StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (10/27)
一般的に、平日の夫婦の会話量はどのくらいなのでしょう。「夫婦のコミュニケーション」に関するアンケート調査によると、「10分~30分未満」が27.3%と一番多いそうです。そして……驚かないでくださいね、次に多かった答えは「10分未満」が26.7%ですって!皆さんのご家庭では、今日、どんなことを話しましたか?■参照コラム記事はこちら↓夫婦の会話から子どもは〇〇〇を学ぶ。賢い子に育てるための“会話術”
2020年01月19日子どもを十分に「甘えさせる」ことは、育児をするうえで重要だと言われていますよね。しかし、子どもを「甘えさせる」のと「甘やかす」のでは、大きく意味が異なります。「甘やかす」ほうに偏ってしまうと、子どもの成長に悪影響を及ぼす可能性もあるのです。今回は、子どもに対する「甘やかし」と「甘えさせ」の違いについて紹介しましょう。「甘やかし」と「甘えさせ」を間違えることのリスク子どもを甘やかすことで、「親からの愛情で満たされてほしい」「自己肯定感を高めてほしい」と考える人は珍しくないでしょう。「子どもをかわいがるゆえに、ついつい甘やかしてしまう」という人もいるかもしれません。しかし、「甘やかし」と「甘えさせ」は意味が違い、子どもに与える影響にも差があります。発達心理学・幼児教育の専門家である東京学芸大学の岩立京子先生によると、子どもを「甘えさせる」ことによって、親子の愛着形成や子どもの自立心が芽生えるきっかけとなり、やがて子どもが家族以外の人との信頼関係を築くことにもつながるそう。一方で、「甘やかしてしまう」と、子どもは自分の要求は何でも応えてもらえると認識してしまい、わがままになってしまいます。いつまでもパパ・ママを頼り、精神的にも社会的にも自立できなくなってしまう恐れも。「甘やかし」と「甘えさせ」の違いでは、実際のところ「甘やかし」と「甘えさせ」は、何が違うのでしょうか?「自己肯定感を高めることの大切さ」を広める活動をしている、一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会によると、「甘やかし」は、大人の都合で子どもに何かを促したり、言うことを聞かせようとしたりすることだそう。「心配だから」「どうせできないだろう」と子どものやることなすことすべてに手を出す、過保護や過干渉と言われるような行動も含まれます。対して「甘えさせ」は、あくまでも子どもが主体となって、子どものペースが守られている状態で、どうしてもできない場合に親がサポートしてあげることだそう。たとえば、「お友だちのおもちゃを貸してほしいと思っているものの、恥ずかしくてうまく言えないときに、親が先回りしてお友だちにおもちゃを貸してもらえるよう頼むのではなく、子どもと一緒に『貸して』とお願いする」といった状態です。同協会によると、親や祖父母にしっかりと甘えさせてもらった子どもは、自己肯定感が高まったり、失敗してもまた頑張ろうと思えたりするそうです。さらに、人に助けを求めたり、自分の弱い部分を見せたりすることもできるようになるとのこと。加えて、人を信じる力も強くなり、相手に対する思いやりも深くなるとか。「甘えさせ」は、子どもが強く生きていくための力や、人間関係を構築するうえでの基礎を育むといえるでしょう。子どもを伸ばす「甘えさせ」3つ子どもを「甘えさせる」ためには、具体的に何をすればいいのでしょうか。家庭でもすぐに取り入れられる方法を3つご紹介しましょう。「体と心のコミュニケーション」を大切にする子どもの心を育む家庭教育の専門家・田宮由美氏によると、子どもが親にスキンシップを求めてきたり、「お話し聞いて」と言ってきたりするのは「精神的要求」であり、「自立に必要な甘え」だそう。もし「いつまでも甘えちゃダメ!」と突き放してしまうと、子どもは「一度お母さん(お父さん)から離れると、もう二度と受け入れてもらえないかもしれない」と不安になり、自立しようとしなくなると言います。子どもがこうした行動をとった際には、十分に時間を確保して、甘えさせてあげましょう。何かを欲しがったときは「約束」で対応する子どもがおもちゃやお菓子を欲しがり、スーパーで泣きわめいてしまう……といった場面は、多くの保護者が経験していることでしょう。周囲に迷惑がかかるし、泣き止んでくれるのなら……と買ってあげたくなってしまう方も多いかもしれません。しかし、「買わないと泣き止まないから」と、すべての物質的要求に応えてしまうのは、子どもに悪影響を及ぼす「甘やかし」でしかありません。田宮氏いわく、こうした状況に陥った場合は「これはお誕生日に買おうね」「お菓子とジュース、両方は買えないから、どちらかひとつだけだよ」と約束するなどして、節度を持って対応することが重要だそうです。断るときは「理由」を話す「弟や妹が生まれたばかり」「親の体調が悪い」といった場合は、「甘えさせ」の時間が十分にとれないこともあるかもしれません。前出の岩立京子先生によると、子どもの「抱っこしてほしい」という要求に応えられない場合は、「お母さん具合が悪いから、少し休んでから抱っこしてあげるね」などとできない理由を説明し、我慢できたらしっかり褒めると良いそう。子どもの気持ちに寄り添いつつも、親が無理しすぎることのないよう、上手に甘えさせていきたいですね。***似ているようでまったく違う「甘やかし」と「甘えさせ」。違いをしっかりと認識して、子どもを十分に甘えさせてあげましょう。文/田口 るい(参考)一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会|子どもを「甘やかす」と「甘えさせる」の違いは?All About|子供を自立させる甘えと、ダメにする甘やかしの違いベネッセ教育情報サイト|「甘え」と「甘やかし」の違いを知って自立心を育てよう!ベネッセ教育情報サイト|自立する子に育てる!幼児の甘えさせ方【前編】甘えとわがままの違いとはベネッセ教育情報サイト|自立する子に育てる!幼児の甘えさせ方【後編】こんな時はどうする?NHKエデュケーショナルすくコム|甘えと甘やかし、どう違う?
2020年01月18日人間は周囲の環境から影響を受けながら成長します。そう思えば、「子どもが賢く育つ家」もあれば、そうではない家もありそうです。お話を伺ったのは、2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さん。そのままずばり、「子どもが賢く育つ家というものはあるのでしょうか」と聞いてみました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)「時間泥棒」になるツールの扱いに要注意「賢い」とひとことでいっても、そのとらえ方は人それぞれでしょう。子どもが社会に出たときにストレスフリーで過ごせて、楽しく生きていくために必要な力を身につけていることを「賢い」というのなら、これまでの記事で述べてきたように、その賢さは家の使い方次第で大きく伸ばすことができます。リビング学習やダイニング学習では、社会で生きていくために重要なさまざまな社会性を伸ばせますし(インタビュー第2回参照)、子ども部屋の使い方によって、子どもに自立を促す訓練をさせることもできます(インタビュー第3回参照)。では、他に子どもの成長のためにできる家やインテリアの使い方などについて、わたしがおすすめするものをいくつか紹介しておきましょう。まずはテレビの扱いです。テレビというものは、無意識に観ているとどんどん時間を奪ってしまうものです。人生を無駄にさせるものだといっても大げさではないでしょう。ですから、本当に観たい番組だけを観るという習慣をつけることが大切です。そのための方法は、テレビを観ないときには画面に布をかけておくというもの。また、リモコンの電池をつねに抜いておいて、使うときだけ入れる。そうすると、無意識にテレビを観ることがなくなります。これらのことは、ゲーム機やパソコンなどの扱いにもいえます。ゲーム機をテレビにつなぎっぱなしにせず、遊ばないときはしまう。パソコンもタイマーをセットして決まった時間でスリープモードになるようにする。そのようにして、「時間泥棒」になるツールが子どもの時間を奪ってしまわないようにしましょう。また、ファミリーライブラリーとでもいうような、家族でひとつの本棚を共有することもおすすめです。むかしからずっとある良書はやはりいい本です。そういった、親が好きな本、あるいは子どもが大人になったら読んでほしい本を本棚の高い位置に置いておく。小さいうちは下の棚を使っていた子どもも、成長するうちにそれらの本に興味を持ちはじめるでしょう。「そろそろ読めるかな」と挑戦して「やっぱりまだ読めない」とあきらめても、またいずれ挑戦するはずです。そうした、より高みを目指す姿勢が、賢い子に育つための下地となってくれるのです。家の使い方に対する夫婦間の価値観の共有が重要そして、まずなによりも夫婦で家の使い方に対する価値観を共有することが大切であり、大前提となります。リビング学習やダイニング学習をどうするのか、子ども部屋の扱いはどうするのか、そういったことについて夫婦で話し合って、できるだけ価値観を一致させることが理想です。たとえば、母親は「わたしは小さい頃にひとり部屋で育って寂しかったから、子ども部屋はいらない」、父親は「俺はきょうだいと同部屋だったから、子どもに個室を絶対与えてあげたい」というように、両親の意見が完全にバラバラだと、子どもは混乱してしまいます。もちろん、子ども自身に注目することも大切です。夫婦で話し合って、「小さい頃はダイニングで勉強をさせて、中学生になったら個室で勉強させる割合を半々くらいにしようか」といった方針になったとしても、子どもがダイニング学習でしっかり成果を出し続けていればそのままでもいい。子どもの様子を見ながら夫婦で話し合って、家や個室の使い方の方針をつねに更新していきましょう。子育ては親が思っている以上に大変で当然それから、これは直接的に家の使い方についての話ではありませんが、もうひとつつけ加えるなら、子育てそのものに対しての認識を夫婦で改めてほしいと思います。いま、共働き家庭が増えているとはいえ、やはり家庭での子育ての中心を担うのは母親でしょう。その母親のなかには、「子育てが難しい」「きちんと子育てできないわたしは駄目な人間だ」と思っている人も多いものです。でも、きちんとできなくて当然なのです。そもそも、日本の家庭の歴史を振り返ると、戦前までは大家族で住んでいて、子育てを担うのは子どもの祖父母でした。子どもの両親は働きに出ていたわけです。しかも、心理学的にも子育てをするための最適年齢は50歳以上といわれています。そう考えると、戦前の日本では理想的な子育てができていたといえます。ところが、1950年代以降にアメリカのライフスタイルを取り入れた結果、核家族化が進んで子どもと祖父母との関係性は希薄になり、子育ては主に母親の仕事になりました。それまで祖父母のふたりでしていた子育てを、突然、若い母親がひとりで行うようになった。そのための文化やノウハウなんてできていません。ですから、うまくできなくて当然なのです。では父親のほうはどうでしょうか。いまでこそこんな夫は減ったかもしれませんが、妻に対して「俺は必死に働いているのに、家でゆっくり過ごしながらの子育てがなんでうまくできないんだ」なんて考える夫もなかにはいます。でも、しっかりやり取りができる大人を相手にする仕事と、勝手の利かない子どもを相手にする子育てでは、後者のほうが比較にならないほど難しいものです。まずは、夫婦ふたりで、子育てとは本当に難しいものだと認識することが大切です。そのうえで、どうやって子育てのサポート体制を整えるのかを考えてください。子どもが賢くすくすくと育つには、子どものいちばん身近にいるお母さんの精神状態が安定していることがなによりも大切です。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月18日「子ども部屋」とはどんな場所でしょうか?子どもが寝たり、好きな遊びに没頭したり、それから勉強をする場所――。すぐに思い浮かぶのはそんなところかもしれません。しかし、2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さんは、「子ども部屋には、もっと大きな役割がある」といいます。子どもにとって、子ども部屋にはどんな存在意義があるのかを教えてもらいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)アメリカの子ども部屋は、自立を促す訓練をする場所いまでこそ日本の家にもあたりまえのように子ども部屋がありますが、そうなったのは1950年代以降のことです。敗戦後、アメリカのライフスタイルに憧れた日本に、当時最新のアメリカの間取りが入ってきました。それは、リビングとダイニングとキッチンがあって、個室が並んでいるもの。その個室を、アメリカではベッドルームと呼びます。つまり、アメリカでの子ども部屋は、勉強をする部屋などではなく本来的に寝室なのです。みなさんも、アメリカの映画やドラマのなかで、まだ生まれたばかりの赤ん坊が寝室にひとりで寝かされている描写を見たことがあるでしょう。それは「ピューリタン思想」の影響です。その誕生の地であるヨーロッパでは、ピューリタン思想は迫害されました。そのため、ピューリタン思想を持つ人々がアメリカに渡ったという歴史があります。ピューリタン思想とはどういうものかというと、「人間は生まれながらにしてひとりの個人として尊重されるべき」という思想です。そのため、アメリカでは生まれたばかりの子どもにもひとつの部屋を与えるわけです。そして、その個室はただの寝室ではありません。「子どもの自立を促すための訓練をする場所」なのです。たとえば、その空間を自分で片づけたり掃除をしたりする整理整頓能力や、どこにどの家具を置いてカーテンはどんな色にするかといったインテリア構築能力を鍛える。また、リビングやダイニングで家族と過ごしたあとで個室に戻ると、ひとりでいることの寂しさを体感する。そのようにして、子どもの自立を促すことが、アメリカにおける個室が持つ本質なのです。日本で偶然生まれた「子ども部屋で勉強する」習慣ところが、日本にはそういった思想は抜け落ちて個室がある間取りだけが入ってきた。そのため、個室をどう使えばいいのかわからず、当初は夫婦の寝室として使われていただけでした。そのうち、高度経済成長時代になると、「子どもをいい大学に行かせよう」という高学歴至上主義のムーブメントが起きました。親は子どもにしっかり勉強をさせたい。でも、仕事を終えて帰ってきたお父さんはビールを飲みながらテレビでプロ野球中継を観たい。そんな場所で子どもに勉強をさせるのは忍びないということで、自分たちの寝室を子どもに与えて勉強をさせた。さらに、1950年代後半に日本で学習机が生まれたことも相まって、日本では子どもは子ども部屋で勉強するという習慣が根づいたわけです。そう考えると、ここ数十年で偶然できあがったような歴史の浅い習慣を疑問視してみることも大切です。リビングやダイニングで勉強することが子どもにさまざまな力を与えてくれることはすでにお話したとおりです(インタビュー第2回参照)。だとしたら、子ども部屋は、やはりアメリカ式の自立を促すための訓練をする場所と認識を改めるのがいいのではないでしょうか。でも、とくに都市部に住んでいて子どもの数が多いという場合には、子どもそれぞれに個室を与えることができないということもあるでしょう。あるいは、子どもが高校生くらいになってふたり部屋や4人部屋の寮制の学校に行かせるといった場合もあります。そういう部屋では自立を促す訓練ができないのかというと、そうではありません。複数人で部屋を共有する寮がそうであるように、同じ部屋であっても自分のエリアを持つことができればいいのです。きょうだいのあいだでも、「ここはあなたの場所だよ」と決めてあげて、そのエリアを自分でコントロールできるようにするのです。個室を通じて、自由と責任をセットで教えるもちろん、与えっぱなしではいけません。先に述べたように、個室や自分のエリアは、整理整頓能力とインテリア構築能力といった力を身につけさせるための場所です。でも、とにかくものを出したら出しっぱなし、すぐに散らかしてしまう子どももいるでしょう。そのとき、親が片づけてしまっては、それらの力を構築するチャンスを奪うことになってしまいます。加えて重要なのは、自由になる空間を手に入れることは、責任が発生することでもあるということ。それを子どもにも認識させてほしいのです。たとえば、親子で話し合ったうえで、「自分の部屋を散らかして3回叱られたら、個室は没収」というふうに子ども本人にルールを決めさせる。自由と責任をセットで与えるわけです。自由とは、なんでも好き勝手にしていいということではありません。なぜなら、自由には必ず責任が伴うからです。その、社会に出たときにとても大切なルールを、子どもの頃から個室の扱い方を通じて学ばせることが大切です。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方(※近日公開)【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月17日今どきの子どもたちのコミュニケーション能力低下は、学校や新卒採用などの現場において、ずいぶん前から言われ続けてきました。また、学校生活から卒業して社会人になれば、さらに高度で複雑なコミュニケーションに対応できる力が求められるでしょう。将来、社会人生活を送るのに十分なコミュニケーション能力を育むためには、日頃の家庭でのコミュニケーションの在り方が大きく影響します。子どものコミュニケーション能力がなぜ低いと言われるのか、そして家庭でコミュニケーション能力を育てるために親ができることについて紹介します。子どものコミュニケーション環境は、今と昔で大きく変わっている子どものコミュニケーション能力が低くなったと言われる背景には、社会の大きな変化があります。たとえば、翌日使う持ち物を確認し忘れていたことを気づいたとき、子どもたちはどうするでしょうか。かつては友だちの自宅へ電話をかけ、応答した家の人に友だちへの取次ぎをお願いし、代わって出た本人に確認をしていましたが、今ではメールアプリなどでダイレクトに、しかも声を発することなく確認することができます。また、わからないことがあれば、親や先生に聞くよりも、先にネットで検索して調べたほうがより早く、そして多くの情報を得ることができる、と考える子も少なくないでしょう。もうひとつ、普段の家庭での過ごし方をイメージしてみましょう。学校や園から帰ってきた子どもたちが、友だち同士、近所で集まって遊ぶ姿を見ることは少なくなりました。そもそも子どもの数が少なくなっているうえに、習い事でお互いに遊ぶ時間を合わせにくい現状があります。夕食時には、同居するおじいちゃんおばあちゃんも含め大人数で食卓を囲んで、その日あったことを話し、いろんな世代の意見を交えながら団らんする――そんなシーンも、昭和を描いたドラマやアニメでしか見かけなくなりました。ITの発達と少子核家族化が、子どもを取り巻くコミュニケーション環境を変えたと言えるかもしれません。言葉が足りないことが原因でトラブルに社会の変化に合わせるように、今どきの子どもたちは、小さなコミュニティの中で仲間内や家族とやりとりする比重が大きくなっています。そして学校生活では、単語レベルでの短い言葉のやりとりが、クラスメートとの意思疎通を不十分にさせてしまい、そこからトラブルになってしまうことも。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏は、現代の子どもたちのコミュニケーション能力について、「良好な対人関係をつくる能力が低下している」という “否定的な見方” がある一方で、「周囲の人間関係を的確に把握して、それに自分を合わせるなど高い能力がある」という “肯定的な見方” もあるとしています。しかし、全体的なコミュニケーション能力はやはり低くなっているようです。ただ、今時の子どもたちには、仲間同士では必要以上に気を使うのに対して、大人など異世代や仲間以外に対する人間関係には無関心という傾向もあるように思われます。いずれにしても、昔に比べれば、全体的なコミュニケーション能力は低くなったと言っても過言ではないでしょう。(引用元:ベネッセ教育情報|就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭から)「やばい」「うざい」「きもい」などの無思慮な短い言葉でやりとりを許し合える身近な関係から一歩外へ出た途端、お互いの言葉が足りないことで、子どもたちの間にトラブルが生じていると考えられます。コミュニケーション能力は就職までも左右する学校生活でのトラブルだけでなく、社会人生活、とりわけその第一歩となる就職にもコミュニケーション能力は大きく影響を及ぼします。全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が2009(平成21)年秋に実施した「学生生活実態調査」によると、以下の特徴がある学生ほど、就職内定率が高いことがわかりました。目上の人との会話が得意家族との会話が多い友人の数が多いリーダー経験がある周囲の意見を尊重できる幅広い人間関係を形成して、自分から積極的に働きかけ、周囲に共感できること、つまりコミュニケーション能力の高さは、就職活動の結果までも左右するわけです。また、『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』の著者であり、現役東大生の西岡壱誠氏は、「友だちが多いヤツが東大に合格する」と話しており、“勉強に限らずさまざまな面で活躍している、成長スピードの速い人”の 共通点として、以下のことを挙げています。どんなに意見が違う人の話でも、話を遮るのではなく「いったんは聞いてみよう」という姿勢を持っている。そして、そのなかからなにかを得ようとしているように思います。(引用元:Study Hacker|現役東大生が「友だちが多いヤツが東大に合格する」と言う根拠。やっぱり “性格がいい人” が伸びていく)これは前述した「周囲の意見を尊重できる」という性格に当てはまるのではないでしょうか。どうやら、コミュニケーション能力は「学び」にも影響を与えるのですね。家庭でできるコミュニケーション能力アップ術子どもたちの将来を考えるうえで必要不可欠なコミュニケーション能力は、家庭でも意識することで向上できます。次に紹介するコミュニケーション能力アップ術でピンときたものがあれば、ご自身のお子さまに合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。■子どもの話を最後まで聞く帝京短期大学・生活科学科学科長である宍戸洲美教授は、子どもの話に「しっかり心を向ける」ことが大切だと言っています。まずは、「子どもの話を最後まで聞く」「スマートフォンを見ながら返事をしない」、この2つを心がけてみてはいかがでしょう。話を聞いてもらった経験が多い子どもだけが、話を聞ける子どもになるのです。また、親に話を聞いてもらうと、「お父さんお母さんは私を見ていてくれている、わかってくれている」と感じ、子どもの自己肯定感が高まります。■長い文章で話す「あれとって」「早くして」――親の私たちも、簡単な言葉で話しかけていることが多いのではないでしょうか。「次世代教育のグランドデザイン」を描く研究機関、内田洋行教育総合研究所が配信する「学びの場.com」は、親子間での会話こそ気をつけるべきだとしています。「リビングのテーブルに置いてあるレシピ本を取って」「〇時に家を出ないと用事に間に合わないから、それまでに出かけられるように準備しよう」など、親子で長い文章をやりとりしてみましょう。■学校や習い事以外の場所に出かける地域の行事や、公園や駅前で開催されるイベントなど、さまざまな人と触れ合える場に出かけてみましょう。その際、子どもだけにコミュニケーションを促すのではなく、親の私たちが積極的に声をかけてコミュニケ―ションを図るようにします。教育ジャーナリストの中曽根陽子氏も、「さまざまな価値観への理解とコミュニケーション力は、経験からしか学べない」と言っています。家庭や学校・習い事以外の場所にどんどん子どもを連れ出しましょう!***子どものコミュニケーション能力は、現代の社会の仕組みを見ても、自然に任せていてはなかなか伸びないようです。とはいえ、親が何でも先取りしてヒントを出したり代弁したりするのは禁物。じっくり焦らず見守っていきましょう。(参考)文部科学省|コミュニケーション教育推進会議(第1回)「コミュニケーション能力」に関する指摘・調査等内閣府|情報誌「子どもと若者」~子どもと若者への支援に向けて~コミュニケーション力を高めるためにベネッセ教育情報|就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭からStudy Hacker|現役東大生が「友だちが多いヤツが東大に合格する」と言う根拠。やっぱり “性格がいい人” が伸びていく学びの場.com|子どものコミュニケーション力は落ちているのかStudy Hackerこどもまなび☆ラボ|自己肯定感を育む、親子コミュニケーション。「聞いて!」「あとでね」の正解Study Hackerこどもまなび☆ラボ|学校と習い事以外の世界はありますか?「生きる力」を育てる “第3の居場所”
2020年01月16日「東大生の8割がリビング学習をしていた!」といった見出しの記事を読んだことがある人も多いでしょう。2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さんも、リビングやダイニングで子どもに勉強させることをすすめるひとりです。でも、ただ単にリビングやダイニングで勉強させればいいというわけではないようです。リビング学習、ダイニング学習が持つメリットと注意点を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)もともとなかった、子どもが子ども部屋で勉強する習慣いま、「リビング学習やダイニング学習が学習効果を上げる」といったことがいわれますが、ただ単にリビングやダイニングで子どもに勉強をさせればいいわけではありません。その本質的な答えは、「親のそばがいい」ということ。その象徴が、親、とくに母親がいることが多いリビングやダイニングというだけなのです。子どもは、親のそばでお絵描きや宿題をやりたがるものですよね。なぜなら、親のそばにいることで得られる安心感と、自分がやっていることを親に見てもらいたいという気持ちによってモチベーションが保たれているからです。みなさんも、あたりまえのように「勉強は子ども部屋でやるもの」と思っているかもしれませんが、そもそもその習慣が根づいたのはここ数十年の話。いわゆる学習机が日本で生まれたのは1950年代後半です。それまでは、他の先進国も含めて、子ども部屋に学習机を置いて子どもに勉強をさせるという習慣はなかったのです。でも、先に述べたように、宿題も子どもは親のそばでやりたがります。そのとき、親が「せっかく学習机があるんだから」と、子ども部屋で宿題をさせようとしたとします。すると、子どもは「勉強=ひとりきりでやらないといけないもの」と考えてしまう。勉強はつまらなくてつらいものと認識して、勉強に対する興味や熱意を失ってしまうのです。人とのかかわり、喧騒のなかで勉強をする重要性勉強も子どもは親のそばでやりたがるというのは、「人とつながっていたい」という人間の本能なのでしょう。そう考えると、親がいるリビングやダイニングで勉強することこそが自然であって、子ども部屋にこもってひとりで勉強することは不自然ともいえます。しかも、その後の人生を考えてみても、人とかかわりながら必要な勉強や仕事をできることが重要です。社会に出たあと、果たして本当にひとりきりでできる仕事はどれくらいあるでしょうか?仕事をして対価を得る以上、必ず他者とかかわることになる。そう思えば、将来、社会でスマートに生きていける社会性を持った人間に子どもを育ててあげるためにも、リビングやダイニングで家族とかかわりながら勉強をさせることが重要だとおわかりになるかと思います。また、リビング学習やダイニング学習には、喧騒に対する耐性をつけるという効果もあります。とくに子どもにきょうだいがいるような場合なら、弟や妹が大きな声を上げて遊んでいるような状況で勉強をするということもある。似たようなことは、社会に出たあとにも多いのではないでしょうか。オフィスの隣の席では先輩が大声で電話をしていてる。上司に呼ばれれば、すぐに仕事の手を休めて駆けつけないといけない。そういったなかでも、自分がやるべき仕事に集中できる必要があります。そういう力、喧騒に対する耐性が、リビングやダイニングで勉強する経験によって培われるのです。もし、いつも静かな子ども部屋でだけ勉強していたとしたら、どうでしょうか。その子が大人になったとき、他人がたくさんいるオフィスの喧騒のなかでは仕事に集中できないということになってしまうでしょう。このことは、大学入試などの受験のときにもいえます。試験がはじまってまわりから聞こえるカリカリという鉛筆の音が気になって、実力の半分も発揮できないといった受験生もいるのです。リビング&ダイニング学習の注意点あれこれそう考えれば、子どもの性格にもよりますが、基本的にはリビングやダイニングでの勉強がベースと考え、子ども部屋で勉強するのは特別な場合だけと考えていいでしょう。みなさんにも、本当に集中しないといけない仕事は、静かな場所で誰にも邪魔されずにやりたいということもあるでしょう。子どもの勉強もそれと同じことだと考えるべきです。とはいえ、リビング学習やダイニング学習を子どもにさせるにはいくつか注意点もあります。まずは、発達障害の傾向がある子どもの場合です。そういう子は、リビングやダイニングなどまわりにものが多い環境では、すぐに気が散ってしまいます。そのため、机のうえにパーテーションのような仕切りをつくって、勉強に集中できる環境をつくってあげてください。そういう状況でも、顔を起こせばお母さんやきょうだいがそばにいてコミュニケーションを取れますから、リビング学習やダイニング学習の効果はしっかり得ることができます。また、照明にも注意が必要。ダイニングは料理が美味しそうに見えるように、リビングはリラックスできるようにと、照明は暗く設定されていることがほとんど。そのため、調光機能のある照明にしたりスタンドライトを置いたりして、子どもの目に悪影響を与えないようにしてあげてください。それから、椅子にも要注意です。学習机の場合は天板の高さを調節できますが、一般的なダイニングテーブルはそうではありません。大人用の椅子を使わせては、姿勢は悪くなりますし、勉強にも集中できません。そこで、「ストッケ」というブランドの製品など、足を乗せる板も座面も高さを調節できる椅子を用意しましょう。そして、なにより親がリラックスしておくことが大切です。とくに綺麗好きな母親の場合、ダイニングテーブルに消しゴムかすが散らかったりすると、ついイライラしてしまうもの。でも、「そんなに散らかして!」なんて叱ってしまっては、子どもは萎縮してしまいますし、「ここで勉強したら駄目なのかな」と思ってしまう。そうしないためにも、汚してもいい子ども専用のカウンターテーブルを用意するなどして、穏やかに子どものそばにいてあげてください。子どもにとって、勉強に対する最大のモチベーションは、大好きなお父さんやお母さんがよろこぶ顔を見たいという気持ちなのですから。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは(※近日公開)第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方(※近日公開)【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月16日「ねるねるねるね」という名前に懐かしさを感じる人も多いことでしょう。粉と水を混ぜて練っているうちにできあがるお菓子を自分で作って食べる、あのワクワク感を思い出しますね。皆さんが子ども時代に遊びながら食べた「ねるねるねるね」は、現在、「知育菓子®」という名前でシリーズ化され、子ども向けお菓子の新ジャンルを形成しています。今回は、代表的な「ねるねるねるね」をはじめとする「知育菓子®」を4つ取り上げ、それらのどの部分が「知育」になるのか考えてみます。「知育菓子®」とは、子どもの成長に大切な力を育むお菓子「ねるねるねるね」は1986年に発売されると、子どもたちの間で瞬く間に大人気のお菓子となりました。駄菓子屋でおなじみの水で溶いて作る粉ジュースをもともとクラシエフーズが生産販売していたことにルーツがあるそうで、今でも「粉と水」にこだわって商品を開発しています。粉に水を入れて練れば練るほど色が変わる、固まる、膨らむ――その変化を子どもはおもしろがり、興味をもったのでしょう。しかし当時、「スーパーのお菓子売り場で、親にねだってねだってようやく買ってもらった」という記憶を持つ方もいるかもしれません。親御さんの中には、食べ物で遊ぶことに抵抗感を感じたり、「色が変わったり膨らんだりするなんて、何が入っているのかわからない」という先入観から子どもに買い与えたくないと考えたりする方も多かったはず。この「食べ物で遊ぶこと」への親の抵抗感を払しょくするのが、クラシエフーズが2005年に名付けた「知育菓子®」というコンセプトです。「おやつの時間に夢中で作る。そんな楽しい体験を通して、子どもの成長に大切な力を育むお菓子。」知育菓子®はそうした存在でありたいと願っています。(引用元:ねるね研究室|知育菓子®について)今の子どもたちは、おやつにお菓子をお腹いっぱい食べることよりも、楽しい体験ができるおやつを求めているという傾向をつかんだクラシエフーズは「知育菓子®」を打ち出し、さらに、商品には保存料や合成着色料は含まれていないという点をわかりやすくパッケージに表示しました。知育とは、記憶力・思考力・判断力・イメージ力ところで、「知育菓子®」の知育とは具体的に何を指すのでしょうか。クラシエのホームページには、以下のように書いてあります。「お菓子を作る」という楽しい体験を通して、豊かな創造力を育むことを私たちは「知育®」と呼んでいます。(引用元:ねるね研究室|知育菓子(R)について)また、ベネッセ教育情報サイトでは、知育について「計算や読み書きなどの『学習能力』のことではなく、思考力や記憶力、判断力、発想力、想像力といった “知的能力” のこと」としています。知育とは、単に「頭の良さ」だけをみがくことではありません。「私の使ってる玩具を○○ちゃんが貸してと言ってきた。まだ遊びたいけどイヤって言ったら、○○ちゃん泣いちゃうだろうな。だったらがまんして貸してあげよう」というような想像力や判断力は、思いやりや優しさにつながります。知的能力を育てることは、子どもの心を豊かにすることにもつながるのです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|将来の可能性を広げよう!子どもと楽しむ知育教育のススメ)子どもの心を豊かにし、創造力をも育める「知育」が、おやつの時間に楽しみながら可能になる――なんとも魅力的な「知育菓子®」ですが、このほかにも、なんと「脳」の活性化にも有効なのだそう。金沢工業大学大学院博士課程1年の沖沙矢佳さん(神宮研究室)が2018年に行なった実験によると、カラフルなグミやキャンディを作る商品「カラフルピース」には、以下の効果があることがわかりました。「知育菓子®」をつくったあとも集中力(脳の活性化)が持続「知育菓子®」をつくると副交感神経が活性化しリラックスできる 楽しいだけでなく集中力アップにも効果があるなんて、親としては、遊ばせないなんてもったいない気持ちになってきますね。クラシエフーズ「知育菓子®」の知育ポイントでは最後に、クラシエフーズの「知育菓子®」から人気の商品を4つを選び、魅力と知育効果をご紹介しましょう。■ねるねるねるね<作り方>(1)1番の袋に入っている粉をパッケージのトレイに入れ、三角カップ1杯分の水を混ぜると、もこもこした紫色のクリーム「ねるねる」ができる(2)そこへ2番の袋の粉を入れて混ぜると、クリームの色が変化する(3)最後に3番のキャンディチップを「ねるねる」につけて出来上がり1番の粉をぐるぐる混ぜていくと、もこもこしたクリームができあがり、2番の粉を加えると色が変化することに驚いてワクワクするのが、「ねるねるねるね」の魅力ですね。「ねるねる」が紫色から変わるのは、紫キャベツやブルーベリーにも含まれているアントシアニン系色素によるもの。試験紙と同じで酸性で赤色、アルカリ性で青色に変化します。もこもこ感は、果物にも含まれる「クエン酸」とベーキングパウダーの原料「重曹」が反応して発生した炭酸ガスを利用しています。■つかめる!ふしぎ玉<作り方>(1)「ふしぎジュースのもと」と水をトレイに入れてスプーンで混ぜる(2)「玉のもと」と水を別のトレイに入れてスプーンで混ぜる(3)スプーンに「玉のもと」を注ぎ、「ふしぎジュース」の中に入れる(4)5分待つと固まる粉と水をまぜた2つの液体から、ぷるぷるした感触の「ふしぎ玉」が作れる、おもしろい「知育菓子®」です。ぷるぷるのふしぎ玉のヒミツは、理科の実験キット「つまめる水」とまったく同じ原理によるもの。海藻に含まれる食物繊維のひとつ「アルギン酸ナトリウム」の溶液(玉のもと)を、食品添加物に使われる「乳酸カルシウム」の溶液(ふしぎジュースのもと)の中に入れることで、「アルギン酸カルシウム」の膜が形成されて、指でつまめるようになるのです。■たのしいおすしやさん<作り方>マグロ、たまご、イクラ軍艦のおすしをつくります。(1)「ごはんのもと」「たまごのもと」「マグロのもと」をそれぞれ、規定の分量の水を入れた専用トレイに入れて混ぜる。「たまごのもと」と「マグロのもと」はトレイに平らに広げる(2)黒いソフトキャンディーを、シートに描かれた海苔の大きさに広げる(3)「イクラのもとA」と「イクラのもとB」を、それぞれ規定の分量の水を入れた専用トレイに入れて混ぜる。BをAの上にポトポト落としていくらを作る(4)専用シートの上で「たまご握り」「マグロ握り」「イクラ軍艦」を仕上げる(5)「しょうゆのもと」に水を混ぜてしょうゆを作り、おすしにかけて出来上がり手順が多めのポッピンクッキンシリーズは、「ねるねるねるね」では少し物足りなくなった小学生のお子さんでも楽しめます。イクラ作りには、先に紹介した「つかめる!ふしぎ玉」の原理を応用しています。握りずしと軍艦巻きを作るプロセスを遊びながら体験することができます。最後に醤油も添えて、本格的な「おすしやさんごっこ」を楽しめます。本当のお寿司を親子一緒に作ってみて、その違いを経験させるのも楽しそうですね。■できたてパンやさん<作り方>パン生地をアレンジして「メロンパン」「いちごデニッシュ」「くまさんパン」を作ります。(1)「いちごゼリーのもと」を水で溶かし、型に入れて固める(2)「パン生地のもと」に水を含ませて手でこね、パン型に入れて固める(3)「メロンパンの皮のもと」に水を含ませて混ぜ、手でこねてから伸ばして2のパン生地を包む。そして表面にスプーンで線を入れる(4)2と3をレンジで加熱する(5)「カスタードのもと」を袋に入れたまま水を加えて混ぜ、袋の端を切ってしぼり、袋に仕上げる(6)4で焼いたパン生地に、1のいちごゼリーと5のカスタードクリームで飾りつける(7)「オレンジソーダのもと」に水を加えて混ぜる最近のシリーズには、今までにない「レンジで加熱する」という手法が加わって、より本物志向に近づいています。共通する材料から3種類のパンを仕上げるプロセスは、因数分解で共通因数をくくる考え方へのヒントにつながるかもしれません。また、「おすしやさんごっこ」と同様に、本物のパン作りを経験することができれば、より学びが深まるでしょう。***これらの「知育菓子®」が子どもだけで簡単に遊べるのは、「用意するのは水だけ」「ふりがなつきの説明書で子どもにも読める」という点も見逃せません。大人がレシピを読んであげたり、計量を手伝ってあげたりしなくても、子どもだけで遊べるという仕掛けは「ひとりでできた」という達成感を育み、自己肯定感を高める基礎にもなります。この「知育菓子®」は海外でも人気だそうで、「知育菓子®」を作る動画も何千万回と再生され、来日した外国人観光客がお土産にも買っているそうです。グローバルでも認められつつある「知育菓子®」、ぜひ親子で体験してみてください。(参考)ねるね研究室|知育菓子(R)についてねるね研究室|商品紹介ベネッセ教育情報サイト|将来の可能性を広げよう!子どもと楽しむ知育教育のススメwithnews|30周年「ねるねるねるね」最大の危機救った決死の「イメチェン」電子版週刊アスキー|『カオスだもんね!』累計7億個を売り上げた知育菓子『ねるねるねるね』を練りまくった結果LIVE JAPAN PERFECT GUIDE|【海外の反応】日本のおかしな知育菓子(R)を海外のおかしなオーストラリア人が作ってみたStudyHacker|脳の前頭前野を活性化させる “意外すぎる” もの。大人にこそ「創造体験」が必要だ。
2020年01月15日みなさんは自分が住んでいる「家」が好きでしょうか。とくに社宅に住んでいるなど「いまの家は仮住まい」というふうに考えている人なら、「好きかどうか、考えたこともない」という人もいるかもしれません。でも、2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さんは、「親が家のことを好きかどうかが、子どもの社会性の成長を大きく左右する」と語ります。いったいどういうことなのでしょうか。家が子どもに与える大きな影響について教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)社会とのかかわり方を学ぶリビングとダイニング人類の歴史を考えたとき、「家」というものは本来的にどういう場所だったかというと、「命を守る」場所です。人類は家を持ってはじめて外敵から身を守ったり健康を維持したりすることができるようになりました。そのため、家という環境が整って以降、人類の寿命は飛躍的に伸びたのです。そして、家に住むことがあたりまえになったいまでは、家は別の働きを持つようにもなりました。その働きとは、「習慣をかたちづくる」ということ。たとえば、「テレビを観る」という行為も、ひとつの要因から生まれるものではありません。ひとつは、「テレビがついていないと寂しい」などと思って能動的にテレビを観るケース。もうひとつは、空間のつくりとしてテレビとリモコンがすぐそばにあるために無意識にテレビのスイッチを入れるケースです。前者は人の意図による行為であり、後者は空間が人に働きかけた結果の行為です。それらが総合的に作用して、その家に住む人間の習慣がつくられていきます。そう考えると、家が子どもの人格形成に与える影響も非常に大きい。なかでも、リビングとダイニングの使い方による影響はとくに大きいと考えています。家族とは、社会の最小単位です。その家族とのかかわり方は、将来、社会に出たときに出会う上司や先輩、後輩などとのかかわり方の相似形といえます。子どもにとって、社会とのかかわり方の習慣をかたちづくる場が、リビングでありダイニングなのです。社会に出た子どもがストレスフリーで過ごせるためにリビングで普段から会話が多い家庭で育った子どもは、自然にコミュニケーション能力を伸ばしていきます。そういう子は、大人になったときにも周囲といい人間関係を築けますし、ディベートやプレゼンテーションなどでも力を発揮していけるでしょう。リビングは、社会のなかでの他者との関係の築き方を育む重要な場なのです。また、ダイニングも同様に重要です。大人になれば、周囲の人と一緒に食事やお茶をするということが頻繁にあります。食事というものは、互いの心をオープンにして、より親密な関係を築いていくための重要なツールです。その方法を、子どもはダイニングでの家族との食事を通じて学んでいくのです。そうして、リビングとダイニングでしっかりとコミュニケーション能力や社会性を育んだ子どもなら、社会に出たあともストレスフリーで過ごしていくことができる。逆に、リビングとダイニングでの家族のコミュニケーションがあまりにも不足している場合、子どもは社会との接し方がわからないまま育ってしまうおそれがあります。実際、そうした家庭で育った子どもが、20代になったいまニートになっている例を耳にしたことがあります。リビングとダイニングは、それだけ重要な場所なのです。いま、中年になった子どもの面倒を高齢の親が見る「8050問題」が取りざたされますが、そのひとつの要因として、リビングやダイニングでの家族との交流を通じて大人として必要な能力を得られないまま子どもが育ったということも挙げられるでしょう。まずは家を親がリラックスできる場所にするとはいえ、ただ子どもをリビングやダイニングで過ごさせればいいというわけではありません。なにより、家がリラックスできる空間であることが大前提になります。そうでなければ、家族と楽しく会話を交わし、大人になったときに必要とされる社会性を伸ばしていけるわけもありません。では、どんな家がリラックスできるのでしょうか?それについては、決まった答えはありません。あえていうなら、「家庭それぞれ」ということになるでしょう。そもそも、みなさんは自分の家が好きでしょうか?この問いに対して、「好きではない」、あるいは「好きかどうか、考えたことがない」という人が本当に多いのです。そんな場所ではリラックスできるはずもありませんよね。では、大好きなお父さんやお母さんがリラックスできない場所で子どもはリラックスできるでしょうか?親がリラックスしてはじめて子どもも心からリラックスできるのですから、みなさんが自分の家を好きになれるように努力してみてください。まず、家のなかに好きな場所をつくっていくことを考えましょう。「キッチンのこの一角はわたしの聖域だ」と決めてもいいし、玄関でもお風呂でもどこでもいい。とにかく家のなかで好きな場所をつくりましょう。そうすれば、その親の背中を見て子どもも家のことを好きになっていく。その先にリラックスがあり、ひいてはリビングやダイニングでの過ごし方を通じて、子どもは大人になったときに重要となる社会性を獲得していくのです。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?(※近日公開)第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは(※近日公開)第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方(※近日公開)【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月15日「我慢してね」誰もが一度は言われた経験があるフレーズではないでしょうか。日本は、“我慢は美徳” という観念が昔から根強いですし、最近定着した “KY” も、相手の気持ちや場の雰囲気を読んで行動するという意味では自己抑制を象徴した言葉ですよね。一方で、グローバル化が進む世界では、我慢だけではなくきちんと自己主張もできる人が求められるようになりました。これから日本でも重要になってくる “我慢と自己主張のバランス” の視点から、他国の現状と比較しながら考えてみましょう。日本と世界のいい子像の違いまず、各国の「いい子」像を見てみましょう。興味深いことに、国によって「いい子」のイメージが違うのです。■日本のいい子:自己抑制が利く子“日本のいい子” と聞いて思い浮かべるのはどんな子でしょう?「親や先生の言うことをよく聞いて、お行儀の良い子」、つまり自己抑制(我慢)が利く子。とくに親世代は、「みんなと仲よくしましょう」「人に迷惑をかけちゃいけませんよ」と教えらたのではないでしょうか。子どもの頃にほめられたのは、「嫌いなものを食べられたとき」や「遊んでいたおもちゃをねだられて弟や妹、またはお友だちに譲ったとき」など、我慢して行動できたときが多いのでは?逆に、言うことを聞かず自己主張すると “わがまま” ととらえられがちです。日本では、協調性と礼儀正しさが求められる傾向があります。■アメリカのいい子:自己表現ができる、自立した子全米最優秀女子高生を育て上げたお母さまであるボーグ重子さんによると、アメリカの “good kid” は、人を思いやれたり、自分のやりたいことがわかっていたり、気持ちが表現できたり、おもしろい子。言われたことを言われた通りにやるのはあまり評価の対象にはならないのだそう。アメリカの子育てのキーワードは “自立” です。子どもをいかに “経済的にも精神的にも自立した人” に育て上げるかが目標なので、受け身ではなく能動的に動けることがよしとされるのです。■イギリスのいい子:自己主張ができて自己抑制も利く子教育学者の佐藤淑子氏は、イギリスは日本とアメリカの価値観を両方持っていると話しています。しつけに厳しい家庭が多く、大人と子どもの領域の区別もはっきりと線引きされるのだそう。お店やバスもきちんと列をつくって待てる自制心が身についている国民性。このような環境で子どもは自己抑制を覚えるのです。一方で、論理性に基づく自己主張が大事にされます。小学校低学年のテストに ”Reasoning(推理・推論)” と言う科目が採用されている学校もあり、親子間コミュニケーションを大事にするなかで、自己表現や自己主張が育まれていきます。つまり、“きちんとルールを守ることができ、筋道立てて自分の意見を言える子” が理想のいい子なのです。佐藤氏は、これら三国の違いを次のように表現しています。「自己主張すべき場面でも抑制すべき場面でも自己主張するアメリカ」「自己主張すべき場面では主張し、抑制すべき場面では抑制するイギリス 」「自己主張すべき場面でも抑制すべき場面でも抑制する日本」(引用元:佐藤淑子著(2001), 『イギリスのいい子日本のいい子 自己主張とがまんの教育学』, 中公新書.)わかりやすいですね。文化や慣習、考え方の違いもあるので、もちろん求められる “子ども像” は違って当たり前ですが、イギリスの例を知ると、自己主張と自己抑制は両立しうるものであることがわかります。「我慢」と「自己主張」のバランスをとることの難しさと大切さ我慢(自己抑制)と自己主張はどちらも非認知能力です。つまり、どちらも人格を形成するうえで必要かつ大事な能力なのです。車に例えるなら、アクセルとブレーキ。要はバランスの問題です。まだ小さなうちは自己主張のほうが強く、そのバランスをとることは難しいですが、研究の結果、「4~5歳の期間に自己抑制能力が発達し、その後そのときの能力が持続する傾向がある」と、幼児期が能力発達に重要な時期であることがわかっています。児童心理学の専門家・森下正康氏によると、難しいのは 「自己主張」と「わがまま」の境界線。言い換えると、前者は「自分の理想」、後者は「理想が叶わない苛立ちからの甘え」です。親としてはこの点に留意して、子どもの自己主張を押さえつけて不必要な我慢をさせないようにしなければいけません。我慢と自己主張のバランスをとるために親が気をつけたいことイギリスと日本の「自己主張」のベースには、じつは違いがあります。イギリスで言われる自己主張は “理性” に基づくもの。一方、日本では “感情” に基づくものとしてとらえられるケースが多いようです。そのため、日本では「自己主張=わがまま」の構図が印象づけられてしまっているのですね。しかし、今回ご紹介するのは、イギリス型自己主張の仕方です。日本人が苦手な「正しい自己主張」ができる子にするために、前出の佐藤淑子氏とボーク重子さんのアドバイスに基づいて、家庭で気をつけたいことを3つまとめてみました。1. 親が子どもの話や意見に関心を持つお友だちに対して、自分の気持ちを言えなかったり、NOと言えなかったりする子は、親に本音が言えない場合が多いようです。まずは親が子どもの言うことをちゃんと聞いて、受け止めて、そこからコミュニケーションをとることを習慣づけてみましょう。もし、子どもの言っていることが間違えていたら、「おもしろいね!でも……」など会話のキャッチボールをすることが、正しい自己主張のトレーニングになります。最も大切なのは、まずしっかり意見できた勇気を認めてあげること。これが正しい自己主張トレーニングの第一歩となります。2. 「どう思う?」を口癖に欧米の学校や家庭では、子どもが意見を言うと必ず先生や親から「どうして?」「どう思う?」と理由を聞かれたり論理性を求められたりするそうです。感情だけではなく、その正当性を自分で考えて、きちんと伝える必要があるのです。親や友人とのディスカッションの中で、「論理的に反論する」(自己主張)だけでなく、「我慢して相手の話を聞く・相手の気持ちや意見を察する」(自己抑制)という能力も身についていきます。ボーク重子さんによると、「YES・NOで答えられない問いを投げかけるのがコツ」だそう。家庭で、親が積極的に子どもに意見を求めることは、人として自分が認められているという自信にもつながり、正しく上手な自己主張のためのいいトレーニングになるでしょう。3. 親が感情的に子どもを叱るのはNG親が感情的に叱ってしまったり、言っていることに筋が通っていなかったりすると、子どもは混乱し、我慢と主張のポイントがわからなくなってしまいます。家庭内でしっかりとルールを決めて、論理的な環境づくりをすると、子どもにとって安定した環境が整います。ルールづくりも子どもと一緒にすると、「なぜそれがダメなのか」「どうしてこれをしなければいけないのか」など、行動の理由を理解できるいい機会になるでしょう。自己主張と自己抑制のバランスをとるためには、親子の信頼関係をベースにした心の安定が必要です。安心感を得ることで、子どもも相手を受け入れる余裕ができ、我慢と自己主張をうまくコントロールできるようになっていくでしょう。***国の文化・風習・思考は教育と密接に関係しています。国が違えば子育てが変わってくるのは当然です。しかし、そのベース自体が徐々にグローバル化し始め、2020年教育改革に見られるように、日本の教育の考え方も徐々に変わりつつあります。日本人としての感性や美徳を大切に秘めつつ、グローバルな人間性も身につけられたら鬼に金棒。子どもたちの未来の活躍が楽しみになりますね。(参考)佐藤淑子著(2001),『イギリスのいい子 日本のいい子 自己主張とがまんの教育学』, 中公新書.ボーク重子著(2018),『世界最高の子育てー「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』, ダイヤモンド社.DIAMOND online|自己主張できる子を育てたければ内容ではなく「勇気」を認めよNHK|「がまん」って大事なの?和歌山大学教育学部 教育実践総合センター紀要|幼児の自己制御機能の発達研究松永あけみ(2008), 「幼児期における自己制御機能(自己主張・自己抑制)の発達―親および教師による評定の縦断データの分析を通してー」, 群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編 第57巻 169-181頁 2008.伸芽’sクラブ|わがまま?自己主張?子どもの主張が強くなってきた時に知っておきたいこと
2020年01月14日企業が選考時に重視する要素として、16年連続で1位となっている「コミュニケーション能力」。2018年に行なわれた調査では、82.4%の企業が重視していると回答しており、社会で必要不可欠な能力だということがうかがえます。しかしながら、世間では「今どきの若者はコミュニケーション能力が低い」という意見が目立ち、自分の子どものコミュニケーション能力に不安を感じている保護者も少なくありません。では本当に、今の若者や子どもたちのコミュニケーション能力は低下しているのでしょうか?今回は、若者たちのコミュニケーションの実態と、これからの時代に必要なコミュニケーション能力、その高め方についてご紹介します。若者たちはコミュニケーションを楽しんでいるJTBコミュニケーションズが2017年に行なった「コミュニケーション総合調査」によれば、コミュニケーションを得意とする大学生(46.2%)は、苦手とする大学生(53.8%)よりやや少ないことがわかりました。しかし、だからといって「若者のコミュニケーション能力が低下している」とはいえません。なぜなら、60歳を超えた「リタイア層」においても、同様に苦手(55.7%)が得意(44.3%)を上回るからです。また、同調査では、1年間楽しくコミュニケーションが取れた大学生が66.2%いたこともわかっています。つまり、「コミュニケーションを苦手としながらも楽しんでいる」という大学生が一定数いるということです。なお、「リタイア層」の同項目は51.1%でした。これは、コミュニケーションをより楽しんでいるのは、年長者よりもむしろ若者のほうであるということを示します。これらの調査結果を見ると、若者たちのコミュニケーション能力が際立って低いとは考えにくいのではないでしょうか。実際、「若者のコミュニケーション能力が低い」と明確に示すデータは確認されていないともいわれています。つまり、「今どきの若者はコミュニケーション能力が低い」は事実ではなく、単なるイメージに過ぎないのです。世代間のコミュニケーションの違いとはでは、なぜこのようなイメージを抱かれてしまうのでしょうか。その原因のひとつとして、コミュニケーションに対する意識が変わってきていることが挙げられます。年長者と若者では、コミュニケーションの能力の高さではなく、とり方に関する意識が大きく違うのです。同様のことを、複数の著名人や研究者が指摘しています。そもそも、若者のコミュニケーション能力が低いのではなくて、彼らにはスタンドプレーをしてまで、他人とコミュニケーションをとろうとする強い欲求がない、あるいはあまり必要性を感じていない、というのが実態です。要するに、いまの若い子たちは、人を押しのけてまで何かをするというところがないのです。(引用元:現代新書|コミュニケーション能力の「ある人」と「ない人」【ビジネス篇】)劇作家・演出家の平田オリザさんが年長者と若者の違いとして挙げたのは、コミュニケーション欲求の高さです。これまで、年長者が当たり前のようにとってきたコミュニケーションでも、「必要ない」と避けてしまう若者たちがたくさんいます。たとえば、いわゆる「飲みニケーション」の機会が減っているのも、それが原因ではないでしょうか。若者が先輩の誘いを断るのは、コミュニケーションの能力が低いからではなく、その誘いに乗る必要性を感じていないからだとも考えられるのです。立教大学経営学部教授の中原淳さんは、以下のように、自分の頭で考えたり行動したりする「主体性」の有無を挙げています。要するに「若者が、自分の思い通りに動かない事態=コミュニケーション能力がない」「若者が、自分と同じように考えない=コミュニケーション能力がない」「若者が、自分を察して行動しない=コミュニケーション能力がない」ということが意図されて、先ほどの「コミュニケーション能力がない」が発話されている場合が少なくない、ということです。(引用元:YAHOO!ニュース|「最近の若者は、コミュニケーション能力がない!」は本当か!?:嘆く前に少しだけ考えてみたいこと)従来の日本には、コミュニケーションをとる際、相手や周りの空気を読んで、それに合わせて行動することが良いとされる雰囲気がありました。しかしながら、近年は「主体性」を重視した教育が強化されています。周囲に合わせて「イエス」というのではなく、自分の頭で考えて「ノー」と主張することが大切だと教えられているのです。そんな若者たちの行動が、「空気が読めない=コミュニケーション能力が低い」と年長者たちの目に映ってしまうのかもしれませんね。家庭でできるコミュニケーション能力アップ法このように、コミュニケーションに対する意識が変わりつつある今、これからの時代を生きる子どもたちに対して、保護者はどうするべきなのでしょうか。どうすれば、時代に合ったコミュニケーション能力を高めていくことができるのでしょう。ここでは、挨拶や言葉のキャッチボールといった基本的なコミュニケーションに加え、現代だからこそ必要なコミュニケーション能力を高めるために、家庭ですべきことをご紹介します。親が子に100%寄り添う教育学博士号を持つアグネス・チャンさんは、コミュニケーション能力の低い子どもには、「自信を持たせる」ことが最も大切だと述べています。自信のない子どもは、相手に拒否されて傷つくことを恐れ、人付き合いを避けようとしてしまうからです。それでは、不要なコミュニケーションを避ける今どきの傾向に追い打ちをかけてしまいます。では、どうすれば自信を持たせることができるのでしょうか。アグネスさんによれば、親が子どもを100%信頼し、受け入れることで、自信が育まれるのだそう。具体的には、子どもが興味を持ったことに対し、一緒になって興味を持ったり、時間をかけて遊んだりすること。逆に、物事に対してあまり興味を持たない子であれば、一緒になって何もせず寄り添うことが大切なのだそう。好きなことを思う存分やらせる本当のコミュニケーションスキルとは、自分から話しかけられるようにしゃべりがうまくなるのではなく、人が話しかけたくなるようなスキルのことだ。手品が上手だったら話しかけられることもあるだろう。そして、その人しか持っていない知識やスキルがあれば、誰かに必要とされるはずだ。(中略)面白いと感じること、好きなことを追いかけて得た、多少の努力では真似できないようなスキルこそが人を惹きつけるのだ。(引用元:BEST TIMES|ホリエモンは「コミュニケーションスキル」をこう考えた)※太字は筆者が施した。上記は、実業家の堀江貴文さんが語ったコミュニケーション能力の本質です。これからの時代に必要なコミュニケーション能力を「人が話しかけたくなるようなスキル」と定義し、それを身につけるためには、「面白いと感じること、好きなことを追いかけて」得ることができる「その人しか持っていない知識やスキル」が必要だと言います。つまり、子どもが何か面白がったり、好きになったりするものがあれば、それを深く追究していくことがコミュニケーション能力を高める大切な一歩となるのです。大切なのは、子どもに思う存分やらせてあげること。子どもの「面白い」や「好き」を、どうすれば「その人しか持っていない知識やスキル」にまで持っていけるか考え、協力してみてはいかがでしょうか。***「100%寄り添って、自信を高めること」「好きなだけやらせて、唯一無二の知識やスキルを身につけさせること」——一見、コミュニケーションとは関係のないことのように感じられるかもしれません。しかしこれは、これからの時代に必要な、新しいコミュニケーション能力の高め方なのです。とはいえ、まずは親子間できちんと挨拶や会話、スキンシップなどの基本的なコミュニケーションを取ることも忘れてはなりません。それだけは、これからもずっと変わらない、コミュニケーションの土台を築く、一番大切なものといえるのではないでしょうか。(参考)Jtb Communication Design|コミュニケーション総合調査<第3報>発表ReseMom|経団連が新卒採用調査、企業が重視する2位「主体性」16年連続1位は?現代新書|コミュニケーション能力の「ある人」と「ない人」【ビジネス篇】YAHOO!ニュース|「最近の若者は、コミュニケーション能力がない!」は本当か!?:嘆く前に少しだけ考えてみたいこと学びの場.com|アグネスの教育アドバイス「コミュニケーション能力は大丈夫?」BEST TIMES|ホリエモンは「コミュニケーションスキル」をこう考えた
2020年01月13日グローバル化や情報化、AI(人工知能)などの技術革新が急速に進み、これからは予測困難な時代になるといわれています。こうした背景があるため、今まさに、未来を担う子どもたちの教育現場は改革の真っ最中。大きく変化していく様子に、不安を覚える親御さんは多いでしょう。しかし、わたしたちが子どもの教育において心がけるべき行動は、意外なほどシンプルです。今回は、これからの社会や教育がどう変わっていくのか、今後どのような能力が必要なのか、そうした能力を高めるためにはどうしたらいいのか、などを掘り下げていきます。子どもの学びが進化する2016年1月に閣議決定された内閣府の第5期科学技術基本計画(2016~2020年度)では、日本が目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0 時代」が提唱されました。「Society 5.0 時代」とは、あらゆるモノがインターネットでつながり、 AIからは常に最適な答えを得ることができ、ロボットの労働力を得てより自由になった人間の、可能性が大きく広がっていく「新社会」のことです。このような時代に生まれ育っていく子どもたちには、社会の変化を前向きに受け止め、人間ならではの感性を働かせて課題に向き合い解決していくことや、社会と人生をより豊かにしていくことが期待されています。だからこそ、これからの子どもたちに必要なのは、自ら学んで考え、判断し、行動する力、いわゆる「生きる力」だと考えられているのだとか。そうした背景を踏まえて学習指導要領が改訂され、2020年度より小学校から順に実施されることになりました。その具体的な内容は、グローバル化や情報化への対応力、社会のさまざまな課題を解決する力を育むために、小学校中学年から「外国語教育」を導入することや、小学校における「プログラミング教育」を必修化することなどです。後者には論理的な思考力(プログラミング的思考)の教育も含まれます。これから必要となる能力とは?そんななか、通信教育を手掛けるユーキャンが、10代~40代の男女356名を対象に、2020年のトレンド予測・資格取得・教育改革に関する意識調査を行ないました(2019年11月1日~8日)。先述のとおり、今は教育改革が進められている真っ最中。同調査における「今後社会で活躍するために必要だと思う能力」の1位から3位までに登場した内容は、「やっぱり」といいたくなるようなものばかりです。1位:多種多様な人とかかわるためのコミュニケーション能力(36.2%)2位:ストレスに負けない精神力・思考(34.8%)3位:グローバル化に対応した英語・語学力(30.6%)4位以降は、「問題を発見するための判断力・読解力(26.4%)」、「主体的に問題を解決するための論理的思考力(22.8%)」と続きます。(参考:生涯学習のユーキャン|2020年のトレンド予測と資格取得に関する意識調査)では、それぞれの項目について、親は子どもに何をしてあげればいいのでしょう。専門家の意見やアドバイス、アンケート調査などを参考に、詳しく考えていきましょう。コミュニケーション能力アップは “家庭の会話” から一般財団法人日本コミュニケーション能力認定協会によれば、「他者との信頼関係を築くコミュニケーション能力は、人生を豊かにする大切なちから」だとのこと。また、学習科学・発達心理学の世界的権威といわれる、テンプル大学教授のキャシー・ハーシュ=パセック氏と、デラウェア大学教授のロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ氏が共著した『科学が教える、子育て成功への道』(扶桑社)には、変化の激しい時代に必要な力のひとつとして「コミュニケーション能力」が挙げられています。そして、経団連が2017年7月28日~8月31日に行なったアンケートでは、新卒採用の選考時に重視する要素として、「コミュニケーション能力」がトップでした。じつは「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」を差し置き、2004年から15年連続で第1位です。時代の変化で、今後もよりいっそう多くの企業が「コミュニケーション能力」を重要視するのではないでしょうか。(参考:一般社団法人 日本経済団体連合会|2017 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果)このように、子どもたちを待ち構える新しい時代において、彼らが豊かな人生を築いていくためには「コミュニケーション能力」が欠かせません。しかし、核家族化や、近所づきあいのコミュニティ縮小化、インターネットがもたらしたバーチャル世界の広がりにより、今の子どもたちは異世代間や考え方の異なる人との交流はもちろんのこと、対面でのコミュニケーションがとても少なくなっています。だからこそ、まずは家庭内でたくさんの会話を交わし、意見を楽しくいい合う機会をもうけることをおすすめします。帝京短期大学教授(生活科学科学科長)の宍戸洲美先生いわく、「コミュニケ―ション能力は、家族の関わりの中で少しずつ育てていくことが大切」とのこと。たとえば、食事タイムを利用して、料理の感想をいい合ったり、盛り付けのアイデアを出し合ったりしてみてはいかがでしょう。皆で一緒に映画を鑑賞し、感想をいい合い、登場人物が身近な誰に似ているかいい合うのもいいかもしれません。人と人に感覚の差があることを実感できるはず。また、幼いころから、あらゆる年代・性別・国籍の人々と接することができるよう、地域活動や親子向けのワークショップに参加してみるのもおすすめです。いろんな人がいて、いろんな意見があると身にしみついていくうち、「コミュニケーション能力」の向上とともに視野も大きく広がるはずです。“ストレスへの対処法” はこう教える「ストレスに負けない精神力・思考」と聞くと、今注目されている「レジリエンス(回復力・復元力)」を思い浮かべる人は多いかもしれません。しかし、日本ストレスマネジメント学会事務局長でもある、桜美林大学の小関俊祐先生いわく、レジリエンスはストレスに対抗する手段のひとつに過ぎないとのこと。レジリエンスばかりに注目したり、「絶対に負けないぞ!」と頑張りすぎたりする必要はないのだそう。子どもが何かに失敗してストレスを受けたとしても、ストレスを発散する手段さえ身につけていれば何も問題はないのだ、と小関先生はいいます。ストレスと無縁の人生を送ることは不可能なので、子どもには、小さいうちからストレスとどう向き合い、どう対処していけばいいのか教えることが必要とのこと。ちなみに、ストレスの対処法には「ストレスコーピング」というものがあるそうです。ストレスコーピングの種類は2つあり、ひとつは「情動焦点型」と呼ばれています。“体験済み” のストレスにフィットする対処方法なので、たとえばテストの点数が悪かったときなどに、マンガを読んだりテレビを観たり運動したりと、気分を変える行動でストレスを軽減します。もうひとつは「問題解決型」という、“これから起こる” ストレスにフィットする対処方法。たとえば明日のテストが心配でストレスを感じるなら、勉強する、早く寝てコンディションを整える、親や友だちとテストについて会話してみるなどして、その不安を解消することが問題解決になり、ストレスの軽減につながります。いずれの場合も、日常的にできる(ストレス対処法としての)行動の選択肢が多いほど、ストレスとうまくつきあえるようになるのだそう。しかし、子どもたちはまだ経験が浅く選択肢が少ないので、親が「マンガでも読む?」「散歩してみる?」「もう一回ノートを見なおしてみる?」などと選択肢を提示してあげる必要があるといいます。ただし、その際に、親が行動を決めつけてしまうのはNG。子どものストレス対処能力が育ちにくくなってしまうだけではなく、親が示したもの以外を子どもが選んだとき、今度は親がストレスを感じてしまうからです。親がストレスを感じたら、結局その感情が子どもに伝わってしまうでしょう。親子ともども、うまくストレスをかわしたり対処したりできるようにすることが大切なのですね。“表現する” ことを楽しめる子どもに国際化が進む新時代への対応を目的として、2020年から英語教育が大きく変わるといいます。この状況を日本教育新聞(NIKKYO WEB)は2019年6月26日 に公開した記事で、ガラパゴス化しているといわれてきた日本の英語教育に本格的なメスが入ります。(引用元:日本教育新聞電子版NIKKYOWEB|英語教育改革が2020年度からスタート、小中高校で英語の授業はどう変わる?)と表現しました。こうした変化にともない、「うちの子の英語教育は、どうすればいいの?」「もう手遅れなの?」などと、根拠なく焦ったり不安を感じたりする親御さんもいるでしょう。しかし、立命館大学大学院 言語教育情報研究科教授の田浦秀幸先生によると、日本で生まれ育ち、日本語を母語とし、外国語として英語を学ぶEFL環境(English as a Foreign Language)において、臨界期は関係ないそうです。子どもの聞き取り能力の臨界点についても、クラスの環境や先生との相性、生徒自身のモチベーションなどの条件によっても大きく異なるので、何歳までとは断言できないとのこと。それに、慶應義塾大学名誉教授・ココネ言語教育研究所所長の田中茂範先生が語学諮問委員として研修を担当していたJICA(国際協力機構)の、シニアボランティアと呼ばれる50代後半~60代の方々の多くは、その年齢から赴任した国の言語をしっかりと習得しているそうです。田中先生によれば、英語学習を成功させるには、次の「3つの条件」があるのだとか。Language Exposure(英語にふれること)の質量Language Use(英語を使うこと)の質量Urgent Need(英語を使わなければならない必要性)の存在(引用元:StudyHacker こどもまなび☆ラボ | 英語はだれでも身につけることができるのか?成功する英語学習の3つの条件)前出のシニアボランティアの方々同様、海外に引っ越したなどの場合は、容易に「3つの条件」が揃います。日本にいる場合でも、たとえば近所に引っ越してきた外国の子どもと話をしたいから、英語を学び、学んだ言葉でどんどん話しかけてみる、といったこともあるでしょう。しかし、誰もが海外に住めるわけではないし、必ずしも外国人と交流できる環境に、子どもたちが置かれるわけではありません。田中先生いわく、英語を学ぶ多くの人は、「英語を勉強し、ある段階まで話せるようになったら、そこでやっと活用する」という発想をしているそう。その発想の背景にあるのは、「いつか、英語ができるようになったらいいな」という姿勢。3条件の最後の「Urgent Need(英語を使わなければならない必要性)の存在」はありません。それでは英語学習は成功しないのです。大切なのは「いつか、どこかで、だれかと英語で話すため」と考えながら学ぶ “学習者” になるのではなく、「今、ここで」とすぐに英語を使う “表現者” になることなのだとか。田中先生によれば、2020年の新学習指導要領では、英語でコミュニケーション活動を行なうことに力点が置かれ、英語は「学ぶ」から「使う」へシフトするのだそう。学校教育の場でも、“表現者” になることが求められるようになるのです。「まだ不完全だから英語は話せない」といった “学習者” 的な発想にならないよう、たとえ覚えたばかりの限られた英語でも、表現することを子どもに楽しんでもらいましょう。そうすれば、「英語で表現したい」気持ちそのものが、「Urgent Need(英語を使わなければならない必要性)」になります。「これは英語で何ていうのかママにも教えて」「へぇー、そんな言葉なんだ。すごいね!」などと、気持ちよく導いてあげるといいかもしれませんね。***これからの社会や2020年の教育がどう変わっていくか、今後どんな能力が必要なのか、そうした能力を高めるためには、どうしたらいいのかなどを掘り下げました。教育改革が実施されるからと力を入れすぎず、子どもと一緒にいろんな人とコミュニケーションを取り、子どもがうまくストレスに対処できるよう、行動の選択肢をたくさん与えてあげてください。そして、英語や他国語の “表現者” となることを、子どもと一緒にぜひ楽しんでみてくださいね。(参考)政府広報オンライン|2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!内閣府|Society 5.0 – 科学技術政策内閣府|科学技術基本計画 – 科学技術政策生涯学習のユーキャン|2020年のトレンド予測と資格取得に関する意識調査キャシー・ハーシュ=パセック著, ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ著,今井むつみ訳, 市川力訳(2017),『科学が教える、子育て成功への道』,扶桑社.一般社団法人 日本経済団体連合会|2017 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果StudyHacker こどもまなび☆ラボ |「コミュニケーション能力を重視しすぎ」な親が、犯しかねない過ちとはStudyHacker こどもまなび☆ラボ |コミュニケーション能力を育てよう!会話をグレードアップさせる3つのヒント。StudyHacker こどもまなび☆ラボ |自己肯定感を育む、親子コミュニケーション。「聞いて!」「あとでね」の正解StudyHacker こどもまなび☆ラボ |ストレスと無縁の人生を送ることは不可能。教えるべきは「転んだときの起き上がり方」StudyHacker こどもまなび☆ラボ |子どものストレスを軽減させる“ストレスコーピング”。選択肢は多ければ多いほどいいStudyHacker こどもまなび☆ラボ |子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!日本教育新聞電子版NIKKYOWEB|英語教育改革が2020年度からスタート、小中高校で英語の授業はどう変わる?StudyHacker こどもまなび☆ラボ |【田浦教授インタビュー 第1回】「臨界期」は存在しない?発音・聞き取り・文法・語彙における臨界点StudyHacker こどもまなび☆ラボ | 英語力とは何か?2020年の新学習指導要領の狙いと言語活動の両輪「CAN-DO」「CAN-SAY」StudyHacker こどもまなび☆ラボ | 英語はだれでも身につけることができるのか?成功する英語学習の3つの条件
2020年01月12日「子どもの絵本をどう選んだらいいのかわからない……」「自分が気に入った本ばかり読んでいて、親が読んでほしい絵本を手にとってくれない」「オススメの絵本が知りたい!」このように、読書に関するお悩みを抱えてはいませんか?今回は、「本選びのプロ」である書店員さんに、「書店の活用方法」「絵本選びの極意」そして「書店員おすすめの1冊」をお伺いしました。子どもを本好きにする、書店の活用方法今回、お話を伺ったのは、丸善 丸広百貨店飯能店にお勤めの福島さん。福島さんは、子どもと書店へ行くときに大切なのは「時間がたっぷりあるときに行くこと」だと言います。書店へ行くときは、時間に余裕を持って「基本的なことですが、子どもと書店へ行くときに大切なのは、時間がたっぷりあるときに行くことです。私たちの書店でも、時折、パパ・ママから『どの本にするの!?早く決めて!』と急かされて泣き出してしまうお子さんを見かけます。しかし、それはお子さんにとって酷な話です。膨大な量の本の前で(我が書店では、児童書だけでも3万冊は置いています)突然「どれでも選んでいいよ」と言われると、子どもは喜びながらも『なんでも買ってもらえるなら、なるべく豪華な本がいいかな』『読みたい本はあれなんだけど、ここは、うーん……』などと悩んでしまうもの。そんななかで『早く決めなさい!』と急かされると、放心状態になってしまいます。まずは、お子さんがよく吟味して本を選べるよう、じっくり待ってあげましょう」特に、絵本は厚さが薄いため、表紙が見えない状態で棚に陳列されると、途端に輝きが損なわれてしまう悲しい側面があるのだそう。本当はなるべく表紙を見てほしいものの、スペースの都合上、どうしても多くの本は棚に入ることになってしまうと福島さんは言います。親御さんは、極力たくさんの絵本を棚から引き抜いて、お子さんに表紙を見せたり、パラパラとめくってみせたりしてあげるといいですね。まずは、子どもの興味に付き合うまた、本を選ぶときには、その子が興味を抱いている本を選ぶことが大切だと福島さんは言います。「本選びに限った話ではありませんが、何をするにも無理強いは絶対にNG。子どもが本を嫌いになってしまう可能性が高まります。子どもの興味の発露を待ちましょう。以前、3歳になったばかりの男の子のお母様に、『この子、てんとう虫が好きなのですが、てんとう虫の本を何冊か出してくれませんか?』と声をかけられたことがあります。書店員の腕の見せ所!物語、写真絵本……とありったけのてんとう虫の本を用意しました。しばらく経った頃、『今度はコアラに興味が移ったようで、コアラの本を……』とお母様。私もとことん付き合います。なんでも、庭でてんとう虫を見つけたことがきっかけでてんとう虫にハマり、上野動物園でコアラを見てからはコアラに夢中になったのだとか。お子さんの興味は生活に密着していて、子どもの知的好奇心の豊かさに感激しました。またしばらく経った頃、『今度は、カワウソを好きになったので、カワウソの本を……』。お母様の郷里の旭山動物園でカワウソを見てから、カワウソにのめり込んでしまったのだそう。さあ腕まくり!旭山動物園の飼育係から絵本作家になったあべ弘士さんの『かわうそ3きょうだい』(小峰書店)のシリーズに、アーノルド・ローベルとナサニエル・ベンチリーの『かわうそオスカーのすべりだい』(好学社)などなど……。あらゆる本をご用意しました。子どもの興味は、このようにどんどん広がっていきます。大切なのは、その好奇心にとことん付き合うこと。そうすることで、読書の幅もみるみる広がっていきます。私たち書店員も、日々勉強しています!ぜひ、気軽に書店員に声をかけてみてくださいね」子どもの興味はコロコロ変わるもの。子どもを本好きにするためには、「この間○○の本を買ってあげたばかりなのに」などと怒ることなく、子どもの興味にとことん付き合ってあげることが大切なのです。その際には、書店員さんに相談するなど、書店を有効活用したいですね。絵本はどうやって選ぶべき?「絵本の選び方がわからない」という親御さんも多いことでしょう。福島さんは、以下のようなロングセラー作品をひとつは持っておくことを勧めています。『エルマーのぼうけん』ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺 茂男 訳(福音館書店)『ひとまねこざる』H.A.レイ 著/光吉 夏弥 訳(岩波書店)『はらぺこあおむし』エリック・カール 作/もりひさし 訳(偕成社)『ぐりとぐら』中川 李枝子 作/大村 百合子 絵(福音館書店)『だるまちゃん』シリーズ 加古 里子/作(福音館書店)『こぐまちゃん』シリーズ わかやま けん/作(こぐま社)「ほかにもいろいろありますが、上記のようなロングセラー作品を、ひとつは持っておくのがおすすめです。幼稚園・保育園に行くと必ずと言っていいほどお目にかかる本ですから、お友だちと知っていることを共有する喜びも味わうことができますよ。ロングセラー作品以外でも、ワクワクするような楽しい物語、ことばあそびの絵本、いつまで見ていても飽きない繊細で緻密な作品(安野光雅さんによる福音館書店『もりのえほん』『旅の絵本』など)、起承転結が明確な昔話絵本なども、子どもに愛されますね」また、以下のような優れたブックリストを活用することもおすすめだそう。『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』宮崎 駿 著(岩波書店)『子どもと本』松岡 享子 著(岩波書店)『そして、ねずみ女房は星を見た』清水 眞砂子 著(テン・ブックス)しかし、何よりも大切なのは、子どもの興味を尊重することだと福島さんは言います。「無口な子、おしゃべりな子、素直な子、反発する子……。大人と同じく、子どもの個性も十人十色です。我が子にいろいろな望みをかけるのは親として当然かもしれませんが、子ども自身のペースを尊重することを大切にしましょう。本は、賢くなるために読むものではありません。特に幼いうちは、自分の読みたいものを純粋な楽しみのために読めばいいのです。主人公に寄り添って冒険をして、ハラハラ・ドキドキしたり、ともに涙を流したり、苦しみを乗り越えたり、喜びに胸を高鳴らせたり……。そういった経験は、実学というところにつながると私は思います」絵本選びについて悩んでしまう親御さんは多いことと思いますが、福島さんいわく、はじめは、子どもの読みたい本を買ってあげればいいのだそう。「その際は、親が「読ませたい」と思う本も同時購入し、本棚にさしておくと良いでしょう。必要なときが来れば、本は開かれると私は思っています」書店員オススメの1冊子どもが読みたい本を読ませてあげるのが一番だと話す福島さん。そんな福島さんが、ある印象的なエピソードをお話しくださいました。売り物ではない本を『欲しい!』と手放さない少年がいた「『あまがえるのかくれんぼ』(世界文化社)は、当初、園向けの直販商品でした。著者のかわしまはるこさんは、我が丸善書店のある街、埼玉県飯能市にお住いの絵本作家です。ご縁があってご本人にお会いしたのがきっかけで、『地元の絵本作家さんにこんな素敵な人がいます』と店頭にコーナーを設け、非売品としてソフトカバーの『あまがえるのかくれんぼ』をご紹介していました」そんなある日、一人の少年が「この本が欲しい!」とレジに持ってきたのは、非売品の『あまがえるのかくれんぼ』。「『この本は売り物じゃないのよ』彼のお母様と一緒に説得しようとしましたが、少年は本を離しません。ふと見ると、その子のTシャツにも靴にもかえるの絵。『本当にかえるの絵本が欲しかったのだな』と感じた私は、かわしまさんから自分用にと頂いていた1冊を、彼にプレゼントすることにしました」その後、彼を皮切りに、子どもたちから、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんまで、何人ものお客様がひっきりなしに「この本が欲しい」と言いに来るようになったのだそう。福島さんは「この本は非売品で……」と断り続けることにやるせなさを感じていたと言います。そこで、出版のために行動を起こすことを決めたのだとか。「こんなにもたくさんの人に求められる本なのだからと、署名活動をし、ハードカバー化してもらえるようお願いすることにしました。その結果、なんと、たった1ヶ月の間に419人もの署名が集まったんです。署名を世界文化社さんにお送りしたところ、すぐに会議にかけてくださり、この本の出版が決まりました」署名活動を始めた際、「うまくいくか、いかないかは考えなかった」と福島さんは語ります。こんなにもたくさんの人の心を動かす本を、多くの人の手に届けたい一心だったそう。「きっかけがどうであれ、本自身の持っていた力だと思っています」非売品でありながら、多くの人の心を動かし、惹きつけた『あまがえるのかくれんぼ』。ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。『あまがえるのかくれんぼ』 舘野 鴻 作/ かわしま はるこ 絵(世界文化社)⠀小さなあまがえるのラッタ、チモ、アルノーは今日もかくれんぼをして遊んでいます。すると、ラッタの体の色が変わってしまい……。生物画家のかわしまはるこさんは、約10年間もあまがえるを飼育・観察していらっしゃるそう。繊細で美しく、愛にあふれた絵は、見る者の目を楽しませてくれます。さらに小学館児童出版文化賞受賞作家の舘野鴻さんによる文章はあたたかく、不安を乗りこえ成長していく小さな3匹の心の変化を鮮やかに描き出します。豊かな物語を楽しみながら、カエルの生態についても学べる貴重な一冊です。⠀***お子さんを本好きにするために大切なのは、無理強いをしないこと、そして、お子さんの興味にとことん付き合うことです。お子さんに「読ませたい」本はそっと本棚にさしておき、お子さんが「読みたい」本は積極的に読ませてあげましょう。
2020年01月12日「うちの子は学校の友だちがたくさんいるし、習い事をいくつもさせているから人間関係は充実しているはず」「休みの日は家族で遊んで、長期休みにはおじいちゃんおばあちゃんに会っているし、コミュニケーションはうまく取れているほう」そう信じて安心している親御さんも少なくないのではないでしょうか。しかし、子どもの成長や学びの場は、家庭や学校・習い事以外にもたくさんあるのです。今回は、子どもの生きる力をぐんぐん伸ばす「多様な人間関係の大切さ」について考えていきましょう。狭い世界で生きる現代の子どもたち昔に比べて、今の子どもたちは世界中のさまざまな情報に触れることができるだけでなく、インターネットを通じてたくさんの人たちとすぐにつながることができるようになりました。しかしその反面、現実の人間関係はどんどん狭くなってきていることをご存じですか?平日も休日も習い事や塾などで予定がぎっしりと入っていて、近所の友だちと遊ぶこともままならない日々を過ごしている子どもたち。しかも、これから中学・高校に進学するにつれ、ますます自由な時間が減っていくことは明らかです。ただし、子どもの人間関係が制限されているのは、私たち親の意識が影響しているともいわれています。「今の親たちは、子どもと他人との関わりに敏感で、警戒心がすごく強い」と指摘するのは、国立青少年教育振興機構理事長の鈴木みゆきさん。たしかに、ニュースなどで子どもが巻き込まれる事件を目にするたびに不安を感じ、周囲への警戒心が増すのも無理はありません。「遊ぶことの大切さ」を子どもたちに伝える活動を行う『一般社団法人TOKYO PLAY』代表理事の嶋村仁志さんは、次のように述べています。子どものことを、邪魔なものであったり「自分には関係ない」と思ったり、あるいは子ども教育の専門家などが自分のサービスの「お客」として見る。そういうものばかりだとしたら、その社会では子どもをきちんと育てることができないのではないでしょうか。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由)親以外の近所の大人や、お友だちのお父さんやお母さんたちとの関わり合いは、子どもにとって非常に貴重な体験になるといいます。嶋村さんは、「子どものころに近所の人にかわいがられたり、逆に迷惑をかけて怒られたりしたような経験がないまま大人になってしまうと社会性が育ちにくい」ことも指摘しています。今の子どもたちは、昔に比べて確実に狭い人間関係の中で生きているのです。多様な価値観への理解とコミュニケーション能力が必要な時代次に、どうして狭い世界で生きていくのが良くないことなのか、これからの社会ではどんな能力が求められるのかについて考えていきます。脳科学者の茂木健一郎先生は、「子どもが社会に出て活躍するために育てておきたい能力はふたつある」と述べています。ひとつは、読み書きや計算といった「認知的な能力」。そしてもうひとつは、他人と円滑なコミュニケーションをとれる「社会的な能力」です。どんなに勉強ができても、人とうまく関係を築けなければ社会では活躍できません。茂木先生によると、「幼児期は特に社会的スキルを育む必要がある」とのこと。そのためにも、日常的に年齢の違う子たちと遊ぶ機会を多くもち、さまざまな考え方やたくさんの個性に触れることが大切なのです。さらに、これからはグローバル化が進み、多様な価値観や背景を持つ人たちと接する機会が格段に増えていくでしょう。教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは、「さまざまな価値観への理解とコミュニケーション力は、経験からしか学べない」と話します。そのためにも重要となるのが、家庭や学校・習い事以外の “第3の居場所” なのです。子どもが “第3の居場所” で得られるものとは?家庭を “第1の居場所”、学校や習い事を “第2の居場所” としたとき、“第3の居場所” とはどのようなところを指すのでしょう。前出の中曽根さんによれば、地域で開催される自然観察会や、スポーツ、音楽、アートのイベントなど、年齢も背景もさまざまな人が集まる場所だといいます。それ以外にも、1日限りのワークショップや、子どもだけで参加するキャンプ、親の友人同士の集まりなど、出会いの機会はたくさんあります。■コミュニケーション能力が伸びる!そういった第3の居場所では、自分の知らない世界を見聞きすることができるので、子どもはぐんと視野を広げることができます。そして、コミュニケーションの点においても大きなメリットが。中曽根さんは、「心理的距離があるので、理解し合うためにはどんな切り口で話をしたらいいか、自然と相手のことを考えながら話をするようになる」といいます。それは、家族や身近な友人との会話では得られない緊張感です。相手と距離があるからこそ、自分の考えを筋道を立ててわかりやすく伝える訓練にもなるのですね。■「公私」の感覚を知り、礼儀を学べる!前出の鈴木みゆきさんは、さらに「礼儀」を学ぶにも絶好のチャンスであると述べています。親以外の大人との交流で、まず、子どもは「礼儀」を身につけます。親への甘え方とはちがう態度で接したり、あるいは親が相手なら反発するようなことも素直に聞き入れたりと、子どもなりに「公私」の感覚を持つのです。また、子どもの頃、「大人の話に子どもが口を挟むな!」なんて周囲の大人に言われた経験がある人もいるでしょう。これは、「場を知る」「立場をわきまえる」ということにつながるものです。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていくーー親以外の人との交流によって広がる子どもの視界)■親の心がラクになる!また、子どもに第3の居場所があることは「親にとってもメリットがある」と説くのは、東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース教授の中釜洋子先生です。中釜先生は、「最近、わが家のルールを知らず知らずのうちに細かく決めてしまって、ママ友だちや祖父母などの考えが自分に合わないと、付き合いを狭めてしまうケースも少なくありません」と述べており、親が神経質になることで他者に対して心を閉ざしたり、人付き合いを限定したりするというのです。しかし、社会に出れば臨機応変な対応を求められることが多いもの。中釜先生は、「子どもは、『おうちではダメだけど、おばちゃんの家なら甘いお菓子を食べられる』と区別して考えることができ、意外と柔軟な思考をしている」といいます。親御さんが周囲との関係を閉ざさないように心がけることで、子どもは状況に応じた対応を学べるようになるでしょう。また、親自身も子どもと1対1で向き合い続けるとストレスがたまりますが、ほかの家族の多様な子育ての方法を知ることで、子育てのヒントに気づくきっかけにもなります。みなさんも、わが子を見ては、「どうして○○ちゃんみたいにいい子にできないのかしら」とほかの子どもの良い面ばかりに目がいき、自分の子どもが劣っているように見えてしまうことはありませんか?それはどんな親でも同じです。第3の居場所では、ほかの人が「△△くん、優しいね!」「上手にできるね!」と、わが子の良いところを見つけてくれることも。そうやって、子どもだけではなく、親御さんにとっても「気づきの場」になるのです。親子で一緒に地域の集まりに参加しよう!先ほどからお伝えしているように、第3の居場所はこれからますます必要とされるでしょう。もし今、子どもの人間関係を広げたいと考えているのなら、そのような場所に足を運んでみてはいかがですか?前出の鈴木さんがおすすめするのは、一般の親子が参加できるファミリーキャンプ。全国に点在する青少年自然の家などの施設で、お互いに知らない親子同士がキャンプをするというものです。家族以外の人と一緒に自然体験するという経験をとおして、他人と協力して働くことができる「協働力」が身につくといいます。また、嶋村さんが代表を務めるTOKYO PLAYでは、都内のあちこちで「とうきょうご近所みちあそびプロジェクト」を実施しています。これは、地元地域に暮らす人たちが町会や商店街と協力し、多世代の人が楽しみ、交流する場所をつくることを支援する活動だそう。子どもは大人との交流によって、褒められたり励まされたりすることで自己肯定感を育むことができます。ほかにも、スポーツのイベントやアート系のワークショップなど、お近くの地域でも交流の場がたくさんあるはずです。ぜひ探して参加してみてくださいね。***人間関係は、親子や先生と生徒といった「タテ」の関係と、友人同士といった「ヨコ」の関係のほかに、「ナナメ」の関係もあります。じつはこの「ナナメ」の人間関係こそ、子どもにとっての逃げ場になったり、刺激を与えられる場所になったりするのです。ぜひお子さんに、豊かな人間関係を築くきっかけを作ってあげましょう。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていくーー親以外の人との交流によって広がる子どもの視界Study Hacker こどもまなび☆ラボ|遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由PHPのびのび子育て 2019年12月号,PHP研究所.学研キッズネット|AI時代を生き抜くために~「失敗力」が育つ6つの栄養素家庭・学校以外の第3の場所が子どもの生きる力を育てるMIKU|家族の中の子どもを考えよう
2020年01月11日何かに一生懸命取り組んでいてもすぐに飽きてしまうわが子を見ては、「うちの子、ほかの子に比べて集中力がないような気がする……」と頭を悩ませている親御さんも多いのではないでしょうか。今回は、集中力がある子とない子では、生活習慣や親の接し方に違いはあるの?飽きっぽいわが子でも、集中力を身につけることはできるの?という疑問にお答えします!集中できる時間はおよそ15分。短くても集中できれば問題ナシ!そもそも集中力とはどのようなものなのでしょうか。脳科学においては、年齢や学習の習熟度に関係なく、脳が集中力を持続できるのは “15分程度” といわれています。ただし、脳科学者の篠原菊紀先生によると、「いいことが起こる予感がすれば、どんな子どもでも集中力を発揮する」そう。動物がエサを追いかけたら途中でやめないように、「いいことが起こりそう」と期待するだけでドーパミン神経系は活動し、集中力も高まるといいます。つまり、脳を集中した状態に導くには、ドーパミン神経系を活性化させる必要があるのです。そのために必要なのが、「勉強するとほめられる」「宿題が終わればゲームができる」という『報酬(ごほうび)』や、「ここなら安心して勉強できる」という『癒し』の環境です。「うちの子、集中力がなくて……」と悩んでいるのなら、勉強する環境を整えたり、適度な報酬を与えたりすることを試してみてもいいかもしれません。「子どもの集中力」について別の視点で解説するのは、全国で講演活動を行なっているスーパー保育士の早坂一郎先生です。早坂先生によると、親から見て「集中力がない、飽きっぽい」と感じる行動が多くても、必要以上に心配するべきではないとのこと。たとえば、「ライオンを見たい!」という子を動物園に連れていったところ、10秒ほどライオンを見て違う動物を見ようとするわが子に対して、「え?あんなに見たがっていたのに?」とがっかりした経験がある人も多いはず。しかし早坂先生は、「飽きっぽいのではなく、この時期(6~9歳くらい)の子は、短時間だけでも満足するのです」と指摘しています。子どもは興味をもったものには必ず集中するため、たとえ集中する時間が短かったとしても、確実に集中力は養われているそうです。子どもの集中力がなくなる原因は親の声かけ!?そうはいっても、ほかの子に比べて気が散りやすく、集中が持続しないわが子が心配……という親御さんも多いはず。ここでは、子どもの集中力がなくなる原因について考えていきましょう。脳科学者の西剛志先生は、「子どものうちは集中力を司る脳の前頭前野という部分が未発達なので、子どもの集中力はなくて当たり前」としながらも、電車好きの子が飽きずにずっと電車を眺め続けるなど、好きなことに対してものすごい集中力を発揮する子がいることも否定していません。このように、前頭前野が未発達な子どもでも自分の好きなことならしっかり集中できることから、西先生は「好きなことに集中するのが、集中力を育むのにもっとも良いトレーニングになる」と述べています。さらに、子どもの集中力を途切れさせているのは、むしろ親の声かけが関係しているとも指摘しています。たとえば、せっかく集中して何かに取り組んでいるのに、親が「おもしろそうだね」と声をかけることで、その都度子どもの集中力は遮断されるそう。『子どもの成績を決める「習慣教育」』(PHP研究所)の著者である今村暁氏も同様に、「子どもの集中力を育てたいと願うなら、何かに没頭しているときは話しかけないことです。テレビやゲームであっても熱中しているなと思ったら、放っておいたほうがいいのです。集中力を養うことこそ最も大事なことなのです」と述べています。子どもが黙りこくっていると「わからないのかな?」と気になるかもしれませんが、よかれと思って声をかけても逆効果になることもあるため、子どもが集中していたらそっと見守ってあげましょう。「今こそわが子の集中力が養われているんだ」と信じて、手助けしないことが大切です。ほかにも、親の声かけが子どもの集中力を低下させる例として、教育評論家の親野智可等先生は「あなたは集中力がない。もっと集中しなきゃダメでしょ」と叱ることを挙げています。親から「集中力がない」と言われ続けることで、子どもは「自分は集中力がないんだ」と思い込みます。そしてそう思い込むことで、実際に集中力が失われていくというのです。子ども自身が「自分は集中力がある」と思えるような前向きな言葉がけを心がけるといいですね。主体的に遊ぶ・メリハリをつける・余計なものを視界に入れない次に、集中力をつけるための生活習慣について考えていきましょう。帝京短期大学教授の宍戸洲美先生は、前提として「おなかが空いている、眠い、身体が疲れている、といった状況では、集中するどころかやる気も出ません」と指摘します。まずは規則正しい生活習慣を身につけること。そのうえで、集中できる環境づくりに着目していきます。集中力と聞くと「学習への集中力」をイメージしがちですが、宍戸先生は「夢中になってひとつのことに没頭できる力こそが集中力」だといいます。しかし、その“夢中になれるもの”を見つけられない子どもが増えているらしいのです。理由のひとつとして考えられるのが、子どもが主体的に遊ぶ環境が減っていること。宍戸先生は、「常に大人が遊びを支配していたり、禁止事項が多かったりすると、子どもは主体性を出せずに、自分が何をしていいのかわからなくなってしまう」と危惧しています。子どもの集中力を高めるにも、自分がやってみたいことに自由に挑戦できる環境を整えてあげましょう。前出の篠原菊紀先生は、「何かに集中するということは、それ以外の時間とのメリハリをつけること」だと述べています。そして、こうした頭の切り替え能力は、遊びでも鍛えられるらしいのです。じっと座って手を動かすだけでも集中力は鍛えられるので、5歳くらいまでなら、迷路や間違い探しなどのゲームを楽しむのがおすすめです。またテレビゲームも、禁止するのではなく「集中してゲームをする」「休憩する」というメリハリを繰り返すことで集中力が身につきます。『大人になってこまらない マンガで身につく自分コントロール』(金の星社)の著者で作業療法士の菅原洋平さんは、目から入ってくる誘惑の情報を振り切るのは、子どもにとって大きなストレスになるといいます。気になるものが視界に入ると途端に集中力が途切れてしまうのは、大人も同じですね。菅原さんは、勉強中に机の上に複数の教材を置いたり、机の上のビニール製のシートの下にプリントなどを入れておいたりすると、余計な情報が脳に入ってくるので避けるべきだと説いています。今取り組んでいる教材以外に、ほかにもやらなければならないことが目に入ると、精神的な負担になり集中力を下げてしまうため、極力余計なものが目に入らないようにしてあげるといいでしょう。好きなことにのめり込む「絶対的集中力」を育てよう!これまでお伝えしてきたように、「集中力」とはなにも学習の場面だけを指しているわけではありません。進学塾VAMOSの代表・富永雄輔先生は、「親が考える『集中力』は、“机に向かってじっと勉強をする” というイメージが強いため、落ち着きがないわが子を見て『集中力がない!』と思うのでは?」と疑問を呈しています。しかし、どんなに落ち着きがないように見える子でも、大好きなゲームやスポーツ、遊びなどには驚くべき集中力を発揮していることも。富永先生は、たとえゲームでも漫画でも「自ら好きなことに没頭できる時間がどれだけあるか」が大切だと説きます。なぜなら、好きなことにのめり込む経験を多く積むほど、集中できる時間が延び、「絶対的集中力」として定着するから。そして絶対的集中力が身につけば、勉強などにも転化できます。つまり、今はまだ勉強以外のことでしか集中力を発揮できていなくても、いずれは勉強の場面でも発揮できる集中力の基礎を築けているということ。前出の親野智可等先生によると、「自分には集中力がある」と信じている子どもほど、好きではないことや苦手なことをしているときも、「集中力があるから、がんばれるはずだ」という気持ちが出てくるそう。まずはスポーツでも遊びでも、お子さんが「これが好き!」「やっていて楽しい!」と思えるものに集中して取り組める環境を作ってあげるといいでしょう。***西剛志先生はインタビューで、「集中力がなく飽きっぽい子どもの中には、単純に頭がいいという可能性もある」と述べています。つまり、おもちゃにすぐ飽きるのも、頭がいいためにそのおもちゃでの遊び方をすぐに学習してしまうから、とも考えられるとのこと。そう考えると、「集中力がある・ない」ことに一喜一憂して悩む必要はないのかもしれませんね。(参考)洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.JTBのMOOK(2019),『未来に役立つ8つの力が育つ週末体験あそび』,JTBパブリッシング.Study Hacker こどもまなび☆ラボ|集中力がない、聞き分けがない、内気。子どもの性格の「困った」はどうする?プレジデントムック(2019),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2020完全保存版』, プレジデント社.ベネッセ教育情報サイト|子どもに集中力をつけるには?[教えて!親野先生]Study Hacker こどもまなび☆ラボ|まなびの保健だより11月号|子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.
2020年01月10日子どものことを真面目に考える親ほど抱えがちなのが、「こうしなければならない」「こうしては駄目」という強い思いです。でも、気鋭の教育ジャーナリスト・おおたとしまささんは、「もっと肩の力を抜いていい」といいます。子ども教育において「やらなくてもいいこと」を、あえて逆説的に挙げてもらう短期連載最終回の「やらなくてもいいこと」は、「いい教育を与えなくていい」「自分で選ばせなくていい」「心配しなくていい」の3つです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)【やらなくてもいいこと10】いい教育を与えなくていいここでいう「いい教育」とは、偏差値が高いなど世間一般に「いい学校」といわれる学校に入学させるといった教育のことを指します。わたしも教育ジャーナリストという立場上、「中学受験をさせたいのですが、どの学校がいいですか?」といったことをよく聞かれます。でも、受験をしないと入学できないような中学というのは、よほどのはずれを引かない限り、どこもいいのです。また、偏差値とは別に、「モンテッソーリ教育、シュタイナー教育、イエナプラン教育のどれがいいですか?」というふうなことも聞かれます。それに対するわたしの答えは、「どこでも大丈夫」になるでしょう。そもそも、子どもには自分で学んでいく力がある。ですから、どんな学校に行ってもそのなかで自分に必要な栄養を取って成長していけるのです。また、「与える」という発想になっている時点で、その親には危険性を感じます。これは、教育虐待をしている親に多い発想です。そういう親は、子どもは真っ白なキャンバスのようなもので、いい教育を与えればいい人間に育つが、悪い教育を与えれば悪い人間に育つと信じ込んでいます。子ども自身を見つめる視線が抜け落ちいていて、教育環境に対して過剰な期待を持っているのです。もちろん、どの学校の水が合うといった相性は多少あるでしょう。でも、子どもにはそれ以上に高い適応力がありますし、教育環境のちがいがその子の人生をまったく別のものにするといったことはまずないこと。たとえば、わたしが別の高校や大学に行っていたとしても、わたしは「いまのわたし」になっていたと思います。そして、忘れてほしくないのは、「決断の良し悪しというのは、決断したときに決まるものではない」ということ。東大に入ってまったく勉強をしなかった人間と、偏差値は高くなくても入った大学で精一杯勉強をした人間なら、後者のほうがよほど多くのものを大学から得ることになります。なにかを決断したとき、その道を最善のものにする努力をいかに続けられるか、その環境を最大限に利用するかということこそが大切なのです。【やらなくてもいいこと11】自分で選ばせなくていいこれは、どんな場面でなにをするにも子どもに選ばせている、子どもに対して理解のあるリベラルな親でありたいと考えている人に向けての言葉です。たしかに、子どもが思春期に差しかかって徐々に自我が目覚めて自己主張をするようになれば、そういう考え方も大切かもしれません。でも、幼い子どもの場合ならどうでしょうか?幼い子どもにはまだはっきりした自我も判断力もありませんから、なんでもかんでも子ども自身で選ぶことはできません。幼い子どもなら本気で、「お父さんとお母さんに選んでほしい」と思っていることもあるでしょうし、子どもが「どっちでもいい」といったらどっちでもいいのです。そういうときは、ある程度、親が決めてしまっていいとわたしは考えています。子どもが自分で選びたいというときだけ選ばせてあげればそれでいい。子どもになにかスポーツをさせたいと思うのなら、周囲の環境のなかで、「ちょっと水泳教室を見てみようか」「野球チームの体験練習に参加してみる?」というふうに、いくつかの選択肢を示してあげる。それで、子どもが選べないようだったら、子どもは親を信頼しているので、「じゃ、水泳を習ってみようよ」というふうに選んであげていいのです。もちろん、無理強いしてはいけません。子どもに「お父さんとお母さんがそういうなら、やってみようかな」という気持ちがあることが大前提です。そのうち、子どもが成長して自分の意志が出てきたら、そのときは子どもの意志を尊重すればいいのです。このことには、わたしからひとつ注意してほしいことが含まれます。子どもに選ばせることにこだわる親のなかには、無理に子どもに選ばせたにもかかわらず、子どもが習い事をやめたいということになった場合などに、「あなたが選んだんでしょ!」というふうに子どもの責任にする親もいます。それでは子どもが追い詰められてしまいます。そんな事態を招かないためにも、子どもの自我が目覚めるまでは、親が選んでもいいというふうに考えてみましょう。【やらなくてもいいこと12】心配しなくていい最後にわたしから伝えたいのは、「心配しなくていい」ということ。よほど間違ったことをしない限り、子どものことを真剣に考えている親の子どもであれば、その子はちゃんと育っていきます。ですが、子どものことはどんな親でも心配してしまいますよね。そういう場合は、「心配しなくていい」なんて強く考えすぎる必要はありません。「心配しなくていい」とは、「心配しては駄目だ」というわけではないのですからね。「心配しなくていいですが、心配してもいい」。わたしはそうみなさんに伝えたいと思います。『大学入試改革後の中学受験』おおたとしまさ 著/祥伝社(2019)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:いちばんのしつけとは、子どもに〇〇を見せること。親はそんなに頑張らなくていい!第2回:いまの時代、「絵本の読み聞かせ」にこだわらなくてもいいんです。第3回:才能さがしのための「たくさんの習い事」より、もっと大事にすべきこと第4回:なんでも「自分で決めさせる」親が、子どもを追い詰めているかもしれない理由■ おおたとしまささん 過去のインタビュー記事はこちら過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある教育虐待をする親とその学歴。その教育、本当に子どものためですか?教育虐待は教育という大義名分のもとで行う人権侵害。でも親の多くは無自覚である失敗経験から学ぶ、学力とは異なる力がものをいう時代。受験勉強で「失うもの」とは?心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。雑誌編集部を経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。『新・男子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『新・女子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』(大和書房)、『いま、ここで輝く。超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』(エッセンシャル出版社)、『中学受験「必笑法」』(中央公論出版社)、『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ 塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)、『ルポ 教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月09日先行きが見えないといわれるいまの時代、「子どもの将来のために」と考え、多くの「こうしなければならない」「こうしては駄目」といった思考に縛られてしまっている人もたくさんいるようです。そこで、気鋭の教育ジャーナリスト・おおたとしまささんに、子ども教育において「やらなくてもいいこと」を、あえて逆説的に挙げてもらいました。短期連載第3回目の「やらなくてもいいこと」は、「習い事をたくさんさせなくていい」「子どもの疑問に答えなくていい」「未来を予測しなくていい」の3つです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)【やらなくてもいいこと7】習い事をたくさんさせなくていいいまの子どもたちは、本当に多くの習い事をしています。でも、それが子どもの大切な時間を奪っていることをどれだけ意識していますか?小さい子どもにとって必要なのは、習い事でなにかができるようになることより、「ぼーっとする時間」だとわたしは考えています。ぼーっとする時間のなかで、子どもは退屈し、「なにをしようか」と考えはじめます。その思考こそが、子どもの自発性や主体性を育むことになるのです。多くの親は、子どもにどんな才能があるかわからないからと、たくさんの習い事をさせようとします。そもそも、子どもがもっとも才能を発揮できる「ベスト」の習い事を見つけてあげたいなんて考えても、なにがベストなんてことはわかりようがありません。でも、本当に才能があることに対してなら、子ども自身が自分で反応し、「これをやってみたい!」と目を輝かせるはずです。親としての役割は、その目の輝きを見逃さないことではないでしょうか。そうして子ども自身が選んだ習い事なら、そこから子どもは、その後の人生を歩むにあたって重要なものを得ることができる。だって、「好き」ではじめたことなのですから、子どもは夢中になって取り組むでしょう。そうすれば、どんどん上達するなど成果を出すことができ、強い達成感を得られます。でも、そのうち必ず壁にぶつかって挫折を味わうことにもなる。ただ、好きなことなのですから、そこで簡単に「もうやめたい」とはいいません。そうして必死に取り組むうち、ぶつかった課題を克服して挫折を乗り越えられるはずです。その一連の経験は、生きていく過程での大きな武器になると思います。【やらなくてもいいこと8】子どもの疑問に答えなくていいかつてのわたし自身もそうでしたが、「いい親でありたい」と考える親は、子どもからなにかを聞かれると、わかりやすく教えてあげたいと考えます。でも、それでは親がただ「Google」になっているに過ぎません。いまは、なにかわからないことが出てきたら、ネット検索すればすぐに答えにたどり着く時代。親までGoogleになってしまっては、子どもが自分で考える機会を奪うことになるのです。また、「子どもが疑問に思ったことについて、親も一緒に調べてあげましょう」ということがよくいわれます。でも、多忙な毎日を送っていて、そうする時間がないという人も多いでしょう。そういう場合、子ども自身に調べさせればいいのです。子どもが庭で見つけた虫の名前を知りたいというのなら、図鑑を手渡して、「これに載っているから、調べてごらん」といえばいい。ただ、子どもに対して無関心でいてはいけません。子どもがなにかに関心を持っているということに対して親は関心を持ち、「わかったら教えてね」といってあげることも大切です。実際に子どもが教えてくれたら、「ありがとう」と伝えて、その話題をどんどん深堀りしていきましょう。また、この方法には別のメリットもある。それは、子どもが自分で疑問を解決しようと調べているうち、「寄り道」をすることです。名前を知りたい虫について調べるうちに、好奇心をくすぐられた他の虫の知識を得るといったこともあるでしょう。これは、書店で本を探すことに似ています。いまはネット通販ですぐに本を手に入れることができますが、書店に行けばお目当てのものとちがう本に興味を引かれるということもありますよね。そんな寄り道が、子どもの知識の幅を広げてくれます。【やらなくてもいいこと9】未来を予測しなくていいこれまでの人生の成功モデルが崩壊したといわれるいま、親は「子どものため」と思い、「これからはグローバル社会だから、英語力を身につけることは必須だ」といったふうに、さまざまな未来予測をしています。ですが、これだけ時代の変化のスピードが増しているのですから、正確に未来を予測することなんて不可能です。それなのに、限られた自分の知識の範囲で親が未来を予測し、「こういう力をつけておいたほうがいい」というふうに損得勘定をする。でも、そんな損得勘定に基づいて子どもを教育することは、一種のギャンブルだと思いませんか?しかも、おそらく高い確率で外れるギャンブルです。そんな危ない橋を子どもに渡らせるべきではありません。では、どうすればいいのでしょうか?それは、どんなに世の中が変わったとしても力を発揮する、汎用性の高い基礎的な力を身につけさせておけばいいのです。どんな力かといえば、それぞれの時代における自分の立ち位置やまわりの状況を観察し、「これからはこういうスキルが必要だ」と判断し、その必要なものを自分で得ていく力です。スマホにたとえれば、スマホ自体が必要なアプリを感知してダウンロードする力を持っているような状況です。それこそが、どんな時代にも通用する、「生きる力」なのではないでしょうか。『大学入試改革後の中学受験』おおたとしまさ 著/祥伝社(2019)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:いちばんのしつけとは、子どもに〇〇を見せること。親はそんなに頑張らなくていい!第2回:いまの時代、「絵本の読み聞かせ」にこだわらなくてもいいんです。第3回:才能さがしのための「たくさんの習い事」より、もっと大事にすべきこと第4回:なんでも「自分で決めさせる」親が、子どもを追い詰めているかもしれない理由(※近日公開)■ おおたとしまささん 過去のインタビュー記事はこちら過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある教育虐待をする親とその学歴。その教育、本当に子どものためですか?教育虐待は教育という大義名分のもとで行う人権侵害。でも親の多くは無自覚である失敗経験から学ぶ、学力とは異なる力がものをいう時代。受験勉強で「失うもの」とは?心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。雑誌編集部を経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。『新・男子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『新・女子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』(大和書房)、『いま、ここで輝く。超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』(エッセンシャル出版社)、『中学受験「必笑法」』(中央公論出版社)、『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ 塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)、『ルポ 教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月08日東京の1月の平均最低気温は1~2℃です。しかし、小学生の登校風景を見ていると、オーバーコートを着て手袋をはめ、寒さ対策をしっかりしている子どもがいる一方で、半ズボンで元気に登校している子どももちらほら混じっています。半そでの子どもに「寒くないの?」と声をかけてみましたが「寒くない!」という返事が返ってきました。この違いは何でしょうか。今月号ではそんなこともみなさんと一緒に考えていきたいと思います。子どもの体がおかしくなってきている人間は恒温動物です。恒温動物は、外気温が変化しても自分の体温を一定に保つ機能をもっています。しかし現代は、暑くなったらクーラー、寒くなったらすぐに暖房、と快適な環境が保障されるようになったため、体温調節機能が低下し、最近では寒さにも暑さにも弱い子どもが増えているといいます。一般的に、北国で育った人は寒さに強く、南国で育った人は暑さに強い傾向があると言われています。これには科学的な根拠があるのです。生後3ヶ月までに「寒い」という体験をさせると、寒い時に体温を上げる機能が発達します。逆に、3歳ぐらいまでにたくさん汗をかくような体験をさせると「能動汗腺」の数が増えるので、汗をたくさんかいて体温を下げる機能が発達し、暑さに強い体になるというわけです。故正木健雄先生(日本体育大学名誉教授)は、1990年代ごろから、子どもたちの低体温が増えてきていることを懸念されていました。自律神経の働きも含めて、子どもの体がおかしくなってきているというのです。今は、暑さにも寒さにも弱い子どもが増えているように思います。冬に「半そでで大丈夫」という子どもは、体の中で熱をつくる働きが強いのです。このように、「子どもは風の子」の生活を取り戻したいですね。寒くても外遊びが重要な理由年齢が小さければ小さいほど、体と心の働きは強くつながっています。ですから、体を動かすことによって心も動きます。家にこもっていると、単に運動量が減ってしまうということだけでなく、意欲や集中力なども低下してしまうのです。かつて保健室登校をしていたお子さんの話をしましょう。そのお子さんは、場面緘黙(かんもく)と言われるほど学校では言葉を発することがありませんでした。ある日、保健室で一緒に紙ひこうきを作って、外に連れていき、ひこうき飛ばしの競争をしました。飛ばした紙ひこうきを何度も拾いに行き、たっぷり汗をかくほど体を動かしたところ、そのお子さんは「先生、僕の勝ち!」と言葉を発したのです。意欲的な子どもは外でよく遊びます。そのお子さんは、外で体をたくさん動かして遊ぶことにより、次第に言葉を発することも増えて新しいことをやってみたいと言うようになりました。さらに、お母さんからは「食欲も増して夜も寝つきがよくなった」と報告がありました。冬の外遊び・冬の洋服選びで気をつけること寒い季節、外遊びをする際にはいくつかの注意点があります。体が十分に温まっていないとけがをすることが多い傾向はありますが、ちょっとしたすり傷は子どもの勲章なので、あまり神経質にならないようにしましょう。ただ、服装には気をつけたいですね。今流行の長すぎるスカートやズボン、フードや飾りが多い上着などは、引っかかってしまうとけがのもとになります。できるだけ体にぴったりした動きやすい服装を心がけましょう。遊び場所や遊びの種類によっては、滑り止めがついた手袋や帽子などはけがを防いでくれるのに役立ちます。子どもの洋服はシンプルなものがおすすめです。着脱しやすく重ね着しやすい洋服を選ぶといいでしょう。最近は大人でも下着(シャツ)をつけない人が増えてきており、子どもたちにも影響しているようです。下着は体温調節に有効で、汗や汚れも吸い取ってくれますから、普段から下着を着る習慣をつけるといいですね。最近では、昔に比べて自分で衣服の調節ができない子どもが増えています。その結果、風邪をひくこともあるかもしれませんが、風邪の予防としては、むしろ外から帰ったときのうがいや手洗いが大切。よほど長時間薄着のままでいなければ、風邪をひく心配はありません。大切なのは、自分で「寒さ」を意識できるようになることです。ですから「寒くない?」などと声をかけてあげるといいと思います。学校の教室は暖房も効きますし、大勢の子どもたちが集まっていると意外に暖かいものです。なかには登校してもコートを着たまま座っている子どもがいますが、そのような場合は先生が室内では脱ぐように指導します。たくさん着ていると、暑いだけでなく体を動かしにくくなりますので、できれば室内では下着とセーターかトレーナーくらいで大丈夫。下着と綿シャツだけで充分というお子さんも多いです。子どもの洋服は綿やウール素材を中心に、シンプルで着脱しやすいものを選びましょう。自分で洋服を調節できる力をつけようここからは、冬の洋服選びについて親御さんから寄せられたお悩みについて、お答えしていきたいと思います。【親御さんからの質問 1】子どもに「暑いんだけど……」と言われながらも、肌着+保温や発熱機能に優れた下着+長袖シャツ+トレーナーを着せていました。しかし、「体育の着替えのとき、ほかの子はこんなに着てなかった!」と子ども言われ、着せすぎていたのかな?と心配になりました。でもやっぱり外に出ると寒いと感じますし、風邪をひくのではないかと不安になってつい何枚も重ね着をさせてしまいます。子どもは大人と比べて、たしかに体温調節能力は低いかもしれませんが、まずは暑かったら自分で脱げる力をつけたいものです。子どもの体に触ってみると意外に温かいので、よほど寒い地域でなければ保温や発熱機能に優れた下着は必要ありません。それよりも、木綿の下着にセーターなどの重ね着をするほうがいいでしょう。大切なのは、子ども自身が「暑かったら脱ぐ」「寒くなったら着る」という力をつけるように働きかけてあげることです。少しくらい寒くても大丈夫。神経質にならないで【親御さんからの質問 2】夜寝るときの室温やパジャマについて相談します。暖房をつけながら寝るときに適した温度はどれくらいがベストですか?乾燥すると風邪をひきやすいと聞きますが、加湿器は必要でしょうか?また寝間着について、フリース素材のパジャマを着せて、その上に毛布のベストを着せていますが、夜中に部屋をのぞくと大汗をかいていることも……。やはり着せすぎでしょうか?朝はとても冷えるので、たくさん着せておいたほうが安心です。寝るときの室温を20℃前後くらいで保っていれば、パジャマの上に何かを着せる必要はありません。湿度を保ちたいときは、濡れたタオルなどをかけておくだけでもいいでしょう。逆に、着せすぎで汗をかいて冷えることで、かえって風邪をひくということも。長袖、長ズボンのパジャマ1枚で十分です。寒さに弱いお子さんなら、パジャマの下に下着を着せるほうがいいでしょう。寝る前に湯たんぽなどでお布団の中を暖かくしておくと、気持ちよく眠りにつくことができます。また、寝る前に少しぬるめのお湯にゆっくり入ると体が温まったまま眠れます。ただし、大切なのはあまり神経質にならないこと。子どもは少しぐらい寒くても暑くても大丈夫です。そのためには、冒頭にお話ししたように、寒さや暑さの体験をたっぷりさせて、外の気温の変化に強い体をつくることを心がけて。夜更かしや睡眠不足、朝ご飯抜きなどは自律神経の働きや免疫力を低下させ、体温調節機能が低くなるため、生活習慣を正すことを重視しましょう。自分で調節できるようになるまで長い目で見守って【親御さんからの質問 3】外を走り回って真っ赤な顔をしているのに上着を脱がなかったり、逆に鳥肌が立っているのに上着を着なかったりと、「それくらい自分で判断しなさい」と言っても指摘されるまでそのままにしているときがあります。言われなくても自分で判断できるようになってほしいのですが、親が気にしすぎているだけなのでしょうか?衣服の調節もしつけの一環ですが、あまり心配しなくても次第に自分でできるようになります。遊びに夢中になっているときは、神経がそちらに向かっていますので、脳が暑さや寒さを意識している暇がないのでしょう。親御さんが気がついたら声をかけるくらいで十分です。子ども自身が自分でできるように見守りましょう。中学生ぐらいになるとほとんどの子どもが自分で調節していますので、あまり神経質になることはありませんよ。暑さ、寒さに強い体は○○でつくられる今月は「寒さ対策」に焦点を当ててお話ししてきましたが、7月号でもお伝えしたように、じつは今、子どもたちの体温調節能力が下がっていることが問題になっています。とくにそれは暑い時期に「熱中症」という形での事故が増えていることからも明らかです。地球の温暖化という問題もありますが、子どもたちの自律神経の働きとも関連して、暑くなったら汗をかいて体温を下げる、寒くなったら毛穴をしっかり閉じて熱を逃がさない、筋肉を収縮させて熱をつくり出す、こうした働きが弱くなっているのです。恒温動物としての危機です。寒さ、暑さ対策の基本はシンプルです。早寝早起きを中心とした正しい生活リズムをつくること、三食しっかり食事をとること、そして思いっきり体を動かして外で遊ぶこと。これらが最良の対策だといえるでしょう。
2020年01月08日過去には考えられなかったほどの大量の情報に触れる現代社会において、さまざまな教育情報に触れるうち、たくさんの「こうしなければならない」「こうしては駄目」という思い込みを抱いている人も少なくないようです。そこで、気鋭の教育ジャーナリスト・おおたとしまささんに、子ども教育において「やらなくてもいいこと」を、あえて逆説的に挙げてもらいました。短期連載第2回目の「やらなくてもいいこと」は、「好き嫌いをなくさなくていい」「読み聞かせしなくていい」「子どもの問題に介入しなくていい」の3つです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)【やらなくてもいいこと4】好き嫌いをなくさなくていい小学校での給食の時間、苦手な食べ物をなかなか食べられなくて苦しんだ経験がある人は多いでしょう。もちろん、健康な体をしっかりつくるためには、好き嫌いなくなんでも食べられることが大切です。ただ、小学校で子どもたちに給食を全部食べさせようとしたのは、「なんでも受け入れられなければいけない」とか「苦手なものも我慢できないといけない」といった、精神修業的な意味合いがあったように思います。そもそも、健康な体をつくるために必要な栄養を取ろうと思えば、無理やり苦手な食べ物から取らなくても、別の食べ物からだっていくらでも取ることができますよね。たしかに、好き嫌いなくなんでも食べられるのはとてもいいことです。でも、本当に苦手なものを無理やり食べさせるようなことをする必要はないはず。というのも、そういうことを繰り返せば、子どもにとって食事の時間が楽しいものではなく、つらいものになりかねないからです。その子が、食事に対して苦い思いを持ったまま成長したとしたらどうなるでしょう?家族団らんの場の中心は食卓ですよね。でも、その子は、大人になって家庭を持っても、家族と食卓を囲む時間を楽しいと感じられない……。そんな家庭では、どこでどう家族との絆を深めるというのでしょうか。無理をして苦手な食べ物を食べることなんかよりも、「家族との食事の時間は幸せだ」と思えることのほうが、その子の人生にとってはよほど重要であるはずです。【やらなくてもいいこと5】読み聞かせしなくていい絵本や本の読み聞かせについては、教育界においていまもむかしもとても重要なものだとされています。たしかに、幼少期の読み聞かせは、子どもの世界を大きく広げる可能性が高い、親子でできるおすすめのアクティビティです。でも、なかには読み聞かせに反応を示さないという子もいるでしょう。一部には、「ディスレクシア」という識字障害の子どももいます。そういう子どもに無理やり読み聞かせをしたとしても、そこから得られるものはそう多いわけではありませんし、読書が好きになるという可能性も低いでしょう。そして、時代はどんどん変化しています。これまで読み聞かせが大きな力を発揮したのは、ペーパーテストが人生の大半を決めるという時代だったからです。文字からなんらかの情報をインプットし、文字としてアウトプットするという力が問われたのがこれまでの時代でした。しかし、2020年の大学入試改革が象徴するように、ペーパーテストで高得点を取るという能力が人生に有利に働くということは、これまでよりも減っていくとも考えられます。また、いまはインターネットの普及やIT技術の進歩により、スマホやタブレット端末用のアプリなど、これまでになかったさまざまなメディアが生まれている時代です。つまり、文字だけに頼らずとも情報をインプットできる機会が増えているのです。いまなら「YouTube」をはじめとした動画共有サイトで情報を得ることもできるでしょう。もし、子どもが読み聞かせに反応を示さないのであれば、絵本や本にこだわらず、子どもに合ったメディアをチョイスしてあげることも、これからはひとつの方法だと思うのです。あるいは、小さい子どもに対してなら、そういったメディアに頼らずともできることがあります。それは、読み聞かせではなく「語り聞かせ」です。これは、有名なシュタイナー教育で行われるものです。シュタイナー教育では、子どもたちに絵本の読み聞かせをするのではなく、先生が子どもたちの目を見ながら、物語をそらで話して聞かせるのです。そうして言葉のシャワーを浴びせることも、十分に読み聞かせの代わりになる。それどころか、絵本ではなく先生の目を見て話を聞くことで、人の話をきちんと聞く姿勢を育むことになるのです。【やらなくてもいいこと6】子どもの問題に介入しなくていい親というのは、自分の子どものこととなると、ささいなことでも心配してしまうものです。子どもが幼稚園や小学校で友だちと喧嘩したとなったら、「早く解決してあげなければ」なんて考えて、つい介入したくなるものです。もちろん、子ども同士のトラブルが長引いて、いじめにつながるような危険性があるとか、子どもが本当に深く落ち込んで心が折れているような場合であれば、親が介入することも必要でしょう。でも、そうではない多くの場合においては、子ども同士に任せておくことが大切です。というのも、それは子どもにとって大きな学びの場面だからです。コミュニケーション能力が未熟な子ども同士は、小さなことでもトラブルを起こします。そして、コミュニケーション能力の未熟さゆえに、なかなか仲直りできないということもある。でも、時間が経てば、未熟ながらも子ども同士で折り合いをつけていく。それは、社会で生きていく大人になるための大事なステップであり、コミュニケーション力を向上させるための、最良の教材です。そういった大切な機会を、「子どもが心配だから……」と、親が簡単に奪ってしまわないように気をつけてください。『大学入試改革後の中学受験』おおたとしまさ 著/祥伝社(2019)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:いちばんのしつけとは、子どもに〇〇を見せること。親はそんなに頑張らなくていい!第2回:いまの時代、「絵本の読み聞かせ」にこだわらなくてもいいんです。第3回:才能さがしのための「たくさんの習い事」より、もっと大事にすべきこと(※近日公開)第4回:なんでも「自分で決めさせる」親が、子どもを追い詰めているかもしれない理由(※近日公開)■ おおたとしまささん 過去のインタビュー記事はこちら過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある教育虐待をする親とその学歴。その教育、本当に子どものためですか?教育虐待は教育という大義名分のもとで行う人権侵害。でも親の多くは無自覚である失敗経験から学ぶ、学力とは異なる力がものをいう時代。受験勉強で「失うもの」とは?心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。雑誌編集部を経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。『新・男子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『新・女子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』(大和書房)、『いま、ここで輝く。超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』(エッセンシャル出版社)、『中学受験「必笑法」』(中央公論出版社)、『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ 塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)、『ルポ 教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月07日おすわりができるようになったころ、「やけに静かだなぁ」と子どもの様子を見ると、ティッシュを1枚ずつ、箱からつまみ出しているところだった……。なんて経験をしたことのある方は、多いのではないでしょうか。思えば、そのころから、子どもの「いたずら」は始まっていました。大きくなるにつれ、お友だちや園の先生など、人とのつながりが広がると、いたずらのバリエーションも増えていきます。思いもよらないいたずらに頭を悩ませている親御さんもいると思いますが、そんな子どもの「いたずら」が、じつは学びにつながっていることをご存じでしょうか?子どもの「いたずら」は「ダメ」と言っても止まらない子どもは「いたずら」が大好きです。「ダメ」と言われたことほど、無性にやりたくなってしまうもの。いたずらを仕掛けては、大人やお友だちがビックリする顔を見て、目をキラキラさせて笑い転げている――そんな子どもたちに、みなさんはどのように接しているでしょうか。たとえば、お子さんが、次のようないたずらをしているのを見たとき、みなさんだったら、どのような反応をするでしょうか。公園の水飲み場の蛇口で、水をジャージャー出しっぱなしにした雨上がりの道端で水たまりを見つけ、長靴を履いてもいないのにジャンプしたリビングで細かく千切ったチラシ広告を頭上へ投げて、紙吹雪のようにばらまいたママの口紅を内緒で持ち出して顔いっぱいに塗った挙句、口紅を折ってしまった想像するだけでも、洗濯や後片付けのことを考えてうんざりしてしまいそうですよね。よくある反応としては、「そんなことをしたら周りの人の迷惑になるからダメ!」「服が汚れるからダメ!」「こんなにぐちゃぐちゃにして、誰が片づけるの!」などでしょうか。しかし、当然ですが、子どもたちは、1回や2回の注意で引き下がるような相手ではありません。ダメと言われようと似たようないたずらを繰り返す子どもに対して、何度も同じように「ダメ」「ダメ」と言うことになります。そのうちにイライラしてきて、最後には感情的に怒鳴ってしまい、自己嫌悪に陥る……。なんて経験がある方も多いのではないでしょうか。いたずらを通して、子どもはたくさんのことを学んでいるじつは、大人を悩ます子どもたちの「いたずら」が、彼らの「学び」につながっていることがわかっています。子どもとことば研究会代表で元立教女学院短期大学教授の今井和子さんは、子どものいたずらと脳の発達の関連について次のように述べています。「子どもがいたずらをしているときって、目が輝いていますよね。それは大脳が反応しているサイン。心が躍動し、興奮している状態です。大脳の前頭葉に興奮と抑制の働きがあるのですが、乳幼児期の脳の発達においては大脳を刺激し興奮する働きを高めることが大切、と言われています。大脳が育たないと、興奮を抑制する働きも育たず、ちょっとのことでパニックになったり、キレたりしてしまうのです。」(引用元:いこーよ|「いたずら」は、子どもの成長を促すって本当?)たとえば、公園の水飲み場で水を出しっぱなしにして遊ぶなかで、「暑い時期は気持ちいいけれど、寒くなると冷たく感じる」ことや「服の袖が濡れたら捲り上げにくく、重く感じる」ことに気づけるでしょう。雨上がりの水たまりを飛び越えようとジャンプして、失敗したり成功したりするうちに、水たまりを飛び越えるための力の入れ具合も調整できるようになります。また、水たまりに足を突っ込むと、澄んでいた水たまりが濁って不思議に思う子もいるでしょう。ばらまいたチラシ広告がヒラヒラと落ちてくるのを見て、ボールを落としたときの落ち方と違うことに気づくかもしれませんし、鏡を見ながら口紅を塗ると、手の動きが反対に写るので塗りにくいことに気づくかもしれません。よく「子どもがやけに静かだと思ったら、いたずらをしていた」というエピソードを耳にしますが、この静かな状態こそ、子どもが集中している証。モンテッソーリ教育では「敏感期」と呼ばれ、あるものに強い興味をもって、集中して何度も同じことをする時期だとされています。一生のうちで敏感期は、0歳から6歳ごろにしかなく、6歳ごろから次第に薄れていくのだそう。いたずらにふけっている子どもの脳は、今まさに敏感期を迎えて、急速に発達している状態なのです。大人がイライラしないで「いたずら」させるコツ「いたずら」をしている子どもの脳は、この先二度とない、貴重な発達期を迎えています。とはいえ、いたずらを許せるときとそうでないときがありますよね。我慢強く見守るのは、私たち大人の心に余裕がなければなかなか難しいものです。大人がイライラすることなく、子どもに「いたずら」させるためのコツをいくつかご紹介します。子どもの脳が急速に発達していることを意識するまずは、大人自身が心の余裕をもてるように「今、この子の頭の中では、人生に二度とない貴重な発達期が訪れているんだ」と意識してみましょう。いたずらの中にも学びがあることを心にとめ、この子はこのいたずらを通して何を学んでいるのだろうと観察してみるのもいいかもしれません。「汚れる」問題には、準備やタイミングで対策を水たまりにどうしても足を踏み入れたい、泥んこや水があれば必ず手を伸ばしていたずらするというお子さんには、着替えの準備をもって出かけるようにしましょう。お出かけ前にいたずらを始めようとしていたら、「早く用事を済ませるから、帰りにしない?」と提案して、服が汚れたらすぐに着替えられるタイミングを選ぶのもいいですね。リアクションは最小限に大人がいたずらに反応して怒鳴ったり驚いたりするリアクションをとると、子どもの脳はそれを新しい刺激として受け止め、快楽物質のドーパミンがどっと分泌されます。ドーパミンは「分泌前にした行動に過剰に注意を向ける」作用をもつため、子どもはリアクションを引き出す前の行動(いたずら)を繰り返してしまうのだそう。子どものいたずらには、最小限のリアクションで対応しましょう。また、大人のイライラをコントロールして見守るべき「いたずら」と、厳しく叱って止めさせなければならない「いたずら」があります。周りの人に迷惑をかけること、自分や相手の体に危険が及ぶことに対しては、何をするとどうなるかを具体的に伝えて、短くビシッと叱ることが大切です。それでも、1回で理解して止めるのは難しいかもしれません。「あと数回は言わなければ」と初めから思っておくと、気持ちに余裕ができますよ。***大人がどんな対策をとろうと、この年頃の子どもはいたずらを止めることは難しいもの。むしろ、お子さんがいたずらを通して、たくさんの「面白い!」「これって何だろう?」を経験することが、その先の知性や心の安定につながると思って、成長を楽しみにしてみてはいかがでしょう。(参考)いこーよ|「いたずら」は、子どもの成長を促すって本当?PRESIDENT Online|なぜ子供は叱れば叱るほど”悪さ”をするかオリックス生命|「モンテッソーリ教育で、子育ての予習」第3回 わが子がよ~く見えてくる!子育て予習のキーワード『敏感期』ベネッセ教育情報サイト|子どものイタズラは成長のチャンス!イライラしないで対処するには?
2020年01月06日「子どもの将来のために、いい親でありたい」と考える真面目な人ほど、「こうしなければいけない」「こうしては駄目」といった家庭教育に関する多くの情報にがんじがらめになっています。そこで、気鋭の教育ジャーナリスト・おおたとしまささんに、子ども教育において「やらなくてもいいこと」を、あえて逆説的に挙げてもらいました。短期連載第1回目の「やらなくてもいいこと」は、「ガミガミ叱らなくていい」「朝は起こさなくていい」「夫婦の意見はそろえなくていい」の3つです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)【やらなくてもいいこと1】ガミガミ叱らなくていい真面目な人ほど、「きちんと子どもにしつけをしないといけない」と考えます。もちろん、それはそれで正しいことですが、注意してほしいのは「しつけ=叱る」ではないということ。どうも、厳しく叱らないと「しつけができない」と考えている人が多いようです。でも、ガミガミと叱らなくてもしつけはできる。だいたい、子どもができないことは、強い口調で伝えたからといってできるようになりません。どんなに親が「ああしなさい、こうしなさい」といってもできないのなら、「このことは、この子にはまだできないんだな」と考えるべきです。まさに成長の真っ只中にある子どもにとっては、いまはできなくても、そのうちできるようになることもたくさんあるのですから。そして、口で伝えることだけがしつけではないと思うのです。わたしが考えるいちばんのしつけとは、子どもに親が手本を見せること。あいさつなんてそれこそ手本を示しやすいものでしょう。たとえば、子どもと散歩中に幼稚園の先生など知り合いに会ったとします。子どもがあいさつをできなかったからといって、「ちゃんとあいさつしなさい」というのではなく、親が「こんにちは」と先生にあいさつをすればいい。そういう親を見て育てば、子どもは自然に「そういうものなんだな」と思ってあいさつができるようになるはずです。普段から親がそういう手本を示していれば、もし子どもがやるべきことを忘れたような場合にも、その親の手本を思い出せるはずです。あいさつのケースなら、普段からあいさつができているような子どもも、たくさんの人が集まっているような場では、その状況に驚いてあいさつを忘れてしまうこともあるでしょう。そういうときも、まずは親がまわりの人にあいさつをする。そして、「こういうときはなんていうんだっけ?」と子どもに伝えてあげれば、子どもは「そうだ!」と思い出して、あいさつできるでしょう。そういった経験の積み重ねこそが、子どもにとって最善のしつけになると思うのです。【やらなくてもいいこと2】朝は起こさなくていい「朝は起こさなくていい」といっても、誤解はしないでください。小さい子どもに、自分で目覚まし時計をセットさせ、ひとりで起きるようにしたほうがいいというわけではありません。自分ひとりで起きられるようになるのは、やはり思春期頃からのことでしょう。もちろん、小さい子どもなら親が起こしてあげる必要があります。でも、小学生にもなれば、子どもに何度声をかけても起きないのであれば、そのまま放っておいてもいいと思うのです。なぜなら、子どもに「失敗の経験」をさせることも重要だからです。ご自身がはじめて小学校に遅刻したときのことを思い出してみてください。廊下には誰もいなくて、もうすでに授業がはじまっている教室に入るだけでも緊張したものですよね。そして、教室に入ろうとしたら、友だちの注目を一身に浴びる……。その恥ずかしさといったらないでしょう。そういう失敗によって痛い目を見れば、その子は緊張感を持ってきちんと起きようとするはずです。もちろん、学校には親としてきちんと連絡しておく必要があります。まずは担任の先生に子どもが遅刻することを謝罪し、「あえて遅刻をさせるから、しっかり叱ってください」と、今後のために意図的に失敗をさせたい旨を伝えれば、先生もきっと理解してくれるはずです。【やらなくてもいいこと3】夫婦の意見はそろえなくていい夫婦というのは、とくに子どもの教育方針については互いの意見を一致させたいと考えるものです。でも、他の多くのこともそうであるように、それぞれ別の人間である夫婦の意見が完全に一致するということはあり得ないといっていいでしょう。そこで無理に意見をそろえようとすると、夫婦関係がうまくいかなくなるということにもなりかねません。もちろん、夫婦で話し合うことは大切。でも、夫婦円満のためにも、相手を論破してでも意見をそろえようとするのではなく、結論については「遊び」を持たせておくべきではないでしょうか。「こういう生き方をする人間に育ってほしい」というふうな、大まかな方向性が合っていれば十分だと思うのです。その方向性を考えるうえでのアドバイスとしては、固有名詞を使うなどあまり具体性を出さないようにすること。「東大に行くような人間に育ってほしい」「最低でも偏差値60以上の大学に行く人間に育ってほしい」といいはじめては、それこそ夫婦の意見はなかなか一致しません。そして、むしろ夫婦の意見に「幅」があることのほうが、子どもにとっては大切なことだとわたしは考えます。というのも、その幅のなかで子どもの個性が育っていくからです。実際にはあり得ませんが、仮に夫婦のあらゆる意見が一致しているという場合、子どもはその狭い価値観のなかでしか生きられないということになります。でも、夫婦の意見に幅があるほど、子どもは「このことに関しては、お父さんはこういうけど、僕の意見はお母さん寄りだな」といったふうに考えることができます。あるいは、人にはそれぞれ異なる価値観と意見があるということを知ることもできる。夫婦の意見の幅が子どもの視野を広げ、世の中の見方をつくっていくのです。そう考え、仮にシングルの人であっても、子どもの祖父母など自分以外の大人と接する機会をなるべく増やしてあげることが大切なのではないでしょうか。『大学入試改革後の中学受験』おおたとしまさ 著/祥伝社(2019)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:いちばんのしつけとは、子どもに〇〇を見せること。親はそんなに頑張らなくていい!第2回:いまの時代、「絵本の読み聞かせ」にこだわらなくてもいいんです。(※近日公開)第3回:才能さがしのための「たくさんの習い事」より、もっと大事にすべきこと(※近日公開)第4回:なんでも「自分で決めさせる」親が、子どもを追い詰めているかもしれない理由(※近日公開)■ おおたとしまささん 過去のインタビュー記事はこちら過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある教育虐待をする親とその学歴。その教育、本当に子どものためですか?教育虐待は教育という大義名分のもとで行う人権侵害。でも親の多くは無自覚である失敗経験から学ぶ、学力とは異なる力がものをいう時代。受験勉強で「失うもの」とは?心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。雑誌編集部を経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。『新・男子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『新・女子校という選択』(日本経済新聞出版社)、『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書』(大和書房)、『いま、ここで輝く。超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』(エッセンシャル出版社)、『中学受験「必笑法」』(中央公論出版社)、『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ 塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)、『ルポ 教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月06日お子さまの写真、撮っていますか?実は写真には、いくつもの教育効果があるのです。いま注目されている、自己肯定感もアップするそうですよ!ほかにはどんな効果があるのでしょうか――。■参照コラム記事はこちら↓今すぐ「Famm無料撮影会イベント」に行くべき4つの理由。写真で「自立心」や「自己肯定感」がアップする!
2020年01月05日みなさんの中には、「夫婦の会話よりも親子の会話こそが重要!」と考えている人も多いのではないでしょうか。たしかに親子の会話は、子どもの内面的な成長に強い影響を及ぼします。しかし、それと同じくらい、もしくはそれ以上に子どもの心に影響するのが『夫婦の会話』なのです。親子の会話以上に夫婦の会話が大切な理由子どもに話しかけるとき、みなさんは「親として」「大人として」ふさわしい言葉を選ぶように心がけているはずです。子どもに使ってほしくない言葉は使わず、模範的な話し方になるように気をつけている人も多いのではないでしょうか。しかし、夫婦で会話をしているときはどうでしょう?心を許している相手だからこそ、リラックスして“素”が出てしまいますよね。その様子を側で見ている子どもは、会話の内容を聞いていないようで、じつはしっかり耳に入っています。そして、無意識のうちに、両親の会話から多くのことを学び、子ども自身の人間関係に反映させているのです。『賢い子を育てる夫婦の会話』(あさ出版)の著者である天野ひかりさんは、親が子に言い聞かせる言葉以上に“夫婦の会話”が大切な理由を次のように説明しています。ます、直接話しかけられる言葉よりも、誰かが間接的に自分のことについて話している言葉のほうが心に響くということが理由としてあげられるそう。たとえば、友人から直接「その洋服オシャレだね」と言われた場合、嬉しいとは思いつつも「お世辞かな?」と感じることもあります。一方、「友だちの○○さんが、あなたのこといつもオシャレでセンスがいいねって褒めてたよ」と間接的に聞くほうが、より心に響くと思いませんか?このことから、天野さんは「親から直接言い聞かされた言葉以上に、親同士や親と誰かが話している言葉のほうが、子どもの心に響く」といいます。さらに、間接的な会話によって、思考力が鍛えられる効果も期待できるそう。両親の会話を客観的に聞くことで、「こんな言い方は相手を不機嫌にさせるんだ」「こういうふうに言うと相手は喜んでくれるんだ」と、知らず知らずのうちにコミュニケーションの方法を学んでいきます。つまり、第三者同士の会話を聞くことで、「これってどういうことなんだろう」と自分で考えるようになるのです。『夫婦の会話』には、私たちが考えている以上に子どもの能力を伸ばす要素が含まれていそうですね。平日は30分未満!?夫婦の会話時間は減少傾向にでは実際に、みなさんは普段どれくらい夫婦で会話していますか?ソフトブレーン・フィールド社による「夫婦のコミュニケーション」に関するアンケート調査では、平日の夫婦の会話時間は「10分~30分未満」が27.3%と一番多く、ついで「10分未満」が26.7%という結果に。なんと半数以上の夫婦が、平日に会話する時間が30分にも満たないということがわかりました。共働きで夫婦ともに忙しく、朝家を出る時間も帰宅する時間もバラバラというパターンも多いため、顔を合わせて話をする時間がないのもうなずけます。ちなみに、同調査では「会話の内容」についてもアンケートをとっており、1位は「子どものこと」で77.8%、2位は「食事や食べ物のこと」で56.4%、3位は「休日の予定」で53.9%という結果が出ました。夫婦の会話時間の短さや会話の内容について、「なんだ、どこの家庭も同じなのね」と安心した方も多いのではないでしょうか。たしかに子どもが生まれてからは、夫婦の共通の話題は、子どものことや日々の食事、休日の予定に関することばかりになりますよね。でもそれだけでは会話が続かないのも事実です。夫婦の会話から子どもが学ぶことは無限大両親の会話が少ないことで、子どもにはどのような影響があるのでしょうか。結婚生活が長くなるにつれ、「言わなくてもわかるだろう」と思い込んで、パートナーへの配慮が欠けてしまうのはよくあることです。しかし、両親の会話が減った結果、子どもは「お父さんとお母さん、ケンカしてるのかな……」「仲が悪いのかな……」と不安を感じてしまうかもしれません。「ごはん、まだ?」では思いやりの気持ちは学べない脳科学者の茂木健一郎先生は、「夫婦が意識的にお互いを思いやる会話をすることが大事」だと述べています。たとえば、お父さんがお母さんに「ごはん、まだ?」とだけ言うよりも、「そろそろごはんにしない?なにか手伝おうか?」と相手への気遣いを見せることで、子どもは「相手を思いやる」ということを学ぶのです。思いやりや感謝の気持ちは、家族間ではつい疎かになりがちです。しかし、茂木先生は「これからの時代は特に『自分の考えや気持ちをきちんと言葉にできなければ、相手に伝わらない』ことを教える必要がある」と指摘します。家庭の中に、思いやりや感謝の気持ちを表す言葉があふれていれば、きっと子どもも他者に対して思いやりの気持ちをもって接するようになるでしょう。「今日の子どもの良いニュース」で親も子も前向きに!教育・受験指導専門家の西村創氏は、「成績が良い子どもの両親は、たいてい仲が良い」と述べています。そして「夫婦の仲はコミュニケーションの量に比例する」ことも指摘しています。西村氏によると、話題が子どものことばかりになってしまうなら、その内容を見直してみるといいそう。「多くの家庭では、子どものマイナスな部分にばかり目を向けて、夫婦の会話でもそうなりがち」だとし、まずは、今日一日の「子どもの良いニュース」を夫婦の会話の軸にすることをすすめています。それは子どもの成長にも良い影響を及ぼします。この、「子どもの良いニュースを伝える」というのは、夫婦間のコミュニケーションを円滑にすること以外にも、大きなプラスがあります。日常では、子どものいたらないところに目がいきがちです。でも、夫に報告するために「我が子の今日のいいところ」を何かひとつでも見つけておこうという意識があると、子どもの良いところを見ようという前向きな視点になります。そしてそのような前向きに見守られている子どもは、いいところが伸びやすくなります。(引用元:All About|夫婦仲を良くして子どもの成績を上げる方法)親から良いところを見てもらうことで、子どもの自己肯定感も高まっていくので、ぜひ取り入れていきましょう。夫婦ゲンカを見た子どもの脳はどうなる?子どもの前で夫婦ゲンカをするのは良くないとわかっていても、つい感情的になって言い合いになることもありますよね。脳科学者の西剛志先生によると、夫婦ゲンカによる子どもへの影響は深刻なものだそう。子どもの前で両親がしょっちゅうケンカしていたら、たとえ子ども自身はケンカをしていなくても、心は常に誰かとケンカをしているときと同じ影響を受けるといいます。その結果、将来的に人間関係の問題を起こしやすくなる傾向があるのだそうです。それは、脳にある「ミラーニューロン」という神経細胞の働きが関係しています。ミラーニューロンとは、目の前の人間の行動を見て、自分も同じ行動を取っているかのように反応する働きのこと。笑顔の人を見ると嬉しい気持ちになったり、ケガをしている人を見ると「痛そう」と思ったりするのは、このミラーニューロンが作用しているからです。たとえ子どもの前で夫婦ゲンカをしてしまっても、仲直りするところまできっちり見せてあげれば問題はありません。前出の天野ひかりさんは、「ケンカを見たことがないと、子どもは正しいケンカの仕方がわからないまま成長します。すると、自分の意見を通そうとして感情的に相手を非難したり、意見を押しつける一方的な行いをしたりするのです」と述べています。正しいケンカの仕方とは、感情をぶつけ合ったとしても、相手の言い分を受け入れる努力をし、お互いに歩み寄って答えを出そうとすること。お父さんとお母さんがケンカをしているのは、お互いに分かり合いたいと思っているから。自分の気持ちを正直に相手に伝えるのはいいことで、たとえ反発し合ったとしても、相手を受け入れたり歩み寄ったりすることでより良い関係に発展することができるーー。夫婦ゲンカを仲直りの段階まで見せることで、子どもはそのことに気づかされます。実践!ありがちな夫婦のマイナス会話をプラスに変える最後に、普段無意識にしてしまっている夫婦の会話のNG例をご紹介。ちょっと気をつけるだけで、夫婦の会話は劇的に変わりますよ。「あなたは○○!」と相手を攻撃しない■NG会話妻「○○が△△でね」夫「(上の空)ふ~ん」妻「ちょっと、ちゃんと聞いてるの!?」夫「……聞いてるよ」妻「あなたっていつもそう!」どちらか一方が話しているのに、もう一方は上の空……。子どものことなど深刻な相談事であっても、これではケンカになって話が進みません。■OK会話妻「○○が△△でね」夫「(上の空)ふ~ん」妻「私はあなたに相談に乗ってほしいと思って話してるのに、真剣に聞いてくれないと悲しくなっちゃうな」東京医科大学付属女性生涯健康センターの小菅二三恵さんによると、相手を攻撃するのではなく、“自分が相手の態度をどう思ったか”を伝えるのが大事とのこと。その様子を見た子どもも、「私」を主語にした言い方をするようになり、お友だちとのトラブルでも、相手を責めずに自分の気持ちを伝えられるようになるといいます。夫婦の意見の相違は、子どもが多様な価値観を学ぶチャンス!■NG会話妻「私は○○したいんだけど」夫「△△のほうがよくない?」妻「えー、△△なんてちっともいいと思わない!」夫「……もういいよ。勝手にすれば」意見がぶつかり合ったとき、どちらも自分の意見を曲げないどころか、相手の意見を否定してしまうのはよくありませんね。■OK会話妻「私は○○したいんだけど」夫「△△のほうがよくない?」妻「なるほどね、あなたは△△がいいと思ってるんだね。じゃあお互いの意見を取り入れて、●●っていう手もあるね」夫「そうだね、それならできそうだね」どちらか一方の意見に強引に従わせるのは、夫婦だからといって許されることではありません。前出の天野ひかりさんによると、夫婦の会話を聞くことによって、子どもは「多様な価値観を受け入れる力」を育むことができるそう。お父さんとお母さんは別々の人間であり、それぞれ異なる価値観を持ち、ぶつかり合ったり尊重し合ったりしながら一緒に暮らしている、ということが理解できれば、成長してからも多様な人間関係に対応できようになります。***大人になってから必要とされる「社会的な能力」のなかで、最も重要なのは“コミュニケーション能力”です。子どもは、家族との関わり合いによって「人との付き合い方」の基礎を学んでいきます。お子さんの将来のためにも、良い影響を与えられるように、夫婦の会話にも注意を払っていきましょう。(参考)マイナビニュース|夫婦の会話時間、平日は“30分未満”が5割超ーその内容は?PHPのびのび子育て 2019年12月号,PHP研究所.All About|夫婦仲を良くして子どもの成績を上げる方法Study Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもを自立できる人間に育てるーー脳科学者が考える「理想の子育て」天野ひかり 著・汐見稔幸 監修(2019),『賢い子を育てる夫婦の会話』,あさ出版.NIKKEI STYLE|「言い方」を少し変えるだけで夫婦関係は改善
2020年01月04日子どもには生き生きと自分らしい人生を歩んでほしい――すべての親が願うことだと思います。自らの力で、生きたいように生きるためには、“自己実現”できる人になることが必要です。子どもをまっすぐ導くためのヒントとなる「マズローの欲求5段解説(自己実現理論)」をご存じですか?今回は、ビジネスでも活用されるこの心理学理論についてご紹介し、子育てにどういかしたらいいのかをみていきましょう。現代社会で自分らしく生きるのは難しい……?インターネットが普及し、さまざまな媒体から情報があふれる現代、子どもたちを取り巻く環境も変化し、子どもたちに求められるものは増え、複雑化しています。たとえば、昔の子どもたちの“環境”といえば、自分の家族と学校と地域がほとんどでした。しかし、今は日本のみならず、世界の状況や情報が簡単に手に入るぶん、比較対象は広がり、求めるもの、求められるものも多様化し、「自分のコミュニティの中でよりよく生きる」シンプルさから、「グローバル化世界でどう生きるのか」を早い段階から求められるようになってきたのです。精神科医の香山リカ氏はこう言っています。最近は「自分でキャリアプランを描いていかないとなかなか生きていけない」と親も思っていますので、子どもには早い機会から「先のことを考えるように」と言わなければなりません。「先のことを考える」といっても何でも良いのではなく、ただでさえ「どう生きるのか」が難しくなっている中で、「生まれたからには“自分ならではの生き方”をしなければいけない」といった、いわゆる「自分らしさ」も、今の若い人や子どもたちは求められていると思います。(中略)「ただ生きる」「なるように生きる」ことができない点が、子どもたちの「生きづらさ」の一つの大きな理由です。(引用元:教育で未来をつくる ROJE|「現代の子どもの<生きづらさ>に向き合う」香山リカ氏)自分らしく生きてほしいけれど、それが大きなプレッシャーになって挫折してしまっては、本末転倒ですよね。子どもたちがどう感じ、何をしたくて、どんな学校や職業に進みたいのか、自然な流れで選んでいけるよう、サポートしてあげられるのが理想です。そのために、子どもが「今どんな状況にあり、何を望んでいるのか」を把握することはとても重要。その指標になる「マズローの欲求5段階説」について、次に詳しくご説明します。マズローの欲求5段階説(自己実現理論)とは「欲求5段階説」とは、アメリカの心理学者 アブラハム・マズローが唱えた心理学の仮説で「自己実現理論」とも呼ばれます。人の欲求は、ピラミッド型に5段階の基本的欲求から成り立つという説です。【マズローの欲求5段階説】※図は編集部にて作成下の欲求から順に見ていきましょう。生理的欲求食事・睡眠・排泄などの命に関わる生理的欲求です。まずはこの基盤の安定が子どもの成長の大前提になることは言うまでもありません。安全欲求安心、安全な暮らしに対する欲求です。健康であること、事故、暴力や犯罪などからの危険回避、経済的安定も含まれます。貧困や家庭内暴力の中で日々の生活が脅かされている子どもは、この2段階目の欲求を満たしていないことになります。社会的欲求愛情や人とのつながりを求め、どこかに所属したい欲求を持つのが3つ目の段階です。学校などの集団に属することで、社会や他者から受け入れられている安心感を感じます。いじめや不登校の問題に悩んでいる子どもは、この欲求が満たされていないのです。承認欲求社会的欲求が満たされると、次は「他者から認められたい」という欲求が生まれます。「親や先生に褒められたい」「かけっこで一番になって友だちに一目置かれたい」など、自分の存在感に注目を集めたいと思います。しかし、これは低いレベルの承認欲求。高いレベルでは、他人よりも自分自身による自己評価が重視され、努力や結果から自己肯定感が高まり、満足感を得られます。自己実現の欲求人は生活の基盤が満たされると、最終的に「自分の持つ能力を最大限に発揮して、理想の自分になりたい」という欲求を持つようになります。そのために意欲的に努力やチャレンジを続けるのです。親として子どもをサポートするとき、この欲求ピラミッドは、タイミングよく、正しく背中を押してあげるためにとても有効です。マズローの欲求5段階説(自己実現論)段階別アドバイスこの「マズローの欲求5段階説(自己実現理論)」は教員試験でも問題としてよく出されており、学校教育にも活用されています。お子さんが何に悩んでいるのか、どんな助けを必要としているのか、段階別にみていきましょう。『子育て&親業ガイド』の著者であるデイビッド・アバドラム博士と、中学受験指導のプロ・小川大介先生のアドバイスを参考にしてみました。【生理的欲求・安全の欲求には――】この2つは“物理的欲求”です。子どもが安定した生活を送るために、親がしっかりとしたベースを築いてあげましょう。規則正しい生活を栄養バランスの取れた食事、良質な睡眠、規則正しい生活など、健康管理は子どもの基盤をつくります。その重要性は理解しつつも、忙しいなかで生活バランスが崩れることもあると思いますので、定期的に見直してみてくださいね。家族の会話をたっぷりと「親に守られている」という安心感は、子どもにとって何ものにも変えがたいものです。会話により子どもの行動を把握することで、身の安全に注意を払うこともできます。【社会的欲求・承認欲求には――】3段階目からは“精神的欲求”となります。大切なのは、自分で行動することで子ども自身が「満たされている」と感じること。承認欲求が満たされないと、劣等感を抱いたり、無気力状態となる傾向があり、社会的ドロップアウトを招き兼ねませんので、注意が必要です。子どもの話を真剣に聞く忙しい仕事や家事の合間に、子どもの話をつい聞き流してしまうこともあるかもしれません。しかし、社会的欲求を満たすためには、子どもの話を真剣に聞いてあげることがとても大事なのだそう。また、「大好きだよ」など意識して言葉にすることで、子どもに疎外感を感じさせないように気をつけましょう。会話はいじめや学校の悩みの早期発見にもつながります。家庭内での役割を与える+褒めるお手伝いで、自分は人の役に立っているという満足感を得ることができ、自分のことは自分でやることで、自立心と自己信頼感を築くことができます。その際、親が子どもの行動を褒める(=認める)ことで、承認欲求の満足度はさらに高まり効果的です。その積み重ねが、自己肯定感をどんどん育むことになるでしょう。他人の評価だけでなく、自己信頼感を持てるようになるのを目標としてください。【自己実現欲求には――】いくらほかの欲求が十分に満たされていても、自己実現欲求が満たされないと、幸福感を感じにくく、欲求不満に陥ってしまうそうです。子どもがやりたいことを見つけたり、夢を語り始めたら、次の点に気をつけてあげてください。「勉強しなさい」は封印親はつい「勉強しなさい」と言いがちですよね。しかし、口うるさくいうよりも「“自己実現”のために勉強する」というモチベーションにつなげるのが正解です。「海外で活躍できるようになりたいから英語を勉強しよう」など、学習の意義を見出せるよう誘導してあげましょう。自分で目標を立てさせる子どもの夢が見えてきたら、大きな目標とそれを達成するための小さな目標を自ら立ててもらいましょう。たとえば、大きな目標が「プロ野球選手になる」なら、小さな目標は「毎日素振り100回」「毎朝30分走る」など。具体的事項をひとつずつクリアしていくことで、自己実現へ少しずつでも近づいていく実感を得ることが大事で、満足感も増していきます。***ピラミッドを積み上げて「自己実現」というトップにたどり着くと、これから生きていくうえで、全ての行動や決断の動機がここに帰結されるようになるそうです。ひとつひとつの積み重ねが、「自分らしく生きられる場所」へ導いてくれるようになるのですね。お子さんがどの段階で悩んでいるのかをしっかり把握して要所を抑えたサポートをしてあげるために、「自己実現理論」は親の助けになりそうです。(参考)ウィキペディア|自己実現理論東御市 元気に育て!すくすくぽけっと|マズロー の欲求段階説教育で未来をつくる ROJE|「現代の子どもの<生きづらさ>に向き合う」香山リカ氏マイナビウーマン|心理学の「自己実現」とは?自己実現欲求を満たす6つの手順鳥取県|第2章 学級づくり・人間関係づくりの考え方東洋経済オンライン|子どもに絶対言ってはいけない「3つの言葉」デイビッド・アバドラム博士著, (2016),『子育て&親業ガイド ―― あらゆる人間関係に効く「三つの柱」しつけがうまくいく秘訣』,SMART GATE Inc.WEDGE Infinity|誰だって叱りたくはないけれど
2020年01月03日『オーケストラ・クラス』という映画があります。テーマは、“子どもの音楽との出会いと成長”。楽器に触れたこともなかった子どもたちが、1年後にあのフィルハーモニー・ド・パリでの演奏会を成功させるという、無謀とも思える目標のために練習を重ね、音楽に触れ、魅了されていくなかで、人としても成長していく物語です。フランスでは、すべての子どもたちに音楽を学ぶチャンスが用意されています。フランス建国の理念「自由・平等・博愛」の精神は、ここにも宿っているのですね。それはどのようなものなのでしょうか。フランス全土にある、6歳から学べる本格的音楽院フランスでは、音楽を専門的・本格的に極めるための高等音楽教育機関のコンセルヴァトワールが有名ですが、初心者の子どもも通える公立音楽院もあります。ここはアフタースクール形式で、6歳以上の小学生から、音楽、舞踏、演劇を学ぶことができます。運営地方行政によって、地方音楽院(41校)、県立音楽院(105校)、コミューン立音楽院(245校)の3つのカテゴリーに分かれていますが、なかでも地方音楽院が一番規模が大きく、設備も整っているので人気です。公立なので格安で学べる環境を全国的に提供しているところに、フランスの芸術に対する懐の深さを感じます。地方音楽院では学べる楽器の種類も豊富で、その教育は本格的です。準備課程と本課程3段階があり、厳しい昇級試験が行なわれます。設備や先生が整ったとても恵まれた環境ですが、学び続けるには本人の強い意志も必要になりそうですね。音楽教育プログラムDEMOS映画『オーケストラ・クラス』で子どもたちが受けているのは「オーケストラDEMOS」という音楽教育プログラム。映画では、通っている学校の選択科目で音楽を選んだ子どもたちが、初めてバイオリンを習うのです。「オーケストラDEMOS」はパリ・フィルハーモニーが2010年に始めたプロジェクト。子どもたちは楽器を提供され、プロの演奏家から3年間レッスンを受けることができます。なんと、すべて無料です。集大成は、年末に行なわれるコンサートホールでの演奏。特に1年目は全くの初心者で楽器を持つ手もおぼつかなかった子どもたちが、大ホールで大勢の観客を前に演奏できるようになるまでには、どれだけの学びと成長が詰まっていることでしょう(映画でその感動の過程を見ることができます)。2018年時点で、フランス各地の33のグループ(オーケストラ)が活動しているそうです。コンセルヴァトワールに比べると、専門性を高めるというよりは、“音楽に縁がなかった子どもたちに、音楽との接点をもってもらい、成長の糧として音楽と触れ合ってもらう”という目的が強い取り組みのようです。そうは言っても、そこで手ほどきを受けた子どもの約4割がその後コンセルヴァトワールに進み、音楽を続けるというのですから、音楽との出会いとしてすばらしい役割を果たしていますね。フランスには、このような活動をする団体がほかにもあり、懐の深さは国に限らず、個人レベルまで裾野が広がっています。フォルマシオン・ミュジカルー音楽を深く体感するための学びここまで音楽教育の学びの場を見てきましたが、その教育内容についても少しご紹介したいと思います。フランスの音楽教育では演奏技術指導以外に、「フォルマシオン・ミュジカル」という音楽基礎教育があります。フォルマシオン・ミュジカル Formation Musicale (音楽の形成)とは、1978年以降フランスのすべての公立音楽学校で第一課程入学の7歳から履修義務とされている、日本のソルフェージュに代わる学科の事。フォルマシオン・ミュジカルの指導内容を一言で説明するとすれば、「音楽家に必要とされるあらゆる能力の基礎形成を目的とした《総合的音楽基礎教育》」。総合的音楽基礎教育とは、これまでのソルフェージュ能力訓練(リズム読み、音読み、記憶、視唱、聴音、音楽理論)に音楽史、楽曲分析そして音楽創作が加えられたもの。(引用元:パリからフォルマシオン・ミュジカル便り|『無知な人のためのフォルマシオン・ミュジカル入門』?!)つまり、演奏技術だけでなく、さまざまな方向からアプローチして総合的に音楽に対する理解を深めるためのとても重要なものなのです。音楽が育む「非認知能力」子どもたちが音楽に親しむための豊かな環境が、フランスには整っていることがわかりました。最後に、その音楽教育で育まれる力についてみてみましょう。意欲:音楽に興味を持ち、学ぼうとする積極性忍耐力:未知のことを学び続ける我慢強さコミュニケーション力:オーケストラというグループの中で他者と音を合わせたり、演奏について意見を交わす中で身に付く社交性と表現力集中力:練習やコンサート本番に必要とされる集中力問題解決力:音楽を習得する中での失敗や挫折を乗り越える力感性・創造力:たくさんの音に触れることで育まれる感受性達成感:一つの目標(コンサートや試験)のために努力し成功したときの達成感これらはまさに「非認知能力」です。音楽を通じて心豊かな人間を育てることを目的とする教育法として有名な「スズキ・メソード」。そのスズキ・メソードの創始者・鈴木鎮一氏も、「音楽を聴き、楽器を学ぶことによって、忍耐力や協調性といった人としての基本的な力を身につけること」を重視していたそうです。スポーツでも同じ側面がありますが、音楽は特に、音の癒し効果で勉学とのバランスもとりやすいという相乗効果も期待できるそうですよ。***「オーケストラ・クラス」の中で特に印象的だったシーンがあります。それは、2回目のレッスンで、初めて先生が弾くバイオリンの音色を聴いたときの子どもたちの表情です。それまでふざけて全く集中力がなかった子どもたちが、演奏が始まった途端、耳を奪われ、目を見開いて、演奏に聴き入るのです。生の音の威力は計り知れないのだと改めて思いました。また、フランスでは幼児期に、「音楽覚醒/導入クラス」というものがあるそうです。ここで一番大事にされるのは「いろいろな音に触れる」こと。聴いて、歌って、踊って、“音楽を自由に本能的に感じる”ことで、音楽の素地が育まれるのでしょうね。“折に触れていろいろな音楽を聴き、さまざまな楽器に触れ、たまにはコンサートなどで生の演奏を楽しむ”“気に入った曲を調べて深掘りしてみる”など、これなら親子で楽しみながらできそうですよね。フランスの音楽教育をちょっとだけ取り入れて、家庭で“親子音楽院”、始めてみませんか。(参考)SINGA FARM|【フランスの教育事情】音楽クラスでの感性を育てる教育とは?公益財団法人 日本ピアノ教育連盟|フランスの中等音楽教育の仕組みパリからフォルマシオン・ミュジカル便り|『無知な人のためのフォルマシオン・ミュジカル入門』?!パリからフォルマシオン・ミュジカル便り|フランスの「早期音楽教育」についてウィキペディア|地域圏立音楽院ウィキペディア|フランスの音楽専門教育『オーケストラ・クラス』ONTOMO|「どの子も育つ」鈴木鎮一の音楽教育を体験して
2020年01月02日陶芸は、「力を込めて土をこね、ろくろをまわし、成形に集中、その後長い時間をかけて焼き上げる」もの。初心者、特に子どもにはハードルが高いイメージがありますよね。そんなイメージを覆す、簡単で楽しい陶芸教室があります。親子で夢中になってしまうという門仲焼教室についてご紹介しましょう。新感覚陶芸――門仲焼とは?まずは「門仲焼って何?」と思いますよね。食べ物ではありません(笑)。「門仲焼」は、カラフルな粘土を使って絵を描くように制作をする、必死の練り作業のない新感覚の陶芸です。様々な色の液体粘土を組み合わせ、小さなお子様から大人まで、自由自在にアクセサリー・小物・箸置き・ボタンなどを作ることができます。門仲焼は一回完結型のワークショップなので、制作日からお届けまでたったの1~2 週間。ご都合の良い時に気軽に体験できるのも魅力です。※通常の陶芸教室は工程が多く、完成まで1ヶ月以上かかります。[一般的な陶芸]成形→乾燥→素焼き→色つけ→本焼き[門仲焼]成形→本焼き(引用元:門仲焼)こねずに、絵を描くように作れるワケは、液体粘土を使うことにあります。何色もある着色液体粘土(カラースリップ)は、細い口がついた柔らかめのプラスチックボトルに入っているため、扱いは初心者にとっても簡単。クッキーにアイシングするかのように、細く絞り出して形を描き、模様をのせていくことができるのです。柔らかいので、形もデザインも自由自在。何を作るかもお好きなまま、箸置きやオブジェ、穴を開けてボタンやアクセサリーパーツも。クリスマスシーズンならオーナメントもいいですね。自分だけのオリジナル作品を暮らしの中で使うこともできる実用性も魅力です。「門仲焼」は、講師の現代陶芸作家・横山玄太郎さんが発案したオリジナル工法です。横山さんは、アメリカの美大を卒業後、現地の陶器製作所を経て帰国。東京・門前仲町にアトリエを構え、国内外のギャラリーで作品を発表、作品は森美術館ミュージアムショップ(東京・六本木)にも取扱いがあるなど、活躍中のアーティスト。「門仲焼」の自由な発想、カラフルな作風は、ご本人のバックグラウンドの賜物なのですね。こんなに簡単でいいの!?門仲焼の作業工程「門仲焼」について少しわかったところで、気になるワークショップでの工程をご紹介します。【1】作業用珪藻土ボード上にカラースリップを絞り出し、ベースになる好きな形を作ります。【2】色づけします。細かい作業はカラースリップを含んだ筆で、マーブリングは粘土が乾く前にすばやく行ないましょう。立体感を出したいときは、ベースの粘土が少し乾いてから色をのせます。色を混ぜて “自分色” を作り出すことも可能です。【3】作業予定時間の1時間半、好きなものを好きだけ作って、あとは先生にお預けして焼いてもらうだけ!1〜2週間ほどしたら、完成した作品が自宅に送られてきます。☆作品はアクセサリー、オーナメント、ネームプレートなど、好きなように各自で加工を楽しみましょう!本当に簡単ですね。作品の焼き上がりは作ったときよりひと回り小さくなり、色は鮮やかに発色します。そんな変化もまた楽しみ。上手に作るコツは、作るものを決めたら、その参考になる写真や絵を持参すること。みなさん夢中になりすぎて、ついつい時間延長になることもよくあるとか。「大人も子どもも簡単に短時間で満喫できる」、それが門仲焼の魅力です。門仲焼は子どもの「遊び」と「学び」にぴったり!「門仲焼」を詳しく知ると、「粘土遊びとお絵かきの中間的なもの」だという印象を受けました。粘土遊びもお絵かきも遊びの大定番です。それらは子どもの成長に重要な役割を果たすことが知られていますが、長年保育業務に携わる市川由美子氏のアドバイスから、改めてその効果を確認してみましょう。■指先のトレーニングが脳を活性化指の神経は脳神経と直接つながっています。粘土を絞り出すことは力加減など指先を繊細にコントロールする必要があり、脳に刺激を与えます。何を作りたいのかを考え、それを実現するために手先を動かすことで脳の発達を促します。■空間認知力が鍛えられる目にするものを立体として捉えることができる力が空間認知力です。脳内で3D化できる能力は、論理的思考の発達を促し、理系の学習分野に効果をもたらすと言われています。作品作りをとおして、まさに立体を想像して実現する過程を体験できるのです。■感性が育つ作品を作るためには、見て、感じて、考えて、決断して、実行するというプロセスが必要です。そのために観察はとても大切。何を作るかを考えるとき、目に映るさまざまなものに興味を持つはずです。感受性というアンテナを経て、「観察力」「想像力」「表現力」が磨かれていきます。■心の安定をもたらす作品を生み出すことは自己表現のひとつです。子どもたちは日々たくさんの学びを吸収し成長していますが、インプットばかりでは心のバランスが保たれません。アート系の自己表現は、とても有効なアウトプットのひとつ。心の奥にたまっていた感情を外に出すことが、心の安定をもたらします。普段しない作業に没頭することは、気分転換にもなりストレス発散の効果も。いつものお絵かきや粘土遊びとは違う表現方法との出会いは、子どもたちにとってより刺激的で、より楽しめそうですね。***「子どもよりお父さんのほうがハマっていた」「子どもが楽しみすぎて作業をやめない」など、大人も子どもも夢中になったというエピソード満載の「門仲焼教室」。横山さんが生み出した陶芸法は画期的に簡単なので、1時間半の作業中にどんどん上達できるのも、子どもたちのやる気を刺激するのかもしれません。「ものづくりの楽しさ」を知るにはうってつけですね。最後に講師の横山玄太郎さんからメッセージです。世界でひとつだけの宝物を作って自分を褒めて、みんなにも褒めてもらいましょう!私も褒められて陶芸家になりました。まだお子さまが製作した作品を販売した前例はありませんが、ぜひ自分で作った作品をバッチやイヤリングなどに加工して、ご両親と一緒にハンドメイド販売サイトやフリーマーケットなどで出品するなど、アーティスの仕事を体験するのもいいと思います。自分で作ったものを売る大変さと売れたときの喜びを感じられる貴重な経験になりますよ!『門仲焼ワークショップ』場所:本所地域プラザBIG SHIP2階 学び合い体験室東京都墨田区本所1-13-4都営浅草線・都営大江戸線「蔵前」駅より徒歩8分東京メトロ・都営浅草線「浅草」駅より徒歩12分都営浅草線「本所吾妻橋」駅より徒歩12分JR「両国」駅より徒歩15分講座時間:1時間30分料金:大人 3000円/小学生 1000円未就学児 無料(場合によって保護者のサポートが必要になります)※お子様だけでの参加はできません。必ず保護者の方とご一緒のご予約が必要になります。ワークショップのスケジュールなど詳細は、門仲焼HPでご確認ください。(参考)門仲焼ベネッセ教育情報サイト|やっぱり人気!粘土遊びで子どもの創造性を高めてあげよう!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|空間認識力が高まり、感性が育つ「お絵かき」All About|子供の空間認知力を高めると、数学や科学に強くなる!子どものアトリエ アートランドウィキペディア|アートセラピー
2020年01月01日子どもが言うことを聞かず大人を困らせるのは、どこの家庭でも見られる光景です。しかし、子どもが親の言うことを聞かないのには理由があるということを理解している人は、少ないかもしれません。「どうして言うことを聞いてくれないの!」と叱る前に、“子どもが言うことを聞かなくなる理由”や“注意したい親の声かけや態度”について、いま一度、考えてみませんか?「言うことを聞かない」は、子どもの成長に必要な過程のひとつ子どもは成長過程のひとつとして、1歳半~3歳ごろに第一次反抗期を迎えます。いわゆる「イヤイヤ期」というもので、これ自体はご存じの方が多いことでしょう。では、なぜ子どもにはイヤイヤ期があるのでしょうか?それは、生きていくうえで一番大切な「自己評価」や「自己肯定感」を養うためと、スクールカウンセラーで医師の明橋大二氏はいいます。子どもは3歳ごろまでに、「私は存在価値があるんだ」「生きていていいんだ」という心の土台を築きます。そのためには当然ながら、親が子どもの反抗を受け止める過程が欠かせません。この気持ちが土台になって、次は「生活習慣」や「しつけ」が身につけられると明橋氏はいいます。これがだいたい、4~6歳ごろです。そして、自己肯定感やしつけを土台にすることで、初めて「勉強」が可能になるとのこと。これが7歳ごろにあたるため、小学校の勉強が6~7歳から始まっているのは理にかなっていると明橋氏はいいます。自己評価という土台がしっかり築ければ、その後のしつけや勉強も自然と身につくとのこと。そのため、子どものイヤイヤは一時的な現象として考えるものではなく、のちの成長への重要なステップとしてとらえることが大切です。成長段階別・子どもが親の言うことを聞かない理由前出の明橋氏は、1~2歳、2~3歳、3~5歳で子どものイヤイヤにも違う傾向がみられると述べます。同氏の解説をもとにして、成長段階別に、子どもが親の言うことを聞かない理由を説明しましょう。■1~2歳の子ども1~2歳の子どもが言うことを聞かないのは、「自分の人格を認めてほしい」ためです。このぐらいの年齢になると、子どもは親の言葉や指示をだいぶ理解できるようになります。そんな時期に「イヤ」と何度も言うことで、「自分もひとりの人間なんだ」と主張しているのです。この自己主張を認めることで、子どもの自己評価は育まれていきます。■2~3歳の子ども2~3歳の子どもが言うことを聞かないのは、自立心が高まり、自分の意志をよりうまく伝えられるようになるためです。この時期は、親にしてみれば困った行動を多くする時期。明橋氏いわく、自立とは「親にとって、とても手がかかる状態になること」ですが、それを親の都合で叱ったり止めたりしていては、自発性そのものが失われてしまうのだそう。きょうだいや友だちに対しても自己主張を始めるようになり、その過程で、対人関係のルールや、言っていいこと・悪いことの区別を学べるようになるのも、この時期の特徴です。時には傷つくこともあるので、そんなときは親が支えてあげましょう。■3~5歳の子ども3~5歳になると、簡単なルールは守れるようになります。それでも言うことを聞いてくれないように感じられるのは、子どもがそのときの気分によってはぐずったり、わざとルールを破って反抗したりすることがあるためです。いつもは友だちと仲良くおもちゃの貸し借りをしているのに、急に「貸さない」と言ってぐずりだす……。こうしたことに思いあたりがあるお父さん・お母さんは多いのではないでしょうか?一方でこのころは、他人の気持ちに対する理解度が高まり、正しく公平な行動がしたいという気持ちが芽生える時期でもあります。そのため、何が間違いなのか教えたり、考えさせたりする機会を作ることで、言うことを聞かない回数も減っていく可能性があるのだそう。そんな時期だからこそ、頭ごなしに言うことを聞かせるのではなく、子どもが反抗したときには、何が正しいことなのかをきちんと教える必要があることも忘れてはいけません。子どもが言うことを聞かないときの対応例:OK・NG集子どもが言うことを聞かないと親はイライラさせられるもの。ですが、そのときの親の言動によっては、子どもを深く傷つけたり、余計に聞き分けが悪くなったりする可能性があります。そこで、子どもが言うことを聞かないときに注意したい、声かけや態度のNG例を説明しましょう。OK例も一緒に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。【NG例1】何がいけないのか理由を言わず、感情的に叱る子どもが言うことを聞かないとき、カッとなって怒鳴りつけても、肝心な「叱られた理由」が伝わらないことがあります。大切なのは、何がいけないかを子ども自身で考えさせたり、どうしたら良いかを伝えたりすることだと明橋氏はいいます。たとえば、一番上の子どもが友だちの家でお菓子をもらってきたとき。お菓子を弟や妹にも分けてほしいけれど子どもが聞き入れようとしない場合、親の対応のOK例・NG例はこちらです。◎OK:「●ちゃん(妹・弟)が目の前でお菓子を食べていたら、自分も欲しいなと思わない?」「みんなが喜んでくれると、自分も嬉しいよね」×NG:「いいからあげなさい!」「独り占めしたいなんて、いやしい子ね」理由を伝え、子どもに相手の立場になって考えさせるようにすると、よりいっそう、他人の気持ちが理解できるようになりますよ。【NG例2】「もう勝手にしなさい!」と突き放したり、人格を否定したりする子どもがひとりで何かをしたがって聞かないときなど、大人はつい、突き放す言葉を言ってしまいがちです。しかし、こうした言葉は子どもの心に深い傷を負わせるおそれがあると、教育コンサルタントの上野緑子氏はいいます。たとえば、まだ歯磨きの真似事しかできないような子どもが「ひとりで歯磨きする」と言って聞かない場合、親の対応としては次のようなOK例・NG例があげられます。◎OK:「よし、じゃあ頑張ってみよう(と言って見守る)」×NG:「もう勝手にしなさい」「好きにしなさい」ひとりでやろうとして失敗することもたくさんあるでしょう。そんなとき、「やっぱりひとりじゃできないじゃない」と否定的な言葉をかけるのもNGです。子どもは全人格を否定されたと感じてしまいます。ひとりでできたときはもちろん、たくさんほめてあげましょう。【NG例3】「あとでね」「また今度ね」と適当なことを言ってはぐらかす忙しいときに聞き分けのないことを言われると、その場しのぎの言葉ではぐらかしたくなりますよね。しかし、適当なこと言うのはうそをつくのと同じと、日本メンタルアップ支援機構・代表理事の大野萌子氏はいいます。もしも子どもが「公園に行きたい」と言って聞かない場合……◎OK:「明日一緒に行こうね」「ごはんを食べたら行こうね」×NG:「あとでね」「また今度ね」OK例にあるようにはっきり約束をして、その約束は守りましょう。そして、もしも約束を守れなかったときは、理由を伝えて謝るといった誠実さがある態度を取り続けることが大切だと、大野氏は述べています。親が、子どもに対しての関わり方に一貫性を持ち、日常の小さな約束を守ることを徹底するだけで、子どもの親に対する信頼度は確実に上がります。結果的に安定した気持ちを育み「聞き分けがよく」なるのです。(引用元:東洋経済オンライン|言う事を聞かない子どもの親の残念な共通点)【NG例4】「~したら、○○をあげる」とご褒美で釣る育児相談室「ポジカフェ」主宰・オランダ心理学会(NIP)認定心理士の佐藤めぐみ氏によると、親が物(ご褒美)に依存した子育てをすると、子どもが物に依存したまま大きくなってしまうそうです。たとえば、子どもが公園でブランコを独占してしまっているときは……◎OK:「ほかの子も遊びたがっているから、順番に使おうね」×NG:「好きなおもちゃ買ってあげるから、ブランコ遊びはやめよう」また、物質的なご褒美は効果や満足感が持続しにくいため、どんどんエスカレートしてしまうとのことで注意が必要です。【NG例5】「○○しないと、おやつ抜き」と、罰を与える罰を与える叱り方は、何が悪いのかが子どもに伝わらず、問題の解決にはならないからNGだと前出の佐藤氏はいいます。「嫌なことを避けたいから言うことを聞こう」と、子どもに思わせてしまうのです。もしも、子どもをいくら誘ってもお風呂に入ってくれないなら……◎OK:「○○(テレビ番組)がもうすぐ始まるね。それまでにお風呂に入ろうね」×NG:「早くお風呂に入らないと、テレビ見せてあげないよ」佐藤氏によれば、ご褒美と同じく、罰も内容がエスカレートする可能性があるとのこと。また、罰に委縮したり抵抗したりする結果、殻にこもる、泣き叫ぶといった副作用を誘発するおそれもあるので避けましょう。***子どもが言うことを聞かないのは、のちの成長に欠かせない過程です。親はイライラすることも多いかと思いますが、その場しのぎの対応をせず、しっかり理由を伝えたり、子ども自身に考えさせたりするなどして、ステップアップのきっかけにしましょう。文/かのえかな(参考)枚方市ホームページ|だだこね(第一次反抗期)明橋大二 (2006),『子育てハッピーアドバイス 2』, 1万年堂出版.明橋大二 (2006),『子育てハッピーアドバイス 3』, 1万年堂出版.All About|子供のしつけ時にやってはいけない怒り方!NG叱り方10か条東洋経済オンライン|言う事を聞かない子どもの親の残念な共通点All About|ご褒美を習慣にすると子どもに何が起こる?All About|子供を罰しても問題解決しない4つの理由
2019年12月31日ミュージカルアニーは1968年以降、日本の舞台で演じられています。30年以上続いているミュージカルで、およそ200万の人が鑑賞している、すばらしい舞台です。私も、もう50回は観ています。アニーはもともと、アメリカの新聞で連載されていた漫画でした。そして1976年にミュージカルとなり、ブロードウェイで上演され、それが日本に入ってきたのですね。ストーリーは、孤児院にいるアニーが両親を探しに行くお話です。舞台は孤児院ですから、子役が多く登場します。ダブルキャストでアニー役2名、孤児役12人です(孤児役のほかに、タップキッズやダンキッズの子役たちもいます)。子役たちは、どのような練習を積み、舞台に立つことになるのでしょうか。今回は、子役たちの教育と、学校教育の共通点について考えてみたいと思います。子どもに「教える」のか「考えさせる」のかアニーの最初の演出家の時代は、子どもでも「プロとして」「大人として」教育されていたようです。私がアニーの舞台を見始めた当時、テレビ番組でよく「メーキング映像」が放送されていました。演出家が考えた演技をうまくできるように育てられている、という印象でした。子役の子ども自身が演技を考えるのではなく、「演出家の考えている演技の意味をつかませようとしている」感じでしょうか。少なくとも、私にはそう見えました。プレゼントされたペンダントを、アニーが「いらない!」と言って投げ捨ててしまうシーンがあります。このシーンの練習風景はテレビでよく放映されていました。アニー役になった子どもたちのほとんどが、演出家が求める真意が理解ができなかったようで、うまく演技ができずに泣いていましたが、「プロとして」「大人として」なんとか頑張って、最終的には舞台に立っていたのです。しかし、2001年、演出家が日本人から外国人に変わりました。そして、先ほどのアニーがペンダントを投げるシーンの演技も変わったのです。物語の内容は同じでありながら、なぜ、アニーの演じ方が変わったと思いますか?それは、新しい演出家になってからは、子役自身にそのシーンの演じ方を考えさせているから。子役の子ども自身が、そのときのアニーの心情を考えて演技をするため、演技の仕方が子役によって変わるのです。心情の捉え方がその子によって変わるので、演技も変わってくるのですね。それについて、演出家は「その演技にその子なりの意味があればいい」と考えているようでした。アニーの子役指導のやり方について大きく分けると、「演出家が指示を出す」「子どもに考えさせる」の2つになりますね。なんだか、子どもの教育とリンクすると思いませんか?ミュージカルの演技指導と小学校での教育の比較そこで、小学校の教育についても考えてみます。小学校低学年のうちは、どうしても教師の指示が多くなりがちです。ですが、中学年、高学年になるにつれて、子どもに考えさせる場面が増えてきます。教師の指示を減らすことができるようになるのです。最近はとくに、「子どもに考えさせる教育」や「楽しい教育」が求められていますよね。どうしてこのような教育が求められるのでしょうか。学校の教科の勉強(生きていくうえでは、どんなことでも全てが勉強だと考えられますが、ここでは学校の教科の勉強に限定します)だけにフォーカスして育てると「危険」ですよ、という風潮になってきたからです。逆に、子どものときにさまざまな体験をしてきている子ほど、「困難に立ち向かう力」があるようです。StudyHackerこどもまなび☆ラボでも、たくさんの先生方が「子どもにはいろいろな体験をさせましょう」「学力だけを重視するのは危険ですよ」と言っています。なぜならば、いろいろな経験をすることで「考える力」を育むことができるからです。答えのない問題に立ち向かう力こそが「考える力」となるでしょう。子どもの自主性を伸ばすために家庭でできること今後の教育は、どうやら「教科の勉強だけをさせるのでなく、さまざまな体験をさせ、自主性を育てること」が大切になるようです。これからやってくると言われるAI時代に必要な力は「チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質」だと、大学教授などの有識者も言っています。では、実際に家庭でどのように子どもを育てていけばよいのでしょうか。ここでは、家でできることをごく簡単に紹介しておきます。子どもに選択させる親の価値観で決めてしまわずに、子どもの「やりたい」を優先させましょう。といっても、実際はなかなか難しいですよね。小さなことから始めてみませんか?「今日のお味噌汁の具は、じゃがいもとお豆腐、どっちにすればいいと思う?」など、「どちらがいい?」と選択肢を用意してみるのはどうでしょう。自分で考える習慣がつくと、「〇〇×△△はどうだろう?」と、独創的な発想もできるようになりますよ。 親は教えない子どもが助けを求めてくるまでは、なるべく「教えない」に挑戦してみませんか。「こうやったほうが早いのに……」と思っても、ぐっと我慢です。手伝わないで見守るのです。親が教えなかったり手伝ったりしないことで、子どもは、思考錯誤を繰り返しながらも問題を自分の力で解決できるようになります。そして、子どもが自分から「〇〇はどう△△すればいいの?」などと質問できるようになれば、自主性や問題解決能力はぐんぐん育っていくでしょう。 自然と触れ合う機会をつくる近所の公園に散歩に行かせるだけでもいいのです。散歩の途中、子どもが「見て!見て!」と言ってきたときに、親が驚くと子どもはとても喜びます。そして、さらに新しい何かを見つけようと、自分から動くのです。親が「もっとほかにも何か見つけてごらん」と言っているわけではないのに……。自然に触れ合い、親がその発見に反応することで、子どもの自主性を伸ばすことができるというわけです。 料理・洗濯・掃除などの家事をさせる料理のお手伝いをさせるとき「危ないから包丁を持たせない」とするのでなく、包丁を使っていることろを「見せて」あげましょう。親がやるのを見ているうちに、自分からお手伝いをしたいと言うようになるのだから不思議です。未就学児、低学年の子どもほどやりたがるよう。料理・洗濯・掃除などのお手伝いができるようになると、自分から仕事を見つけるようになりますよ。お手伝いでも、自主性を伸ばすことができるのです。 ***これからの時代の教育は、学校の教科だけを勉強させるのでなく、「さまざまな体験」を通して自主性を育てることがとても大切だと言えそうです。
2019年12月30日ミキハウス子育て総研が2018年に行なった、子どもの習い事に関する調査の結果によると、男の子・女の子ともに1番人気はスイミングなのだそう。「なんとなく楽しそうだから」「お友だちも通うから……」といった理由で、お子さんを通わせ始めたという方もいらっしゃることでしょう。スイミングスクールの楽しみのひとつといえば、進級テストに合格し、帽子の色が変わったりワッペンをもらえたりする瞬間ではないでしょうか。一方で、なかなか合格できず「やめたい」と言い出すお子さんもいるかもしれません。子どもがスイミングで進級できないとき、親はどう対処すればよいのでしょうか?習い事に通わせることの意味も視野に入れて考えてみましょう。スクールごとに異なる、進級テストの基準スイミングの進級テストの基準は、スクールによって違います。たとえば、セントラルスポーツの進級項目は、25級から1級までの全25段階(1級のさらに上には、基準タイムの突破を目指す特1~特5級がある)。「25級:ジャンプ→24級:顔つけ→23級:もぐる→22級:浮く」といった具合に、スイミングを習い始めた子どもは水中の動作をひとつひとつクリアするたび進級し、やがて泳ぎの習得へと移ります。ほかのスイミングスクールを見てみると、20~30段階程度の進級基準があるようです。比較的段階が多いところでは、基準が細分化されているぶん進級しやすいかもしれません。ですが、上級クラスに到達するまで時間がかかります。一方で段階が少ないところはひとつずつのハードルが高いため、途中までは順調に進んでも、あるタイミングで大きくつまずく可能性も。どちらも一長一短といえそうです。また、4泳法(クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ)を習う順番もまちまちです。ルネサンスのジュニアスイミングスクールでは「クロール→背泳ぎ→平泳ぎ→バタフライ」の順ですが、大宰府スイミングクラブでは「クロール→背泳ぎ→バタフライ→平泳ぎ」の順で進みます。子どもが4泳法を順序良くスムーズにマスターできるとは限らないので、順番のめぐりあわせでつまずくこともあり得ます。テストを実施する頻度もさまざまで、2か月に1回のところもあれば、3か月に1回のところも。さらにスクール独自の標準基準を突破しないと進級できないケースもあります。このように、進級テストの内容との兼ね合いで進級が思うようにいかないことは、じゅうぶん考えられるのです。スイミングでつまずくのは、どのタイミング?技術面で見ても、スイミングを習う過程でつまずくタイミングはさまざまです。まず、最初の壁は「顔に水をつけること」。日本水泳連盟会長・青木剛氏は、「水に慣れていない人は、顔を水につけるのを怖がる」といいます。しかし泳げるようになるためには、水に顔をつけて、目も開けられるようにしなければいけません。次に気をつけたいのが「水に浮くこと」。おぼれることへの恐怖心があると、体に力が入り水に浮けないことがあると青木氏はいいます。しかし、水に浮いた状態から立ち上がれるようになれば、恐怖心は一気に和らぐとのこと。スムーズに立つためには、浅いプールで練習すること、そして目を開けて上下の区別が付けられるようにすると良いそうですよ。「いつでも立ち上がれるのだ」という安心感があれば、不思議と水が怖くなくなる。怖さがなくなってしまえば、どんどんと泳ぎも上手になっていく。(引用元:青木剛 (2005),『水泳―オリンピックのスーパースイムでうまくなる! (めざせ!スーパースター)』, ポプラ社.)いよいよ泳ぎ始めるとなったら、次は「息つぎ」という壁が立ちはだかります。息つぎが上手くいかないと、進級基準の距離やタイムに届かない原因になります。青木氏によると、意外と苦労するのがクロールと平泳ぎの息つぎなのだそう。クロールでつまずく人は息つぎの際に上体を起こしてしまい、水の抵抗で体が沈んでしまうといいます。平泳ぎの息つぎはクロールより難しくないものの、うまくできないとスピードが落ちる原因になるとのこと。一方で、バタフライの息つぎはそれほど難しくないそうです。親の声かけで子どものやる気は上下するでは、進級テストになかなか合格できず、子どもがスイミングスクールに通うのを嫌そうにしていたら、親はどのように声をかければよいのでしょうか?■無理やり続けさせようとする言葉はNG「頑張るって言ったじゃない」「あと1年は続けなさい」「簡単に辞めたら癖になるからダメ」といった、習い事を無理に続けようとさせる言葉はNGだと、教育評論家の親野智可等氏はいいます。脳が急激に発達し、さまざまことを吸収する時期にある子どもにとっての1年は、大人の5年に相当するのだそう。そんな貴重な時期に、やりたくないことを無理にやらせるのは、子どもの成長を妨げると親野氏は述べています。やりたくないことを無理やりやらされると、子どもの成長にとって悪影響しかありません。嫌なことでは頑張れませんし、叱られることも増えます。能力も伸びませんし、自信もなくなります。暗い気持ちでいる時間が長くなるのは、性格形成のうえでも良くありません。(引用元:日経DUAL|「習い事をやめたい」と言われたら、やめさせるべき)※太字は筆者が施した■子どもの頑張りや挑戦を認める言葉はOK一方で、子どもの頑張りや挑戦を認めるほめ言葉は積極的にかけてあげましょう。教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏によれば、「頑張ったね(頑張ってるね)」「ナイストライ」「いい経験をしたね」「結果を気にせず楽しもう!」などの言葉はとても有効だとのこと。こういった声かけは、進級テストの合否を問わずできるのではないでしょうか。また、これらの声かけが励みになって、目の前の壁を乗り越えられる可能性もあります。子どもはきっとやる気を取り戻すことでしょう。そもそも、なんのためのスイミング(習い事)なのか前出のとおり、子どもがスイミングスクールに通うことを嫌がっているのであれば「辞める」という選択肢も視野に入れるといいでしょう。子どものSOSサインをきっかけに、「そもそも、なんのためのスイミング(習い事)なのか」を考えてみるのも悪くありません。親野氏は、「習い事をとおして子どもの“好き”を応援してあげてほしい」といいます。子どもは夢中になる体験によって、思考力や集中力、創造力、記憶力などを総合的に発達させるからです。さらに、親がいつも応援してくれることで、子どもは感謝の気持ちを覚え、親子関係がより良いものになります。これらは、無理やり通わせていては実現しないことですよね。また、スイミングのみならず多数の習い事に通わせている場合は、詰め込みすぎという点にも注意が必要です。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、「子どもにさまざまなスキルを身につけさせようとすることは、必要かどうかもわからないアプリをスマホに入れているようなもの」といいます。アプリを入れすぎたスマートフォンが動作に不具合を起こすように、過度な負担は子どもに悪影響を及ぼすおそれがあるのです。そこでおおた氏がすすめるのは、「子どもにあれこれ習い事をさせるより、ぼーっとする時間を与える」ということ。ぼーっとする時間は子どもに考える時間を与え、自発性を育み、自分で自分の進むべき道を決められる人間に成長させるのです。習い事を辞めたり、減らしたりすることは、必ずしも悪いことではありません。***進級テストにつまずいたときは、子どもがスイミングを習う意味をじっくり考える良い機会です。無理をさせず、子どもの声に耳を傾けてあげましょう。こちらの記事「子どもがスイミングで進級できないときに “親ができる” 4つのこと」では、目標設定や練習内容の見直しのしかたをご紹介しています。練習に励むお子さんを応援するために、ぜひ参考にしていただければと思います。文/かのえかな(参考)ハッピー・ノート.com|通わせてますか?習い事セントラルスポーツ|25段階の進級項目東急スポーツオアシス広島店キッズブログ|スイミングクラス進級基準案内スポーツクラブ ルネサンス|ジュニアスイミングスクール 進級基準・レッスン大宰府スイミングクラブ|ジュニアクラス青木剛 (2005),『水泳―オリンピックのスーパースイムでうまくなる! (めざせ!スーパースター)』, ポプラ社.日経DUAL|「習い事をやめたい」と言われたら、やめさせるべきプレジデントオンライン|子供が見違える「短い声かけフレーズ10」 賢い親が繰り返し言う魔法の言葉こどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある
2019年12月29日最近、日本の子どもの「読解力」が低下したと話題になりました。その要因のひとつとして挙げられているのは、本を読む機会が減っていることです。読書習慣は、子どもの国語力を上げる一番の近道であり、子どもにも大人にも、多大な恩恵をもたらす習慣。今回は、「親子で読書習慣を身につける」と起こる “たくさんのいいこと” と、効果的な本棚について紹介します。読書量の減少で「読解力」低下経済協力開発機構(OECD)が進めている国際学習到達度調査(PISA)では、15歳児を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、3年ごとに調査を実施しています。日本の読解力の順位は、2012年で4位、2015年は8位、そして最新の2018年調査では15位と急落してしまったのだそう。じつはそのなかで、読書習慣のある生徒は、ない生徒よりも読解力の平均点が高かったのだとか。そのため、今回の「読解力」低下の背景に、読書量の減少があるのではないかと考えられています。教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんは、「賢い人は本が好き」というわけではなく、本を好きになることが賢さにつながる、と説きます。本を数多く読むと、言語的な理解力や、言語を使いこなす能力が高まるそうです。学力だけじゃない、〇〇力アップにつながる読書習慣それに、読書が影響を与えるのは学力だけではありません。『本を読む人だけが手にするもの』(日本実業出版社)の著者・藤原和博さんによれば、さまざまな人が書いた本を数多く読むことで、次に示す5つのリテラシー(理解・解釈・活用する能力)を高められるそうです。コミュニケーション(聴く・共感・伝える)力ロジック(著者の論理を理解する)力シミュレーション(先を読む、仮説を立てる)力ロールプレイング(他者の視点を得る)力プレゼンテーション(想像したり表現したりする)力日本は、経済や社会の成長がピークを迎え、精神的豊かさや生活の質の向上を重視する「成熟社会」に移行しました。これら5つのリテラシーは、「成熟社会」において必要な力なのだとか。また、仕事で成功するためには、IQ(知能指数)だけでなく、EQ(心の知能指数)がとても重要だといわれていますが、読書はそのEQを成長させてくれるそうです。EQとは、心の動きに気づいて理解し、管理する能力のこと。EQが高い人は、自己認識・自己管理・モチベーション管理・共感性・社会性などに優れているそう。先述した5つのリテラシーにも通じるところがあります。コンサルティング会社タレント・スマートの共同創業者であるトラヴィス・ブラッドベリー氏とジーン・クリーブス氏らが調査を行なったところ、仕事で高い成果を上げている人の90%はEQが高く、仕事の成果が低い人でEQが高いのは20%のみであったとのこと。脳科学者の茂木健一郎さんは、言葉が人と人をつなぎ、感情や状況の把握を可能にするからこそ、本を読むことで、自分と他者の感情をより理解できるようになる、と述べています。ちなみに、子どもの読書習慣は、親からの影響が大きいのだとか。親の読書習慣が子どもに影響厚生労働省が長年にわたって調査を行なった「第8回21世紀出生児縦断調査結果の概況」によると、親がよく本を読む家の子どもは、児童書や絵本などをたくさん読んでいるそうです。たとえば1ヵ月間、子どもの「本を読む習慣」を調べてみると――本を読んでいる母親の子どもの、本を読む割合は94.9%。本を読んでいない母親の子どもの場合は、88.0%と低くなっています。また、父親が本を読んでいる場合の、本を読む子どもは94.5%で、父親が本を読まない場合の、本を読む子どもは89.3%とのこと。そして、母親と父親が読む本の冊数が多いほど、子どもが読む本の冊数も多くなっています。先に述べたように、読書習慣は知性を高め、さまざまなリテラシーを磨き、EQ(心の知能指数)を成長させてくれます。それらの効能は、子どもだけではなく大人にも与えられるのですから、親も子どもと一緒になって積極的に読書を楽しむことを、大いにおすすめします。それに、読書がもたらす恩恵はまだあるんですよ。親も読書をはじめてみるといい理由英サセックス大学の研究によると、読書によって軽減されるストレスは68%。音楽鑑賞やコーヒーブレイク、ゲームや散歩といった、一般的な解消法のストレス軽減度を上回るそうです。そのため、英国では2013年6月に、医師が精神疾患の患者に対して「本」を処方する医療システムがはじまったそう。患者は処方箋を手に、薬局ではなく図書館へ向かうのだとか。いわゆる「ビブリオセラピー(読書療法・Bibliotherapy)」です。また、米イェール大学の研究チームが 12年間にわたって調査を行なった結果、週に3時間半以上読書をする人は、全く読まない人よりも死亡率が23%低いと結論づけられました。読書をする人は、読書をしない人に比べて2年も長生きするとのこと。臨床神経心理学者のジェニー・オグデン(Jenni Ogden)博士は、登場人物に感情移入したり、「自分ならどうするか」などと考えたりできるので、「自分自身をよりよく理解したいなら、小説を読むことだ」とアドバイスしています。なるほど、EQ(心の知能指数)を高めてくれるわけです。とはいえ、自分にも、子どもにも、読書を無理強いしてはいけません。自然に本が好きになれるように、親と子の「アラカルト本棚」を設けることをおすすめします。自然と本好きになる親子の「アラカルト本棚」偏差値35から読書習慣の改善で東大合格を果たした西岡壱誠さんは、「親が読ませたい本」を子どもに無理やり読ませることだけはしてはいけないと説きます。大人でも「この本を読みなさい!」と強引に押し付けられたら、内心では反発したり、億劫になったりするのではないでしょうか。子どもならなおさらです。それがきっかけで読書嫌いになってしまったら、元も子もありません。子どもが自分で、「読みたい本」を選べることが大切です。そこで、おすすめしたいのが「アラカルト本棚」です。“アラカルト” という呼び名どおりに、文化系、理系、雑誌、漫画、小説、絵本、世界地図など、何でも、あらゆるジャンルの「おすすめ本」を並べてしまうのです。ちなみに、子どもがたくさん本を読むご家庭の本棚の、画期的な例があります。親が子どもに「読んでくれたら嬉しいな」と思う本を図書館から借りてきた際に、まるで書店か図書館のように、面置きにするのだそう。すると、子どもが「あ、新しい本だ」とすぐに気づいてくれるのだとか。西岡壱誠さんが読書について東大生100人からアンケートをとったところ、親から本を「押し付けられる」のではなく、「さまざまな本をおすすめしてくれた」ことが良かった、と答えた東大生が多かったのだとか。「アラカルト本棚」にあった科学アドベンチャーシリーズを読んで理系に興味がわき、東大理学部に進んだ学生もいるそうです。また、約2,250件もの家庭で勉強を教えてきたという、カリスマ家庭教師の西村則康さんは、親子で本棚を共有したほうがいいと話します。子どもが、難しそうな親の本を見て、「いつか読めるようになりたい」と向上心を持つからです。その時々の興味関心に沿って、自分も子どもも自由に選べるような本棚をつくることで、子どもは自然と興味のある本に手を伸ばすようになり、ご自身も「今度はどんな本を並べてみようかな」「何を読んでみようかな」となり、親子でたくさんの恩恵にあずかることでしょう。***古代ギリシアの哲学者・アリストテレスは「すべての人間は、生まれつき、知ることを欲する」といいました。そもそも本は、人間の “もっと知りたい” 欲求を叶えて、大いに楽しませてくれるもの。ぜひ、親子で気楽に読書を楽しんでくださいね。(参考)産経ニュース|PISA調査日本の読解力低迷、読書習慣の減少も影響か国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research|OECD生徒の学習到達度調査(PISA)日本実業出版社|「本を読むこと」で磨かれる5つのリテラシーSTUDY HACKER|本を全然読まないと「3つの超重要メリット」が逃げていく。STUDY HACKER|イギリス政府公認「読書療法」がすごい。ストレス6割減も期待できる『5分だけ読書術』PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)|“心の知能指数”を訓練で伸ばす4つの方法 仕事の成功には「ものすごく影響」厚生労働省|第8回21世紀出生児縦断調査結果の概況|2 子どもの生活の状況StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生に共通する「幼少期の本の読み方」。思考力を鍛える読書法があるって本当?NEWSポストセブン|頭のいい子が育つ環境本棚は親子で共有、机は大きくHugKum【小学館公式】|「リビングに本棚」で子どもが本好きになる神話は本当だった!?【本好きキッズの本棚、見せて見せて!第6回】アリストテレス著,出隆訳(1961),『形而上学〈下〉』,岩波書店.
2019年12月28日文・レシピ写真/栄養士・幼児食インストラクター笠井奈津子構成/岩川 悟おやつは単なるエネルギー補給ではない人間の体は、食べたものでできています。それはもちろん、脳だって同じこと。あらためていうまでもなく、体内に入れるものはとても大切です。しかし、3度の食事には気を遣う一方で、おやつの時間はスナック菓子やジュースなど、子どもが好きなものばかりあげていませんか?「集中力が続かない……」「やる気がない……」こんな様子が子どもに見られたとき、そこにはおやつの選び方が関係しているかもしれません。短期連載最終回は、安心して与えることができる、子どもの集中力をアップさせる良質なおやつについてのお話です。「集中力が落ちてきたな」と感じたとき、大人であるわたしたちは「なにか甘いものを食べて血糖値を上げよう」と考えます。実際、甘いものやジュースを飲むと血糖値が上昇するので、集中力や気分が快復したと感じるでしょう。だからこそ、子どもに対しても同じように考え、「おやつは食事とは異なるもの。エネルギー補給するだけで大丈夫」と思うこともあるかもしれません。でも、子どもの脳の発育を考えると、この選択は正解ではない。なぜならば、集中力を高めるために必要なのは、血糖値がただ「上がる」ことではなく「安定していること」であり、それによって脳に十分なブドウ糖が供給されるからです。甘いお菓子やジュースで血糖値を上げることを繰り返すと、インスリンやアドレナリンなどのホルモンが出すぎた状態になり、血糖値が不安定になるのと同時に精神的にも不安定な状態になってしまいます。応急処置的に急激に血糖値を上げるようなものを口にするのは、その場しのぎのやり方です。長期的に考えた場合、勉強面においても精神面においても、かえってマイナスに働くでしょう。「イライラしやすい」「怒りっぽい」という様子が子どもに頻繁に見られるとき、それは本来的な性格でも環境のせいでもなく、砂糖まみれのおやつで血糖値が不安定になったことによる自律神経の乱れが原因ということも考えられるのです。注意しなければならないのは、「イライラしやすい」や「怒りっぽい」ということ以外にも、「座っていられない」「状況に関係なくほかの子にちょっかいを出す」「騒ぐ」といった問題行動ともいえるようなことにもつながってくるという点。しかし、家や外出先で、子どもにだけ甘いものを禁ずることはできませんし、いきなり「食べてはダメ」といっても子どもは受け入れないでしょう。そこでまずは、糖分をとりすぎないようにすることからはじめてください。家庭によっておやつの量は異なりますが、ケーキやプリン、アイスクリームなどであれば、「半分こして仲良くふたりで食べようね」くらいの量で十分です。個装のお菓子であれば、子ども用のサイズでひとつ、ポテトチップスやチョコレート菓子など大人向用のサイズであれば家族でひとつと考え、それぞれの体の大きさに合わせての配分を目安にすると安心です。「おやつ」から「捕食」への底上げを意識するまた、糖分のとりすぎに注意するためにも、甘い飲み物は、それ自体をおやつとしてカウントしてください。ジュースを飲んでお菓子も食べるというのは、あきらかに糖分のとりすぎです。子どもが清涼飲料水やジュースを飲みたがったら、「ジュースを飲むなら、今日のおやつはそれで終わりね。お菓子を食べるなら、飲み物は水かお茶にしようね」と伝えましょう。ひたすらに「ダメ」というのではなく、そこに選択肢があれば子どもも納得しやすいものです。そのとき、温めてもいい飲み物であれば、温かくしたほうが満足度は高まります。ただ、子どもにも子どもの世界がありますよね。みんなで楽しむ誕生日会のようなときは例外としたほうがいいでしょう。「ハレの日」と「ケの日」では、おやつは変わっていいものだと思います。その次のステップでは、間食を「おやつ」から「補食」に底上げしていくことを考えたいものです。1日を通して血糖値を安定させた状態にして集中力を保つには、前提として、1日3度の食事を規則正しくとることが必要です。それにプラスして食べるおやつには、血糖値を大きく変動させて子どもの集中力を逆に下げるものではなく、栄養を補足できる良質なものを選びたいものです。お菓子として売られているものには、糖質や脂質以外の栄養素はあまり期待できません。また、糖質だけに偏ったおやつだと、ビタミンB1が不足してエネルギー代謝がうまくいかずにだるさを感じやすくなります。これでは、子どもが「疲れた」「やる気がでない」といい出しても仕方ないでしょう。集中力をアップさせるためには、なるべく食事に近いものを選ぶということがポイントです。糖質は大切! 「糖質=悪者」ではない糖質制限ダイエットがブームになり、「糖質=悪者」と考えて炭水化物をとらない人が非常に増えているようです。でも、脳のエネルギー源として利用されるのは、穀物や果物に多く含まれるブドウ糖です。ブドウ糖が不足すると、疲れやすさを感じるのはもちろん、脳へのエネルギー補給も滞ります。でも、「砂糖まみれのお菓子ではダメ」というのがむずかしいところなのですが……脳を安定的に働かせるためにも、比較的GI値が低い全粒粉を使ったお菓子や、今回わたしが提案するような乳製品を使ったお菓子、いちごやりんごなどの果物を間食に選ぶのがいいでしょう(GI値はブドウ糖を摂取したときの血糖値の上昇度を示す指標で、避けたいのは、血糖値が上がりやすい高GI値のものです)。そして、ときには親子で一緒におやつづくりも楽しんでほしいですね。「普段食べているおやつにはこんなに砂糖が入っているんだ!」という発見をしたり、作り手の手間や気持ちを知ったりすることで、感謝の気持ちが育つからです。最初のうちは、「ひとりでつくったほうが楽」と思うかもしれませんが、親子でするおやつづくりは、子どもの生きる力を育む大切な時間になるでしょう。最後になりますが、1児の母であり栄養士であるわたしが思うおやつの時間とは、3度の食事では補いきれない栄養をとる時間です。おやつは、おかしやジュースをただ与えればいいわけではないということを意識して、これからの子育てに取り組んでいただけたらうれしいです。レシピ◆混ぜてチンして冷やすだけ!簡単牛乳ゼリー【材料】小さな型4つ分牛乳240ccゼラチン6g砂糖大さじ1水80ccバニラエッセンス(お好みで)【作り方】耐熱容器にゼラチン、水、砂糖を入れ、600Wの電子レンジで1分加熱する牛乳とバニラエッセンスを①に加えてよく混ぜ、お好きな器に注ぎ入れ、冷蔵庫で1時間以上冷やしてできあがり【主な食材に含まれる栄養素】牛乳……不足しがちなカルシウムが豊富■ 栄養士・幼児食インストラクター 笠井奈津子さん 連載記事一覧第1回:子どもが食べやすく、親の準備もしやすい。勉強に集中できる「良質な朝ごはん」のつくり方第2回:“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」第3回:脳を発達させる食材といえば、やっぱりコレ!苦手な子でも食べやすくなる、魚の調理法第4回:「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも?甘いお菓子が脳に良くない理由とは
2019年12月28日