「環境の不備を言い訳にしたら成功できない」いくつになっても挑戦を続ける元流経柏の本田監督が若い指導者に伝えたいこと
完ぺきにコピーできるようになって初めて応用段階に入れるし、オリジナリティも出せます。『ただの物真似』と言われてもいいですから、人からもっと学んだほうがいいと私は思いますね」
■環境の不備を言い訳にしていたら、いつまでも成功できない
本田先生の教え子である尚志高校(福島県)の仲村浩二監督、昌平高校(埼玉県)の藤島崇之監督も恩師が目指したテクニックと創造性溢れるサッカーをベースにして経験を重ね、自分らしさを模索していきました。そうやって「経験者に学びながら新しいものを追求していくんだ」という意識を持った指導者が優れたコーチになれると本田先生は考えているのです。
「今の時代は情報過多で、いつでもどこでも世界のトップレベルのクラブでやっている練習方法を知ることができます。若い指導者は『盗む前に教えられている状態』と言ってもいいかもしれない。『野鴨も先に餌をやると食べる方法を覚えない』と言いますから、人間も同じかもしれない。飢えている指導者の方が強く求めていくのでしょう。
今の時代、ゼロからチームを作り上げるというのは簡単なことじゃないですし、そういう環境にも巡り合えるとは限りませんけれど、『自分が作り上げるんだ』という強い情熱を持った人間が成功できると私は考えます。
京セラの創業者である稲森和夫さんが『思い邪なし(よこしまなし)』という本を出されていますが、素直な心でひたむきに前進することの大切さは全ての世界で通用するのではないでしょうか」
もちろん全てのサッカークラブの環境が整っているわけはありません。沢山の選手を1人で教えなければいけない指導者もいれば、サッカーコート1面も満足に使えないチームもあるでしょう。そんな環境の不備を言い訳にしていたら、いつまで経っても成功は手にできません。あえて困難に挑んでいくくらいのタフなメンタリティを持ってほしいと本田先生は力強くアドバイスしています。
「『ウチはいい人材が来ないから勝てない』と言っている指導者をよく見ますけど、そのことを嘆いているだけでは進歩はないと思います。私も市原緑の頃は弱小チームでしたし、千葉のトップレベルの中学生を送ってもらえるような状況ではなかった。少しずつグランドを作り、選手集めに回り、宮沢ミッシェル(解説者)や石井正忠(現タイ・サムットプラカーン監督)のような選手が来てくれるようになりました。
習志野の頃も前任者が辞めてから2~3年経っていたので、チームの規律がなくなっていて、立て直すのに苦労しました。