在宅医療のイロハ! 混同されがちな「訪問診療」と「往診」の違い
【女性からのご相談】
40代。4か月前から医療療養病床に入院していた80代の母が、来月からようやく在宅に戻れることになりました。
ただ、退院後もいろいろなケアが必要なため、入院中の病院の相談員さんに「自宅に戻ってからも“往診”をしてくださるお医者さんを紹介していただきたいのですが」と申し上げました。
すると、「“訪問診療”のことですね。わかりました。地元の医療機関の中からお母様に最適と思われるところをご紹介いたしましょう」と言われました。
“訪問診療”と“往診”は違うのですか?これまで、全く意識してこなかったのですが、今後は他人事ではなくなるため両者の違いを教えてください。
●A. 医師が診療計画に基づいて定期的に診療するのが“訪問診療”。
患者さんの具合が悪いときにその都度出向く診療が“往診”です。
こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。
“訪問診療”と“往診”は、在宅医療の基本となる車の両輪のような業務です。ただ、今回のご相談にあるように、ときどきこの二つは混同して使われる場合があります。
在宅医療というものを正しく理解していただく上でも今回は両者の違いについてお話ししたいと思います。
●“訪問診療”と“往診”の違い
長期の入院生活を終えた患者さんが自宅でも平穏な療養生活を送ることができるように、あらかじめ立てた診療計画に基づいて定期的に居宅で診療すること を“訪問診療”といいます。
おそらく、ご相談者様が相談員さんに紹介してほしかったのは、この“訪問診療”のことではないでしょうか。
一方、“往診”は患者さんの容態に急な変化があったときなどに医師がその都度出向いて行う在宅医療のこと です。
以下では、東京の多摩地区で在宅医療を行うクリニックを開院されている内科医の先生の説明を参考にしながら、お話しを続けてまいりましょう。
●現代のわが国における在宅医療(訪問診療・往診)の社会的意義
『ここに興味深い統計があるのですが、わが国では1950年代においては国民の約8割が自宅で亡くなっていました。ところが、超高齢化社会の到来と医療技術の進歩・医療機関の整備にともなって2008年の時点では国民の約8割が病院で亡くなるようになったのです。このような傾向を前にして、国としては限りのある税収の多くが社会保障費、とくに急激に伸びつづける高齢者の長期入院の医療費に支出されるのをある程度まで抑制する必要から、在宅医療を推進するようになってきているのです。