恋愛情報『人生最後の瞬間、本当に欲しいものは? 「帰るべき場所」と幸福【石井ゆかりの幸福論】』

人生最後の瞬間、本当に欲しいものは? 「帰るべき場所」と幸福【石井ゆかりの幸福論】

この物語は「ハッピーエンド」であり、最後に恋人の腕の中で死んでいけたヴィオレッタの生涯は「幸福だった」と感じる人が多いのだと言います。
ヴィオレッタの人生を冷静に客観的に考えると、全体としてはかなり辛いものだったろうと思われるのです。娼婦として不名誉を背負って生きざるを得ない苦労、最愛の人と引き裂かれる苦悩、若くして病に倒れた苦しみなど、あまりいいところがありません。ですが、この物語に触れた人の多くが、最後のただ一瞬の逢瀬によって、彼女の人生の全体が光に照らされ、「彼女は幸福だった」と感じるのです。

このオペラの原作小説、小デュマの『椿姫』では、エンディングが大きく異なります。ヒロインの高級娼婦マルグリットと青年貴族アルマンがその仲を引き裂かれるまでは同じですが、アルマンはマルグリットの死に際に間に合わないのです。マルグリットの生きている間には誤解の解けぬまま、二人は死に別れてしまうのです。こちらはまったくの「バッド・エンド」です。
死に際の一時間が幸福だったかどうか、それだけで物語全体の印象が大きく変わってしまうのです。

これは「物語の印象」だけの問題ではないのかもしれません。私たちの多くが抱く「人生観」

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