キレイごとなの? 「認知症は神様がくれた病気」という説は本当か
そうなるとやがて着替えの仕方もお風呂の使い方も、トイレで用を足す方法もわからなくなりますので、施設に入らない限り介護する家族に平穏な時間はありません。
●家族が「神様がくれた病気」と思えるのは認知症の末期。それも後からのこと……
妄想や徘徊をきたした父を介護する中で、筆者がそれでも「認知症は神様がくれた病気なのかもしれない」と思ったことが一度だけありました。
父がなくなる前々日の夜、すでに食べることもしゃべることも動くこともできなくなっていた父の布団を直してやると、しゃべれないはずの父が振り絞るような声で確かに「ありがとう」と言ったのです。
後から思えばですが、筆者はあのとき神様が乗り移った父がくれた最後の言葉を受け取って、幸せを感じていたと思います。
父がその翌日には意識を完全に失って翌々日の未明には帰らぬ人となったことを思うと、認知症患者さんを介護する家族が「認知症は神様がくれた病気なんだなあ」と素直に感じることができるのは、認知症のほんとうの末期になってから のことであって、それも後からそう思えるのではないか。
今ではそんなふうに振り返れるようになりました。
【参考リンク】
・仁和医院ホームページ(http://www.geocities.jp/niwaiin/T1.htm)
●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)