■ねんトレは心の成長によくない?
©polkadot- stock.adobe.com
ここまでねんトレのステップについてみてきましたが、よくあるねんトレにまつわる不安のひとつに、「ねんトレは
心の成長によくないのではないか」というものがあります。
しかし、じつは、ねんトレは赤ちゃんの
心の成長に悪影響を与えないことは、医学研究によって証明されています
(*3)。
泣いたら何がなんでもすぐに抱っこして泣き止ませなければ、心の成長に悪影響があるというわけではないのです。
ママやパパが赤ちゃんが夜泣きするたびに目をさまし、
睡眠不足になってしまうことの方が大問題。寝不足によってママやパパの元気がなくなってしまい、日中に笑顔で子どもと向き合えなくなってしまうことは、家族にとっても苦しいことに思えます。
© polkadot- stock.adobe.com
▼ねんトレを成功させるには
【ねんトレ成功のカギ】
「不安になってもブレずにトレーニングを続けること」
ねんトレ中に一度不安になると、悪いことばかりを考えてしまって不安がどんどん大きくなり、ねんトレを中断してしまう原因になってしまいます。ねんトレに対する不安は、できる限りトレーニング前に解消しておきましょう。
■「ねんトレが不安…」そんな声に森田先生がアドバイス!
「ねんトレを始めたいけれど、不安で…」というママのために、森田麻里子(もりた・まりこ)先生からアドバイスをいただきました。
――子どものギャン泣きに罪悪感をいだいてしまうママやパパに、「ねんねトレーニング」を行うアドバイスをいただけますか?
医師 森田 麻里子先生
赤ちゃんがギャン泣きしているのはやはり親としてつらいものですが、長期的に
「何が家族全体のためになるのか」、ということを考えていただけたらよいのではと思います。
今までとまったく違う寝かしつけ方法に変えたとしたら、赤ちゃんが泣くのは当然ですよね。これまでずっと続けてきた習慣が、ガラッと変わるわけですから。でも、そうして寝つくための新しい方法を身につけられたら、ママ・パパも赤ちゃんもぐっすり眠れるようになります。
夜中も何度も授乳やミルク、抱っこをして、ママ・パパが日中フラフラになっているのと、夜中の授乳やミルク、抱っこをやめる代わりに日中笑顔で目一杯遊んであげられること。どちらが家族全員にとって良いでしょうか?
――たしかにそうですね。でも、やはりギャン泣きされるとつらいときもあります。
そうですよね、ただ、赤ちゃんを泣き止ませるのはすべて
親の責任というわけではない、と私は思います。
赤ちゃんには個性があって、あまり泣かない子もいれば、すごく泣きやすい子もいます。
もちろん、「おなかが空いた」とか「暑い」「寒い」といったような親が対応してあげられる理由で泣いているとしたなら、対応すべきだと思います。
でも、どうやっても泣き止ませられないこともありますよね。赤ちゃんだって、泣きたいときがあるのではないでしょうか。手を変え品を変え必死にあやし続けて疲れてしまうくらいでしたら、
そっと見守ってあげるだけでも良いと思います。
ついつい、とりあえず
「泣き止ませることだけ」を目標にしてしまいがちですが、本当はどうするのが赤ちゃんやママ・パパにとって一番良いのか、考えてみていただけたらと思います。
――心が折れて、ねんトレの最中に抱っこや添い乳をしてしまったら…。どうすればいいでしょうか?
抱っこや添い乳自体が悪いとはまったく思いません。もしママやパパが困っていないなら、夜中に起きて抱っこや添い寝などで寝かし続けても良いのです。
ただ、睡眠を改善するためには、「寝かしつけを変える必要なケースがある」というのはやはりあります。ご家庭の中で、
ねんトレした方が幸せなのか、しなくてよいのか、ぜひ考えていただければと思います。
赤ちゃんが泣いてしまうというのは、ママやパパにとってやはりつらいものです。でもママやパパが悪いことをして、赤ちゃんが泣いているわけではないですよね。「泣いてしまっているけれど仕方ない」、「この子も上手に眠れるようにがんばっているんだね、がんばれ!」と思えるようになると、ねんトレもうまくいくと思います。
©seraph photog - stock.adobe.com
筆者自身も、子どもたちの夜泣きについて思い返してみると、連日子どもが寝ぐずりをして涙した深夜を思い出し、あの頃の自分にねんトレの存在を教えてあげたかったと思ってしまいます。
子どもの夜泣きや睡眠事情については、子どもによってまったく異なり、解決するための正解はひとつではありません。そこが難しいところで、ついつい孤独をかかえてしまうママやパパも少なくないと思います。
ねんトレを「する」、「しない」の正解はありませんが、ママやパパたちがぐっすり寝て、次の日に笑顔で過ごせることは、きっと子どもたちのためにもなるでしょう。そして、家族が笑顔ですごせることこそが、最高のゴールなのかもしれません。
■医学書や医学論文に基づいた「最高の寝かしつけメソッド」
『家族そろってぐっすり眠れる 医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』
医者である著者が、睡眠時間を延ばすテクニック、月齢別睡眠スケジュール、正しい夜泣き対策など、医学研究にもとづいた快眠メソッド、正しいねんねトレーニングの方法を具体的に掲載。
赤ちゃんの寝つきをよくするための生活習慣や寝室環境を改善する方法、ママやパパが抱えがちなねんトレについての不安にまつわるQ&Aも掲載。
<参考文献>
*1)オーストラリアでの試験(2002)
生後6カ月~1歳の赤ちゃん156人を対象に行われたランダム化比較試験。一方のグループにだけ段階的消去法(ご紹介したような部屋に入るまでの時間をだんだん延ばしていくねんトレ)、または寝かしつけに少しずつ手をかけないようにしていく方法でねんトレを行った。
すると、ねんトレをしたグループでは2カ月後に70%が改善、何もしなかったグループで47%が改善した
(*4)。
*2)Mindell JA, Telofski LS, Wiegand B, Kurtz ES(2009) A nightly bedtime routine:inpact on sleep in young children and maternal mood, Sleep;32(5):599-606.
*3)Price AM, Wake M, Ukoumunne OC, Hiscock H (2012) Five-year follow-up of harms and benefits of behavioral infant sleep intervention: randomized trial. Pediatrics; 130(4):643-51.
*4)Hiscock H, Wake M(2002) Randomized controlled trial of behavioural infant sleep intervention to improve infant sleep and maternal mood,BMJ;324(7345):1062-5.