人生最後の瞬間、本当に欲しいものは? 「帰るべき場所」と幸福【石井ゆかりの幸福論】
“
シナリオ1:
ジェンという女性がいる。ジェンには子どもがなく、独身で、30歳のある日、自動車事故で少しも苦しまずに即死する。
彼女の人生はとても幸せなもので、仕事や旅行を楽しみ、趣味もあり、友人もたくさんいた。
シナリオ2:
ジェンという女性がいる。ジェンには子どもがなく、独身で、35歳のある日、自動車事故で少しも苦しまずに即死する。
彼女の30歳までの人生はとても幸せなもので、仕事や旅行を楽しみ、趣味もあり、友人もたくさんいた。が、30歳から35歳までの最後の5年間は、そこそこ楽しいが、30歳までほどではなかった。
”
さて、どちらが「より幸せな人生」でしょうか。
この2つのシナリオは、心理学者エド・ディーナーによる実験の素材です。
実験の被験者は、上の2つのシナリオを読み、以下の質問に答えました。“
「ジェンの人生を全体として見たとき、どのくらい好ましく感じますか?」
「ジェンが人生で経験した幸せまたは不幸せの総量はどの程度だと思いますか?」
”
シナリオ2は、シナリオ1に、「そこそこ楽しい5年間」を足しただけのものです。ゆえに、幸せの「総量」は、2つのシナリオで一致するはずです。