子育て情報『こどもの皮膚科ドクターが語る シラミの話』

こどもの皮膚科ドクターが語る シラミの話

また、それなりの確率で母親にも感染しますが、父親への感染はほとんどありません。がんばれ、パパさん・・・。

なぜかゆみがでるのか

ではシラミにかかるとなぜ、かゆみが起きるのでしょうか?先ほども述べたようにシラミはヒトの血を吸って生活していきます。そのときに血液がかたまらないように唾液成分を注入して血を吸うのですが、その唾液成分に対するアレルギー反応としてかゆみが出てきます。蚊に刺されるのと同じようなものですね。なお、蚊とは唾液腺の成分が異なりますので、たくさん蚊に刺されたことがあってもシラミに対するアレルギーが早く出現するわけではありませんよ。

このアレルギー反応は、出現するまでに、一般的に数週間かかります。つまり感染して数週間が経過してはじめてシラミに対する症状が出てくるんですね。
この潜伏期間の長さがシラミの感染予防を厄介にしている点であり、だからこそシラミは今まで絶滅せずに生き延びてこられたともいえます。多くのシラミはかゆみが出ないうちにほかのヒトに移ってしまいますから。

このことは、この季節にシラミの患者が多くなる理由でもあります。活発に運動する夏の時期に感染した、あるいは運動会などの秋のイベント時に感染したシラミは、数週間後、ちょうどこの時期にかゆみを発生してヒトに気づかれるというわけです。

人間はシラミに負けている?

最初に写真のお話をしました。今から70年も昔の話です。だったら、今はさらに治療が進化しているかと言われるのですが、実は退化していたりして……。

過去にシラミに対して使用されていた薬剤はDDTと呼ばれていました。
その効果は非常に強く、シラミだけでなくほかの病原微生物に対しても非常に強い効果が見られました。そういえば、プロレス技にも同名のものがありますが、これは“非常に強力な技だから、その殺虫剤にちなんで”命名されたという話もありました。

しかし、時代が過ぎると、DDTの生態系に対する悪影響が問題視されます。結果としてDDTは使用中止となり、現在はその前に使用されていたフェノトリンというピレスロイド系の殺虫剤が頻用されています。

さらに人間にとって、分の悪い話が続いていきます。近年フェノトリンに耐性をもつシラミの増加が見られるようになりました。耐性を持っているシラミが半分弱という国もあるようです。日本でも沖縄に多いとか。
人間、シラミに負けてるじゃんと思っても口にしてはいけませんよ。

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