連載記事:リアル・モンスターワイフ、再び

他人の幸せアピールにイライラ…SNSに踊らされる“幸せなふり”度チェック【リアル・モンスターワイフ、再び 第40回】



■意外過ぎる本音「自分が本当にほしいものは何?」

前回登場した笑美さんも、そんな自問自答を繰り返しました。そうして見えてきたのは「意外過ぎる本音」だったそうです。

「私は昔からいわゆる努力家でした。向上心も旺盛なほうだと思ってきました。でも、世間体とか、まわりにどう思われるかとか、そういうことを一度全部脇に置いて、今の自分が本当に求めていることを考えてみたら…それは、『どうしてもやらなきゃいけないことだけこなしたら、あとは極力何もせずゆったり過ごす』ことだったんです」
他人の幸せアピールにイライラ…SNSに踊らされる“幸せなふり”度チェック【リアル・モンスターワイフ、再び 第40回】

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それではなぜ、タイムマネジメントまで学んで「少しでも多くのことをこなす」生活を長年続けてきたのでしょう?

「私の実家はごくごく普通の、決して裕福とは言えない家庭でした。それでも両親は私のために高い学習塾の授業料を払ってくれて、おかげで私は地元でトップクラスの高校に進学することができた。だから高校時代は、勉強一筋でした。

結果、いわゆる一流大学に合格できたわけですが、今度は都内での一人暮らしのために、親から仕送りを受けることになって。
ずっと『親に申し訳ない』っていう気持ちが大きかったんですよね。

大学で全身おしゃれに決めた同級生を見てうらやましいと思っても、いつも同じ大型衣料品店の似たような服を着ていた母の姿を思い出すと、私だけファッションなんかにうつつを抜かしていたらいけない気がして…。

勉強も就活も頑張って、いい企業に就職できて。自分の面倒を自分で見られるようになって、初めてファッションやインテリアにお金をかけられるようになった時はすごくうれしかったです。

自分がどんどん洗練されていくような、人生がどんどんアップグレードされていくような気がして。一度そうなったら、『もう昔みたいな、さえない自分には絶対に戻りたくない』と強く思うようになりました」

そうして変身した笑美さんは文哉さんと再会を果たし、結婚・出産。

娘さんが生まれて、「子どもが幼稚園に通い始めるまでは、仕事をセーブしようか」といったことも考えたといいます。それでは一体何が、笑美さんをフルタイムでの仕事復帰へと駆り立てたのでしょう。


「やっぱり『まわりがみんなそうしていたから』というのが大きいですね。大学時代の友人たちにしても、職場の同期や先輩にしても。だから子どもが生まれたから仕事をセーブするなんていうのは、私の甘えや能力の低さの表れのような気がしたんです。

それに、おしゃれな暮らしを維持したければ、お金もかかりますし…。あとはやっぱり、両親への申し訳なさというか。教育を受けさせた娘が、出産を機にあっさり第一線を退いたりしたら、両親は失望するんじゃないかって」

子どもの幼稚園入学までは、のんびり子育てがしたい。笑美さんはそんな自分の本音にフタをして、バリキャリママの道をひた走り始めます。

自分の本音に逆らった生き方はつらいもの。
そんなつらさを紛らわせて走り続けるためには、ごほうびが必要です。
笑美さんにとってそのごほうびは、「ステキな暮らし」でした。

「これだけ頑張ってクタクタになるまで働いてるんだから。自分を癒すためにも、もっとステキな暮らしをしなくちゃって」

ところが「ステキな暮らし」の参考にとチェックし始めたSNSやママ友との交流は、笑美さんをさらに追い詰めていきます。

「世のワーママたちは家庭と仕事を両立しながら、ここまで充実して洗練された暮らしをしているのかと衝撃を受けて…それができない自分はダメなんだ。能力や効率が低いんだって落ち込みました」

家庭+仕事だけでクタクタだった笑美さんに、「ステキな暮らし、ステキな自分」という目標が新たな「To Do」としてのしかかります。それは笑美さんにとってもはやごほうびではなくなり、遂行すべきタスクに変わりました。

けれども体調不良により、笑美さんにはイヤでも自分の生き方を見直さざるを得ない転機が訪れます。
そして時を同じくして、「理想のワーママ」の舞台裏を図らずも知ることに。

「そこからは少しずつ、目が覚め始めました。今後の働き方について、夫とも話し合いました。夫婦でバリバリ働かなくちゃまともな暮らしができないってずっと思ってたんですけど、それは今の街に住み続けて、今のペースで自分や子どもの習い事にお金をかけ続けたらの話。

夫が前々から希望していた通り、私たちの地元へ引っ越せば家賃はグッと安くります。娘にも、習い事やレジャーで本当に好きなものとそうでないものについて、初めてまともに本人に聞きました。

そうしたら、娘自身は興味を持っていないのに、私が勝手に押し付けていたことがたくさんあって…。私はお金だけでなく、娘の時間や気持ちまで犠牲にしていたんだって猛反省しました」

娘さんが本当に求めていたのは、ママが普通に家にいて、いつ話しかけても怒られない暮らし。
訳も分からずあちこち連れ回されるのではなく、家でママと一緒に塗り絵をしたり、本を読んでもらったりする休日でした。

「それを聞いて、いろいろ考えさせられて。私が望んでいるのも、『最低限やるべきことだけやったら、あとはあれこれ詰め込まず、余裕を持って家族と過ごせる生活』だと気づいたんです」

今は娘さんの小学校入学前に、地元に戻ることも視野に入れ始めたという笑美さんと文哉さん。

「仕事を辞める。地元に戻る。習い事や資格取得をやめる…。これまで追い求めてきた『キラキラした今風の幸せ』とは真逆を行く生き方です。でも、私が本当に幸せになるための道はこっちなんだと、時間はかかりましたがようやく気づくことができました」

そう言って微笑む笑美さんからは、偽りのない余裕が感じられます。
家でもカリカリした怖い顔でいることがなくなって、家庭の雰囲気も良くなったそうです。

幸せの形は、人それぞれ。自分にとって何が本当の幸せか、ハッキリと見極めるのは容易ではないこともあります。
ましてネット時代、他人のライフスタイルが輝いて見えて、うらやんだりねたんだり、まねをしたくなることもあるでしょう。

自分の暮らしぶりを発信する機会を得た分、「幸せなふり」をしたくなってしまう場面も急増。「幸せなふり」をするのに忙しく、自分の本当の幸せについて考える余裕がなくなるという不健全な状況に陥る妻たちも急増中です。

幸せのカギは、あなたの中にあります。キラキラした投稿の中にではありません。
世間体、虚栄心などに邪魔されて、自ら幸せに背を向けて走り続けては疲弊します。

あなた自身の声と、あなたの家族の声に耳を澄ませてみてください。外野からの雑音や「幸せなふり」モンスターに、心を乗っ取られないように。


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