子どもの表現力には限界がある。だからこそ「本物」のアートに触れてほしい
インターネットが普及してメディアもどんどん増加したいまの時代、音楽でもアートでも自宅にいながらにして楽しむことができます。でも、「子どもがなるべく小さいうちから、『本物』に触れさせることを意識してほしい」というのは、子ども向けのアート教室を運営する今泉真樹先生。「本物」に触れることの大切さはどこにあるのでしょうか。
インタビュー写真/石塚雅人
アート活動写真/今泉真樹
子どもの表現力には限界がある
「子どもは想像力が豊かだ」と決めつけている大人がとても多いと感じます。たしかに、「雲の上に乗ってみたい」といった空想をする想像力については豊かだといえるでしょう。でも、見たこともない風景を描くのは難しいですし、それを表現する力にも限界があります。
子どもは大人と比べて圧倒的に経験が少ないですから、世の中のアートにはどんな表現手法があり、その制作のためにどんな道具を使うのかということを知らないのです。
絵を描くにしても、家にある道具や材料しか使うことができません。
そこで、子どもの引き出しを増やしてあげるためにも、やはり「本物」のアートを見せてあげることが大切です。美術館に行けば、いろいろな絵や彫刻などたくさんのアートに触れることができます。そのなかで、子どもそれぞれに気になる作品に出会うでしょう。ゴッホの絵が気に入った子どもがいたとします。その子は、ゴッホの独特のタッチを真似してみたいと思うかもしれません。それなら、ゴッホのタッチを再現できる平筆を買ってあげるとよいでしょう。本物に触れることにより、絵の表現方法がたくさんあることを子どもは理解できるのです。
クレヨンなどの画材を選ぶ際にも、子どもの表現力に限界があることを親が意識しておきましょう。クレヨンを子どもに買い与える場合、多くの人が12色セットくらいのクレヨンを選ぶと思います。クレヨンは色を混ぜることができるとはいえ、12色のクレヨンから子どもの知識や表現力でつくれる色の数はやはり限られています。24〜36色セットなど、最初からたくさんの色数があるクレヨンを選んであげたほうが、子どもの表現の幅を広げることができます。
「本物」が放つエネルギーとオーラ
「百聞は一見にしかず」とむかしからいわれていますが、小さいうちから「本物」にたくさん触れさせてあげることが大切だと考えています。
画集を見るより、美術館という非日常の空間に身を置き、アーティストたちが魂を込めてつくった作品から放たれるオーラを感じるほうが、より深く感覚的に作品をとらえることができます。