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「赤ちゃんの体重が平均よりも少ない」「なかなか体重が増えてくれない…」
同じ月齢のほかの子と比べて、体が小さかったり痩せていたりすると、ママは心配になってしまいますね。今回は、月齢別の赤ちゃんの体重を知ったうえで、体重が増えない原因を探っていきましょう。
【監修】
赤坂ファミリークリニック院長 伊藤明子 先生
小児科医師、公衆衛生専門医、同時通訳者。東京外国語大学イタリア語学科卒業。帝京大学医学部卒業、東京大学医学部附属病院小児科入局。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。同大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。2017年より赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。
著書・共著に『小児科医がすすめる最高の子育て食』など。テレビ番組「林修の今でしょ!講座」などに出演中。
二児の母。
■赤ちゃんの体重が増えない5つの原因
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▼原因1:母乳・ミルクの量が足りていない
赤ちゃんの体重が増えない場合、原因は複数考えられます。最初に考えられる原因は、母乳やミルクの量が足りていないこと。
例えばミルクで育てているなら、その月齢で必要な量をしっかり計り、現在飲めている量を把握しておくことが大切です。基本となるミルクの量は、母子手帳にも参考として記載があるのでチェックしておきましょう。
母乳中心で育てている場合、計測が難しいと思われがちですが、赤ちゃんの排せつの回数や量をひとつの目安として観察します。赤ちゃんが欲しがるたびに母乳をあげ、1カ月検診までは出産した産院にフォローやアドバイスをもらいながら経過観察をしていきましょう。
さらに参考として、赤ちゃんの栄養状態や体格を数値で確認できる「カウプ指数」というものがあるので、確認してみるのもおすすめです。
▼原因2:赤ちゃんがよく動く
生後5、6カ月で離乳食を始めて摂取する栄養がかわってきたタイミングで、赤ちゃんはズリバイ・ハイハイをするようになります。
そのため、運動量が多くなることで体重の伸びがそれまでより鈍ることはあります。
母子手帳にある成長曲線のチャートに赤ちゃんの身長・体重を照らし合わせながら見守っていきましょう。
▼原因3:環境
生まれたての新生児は、環境によって体重に変化があります。温度や湿度の影響で、ごくまれに体重が増えにくくなるケースがあります。
赤ちゃんが過ごしやすい環境は、室温が24度から28度で、湿度は40%から60%くらいです。夏や冬はエアコンなどを使用して、心地良い温度と湿度を保ってあげましょう。
▼原因4:離乳食の影響
離乳食が始まるころになると、その量などの影響も考えられます。生後5、6カ月ころから離乳食をスタートすることをWHO(世界保健機構)でも推奨していますが、目安の量をうまく食べられないことがあります。それが原因で栄養不足となり、体重が増えていない状況かもしれません。
母乳・ミルクを先にあげてしまうと離乳食の進み具合が鈍ります。まずは離乳食、そして母乳・ミルクの順番であげて、離乳食を進めるようにしましょう。
そのうえで体重の伸びが鈍る場合は、母乳・ミルクを与える間隔は気にせず、離乳食に追加してみます。離乳食が進まないときは神経質にならないで、先輩ママやまわりの人に相談しながら前向きにいろいろ工夫してみましょう。
離乳食をすぐにあきらめないようにするのが、栄養不足を避けるひとつのコツです。
原因5:病気の可能性
もし赤ちゃんが母乳やミルクを存分に飲み、離乳食もしっかり食べているようなら、基本的には問題ありません。それでも体重がなかなか増えないとき、ぐずりがちでいつもと様子が少し違うとき、もしかしたら病気の可能性があります。考えられる病気については後半で紹介していきます。
■赤ちゃんの月齢別平均体重
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ここで赤ちゃんの月齢別平均体重の平均値をみていきましょう。
▼新生児
新生児は男児2.980g、女児2,910gが平均値です。
▼1〜2カ月
生後1〜2カ月は、男児4.780g、女児4.460gです。
▼3〜4カ月
生後3〜4カ月では、男児6.630g、女児6.160gです。
▼5〜6カ月
生後5〜6カ月では、男児7.670g、女児7.170gです。
▼7〜8カ月
生後7〜8カ月では、男児8.300g、女児8.200gです。
▼9〜10カ月
生後9〜10カ月では、男児8.730g、女児8.200gです。
▼11〜12カ月(1歳)
11〜12カ月では、男児9.090g、女児8.540gになります。
参照サイト:厚生労働省「平成22年乳幼児身体発育調査報告書(概要)」
■赤ちゃんの体重が増えない時に考えられる病気
赤ちゃんの体重が増えない病気として、主に次の3つが挙げられます。
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▼肥厚性幽門狭窄症
生後2週間から3カ月ごろの赤ちゃんにみられる病気です。
胃の出口にある幽門筋が大きくなり、胃の出口が狭くなり、おなかの中に入ったミルクや母乳がうまく運ばれなくなります。ミルクが十二指腸まで届かずに、胃の中で停滞してしまうので、口から大量に戻すため体重も減ります。この場合は手術で幽門筋を切開し、出口を大きくすることが一般的です。
▼クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
生まれつき甲状腺の働きが弱いため、甲状腺ホルモンが不足してしまう状態になります。発生頻度は3000人から5000人に1人とされています。この病気は月齢が進むにつれて成長や発達の遅れが顕著に出てきます。
また、赤ちゃんの顔に特徴があり、まぶたが腫れぼったく、鼻が低く、巨舌になります。さらに泣き声が弱々しく、母乳の飲みが悪いなどの症状もあります。
通常は生まれて5日から7日目に行う「新生児マススクリーニング検査」でこの病気を発見します。発見後、治療が1歳以降になってしまうと知的障害を残す可能性が出てくるため、早期治療が重要です。
参照サイト:日本小児内分泌学会「先天性甲状腺機能低下症」
▼ヒルシュスプルング病
先天性の病気で、腸の細胞に異常があり、便秘や腸閉塞症状を引き起こす疾患です。新生児や乳幼児ではおなかの張りが強くなり、嘔吐(おうと)する症状がみられます。幼児以降では頑固な便秘や排便障害が主で、大量の便やガスがたまります。
手術が必要な場合もあり、長期的な経過観察が必要です。
参照サイト:順天堂大学医学部附属順天堂医院 小児外科・小児泌尿生殖器外科「鏡視下手術2(ヒルシュスプルング病と鎖肛手術の実際)」
ただし、これらの病気は新生児期のスクリーニング検査で見つかったり、ほかの症状(はく、便秘など)で先に気づくため、体重が増加しない・体重増加が鈍いといった症状で初めて発覚する病気ではありません。