無関係だと感じたら、好奇心は育たない。「自然体験」「農業体験」は命の仕組みを学ぶチャンス!
次に、種としての命を維持すること、つまり子孫を残すこと。この2つが、生きることの柱になっています。
ちょっと例外はあるかもしれないけれど、あらゆる生きものたちが、この2つのことに取り組んでいるんです。その営みは、非常に多様です。決して、みんなが同じやり方でやっているわけではない。ここがおもしろいですよね。私が自然を見ながら絵本を描いてきたなかで、自然から学んだこととして、それが一番大きいかもしれないですね。
このような基本的な自然の仕組みは、子どもたちも知識としては持っているかもしれません。
でも、教科書で読んだり、インターネットで調べたりして知るだけでは、感覚的に把握することはできないでしょう。そして、命にまつわる基本的なことを実感できていなければ、生きものの世界の不思議に関心が向いていきません。自分とは無関係だと感じてしまったら、好奇心も湧いてこないですよね。
自然の中に自ら足を踏み入れ、いろんな生きものたちに出会うことで、初めて肌感覚で理解できるようになります。豊富な自然体験を通して、自然の仕組みが、すっと体の中に入っていく。これが大事ですね。そしてそれは、生きものの世界へのさらなる興味を喚起することにつながると思います。
農業体験の意義とは
食とつながることはいっぱいあります。
さまざまな生きものたちが日々食べることで、自分の命をつないでいるから、食に関わるいろんなことが生まれてきて、おもしろい世界が生まれるんです。誰がどこで何を食べているかを考えるだけでおもしろいでしょう?
畑で作物を育てると、いろんな生きものたちが寄ってくるんです。例えばトウモロコシを作ると、キツネやハクビシン、イノシシ、カラスなどが来ます。トウモロコシが好きな動物っているわけですよね。動物によって食べ物の好みが違うから、みんながみんな来るわけじゃないんです。食べることは、動物だけでなく、あらゆる生きものたちがやっていることです。植物も養分を吸収して育っていきますよね。魚や昆虫やカエルが生きものだということはよくわかると思いますけれど、野菜や果物も同じように、生命を持ったものです。
種から発芽して、成長して、実らせて……。そういう命の営みの過程で生まれたものを、私たちがいただいているわけなんです。
食べものはもちろん、自然の中からも生まれてきます。縄文人は、自分の暮らしている周りの生きものたちを取ってきて食べていたわけですからね。