「素直に生きたいのに偽善者としてしか生きられない」雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第32回
そう思うようになるまでは、焦がれるような気持ちで、本物の振り切っている人をまばゆく見つめていたり、自分を責めたり、自分を嫌ったり、変えようとしたり、いろんなことがありましたが、こうして自分と同じ偽善者の方の愚痴を聞く機会をいただいて、ああ、偽善者として生きてきてよかったなぁ、と心から思えた次第です。
偽善者の先輩として少し言わせていただくと、偽善者として生きるのは中途半端でややこしいことですが、自分はただ義理で仕方なくしたことが思いがけず喜ばれたり、切り捨てたつもりのことが長く心の中に残っていたり、中途半端な自分の中から、本物なのか偽物なのか、どちらともつかない部分が出てくるのが面白いところです。人の心って、自分のものでさえ予想を超えた動きをしたり、こうだと思っていたはずが違っていたりします。
自分の本当の気持ちはなんなのか、本当の自分とはなんなのか、それは何度自分に問うてもなかなか答えが出ないことですが、答えが出ない問いであっても、それを問い続けることは、あさかさんの心を豊かにしていると私は思います。人間関係や自分自身に疲れながらも、考え続けることだけが、人の心を豊かにします。