時としてゲスなオトコは魅力的だ。みんなに優しいオトコが優しくしてくれても「あの人優しいよね」で終わるのに、みんなに評判の悪いオトコが優しくしてくれると「なんでワタシにだけ?」なんて思ったりする。昔読んだ少女マンガの世界のように、暴力的なクラスの不良が、自分だけにときおり垣間見せる優しさにキュンキュンするシーンと重ね合わせたりする。
「私だけに」優しい。「私だけに」素直。「私だけに」見せる顔がある。「私だけ」特別な響きに眩暈がすると同時に酔い始める。「みんなには見せないけど、優しい所があるんだよ」ワタシにはわかる。
ワタシだけは知っている。
恋愛においてのその特別感たるや、誰もは入れないVIPルームに入れるようになったような優越感とちょっと似ている。ゲスなオトコほど「特別」が上手だ。「私を選ぶ為に」こんなことをしてくれた。「私を選ぶ為に」こんなことを言ってくれた。「私を選ぶ為に」アレもソレも捨ててくれた。
普通のオトコは想像つくような普通のことしかしないけれど、ゲスだからこそ、びっくりするようなことをしてくれたりする。他人ごとなら「ひどい」とか「幼い」なんて感じる出来事でさえも、自分の為だけにやってくれたと思った瞬間、「酷いけどそれだけ愛が深いから」