■「パパ、ダメね~」子どもを味方に断捨離を強要する妻
そのうち友梨佳は
ベッドまで断捨離したいと言い出した。さらには、裕貴の個人的な持ち物にまで、連日うるさく口出しするようになる。
「ねえ、このカタログ捨てていいでしょ」
「この漫画本、全然読んでないじゃない。売りましょう」
「あなたのクローゼットで、こんなシャツ見つけたんだけど。悪趣味よ。全然あなたに似合わない。捨てちゃっていいわよね」
自分の持ち物にまで、断捨離に狂った妻の魔の手が伸びてきそうになり、裕貴も自分の身を守るために徐々に攻撃的になっていく。
もはや断捨離をめぐる衝突は、日常の一部と化していた。
ひたすら断捨離の素晴らしさを説き、それを
夫にも押しつけようとする友梨佳。そんな妻を異常だと感じ、抵抗する裕貴。
自分が理想とするライフスタイルを認められず、じれにじれた友梨佳は、とうとうこの問題に子どもたちまで巻き込み始めた。裕貴と口論になると、これ見よがしに子どもたちに向かって大声で言うのだ。
「パパったら、いらないものをいつまでもためこんでダメねぇ。整理整頓ができなきゃダメって、幼稚園でも習うわよねぇ」
「あーあ。パパはまだ、使わないものを捨てられずにいる。芽衣ちゃんと海斗くんは、パパみたいな大人になっちゃダメだぞー」
子どもたちの前で
「ダメな大人の見本」扱いされるにいたって、裕貴の妻を見る目も完全に変わってしまった。
以前はズボラでミーハーで、とても「できた奥さん」とは言えなくても、それなりにかわいいところもあって、一緒にいて楽しいこともあった。
けれども、今の友梨佳は
独裁者だ。家庭内で自分の設定したルールが通らなければ即、激怒。自分のやり方こそ正しく、これを認められないのはお前がダメだからだという態度。そのうえ、子どもたちの前で、
「パパはダメ人間」と毎日のように繰り返す。
一体なぜこんな妻と一緒にいるのか。裕貴はいよいよ分からなくなってきた。
■ついに夫のコレクションまで断捨離、その結果…
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そんなある日、決定的な出来事が起きた。
大けんかの翌日、仕事から帰った裕貴がパソコン部屋に入ると、
コレクションしていた映画のキャラクターのフィギュアが消えていた。
何が起きたか、疑問に思うまでもなく一瞬で分かった。友梨佳が捨ててしまったのだ。持ち主である裕貴に何の相談もなく、何の許可も得ずに。
裕貴専用のパソコンの横の、小さな箱に収められた、本当にささやかなコレクションだった。そんな小さな空間であっても、友梨佳は自分にとって「ムダなもの」にスペースを取られるのが、どうにも我慢ならなかったらしい。
裕貴はリビングで、ミニマリストのブログに夢中になっている友梨佳に話しかけた。
「お前の言う通り、健全な人生のためには、思いきっていらないものを捨てる覚悟も必要かもな」
友梨佳はびっくりした顔でスマホから顔を上げたが、その顔はすぐに輝くばかりの笑顔に変わった。
「もう! やっと分かってくれたのね! そうよ。ムダを排除して、本当に必要なものだけを持つことが一番大事なの。そういう生き方を、子どもたちにも早い段階から見せてあげることが…」
友梨佳の弾んだ声を、裕貴がキッパリとした口調でさえぎった。
「それなら俺が真っ先に断舎離すべきは、友梨佳、お前だよ」
今ではガランとしたリビングで、友梨佳はポカンと口を開けたまま裕貴を見上げていた。
「私が進む道こそが、我が家が進むべき道」と断捨離に没頭した友梨佳さん。夫の意見も持ち物も勝手に断捨離した結果、
自分自身が夫の断捨離対象になってしまいました。
果たしてこの夫婦の行く末は? 次回は、モラハラ系モンスターの診断チェックテスト、そして友梨佳さん、裕貴さん夫婦の結末をご紹介しましょう。
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