すべての子どもたちに音楽を――フランスの “感性を育てる” 音楽教育
2018年時点で、フランス各地の33のグループ(オーケストラ)が活動しているそうです。コンセルヴァトワールに比べると、専門性を高めるというよりは、“音楽に縁がなかった子どもたちに、音楽との接点をもってもらい、成長の糧として音楽と触れ合ってもらう”という目的が強い取り組みのようです。そうは言っても、そこで手ほどきを受けた子どもの約4割がその後コンセルヴァトワールに進み、音楽を続けるというのですから、音楽との出会いとしてすばらしい役割を果たしていますね。
フランスには、このような活動をする団体がほかにもあり、懐の深さは国に限らず、個人レベルまで裾野が広がっています。
フォルマシオン・ミュジカルー音楽を深く体感するための学び
ここまで音楽教育の学びの場を見てきましたが、その教育内容についても少しご紹介したいと思います。フランスの音楽教育では演奏技術指導以外に、「フォルマシオン・ミュジカル」という音楽基礎教育があります。
フォルマシオン・ミュジカル Formation Musicale (音楽の形成)とは、1978年以降フランスのすべての公立音楽学校で第一課程入学の7歳から履修義務とされている、日本のソルフェージュに代わる学科の事。
フォルマシオン・ミュジカルの指導内容を一言で説明するとすれば、「音楽家に必要とされるあらゆる能力の基礎形成を目的とした《総合的音楽基礎教育》」。総合的音楽基礎教育とは、これまでのソルフェージュ能力訓練(リズム読み、音読み、記憶、視唱、聴音、音楽理論)に音楽史、楽曲分析そして音楽創作が加えられたもの。
(引用元:パリからフォルマシオン・ミュジカル便り|『無知な人のためのフォルマシオン・ミュジカル入門』?!)
つまり、演奏技術だけでなく、さまざまな方向からアプローチして総合的に音楽に対する理解を深めるためのとても重要なものなのです。
音楽が育む「非認知能力」
子どもたちが音楽に親しむための豊かな環境が、フランスには整っていることがわかりました。最後に、その音楽教育で育まれる力についてみてみましょう。
意欲:音楽に興味を持ち、学ぼうとする積極性
忍耐力:未知のことを学び続ける我慢強さ
コミュニケーション力:オーケストラというグループの中で他者と音を合わせたり、演奏について意見を交わす中で身に付く社交性と表現力
集中力:練習やコンサート本番に必要とされる集中力
問題解決力:音楽を習得する中での失敗や挫折を乗り越える力
感性・創造力:たくさんの音に触れることで育まれる感受性
達成感:一つの目標(コンサートや試験)