わが子の左ききが気になる… 右ききになおすべき?【どうして9割が右ききとなったのか? きき手の不思議 第2回】
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いつの間にか、手先が器用に使えるようになってきたわが子。そんなとき、ふと「きき手」がどちらなのか、気になることはありませんか? 左ききらしいと感じたときには「右きき用のものが多いし、不便じゃないように右ききになおしたほうがいいのかな…」と心配するママやパパもいるようです。
そこで今回は『
左対右きき手大研究』(化学同人)の著書である八田武志先生に「左ききを右ききになおしたほうがいいのかどうか」も含め、きき手にまつわるお話をうかがってきました!
お話をうかがったのは…
関西福祉科学大学学長
八田武志先生
専門分野は、脳と行動とのしくみ解明を目指す神経心理学。特に左ききの脳のしくみ、左右脳の働きの違い、中高年者の加齢による脳の働きの様子を調べ、脳機能低下を予防する研究をおこなっている。
■左ききだと〇〇…「左利きあるある」は本当?
――先生、本日もよろしくお願いいたします。よく「左ききだと〇〇!」みたいなあるあるを耳にすることがあります。例えばスポーツするなら左ききが有利とか…。これって本当なんでしょうか?
八田先生:そうですね…。例えば、テニスを例に出してみましょうか。テニスでサーブを打つとき、右ききのサーブはレシーバー側からすると右に切れていきますよね。
同様に左ききの場合には左に切れていきます。
――はい。
八田先生:右ききの人は、右に切れるサーブには慣れています。なぜなら、世の中は右ききが多数を占めていて、右に切れるサーブを返すことが多いからです。一方、左に切れるサーブには慣れていませんよね。経験不足です。だから自然と失敗する確率も高くなってしまうんですね。
――なるほど。あまり経験したことのないことって成功しにくいですもんね。ということはつまり影響しているのは慣れや経験で、左ききの人が特別に器用だから… ということではない?
八田先生:きき手によって、運動動作パターンが異なります。大勢の右ききの運動動作に慣れている右ききは、不慣れな動きをする左ききへの対応が難しいんです。だから運動能力として左ききが右ききより器用というわけではなくて、右ききが多数を占めるからスポーツでは左ききが有利とされているんでしょうね。
――左ききはスポーツするのに有利…! 覚えておきます!
八田先生:テニス以外にもサッカーやバスケット、ラグビーなどの下肢が重要なスポーツでも、きき足について同じことが指摘できると思いますよ。
■左ききはケガしやすい!?
――左ききって、どうなんだろう… と思っていましたが、スポーツで有利なら子どもが「やってみたい!」といったものはどんどん挑戦させたくなりますね。でも左ききは「ケガしやすい」というのも耳にしたことがあります。これについては何か理由があるんでしょうか?
八田先生:駅の自動改札機のカード入り口、公衆電話の受話器など… この社会は右きき用につくられたものが多いですよね。
――本当にそうですね。
八田先生:左ききはストレスを感じやすいと思います。そういった意味で「ケガをしやすいのでは?」と考えた、あるカナダの研究者は寿命などを含めて「左ききは不利である」と報告し、話題になったことがあります。
――なんでもかんでも右きき用ですもんね。左ききの人のストレスはすさまじいものがありそうです…。
八田先生:一般的に多数派が少数派を思いやる気持ちは希薄なものです。ただカナダの研究者のいう「左利きは不利である」というのは、必ずしも十分でないと私は考えています。私がおこなった看護師を対象とした調査では、ケガやミスはむしろ右ききより少ないという結果が出ました。
――…え!
八田先生:左ききの人は「自分に不都合な環境」ということが分かっているので、高い注意力を持って行動します。だからケガやミスが少ないんです。
――分かっているから、注意している…?
八田先生:そうだと思います。右きき用につくられた日常環境に慣れていくことで、それほど負荷とは感じていない、ということが考えられますね。
――なるほど…。「慣れること」はストレスを溜めないために大切なんですね。