獅子座生まれのあなたへ贈る詩「まなざしの記憶」【文月悠光 12星座の恋愛詩】vol.12
18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
■獅子座生まれのあなたへ
まなざしの記憶
呼び声に振り向くたび、
ひるがえる予感の数々。
手放せない選択肢に、胸は惑いつづける。
あなたはわたしを呼ぶだけでいい。
それがプロローグの合図。
「あなた」と出逢うごとに
わたしは頭の中の筋書きを結び直す。
彼らはわたしの空洞を
何食わぬ顔で通り過ぎていく。
みんなの恋が全部同じならば、
物語はもっと単純に済んだだろう。
今は離れ離れだとしても、
かならずこの地平線上で逢える。
恋は何度でもよみがえる。
それは、いちど地上に落ちた陽が
また輝きながらのぼるのと同じこと。
夜明けの地平線に立てば
光がひとすじ滲みゆく。