れたら「浮いて待て」。次に親がすることは?【水の事故から子どもを守る! 第3回】


■もしも子どもが溺れたら、親がすべき行動とは

水の事故はなぜ起きる?

© bohbeh - stock.adobe.com


――もし子どもが溺れてしまったら、親はどのような手順で対処すればいいですか。
1.まずは子どもに「浮いて待て」と声を掛ける
2.素早く119番に通報する

子どもがきちんと「浮いて待て」の姿勢を取れて、安定して呼吸を確保できていれば、これだけで十分です。

――浮く物を投げるといいという話も聞きますが…

私は背浮きの姿勢がきちんと取れていれば、何が何でも物を投げる必要はないと考えています。投げた物を取ろうとしたりして、せっかく安定して浮いている子どもがバランスを崩したら却って危険だからです。また、投げた物が当たって衝撃を受けて姿勢を崩してしまう可能性もあります。

しかしその場にランドセルやペットボトルがあれば抱きかかけることで、浮力体として利用でき、より楽に「浮いて待て」が行えます。

もし溺れたら「浮いて待て」。次に親がすることは?【水の事故から子どもを守る! 第3回】

「浮いて待て」講習会(提供:水難学会)


一番重要なのは、子どもに「浮いて待て」と声を掛け続けること。子どもが不安にならないよう、救助が来るまで「がんばれ」などはげましの声を掛け続けてあげましょう。

■大人の方が子どもより生還率が低い!

――子どもが溺れたときに周りの大人が助けに行ってはいけないのですか。

飛び込んで助けに行くことは絶対にしてはいけません。素人には水辺に落ちた人を救うことは非常に難しく、あとから飛び込んだ人が亡くなってしまうこともよくあるのです。

2017年の警察庁のデータでは、水の事故に遭った中学生以下の子どもの生還率は87.3%でした。一方で大人は53.5%で、子どもよりもかなり低い数字なんです。じつを言うと、50%を超えたのは初めてで、これでも徐々に上がってはきています。


私たちは、全国の小学校で「ういてまて教室」を開いていて、服を着たままどのようにすれば水に浮かぶことができるか子どもたちに教えています。こうした教室の効果もあって、溺れたら浮いて待つことの重要性を認識している子どもたちが増えているように感じています。今後は、親子向けの「ういてまて教室」を開催し、大人にも教えていくことが大きな課題ですね。

――子どもが危険なとき、どうしても助けに行きたい場合はどうすればいいですか。

親としては、助けに行きたいと思うのはあたり前ですよね。子どもの近くまで行ったら、そこで親子一緒に浮いていてください。助けようという考えは捨てて、近くで一緒にプロの救助を待つのが賢明です。子どものところに行く前に、119番に電話をするのを忘れないようにしてくださいね。


――子どもを持つパパやママに伝えたいことはありますか。

とにかく、「水辺で親子の時間を楽しんでください」と伝えたいですね。水の事故があるからといって水を避けるのではなく、ぜひ予防策や対処法を頭に入れた上で充実した水遊びの時間を過ごしてほしいと考えています。

人間は呼吸さえ確保できていれば、そうそう亡くなることはありません。「浮いて待て」を知っているということを強みに、みんなで海や川、プールを楽しんでくださいね!
斎藤秀俊さんプロフィール
水難学会会長 斎藤秀俊教授
米国ペンシルベニア州立大学材料研究所博士研究員や茨城大学工学部助手を務めたのち、2003年から長岡技術科学大学教授。2009年から2015年まで同大学の副学長を務め2016年から現職。2011年から同時に水難学会会長として多角的に活動している。
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