LITALICO発達ナビがお届けする新着記事一覧 (124/132)
感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?出典 : 「感覚過敏(過剰反応性)」とは、光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「感覚の鈍感さ(鈍麻・低反応性)」といいます。どちらも感覚のはたらきに偏りがあることが原因です。感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がることがあります。また、感覚の鈍感さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがあります。身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともあります。このように感覚の感じ方に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合があります。感覚プロファイル,日本文化科学社感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれです。そのために、感覚の偏りがある人の困難さは、他の人からは理解されにくいものです。以下に、感覚の偏りのある子どもの情報のとらえ方を表した映像があります。ご覧ください。映像では、子どもが、環境の中にあふれる情報や刺激を細かく大量に拾ってしまう様子が表現されています。多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがあるのです。感覚の偏りは4つのパターンに分けられる出典 : 感覚の偏りに関する問題は、その傾向によってパターンに分けて整理することができます。以下に感覚刺激への反応傾向のプロファイリングで使用される4つの分類をご紹介します。なかなか理解のされにくい感覚の偏りについて、客観的な把握をすることで役立てることができるでしょう。■感覚過敏刺激に対して過剰に反応することで、環境の変化やちょっとした刺激も極度に気になるという状態を指します。■感覚回避刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることです。■低登録刺激に対する反応が弱く、感覚が鈍い傾向があるとされます。低反応・感覚鈍麻(どんま)のことです。■感覚探求刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることです。青年・成人感覚プロファイル|日本文化科学社それぞれの感覚ごとの症状刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。出典 : ■情報の刺激がいっぺんに目に飛び込んできてしまう人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのもののある場所は苦手です。■白いものや光をまぶしく感じる視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙を苦手とします。授業中に席を離れてしまうといった問題とされる子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。出典 : ■音がやけに大きく聞こえる、響く賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。■周囲の全ての音が等しく同じように聞こえてくる選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまいます。音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。■音が聞き取りにくい逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に、授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。埼玉県立総合教育センター特別支援教育担当 『自閉症の特性と支援 Q&A集』p6出典 : ■においに過剰に反応する少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。■においがわからない逆に、嗅覚の鈍感さがみられる場合には、適切ににおいを感じることができません。においがわからないと、同時に味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。出典 : ■偏食がはげしい味覚に感覚の偏りがみられる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことがみられることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感を感じたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。出典 : ■触るのを嫌がる触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。・他人から離れて座る、近づこうとする人を押しのける・特定の服ばかり着たがる・爪切り、耳かきを嫌がる・自分からは人懐っこいかかわりをするのに、触れられることを嫌がる・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)■痛みや熱さに気づきにくい触覚の鈍さがみられる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。■刺激を求めて自傷行為をしてしまう自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたり噛んだり、頭をぶつけるなどの自傷行為を行うことがあるので注意が必要です。■筋肉に対する刺激を過剰に求める固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまづきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じます。その結果として、見られる子どもの行動特性には以下のようなものがあります。・強く足踏みをする・体の一部を動かし続ける(常同行動)・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる■動きの刺激を過剰に好んだり、過剰に怖がったりする平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。平衡感覚に偏りがある場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、その結果、刺激を求める探求行動があります。例えば、刺激を求めて頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、席を立ったりすることや、まわる遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりします。逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ちます。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。ります。感覚の偏りの原因は? 発達障害と関係があるの?出典 : 感覚に偏りがみられる原因はあいまいではっきりとはわかっていませんが、中枢神経系(辺縁系や視床下部など)における感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。感覚の過度な偏りと発達障害には密接な関係があります。その中でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)では、幼いころから感覚の偏りが見られることが多いといわれています。発達障害のある子どもは、刺激に対して適切な感情を生じさせる機能に特性があると考えられています。そのため本来は有害でない刺激に対して過度な恐怖、不安の感情をもつことがあります。また、適切に外部の刺激を取捨選択し、注意を向けたり調整することが難しいために、発達障害のない子どもに比べて、過剰に反応をしてしまうのです。その結果、新しい活動を避けるようになってしまったり、多動傾向になったり、パニックになったり、周囲に対する不安感が強くなったりします。そして、子どもの場合には、そのような不安を適切な方法で表現できないために、癇癪(かんしゃく)や自傷行為などの問題行動につながりやすい傾向にあります。また、逆に感覚の鈍感さがあるときの行動の一つとして見られるのが、手をふらふらする、首をふるなど、「常同行動(自己刺激行動)」と呼ばれる行為です。これは、感覚刺激を求めたり、不安を紛らわせたりするための、自己調整の行動ではないかと考えられています。常同行動だけを見てしまうと、その行動は不思議に見えてしまいますが、その理由には感覚の偏りがあるといわれています。このような刺激に対して、適切にコントロールすることができれば、本人の不安やストレスは軽減され、そのような行動が減るようになります。子どもの行動が気になるときには?出典 : 子どもの行動が気になったときには、まず子どもの行動をよく観察してみましょう。観察するときは、特定の気になる行動が起こったときに、「どのような状況だったのか(時間、場所、その場にいた人、出来事)」と、「その行動に対してどうしたのか、その結果どうなったのか」という前後の状況を記入しておきます。そうすることで子どもの困りごとやその行動がどこからきているのか把握するための手立てとなります。また、行動をするときにはその背後に何らかの理由があります。子どもが気になる行動をとったときには、その行動がどのような刺激や、どのような理由によって引き起こされているのかを知ることが必要です。つまり、子どもがどのような種類、強さの刺激に対して過敏なのか、嫌悪感を感じているのか、受け取りにくいのかを周囲の大人が知っておくことが大事です。子どもの感覚の偏りを知ることによって、日々の子育てに役立てることができたり、幼稚園や保育園、学校の先生に具体的なサポートをお願いすることができます。また、子どもの感覚の特性を把握するために、保護者が簡単に利用できる感覚のチェックリストもあります。このようなチェックリストを参照することで、気を付けておくべき子どもの行動特徴を知ることができます。判断がつかず心配な場合には、病院の小児科や、地域の子育て支援センターを訪れ、専門家に相談してみましょう。日本版感覚インベントリー改訂版(JSI-R)感覚過敏、感覚鈍麻のある子どもへの4つの対応方法出典 : 上で述べたように、お子さんの様子を注意深く見て、困りごとを発見することで、子どもの困りごとに対する適切な対処方法を考えることができます。感覚に過剰な偏りのある子どもの困りごとを軽減させるためには環境を整える方法と、個人にアプローチする方法があります。感覚の偏りは、刺激に対して過剰に反応する、または感覚に対する反応が鈍いというあくまで「状態」であり、病気とは異なります。医師の間でもその定義はあいまいで、処方箋や治療方法は確立されていないのが現状です。ここでは、感覚に偏りのある子どもの苦痛や困りごとを軽減するための方法についてお伝えします。■感覚に過敏である場合子どもの感覚過敏を理解する上で重要なことは、「無理に刺激に慣れさせることは逆効果である」ということです。感覚過敏自体は、訓練や練習で急激に改善することは難しい場合もありますが、時間の経過や子どもの発達とともにある程度緩和されていくことがあります。刺激に嫌な経験が結びつくと、さらに刺激に対して嫌悪感を強めるようになります。無理に刺激を受けることを強要せず、軽減する方法を考えます。運動会やお祭りといった行事など、いつもと異なる環境で強い刺激が想定される場合・一部のみの参加にする・ピストルの音を子どもが受け入れることができる音(ホイッスルなど)にしてもらうなど刺激を軽減してもらうことも検討します。■感覚が鈍い(低反応である)場合触覚が鈍い子どもは、自分の感じることのできる刺激を過剰に求める「感覚探求」と呼ばれる行動をとる場合があります。例えば、なんでも触って回る、絶えず洋服を触っている、など落ち着きがなかったり、周りの人にべたべたして距離が近いなどの行動が例として挙げられます。このような落ち着きのない行動がみられる背後には、本人の脳に必要な感覚が十分満たされていないことがあるのではないかと考えられています。本人の感覚への欲求を満たせるような遊びや課題を提供してあげるのがよいでしょう。例えば、タオルや人形など、別の触っても構わないものを渡すことで、それらの感覚要求はは満たされることもあります。その結果、子どもは落ち着きのない行動をとる必要がなくなり、安心してじっとしていることが可能となります。自分で刺激を回避する方法を学ぶことも、感覚過敏による苦しみを軽減するひとつの手段です。子どもと大人の間で、このような出来事が起こったときにはこうする、というルールを決めておくとよいでしょう。感覚が過敏である場合について考えます。例えば、教室が賑やか過ぎて落ち着かないときに、黙って教室を飛び出るのではなく、イヤーマフを自分でしたりして、適切な対処方法をとることができます。また、視覚が過敏な場合には、サングラスをかけたりすることにより回避することができます。「音がうるさいときには、イヤーマフをする」「外に行くときにはサングラスをする」というように子どもに決まりごととして認知することにより、自ら刺激を回避できるようにします。感覚過敏のある子どもは、思ってもみなかったタイミングで音や光が突然に入ってくる場合に、不安やパニックなどの不快な情動が特に起こります。ゆえに、子どもを不安にさせないためにはこれから入ってくる刺激に対して、その量や質、そのタイミングを予測できるようにすることが大切です。また、なぜその刺激が生じるのか、刺激に直面した場合、どのように対応したらいいのかを理解することで、刺激に対する不安を軽減することができます。例えば触覚に偏りがある子どもの場合だと、突然に体に触れられると、驚いてパニックになってしまうことがあります。子どもの体に触れたり、水をかけたりする前に、あらかじめ声をかけてあげるようにしましょう。特に「触覚」「平衡感覚」「固有感覚」の発達については、運動や遊びによって日常生活に必要な感覚を整えることができます。これは、「感覚統合療法」と呼ばれ、療育の場面で使われています。感覚統合とは、人の持つ複数の感覚を組み合わせて、整理したりまとめることです。人は、環境からの刺激を受けると、無意識のうちに複数の感覚を連携させながら、反応を起こします。例えば、床に置いてある水の入ったバケツに足をぶつけてしまったときの例を考えてみましょう。バケツに足をぶつけた瞬間、①足にぶつかった感覚を「触覚」で確認し、②身体の現在位置を「固有感覚」で把握し身体に力を入れます。③その情報を受けた「平衡感覚(前庭感覚)」が、こけないように姿勢を保ちます。④ぶつけた音を「聴覚」で聞き、⑤足元にあるバケツを「視覚」で見て、このように、人は複数の感覚を「統合」し、日常生活を送っています。この感覚の統合がうまくいかないと環境から感じた刺激に対して体がうまく反応できません。この感覚統合のプロセスが適切に生じるように促していくくのが「感覚統合療法」です。感覚統合療法を受けるには、自治体の療育センターや、リハビリ、小児の医療機関を訪れ、感覚統合療法に専門性のある作業療法士(OT)に治療を行ってもらうことができます。また、専門のスタッフに治療を行ってもらうほかには、家庭や学校で遊びを通して感覚統合を行うこともできます。家でできる感覚統合の遊びが以下の書籍で紹介されていますので、参考にしてみるとよいでしょう。太田篤志/著『イラスト版発達障害児の楽しくできる感覚統合―感覚とからだの発達をうながす生活の工夫とあそび』2012年/合同出版/刊太田篤志/著『「発達障がい」が気になる子がよろこぶ!楽しい遊び』2016年/PHP研究所/刊森嶋勉・太田篤志/著・監修『ちょっとしたスペースで発達障がい児の脳と感覚を育てる かんたん運動』2011年/合同出版/刊川上康則/著『発達の気になる子の学校・家庭で楽しくできる感覚統合あそび』2015年/ナツメ社/刊おわりに出典 : 感覚に偏りがある場合には、子どもの生活空間に存在する不快な刺激をコントロールする同時に、感覚の偏りによる困難さを理解し、子どもが生きやすい環境をつくることが大切です。子どもが安心して過ごすことのできるように、周囲の大人が子どものことをよく見て、感覚の偏りがあることを本人が知ることで、適切に対処できるようになるといいですね。
2016年10月06日栗原類さん、自身の発達障害について語る初の自叙伝発売!モデル・俳優として、テレビや舞台、ファッションショーなど様々な分野で活躍する栗原類さんが、10月6日に自身の生い立ちから現在までを綴った著書『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を発売されました。LITALICO発達ナビでは、書籍の出版を記念して栗原類さんに単独インタビューを実施。ご自身の発達障害(ADD: 注意欠陥障害)を公表し、書籍を出版するに至った背景、自身の特性を理解し俳優として「輝ける場所」をみつけられるまでの日々、お母様である泉さんと歩んできた21年間の日々について、たっぷりと語っていただきました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)栗原 類さん: 1994年生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。8歳のときNYで発達障害と診断される。中学時代にメンズノンノなどのファッション誌でモデルデビュー。17歳の時バラエティ番組で「ネガティブタレント」としてブレイク。19歳でパリコレのモデルデビュー。21歳の現在は、モデル・タレント・役者としてテレビ・ラジオ・舞台・映画などで活躍中。2015年に情報番組でADDと告白し話題となる。実は「カミングアウト」したつもりなんてなかった!?―出版おめでとうございます。出来上がった本を今日手にとってみて、ご感想はいかがですか。栗原類さん(以下、類さん): いやー、本当に思った以上に時間がかかってしまって、担当の方には、正直ご迷惑をかけっぱなしだったと思います…Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―初の長編エッセイですもんね。やはり大変でしたか。類さん: これまでも雑誌の連載などで文章を書いたことはあったのですが、今回のように自分の過去を深く掘り下げて書く本は初めてで。僕はあまり記憶力が良くないので、昔のことはほとんど覚えていなかったんですよ。母親や友人、主治医の高橋猛先生などに自分の過去を聞いて回って、そこから思い出して書くまでにものすごく時間がかかりました。それに、これまでのファッションやアートの分野での執筆ではなくて、発達障害をテーマにしたエッセイですから、どうやって興味を持って読んでもらえるかはかなり悩みました。担当編集の方に、全然進んでいない原稿を見せては、「この状態では出版も出来なくなりますよ」などと言われる始末で…。長い間辛抱強く待ってくださって、本当に感謝しています。―それはそれは…本当にお疲れ様でした。今回の出版は、類さんにとっても新しい挑戦だったと思うのですが、なぜ、ご自身がADD(注意欠陥障害)であることを公表し、書籍まで出版されようと思われたんでしょうか?類さん: そもそも僕は、自分がADDであることを隠していたことはないんですよ。―え、そうだったんですか。類さん: 最近まで、他人から「発達障害なんですか?」なんて聞かれたこともなかったし、聞かれていないなら答える必要もないかと思っていただけで、この仕事をする前から、ブログやツイッターでは自分の発達障害について書いていました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―へえぇ、知らなかった…類さん: だから僕としては、「書いているんだから、みんなもう知っているだろう」ぐらいに思っていたし、テレビ番組で話した時も、「カミングアウトする」というような気持ちでは全くなかったんです。それが、いざテレビに流れるとすごい反響で…―昨年5月、NHKの「あさイチ」ですね。放送後、ネットで話題になっていたのをよく覚えています。類さん: 僕も放送直後に自分の名前でツイッター検索をかけたら、本当にたくさんの方がコメントされていて。自分で言うのもおこがましいんですけど、賞賛のコメントも多く、「公表するのは勇気があることだ」とか「私も勇気をもらった」とか…色んな声をいただけてすごくありがたかったです。―ポジティブな反応も多かったですよね。類さん: KADOKAWAさんから出版のお声がけをいただいたのは、それからしばらく経ってからのことでした。自分と母がこれまでやってきたことや、生まれ育ったアメリカの教育制度など、僕の人生を紐解くことで、もっと多くの人が発達障害に興味を持ってくれるかもしれない。いま発達障害に悩んでいる人たちにとっても何か励みやヒントになるものを提供できるかもしれない。そんな思いで、今回のお話をお受けしました。他人の気持ちが分からなかった少年が、「演じる」楽しさに目覚めるまでUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―ここからは本を拝見していくつか印象に残ったところを中心に、お話をお聞きできればと思います。ご自身の特性として、感情表現や人の気持ちを読むことが苦手だと書かれていましたが、俳優やモデルといった、むしろ、感情理解や表現をかなり求められる世界に飛び込んだというのが印象的でした。類さん: やっぱり傾向としては、発達障害のある人って、他人の気持ちを読み解くのが苦手な人が多いようで、僕もそのタイプでした。原因としては色々あると思うんですけど、僕の場合は、そもそも自分自身の内面にも興味がなかったというのが大きかったです。自分に興味がないから、他人にもそこまで興味を持てなかった。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―もともと自分にも他人にもあまり興味がなかった。そこからどうしてお芝居の世界に?類さん: ニューヨークにいた頃、小学1年の担任の先生の勧めで、コメディ映画を観始めたのがきっかけです。―コメディ映画を。類さん: 僕は昔から冗談が通じない子で、周りの冗談を真に受けてすぐにカチンと来てしまうなところがありました。先生は、このままでいると僕が人間関係で躓くことになると予見して、人の感情、特にユーモアを学ぶ必要があると言い、コメディ映画を観ることを勧めてくれたんです。特にハマったのはアニメの「サウスパーク」ですが、他にも色んなアメリカのコメディ映画やドラマを観ていました。僕が気になった部分があると一時停止して、「この人はこんなセリフを言っているけど、内心こういう感情で、本当はこういうことを伝えたいから、こんな表情をしているんだよ」っていう風に、母がひとつひとつ解説してくれたんです。おかげで、少しずつ登場人物の気持ちや意図が予想できるようになっていきました。―お母様が横で解説を入れてくれたんですか!セリフと表情のギャップを学ぶという点では、コメディはピッタリの教材かもしれませんね。類さん: そこからは僕も予想外だったのですが、ユーモアを理解するためにコメディ映画を観ていたのがきっかけで、お芝居自体に興味を持つようになったんです。自分ではない、色々な人になりきることの面白さを感じ、自分も俳優になりたい、と思うようになりました。―なるほど、そこから俳優を目指すように。類さん: モデルの仕事はもっと早くからやっていたのですが、本格的に芝居に取り組んだのは高校の演劇部に入ってからです。そこからバラエティ番組に出て、2012年にNHKのドラマで役をもらったのが、俳優として初のお仕事でしたが、最初は右も左も分からず、自分のセリフを覚えるだけでも精一杯で…Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―自分から興味を持って飛び込んだ世界とはいえ、集中を要したり、シーンに応じた振る舞いを求められたりと、大変な部分も多かったでしょうね…類さん: そうですね。実際、今でも苦労している部分はありますし、これからもたくさんあると思います。でも、先輩の役者さんにアドバイスをいただいたり、舞台を観に行ったりと、学ばせてもらう機会にはとても恵まれていて、いま少しずつ吸収、成長していく時期なのかなって思います。―コメディ映画に学んでいた頃のように、今後は周囲の先輩たちから学んで吸収されているのですね。類さん: すぐにはうまく出来なくても、ひとつひとつ訓練していけば、いつかは壁を突破して成功できる。そうやって、長い目で見る気持ちは忘れないようにしようと思っています。自分のことを「ネガティブ」だなんて思ったことはない?Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―お話を聞いていると、類さんは、身の回りの物事への注意集中が難しいという特性がある一方で、ものすごく楽観的だったり、長期的な視野を持っている印象を受けます。先ほどの話のように、「いつかは成功できる」と思って苦手なことも続けられたり、かと思えばバラエティ番組で人気沸騰だった時期にも、「この人気が続くわけがない」と、パリコレのオーディションに挑戦したり…類さん: バラエティは毎年旬が変わっていくものですし、そもそも自分に向いていないと思っていたので、ずっと続けていくつもりはありませんでした。それよりも、今までやったことがない新しい挑戦をしたいなと思ったんです。―とはいえ、まとまった期間で日本を離れると、連ドラなどの仕事は断らなければいけないし、オーディションに落ちてしまったら仕事が全部なくなってしまうかもしれない。なかなか勇気の要る挑戦だったと思いますけど。類さん: 確かに、僕にとっては大きな挑戦でしたね。でも、パリコレは21~24歳ぐらいの若いモデルが求められていて、僕のこの年齢で飛び込むのがむしろベストなのかなとは思っていました。結果的に、「Yohji Yamamoto」では4期連続、2年間を通して出演させていただきました。―周りからは当時、「ネガティブすぎるモデル」とか言われていましたけど、ネガティブというよりむしろ戦略的というか、かなりリスクを取って挑戦するタイプじゃないですか…類さん: というかそもそも、僕は自分のことを「ネガティブです」と言ったことは一度も無いんですよ!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)類さん: 僕は普通に振る舞っていただけなのに、気づいたら周りからそのような煽りが付けられていて…僕はメディアの取材などでは毎回「言っていないです」って説明してたんですけど、必ず毎回カットされるんです。―メディア的にはあまり美味しくはないセリフなんでしょうね…(笑)類さん: まぁでも、周りからの評価も含めて客観的に受け止める性格なので、そういうことが2, 3回続いたあとは諦めて受け容れてましたね(笑)親子というより友人―母、泉さんのことUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―焦らず、長期的な視点を持つというのは、「人生はマラソン」だと語られた類さんのお母様、泉さんの影響も大きかったと思うのですが、類さんにとって泉さんはどんな存在ですか?類さん: 僕の一番の理解者ですし、すごく尊敬しています。本にも書きましたし、どんだけお母さん好きなんだって言われるかもしれないけど、やっぱりあの人の影響によって今の自分が成り立っているんだと思います。好きな音楽とか役者とか、映画のセンスも、あの人が見ていたものを一緒に見たりとか、こういうオススメがあるよって連れて行ってもらうなかで確立したものがあって。僕がどうして今この仕事をするようになって、これから何を目指したいのか、僕自身がちゃんと理解して歩んでいけるようになったのは、母の影響がすごく大きいです。―なるほど。類さん: それから、母は自分が出来ることだからといって、子どもの僕に決して同じようには要求しない人でした。母自身もADHD(注意欠陥・多動性障害)だと言われているんですけど、同じ発達障害といっても、お互いに真逆な性質なんです。母はものすごく記憶力が良いのに、僕は極端に忘れっぽい。母は他人に言われた嫌なことも全部覚えてストレスになっちゃうけれど、僕はどれだけ怒られても翌日にケロっと忘れたりすることがしょっちゅうありました。僕は忘れ物や同じミスを繰り返すので、そのつど耳にタコが出来るぐらい母に怒られていましたが、「長い目で見たらあなたの性質の方が気楽だし、メンタルも安定していて良いわよね」なんて言われたりもします。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―ほんとに真逆の凸凹なんですね。人生の先輩として厳しい言葉をかけつつも、長い目で類さんの成長の過程に伴走していこうという泉さんの思いが、本を読んでも伝わってきます。類さん: お互いの長所も弱点も理解しながら、20年以上ずっと二人暮らしてきているので、息子と母親というよりは、むしろ心を開ける友人という感じがしますね。普通の親子なら言わない冗談とか言葉遣いもけっこうあったりします。発達障害に悩める人たちへ―「背負い込まず、一人でも仲間をみつけて」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)―最後に、自分やお子さんに発達障害があって悩んでいる人たちにメッセージがあれば、お願いします。類さん: 大人の当事者の場合でも、子どもに発達障害がある保護者の場合でもそうですけど、全部自分一人で背負い込んでしまわないことが大切だと思います。これまで親子の関係について多く話してきましたが、信頼できる第三者の相談相手がいると、すごく良いと思います。僕にとっては、主治医の高橋猛先生がそうでした。誰だって、どうしても親には話したくないことだってありますし、親子だけだと視点が偏って閉塞的になることもあります。そんな時、信頼できる第三者の意見を聞くことが出来れば、新しい発想やアプローチも出て来ると思います。大人の場合でも、仕事がうまくいかないからといって、自分のせいだと背負い込みすぎたら絶対身体も心も持たないです。全員に100%発達障害のことを理解してもらうなんて出来ませんが、上司や同僚、相談できる相手が一人いるだけでだいぶ違うと思います。一人でもいいので、信頼できる人を見つけること。それから、自分の特性や周囲の人たちと、長い目で見てじっくり付き合っていくことだと思います。―信頼できる人を見つけて、焦らずじっくりと。人生は「マラソン」、これからもずっと長い道のりが続きますものね。今日はありがとうございました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)聞き手・書き手: 鈴木悠平写真撮影: タナカトシノリ出典 : 発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著) , KADOKAWA
2016年10月06日娘には優しい育メンの夫。しかし息子には…出典 : 我が家には定型発達の娘と、発達障害の息子がいます。夫は、娘にとってはとても素晴らしい父親です。そして、近所でも評判の「育メン」でした。ところが、そんな理想的な父親だった夫が、息子にはひどく声を荒げることが多くなりました。ADHDの息子は、人の話をきちんと聞くことができません。何度言っても同じことを繰り返し、新しい場所に行けば、パニックを起こして道に座り込む息子に対し、激しい罵声を浴びせるのです。「どうしておまえはそうなんだっ!!!」「やめろっつってんのがわかんねえのかっ!!!」「気に食わないなら帰れっっ!!!!」「だからおまえなんか連れてきたくなかったんだよ、バカ!!」夫の叱責を恐れるあまり、おかしくなっていった息子出典 : 夫に怒鳴られることで、息子はますますパニックに。週末で夫が家にいる日は、息子の調子が崩れることが増えていきました。普段は起こさないような困りごとをたくさん起こすのです。「どうしてパパやママを困らせることばかりするの?」私はいつも泣きたい思いで息子に聞いていました。恐らく、その当時は息子にも理由は説明できなかったのでしょう。でも今になると分かります。息子は、夫に怒鳴られることを恐れて、行動の統制ができなくなっていたのでしょう。そのことでどれだけ息子が困っていたか、私は長いこと気付くことができませんでした。夫に協力を頼んでみたけれど…出典 : 夫に怒鳴ることをやめて欲しい、息子に対して穏やかな声かけをして欲しい…。そんな願いを込めて、私はペアレントトレーニングや発達障害児向けの声かけの本などを買ってきては、「会社行くときに電車で読んでね」、と夫の仕事鞄にそっと入れておきました。いつも半分ぐらいは読んでいる形跡がありましたが、それを息子に対して実践しようとする素振りは、見えませんでした。息子と一緒にいる時間が短い夫にとって、声かけを学ぶことは、それほど急を要することではなかったのかもしれません。知らぬ間に追い詰められていった息子は、とうとう…出典 : ある日のことでした。夫は息子の何かにまたひどく腹を立て、激しく怒鳴りつけました。息子はオタオタと慌てふためき、私の後ろに隠れ、目に涙をいっぱいためてこう言ったのです。「こんな風に毎日毎日お父さんに怒られる僕は、小学校に入っても毎日毎日先生に叱られるんだ。僕はもっと優しいお父さんがいる家族の元に、生まれてきたかった」このとき私は初めて、夫が息子を怒鳴り散らすことに対して、危機感を感じたのでした。私が思っていたよりもずっと、息子は傷ついていたのです。このままでは息子の自己肯定感は下がっていく一方だ、どうしたらいいんだろう…と。なぜ、夫に「いい父親」を求めていたのだろう出典 : 夫の存在は私にとっては本当に支えでしたし、娘にとってもいい父親でした。でも、どうしても息子に対するきつい態度は治りませんでした。私はこのとき悟りました。「親子にも相性がある」のだと。これ以上、夫を変えることに時間を使っていたら、そのうち息子と夫の関係は取り返しのつかないものになってしまうと思いました。相性が悪い者同士は、物理的に引き離して、なるべく接する時間を少なくするしかないのです。私はずっと「発達障害児の育児に協力的な夫」であることを求めていました。けれども、一番大切なことは、夫を理想的な父親に仕立て上げることよりも、息子の心を守ってやることだと気付いたのでした。私は夫に、息子にはなるべく関わらないようにお願いしました。優先順位を夫から息子へ変えたら…出典 : その後、息子の情緒は明らかに安定しています。息子と夫を引き離したことで、結果的に私と娘の情緒も安定することになりました。どうしても子どもと相性が悪くて、相手が全く変わる様子を見せないのであれば、物理的に引き離すというのも一つの手だと思います。一緒にいることに拘る必要はありません。大切なのは、子どもの心の安定です。
2016年10月06日発達障害の診療のための医療機関にはどんなものがある?それぞれが担う役割は?出典 : これまでの記事では、発達障害のための医療機関が少ない原因や、医療機関でできる支援についてお話させていただきました。今回は医療機関の種類をご紹介していきます。発達障害の診療に携わる医療機関には様々な種類がありますが、その分け方も色々あるのです。医療機関の種類というと、もちろん小児科や精神科などの診療科による分類が思い浮かぶのですが、今回の記事では別の切り口で分けてみたいと思います。いくつかの医療機関は日本の、時には世界の発達障害研究を担っていく役割を持っています。こうした先進的な医療機関にかかると厳密な手続きを経た診断が受けられたり、他では利用できない治療法が使えたりすることもあります。日本の、世界の発達障害支援の質の向上に貢献できる可能性があるというメリットもあります。一方でこうした機関の医療者は診療以外の業務が多く多忙です。また機関の数も限られるので、通院時間が長くなるなどアクセスも良くないことが多いでしょう。また研究途上の新しい治療には、確かめられていないリスクも伴います。良くも悪くもハイリスク、ハイリターンな選択です。その他に、地域の中核的な発達障害診療を担っている医療機関もあります。小児や障害者の病院、療育センターに附属している診療所などがこうした役割を担っていることが多いでしょう。こうした機関の専門性は高く、既存の診療技術に限って言えば、研究機関と比べても遜色がないことが大半です。また入院治療の機能を持っていることもあります。一方でこうした医療機関は比較的広域(都道府県単位)などから患者がきていることが多く、地元に密着した支援機関や学校の情報などはやや医療者に集まりにくくなります。また地域への医療サービス提供の責任を負っているので、新規患者優先、診断と投薬優先になりがちです。発達障害専門の小児科や児童精神科のクリニックなどを中心とした地域密着の医療機関も増えてきました。こうした医療機関は医師によっては、非常に高い専門性を持っていることもありますし、アクセスも良く比較的患者数も少なく、丁寧な診療が可能であることもあります。また何よりも地元の情報が集まりやすいことがメリットです。ただし地域によっては医療機関の不足のため、こうしたクリニックが中核的医療機関の役割を担わざるを得なくなっていることもあります。また最近では、地域のかかりつけ医、つまり一般の小児科医や内科医の役割にも注目が集まっています。こうした医療機関は、発熱やワクチン接種などの日常の身体的な問題に対応できるのはもちろんですが、典型的な事例の診断や専門的な医療機関での診断後のフォローアップなどが期待されています。平成28年度からは厚生労働省によるかかりつけ医向けの発達障害の診療研修も開始されました。こうした医療機関は極めてアクセスがよく、また発達障害の特性を知ってもらった上で、身体医療が受けられるという大きなメリットがあります。医療以外の支援者に恵まれている場合、医療の役割は限られるので、必要な時にかかりつけ医に相談するというスタイルでも、充分に対応が可能である場合があります。年齢の高い方の場合、成人の精神科医療機関も受診先の候補になります。現状では全ての精神科医療機関が発達障害の診療に対応できるわけではありませんが、着実にそうした機関は増えています。こうした医療機関のメリットはアクセスの良好さと、何よりも併存する他の精神疾患への対応への熟練度と手立ての豊富さです。ただし構造的に成人精神科の診察時間は短いことが多いので、それに合わせた受診の工夫を考えておく必要があります。医療機関に迷ったら、身近な支援者に相談を出典 : こうした分類は医療機関の看板に書いてあるわけではないので、利用者の方からは見分けにくいかもしれません。受診の前に保健センターなどの身近な支援者や、先輩の親御さん、ペアレント・メンターなどに受診先を相談するのはよい方法です。最後に、多くの種類の医療機関があるので、専門機関のいいとこ取りをしたい、かけ持ちをしたいという気持ちはとてもよくわかります。しかし極めて恵まれた一部の地域(ほんとにそんなのところが日本にあるのでしょうか……?)を除けば、現状ではそれはマナー違反であると考えるべきでしょう。必要な人が、少しでも早く、少なくとも正しい診断と診断書、時には薬物療法にたどり付けるような気遣いができる、余裕が持てるとよいですね。
2016年10月05日パパとママのえくぼは、「ニコニコスイッチ」!広汎性発達障害のある5歳の娘。その育児は大変なことばかりですが、我が家には笑顔があふれています。その秘密の1つが「ニコニコスイッチ」です。Upload By SAKURAUpload By SAKURAUpload By SAKURA私たち夫婦には、私は左に、主は右にえくぼがあります。そして娘には…ない。(うまくいけば、両えくぼだったのに~)私たちにあるこのえくぼのことを、娘は「ニコニコスイッチ」と呼びます。Upload By SAKURAえくぼを押せばニコニコになる~という遊びを、私たちと娘はよくやります。ママとパパがニコニコになるこのスイッチ。娘にとって素敵すぎるスイッチです。娘はこの遊びが大好きです。ニコニコになれないときだってある!?このニコニコスイッチで、いつも楽しく遊んでいるのですが…娘は私に叱られた後でも、娘はこのスイッチを押してきます。Upload By SAKURAスイッチ壊れてるわけじゃないから…。怒っているのを察してくれ~!!
2016年10月05日三国志が好きすぎて、武将たちが凸凹仲間に見えてきた!出典 : こんにちは、アスペルガー症候群(ASD)と注意欠陥障害(ADD)でフリーライターの鈴木希望です。普段『発達ナビ』さんでは、自分と同じくASDとADDを持つ息子の親として、また発達障害当事者としてのコラムを寄稿しています。さて、私は友人知人の間で「三国志の人」と呼ばれています。書店に入ればもちろん三国志コーナーに直行。「そうそう(相槌)」を「曹操(三国志の武将)」と誤変換したことに気付かず原稿を送信してクライアントさんに大笑いされてしまうほどです。半ばノイローゼですね(笑)知識で言えば初心者レベル。ですが熱量ばかりはそこそこにありまして、少し前には「初心者の視点で三国志について語る」という趣旨のコラムの執筆を始め、以前にも増して意欲的に三国志について学んでおります。そんなふうに三国志漬けで過ごしておりましたら、「あれ?この人、発達障害っぽいんじゃない?」と感じられる人物が結構いることに気付いたのです。というわけで、今回はいつもと趣向を変え、『あの英雄が自分とそっくり!?発達障害当事者が読む、凹凸だらけの三国志』と題して、その一部をご紹介いたします!※以下、『三国志演義』他、歴史小説としての三国志を主に参照しています。ご承知おきください。素直すぎる最強武将・呂布奉先はADHD!?Upload By 鈴木希望まずは呂布奉先(りょ・ふ・ほうせん、以下呂布)。羅貫中(ら・かんちゅう)の小説『三国志演義』では序盤に登場し、最強の武人と謳われる人物です。1日に千里を駆けるという名馬・赤兎馬に跨る姿は、「人中に呂布あり、馬中に赤兎あり」と賞賛されました。異民族の血を引く美丈夫だったという説もあり、ドラマなどではイケメン俳優さんが演じる姿も見られます。戦場では敵なしだったというこの呂布ですが、とにかく気が変わりやすい!というか、目先の利益にとらわれがち。1度目は前述の赤兎馬欲しさに、2度目は女性関係のトラブルが原因で、あろうことか義父を2人も殺しちゃっています。出典 : 他にも、世話になっていた領主の留守中に領地をのっとったり、かと思えばその相手に和解を申し出たり…。要は「そのとき、そのときに1番魅力的なものを選ぼう!」と、後先について深く考えずに動いてしまっているんですね。結果、周りからの信用を獲得できず、部下に裏切られて絞首刑という最期を迎えてしまったのですが…。心のままにパッパッと動いてしまう呂布の衝動性に、ADHDっぽさを私は感じています。衝動性だけではありません。前述したとおり、武勇に関しては他を抜きん出ていた存在。120歩離れた場所にある戟(げき。武具の一種)を矢で射るなど、ここぞという瞬間にはずば抜けた集中力を発揮しています。興味のないことにはずぼらにさえなるけれど、好きなことや得意なことにはとことん取り組める部分もまた、ADHDの匂いがしますよね。猪突猛進、でもうっかり!張飛の愛されADHD説。Upload By 鈴木希望お次は張飛益徳(ちょう・ひ・えきとく、以下張飛)、多くの三国志作品で主人公に据えられる劉備玄徳(りゅう・び・げんとく、以下劉備)の部下で、義弟だった武将です。戦では劉備軍の中心となって功を上げ、24回行われた一騎打ちでは無敗という猛将中の猛将。武勇は敵国の将にも知れ渡り、高く評されていました。一方『三国志演義』や中国の民間伝承では、短気で無鉄砲、大酒飲みなそこつ者として描かれています。出典 : 先に言っちゃいます、張飛はADHD!真っ先に思い出したのが次のエピソード。敵軍迎撃のため劉備軍が出陣した際、張飛とわずかな部下が城を守ることになりました。張飛の酒癖を心配した劉備は禁酒を言い渡し、張飛自身も「絶対に守る!」と約束するのです。が!舌の根も乾かぬうちに「景気付けだ!」とばかりにさっそく飲む!酔った勢いで部下と仲違い。恨みを抱いた部下は呂布と内通。そして張飛は呂布に城を奪われてしまうという、取り返しのつかない大失態を犯すのです…。たぶん、「劉兄貴に内緒で飲めばいいや」などと考えていたわけではないのでしょう。「(禁酒を)絶対に守る!」と本気で思っていたのでしょう。でも、飲みたくなったから飲む!そしてうっかりミス!ザッツADHD!戦場での猛々しい姿との対比もあって、張飛のうっかりぶりはなんだか憎めない、可愛らしい一面に見えてきます。ずるいぞ張飛!後年には頭脳戦に持ち込むなどの“やればできる子”っぷりも発揮。適応能力の高さもADHD的ですね。軍神・関羽。お前、アスペだろ!?Upload By 鈴木希望続いて関羽雲長(かん・う・うんちょう、以下関羽)、張飛と同じく劉備の部下にして義弟。張飛にとっては義兄です。忠義に厚い武将として知られており、顎に美しいヒゲをたたえた“美髯公”とも呼ばれていました。元は塩の密売人で、中国式簿記の生みの親とも言われている関羽。文武両道で、特に歴史書『春秋左氏伝』を好み、そのすべてを暗唱できたのだそうです。私は、そんな関羽をASD認定しています。規則性を見出しルールを作るのが得意だとか、1つのものをこよなく愛し、暗唱できるまでになってしまう面は、ASDの特性に当てはまりますよね。出典 : 関羽はやむなく敵将・曹操孟徳(そう・そう・もうとく、以下曹操)に投降、客将になっていた時期があるのです。曹操に気に入られた関羽は厚遇され、さまざまな贈り物を受けるも一切手を付けず。衣服を贈られたときなどは、主君・劉備からもらった衣服を脱がず、上から身に着けたありさま。それを見た曹操は「関羽は真に義の人」と讃え、劉備を大層羨みました。しかしASD当事者である私は、「変化が嫌いで慣れない物に不安を抱いたのでは?」「あ、もしかして感覚過敏?曹操からもらった服は肌触りが不快だった?」などと邪推してしまうのです(笑)。また、戦場で腕に毒矢を受け、取り除くための外科手術に臨んだときには麻酔を拒否、肉を食い酒を飲み碁を打ちながら平然としていたのだとか。これって豪胆というより感覚鈍麻では!?余談ですが、我が家の小学1年生ASD息子が保育園児のころ、5針を縫うほどの切り傷を作って流血しているにも関わらず、まったく気付かず遊び回っていたことがありました。あいつ、関羽かな?超世の傑・曹操に凸凹が!?見える、私には…。Upload By 鈴木希望最後は1番書きたかったような、書きたくなかったような…中原の覇者・曹操孟徳です。劉備のライバル的存在で、『三国志演義』ほか多くの作品では冷徹な悪役とされています。天才的な軍略家で政治家、そして詩人としても名を残している多才ぶり。徳を重んじる儒教の考えが根強かった時代に、「才能さえあれば他は不問」という画期的な求人を出した合理主義のフロンティア。このように書くと「え?どこに凸凹が?」と疑問ですよね。でも、私には強烈な凹凸ぶりが感じられてしまうのです。前項で書いた関羽へのプレゼント攻撃。そもそも関羽は「主君・劉備の生存が確認したらすぐに駆け付ける」という前提で身を寄せていたまで。一生曹操の元で暮らす気なんてありません。でも関羽を自分の部下にしたくてたまらない曹操は、「自分だったら喜ぶんだけどな~」という基準で、美女やら財宝やらを贈り続けていたのですが…関羽、一切手を付けないんですよ。喜んでないんですよ。ねえ曹操、気付こうよ。関羽、何をしてもあなたに振り向くことはないから。相手の顔色が読めてないのかな?「どうにかすればなんとかなる」って思い込んじゃっているのかな?その行動、すっごくASDっぽいよ…?出典 : あと、劉備があなたを欺くための猿芝居を「へ~、畑仕事が好きで雷が大嫌いなんだ~」って信じちゃうのもASDっぽいよ。それでうっかり逃げられちゃうあたり、ADDっぽくもあるかもしれない。ADDっぽいといえばね、敵国の策略として送られてきた軍師を、そうとは知らずにあなたは大はしゃぎで大歓迎、その言葉を素直に信じて大敗を喫してしまったよね…。何やってんだよ、曹操!!!いちいち私みたいなことするなー!!!!!そうなのです、曹操ファンのお叱りが来ることを覚悟で書くと、彼は『三国志』作品の中で私がもっとも近親憎悪を感じる存在。自分と同じくASD・ADDだと見ています。「自分の好きなものは相手も好きになるかも!」と信じて疑わず、それこそ延々三国志の話をしてしまったり、嫌味やからかいに気付かずニコニコ喜んでいたり…そんな過去の失敗エピソードが曹操の姿と重なって、私はいたたまれない気持ちになるのです。「近親憎悪」と書きましたが、親しみも感じており、大好きなんですけどね。稀代の英雄に自分みたいな面が見えると、「あ、やっぱり人間なのね」って思えるじゃないですか(笑)。物語の向こうの誰かが、特性の魅力を教えてくれるかも出典 : いかがでしたか?異論、反論、「まったくわからない」などなど、さまざまなご意見があると思います。もちろん、発達障害の診断名は現在の基準ですから、はるか昔の武将たちが実際に該当するかどうかは分かりませんし、私自身も他人を「○○っぽい」と断定することは本来好みません。ですが、こうして昔の人たちの特性を分析してみると、遠い存在に思えていた英傑たちが身近に感じられたり、自分と似た面を持つ人物を発見し(私にとっての曹操ですね)、一歩引いた位置で特性を捉えられたりし、「あれ?結構面白いかも!」という思えるきっかけになるのかもしれません。三国志に限らず、小説や漫画を読みながら「あれ?もしかしてこの人も?」などと、登場人物の言動を発達障害の特性と照らし合わせてみると、物語の見え方が、そして発達障害に対する印象が変わってくるのではないか、と私は思っています。そんな風にして発達障害を身近なものとして捉え、気軽に話せる場が増えていくことを、当事者のひとりとして願って止みません。三国志を様々な角度で紹介中!『三国志情報バトル』:鈴木希望プロフィール
2016年10月05日どんな言葉も真に受ける息子は、私の井戸端会議を聞いて…Upload By かなしろにゃんこ。たいていの子どもはある程度の年齢になれば、親が他人と話すときには自分の子を謙遜して話すものだという「社交辞令」がなんとなくわかると思います。しかし発達障害のある息子は、私の言葉を真に受けて怒り出す始末…。井戸端会議の空気は最悪になってしまいました。これではいかん!と思い、家に帰った後、息子に大人の事情を説明しました。「大人の会話はそういうもの」と教えてみるも…Upload By かなしろにゃんこ。「社交辞令というものがあって、大人は自分のことや家族の自慢はせず悪くいうものなのよ!」と伝えると、「大人のおしゃべりってめんどくさいね」と息子に言われてしまいました。うっ!その通り…大人の話ってそうだね、と私も思います。ん!?でもちょっと待てよ…うちの場合、我が子の話は悪く言ってるというか、本当のことを言ってるだけなんだけどな~(笑)。確かに「めんどくさい」かもしれないけど…これも社会に出る準備!Upload By かなしろにゃんこ。その後も社交辞令の種類やその意図について教えると、高3になった今は分かってくれるようになりました。社会に出る準備の一つとして、世の中には「社交辞令がある」ということを少しずつ覚えていってほしいな~と思っています。
2016年10月04日目を離せばすぐあちこち走り回る子どもたち。当然外出なんて場所を選べる訳もなく…出典 : 我が家には2人の発達障害児がおり、毎日がご想像の通りのハチャメチャぶりです。衝動性の高い子どもたちと出かけることはもちろん至難の技。私の手を振り払って後方へ走り出す次男、それを追いかけるうちに勝手にエスカレーターに乗ってしまう長男。想像しただけでどっと疲れませんか?(笑)そんな子どもたちを連れてわざわざ出かけようという気も、いつしか起きなくなりました。ましてや「子連れで遊ぼう」というお誘いなんて夢のまた夢。行きたいなあ、と思いながらもずっと断ってばかりいました。そんな我が家でも、思いっきりレジャーを楽しめる「キャンプ」があったのです!どんな様子か気になる?ご紹介しましょう!東京都自閉症協会「おやじの会」主催のキャンプに家族で参加出典 : 私も会員として参加している東京都自閉症協会には「おやじの会」という自閉症児の父親の会があり、いろいろなイベントを企画、運営しています。例えば先日参加したキャンプ「エンジョイアウトドアスポーツ」や、障害児のきょうだいにフォーカスを当てた「きょうだいキャンプ」、そして初夏と新年に開催されるBBQなど、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。ここなら、衝動性の高いうちの子を連れていっても安心です。先日は、主人も連れて家族全員でキャンプに参加してみました。東京都自閉症協会おやじの会母親が子どもにつきっきりにならなくて済む理由出典 : 「迷惑をかけているのでは」と人の目を気にしたり、「迷子になってしまうのでは」と神経を尖らせたり…そんな思いから解放され、心置きなく楽しめるこのキャンプ。それには大きな理由が2つあります。1つ目は、皆が「お互い様」の気持ちでいられる環境であること当事者とその家族が集まってのキャンプなので、普段の生活で感じる気疲れがありません。もう1つは学生などのボランティアさんがたくさん参加していることボランティアさんが野外活動、子どもたちの見守り、イベントの進行や食事の支度など何から何までおやじたちと一緒に取り組んでくれているのです。ボランティアさんの中には、おやじの会のイベントに何度も足を運んでくれている方もいて、あまり人の顔や名前を覚えない長男も、大好きなボランティアさんの名前を覚えて一緒に遊べるのを楽しみにしていました。普段私が「もう休憩させて…」と言ってしまいそうな激しい遊びでも、若い力と優しさでずっと付き合ってくれる姿には、感謝の気持ちでいっぱいになりました。予想を裏切る働きっぷりに、おやじを見直す3日間出典 : このキャンプで家族として得られる大きな収穫、それは「おやじって、結構頼れるんだな」という瞬間です。普段は園や療育への送り迎え、地獄のようなスーパーでの買い物、体力の限界を感じる外遊び…これらを一手に引き受ける母親からすると、「こんなおやじに、子どもを任せても大丈夫かいな」と失礼ながら思ってしまうのも、やむを得ないかもしれません。でも、彼らは違いました。ベテランになると、持っている情報量も多く、ネットワークも広い。そして障害を見つめる切り口が母親とは違う。普段社会で働いているからこそ、イベントの運営もきめ細かくスムーズです。やっぱりいざという時、パパは我が家を立派に支えてくれる存在なんだな。そんな気持ちが何度もよぎる3日間なのです。母親が1人で抱え込まないよう、父親にも子育てに積極的に参加できるきっかけを出典 : パパには日頃、ついつい「療育手帳と受給者証の違いもわからんのか!」「就労移行支援と移動支援は別モンよ!」なんて、偉そうについ言ってしまう私。でも、おやじにはおやじの活躍の場所がたくさんあって、私たちでいう「ママ友」みたいなおやじのコミュニティーってとっても大切だな、と改めて感じました。普段、療育関係のことは私が全て管理したり実際に出向いたりしているので、主人には仲間を増やす機会がなかなか無いことから、同じ環境にいる父親に会えるというのは、主人にとって貴重な時間。また主人が、こんな風に仲間を作ってくれることにより、障害への理解が高まったり育児へ積極的になったりしてくれたので、今回のキャンプの参加は、結果的に家族みんなにとって良かったのでした。自閉症協会に関わらず、全国各地にいろいろな「当事者の会」や「家族会」などが発足されています。気を遣って生活している日々の息抜きとして、同じ気持ちをわかってくれる人のところへ出向いてみるのも、いいかもしれません。きっと新しい発見や仲間が待っているはずです。
2016年10月04日この1年で、怒りっぽい娘に変化が出典 : 発達障害を抱える子どもたちは、私たちが想像する以上に傷付き、生き辛い毎日をなんとかこなしているのかもしれません。もしあの時、児童精神科の門を叩かずに「怒るのをやめなさい」と娘に言い続けていたら、どうなっていたのでしょう。もしかすると、「生きていたくない」という思いがどんどん強くなり、自分を傷つけるような行為に繋がっていたかもしれません。些細な出来事が怒りに直結し、毎日苦しむ娘を見かねて児童精神科の門を叩いたのは、およそ1年前のことでした。その後、アスペルガーの診断が下り、この1年で娘は大きく変わりました。四六時中、口を開けば誰かを攻撃して怒りを爆発させていた頃が嘘のように、笑顔でいる時間のほうが多くなりました。自分を責め、否定し、卑屈になっていた娘が、褒められれば「ありがとう」と素直に受け入れられるようになったのです。これは大きな変化でした。ふとした時に漏れた衝撃の本音。娘の辛さを理解してやれなかった私は…出典 : ところが、そんな娘の笑顔を眺めてホッとしていた矢先、ある日のことでした。衝撃の言葉が娘の口から漏れたのです。「私、児童精神科に行くまで、自分のことが大嫌いだった」「どうしてこの世に生を受けてしまったんだろうって、ずっと思ってた」たった7歳の娘が、産まれてきたことを後悔し、誰にも打ち明けられずに悩んでいたなんて…その事実に打ちのめされました。これまで精一杯、愛情を注いで来たつもりでいたけれど、でも…。タイプの違う娘と息子を抱えて奮闘していた私は、毎日の生活を送るだけで精一杯でした。パニックを起こして泣き叫ぶ息子に容赦なく怒りを振りかざす娘に対し、「どうしてそんな些細な事で怒らなければならないの!?」とイライラをぶつけたことも多々ありました。怒りをコントロールできずに苦しんでいたのは、誰よりも娘自身だったのに、私は苦しんでいる娘にさらに追い討ちをかけ、追いつめていたのです。アスペルガーの娘には「嫌な記憶が何度もフラッシュバックされる」という特性があります。その特性を持つ娘は、母親から浴びせられた否定的な言葉を、何度頭の中でリピートしたことでしょう。そのたびに「私はダメなんだ」「どうして私はこうなんだ」と、自分を責め続けていたのだと思います。娘の本心をやっと理解し、反省した私。しかし、これで解決する訳でもなく出典 : 娘と私の8年間。振り返ってみると反省すべき点はたくさんあります。たとえ親であろうと、間違ってしまったことはきちんと謝らなければ、前には進めません。「わかってあげられなくて、ごめんね。ずっとずっと辛かったね。」「よくがんばってここまで来てくれたね。これからは一緒に前に進もうね。」失敗を取り戻すことはできませんが、私の腕の中で大きな安堵のため息をつく様子を見ていると、娘の心は少しずつほぐれていったような気がします。これで娘の苦しみが消えてしまった訳では決してありませんし、これから先もずっと、悲しい記憶が何度も蘇り、娘の心を傷つけ続ける事でしょう。娘が生まれてきたことを後悔する理由は、他にもたくさんあるのだと思います。少し笑顔が増えたからといって、今までの出来事がなかったことにはならないのです。忘れられない悲しい記憶と共に生きていく、というのは、そういうことなのです。傷ついた娘に、親がしてやれることはあるのだろうか?出典 : 私自身、娘の診断が下りる前は「診断がつくのかどうか」「発達障害の中でどこに分類されるのか」、そればかりを考えていたような気がします。もちろん、診断名は大切です。何をどうすれば良いか、どんな特性があるのか、どんな思考の偏りがあるのか、調べるのに便利だからです。でも、診断名が出たからといって、何かが大きく変わる訳ではありません。親が自ら変わっていかなければ、何も変わってはくれないのです。私は娘ではありませんから、完全に娘を理解することなど不可能です。それでも、娘の話をさえぎらずに聞いてみたり、いろんな文献に目を通して「こうかな?」と想像してみたりすることはできます。親が懸命に寄り添おう、理解しようとしている姿を見せるだけでも、子どもの中で何かが変わり始めるような気がします。出典 : まずは小さなところから、何でもいいから良さそうだと思ったものは実行してみる。その方法が自分たちに合わなかったら、すっぱりとやめて違う方法を探してみる。その繰り返しが、きっと財産になっていくはずです。まだまだ、一度怒りに火がついてしまうと消火するのが大変で、正義感が強いため、自分に関係のない人の行動も咎めずにはいられない娘。それでも、もう2度と「生まれてこなければよかった」と娘に思わせないために。「このお母さんの元に生まれて来て良かった」と、心の底から思ってもらえることを目標に、これからも日々子どもたちと向き合っていきたいと思います。
2016年10月04日発達障害のある人のため、医療機関ができること出典 : 年現在、多くの地域で、発達障害の診療に携わっている医療機関は著しく不足しています。医療従事者、それを利用する他領域の支援者、時には本人やご家族も、限られた地域の医療資源をできるだけ効率よく活用することを考える必要があります。発達障害のある本人や家族には様々なサポートが必要です。その中には医療機関が提供できる、提供しているものもたくさんあります。その代表的なものを挙げてみます。Upload By 吉川徹けれどもこの中で、どうしても医療機関でなければ提供できない支援というのは、実はあまり多くありません。そして、医療以外でも提供できる支援は、実は他の領域の支援者の方が、有利であったり、得意であったりすることも多いのです。医療でなければできない発達障害支援は何か出典 : 医療でなければ提供できない支援の一つは「診断」です。一方で、広く診断といったときに、その人に発達障害の特性があるのかどうか、発達障害の特性を考慮に入れた支援が有効であるのかどうかという「見立て」は、必ずしも医療機関のみでなされているわけではありません。むしろ本来はこうした見立ては、保健、教育、福祉などの領域でも必要になってきますし、仮に医学的診断を後に受けるとしても、それより前から見たての作業が始まっていることが望まれます。また、「見立て」に限られた時間しか充てられない医療機関に比べて、生活を共にする時間が長い人は、そもそもとても有利でもあるのです。ここは医師の間でも見解が分かれるところなのですが、自分は発達障害のある人すべてが、医療による診断を受ける必要は必ずしもないと考えています。ただし見立てや診断において、どうしても医療機関が必要になる場面があります。それは、・患者の困りごとが、発達障害以外の他の疾患から起こっている可能性を見極め、排除する必要がある場合・患者の困りごとの背景にある疾患を診断する必要がある場合上記の2点です。特に生物学的な検査が必要である場合、医療抜きにこれを行うことはほぼ不可能です。発達障害によく似た状態を示す疾患はたくさんありますし、また発達障害のある人には、脆弱X症候群やダウン症など様々な障害が背景にあることも少なくないのです。このため、何らかの点で典型的ではない、他の際だった特徴のある人の場合、医療機関を受診しておくメリットは大きくなります。そして診断書の発行も医療機関の重要な役割であり、優先度の高い仕事です。一般に医師は診断書の発行を面倒がる傾向があるのですが、これはどうしても医師免許が必要であり、医師が(好まずとも)独占している業務なので、嫌がらずにやらないといけないと自分に言い聞かせています。そしてもう一つ、どうしても医療でないとできない業務は、処方箋の必要な薬物を使うことです。これは当然ですが、では処方箋のいらないお薬、サプリメントはどうか、ということになります。しかし、これらの中に現時点で効果と安全性が実証されているものは、ほぼありません。医師と相談せずに使うことは更におすすめしにくいので、できればそこも医師と相談できると手堅いでしょう。結局、どうしても医療でないとできない主な支援は、診断、特に診断書の発行と薬物療法ということになります。医療でも出来る支援には、他に幾つもありますが、その優先度は低くなります。医療機関が不足している地域では、医療資源はまず診断と投薬のために活用する、その姿勢が求められています。医師の側もその業務を独占している以上、優先的にそれを提供する義務があると言えるでしょう。医療の強みは、卓越した経験と専門性にある出典 : それでは診断や薬物療法以外には、医療のアドバンテージはないのでしょうか。医師の立場からすると「それはある」と言いたくなるのですが、実際にはどうでしょうか。一つには、医師、特に発達障害を専門とする医師は、他の領域の支援者と比べても桁違いに多くの事例に接しているということがあります。一人の専門の医師が同時に診療している発達障害の患者さんは、数百人から時には千人を越えることがあります。医師人生の中で会ってきた患者は数千人ということも珍しくありません。そして多数例の報告に基づいた研究論文がたくさんあるのも医療領域の大きな特徴です。また多くの医師は、ライフステージをまたいで、患者さんに関わり続けています。幼児期早期に受診した子どもが成人し、時には老年期まで診療することがあります。自分一人でそれを見届けることができなくても、連綿と書き綴られたカルテから、比較的若い医師でも目の前の患者の若い頃の姿を確かめることができるのです。多数の患者に関わる医師は、残念ながら養育者や他の領域の支援者に比べると「その子自身」の専門家になれる機会は限られます。そのかわり「自閉スペクトラム症」の専門家、「注意欠如多動症」の専門家などには、なりやすい立場です。多くの例に長く関わっているからこそ、行いやすい見立てや助言があります。それは例えば、・将来を見越して今優先すべき支援の領域を考えること・本人や家族のリソースの配分を考えること・進路の決定などの場面でのアドバイスです。このように医療による支援のなかには、医療でないとできないこと、医療でもできること、そして医療が得意なことと苦手なことがあります。皆さんにはこうした医療による支援の特性をうまく理解して頂いて、上手につきあっていただきたいと思います。
2016年10月03日学習障害の長男。努力ではカバーしきれない困難さを抱えた結果…出典 : 小5の長男は、ADHD、アスペルガー症候群、そして学習障害という診断を受けています。その中で、今彼を最も困らせているのが、「学習障害」です。上下斜視で2度の外科手術をしている長男ですが、視力は順調に育ちながらも、視機能や視覚認知面での遅れがありました。このため、●本の字を追って読むのが苦手●漢字や図形の形を把握して覚えるのが苦手●黒板の字を視写するのが苦手●先生の口頭の指示を覚えられない●繰り上がりなど複雑な計算が苦手こうした影響が、学習に現れています。医師の診断によると、「今は、彼が本来持っている理解力や思考力を十分に発揮できず、努力をしても定着が進まない状態です。そんな中で失敗経験が積み重なり、勉強自体に『苦手意識』『拒否感』が強まってしまったのでしょう。そのため学習場面で、パニックを起こしたりチック症状が出たりといった、二次障害が出ています。」ということでした。本来、好奇心が旺盛で好きなことなら熱心に知識を取り込み、あっという間に覚えるほど、学ぶことに対して前向きな長男。それが、読み書きという「方法が合わない」ことが原因で、学ぶこと自体が嫌になっているのです。この状況を前にし、親としては可哀想で仕方ありませんでした。タブレット学習が長男を変えた!出典 : そんなとき、通っている療育先や教育相談の先生から、「タブレットを使ってみてはどうか」と勧められました。長男に「こんなのあるけど、やってみない?」と聞いたところ、興味を示して「やってみたい!」とノリノリに。こうして、小3から通信教育のタブレット講座を始め、今ではその他のアプリも取り入れて続けています。なぜ、勉強嫌いの長男がそんなに続いているのか?お勧めの教材4つを紹介しながらお話したいと思います。出典 : こちらは、進研ゼミのタブレット教材です。国語・算数・理科・社会の4教科を、動画や音声で学習できるので、「読む」のが苦手だったり、説明を読んでイメージするのが苦手だったりする子もわかりやすいです。長男にとっては、とにかく「書かなくてもいい」のが良かったようです! 問題の答えの記入は、タッチペンを使った選択制なのです。また、間違えたら再チャレンジする仕組みになっていたり、わからないところがあったら説明や動画をもう一度見ることができたりするので、長男にとっては記憶力の強化にもなります。このシステムの面白いところは、学習をすすめるごとにご褒美(ポイントやゲーム)があるので、やる気につながるようです。「チャレンジタッチ」タブレットの仕様出典 : 長男が視覚認知・視機能の検査を受けた病院で、ビジョントレーニングとして勧められたのがこちらです。これはパソコンにダウンロードして使用するアプリケーションです。視覚認知機能5領域(注意・記憶・形状識別・空間認知・運動統合)のトレーニングができる、16種類のとてもわかりやすく楽しいゲームです。練習ステージをしてから本番に入る形だったり、前回までの記録に合わせて難易度を自動設定してくれたりと、子どものやる気を上手に引き出してくれます。また、保護者メニューでは5領域の力のバランスや、これまでの成績の変化をグラフやチャートで見ることができるので、子どもの成長状態がよくわかります。この記録をもとに、力を付けた方が良い領域のゲームを「今日のおすすめ」として自動表示してくれるので、子どもだけでもまんべんなく、力をつけていくことができると思います。視覚認知バランサー出典 : 苦手な「書く」を補うため、パソコン入力ができるようにと考え、ローマ字を負担なく覚えることができるアプリを探しました。こちらは、タブレット向けのアプリケーション。表示されたひらがな又はカタカナと同じローマ字を4択の中からタッチして選ぶ、学習アプリです。「道場」というだけに、剣道の試合のようにどんどん文字をヒットさせるのが、面白いみたいです。学校の「書いて覚える」学習では泣いて嫌がり、全くローマ字が覚えられなかった長男でしたが、このアプリはタッチするだけで覚えられるので、繰り返すうちに、少しずつですがローマ字が読めるようになってきています。剣道でおぼえるローマ字道場出典 : 漢字を書けなくてもいいから、読めるようになって欲しい。そんな気持ちで、楽しく「漢字の読み」が学習できるアプリを探しました。これもタブレット向け無料アプリです。子どもが大好きなRPGゲームの感覚で、海賊になって問題を解きながら、ステージをクリアしていく楽しみがあります。漢字の正しい読みを選択する問題、漢字の正しい形を選択する問題に回答することで、視覚的に漢字を覚えることができます。ステージを1つクリアする毎にカードやコインをもらえるのもやる気に繋がります。国語海賊〜2年生の漢字編〜その子に合った学習方法さえ見つかれば、子どもは伸びる出典 : 最近読んだ本に、こんなことが書いてありました。「勉強をその子ができる形にしてやることで、子どもは自然に力を伸ばすことができます。また、時期がくれば自然と力を伸ばすこともあります。だから、子どもを勉強に合わせるのではなく、勉強を子どもに合わせてやればよいのです。小学校に入学し、気を張って1日を過ごしてきた子どもに追い打ちをかけるのではなく、家に帰ったらほっこりさせてやりたい。だから、まずは『宿題なんかできなくても大丈夫』と考えてほしいのです。」「宿題をするのは当たり前のこと」と親子で考えていた頃は、確かに毎日が苦痛でした。私はカッとして声を上げ、長男は泣きながら宿題をしていました。でも今は、このタブレット学習を「この子の宿題」として学校に認めてもらい、やったことを記録して報告しています。自分から学習に取り組む今の姿は、以前の彼からは想像できないものでした。その子に合った学習方法を用意すれば、子どもは伸びることができる。そのことを、強く実感しています。(「宿題なんかこわくない発達障害児の学習支援」塚本章人・著かもがわ出版)
2016年10月03日息子はアスペルガー症候群Upload By ニャンタ小5の息子は、アスペルガー症候群。知的な遅れを伴わないアスペルガー症候群の中でも、軽度のほうだと言われている。でも、そう表現される度に傷付く私がいる。私の心にもたれかかっているこの負担は、本当に「軽度」なのだろうか?と。息子と年長の娘を寝かしつけるときに、本の読み聞かせをする。毎日のことなのに、私が絵本を読み始めると、きまって2人の言い合いが始まる。原因はいつも「ベットのフチに手を置く」「置くな」という些細なこと。息子の声が荒く大きくなると、娘は黙る。息子の大きな声が怖いから。「妹が怖がっているよ」と何度伝えても息子は分かってくれず、黙っている妹を責め立て始めるのだ。こんな時、私はいつも思う。「そんなに大騒ぎをして、怒るような事だろうか?」でも、専門家はこう言うのだ。「それはね、お母さんの主観だよ。息子さんにとってこの出来事は、怒るべきことなんだよ。」この説明は耳にタコができるくらい聞いてきたし、そうなのだろうと頭では十分に理解している。でも、それでも、大声で相手をなじるような態度を許していいのかというと、違うのではないか。一度スイッチがはいると、息子の暴言は止まらないUpload By ニャンタとりあえず、多少なりとも娘にも落ち度はあったので、そのことを話し、どちらもベッドに手を置くのをやめさせる。娘はすぐに置いていた手をどけて、読み聞かせの続きを待つ。息子は「なんで僕だけやめさせられなくてはならないのか!」と大声でキレはじめる。私は怒ってしまいそうな気持ちを抑えてこう言う。「2人ともやめさせたでしょう。置きたかった事が叶わなくて嫌だ、という気持ちになるのはわかるけど、大声で相手を責め立てる態度はよくないよ。」それでも1度怒りだした息子の激情が止まることはなく、妹と私への不満を垂れ流すように、わめき続ける。息子のわめきは、ペアレントトレーニングによるところの「好ましくない態度」だ。講座で教わった通り、伝えるべきことだけ伝え、あとはスルーする。これが正しい対処だと頭ではわかっている。わかっているが、スルーしてもわめき声は私の耳に聞こえてくるし、言葉は次々伝わってくるのだ。そんな日々に心は傷つく。恐らく娘も同じように感じているのだろう。疲れて、疲れ果てて、それでも願うことはただ1つUpload By ニャンタ息子が荒れるのはこの日だけではない。こんな時、私は本当に疲れる。心の底から、息子のことががわからなくなる。どうしたら、あなたの心に私の声が届きますか?私はあなたが責め立てる程に、あなたの言葉を受け止めていないのですか?心の底に重石を置かれたような、泥の中を腰まで浸かって歩いているような感覚。そんな心の中で願うことはただ1つ。どうすれば、あなたと一緒に心地よくいられますか?わかっている。息子には家族の理解と支援が必要不可欠だということUpload By ニャンタ息子との穏やかな日々。それは簡単には叶わないことだとわかっている。息子には家族の支援が必要で、私が1人で抱え込まなくても済むよう、療育が必要だということも。それでも成長は緩やかで、進んでいるのか後退しているのかわからないような日々。支援者から言われるのは「以前に比べてできることは増えているでしょう?」「他の子と比べないであげてください」という言葉。そんなこと、もちろんわかっている。わかっている。ただ、あまりにも息子と心を通わせる事が少なくて、途方にくれてしまうのだ。兄妹2人とも、大切に思う気持ちは同じなのに。24時間365日「障害に理解のある、穏やかで良い母親」は演じられないと思うUpload By ニャンタ知的な遅れや、言葉の成長に遅れがないからといって、息子がいつも自分の気持ちを「伝えられる」とは限らない。出てくる言葉が多少高度であっても、的確に自分の気持ちを表現している訳ではないのだ。そんな複雑な脳の仕組みをもつ息子。それを支援する家族。この家族の負担へ目を向けてくれる人は、一体どのくらいいるのだろうか?このコラムで、1人でも多くの方に頷いてもらえたり、孤独感を和らげてもらえたら。日常に散らばる苛立ちや孤独を「辛いと」言っていい、そう感じてもらえる一助になれたら、私の日常も捨てたものではないかもしれない。
2016年10月03日障害者差別解消法とは?出典 : 年4月1日より、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」が施行されました。この法律は、障害による差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会を実現することを目的として制定されました。注目すべきポイントは、ここで言う「障害者」が、障害者手帳を持つ人のみに限られないという点です。障害者差別解消法では「障害者」を次のように定義しています。障害者身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。ポイントとなるのは“障害及び社会的障壁”という文言です。個人の心身の機能障害だけでなく、社会の制度や環境が障壁となって、その人の生活に障害をもたらしているとする、障害の「社会モデル」という考え方を反映しています。ここでいう「社会的障壁」とは、「手話のついていないテレビ」や「点字ブロックのない道」などの物理的な障壁のみではありません。見えづらい障害に対する理解不足や、それに伴う対応不足なども人が社会で感じる「障壁」になりうるのです。そんな誰しもが持ち得る「障壁」に対して社会全体が「気づく心」を持ち、柔軟に対応していくことを求める法律、それが障害者差別解消法なのです。障害者差別解消法が制定されるまで出典 : 障害者差別解消法が成立した背景には、2006年12月に国連総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約」(通称、「障害者権利条約」)の存在があります。この障害者権利条約は、障害者に対する差別禁止や障害者の尊厳と権利を保障することを定めた条約で、日本政府は翌年2007年9月に署名しました。日本はその障害者権利条約を国内でも批准することを目指し、2009年12月から国内法の整備を進めていきました。そして2013年に「障害者差別解消法」を制定したことで、翌年2014年に「障害者の権利に関する条約」の批准がなされたのです。障害者の権利に関する条約|外務省障害者の権利条約|特定非営利活動法人(認定NPO法人)DPI(障害者インターナショナル)日本会議「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について|独立行政法人 福祉医療機構障害者差別解消法における「差別」の2つの意味出典 : 障害者差別解消法に書かれている「差別」には、2つの意味が含まれています。1つ目は「不当な差別的取扱い」という意味での「差別」、2つ目は、合理的配慮が行われていないという意味、すなわち「合理的配慮の不提供」という「差別」です。それぞれについて詳しくご説明します。「不当な差別的取扱い」とは、役所(国・都道府県・市区町村)や企業が、障害者に対して正当な理由がないにもかかわらず差別をすることです。障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、障害のない人とは違う扱いをしたりすることが、この「不当な差別的取り扱い」の中に含まれます。具体的には以下のような例が挙げられます。・お店に入ろうとしたら、車いすを利用していることが理由で入店を断られた。・アパートの契約をするとき、障害があることを理由にアパートを貸してくれなかった。・スポーツクラブや習い事の教室などで、障害があることを理由に入会を断られた。リーフレット「障害者差別解消法が制定されました(わかりやすい版)」|内閣府2つ目は、合理的配慮を行わない、という差別です。「合理的配慮」とは、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くために行う、個別の調整や変更のことを指します。障害のある人が障害を理由として差別されることがなく、障害のない人と同じように社会生活を送れることを目的としています。たとえば、合理的配慮には次のような例があります。・文字の読み書きが困難な方が、タブレットや音声読み上げソフトで学習できるようにする・肢体不自由の方が自力で移動できない場所にスロープなどを追加で設置する・複数の指示理解が難しい方に、指示を1つずつ分けて伝えたり、イラストを交えて説明したりする・疲労や緊張が大きい方のために、休憩スペースを設けたり、業務時間等を調整するUpload By 発達障害のキホン障害者差別解消法においては、障害のある人への合理的配慮の提供を行政や事業者に対して求めています。ただし、ある人に配慮を行うことで、他の人たちの生活や活動が困難になるほどの影響が生じたり、あまりにも大きな負担を伴う場合は、「合理的」ではないとして、行政機関・事業者はその配慮を断ることができます。その配慮が「過度な負担」かどうかは、以下の観点を考慮しながら、行政機関や事業者が、個別の場合に応じて判断すべきとされています。・事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)・実現可能性の程度・費用・負担(必要性・負担を参考に判断)・事業規模・財務状況ただし、負担が大きく合理的配慮が難しいと判断した場合でも、事業者は障害者に理由を説明し、理解を得られるよう努めるよう決められています。「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」におけるポイント出典 : 上記の「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」に関する取り決めは、国や地域の役所などの行政機関と、お店や会社などの民間事業所とで少し異なります。障害者に対して差別的な対応をするという「不当な差別的取扱い」については、行政機関も民間事業所も、「行ってはいけない」という法的義務が課されている点で一致しています。一方、一人ひとりのニーズに対して適切な配慮を行う「合理的配慮の提供」については、行政機関は「しなければならない」(法的義務)のに対し、民間事業所は「実施するように努める」(努力義務)という違いがあります。また、民間事業者についての補足として、たとえばお店のお客さんなどの、サービス利用者に対しての合理的配慮は努力義務であるが、みずからが雇用した労働者に対しての合理的配慮は法的義務となることが、厚生労働省の指針にて定められています。Upload By 発達障害のキホン障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集<地方公共団体向け> |内閣府どのように「差別」を「解消」するの?出典 : 障害を解消させるためにどんなに理想的な法律を定めても、その法律が実際に活用されなければ意味がありません。障害者差別解消法では、各分野においてしっかりと法が浸透していくよう、「対応要領」と「対応指針」というものを策定することが定められています。Upload By 発達障害のキホン国や都道府県、役所の人々がこの障害者差別解消法に基づいて適切な対応ができるよう、自らの職員に向けて作ったものを「対応要領」といいます。これは、障害のある方からの意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮についての基本的な考え方や具体例を定めたものです。関係府省庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領|内閣府対応要領が役所の人に対しての取り決めであるのに対して、対応指針は会社やお店などの事業者に向けられたものです。事業者を所管する国の役所によって定められています。こちらも障害のある人の意見を取り入れながら、不当な差別的取扱いや合理的配慮について詳しく書かれています。各事業者はこの対応指針を参考に、自らで差別解消への取り組みを進めていくよう求められます。法律に反することを何度も行う、もしくは自主的に改善する様子が見受けられない場合には国に報告を求めたり注意したりすることがあります。対応指針をもう少しわかりやすく説明するため、今回は教育、交通機関に注目し、具体的な内容について紹介します。教育文部科学省は主に私立学校を対象に、対応指針を取りまとめました。公立学校は合理的配慮の提供が法的義務として定められていますが、私立学校においても不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮に努めることが具体的な例とともに示されています。■不当な差別的取扱い・受験や入学、その他の学校生活において参加を拒んだり、拒まない代わりの条件を、正当な理由なく付けてはならない。・試験などにおいて合理的配慮の提供を受けた場合に、それを理由として本人を評価の対象から外したり、差を付けたりしてはならない。■合理的配慮・施設や施設内において、車いす利用者のためにキャスター上げなどの補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりして配慮を行う。・疲れやすい障害者から休憩の申し出があったときは、別室の確保などで対応を行う。それが困難である場合は、本人に説明をした上で臨時の休憩スペースを設けるように努める。文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針について(通知) |文部科学省文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の 解消の推進に関する対応指針 |内閣府不動産・交通機関国土交通省は、国土交通に関する分野を不動産・設計・鉄道・バス・タクシー・海外航路・国内航路・航空・旅行業の9つの分野に分けて取りまとめました。ここでは主に不動産や一般的な移動手段に関する具体例をご紹介します。■不当な差別的取扱い・ 物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行ってはならない (不動産)・ 障害があるということで、乗車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)・ 身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬、介助犬を同伴しているということを理由に車を拒否してはならない(鉄道、バスなど)■合理的配慮・ 障害者の求めに応じて、バリアフリー物件等、障害者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認するよう努める(不動産)・ コミュニケーションボードや筆談により対応を行って対応する(鉄道、バスなど)国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針|国土交通省差別を解消するための仕組み出典 : 差別を確実になくしていくためには、差別が起こらないように対策する仕組みや、何か問題が起きたときに相談を受けたり解決したりする仕組みが必要です。障害者差別解消法では、障害者差別に対応する機関を新たに設置することは定められていません。その代わりに今すでに存在する行政の相談機関などを充実させ、活用することが求められています。さらに地方公共団体は、条例を策定して障害のある方が実際に相談したり、紛争を防止・解決したりするような体制を整えることも期待されています。また、障害による差別で悩む方が、複数の機関の間でたらいまわしにされることがないよう、国や地方公共団体は「障害者差別解消支援地域協議会」を設置することができます。この協議会は障害に関する差別が起きたときに解決のための支援を行う組織であり、現在もさまざまな地域で組織作りが進んでいます。差別的な扱いや合理的配慮の不提供が見られても、それをした人や事業者がただちに罰則を受けるということはありません。ただし、差別が繰り返し行われる場合や、自主的な改善ができないと思われる場合には、その事業者が行う事業を担当している大臣が、事業者に対して報告を求めたり、助言や指導、勧告をしたりできます。なお、求めた報告に対して報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、20万円以下の罰則が科せられる場合もあります。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)|内閣府障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>|内閣府差別のない社会へ・・・出典 : 障害者差別解消法とは、障害がある人の不当な取扱いを禁止し、個々のニーズに合った合理的配慮の提供を求めることによって障害による差別を解消しようとする法律です。教育の分野においては、近年考え方が広まってきたインクルーシブ教育を後押しするような効果も持っており、子ども一人ひとりが「障壁」を感じることなく生きていくために重要な動きとなったと言えるでしょう。この障害者差別解消法が、あらゆる人にとってお互いの違いを認め合い、共に生きていく社会の第一歩となることを願います。障害者の権利条約|特定非営利活動法人(認定NPO法人)DPI日本会議リーフレット「障害者差別解消法がスタートします」|内閣府厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進|厚生労働省障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針|内閣府「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について|独立行政法人福祉医療機構障害を理由とする差別の解消の推進|内閣府障害者基本計画|内閣府障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 (平成 25 年法律第 65 号)障害者差別解消法ってなに?|日本障害フォーラム日本会議/編『合理的配慮、差別的取扱いとは何か ―障害者差別解消法・雇用促進法の使い方― 』2016年解放出版/刊
2016年10月02日我が家の2人の息子は、タイプが正反対!我が家には、ADHDで小1の長男、お調子者で年中の次男と2人の息子たちがいます。ADHDの長男の魅力は、何時間走っても大丈夫な有り余る体力!ズッコケエピソードには欠かせない記憶力の悪さ!好きなものにだけずば抜けて高くなる集中力!色んな部分が枠におさまりきらず、とにかくパワフルです。一方で次男は、適度に疲れつつもオールマイティになんでもこなします。兄が幼稚園で手こずっていた運動会や工作をスムーズに切り抜ける姿に、いちいち私は感動しています。そんな2人の息子たちの魅力が際立つ、ある出来事がありました。どこか呑気なADHDの兄。ある日、宿題をするよう声をかけると…Upload By ラム*カナ長男に宿題を促したときのことです。「はーい」というものの、テレビを見ながら返事をしたので、どうも信用できません(笑)ADHDの特性からか、ひとつのことに集中すると、他のことには目も耳も向かなくなるんです。その後、テレビは消したものの…やはり「あれ?今なんて言われたんだっけ?」「ぼく次に何すればいいんだっけ?」という状態に。お兄ちゃんが困っている…すかさず助けてくれたのは弟Upload By ラム*カナなんと次男は、何気ない母の声を聞き取り宿題を用意してくれたのです!しかも普段の様子から宿題事情を把握しているのか、毎日の宿題にある「音読」で使う国語の教科書を手渡してくれました。これには私もびっくり!ケンカもするけど、とにかくお互いが大好きな仲良し兄弟出典 : 普段から、よく遊びよくケンカする2人。感情的になりやすい長男に振り回されることも多々あり、次男は理不尽に泣かされたりもします(汗)でも、やっぱりお互いが大好きなんですよね。次男は、自分にはないパワフルさを持つお兄ちゃんのことをいつも尊敬のまなざしで見ていて、なんでもマネをして、マネしきれずケガをして…(笑)そして長男が落ち込んでいるときは一番オロオロしています。一方長男は、国語のノートに「おとうととあそぶことがいちばんたのしい」と書いてくるくらい弟が好きで、弟が叱られているときは、一生懸命フォローしています。まだまだ小さい子どもなのに、自然に助け合っていることが私はとても嬉しく、そして私の力にもなります。これからも、お互いの良いところは高め合い、苦手なところは補い合い…そういう兄弟になってくれたらいいな。そんなことを強く願う私なのでした。
2016年10月01日アスペルガー症候群って?出典 : アスペルガー症候群(AS)とは、・コミュニケーションの問題・対人関係の問題・限定された物事へのこだわり・興味の3つの症状がみられる脳の機能障害であり、発達障害の1つです。知的障害や言葉の発達の遅れがないため、障害と認知されづらく、本人が生きづらい思いをしたり周りが理解に苦しんだりすることが少なくありません。アスペルガー症候群は約4000人に1人の割合で発症するとも言われていますが、本人や家族に自覚がない場合も含めると、その数はもっと多いと考えられます。では、アスペルガー症候群のある大人は仕事をしてどんなことに困っているのでしょうか?アスペルガー症候群の人が仕事で困りやすい10のポイント出典 : 普通の人が理解できる会話であっても、アスペルガー症候群の人は言葉の意味が読み取れず、理解できないことがあります。「これ」「それ」「あそこ」といった代名詞や比喩、あいまいな表現が苦手です。また、指示が分からず質問しようとしても「何が分かっていないのか」「何をどのように質問したらいいのか」が分からず、固まってしまうこともあります。きちんと指示されれば自分で仕事をこなすことができますが、いわゆる「気を利かせる」という暗黙の了解のようなものを理解するのが苦手です。他の人が忙しそうにしていても手伝おうとしなかったり、共同作業に参加しなかったりします。アスペルガー症候群の人は人の気持ちに共感したり、想像したりすることが苦手な傾向があります。相手の容貌の変化などについて「太ったね」と率直に口にしたり、上司のミスを見逃せず面と向かって注意してしまいます。そのため、職場でのコミュニケーションがうまくいかずに、自分でもよく分からないまま周囲から孤立してしまうことがあります。アスペルガー症候群の人は、相手との心理的な距離感を適切に取ることが苦手で、自分で気付かないうちに相手を不快な思いにさせてしまうことがあります。相手の立場に応じて自分の態度や言葉遣いを変えにくく、上司に向かってなれなれしい態度をとったり、逆に家族や親しい人に対して丁寧すぎる言葉づかいをすることがあるようです。相手の表情や口調から、その言葉が本音か建前かを察することが苦手です。「今度遊びにおいでよ」「今度誘うよ」といった言葉のはずみの口約束を文字通り真に受けてしまうことがあります。また、皮肉っぽい叱り方をしても通じないことがあります。わたしの弟はアスペルガーですが、学校で教師に「やる気がないなら帰れ」と言われ、はいわかりましたと頷いて帰りました。アスペルガーの人は、コミュニケーション障害があるので、言葉を額面通りに受け取ってしまうことが多々あります。言葉の裏にある真意を読み取ることは大変困難です。作業の一部分にこだわってしまい、それに熱中しすぎて他のことに手をつけられないことがあります。その結果、仕事の中でも些細なことが気になって自分が納得いくまでやり直し続けるので、納期に間に合わなくなってしまうこともあります。規則性を好むため、計画的に行動を行うことは比較的得意です。しかし、急なスケジュール変更やハプニングに対応することが難しい傾向があります。たとえば定例会議が都合で中止になると、その時間何をしたら良いかが分からず混乱してしまうこともあります。今やっている仕事の途中で他の仕事を頼まれたり、一度に複数のタスクがあると混乱してどうしたらよいか分からなくなってしまうことがあります。決まった手順で黙々と作業をするのが好きで、書類の細かな不備等を見つけるのは得意な方です。しかしルールが複雑(コロコロ変わる)だったり、集中している時に他の作業が入ってくるとグチャグチャになります。モノに対して強い好みを持つことが多く、モノを捨てることを極度に嫌がることがあるため、整理整頓が苦手な場合があります。また、散らかっている状態にしか見えない状態でも、本人とっては規則性があり、何がどこにあるかは分かっていることが多いです。アスペルガー症候群の人は、「ワーキングメモリー」といわれる短期記憶機能が弱いため、人の顔を覚えることが苦手な場合があります。何回か会っているのに「はじめまして」と挨拶をするなど、会社で取引先などの外部の人とかかわるときに支障が出ることがあります。私も、人の顔と名前がなかなか覚えられません。なので、職場などでも人の名前はわざわざ自分から聞かないようにしています。きいてもおぼえられないのに、きいてしまうと名前で呼ばなければいけなくなるので…。名前呼ばなくても「すいません、⚪︎⚪︎どうします?」みたいな聞き方で相手も、まさか自分の名前をおぼえていないとか気付かないし、気にしてないと思います。私の場合は、接する機会が多ければ覚えていけるのですが、覚える必要性を感じた時はメモですね。メモにどこの席に座っている、こういう人(似顔絵を描く)雰囲気、声の高さなど。あと、手帳の会った日付けのところに記入したりします。いつ、どこで会ってどんな話をした誰なのかを。顔と名前より、どこでその人と会って、どういう話をしたかの方が覚えやすいので。会社にアスペルガー症候群の人がいたら、周りはどうすればいい?アスペルガー症候群の診断がなくても、仕事をするうえでこのような傾向がある方はもしかしたら多いかもしれません。そんなとき、周りはどう対応すれば良いのでしょうか。出典 : あいまいな指示では何をすればいいか分からなくなってしまうため、「○○さんの書類整理を15分手伝ってほしい」というように、できるだけ具体的に指示すると良いでしょう。「ちょっと」や「すぐに」といった言葉もどの程度を指すのか良く分からないことがあるので、「5分間」「3時までに」というように時間をはっきりさせることも大切です。また、一度に多くの仕事を頼むのではなく、一つの仕事が終わってから依頼すると、本人の混乱が少なくなります。アスペルガー症候群の人は、耳から聴いた情報よりも目から入った情報のほうが処理しやすい傾向にあります。仕事を予定通りに進められない場合、スケジュールを視覚的に把握しやすい場所に置いたり、朝起きてからの準備をルーティンワークにして紙に書いて予定通りにできるか実行してみることが有効です。本人が障害を自覚しており、また会社にも障害を報告している場合は、どんなことが苦手でどのようなサポートが必要なのか、本人と相談し合うのも一つの方法です。本人も周りの理解を得ることで仕事がしやすくなり、悩みを相談しやすくなります。一方で、特にADHDであると共有されていない場合は、診断の有無を本人に聞くのはなかなか難しいですよね。まずは「どうすれば◯◯さんは仕事がしやすくなりそう?」と一声かけて、お互いの業務がきちんと完了する方法をさがしてみるのも良いでしょう。「アスペルガーだと仕事ができない」というわけではない出典 : アスペルガー症候群と一口にいっても、その症状は十人十色で様々で、全員がこの特徴に当てはまるわけではありません。また、本人に適した仕事内容、職場や本人との共通認識があれば、障害を感じることなく仕事することは可能です。周りのサポートはもちろん大切ですが、本人も自分の特性を理解し、対処法を考えることが大切です。特にアスペルガー症候群の人は、自分の関心に応じた知識を掘り下げ、専門性を高めていくことが得意です。興味のあるものはとことん突き詰める特性があるので、そういった分野ではかなりの集中力を発揮します。本人が自分の特性を理解し、周りもうまく障害とつきあいながら仕事をすることで、本人も周りも気持ち良く仕事ができるのではないでしょうか。
2016年10月01日お箸が正く持てなかった子どもの頃、でも何も不自由はなかったUpload By モンズースー私は今でも気を抜くと、正しく箸を持てないことがあり、ご年配の方に指摘されることがあります。今では、正しい持ち方をしないと恥ずかしい、というのは充分理解していますが、正直「持てればどんな持ち方でもいいのでは?」と思っています。だってこれは誰かを傷つけるわけでも、危険なわけでもないルールだからです。「親が恥をかく」という部分では、人を巻き込んでいるかもしれませんが、絶対に必要なルールだとは思っていません。そんな私が持ち方を本気で直したい!と思ったのは、あるテレビ番組がきっかけだったUpload By モンズースー私のやる気に火をつけたのは、自分でも意外なのですが、テレビで見た旅番組でした。海外の日本食レストランの様子を写した際、箸を持つ習慣の無い国の方たちが、全員正しく箸を持っていたのです。なぜかそのことが、小学生だった私をとても悔しい気持ちにさせました。親もあきらめ、意地になって練習しなかった正しい箸の持ち方を、この時初めて自分から練習しました。そうしたら、思ったより簡単に正しい持ち方が身につき、できるようになったのです。人から言われてもできないけど、自分から行動することで、できることもあるのだと思います。なので、発達の遅い不器用な子どもたちを前に、焦って空回りすることばかりではありますが、いつか自分からやる気を出してくれるかも…なんて、少し期待もしています。
2016年09月30日徐々におかしくなっていった夫婦関係出典 : 我が家は母子家庭です。離婚したのは、娘が保育所へ通っているとき。離婚に至るまでの期間は多感な娘にとっても、とても辛い時間でした。私たち夫婦は娘が生まれた頃から、徐々に価値観の相違が大きくなり、家庭内は険悪な雰囲気になっていきました。そして、「娘が私たちを見て、これが家庭というもの、と思われるくらいなら」と、本気で離婚を考えるようになりました。その後、娘が4歳のときに、1度目の別居に踏み切りました。幼い娘は、別居を始める前から、敏感に家庭の雰囲気を感じ取っていたようです。「パパにはもう会えないの?」「私なら優しい男と結婚したい。女の子と結婚したい。」と言い、家では私にべったり。保育所でも先生に甘えて泣くことが増えていきました。保育所には随分前から家庭不和のことで先生に相談していましたので、別居のことも報告しておきました。すると、先生からこんな報告を受けたのです。「別居された時期から、私たちにくっついて娘さんはお友達と遊べなくなってきました。給食もあまり食べません。娘さんは神経が細く今にも倒れそうな状態です。もう限界だと思うので、平日にあえて娘さんのために休みをとってあげて下さい。」実家では気丈にふるまっていた娘が、まさかそんな状態だったとは気付けず、そのときは先生たちの細やかな見守りに心から感謝しました。別居をやめて家に戻るも、努力はむなしく…。すると、娘のストレスは限界へ出典 : 子どものことを思い、1度は自宅に戻りこれまで通りに暮らしてはみたものの、やはり夫婦関係は修復できませんでした。娘は体調を壊したり、おねしょをするようになったりと、心も体も辛そうでした。そして娘が5歳の夏、私は「もう戻らない」という覚悟で娘と共に実家に帰ったのでした。そのときは「パパとママは仲が悪くなってしまって、もう一緒に暮らせなくなったの。でもそれはパパとママが悪い。あなたは何も悪くない。」とハッキリと伝えました。娘は、パパとママと3人で暮らしたい、と泣いていました。そこから離婚交渉に入ったのですが、この時期が私たち母娘にとって1番辛い時期となりました。娘は今でも「あのとき、電話で大ゲンカしているお母さんを見て、机の下に潜り込んで泣いたことは忘れない」と言います。当時、娘の体調は最悪でした。「胸とお腹が痛い、吐きそう。保育所いきたくない。」と泣くので小児科で診てもらうものの、「心電図は問題ありません。精神的なものでしょう。チックも出ています」とだけ言われました。離婚が成立したことを報告すると、娘は「私は悲しい。ママは悲しくないの?」と言うのです。「ママも悲しいよ。どうしてこんなことになったんだろうと思うよ」と正直に話したことを覚えています。離婚が成立し、取り残されたように感じた娘。カウンセラーの勧めで児童相談所へ出典 : その頃から、娘に奇妙な行動がみられるようになりました。人形を使った不自然な遊びを毎日提案してくるのです。それは、子どもたちが「寒い、寒い」と言っているのに母は「暑いよ」と言って聞き入れてくれない、というストーリーのごっこ遊びでした。毎日その母親役を私に強要。これが1ケ月以上続き、心配になった私は自分のカウンセラーに相談し、娘のプレイセラピーをお願いすることにしました。カウンセラーに分析結果を聞くと「劇の意味は簡単。私は辛いのにママは辛くないの?ってことですよ」と言われました。そして児童相談所に相談するよう、アドバイスされたのです。児童相談所では、発達診断を受け、私は別室で話を聞いてもらいました。結果、発達に問題はないが様子が気になるということで、月2回プレイセラピー、私はカウンセリングを受けることになりました。支えてくれる人が増えたおかげか、離婚のショックからようやく、私も娘も落ち着きを取り戻していったのでした。自分の人生の辛さを、子どものせいには決してしたくなかった出典 : 今でも、娘には辛い体験をさせてしまった、と思っています。ずっと一緒だと思っていた家族がいなくなることは、子どもにとって本当にショックなことです。事実、娘は「自分も捨てられるのではないか」と怯えていました。ですが私は「あなたがいたせいで、別れられなかった」と言う親には、なりたくなかったのです。「ママはあなたのことを絶対に見捨てない。離れない。」ということを伝え続けました。こんな時は、とことん子どもに寄り添い、人の手もどんどん借りて、共倒れにならないことが大事だと思います。親には親の人生があります。いくら子どもには酷なことであろうと、辛い選択をせざるを得ないときもあることでしょう。自分の人生は、自分にしか生きられませんから。将来、もし娘に離婚したことを責められても、私はすべての責任を負って生きていきます。そして親子といえども、立ち入ることができないことがあるのだと教えます。もし同じような境遇の人がいるならば、辛いことも多いけど、親子で笑って過ごせる日が必ず来きます…と伝えたいです。
2016年09月30日喃語(なんご)とは?出典 : 喃語とは、赤ちゃんが言葉を覚える前に発する、意味を伴わない声のことを指します。「なむ」「ばばば」「だだだ」など、口や舌を使うことで出すことのできる声で、2つ以上の音がつながっているものです。赤ちゃんは、喉から出す音を変化させたり、違った音声を組み合わせたり、繰り返したりしながら、それを自分で聞いて楽しんでいます。一人でいるときにも、自発的に声を出すことが多くなるので「声遊び」をしていると考えられています。最初は「あう」、「まん」など短い喃語しか発することのできなかった赤ちゃんは、この「声遊び」をしていく中で、だんだんと「あぶぶぶ」「あむあむ」「んまんまんまんま」など長い喃語を発する機会が増えてきます。喃語が出るときには、新生児期のときよりも体の動きが活発となります。リズミカルに上下に手を動かすバンギング(bangging)が、機嫌のよいときに出るようになり、また顔の表情も豊かになってきます。そして、だんだんと手足を動かしながら、喃語を発することが増え、発声そのものが思いや感情を伝える「道具」としての役割をもつようになってきます。これまで泣くことでしか気持ちを伝えることのできなかった赤ちゃんは、喃語を発することも大好きな養育者と関わるためのひとつの方法であることがわかるようになります。それまでは大人の働きかけに受け身で反応するだけだった赤ちゃんが、自ら相手に対して働きかける、コミュニケーションの主人公に生まれかわろうとしているときであるといえます。赤ちゃんの喃語が出てきたときには、相槌をうったり、声をかけてあげたりと応答的に返事をしてあげましょう。相手と「通じ合っている」喜びや心地よさを体験することで、赤ちゃんはやりとりをすることに対して前向きな気持ちをもつことができます。赤ちゃんがよく育つためには、大人とのコミュニケーションが欠かせません。喃語はいつからいつまで?子どもの言葉の育ちのステップ出典 : 赤ちゃんが私たち大人のように、言葉を使いコミュニケーションをとることができるまでにはどのようなステップがあるのでしょうか。ここでは、赤ちゃんの言葉が育っていくステップについてご紹介します。Upload By 発達障害のキホン①泣く生まれてきてすぐの頃には、赤ちゃんは空腹や排泄などの不快な状態を表すために泣きますが、これは体の内部の不快な状態を表しただけで、特に養育者に向かって訴えたものではありません。②クーイング生後間もなくは、泣くことでしか自身の身体の状態を示すことのできなかった赤ちゃんはやがて、「くー」や「あー」などの、柔らかい声を出すようになります。これは、赤ちゃんが「心地よい」「気持ちよい」と感じるときに多く発する声でクーイングと呼ばれています。クーイングは、だいたい生後2ヶ月頃に見られます。音を作る器官が少しずつ育ってきている証拠です。③喃語そして、骨格が整い、口の奥にある音を作る器官が成長することにより、「あう」「あむ」や「ばぶ」などの、2つ以上の音のある声である喃語を発するようになります。やがて、8~9ヶ月頃を過ぎると、周りの人や自分が発した音声が、意味のあるものとして取り入れられてきます。また音の調節と発声、肺から出る空気のコントロールができるようになり、発する喃語の発音もはっきりしてきます。④指さし喃語が出るようになってから、3~4ヶ月くらいが経つ頃には、徐々に喃語は少なくなり、その代わりに指さし、身ぶり手ぶりが増えていき、嬉しい、楽しいなど自分の気持ちを伝えられるようになってきます。この時期になると、言葉を話す一歩手前だといえます。⑤一語文、やがて二語文へそして、ある特定の音声(マンマならマとンとマという音の組み合わせ)が、どの人にとってもほぼ共通するモノと結びついていくことがわかり、一語文という意味をもった言葉になります。一語文が喃語と異なるのは、意味のともなう言葉であるという点です。例えば、「犬」という意味をともなった「わんわん」、「ご飯」という意味をともなった「まんま」などです。言葉は、子どもが伝えたい事柄に対して、大人がそのものの名前を伝えていくことにより獲得されていきます。「まんま、ちょうだい」などの二語文が出るのは、一語文が出るようになってから、6~8ヶ月経過した頃です。最初のうちは片言でしか話すことができないですが、徐々にはっきりと話すことができるようになってきます。池川明 /監修『はじめてママの妊娠・出産・育児ブック』2010年/日東書院/刊喃語がなかなか出ない……。原因は?出典 : 母子手帳やインターネットや書籍には、月齢ごとの赤ちゃんの発達について沢山の情報が溢れています。子育てをする中で、そのような情報と比較して、不安になることがあるかもしれません。しかし、体重や身長、運動能力などと同じように、言葉の育ちのスピードは、赤ちゃん一人ひとり異なります。赤ちゃんの育ちにおいて、「この時期にこれこれができるようになる」という基準は非常に曖昧なものです。喃語も、おおよそ生後5~6ヶ月に出るという基準はあるものの、赤ちゃんによって生後6ヶ月よりも早く喃語の出る赤ちゃんもいれば、1歳頃になってから喃語が出る子もいます。赤ちゃんが喃語を発するまでには、体や心の中でいくつかの準備が行われ、整えられていく過程があります。一つは聴覚や、喉の筋肉、運動機能の発達などの身体的な基礎の発達です。二つ目は、社会的な基礎の発達です。例えば、養育者にあやしてもらえることが嬉しくて微笑みを返すなど赤ちゃんと養育者がお互いにやりとりを行っているという関係性の基盤が出来ていることが重要です。赤ちゃんの喃語が出ない要因には、以下のようなものが考えられます。人が声を発するためには、咽頭部という喉の奥のスペースが必要ですが、下顎や喉を包んでいる骨格が未成熟な場合には、その空間が狭いために、2つ以上の音からなる喃語を発することはできません。またその他に、2つ以上の音から喃語を発するためには、はじめに吐き出す空気の量をコントロールしてセーブしつつ、声を出すために必要な声門という部分を閉じたり開いたりする機能が整っている必要があります。赤ちゃんの骨格がまだ成熟していなかったり、声門の開閉機能が整っていないなど、身体的な基礎が未発達であるために、喃語が出ない可能性があります。言葉の獲得は、音を聞くことから始まります。赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいるときに耳の機能ができあがり、お腹の外の音を聞くことができるようになります。赤ちゃんが自発的に喃語を発するためには、聴覚の機能が整っている必要があります。周囲の大人の声や、環境音、自分の出した声を耳で聞き取ることにより、喃語は促されていきます。厳密には、聴覚に障害のある赤ちゃんも「あー」「うー」などのクーイングの音声は出ます。ですが、自分の出した声を聞き取ることができないと、自分が発声しているという感覚が薄まってしまい、次第に喃語を発することが少なくなってきます。赤ちゃんが喃語を発声しない原因のひとつとして、赤ちゃんと養育者の間にコミュニケーションをとる関係が築けていないということが考えられます。赤ちゃんは、養育者からお乳をもらったり、泣いているときにはあやしてもらったり、またクーイングの声をあげたら反応をしてくれたりと、お世話をしてもらう中で、養育者に対する信頼感を築いていきます。養育者のやさしげな表情や声、匂いなどの養育者の情報が赤ちゃんの頭の中に記憶され、「いつもの養育者=よい気持ちにさせてくれる大切な人である」と、なんとなくわかるようになります。赤ちゃんの養育過程では、養育者があやして赤ちゃんが笑顔で応える、そして、その笑顔に養育者がまた応えてあげるというやり取りが繰り返されます。他にも、「養育者が視線を合わせる⇒赤ちゃんも視線を返す」といった視線のやり取りもよく行われます。こうした養育者と双方向的なやり取りの繰り返しは、赤ちゃんにとって非常に心地のよいものです。こうした体験の積み重ねが、相手とコミュニケーションを交わし、再び心地よい気持ちを味わいたいという動機を引き出し、赤ちゃんの喃語を促します。心地よい気持ちの体験が積み重ねられていないときには、赤ちゃんの中にやりとりを行おうとする気持ちが芽生えないために、喃語が出ないということが考えられます。スターン,D.N.小此木啓吾他/著.訳『乳児の対人世界』1989年/岩崎学術出版社/刊秦野悦子/著『①ことばの発達入門』2001年/大修館書店/刊発達障害のある子どもの乳児期の特徴のひとつとして、喃語を含めて、言葉がなかなか出ないという症状があります。発達障害とは、先天性の脳の機能障害です。自閉症スペクトラム障害をはじめとする発達障害のある赤ちゃんは、コミュニケーションや人との関わりを作ることなどの社会的な基盤が育ちにくいという特性があります。人と人とのコミュニケーションは、喃語を含む言葉によるものだけではありません。例えば、養育者と視線を合わせたり、養育者の働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることもコミュニケーションです。養育者との間で視線を交わしたり、働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることが少ないときには、発達に遅れがあることも考えられます。しかし、喃語が出なかったり、養育者とのやり取りを積極的に行うことのない場合にも、その赤ちゃんが必ずしも発達障害であるとは断定できません。乳児期の赤ちゃんの育ちには個人差が大きいため、医師や臨床心理士などの専門家でも発達障害があるかどうか診断を下すことは難しく、診断がおりるのは赤ちゃんの年齢が上がってきてからとなります。喃語や言葉の発達の相談先は?出典 : これまでに何度か述べてきたように、乳児期の赤ちゃんの発達には大きな幅があるため、身体の成長などとともに、喃語が急に出てくることは決して稀なことではありません。しかし、専門家に相談してみることで、療育の機会の提供や、思ってもみなかった子育てに関する情報を得られることもあります。気になることがある場合には、専門機関を訪れてみるとよいでしょう。小児科というと、子どもの風邪や病気の診断、治療をするイメージをもつかもしれませんが、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。より子どもの発達に詳しい専門機関などの情報も持っているので、地元の専門機関を紹介してくれる場合もあります。行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。子育て中の親子が気軽に集い、交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供 することを目的として各地域に設置されています。無料で相談をすることができます。0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認するようにしましょう。乳幼児健診は、各市町村の保健センターなどで行われているもので、赤ちゃんの病気の早期発見や予防と早期発見、そして順調に発達しているかどうかを確認するための検査です。保護者が普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。また、乳幼児健康診査は、同じ月齢期の赤ちゃんを育てる保護者も来ており、子育てを同じくする人と情報交換できる場所でもあるので、上手に活用しましょう。赤ちゃんの育ちが「早い」か「遅い」かは判断できるの?出典 : 育児の中で、よく聞かれるのは「遅いか早いか」というスピードについて心配する声です。ですが、赤ちゃんの育ちを遅いか早いかというスピードだけで捉えるのは不十分です。赤ちゃんの育ちはそれほど単純ではありません。赤ちゃんの育ちは、「順序や方向性」という縦の関係と「他の領域の育ちとのつながり」という横の関係というふたつの軸から理解することが大事です。■縦の関係:順序や方向性子どもは発達していく際、ある一定の順序をたどります。わかりやすいのは、「ハイハイする→立つ→歩く→走る」という順序です。子どもが「走る」ことができるようになるためには、発達の順序をさかのぼって、乳児期に「ハイハイする」状態が達成されていることが大切であることはわかると思います。これが縦の関係です。赤ちゃんの育ちは、同じスピードで進むのではなく、あるとき急に前に進んだり、時にはしばらく停滞する時期があったりと、波があります。ですが、そこには決まった順序と方向性があるのです。■横の関係:他の領域の育ちとのつながりそして横の関係とは、子どもの育ちにおける、さまざまな領域の互いのつながりのことです。ここでいう領域とは、運動発達、他者とのコミュニケーション、言葉の発達などです。喃語が遅れている場合には、そのほかの領域でも遅れが重複してみられるケースがほとんどです。つまり、喃語という「言葉」の領域のことについて考えるとき、赤ちゃんの運動能力の育ちや、情緒面の育ちについて同時に考えることが必要です。ですので、赤ちゃんの育ちに寄りそう際に、喃語の発声のみを促そうとしても、発達を手助けすることにはなりません。喃語が出ないときには、赤ちゃんが発達のどの段階にいるのかどうか把握をして、赤ちゃんの生活全体に対して働きかけていくことが大切になります。お医者さんが教えてくれない発達障害についての疑問 - 自閉症 アスペルガー LD ADHDを含む発達障害児の発達促進の臨床開発研究機関|日米発達障害研究院喃語を引き出すための工夫出典 : 赤ちゃんの喃語が出てくるには、子どもと養育者のコミュニケーションの積み重ねがあります。最初は抱っこをすることによる養育者の体温や匂いを感じることから始まり、また、視線を合わせたり、微笑みがシンクロしたり、音声のトーンを真似したりという、やりとりが生まれ、進展していきます。人とふれあうことの心地よさこそが喃語の発声を促していきます。前の章で、赤ちゃんの生活全体に働きかけることが大切だと記しました。このような考え方をベースとして、喃語を引き出すための工夫についてお伝えいたします。赤ちゃんが喃語を発するためにはある程度の訓練が必要です。赤ちゃんは、喉の筋肉や音を作る器官の成長に伴い、思い通りの音を出すために準備をしている段階です。なので、大人はその準備を支える役割を担ってあげることが大切です。具体的な方法は、赤ちゃんに、口の動きがよく見えるようにゆっくりと、そしてはっきりと話しかけることです。生まれたばかりの赤ちゃんは視力が弱いために、遠くにあるものは見えないので、赤ちゃんの顔の近くで話しかけてあげるとよいでしょう。ある実験によると、母親が赤ちゃんに話しかけるときに特有の、ゆっくりとした抑揚のある少し高めの声は、赤ちゃんの注意を引きつけ、脳を活性化させる効果があると検証されています。このような働きかけを行うことで養育者の口元の動きに引きずられるようにして口を動かして模倣しようとする姿が見られます。また、赤ちゃんが声を出すための準備をお手伝いするために、赤ちゃんを笑わせる方法があります。ここで指している笑いとは、微笑みとは異なり、「キャッキャ」「ハッハッハ」と声をあげて笑うというもので、喃語と同じく2つ以上の音で構成されます。赤ちゃんが喃語を発するためには、息を吐き出すコントロールをすること、喉の奥の空間が広がっていることが必要な要素なのですが、笑うときにはそれらのことが赤ちゃんの体で行われます。よって、赤ちゃんの笑い声を促すことで、自然と喃語を発しやすくなるような赤ちゃんの体づくりをすることができるのです。正高信夫/著 0 歳児の言語習得と四肢運動の発達 2002年/『バイオメカニズム学会誌』Vol.26 ,No.1上記では、赤ちゃんが思い通りに声を出すための工夫についてお伝えしました。こちらでは、その「思い」を引き出すための工夫についてお伝えします。赤ちゃんの表情や行動から、その心を察して気持ちに寄り添い、働きかけを行うことによって、乳児に「通じ合っている」喜びや心地よさを体験させてあげます。具体的な働きかけとは、微笑みを返すことや、「そうなのね」と相槌を打ってあげたり、「気持ちいいのね」と赤ちゃんの気持ちを代弁するような言葉がけをするなど、さまざまなものが挙げられます。赤ちゃんはお母さんをはじめとする養育者からの働きかけによって、心地よい思いを経験します。その経験が積み重なることで、養育者ともっと関わっていきたいと、人とのコミュニケーションに対して強い欲求をもつことができます。このように外界への前向きな意欲をつくりあげていくことと結び合わせながら、子どもは育っていきます。育ちを考えるときに常に立ち返っていく原点は、養育者と赤ちゃんとの心地よいコミュニケーションなのです。加藤ひとみ・大國ゆきの/著 「幼児期の言葉の獲得 〜幼児期の発達特性と幼稚園での教育」2015年/『東京成徳短期大学紀要』48号白石正久/著『発達の扉<上>』1994年/かもがわ出版/刊まとめ出典 : 赤ちゃんの喃語は、言葉を話すまでの大切なステップのひとつです。このコラムでは、赤ちゃんの育ちを捉えるために大切にしたい視点を中心に、喃語が出ない・遅いときの原因や、喃語を引き出すために生活の中でできる工夫や相談先についてお伝えしました。乳児期の赤ちゃんの育ちは、身長や体重のように大きな個人差がありますので、長い目で見守ってあげることが大切です。養育者との心地のよいやりとりが、言葉の育ちを促していきます。赤ちゃんの気持ちに寄り添ってあげながら、一緒に過ごすことのできる時間を味わいたいものですね。
2016年09月30日発達障害のある人が利用できる医療機関の不足は、なぜ起こっているのか出典 : 発達ナビで、新たに医療についての連載をさせていただくことになりました。児童精神科医の吉川徹です。現在は愛知県の障害児者専門病院に勤務しています。皆さんもおそらくはよくご存知のように、発達障害がある子どもや大人が利用できる医療機関は、ほとんどの地域でひどく不足しています。これは一体なぜなのでしょうか。一つにはいわゆる「発達障害」に属する障害、中でも自閉スペクトラム症と注意欠如多動症という障害のある人の数がとても多いことがあります。今までに子どもの心の医療に対象になってきた疾患、あるいは大人の精神医療の対象になってきた疾患と比べても、それを上回る数になっています。国際的に認められたかなり手堅い方法で調べたとき、地域の子どもの中で自閉スペクトラム症と診断できる子どもは一般的に1〜2%程度いると言われています。ところが最近厚生労働省の研究班が報告した数字では、地域によっては小学1年生の子どものうち、5%以上が自閉スペクトラム症の診断を受けているとされていました。また注意欠如多動症(ADHD)も元々とても数の多い障害で、3〜5%以上の子どもがその診断を受ける可能性があるとされています。これは、例えば知的障害を持つ人の数や統合失調症を患う人の数などと比べても、数倍にも及ぶ大きな数字なのです。発達障害の医療にまつわる困難の大半は、この患者数の極端な多さに起因しています。例えて言えば、もともと満員だった電車に今までの3倍の乗客が押し寄せていて、しかもレールが一本しかないので、増発もままならない、そんな状況が日本中で起こっているのです。診療ニーズの拡大に追いつけない原因には、医療機関としての構造的な問題がある出典 : こうした障害は比較的短い期間で広く認知されるようになり、診療のニーズが急速に拡大しました。これに応えるために、厚生労働省でも子どもの心の診療ができる医師の養成のための検討会を開催したり、モデル事業や研修を実施したりしています。平成28年度からは、地域のかかりつけ医を対象とした研修も全国規模で始まろうとしています。専門の医師が集まる学会などでも養成のための取り組みが続けられています。しかし現時点でもニーズの急増に対応できる新たな医師の養成や医療機関の整備は、充分に追いついているとは言えない状況です。まず医療による支援そのものが、他の領域に比べて極めて高コストな構造になっており、専門家の養成や維持には社会に大きな負担がかかることから、供給できる医療の内容や医師の数そのものに厳密な制限がかかっています。そして専門医は促成栽培が難しく、一人一人を手取り足取り教えていく必要があります。そのためそもそも教える立場の医師の数が増えないと、養成できる若手の数も制限されてしまうのです。また、子どもの心の診療自体、構造的に赤字体質であり、なかなか若い医師にとって魅力のある領域になりにくいなど、様々な背景があるのです。本来あるべき支援と、医療信仰とのあいだに存在するギャップ出典 : 残念ながら現在の医療の水準では、種々の発達障害の根本的な治療法は見つかっていません。逆に言えば、根治するために必ず医療を受診しなければならない、という状況ではないのです。これほどの数の多い、発達障害がある子ども達、大人達の支援は、本来は普段の生活の場所、そこから近いところで提供されなければなりません。医療のような日常の暮らしと切り離された場所での対応には、はじめから限界があります。一方で、本人やご家族、他の領域の支援者からはときに医療に対して、万能的、魔術的な期待が寄せられます。また逆に医療領域の支援者には、他の領域の支援者に対する根強い不信があることがあり、良心的な医療者ほどその不信を隠さず、必ず医療機関にかかっておくべきだと主張することもあります。この背景には、そもそも現在の発達障害の概念の多くは医療から出発しており、黎明期である1960年代〜70年代には医療以外の支援が極めて乏しかったこと、現在でも他の領域の支援で支えきれなかったこじれたケースが医療機関を受診する場合が多いことなど、様々な理由があるのですが、現在の視点から見るとそれは不幸なことであると思います。診断の前から支援を行う姿勢が必要。では、本当に「医療は役立たず」なのか?出典 : 例えばいわゆる「学習障害」の場合などでは、地域の一般的な子どもの学力のデータも、多数派の子どもに勉強を教えるノウハウすらも一般的な医療機関にはありません。しかし、最近の診断基準(DSM-5)では、学習障害(限局性学習症)の診断は、何らかの学習の困難に対して、それを対象とした「介入が提供されているにもかかわらず」6ヶ月以上困難が持続している場合に行われるとされています。文部科学省の通知でも診断の前から支援を行うという姿勢がはっきり打ち出されているにも関わらず、なぜか医療機関の受診が支援の前提のように語られることがあるのです。「クリニックからクラスへ」というスローガンにはかなりの説得力がありますね。さて、それでは「医療は役立たずなのか」と問われると、医師の立場としてはやはり「そうではない」と答えたくなります。この連載では医療そのものについての情報よりも、発達障害のあるご本人、ご家族がどのように医療とつきあっていけば、医療のサービスを最大限有効に活用できるのか、そうした観点から考えていきたいと思います。
2016年09月29日自閉症スペクトラム障害とは?出典 : 自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。さらに知的障害や言語障害を伴う場合と伴わない場合があります。また、これらの症状は発達段階、年齢や環境などによって大きく変化するといわれています。自閉症スペクトラム障害と一言で言っても、生活に支障をきたすほど症状が強い方から、症状が軽度で日常生活にほとんど支障なく暮らせる方まで様々です。症状の強弱や、知的障害を伴う・伴わないなどによって十人十色の理解やサポートが必要な障害です。さまざまな議論が交わされていますが、自閉症スペクトラム障害の原因はいまだ特定されていません。しかし、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではないとわかっています。脳機能障害を引き起こすメカニズムとして、遺伝的な要因が原因の一部であると推測されています。何らかの先天的な遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響しあって脳機能の障害が発現するのではないかという説が現在有力とされています。文部科学省では自閉症スペクトラム障害を以下のように定義しています。自閉症スペクトラムとは,自閉的な特徴がある人は,知能障害などそ の他の問題の有無・程度にかかわらず,その状況に応じて支援を必要とし,その点 では自閉症やアスペルガー症候群などと区分しなくてよいという意味と,自閉症や アスペルガー症候群などの広汎性発達障害の下位分類の状態はそれぞれ独立したも のではなく状態像として連続している一つのものと考えることができるという二つ の意味合いが含まれた概念である。したがって,自閉症スペクトラム障害には下位分類がなく,自閉的な特徴のある子供は全て自閉症スペクトラム障害の診断名となる。自閉症スペクトラム障害という診断名ができた経緯出典 : 自閉症スペクトラム障害は、いくつかの自閉症状のある障害が統合されてできた診断名です。自閉症スペクトラム障害という診断名ができた成り立ちについて追ってみましょう。自閉症スペクトラム障害は、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、これまでアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症など様々な診断カテゴリーで記述されていたものを、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合されました。『DSM-5』以前の診断カテゴリーである自閉症やアスペルガー症候群などは、それぞれの症状に違いがあるとされ、それに伴って診断基準も異なるため、独立した障害として考えられてきました。しかし、幼少期にアスペルガー症候群と診断された方が、年齢や環境などの変化によって自閉症と診断されたり、3歳以降になってから自閉症の症状が明確に表出する場合がありました。脳画像の研究ではそれぞれの差異が認められないこともあります。また症状の程度によって生活に支障をきたす方もいれば、ほとんど支障なく生活できる方もいます。さらに支援方法も共通であることが多いため、『DSM-5』では、「連続体」を意味する「スペクトラム」という言葉を用いて障害と障害の間に明確な境界線を設けない考え方が採用されたのです。自閉症スペクトラム障害の症状には多様性があり、連続体として重なり合っているという考え方が、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」という診断名に込められています。これまで自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害と診断されてきた症状も今後は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と診断されることが多くなると考えられますが、今まで同様の障害福祉サービスを受けることができます。また、コミュニケーションの障害はあっても限定的な反復行動の問題がない場合、自閉症スペクトラム障害と診断できない場合もあります。『DSM-5』によって、自閉症スペクトラム障害と判断しきれない場合は、「社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害」の診断名に分類されることになりました。Upload By 発達障害のキホン『障害の兆候もまた、自閉症状の重症度、発達段階、歴年齢によって大きく変化するので、それゆえにスペクトラムという単語で表現される。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)『DSM-IVでは症状の数と程度によって、自閉症障害、Asperger障害、PDD-NOSの順に重症度は軽くなるよう位置づけられたが、これらの下位カテゴリーが量的に違うだけでなく質的にも異なる独立した障害単位であることを支持するに足るエビデンスはないと判断された。』参考書籍:神庭重信/著『DSM-5を読み解く 1 神経発達症群,食行動障害および摂食障害群,排泄症群,秩序破壊的・衝動制御・素行症群,自殺関連』(中山書店,2014)また以前は、自閉症、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害に含まれる障害群とADHD(注意欠陥・多動性障害)は、併存することがない障害だと言われてきました。しかし自閉症スペクトラム障害がある方々の約70%が少なくとも1つ以上の精神医学的障害を合併しているという研究結果に基づき、『DSM-5』においては、障害の併存が認められました。自閉症スペクトラム障害の診断基準って?出典 : 自閉症スペクトラム障害に統合された自閉症やアスペルガー症候群は『DSM-5』以前は、「広汎性発達障害」という診断カテゴリーの中に属していました。広汎性発達障害には「3つ組の障害」と呼ばれる「社会性の障害」、「コミュニケーションの障害」、「限定的な行動・興味・反復行動」の3つの領域が存在していました。しかし、『DSM-5』によって広汎性発達障害という診断カテゴリーは廃止され「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」では「3つ組の障害」のうち、「社会性の障害」と「コミュニケーションの障害」は1つにまとめられます。その結果、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」では、診断基準は「社会的コミュニケーション」と「限定的な行動・興味・反復行動」の2領域に統合・再編されました。また、これまでは3歳以前の発症が診断基準に規定されていましたが、自閉症スペクトラム障害では年齢の規定が緩められ、成人になってからの発症も診断基準として許容されることになりました。以下に、『DSM-5』における診断基準を紹介します。自閉症スペクトラム障害と診断するためには、「社会的コミュニケーション」領域のもとに分類される3項目すべてを満たしつつ、「限定的な行動・興味・反復行動」領域の4項目中2項目の合わせて5項目を最低限満たす必要があります。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)自閉症スペクトラム障害の年齢ごとの特徴出典 : 自閉症スペクトラム障害の症状は成長とともに変化していきます。症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、症状の現れ方は人によって異なります。この特徴がみられるようになるのは、生後約2ヶ月から2歳前後が最も多いといわれています。発達の遅れが顕著にみられる場合は12ヶ月よりも早く、軽度であれば2歳を過ぎてから特徴が表出するといわれています。自閉症スペクトラム障害は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症スペクトラム障害の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。■周囲にあまり興味を持たない傾向がある視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。定型発達の子が興味をあるものを指で指して示すのに対し、自閉症スペクトラム障害がある子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。■コミュニケーションを取るのが困難知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害がある子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子が友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症スペクトラム障害がある子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。■強いこだわりを持つ興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においてあらゆるこだわりを持っていることが多いので、ものごとの手順が変わると混乱してしまうことが多いです。■集団になじむのが難しい年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本的に1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。■臨機応変に対応するのが苦手きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。■どのように・なぜといった説明が苦手言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため説明がうまくできないこともあります。■不自然な喋り方をする抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。■雑談が苦手目的の無い会話をするのを難しく感じる人が多いです。■興味のあるものにはとことん没頭する自閉症スペクトラム障害の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)自閉症スペクトラム障害かもと思ったら、どこに相談したらいい?出典 : 自閉症スペクトラム障害の診断基準に当てはまり、自閉症スペクトラム障害の傾向があるかも?と思っても、いきなり医療機関を受診するのはハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。また、特に日常生活にも支障がない場合だと、誰にも相談せずに医療機関を受診するまでには踏み切れないこともあるでしょう。しかし、適切なサポートを受けなければ、本人にも周囲の方にも負担をかけてしまいがちです。自閉症スペクトラム障害の対人関係のトラブルなどは、障害への理解がない状態ではなかなか修復が難しかったり、本人が自分を責めてしまったりなど、状況が悪化してしまう場合もあります。専門機関への相談を事前に行うことで、そのような状態が起こらないようにできる限りのサポートを受けることができるかもしれません。たとえトラブルがあったとしても、上手く乗り越えていけるフォロー体制を家族以外の専門家も交えてつくっていけます。「いきなり医療機関を受診するのは抵抗がある」という方は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。早めに相談し、自閉症スペクトラム障害に対して正しい知識を得るのは重要です。家族で試行錯誤をして対処法を見つけていくよりも、専門機関に相談し色々な方法を教えてもらった方が、時間もかかりませんし、ストレスも少なくすみます。必要であれば医療機関を紹介してもらうこともできます。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など身近な相談センターに行って相談し、自閉症スペクトラム障害の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談に乗ってもらえます。自閉症スペクトラム障害を含む発達障害の専門の医療機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者総合支援法などの施行によって年々増加はしています。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科などで診断がなされます。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられるところもあります。下記の参考リンクには全国の発達障害専門の小児科がリストアップされています。受診の際の参考にしてみてください。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」自閉症スペクトラム障害はどうやって診断されるの?出典 : 自閉症スペクトラム障害の診断は、本人の年齢や状態によって検査のボリュームは変化します。また総合的に問診や検査の結果を受けて自閉症スペクトラム障害の診断をしています。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、行動観察と生育歴について聞き取りを行います。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。■生育歴産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。自閉症スペクトラム障害について、より専門的な診断を行う場合には以下の検査が用いられることが多いです。■ADOS(エイドス)検査用具や質問項目を用いて、自閉症スペクトラム障害(ASD)の評価に関連する行動を観察するアセスメントです。発話のない乳幼児から成人の方まで、幅広く対応しています。■ADI-R対象者の行動の系統や詳細な特徴を捉える検査です。精神年齢が2歳0ヶ月以上であれば、幼児から成人まで、幅広い年代に対応しています。社会性、対人コミュニケーションや限定的な行動・興味・反復運動などに焦点を当てて構成されています。■PARS-TR自閉症スペクトラム障害がある方の特性理解を深め、一人ひとりに合った支援を可能にしていくために、日常の行動の視点から簡単に評価できるアセスメントです。対人、コミュニケーション、こだわり、常同行動、困難性、過敏性の評価項目をもち、全57項目から構成されています。自閉症スペクトラム障害には知的障害、てんかん、感覚過敏、鈍麻などの合併症を伴う場合があります。合併する障害があるかアセスメントを行ったうえで検査する場合が多いです。■知能検査知能検査は心理検査のひとつであり、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。最近では、ウェクスラー式知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などがよく使われています。■脳波検査自閉症スペクトラム障害はてんかんとの合併症を伴っている場合があるため、CTやMRIといった脳波検査を行ういます。自閉症スペクトラム障害の子どもの場合は狭い空間に入るとパニックになることもあるので、検査をする際には注意が必要です。■感覚プロファイル自閉症スペクトラム障害をはじめ、発達障害の人たちの感覚特性を客観的に把握するためによく使われている尺度です。質問票は保護者と本人が記入し、聴覚、視覚、触覚、口腔感覚など、幅広い感覚に関する125項目で構成されています。■Vineland(バインランド:社会生活能力検査)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。また、精神疾患との合併症の疑いがみられる方には精神病に関する検査を行う場合があります。「自閉症スペクトラム指数(以下AQ)」という評価尺度があります。AQは50項目の設問に本人が答えていきます。数値が高いほど自閉症スペクトラム障害の傾向が強いといわれています。しかし、AQが高いから低いからといって自閉症スペクトラム障害がある・ないと断定できるわけではありません。あくまで、本人の一人称的な視点から評価された指標であり、他者からは違った印象を持たれている可能性もあります。あくまで参考として捉えて、社会生活に大きな困難がある場合には専門機関への相談を行い、医療機関で診断してもらうことをおすすめします。自閉症スペクトラム障害は治せるの?出典 : 自閉症スペクトラム障害を根本的な治療法や手術といった医学的な方法は確立していません。しかし、早期からの療育や環境調整などを行うことで症状を緩和したり困りごとを軽減することができます。教育・療育によるアプローチで本人が困難への対応法を学んだり、保護者や家族が困難を未然に防ぐためのフォローなどを学び、お互いに生きやすい環境をつくっていくことが可能です。また、てんかん等の合併症を緩和させる薬が処方されることがあります。これは自閉症スペクトラム障害そのものを治すための薬ではなく、不安障害を抑える薬やパニックを抑える薬など、あくまで症状や合併症を緩和するためのものです。■ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis/応用行動分析)人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用していく理論と実践の体系です。自閉症スペクトラム障害に対する療育だけでなく他の障害や教育、福祉、医療、スポーツ分野でも利用されています。■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)米国ノースカロライナ州で生まれた、自閉症スペクトラム障害の当事者とその家族を障害支援する総合的なプログラムです。■PECS(ペックス、Picture Exchange Communication System)絵カードを使ったコミュニケーション援助プログラムです。上記のABAの原理に基づいて作成されています。■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニングの総称です。■ペアレントトレーニング保護者の方々が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する、保護者向けのプログラムです。■ピア・カウンセリング似た立場の親同士の横の関係をつくり、対等な立場から意見や情報を交換、正しい行動の選択についてみんなで考え、ペアレントトレーニングの一部に設けられている場合が多いです。■メンタリング「ペアレント・メンター」と呼ばれる発達障害がある子どもの子育て経験がある方が先輩として、初めて発達障害と向き合う親の相談やアドバイスに応えています。薬物療法は医師の指示のもと用法や用量を守って服用していかなくてはいけません。薬に頼り切って多用するのは避けましょう。薬の服用により特徴が緩和されている時には療育や教育の効果も上がりやすくなるとも言われています。以下が使われることの多い薬です。■非定型抗精神病薬自閉症スペクトラム障害によってみられる攻撃性、興奮、自傷およびチック(身体が勝手に動くこと)に使用されます。ただし、保険適応外使用になります。■SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬こだわり行動、うつ、不安障害などに使用されます。■抗不安薬、SSRI、ベンゾジアセピン系不安、心身症、抑うつ、睡眠障害、緊張、PTSD(フラッシュバック)に使用されます。■ 抗てんかん薬気分変調、躁うつ、てんかん発作、イライラなどに使用されます。■抗ヒスタミン薬不安、睡眠障害に使用されます。自閉症スペクトラム障害の支援をする上で心に留めること出典 : 自閉症スペクトラム障害は早期から療育を行うことで二次障害や二次的問題を予防することができます。また自閉症スペクトラム障害がある子どもを支援する上で大切な考え方をご紹介します。自閉症スペクトラム障害の二次的問題とは、例えば対人関係が上手くいかない理由でいじめの被害を受けてしまったり、不登校・ひきこもりになることや、親や周囲からの期待に応えられずに常に怒られることでストレスが溜まり、うつや不安障害などを引き起こすといった問題です。自閉症スペクトラム障害には特有の発達過程・スタイルがあります。周囲の理解がない状態では、「不器用」「ちょっと変わった人」「無神経な人」「こういう性格なんだ」と理解され、それらによって二次的な問題が発生する場合があります。自閉症スペクトラム障害は、特有の発達過程・スタイルがあります。それを理解しながらサポートしていくことが大切です。例えば「子どもは○歳で○○ができます」という情報が広く一般の方に浸透しています。その情報は大勢の子どもたちを集めた実験研究から統計的に導かれています。あくまで参考程度の統計データのはずが育児本やインターネットに「1歳頃になったらバイバイを教えてみましょう」という書き方をした記事があることで、「子どもは1歳までにバイバイさせなければいけない」と思い込み、いつの間にかノルマにすり替わってしまっている場合があります。しかし自閉症スペクトラム障害特有の発達過程・スタイルがあります。発達の遅れや言動への困難さに悩むこともあるかもしれませんが、サポートする側が障害を正しく理解することが大切です。早期療育の効果は認められていますが、一人ひとりの発達の状態をアセスメントし、本人に合わせた課題を設定することが大切です。トレーニングによって獲得したり支援できることもありますが、困難な場合もあります。個々の障害のレベルや発達に応じた環境調整や支援グッズの活用も合わせて考えていく方がいいでしょう。まとめ出典 : 自閉症スペクトラム障害は自閉症関連の障害が統合された『DSM-5』における診断カテゴリーです。共通した症状があり、またその症状は発達段階や年齢、時には環境によって変化するため自閉症スペクトラム障害の診断名のもとに統合されました。よって、検査の結果や診断名も年齢やその時の状況によって変化する場合があります。周囲の方はその時々の本人の状態に合わせて接していくことが大切です。自閉症スペクトラム障害はその発達過程やスタイルが特有なものといわれています。これまでは、障害がある方が定型発達を基準として合わせていくような考え方がありました。ですが、発達に優劣をつけることはできません。本来ならば定型発達の方と比べるのではなく、障害の特性・個性に焦点を当て、理解し合うことでお互いにリスペクトし合った関係性がつくれるはずです。そのためにも、自閉症スペクトラム障害の特性を理解することが大切な一歩につながるのではないでしょうか。
2016年09月29日19名もの尊い命が失われた相模原障害者施設殺傷事件出典 : 先日のこの事件は、日本社会に大きな衝撃を与えました。犠牲者の数の多さもさることながら、犯行の動機が世間の注目を集めた理由の一つでもあります。報道によれば、犯人は「意思疎通ができない重度の障害者は生きていてもしょうがない」ので障害者福祉は「税金の無駄」であり「障害者に使うお金をなくし、世界にお金が回るようにしたい」などと供述したとされています。この動機に対して、「人間の尊厳を否定するもので許せない」と憤る人もいる一方、一部のネットユーザーのなかには「やったことはよくないが犯人の論には一理ある」と理解を示す者もいます。この両極端ともいえる二つの考え方は水と油のように相容れないものなのでしょうか。この事件の本質的な社会の課題は何か出典 : 今回の事件を「おかしな考えを持った人間」が起こした、福祉に対する「テロ行為」だとみなしては問題の本質を見誤ることになるでしょう。実際、事件を受けて安倍内閣は措置入院制度の見直しをスタートさせ、神奈川県は障害者施設の防犯を強化すると発表しています。おそらく、「おかしな考えを持った人間」を簡単に社会に戻さないようにし、そうした人間が簡単に施設に入れないようにするという防止策なのでしょう。しかし、この方策は自己矛盾を抱えています。なぜなら「おかしな考えを持った人間」を病院に隔離し社会から遠ざければ、新たな「生きていてもしょうがない人」を作り出すことに繋がる、という見方ができるからです。私たちがいま最も注意しなければならないことは、「税金のお世話になっている人間は世の中から消えても良い」という“現代版・優生思想”が、世論として市民権を得ることであると考えます。「優生思想」「排除の論理」が市民権を得ていく背景には、経済苦がある出典 : はっきりと申しあげるなら優生思想的な考えの持ち主は、どのような世の中にも一定程度は存在するとも言えます。しかし、それが市民権を得るかどうかは、社会の環境に依存するものです。たとえば、悪名高い“優生政策”を掲げたナチス・ドイツを考えてみましょう。第一次大戦後のドイツは、巨額の賠償金を負わされて苦しい経済状況にありました。その状況からの脱却を望むドイツ国民のなかで、ナチスは次第に勢力を増していきました。このように経済的苦境というのは、排除の論理に“正当性”を与えることがあるのです。人間社会において、こうした事例はいくらでも観察できます。イギリスのEU離脱も国民投票で決まったものですが、失業者の増加に業を煮やした市民による移民排斥運動がその背景にあるとされていますし、アメリカで“排除の論理”を振りかざすトランプ氏が共和党の大統領候補に選ばれたのも経済の停滞がその原因になっていると考えられます。経済苦や孤独は、社会との接点を失うきっかけになる出典 : これと同じことは、障害者福祉という分野にも十分にあてはまるのです。私たちの社会の“余裕のなさ”は、障害のある方への配慮の本質を失わせる理由の1つになりうると考えます。身近な例で言えば、同じ電車でも昼間の空いている時間帯に車椅子の乗客がいても誰も文句は言わず場所を譲るでしょう。しかし、朝夕の通勤時間帯であればそうはいかない。「こんな混雑時に車椅子で乗ってくるな」とばかりに障害のある方に厳しい視線を向ける乗客もいるのが実態です。横塚晃一『母よ!殺すな』で取り上げられている母親による障害児殺しも同じ文脈で語ることが出来るでしょう。障害のある子どものいる家庭を孤立させれば、その経済的/精神的な負担の重みに耐えかねた母親が自分の子どもを手にかける危険性は高まります。そして苦悩する母親に対する世間の同情が殺人を“正当化”する風潮を作っていくのです。さて、優生思想に市民権を与えるもう1つの要素は“孤立”です。入所施設などの自己完結的な隔離型施設は社会との接点を失わせてしまいます。かつて、障害者が何不自由なく暮らせるように、人里離れたところにコロニーと称する障害者の“楽園”を建設することが福祉だと見なされたこともありました。しかし、社会との接点がないということは、見方によれば人間の“社会的死(social death)”を意味することでもあります。それが今回の事件のように、いつ「税金の無駄」という理由で“生物学的死(biological death)”にすり替えられてしまうかはわかりません。この“社会的死”は、どのような人間も陥る可能性があるものです。引きこもり、精神障害者、認知症患者など、日本では何らかのきっかけで決められたレールから一度外れると、社会との接点を失う可能性は高いのです。経済学「比較優位」の考え方では、だれしもが社会の一員として活躍できる出典 : では、このような事態を引き起こさないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。それは、私たちの叡知にあるとお伝えしたい。その工夫のひとつが、経済学の“比較優位”の考え方にあるのです。(図参照)比較優位を簡単にいえば、各自の持っている能力の中から相対的に優れているところを見いだし、それを社会に活かすという発想です。この考えの素晴らしいところは、それが社会全体をより豊かにするという点です。Upload By 中島隆信私たちの社会は、人間に優劣をつけ他者よりもすべての面で劣っている人間は使い物にならないと見なしがちですが比較優位の理論に従えば、どのような人間も社会の一員として受け入れることが、全員にとって得となるのです。優生思想が市民権を得ていき大多数の思想となるのを防ぐためにも、排除の論理の不合理性を明確に指摘し、私たち全員を豊かにする「比較優位社会」の実現が求められるのではないでしょうか。
2016年09月29日中1から不登校になった息子出典 : 発達障害と目の障害があり、不安を強く感じると声が出せなくなることがある息子は、中学1年生のときから不登校になりました。不登校になってから月日がたち、息子は中学3年生になりました。息子の身体はいつの間にか大きくなり、私の背を越すほど成長していいきます。また、家で療養がゆっくりとできたこともあり、少しずつ笑顔を取り戻していきました。そして家の中で過ごす毎日に退屈さを感じてきたようで、よく「暇だ。何かすることない?」と聞いてくるようになりました。その言葉を聞いた私は、「そろそろ動きだす心の準備ができてきたのかも。」と感じました。そんなとき、息子の気持ちを聞き出してくれたのはかかりつけの病院の先生でした。先生は「将来は何がしてみたい?進学をどう考えてる?」と息子に聞き、選択肢を5つほど紙に書き出しました。・普通の高校に行く・支援学校の高校に行く・定時制の高校に行く・働く・ニートになるその選択肢を見て息子は「ニートにはならない。」「何かやらないといけないけど、何をしたら良いのか分からない。」と答えました。この頃の息子はまだまだ夢も希望も持てず、将来を考えるのが難しかったため、何をどうして良いのか分からないという状態でした。息子が一歩を踏み出すために、親ができることはなんだろう出典 : 「何かをやりたい。」と思い始めていた息子ですが、長い間不登校だったため、あらゆる経験も知識も少ない状態です。そんな息子が自分で決めていきなり何かを始めるのは難しいでしょう。そこで私は長年関わってくれていた心理士の先生からアドバイスをいただき、「少しづつ社会の情報を与えていく。そのなかから親が選択肢をあげて、導いていく。」という関わり方の基本を決めて、少しつづ世間とかかわるところから始めました。家庭内で行ったのは、テレビからの情報をうまく利用することでした。例えばタレントや、キャスターの仕事を指し「これも仕事なんだよ。」と声かけしていました。ニュースからも「世の中にはいろんな仕事ある。」というメッセージを伝えていきました。外出も無理のないところからスタートしました。近場のコンビニに行ったり、時にはコンサートに行ったりと、外出で関わる人から関連付けて、進学や将来の選択肢をできるだけ多く伝えていきました。そして息子の様子を見ていた私は、ある1つの考えにたどり着きました。「この子には、信頼の置ける人との関わりが必要。そして同じ障害のある人との関わりが大事。障害があっても生きていく道はたくさんあるんだと知ってもらうことが大切。」母としての素直な想いを、息子に伝える出典 : そのような考えに至ったときに私の頭に浮かんだのは、数年前に出会った、息子と同じ目の病気で全盲になった特別支援学校の先生のことでした。その先生は私の気付かない息子の気持ちを指摘してくれたり、見た目で判断せずひとりひとりの心に寄り添う支援が必要なことを息子が通う学校に伝えてくれたり、私の思いを聞いてくれたりと、ずっと私たち親子を支えてくださっていました。その先生がいる支援学校なら、この子は生きる力をつけていけるのでは?支援学校に見学に行き、先生方の子どもへの接し方を見ると、私の思いは確信に変わりました。そして私は考え抜いた末に、息子にその素直な気持ちを伝える事にしました。「お母さんのわがままだと思ってきいてくれる?お母さんはこの支援学校が素晴らしい場所だと思ってる。あなたがここで学んでくれたらお母さんは嬉しい。ここを卒業したら、自分の好きなように生きなさい。その時は全力で応援するから。その力を身につける為にもここで学んで欲しい。」支援学校へ入学した息子に、笑顔が戻ってきた出典 : 支援学校との個別面談なども通して、学校の雰囲気をつかんだ息子も、入学を決意しました。支援学校の入学式で入学者の名前を呼ばれたとき、息子は「はい!」と返事ができました。それだけで、「ここは息子が安心して過ごせる場所だ。」と安心しました。不安になると声を出せなくなる息子が式典の場で返事をできるほど、その学校はあたたかい雰囲気だったのです。その後、息子は寄宿舎にも入舎し、生活リズムも整ってきました。朝が起きられなかった息子が起きられるようになり、日常生活をする体力も取り戻していきました。私から離れたことで、自立への大きな一歩を踏み出すことができたと思います。そして何より、息子はよく笑うようになりました。その笑顔は、支援学校で「ひとりでできた!」ということを経験して生まれた自信の表れです。私だけで息子と関わろうとせずに、かかりつけの先生や心理士の先生方からのアドバイスをもとに息子を外に少しずつ連れ出して、息子に必要なものを見極められたこと、そして素晴らしい支援学校の先生方に出会えたことが、今の息子に成長する大きな転機になっていると思います。息子の晴れ晴れとした姿を見て、あの時、息子の背中を押して良かったと心から思っています。
2016年09月29日「言葉をそのまま受け止めてしまう」発達障害のコミュニケーション特性出典 : 畠山:僕の場合、例えば、中学受験の後の出来事が象徴的かもしれませんね。努力して努力して、試験当日までは応援されとやかく言われなかったのですが、試験が終わって合格発表までの間、親に「落ちたらどうなると思っているの?」「絶対合格しなさいよ!」など言われたんです。親も焦っていたのだろうとは思います。そこで「焦ってるんだな、まあしょうがないよな」と思えず、言葉のまま受け取り、「落ちたら一体どうなるのだろう!?」と不安が募るばかりでした。しかも、試験は終わってしまい合格発表までの数日間です。その間は、僕にはもう努力の仕様がない。でも「絶対合格しなさい」ということは、今から試験問題を管理しているところに忍び込んで、解答用紙を書きなおせば、いいのかな?とモヤモヤしました。編集部:そのときは、どうされたんですか?畠山:仕方ないから辛い思いしながら待っていました。(笑)辛かったですね。なぜ、「今終わってどうしようもないときに言うのか」と思いますよね。例えば、会社で「何でこんなに売上が少ないんだ!」と言われたらそのまま受け取るので「じゃあお年寄りを騙してでも営業してこなくてはいけない・・・」と考えてしまうのと同じでしょう。患者さんに納得してもらうため、コミュニケ―ションを変えようと思った編集部:ちなみに、医師として地域の患者さんとコミュニケーションの中で難しいなという場面はなかったのでしょうか?畠山:最初の1年くらいは、コミュニケーションが上手くいかないな、というのは多々有りました。何を言ったか、ではなくてどう伝えたか、相手はどう受け取ったか、を意識する必要があると。極端な話、ちゃんと診察して医学的に考えて正しいお薬を出しても「ちゃんと診てくれなかった」と感じる患者さんはいますよね。どんなコミュニケーションを取ろうが、出す薬も診断内容も診断できるまでの時間も同じなんです。むしろ客観的な事実で、感情に流されず、しっかり診断することが医学では大切だったりします。だとしても、どんなコミュニケーションをとったかで、その患者さんの納得が違う。伝わり方が違う。編集部:と、いいますと…畠山:例えば、診察を始めてすぐに「はい、◯◯ですね。じゃこのお薬で。」というよりも、「痛かったでしょう、いつから?あ、そうですか、なるほど。それは痛かったですね…」というやりとりがあった方が、患者さんの立場だったらどうです?編集部:うーん、安心感、がある。「わかってもらえた」という気持ちになるかもしれないですね。畠山:そう。伝わり方一つで「診てもらえていない」と感じ、不安や納得できないなと思ったら、薬を飲んでいただけない場合もあったんですね。そこで、少しコミュニケーションを変えれば、医師としてもしっかりと治療ができるし患者さんも治る。であれば、僕はコミュニケーションの引き出しを増やしたほうがお互いに良いと気づいたんです。そう思って引き出しを増やしました。編集部:なるほど。僕にとって、コミュニケーションは論理的につくるもの畠山:それでいうと、自分の雰囲気をつくる、というのは大事だなと考えています。堅苦しく始めるよりも、自分からよく話して笑うほうが、良いコミュニケーションが取れると思いませんか?なので今日は最初から明るく喋っているんです。(笑)編集部:あっ(笑)畠山:僕は、人の気持ちはわからないんです。でも、「コミュニケーションというものがある」のであれば、それを意識して動こうと思っています。相手の感情が伝わってくるから楽しく喋っているわけではないんです。でも、楽しい雰囲気というのは、コミュニケーションを円滑にする。だからこうする、というように僕にとってコミュニケーションは論理的につくるものなんです。編集部:たとえ頭ではわかっていても、意識し続けるのはしんどい、という方もいるのではないでしょうか。畠山:そうですよね。それは、「見えていない」んだと思います。「コミュニケーションが(自分はあまり)見えていない」ということを自覚しているかどうか。見えていない事を理解していないと、努力しているのになぜ?としんどくなってしまう。自分はコミュニケーションがわからない、というのを前提に努力すれば、「なんで人とぶつかってしまうんだろう」と悩むことはないんです。自己認識する、というのは言葉でいうは簡単ですけど、それを日常で実践するのは難しいんですよ。編集部:難しい、ですね。畠山:ええ。「コミュニケーションを理解するのが難しい」と発達障害のある方にたまに相談されるときに、わかりやすい初歩として、カラー診断をおすすめする事もありますよ。編集部:カラー診断?畠山コミュニケーションは、受け手の印象が大事だという事がありますよね?僕自身、黒い服をきるとすごく怖くなってしまうんですよ。だから柔らかく見える水色を選ぶようにしているんです。服や色でコミュニケーションを操る、などではなくて「そもそもの雰囲気作り」はロジカルに意識できることなんだよ、と。編集部:確かに。畠山:ええ。相手に失礼のないように、ちゃんとした服着ようと考えて2万円の服を買っても、その色との相性で、大したことを喋ってもいないのに印象悪くしてしまったらもったいないですよね。(笑)性格や話し方云々はもちろん大事。でも、まずは、柔らかくて好感よく見えるような色を選ぶ、から始めてもといいのでは、と思っています。見えないものを理解するよりも、わかりやすくて簡単な方法ですからね。(笑)医師(整形外科医)。1974年、大阪府生まれ。1998年、防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として仙台市で勤務。自衛隊退職後、大泉記念病院整形外科、石巻ロイヤル病院整形外科部長を経て2010年、八木山整形外科クリニックを開業。2011年、東日本大震災で被災。2012年維新政治塾に参加、衆院選(宮城4区)に立候補するも落選。現在は複数の病院の外来や在宅診療を掛け持ちで担当している。著書に、『ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法』(KADOKAWA)、『「糖質制限+中鎖脂肪酸」で確実にやせる! 驚異のMCTオイルダイエット』(幻冬舎)。畠山昌樹オフィシャルサイト
2016年09月29日発達障害の息子は喋り方が独特で、友達とのコミュニケーションが苦手だった出典 : 子どもが目の前でいじめられていたら、親はどう関わるべきなのでしょうか?すぐに仲裁に入る方も多いかもしれませんが、私はそうではありませんでした。6歳の息子は発達障害があり、人との関わり方や喋り方が独特です。幼稚園児なのに、やたら難しい言葉を使い、相手のことはお構いなしに喋り続けます。「しかしながら、僕はこう思う。なぜならば…」「加えて、この点については…」こんな風に、違和感のある接続詞を頻繁に織り交ぜながら話す息子は、相手の気持ちを想像することが苦手なのです。人との関わり方もとても独特で、他人とルールを共有する遊び方が苦手です。あくまでも自分本位に遊ぶことを好むため、公園などで他のお子さんと上手く関係を築くことが、なかなかできません。息子の喋り方をからかう子どもたち。でも、子ども同士のトラブルに私は介入せず…出典 : 子ども同士はこういった、人と違う話し方などの「違和感」にとても敏感です。遊びに連れていくたびに、なんだか変な顔をして息子を見ている子どもがよくいました。そして、公園によくたむろしている小学生たちが、そんな息子に「変な子だ」と言って、目をつけるようになったのです。彼らは、わざと息子に話しかけ、変わった話し方をする様子をみんなで真似し、てクスクスと笑うようになりました。また、木の棒などでしつこく突っつくようにもなりました。触覚過敏のある息子は、そのたびに大声をあげ、パニックになります。それがますます面白かったのか、さらに追いかけまわして突っつくのです。ここまで様子を見ていたら、すぐに止めに入るお母さん方もいるかもしれませんね。私が子育てをしながらいつも心に留めていたのは、「子どもの世界には口出しをしない」ことでした。発達障害があろうとなかろうとそれは同じ。子どもには子どもの人間関係がある、そこにいちいち親が口出しをしては、その子は自立することができない…そう思っていました。息子が小学生たちに目をつけられていることは、すぐに気付きました。しかし、積極的には介入せず、なるべく早めにその場を離れるようにしていました。その日見た小学生は、息子を蹴飛ばし…その様子を見てカッときてしまった私出典 : けれども、ある日、私の冷静さが崩れ落ちるような出来事が起きたのです。「口は出すまい」とじっと黙って見ていた私の前で、小学生の男の子が「おまえ、キモイ!向こういけ!変な喋り方するなっ!」と言って、後ろから息子のことを蹴っ飛ばしたのです。それまでずっと我慢していた私でしたが、頭にカーッと血が上るのを感じました。その時の私は感情のコントロールが完全にできなくなっていました。「あなたね、○○くんをいじめてるの、私が気付いてないとでも思った!?」「あなた小学生でしょ、なぜこんな小さな子にそんなひどいことするの!?」「大人は全部わかってるのよ。全部見てるのよ。あなたが意地悪しているのも、全部見てたんだからね!」気付いたら、私の頬には涙が次々につたってきて、小学生の前でブルブルと震えながら、大泣きしてしまいました。小学生を怒鳴りつける私を見て、息子が言った驚きの一言出典 : 感情的になる私を見ながら、息子をいじめた小学生たちは全員呆然としていました。すると、横で私を見ていた息子が言ったのです。「…お母さん、ダメだよ、この子たちのことをいじめたら。僕、お母さん嫌い」あろうことか、息子は自分がいじめられていることに、気が付いていなかったのです。そして、私がその子たちをいじめていると思っているではありませんか。私はそのまま大泣きしながら、息子を家に連れて帰りました。いじめられてもどう対処していいのかわからなかった息子。私がやるべきだったのは…出典 : 帰宅後、自分が落ち着いてから、「バカとかキモイとか言われたら、怒っていいんだよ」「叩かれたり、ツンツンされたり、蹴っ飛ばされたりしたら、やめてって言っていいんだよ」と改めて息子に話しました。すると息子は、「ええ~、そうなんだぁ?」とすっとんきょうな声を出しました。私がすべきだった介入は、小学生の男の子たちを怒鳴り散らすことではなく、「これをされたら嫌だと言っても良いよ」と息子に教えることだったと、そのとき気付いたのでした。そのときのことは、今でも思い出すとちょっと泣けてきます。子どもの人間関係にどこまで介入して良いものか、私は今も自問自答しています。
2016年09月29日就学相談とは出典 : 初等教育(小学校)へあがる前年度に、障害のある子どもや発達が気になる子どものいる家庭は、通常級、通級(通級指導教室)、特別支援学級、特別支援学校などの選択肢の中からどこへ進学するかを選択する機会があります。就学相談とは、子どもの就学先を決めるための保護者、児童、教育委員会の間の話し合いと、その決定までのプロセスを指します。就学相談では、教育的観点以外にも、心理学的、医学的見地から、本人や保護者の希望、地域の学校や実情を踏まえて子どもの就学先の判断がなされます。この記事では一般的によく行われている就学相談の流れや内容について紹介していきます。しかし、就学相談は、地域によって内容や呼び方、その過程が異なるためご注意ください。この記事の内容を参考にしていただきながら、お住まいの地域の就学相談についてはご自身で行政や学校に問い合わせてみてください。就学相談の目的は?出典 : 就学相談では、教育的視点や医学的視点などさまざまな意見をもとに子どもの就学先を判断しますが、これは、そもそも何のために行われているのでしょうか。就学相談は、まず第一に、子ども自身のため、子どもにもっとも適している教育環境を準備するためにあります。障害のある児童生徒一人ひとりの可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するための基盤となる生きる力を培うために、その子にとってどのような教育が必要かを明らかにしていき、そ の障害の程度に応じて最も相応しい教育が受けられるようにすることを目的とする。東京都中央区「就学相談について」就学相談の最大の目的は、子ども自身、保護者、教育委員会、医療関係者、心理関係者、すべての関係者の意見を聞き、子どもにとって最もふさわしい教育が受けられるようにすることです。近年は、インクルーシブ教育と合理的配慮いう観点からも就学相談のプロセスや制度が見直されています。その最たる例は、学びの場の選択の柔軟性です。今までは入学時に決めた学級、学校から原則他の学級、学校へ転学することは難しかったのですが、現在は子どもの発達の程度、適応の状況等を勘案しながら柔軟に転学を検討できるようになりました。学びの場を固定されたものとして考えるのではなく、子どもの状況に応じて、必要な環境を柔軟に選択していくことが望ましいと言われています。ですが、このような取り組みはまだ始まったばかりで、地域によっては転学・転級の手続きが難しい場合もあるようです。就学相談から就学先が決まるまでの流れ出典 : 就学相談は市区町村によってその方法や内容が大きく異なります。以下で説明する流れとお住まいの地域の就学相談の方法が異なったり、流れ自体が前後する場合があります。就学相談についてより詳しく知りたい時はお住まいの市区町村の教育委員会へ問い合わせてみましょう。就学相談は、基本的には就学時健康診断のように通知が来ることはありません。子どもの発達や障害が気になる場合や、子どもの就学先を相談・検討したい場合は、保護者の方が自ら就学相談を申し込む必要があります。申し込みの仕方は市区町村によって2パターンあります。一つ目は電話で直接、市区町村の教育委員会へ連絡し、面談の日程などを決める方法です。二つ目は、通っている幼稚園や保育園を通じて申し込む場合です。その場合は、幼稚園や保育園の先生に相談しましょう。申し込み時に面談の日程を決めます。面談は市区町村によりますが、複数回実施されることが多いです。ここでは、子どもの生育歴や診断書などをもとにお子さんの様子や保護者の希望を聞かれます。あらかじめ、質問票や所定の書類に必要事項を記入しておく必要がある場合もあります。実際の面接では、お住まいの市区町村の通級、支援級、支援学校の状況を聞くことがポイントです。例えば学級の人数、受けられる支援や歩いて通える範囲にあるかどうかなどを確認するとよいでしょう。また、通級、支援級、支援学校でどのような支援が受けられるか、より具体的に聞いておくこともポイントです。また、希望の学級・学校の見学、体験ができるかどうかも聞いてみましょう。専門の医師、または心理士等が発達検査や知能検査を行います。診断がついてない場合、医師による診察が行われる場合もあります。ここでは、保護者と子どもが別室で面談や様子観察を実施することがあるので、子どもが過度に場所見知りをしたり、保護者から離れるとパニックになったりする場合は、あらかじめ担当の職員に知らせて対応方法を相談しておくと良いでしょう。就学予定先(通級、支援級、支援学校)への見学、体験方法は主に二つの方法があります。一つ目は各々の学事日程を調べ、公開日や参観日を確認して行く方法です。二つ目は、市区町村の教育委員会を通して各々の学校へ見学、体験を申し込む方法です。この二つの方法が一般的ですが、お住まいの地域によって違うことがあるので、面談の時に聞いてみるとよいでしょう。見学中、体験中には、どんな課題のある子どもにどんな工夫や支援がされているのか聞いてみましょう。それを踏まえて、子どもがその学級・学校へ通っている姿や、支援を受けられるかを想像しながら歩いてみると普段は気付かない点に気付くかもしれません。就学支援委員会の方が、幼稚園や保育園での子どもの様子を見に来ます。集団の中での子どもの様子や、情緒の様子を観察します。面談での様子、いままでの生育歴、医師や心理士の診察の結果、幼稚園・保育園での行動観察の結果をもとに、就学指導委員会でどこへ就学することがよいかを審議します。上記の審議の結果を踏まえて、保護者の方と今後の就学先について話し合います。子ども自身の希望も聞きながら、なぜその就学先を希望するのかを明確にして臨みましょう。面談や話し合いの結果、最終的に就学する学校が1月31日までに通知されます。この通知が最終決定ではなく、保護者の希望に沿わない場合は再度面談がなされることもあります。就学相談の選択肢となる学校、学級ごとの特徴小学校の就学先には以下の4つがあります。まずはそれぞれの概要や特徴を詳しくご説明します。比較しながらお子さんに合う学びの場はどこか、検討してみましょう。Upload By 発達障害のキホン通級とは、通級指導教室とも呼ばれ、通常の学級に在籍しながら比較的障害の程度が軽い子どもが、その子に合った個別の指導を受けられる学級です。主に各教科の学習や給食は通常級で受け、通級の時間だけ移動して指導を受けます。■通級の就学基準通級では障害種別ごとに、言語障害、自閉症・情緒障害、弱視、難聴、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱と5つの学級があります。市区町村によってはすべて設置されてない場合もあります。通級の支援対象となる障害の程度は、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度とされています。さらに、詳しい就学基準は以下のリンクを参考にしてください。障害のある児童生徒の就学について■通級の特徴通級へ通う場合は、通常学級に在籍しているので通常学級で学校生活の多くを過ごします。その一方で、一部の学習科目や社会生活面で生じている困難に応じて、通級での個別支援を受けます。通常学級に在籍しながらより手厚い支援の教育がうけられるため、比較的障害や困難の程度が軽かったり、算数だけが苦手な学習障害(LD)のある場合など、特定のことだけに困難がある場合に、有効な学級選択と言えるでしょう。Upload By 発達障害のキホン特別支援学級とは、障害のある子ども一人ひとりに応じた教育を行うため、小・中学校に設置された障害種別ごとに編成された少人数の学級をいいます。■特別支援学級の就学基準特別支援学級は障害種別ごとに、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の7つの学級があります。特別支援学級の対象となる障害の程度は以下のリンクをご確認ください。この基準に該当しない場合でも在籍を検討することができますし、該当する場合でも通常級、通級へ在籍を検討することはできます。障害のある児童生徒の就学について■特別支援学級の特徴特別支援学級の上限定員は8人と定められています。少人数教育で、障害のある子ども一人ひとりのニーズに合わせた教育が受けられるようになっています。特別支援学級では、必要に応じて、各教科の目標・内容を、その子どもの課題や獲得スキル状況に適したものに変更・調整したり、個別の学習支援・生活支援を受けることができます。これは通常学級に所属している場合は受けることのできない大きなメリットです。また、「交流及び共同学習」という位置づけで、一部の授業や、給食や昼休みの時間、学校行事などに通常学級の子どもたちと一緒に参加する機会も設けられます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学校とは、心身に障害のある児童が通う学校で、幼稚部~高等部まで存在します。2007年以前は「ろう学校」「盲学校」「養護学校」とわかれていましたが、学校教育法の改正に伴い障害ごとに分けた学校ではなく、制度上はすべて特別支援学校になりました。現在でも語尾に「~盲学校」や「~ろう学校」となっているのはそのためです。■特別支援学校の就学基準特別支援学校の支援対象となる障害の程度は以下のリンクの通りです。これは学校教育法によって定められているものです。障害のある児童生徒の 就学先決定について以前は、この就学基準に該当している児童は原則特別支援学校へ進学することとされていましたが、現在は、子どもの状態が特別支援学校の就学基準に該当していても、就学先が特別支援学校に限られることはなく、その他の進学先も検討することができます。■特別支援学校の特徴1クラス当たりの人数は平均で3人と少人数であり、特別支援学校の教員は、通常の教員免許に加えて特別支援学校の教員免許を持っています。また、医療的ケアは看護師などが行うことが原則ではありますが、保護者の同意や医療関係者による適切な管理など、一定の条件が満たされていれば、特別支援学校において教員がたんの吸引、経管栄養(胃ろう・腸ろう)、自己導尿の補助を実施することができます。そしてさらに、一人ひとりの教育、支援のニーズに合わせた、きめ細かい教育をするために「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」が立案・実行されます。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(4)個別の指導計画と個別の教育支援計画通常学級とは、上記の3つの学級、学校以外の学級を指します。通常学級では、通級、支援学級よりひとクラスの人数が多く、さまざまな子どもと触れ合うことができます。しかし、一方で通級や支援学級のような手厚い教育サポートが受けられないという面もあります。国立の特別支援学校は、その地域の国立大学付属の特別支援学校になります。教育機関でありながら、研究機関でもあります。ですので、研究の先端をいく教育が受けられる反面、入学には面接があり、定員も限られているため、希望しても入学できるとは限りません。就学相談の際に気をつけたいこと出典 : さまざまな就学先の中からどこに行くことが子どもにとって一番良いのか、検討するためにはどうしたら良いのでしょうか。就学相談をする際に準備ができるか考えてみましょう。一般的な就学相談は年長の春または秋から始まり、翌年1、2月頃には最終的な就学先が決まります。ですが、就学相談が始まる前にも、年中の時期や、年長の春に上記のそれぞれの学校へ見学へ行くことはできます。また、就学相談の過程でも、見学や体験の機会が設けられることも多いです。子ども本人にどんなところへ行きたいか聞いてみるのも大切です。「お友達がいっぱいいたほうがいい?」「先生がいっぱいのほうがいい?」など、各学級の特徴を子どもにわかりやすい言葉で説明したり、実際に見学や体験に行った場合は、「今日の学校どうだった?」「どっちの学校がすき?」など、一つ一つの学校・学級に対する本人の気持ちを確かめてみましょう。家族や夫婦で、子どもの就学先について積極的に話し合いましょう。家族や夫婦の間で、それぞれが子どもの教育についてどのように考えているのか、何を大切にしているのかを共有し、就学先の方向性を前もって話し合っておくことが大切です。また、予定が合えば、学校見学や体験にも家族で一緒に行ってみましょう。実際に見学や体験に行った上で話し合うと、より議論も深まります。就学相談の過程では、発達検査や知能検査をすることが多いです。ですが、あらかじめ発達検査や知能検査、医師の診断書、意見書などを用意しておくと便利です。子どもにとって一番良い選択とは?出典 : 以上のように、就学相談では市区町村の教育委員会が子どもの様子を見極め就学先を判断します。では、保護者はどのように就学先を考えたらよいのでしょうか。就学先で同じように悩まれた先輩パパ・ママの経験談をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。地域のピアサポートグループにも参加しており、そちらの先生に言われたのは『ベストの選択は難しいが、ベターの環境を選ぶために何が必要かを見極める』というお話を頂いていました。判定会議を経た決定は、夫や私の方針とは違いましたが、夫婦間でもたくさん話し合い、納得したうえで決定に従いました。子どものことを思う保護者としては、「完璧な選択」はとても難しいことでしょう。しかし、今ある選択肢の中からベターなものを選ぶために、子どもをよく観察し、何が必要か考えることが大切かもしれません。通学方法、学校の評判、学校の受け入れ方針。うちの場合、就学希望先の学校が差別なく快く受け入れてくれる方針だったこと、入学式の予行練習、当日の席の配慮、ベテランの先生を担任にしてくれたこと、担任とは入学前に面談をしてもらえたり、こちらの要望を聞き入れてくれたことなど対応がとても良かったので決めました。上記は、通常学級に決めた方の体験談です。”通学方法、学校の評判、学校の受け入れ方針”という明確な軸を決めて就学先を選ぶ事もよいでしょう。病院のDrの話で「入学から低学年時代をいかに支援してもらうかが大事よ」と言われピンとこなかったものの、学習は出来ても何かあった時に支援はほしいと思い選びました。特別支援教育が始まった頃で普通学級でも必要な子には支援をするということでしたが、先生の数が増えるということではないということもポイントでした。上記は、支援級に就学することを決めた方の経験談です。医師等の専門家から、詳しく意見を聴くことは、就学先決定の参考となるでしょう。まとめ出典 : 就学相談は、お住まいの市区町村によってその方法や内容が大きく違います。それだけでなく、通級、支援級、特別支援学校で受けられる支援も地域によって大きく異なります。市区町村によって違いがあり、さまざまなことが異なるからこそ、保護者の方は主体的にいろいろな情報を集ることが就学先を決める第一歩です。就学先に見学にいったり、医師や心理士だけでなく普段の様子を知っている幼稚園・保育園の先生に聞いてみたり……。お子さんにとってどんな環境で学ぶことがよいのか深く考える機会となるでしょう。
2016年09月28日「エンタメ療育ダンス」って一体なに?Upload By 発達ナビ編集部ステージの上で踊るダンサーの姿を見て、あんな風に自由に、自分の感情を身体で表現できたならと、憧れたことはありませんか?しかし、いざ実際にダンスをやってみると、思ったよりもはるかに難しい… 手足を同時に様々な方向へ動かすことは、「協調運動」と言われる運動の中でもなかなか高度な動きです。この協調運動は、特に発達障害のあるお子さんの中には苦手とする子も多く、学校の体育の授業や学芸会などで「みんなと同じようにできない…」と、運動面だけでなく、参加そのものへの自信を失ってしまう子も少なくありません。そうした発達の凸凹が気になる子どもたちにもダンスを踊る喜びを届けるために、放課後等デイサービス「プレミア・ケア・ジュニア」(運営: 株式会社トリプル・エース)は「エンタメ療育ダンス」という取り組みを行なっています。先日、9月4日には、トップ振付師の南流石(みなみさすが)さんをゲストに招いての「エンタメ療育ダンス」の発表会が開催されました。今回は、その発表会に参加し、南流石さんにこの企画に込める想いを伺ってきました。「踊りは、アーティストや芸能人のためのものだろうか?」ー振付師、南流石氏の想いUpload By 発達ナビ編集部南流石(みなみさすが)氏振付演出家様々なエンターテイメントシーンにダンス作品を提供する振付界の第一人者。サザンオールスターズ、THE BOOM、PUFFY、大塚愛、乃木坂46、おしりかじり虫(NHK)、くまモン(熊本県)などアーティストの振付演出家として活動する傍ら、医療従事者と共に、乳幼児から高齢者に向けたダンスプログラムを国内外で実践。認知症介護予防推進運動プログラム「ココロからダンス」や、 肢体不自由児を対象としたダンスプログラム「東大寺福祉療育病院・天坊体操」、国連UNHCR協会との取り組みで中東ヨルダン難民キャンプにてワークショップなどを手がける。流石組―南さんが今回の療育ダンスを手がけようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。私はこれまで、アーティストの世界や芸能界で、長年ずーっとダンスをやってきたんですね。ダンスが大好きな人とかダンスを生業としている人たちと一緒に踊ったり振り付けを手がけたりと、とにかくプロとしてダンスを追求してきたわけです。でも、ある日ふと思ったんです。「ここ(芸能界)にいる人たちは自由に踊れるけれど、世の中には踊りたくても踊れない人たちがたくさんいるんじゃないか」って。身体の自由が効かなかったり、行きたいんだけど心が元気じゃなくて動けなかったり、そもそもダンスを楽しめるような環境にいなかったり…そういう、色んな境遇の人たちを思い浮かべたとき、私がやってきた踊りっていうのは、アーティストや芸能人のためだけのもので良いんだろうか?って疑問が浮かんできて。それからです。「踊りたくても踊れなかった人たち」のためのダンスをやっていくことが、私の使命なんじゃないかと思うようになりました。だから今回の療育ダンスに限らずね、 老人ホームのお年寄りや、病院にいる肢体不自由の子どもたち、難民キャンプで過ごすシリア難民たち…私の踊りは、そういった人たちみんなのためのもの。求められたならどこにでも行こう、「心が踊る」っていうことを伝えに行こうと思って、こうした活動をやり始めたんです。―なるほど。踊りたくても踊れない全ての人たちのために…。療育ダンスを手がけられる前に、もともと様々な活動をされていたのですね。そうですね。だから今回プレミア・ケアさんからお話をいただいた時も、先生方の「ダンスで子どもたちの成長を応援したい」という強い思いを感じて、是非一緒にやりたいって思ったんです。―実際に、発達が気になるお子さんたちにダンスを教えてみて、どうでしたか?ちょっと語弊があるかもしれないんですけど、やってる私自身の姿勢は「何も変わらないな」って思いましたね。どんな特徴のある、どんな子どもが相手だって、どこに行ってもやり方は変わらない。Upload By 発達ナビ編集部―何も変わらない…?結局、人間と人間が向き合うだけの話でしょ。だからシンプルに、私が誠実に彼らと向き合って伝えるだけというか「あなたの味方だよ、あなたと一緒に心がつながりたいんだよ」っていう気持ちを持って接すること。発達障害があろうと、外国で言葉が通じなかろうと、どこでも一緒なんですよ。ヨルダンの難民キャンプに行ったときと今回と、私自身はまったく同じ姿勢で彼らと向き合いました。―あなたと繋がりたい。その思いをまっすぐ伝える…そう、その気持ちはどこに行っても変わらない。もちろん、その上で「どうやったら伝わるか」ということは、相手の個性や年代を踏まえて工夫はするんですけどね。Upload By 発達ナビ編集部今回はエンタメ療育ということで、スキルを磨く踊りというよりも、まずは「踊れた!」という達成感を全員に感じてもらえることを大事にしました。見よう見まねですぐに身体を動かせない子もいるでしょう?だから振り付けを教えるときも、「キュッキュッ」とか「よっしゃ」とか振り付けに言葉を添えたり、繰り返しの多いものにして、身体だけじゃなく五感全体を使って覚えていけるように工夫しました。―確かに、シンプルな繰り返しの中で楽しめるような振り付けでしたね。それに、両手両足を動かすのが難しい人は、上半身を動かすだけでもちゃんとダンスになって楽しめるようになっていて、工夫されているんだなぁって感じました。私自身も不器用でダンスが苦手なので…(苦笑)それは良かった(笑)今回はお子さんだけでなく大人にも一緒に楽しんでほしかったので。―今後もエンタメ療育という切り口での活動は続けられるのですか。そうですね、私に出来ることであればぜひ、と思っています。特にやりたいのは、「親子」のためのダンスです。親子で一緒にやることが大事なんです。子どもをダンス教室に送って親はいなくなるのではなく、お父さんもお母さんもお時間のある方は一緒に踊ってみてほしい。一緒に踊ってみれば、子どもが実際どういうところに苦しんでいるかも分かるし、出来たときの喜びも分かち合えるし、子育ての大きな気付きになると思うんですよね。―それはとても大切なことですね。手足の協調運動が難しかったり、運動機能の発達がゆっくりだったりするお子さんもおられますが、周りから「不器用」だとか「どうして出来ないんだ」と言われて自己肯定感が下がってしまうことも少なくないので…そうなんですよ。学校でもいろんな先生と話す機会があったんですけれど、「この子はこうなんです」って一言で決めつけちゃうことが多いんですよね。でも、人間のことを一言で断定しちゃいけないし、できるはずないと思うんですよ。仮になにかひとつ出来ないことがあっても、その子にはいいところもいっぱいあるし、それを見つけて伸ばしていくのも大人の役割でしょ。だから私は、少なくともダンスにおいては、誰が相手であっても、一人ひとりに丁寧に向き合ってその子のいいところを引き出してあげたいんです。「ダンスを始めて、身体を動かすことが好きになった!」参加したご家族の声Upload By 発達ナビ編集部普段から「プレミア・ケア・ジュニア」の教室に通ってダンスを練習している子どもたち。発表会に参加した子どもたちの元気いっぱいなダンス発表を見て、ご家族からこのような声が集まりました。"うちの子は、ダンスを始めて体を動かすことが好きになったんです。私も見ていて、身体の使い方が上手になってきたと感じますし、本人も楽しく、また一生懸命踊っているのが伝わってきて嬉しいです。"“もともと手足の動かし方にぎこちなさがあって、思ったように身体を動かすということが難しいのかなと感じていたところ、ここの教室に出会いました。頭と身体を連動させる動かす力を、少しずつダンスを通して学んでくれたらいいなと思っています。"Upload By 発達ナビ編集部発表会の最後には、南さんが手がけた振り付けで、会場のみんなが一緒に踊りました。曲目はTHE BOOMの「風になりたい」。子どもたちも、保護者の方も、インストラクターの先生方も、会場全体が一体となって本当に楽しそうに踊っていました。南さんの言葉通り、年齢や障害の有無も関係なく「踊る喜び」は全ての人に開かれているのだと感じる、そんな発表会でした。南流石さん、プレミア・ケア・ジュニアさんの今後の取り組みにも、目が離せませんね。児童発達支援・放課後等デイサービス「プレミア・ケア・ジュニア」
2016年09月28日娘はとにかく「あいさつ」が大好き!Upload By SAKURAUpload By SAKURA広汎性発達障害の娘は、3歳になるまでほとんどしゃべりませんでした。でも4歳ころになって少しずつしゃべりだすようになると、「あいさつ」が大好きになりました。あいさつするよう教えてきたわけではなかったのですが、ほめられるのが嬉しかったのか、どこでも誰にでもあいさつする子になりました。あいさつが大好きすぎて、スーパーで「あいさつ回り」をする娘。でも母の心境は複雑で…Upload By SAKURAそんな娘は、私と買い物に行くと必ず、「みんなにあいさつしてきていい?」と聞いてきます。あいさつするのはいいこと…私は娘に「ダメ」なんて言えませんでした。すると娘は嬉しそうにスーパーを周り、一人ひとりにあいさつしていきます。もちろんみんながあいさつを返してくれるわけはなく…無視されたり、笑われたり…そんな状況を私は、何とも言えない気持ちで見守ります。Upload By SAKURAそれでもスーパーでのあいさつ周りを終えた娘は、とても満足そう。これはどこまで許していいのか…やめさせるべきなのだろうか…娘の満足そうな顔を見ると、無理に止めるのもかわいそうに思うようになりました。あいさつを返してもらえないと怒りだす…どうすればいい!?Upload By SAKURAUpload By SAKURA最初はあいさつがきちんとできる娘が誇らしかった私ですが…娘はあいさつをしても返事をしない人に対して、それが通りすがりの知らない人でも、あいさつをしつこく繰り返したり怒ったりするようになりました。「もういいよ!ストップ!」と娘のあいさつを止めようとするのですが、広汎性発達障害の娘は、相手の顔色を読むとか、状況を読むとか、そういったことが苦手なので、私がどうして止めようとするのか、意味が分からないようでした。娘に「相手の気持ちを察する」ことを覚えてもらおうUpload By SAKURA悩んだ私は、娘の言語訓練をしてくれている先生に相談することにしました。先生には、「あいさつをやめさせることはないけど、あいさつを返さない人への対応は教えてあげてください」とアドバイスしてもらいました。何度もしつこくあいさつをしたら、相手も不快に思うかもしれません。そのことを娘にも分かってもらうために、「今は、あいさつしたくないのかもしれないよ?」「忙しいのかもよ?」などと声をかけて、娘に相手の気分や気持ちを推測させることにしました。忘れたくない!あいさつできるのは、「いいこと」。Upload By SAKURA私は、きちんとあいさつができる娘を誇りに思っていますし、止めさせたいとは思っていません。ただ、適切な状況でそれができるようになってほしいと思っています。気を付けないといけないのは、あいさつできるのはいいことということ。娘が、「あいさつするのはいけないこと?」と誤解しないように接していきたいと思います。
2016年09月28日やりたい放題の娘に不安を募らせる日々…この子に何ができるのだろう?出典 : 子どもが自由に遊び回る様子を見て「子どもらしい」と思う方もいるのかもしれません。しかし娘のその行動は、とても安心しながら見守れるものではありませんでした。当時2歳だった娘は、絵本は自分勝手にめくる、おもちゃは触ったとたんにすぐ飽きる、辺りを走り回るなど…やりたい放題。こちらの言うこともほとんど理解できない娘を前に、どのように接していいかのかが分からず、 途方に暮れていました。その頃でした。娘が自閉症と診断され、「療育は、子どもの成長を助ける」とわかった私は早速、娘に合う療育方法には何があるのだろう?と模索を始めました。見学に行った親の会。そこで見た、衝撃的な光景出典 : 当時、「積み木の会」という親の会に所属していた私。そこで過ごす子どもたちを見て、最初は戸惑いを隠せませんでした。なぜなら、どの子も落ち着いて遊んでいるからです。この子たち全員に、本当に障害の診断が出ているのか?と疑うほどの衝撃でした。娘のように、あちこち動き回って好き勝手する子は、そこにはいませんでした。そのことをスタッフに伝えると「療育は幼い頃から始めるほど効果を実感できます」「娘さんは必ず変わります」と言われました。また、療育の様子もイメージとは違いました。定型発達の子かと見間違うほどの子どもたち、さぞかし厳しい躾け方なのだろう、と私は思っていました。しかしそこでは、声を荒げる大人も、癇癪で泣き出す子もいません。そこではただ、大人も子どもも、みんなとても楽しそうに遊んでいるだけに見えました。自宅で療育をする、と決心!指示の理解が弱い娘に最初に試した「模倣」出典 : 積み木の会で見た光景は、当時信じられず、猜疑心も強かった私。しかし、娘のことをなんとかしたい一心だった私は、積み木の会でアドバイスをもらいながら、療育を始めてみようと決心しました。最初に取り組んだことは模倣でした。これは「見て真似る」仕草のことです。それまで、「コップとって」などの簡単な指示なら理解できた娘。それでも、言葉の理解はまだまだ弱かったので、見て指示を理解する模倣なら、娘にもできるのでは?と思いました。当時私には腰痛があり、病院で腰痛体操を教わっていたので、たまたま側で見ていた娘に「こうしてごらん」と体操をやって見せました。すると、私と一緒に同じ動きをする娘。「しめた、模倣ができるじゃないか!」と私は嬉しくなりました。本格的に始めた模倣の練習。その方法とコツ出典 : 娘に模倣ができるとわかり、さっそく先生から教えてもらったことを家で実践することにしました。方法はこうです。①「真似して」と言って(親が)何らかの動作をやって見せる②子どもが真似をする③すかさず、「真似できたね!、すごい上手!」などと言って褒める(お子さんに合った方法は、専門の先生のアドバイスに従ってください)私は、褒める必要性も知らなかったのですが、先生によると、褒めて親が嬉しくなると、子どもも嬉しくなり、さらにその行動が増えるのだそうです。同じ方法で、「手を挙げる」「膝をたたく」「積み木を積む」など、いろいろやってみました。模倣と言っても、手を叩くだけの簡単なものから、2工程以上(手を叩いた後に頭を触る、など)の記憶力を必要とするものまで、様々あります。最初からできないものもありましたが、毎日少しずつ根気よく続けていると、2、3ケ月でできるようになってきました。子どもが集中して取り組める工夫で、難しい取り組みにもチャレンジ出典 : しかし、単純な動作を繰り返す模倣は、味気なくて面白くないですね。療育の1つに遊びを取り入れる方法があります。遊びを取り入れる理由としては、単純に子どもが興味を持てるから。また、その子が1番楽しく取り組める遊びなら、合間に難しい模倣を取り入れても苦手意識を持ちにくい、という利点もあります。そこで、我が家でも遊びを取り入れることにしました。娘の好きな粘土遊びで「これできる?」といろいろな形を作らせてみたり、画用紙を半分に折り片方を親が簡単な絵を描いて、もう片方に同じ絵を描かせたり、ぽぽちゃん人形の洗濯セットで模擬洗濯したり…。こうして難しかった2工程の模倣も、遊びが加わったことで、時間はかかりましたができるようになりました。模倣から広がる、様々なスキルの獲得。さらなる自立を目指して出典 : 現在娘は小6、おじいちゃんから習字を教わっています。その他にも、1人で水泳やスキー、スケートができるようになりました。でも、初めからそうだったわけではありません。そもそも、ここまでいろいろなことができるようになるなんて、当時は想像もできませんでした。模倣は、教えるコツさえつかめば、いろいろな場面で応用が利くようになります。例えばスポーツ。家族で初めてスキーに行った時、模倣の要領で簡単に教えることができました。その他のスポーツも同様です。また、掃除、洗濯物をたたむ、食事の準備など、自立に役立つスキルを身につけてほしいときも、「見て真似る」スキルが身についていれば、スムーズに教えることができます。模倣ができるようになることで、子どもの成長も家族の生活の質も、向上していくのではないでしょうか。
2016年09月28日障害がある人の税控除とは?出典 : 障害がある人にはさまざまな税金の優遇措置がとられています。その目的として、国民一人ひとりの税負担をできるだけ平等にしていくことが挙げられます。納税者の年齢や収入、家族構成などによって負担する税金の金額は異なりますが、日本では国民一人ひとりが税金を支払うことを義務づけられています。しかし納税者の置かれている状況によりそれぞれ税負担の感じ方は異なります。そこで税金を負担できる能力の差をふまえた上で、税負担が平等になるように様々な制度が作られているのです。障害がある人の税の優遇措置として代表的な例は障害者控除です。障害者控除とは納税者本人とその家族のうち誰かに障害がある場合、税控除を受けることができる制度です。障害とは身体障害、知的障害、精神障害などすべての障害を対象としており、障害にあたるかどうかの基準は法律によって定められています。障害者控除には主に所得税や住民税、そして相続税の税控除があり、控除される金額は障害の重さや家庭環境の状況によって変わります。また障害がある人に対する税の優遇は障害者控除だけではなく、贈与税の優遇など様々な特例が定められています。所得税・住民税の障害者控除出典 : 所得税・住民税における障害者控除は、所得のうち課税対象となる額を一定額差し引くものです。そのため納税者本人やその家族が障害者である場合、障害者控除を受けることで住民税や所得税の負担金額が少なくなります。障害者控除は所得税法上で定められている障害認定の基準を満たしている必要があります。その一例として以下のものが挙げられます。・精神保健福祉センターなどの公的機関から知的障害があると判断された人・精神障害者保健福祉手帳や身体障害者保健福祉手帳の交付を受けている人・障害者控除対象者認定書が発行されている人障害があると認定された人の中でも、1、2級の精神障害者福祉保健手帳を持っているなど、特に重度の障害があると判断された場合は、特別障害者とみなされて控除される金額ががさらに多くなり、税負担が軽くなります。 障害者控除l 国税庁障害者控除は納税者、控除対象配偶者、もしくは扶養親族が障害がある場合に適応されると国税庁によって定められています。では控除対象配偶者、そして扶養親族とはどのような人のことを指しているのでしょうか。まず、控除対象配偶者とは税を納めている人と、民法上の規定によって婚姻関係にある人をさします。次に扶養親族は、納税者に対して6親等内の血族、3親等内の配偶者側の親族、または里子や市町村長から生活の面倒をまかされた高齢者が対象となります。納税者に対して1親等とは、父母もしくは自身の子どもがあてはまり、2親等は兄弟、おじいちゃんおばあちゃん、孫があてはまります。控除対象配偶者と扶養親族の共通する条件としては、・納税者と生計を一にしていること・1年間の合計所得金額が38万円以下であること・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと以上の3点です。詳しい条件などは国税庁のホームページをご覧ください。 配偶者控除l 国税庁障害者控除とは?16歳未満の扶養親族も対象ですl 税理士法人のインテグリティ障害者控除において控除される金額は障害の程度によって異なり、障害者と特別障害者の2パターンに分けられます。控除される金額は障害者一人につき所得税27万円、住民税26万円であり、特別障害者として申請する場合は所得税40万円、住民税30万円です。また控除対象配偶者、もしくは扶養親族が特別障害者である上に、その人が納税者、納税者の配偶者、もしくは納税者と生計を一にしているその他の親族のいずれかと一緒に住んでいる場合は所得税75万円、住民税53万円の控除があります。Upload By 発達障害のキホン所得税や住民税の障害者控除についてl 福島の進路相続税の障害者控除出典 : 障害者控除には相続税が控除される制度もあります。それは相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くというものです。相続税には主に相続や遺贈が関わってきます。法定相続人と呼ばれる法律上で決められた相続人に遺産が引き継がれることを相続と言います。一方、遺贈とは遺言により遺産が引き継がれることを言います。平成28年現在、相続税における障害者控除の額は次のようになっています。まず、相続人となる障害者が自身の年齢を85歳から引き、その年数1年につき10万円を足していきます。最終的にでた金額を障害者控除額として、相続税額から差し引きます。相続人が特別障害者のときは10万円ではなく20万円として計算します。■一般障害者....控除額=10万円×(85歳-相続した時の年齢)■特別障害者....控除額=20万円×(85歳-控除した時の年齢)しかし相続した時の年齢が、35歳5ヶ月のように端数が出てしまう場合は5ヶ月などの端数を切り捨てて計算します。障害者控除が受けられるのは以下の3つの条件全てに当てはまる人です。1. 相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人2. 相続や遺贈で財産を取得した時に障害者である人3 .相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること 障害者の税額控除l 国税庁障害認定基準出典 : 障害者控除の対象となるのは、次の8つの条件のいずれかに当てはまる人です。1. 精神上の障害により、事理を弁識する能力を常に欠く状態にある人2.知的障害:児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人。このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。3.精神障害:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳(2級、3級)の交付を受けている人。このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。4.身体障害:身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳(3級~6級)に、身体上の障害がある人として記載されている人。このうち障害等級が1級または2級と記載されている人は、特別障害者になります。5.満65歳以上の人:精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が1、2又は4に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人。このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。6.戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人。このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は特別障害者となります。7.原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人8.この年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人 障害者控除l 国税庁障害者控除を申請するうえでの注意点出典 : 障害者手帳の交付を受けている本人が何かしらで収入を得ている場合、通常は確定申告をする必要があります。しかし前年度の所得の総額が125万円までであれば課税対象とはならないので確定申告の必要はありません。もし不安であれば最寄の市町村役場や税務署に問い合わせてみましょう。障害者の非課税についてl東京都新宿区身体障害者手帳の交付を受けていない場合は、身体障害者福祉法上の障害があっても障害者控除を受けることができません。しかし身体障害者手帳の交付を申請中である場合でも、障害者控除を受けることができます。そのときに必要となるものが、身体障害者手帳を交付されるための医師の診断書です。また精神障害者保健福祉手帳は申請中であっても障害者控除を受けることができないため、交付されてから申請する必要があります。周囲の協力がなければ日々の生活を送ることができない「要介護認定」を受けていても障害があるとは判断されないということに注意が必要です。なぜなら要介護認定の基準は介護保険法の規定であり、障害者控除には適応されないからです。しかし、こういったケースにおいても障害者として認定を受けることができる場合があります。それは、年齢が満65歳以上の人で、障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長から認められたときです。障害があると認められた時に発行される書類は「障害者控除対象者認定書」と呼ばれます。認定書の発行申請には、たとえば東京都八王子市の場合であれば、•申請書•対象者本人の介護保険被保険者証•医師の意見書•対象者本人の印鑑といったものが必要です。自治体によって必要なものが異なる場合があるので、市役所にお問い合わせすることをおすすめします。要介護等認定高齢者の方に対する税法上の障害者控除についてl 東京都八王子市税についての相談窓口l 国税庁申込方法出典 : 障害者控除を受けるためには会社員であれば会社で行われる年末調整の際に、そして自営業者であれば確定申告で可能となります。年末調整では会社の指示に従い提出書類に必要事項を記入し提出手続きをします。自営業者である場合は年末調整がないため、毎年決められた期間に最寄りの税務署で確定申告を行います。しかし、会社に勤めている人でも年末調整で障害者控除を申請せずに、個人で確定申告を行い、そこで控除を申請することも可能です。申し込みの際に必要書類とされるものはありません。しかし会社によりコピーの添付を求められることもあるため、障害者手帳、障害者控除認定書などの障害控除を受ける権利があることを証明できるものを、いつでも提示できるよう必ず準備しておきましょう。確定申告手続き方法l 国税庁相続税においての障害者控除では相続の開始があったことを知った翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告書を税務署に提出し、書類を提出した日と同じ日に相続税を納める必要があります。 相続税の障害者控除l 国税庁その他の障害者本人が受けられる税制上の特例出典 : 障害がある人への税負担の配慮は所得税や住民税、障害者控除だけではありません。他にも障害がある人本人が受けることができる特別な制度が存在します。身体障害、戦傷病、精神障害、そして知的障害がある人のなかで一定の条件を満たしている場合、申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けることができます。自動車税・自動車取得税の減免制度l 東京都主税局障害がある人が生活をしていくために財産権の移動があったときは、特別障害者の方については6,000万円まで、障害者の方については3,000万円まで贈与税がかかりません。この非課税の適用を受けるためには、財産権を移転する際に障害者非課税信託申告書を、信託会社を通じて最寄りの税務署に提出しなければなりません。心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金については、所得税はかかりません。心身障害者扶養共済制度とは障害がある人の生活の面倒をみている人が、任意で加入する制度です。これは毎月一定額を扶養している人が支払うことにより、万が一のことがあったときに障害がある人に一定の給付金をおくることができる制度です。しかし、制度の利用をやめたときに支払われる脱退一時金には所得税が発生します。身体障害者手帳などの療育手帳の交付を受けている人が銀行などの350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、一定の手続を要件に非課税の適用を受けることができます。これをマル優、特別マル優と呼び、この制度を利用したい場合は、預け入れ等の際に金融機関の窓口などに確認書類として手帳を提示して確認を受ける必要があります。障害者と税l 国税庁障害者に関する税制上の特別措置一覧 平成17年度版l障害者白書まとめ出典 : 所得控除の一つである障害者控除は、様々な人を対象としているため申請条件・方法が複雑に見えてしまうことがあります。また障害と一概に言っても、目に見える障害ではない場合があったり、お金の問題ということもあったり、周囲にはなかなか相談できず障害者控除に対してさまざまな不安を抱えている人も多いです。しかし障害があることを証明するものを既に取得している場合は、申請は年末調整か確定申告の提出書類に必要事項を記入するだけの、比較的かんたんな手続きで控除が受けられます。そのため少しでも気になることがあるときは、国税庁や市区町村の相談窓口に相談することをおすすめします。
2016年09月27日ある日、中学生の息子から相談を受けるUpload By かなしろにゃんこ。発達障害のある我が家の息子。周りに合わせてコミュニケーションをとることが苦手で、小学校のときは人間関係でたくさん失敗してきました。そのつまづきから友だちづき合いを学んだおかげで、中学校では友だちには恵まれました。そんな息子からある日相談を受けたのですが、それが私にはちょっとびっくりする内容だったのです。一緒に遊んでいる友達の名前をド忘れ!?Upload By かなしろにゃんこ。息子にによれば、大勢で遊んでいろいろなことに気を配らなきゃいけなかったり、何か一つのことに集中している状況だと、友達の名前がとっさに出てこないことがあるというのです。それも一度や二度ではなく、息子にはよく起きることのよう。そんな経験がなかった私は、これを聞いてびっくりしてしまいました。発達障害がある息子の特徴を確認するきっかけになったUpload By かなしろにゃんこ。その時は名前を忘れてしまっても、またしばらくするときちんと思い出せるようです。親子で話しているうちに、記憶が苦手なことや、一度にたくさんのことをすると混乱するといった息子の特性が合わさり、こうなってしまうのではという結論に至りました。ちなみに名前を忘れてしまったときは、呼ぶのをあきらめて「お前さ~」と言って誤魔化し、切り抜けているそうです(笑)。
2016年09月27日