StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (13/27)
近年のアウトドアブームもあってか、教育の場でも「自然体験」の注目度が増しています。子どもが自然体験をすることにはそもそもどういう効果があるのでしょうか?お話を聞いたのは、さまざまな自然体験プログラムを提供しているNPO法人国際自然大学校の佐藤初雄理事長。国内における野外活動指導の第一人者は、「子どもの学びの内容を気にするまえに、親が『介入する・しない』のバランス感覚を持つことが大切」と語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)自然体験の減少とともに減った「子ども社会」での学び家庭教育において「自然体験」が重視されるようになったことの背景には、あたりまえのことかもしれませんが、子どもたちが自然を体験する機会が減ってきたことが挙げられるでしょう。わたしが子どもの頃には、東京であっても川で魚釣りをしたり木に登ったりと、自然のなかで遊ぶ機会がたくさんありました。でも、いまは都市化が進み、自然そのものが減っています。加えて、いまの子どもたちは学校での勉強だけでなく、学習塾やさまざまな習い事に追われ、遊ぶ時間自体が減っています。また、公園でも禁止事項が増えたうえに、ゲーム機が登場したこともあって、遊ぶにももっぱら室内でということになってしまいました。するとどういうことが起きるかというと、子どもが「子ども社会」のなかで学ぶという機会が減ってしまうのです。かつての子どもたちは、子どもだけの社会で過ごす時間がたくさんあり、そのなかでいいことも悪いことも含めて多くのことを学んでいました。もちろん、当時の子どもたちには「学んでいる」という意識などなかったでしょう。でも、年齢も性格も異なる子どもたちのなかで過ごせば、そこで得たさまざまな経験が、じつは社会に出たときに大いに役立つということがあるはずなのです。わたしたちが提供しているキャンプやスキーなどのプログラムは、最長でも10泊という限られた期間のものです。それでも、かつての子ども社会で得られたような経験を凝縮して味わえるものにしたいと考えていますし、わたしたちの事業に対して一定の支持層があるということは、その考えがある程度は実現できていると自負しています。自然のなかで得る学びは子どもによってちがっていい先にお伝えした「子ども社会」で過ごすことも含め、自然体験は子どもに多くのものをもたらしてくれます。学校での勉強となると、どんな教科にも「理解すべきこと」というものがあります。でも、自然体験においては「理解すべきこと」といった決まった目標はありません。川遊びをするにも、自然そのものをただ感じる子どももいれば、遊びを通じて他人とのかかわり方を学ぶ子どももいます。岩の上から川に飛び込むような場面では、自分自身の勇気や逆に臆病さを知るということもあるでしょう。自然体験には子どもそれぞれに多様な学び、気づきがあるのです。ただ、わたしたちとしては、こちらが期待する学びを少しでも多くの子どもが感じられるようなプログラムづくりを心がけています。たとえば、カレーをつくるというプログラムなら、「普段、ご飯をつくってくれている親の苦労の理解や親への感謝」といったものを子どもに感じてほしいという具合です。ほかにも、プログラムの内容によって、「生きる力」「チームワーク」といったさまざまなテーマを設けています。ですが、もちろんその狙いどおりにはなりません。10人の子どもがいたら、こちらの狙いどおりのことを感じてくれる、学んでくれる子どもは6人くらいでしょうか。でも、残りの4人の子どもも、なにも学ばないというわけではありません。先にお伝えしたとおり、子どもの学びはそれぞれなのですから、たとえば新しい友だちができたことによろこびを感じるだけでもいいのです。親が持つべきは「介入する・しない」のバランス感覚ほかにわたしたちが強く意識している点としては、「安全」が挙げられます。小さい子どもなら、川遊びも包丁を使うのもすべてが初体験ということがほとんどです。まずはなにが危険なのかということを教えてあげなければなりません。そのうえで体験をさせる。多少の危険が伴うことではありますが、その体験の機会を奪いすぎてしまうことはよくありません。親というのは、子どものことを心配するものです。それこそ包丁を使わせるような場面なら、つい「危ないから」といって親がやってしまうということがよくあります。でも、本当に子どものことを思えば、止めたくなる気持ちをぐっと抑えて子どもに体験させてあげなければならないのです。もちろん、本当に危ないというときにはわたしたち指導員や親が介入するべきですが、ギリギリのところまで待つ、見守るという姿勢が大切です。それから、子どもが自然のなかで遊ぶ経験自体が減っていることを考えれば、なにが危険なのかということのほかに、遊び方そのものも教えてあげてもいいかもしれません。本来なら子どもが遊びたいように遊ばせてあげることが重要ではありますが、川に子どもを連れて行って、「さあ、遊びなさい」といきなりいったところで、どう遊んでいいのかわからない子どももいるからです。ただ、遊び方を教えてあげたあとは、やはり見守ることが大切でしょうね。すべてを大人が指示するのではなく、見本を見せたら子どもの好きにさせる。そういうバランス感覚を親御さんにも身につけてほしいですね。『社会問題を解決する自然学校の使命』佐藤初雄 著/みくに出版(2009)『13歳までにやっておくべき50の冒険』ピエルドメニコ・バッカラリオ、トンマーゾ・ペルチヴァーレ 著/佐藤初雄 監修/太郎次郎社エディタス(2016)■ NPO法人国際自然大学校理事長・佐藤初雄さん インタビュー一覧第1回:キャンプに「せっかくだから」は不要!子どもが自ら学ぶ、自然のなかでの“シンプルな”過ごし方第2回:「ギリギリまで待ち、見守る」がコツ。我が子の自然体験に親はいかに“介入する”べきか第3回:“日常的に”自然で遊ぶメリット。「感性で動く」幼少期に多くの自然体験をすべき理由(※近日公開)第4回:【初心者向け】親子キャンプの楽しみ方。自然体験のプロが教える、親の2つの“NG行動”(※近日公開)【プロフィール】佐藤初雄(さとう・はつお)1956年12月21日生まれ、東京都出身。NPO法人国際自然大学校理事長。他にNPO法人自然体験活動推進協議会代表理事、NPO法人神奈川シニア自然大学校理事長、公益社団法人日本キャンプ協会監事なども務める。1979年、日本体育大学社会体育学科を卒業し、財団法人農村文化協会栂池センター入所。1891年に同センターを退所し、1983年4月に国際自然大学校を設立。「次代を担う自立した青少年を育成するには自然体験活動が不可欠」として「教育・環境・健康・国際・地域振興」をキーワードに自然体験活動の提供を続ける、国内における野外活動指導の第一人者。著書に『図解 サバイバル百科』(成美堂出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年08月13日子ども向けのワークなどによくある迷路。じつは、迷路で遊ぶと、子どもにとってさまざまな効果が期待できるのです。今回は、迷路で遊ぶことのメリットや、おすすめの迷路絵本をご紹介しましょう。迷路で遊ぶと頭が良くなる!?知育玩具や絵本にも用いられることが多く、子どもはもちろん、大人も夢中になってしまいそうな迷路。子どもが暇を持て余してしまう車やバス、電車での移動の際や、天気が悪い日のお家遊びツールとしても活用できるため、子育て家庭にとっては必須とも言えるアイテムのひとつです。シンプルな遊びにも思える迷路ですが、「ゴールにたどり着くためにはどこを曲がればいいのか考えながら線を引いていく」という作業は集中力や判断力が必要とされ、脳の活性化につながるのだそう。医学博士の白澤卓二氏は、迷路遊びの効果について次のように述べています。迷路には、脳の働きを活性化させる力があります。お子さんが夢中になって迷路をとくことで、空間認識能力のアップや、認知機能の柔軟性が獲得されています。また、お年寄りの認知症予防プログラムにも迷路は活用されています。(引用元:絵本ナビスタイル|迷路で子どもの「脳力」がアップする!『めいろどうぶつえん』)「線を引く」ことのすごいメリット迷路遊びでは、「ゴールを目指して線を引く」という作業がメインになりますが、中学受験のプロとして活躍している小川大介先生いわく、「線を線として書くこと」には以下のメリットがあるのだそう。●文字や数字を学ぶ基礎ができる小さな子どもにとって、迷路遊びのような「1本の線を引く作業」はかなり難しいと小川先生は言います。そして、線を書く遊びになじんでいる子となじめていない子では、本格的に文字や数字を学び始めてからの定着に大きな差が出るのだそう。幼少期に楽しく遊びながら、文字・数字を書くための基本を身につけることができる点は、迷路遊びの大きなメリットです。●算数の図形問題への苦手意識がなくなる小川先生いわく、迷路などで線を書くと、自分の手で動かしたものが形になる感覚を味わうことができ、形に対するセンサーが磨かれていくのだそう。前述したように、子どもにとって線を引くのは難しい作業。最初は紙に線を引く練習から始めましょう。直線や曲線を書く練習から始めていき、慣れてきたら丸や三角、四角などの図形に発展させていくことで、図形として物をとらえる目が養われ、ひいては算数の図形問題にもなじめるようになります。年齢別・おすすめの迷路絵本さまざまな絵本のテーマにもなっている迷路。ここでは、おすすめの迷路本を年齢別に紹介します。2、3歳〜「ぐんぐんすすめ! よんだりたどったりめいろであそぼ」著:かしわらあきお(幻冬舎)大きくてわかりやすい迷路になっており、まだ線を書くのが難しい子どもでも指でなぞりながら遊べます。「てくてく」「とことこ」など、子どもが好きな擬態語がいたるところに散りばめられており、言葉遊びも楽しめます。「ベリーくんのきのみやさん」(エド・インター)絵本と木製の迷路がセットになった知育玩具です。ストーリーに合わせてマグネットペンで玉を運ぶ迷路で、数の数え方や色の認識力、手先の器用性などが養われます。「ノンタンおばけむらめいろ」著:キヨノサチコ(偕成社)子どもに大人気のノンタンシリーズの迷路本です。ノンタンが好きな子どもはもちろん、おばけが好きな子どもにもピッタリ。ノンタンとおばけのやりとりを楽しみながら、迷路にふれるきっかけとして活用するのもおすすめです。 年長~小学校低学年「算数が好きになるパズル迷路のろじか~る」著:算数パズル開発室(世界文化社)迷路をしながら、計算問題では身につかない考える力を養う絵本。迷路で楽しく算数に触れることができるので、算数に苦手意識がある子どもにもおすすめです。「めいろどうぶつえん」著:吉川めいろ(飛鳥新社)50種類の動物が迷路になっており、動物が好きな子どもにおすすめです。動物ごとに生態の解説も載っているので、図鑑のように楽しむこともできます。「パズルでまなぼう③めいろ」監修:市川希(世界文化社)完成後の迷路に色を塗ると動物などが出てくるページがあり、迷路でゴールにたどり着いたとき、そして色を塗って動物が出てきたときと、さまざまな達成感が味わえます。知能研究所・所長の市川希先生による解説つきです。***子どもから大人まで楽しむことができ、脳の活性化にも良い影響がある迷路。ぜひ親子で取り組む趣味のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。文/田口 るい(参考)マイナビウーマン子育て|迷路は知育に最適!?迷路の効果と子供への教え方日経デュアル|簡単オススメ!紙と鉛筆を使い、子を賢くする方法絵本ナビスタイル|迷路で子どもの「脳力」がアップする!『めいろどうぶつえん』偕成社|ノンタンおばけむらめいろ世界文化社|算数が好きになるパズル迷路のろじか~る世界文化社|パズルでまなぼう③めいろ絵本ナビスタイル|ぐんぐんすすめ! よんだりたどったりめいろであそぼ株式会社エド・インター|えほんトイっしょベリーくんのきのみやさん
2019年08月13日夏休みのような長期休暇に入ると、キャンプなどで子どもに自然体験をさせてあげたいと考える親は多いものです。ただ、都市部で生まれ育って自然体験が少ない親の場合、不安もあることでしょう。そんな親でも気軽に子どもを参加させられる、さまざまな自然体験プログラムを提供しているのが、NPO法人国際自然大学校。国内における野外活動指導の第一人者である佐藤初雄理事長に、同法人の設立経緯、活動内容などについてお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)ボランティアではなくスペシャリストとして野外活動体験を提供わたしが国際自然大学校を設立したのは1983年。以来、子どもたちを中心に、自然のなかでの体験の楽しさや大切さを伝え続けてきています。設立のきっかけのひとつとなったのは、大学時代に出会った「野外教育概論」という授業でした。これは、野外活動を通じて自立心や協調性やコミュニケーション能力といったさまざまな力を育てる教育手法を学ぶ内容です。同じクラスになったのが、のちに一緒に国際自然大学校を設立することになる友人でした。彼とともに「将来は野外活動を通じた教育のプロを目指したいね」と夢を語り、学生時代にまずは野外教育活動研究会というサークルをつくりました。もちろん、当時の日本にもボーイスカウトやYMCAなど子どもたちに野外活動を提供する団体はありましたが、それらはあくまでもボランティア。わたしたちは、スペシャリストとして安定して野外活動体験を提供するために事業化したいと考えたわけです。学生時代はそれこそ年がら年中アウトドアにいるような生活でした。そうして、ふつうに学校の教員になることよりも、野外での教育の可能性に魅せられていったのです。卒業旅行代わりに行ったのは、1941年にイギリスで発足した「アウトワード・バウンド・スクール(OBS)」という冒険学校。参加者が自然を舞台にしたチャレンジングな冒険活動に取り組み、そこから自己に秘められた可能性や他人を思いやる気持ちなどの豊かな人間性を育むことを目的に活動している学校です。いまでは世界中に系列校が広がっており、1989年には日本校もできています。そして、大学卒業後に入所したのは、財団法人農村文化協会栂池センターというところでした。そこで常設の冒険学校をつくるという話だったのですが、残念ながら年に1回くらいのコースしか開かれなかった。そこで、「だったら、自ら開こう」と決意したのです。そうして、1982年に今度はアメリカのコロラドにあるOBSに入学しました。約3カ月半のインストラクター養成コースを終えたあと、同じOBSでインストラクターのアシスタントを2カ月間務めて帰国し、ようやく国際自然大学校の設立にこぎつけたのです。活動の柱は「キャンプ」「スキー」「通年型自然体験プログラム」国際自然大学校の設立からすでに30年以上となりますが、その活動の柱は変わっていません。まずは「夏のキャンプ」と「冬のスキー」。これは、主に夏休みや冬休みなど長期休暇の時期に提供している、わかりやすくいえば体験つきのパッケージ旅行です。対象も年中さんから中学生まで幅広く、期間も日帰りのものもあれば最長で10泊といったものもありますし、場所もさまざまなところで開催しています。それから、もうひとつの柱といえるのが「子ども体験教室」というもの。こちらは、先のキャンプやスキーとは対照的に、通年型の自然体験プログラムです。年中さんから中学生まで年齢ごとに4つのコースを設け、毎回異なるプログラムをだいたい月に1回のペースで週末に行なっています。たとえば、小学1年、2年を対象にしたビギナーコースにおけるテーマは「できる力UP!」。それをベースに、川遊びやアウトドアクッキング、地図を持っての探検、10kmのチャレンジハイクといったプログラムを用意しています。「活動」より「体験」に重きが置かれるように変化そういったわたしたちの活動を通じても感じるのは、教育という観点から「野外活動」「自然体験」への注目度が増しているということです。ですが、教育において野外活動という言葉は決して新しいものではありません。心身の健全な育成のためには野外活動が重要だとして、1961年に施行されたスポーツ振興法のなかですでに「野外活動」という言葉が使われているのです。ただ、近年になると「野外活動」という表現は「自然体験」というふうに変わってきました。2000年代に入って学校教育法が改正された際に、子どもたちに生活体験や自然体験などの体験活動の機会を豊かにすることは極めて重要な課題だとして、「自然体験」という言葉が登場するようになったのです。このように、「野外活動」から「自然体験」というふうに表現が変わってきたことを思えば、近年は「体験」ということにより重きを置く方向にシフトしていきているのかもしれませんね。「活動」というと、積極的になにかをしなければならないと感じてしまいます。ただ、わたしたちが用意しているプログラムに参加することとは対照的にもなりますが、自然のなかに入れば、あれもこれもやろうとする必要はないという側面があるのも事実なのです。それこそ、家族で行くキャンプだったら、ただテントを張ってご飯を食べるといったことでもいいし、その近くを散策する程度でも十分です。「子どものために」と考える親は「せっかくだから」といろいろやろうと欲張ってしまいがちですが、子どもたちが過ごしたいように過ごさせてあげれば、自然のなかで子どもたちはそれぞれに多くの学びを得るものなのです。『社会問題を解決する自然学校の使命』佐藤初雄 著/みくに出版(2009)『13歳までにやっておくべき50の冒険』ピエルドメニコ・バッカラリオ、トンマーゾ・ペルチヴァーレ 著/佐藤初雄 監修/太郎次郎社エディタス(2016)■ NPO法人国際自然大学校理事長・佐藤初雄さん インタビュー一覧第1回:キャンプに「せっかくだから」は不要!子どもが自ら学ぶ、自然のなかでの“シンプルな”過ごし方第2回:「ギリギリまで待ち、見守る」がコツ。我が子の自然体験に親はいかに“介入する”べきか(※近日公開)第3回:“日常的に”自然で遊ぶメリット。「感性で動く」幼少期に多くの自然体験をすべき理由(※近日公開)第4回:【初心者向け】親子キャンプの楽しみ方。自然体験のプロが教える、親の2つの“NG行動”(※近日公開)【プロフィール】佐藤初雄(さとう・はつお)1956年12月21日生まれ、東京都出身。NPO法人国際自然大学校理事長。他にNPO法人自然体験活動推進協議会代表理事、NPO法人神奈川シニア自然大学校理事長、公益社団法人日本キャンプ協会監事なども務める。1979年、日本体育大学社会体育学科を卒業し、財団法人農村文化協会栂池センター入所。1891年に同センターを退所し、1983年4月に国際自然大学校を設立。「次代を担う自立した青少年を育成するには自然体験活動が不可欠」として「教育・環境・健康・国際・地域振興」をキーワードに自然体験活動の提供を続ける、国内における野外活動指導の第一人者。著書に『図解 サバイバル百科』(成美堂出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年08月12日子どもがテストで100点を取ったとき、どんな声がけをしていますか?じつは、使う言葉しだいでは、子どものモチベーションをアップさせることもあれば、逆に低下させてしまうこともあるのです。今回は、子どもが100点を取ったときの声がけの影響や、良い褒め方・悪い褒め方についてご紹介します。「100点なんてすごい!」が良くない理由子どもがテストで100点を取ったとき、思わず「100点が取れたなんて、すごい!」という言葉をかけてはいませんか?もちろん、100点が取れることはすばらしいことですから、「すごい!」と言いたくなる気持ちもわかりますし、そう言われた子どもも誇らしい気持ちになるはずです。しかし、国立大学教育学部附属小学校教諭の松尾英明先生いわく、この発言は、高い技能やパフォーマンスへの評価に過ぎないのだそう。こうした褒め方が繰り返されることで、子どもは「100点以外には価値はない」と考えるようになるそうです。その結果、90点などの高得点を取っても「100点を取れなかった自分はダメな子だ」と落ち込んだり、大きなプレッシャーを感じたりすると松尾先生は言います。子どもに対して「100点なんてすごい!」と結果だけを褒めるのは、子どもを追い込んでしまうことになるのです。こんな声がけはNG!「100点なんてすごい!」以外にも、子どもにとってNGな声かけがいくつかあります。皆さんはこんな言葉をかけてはいませんか?×NG×「次も頑張ってね!」今後への期待の気持ちも込めて、つい言ってしまいがちな言葉ですが、このように言われた子どもは「まだ頑張りが足りないんだ」「頑張ったけど、認めてもらえないんだ」と感じてしまう傾向にあります。そうして頑張り続けた結果、ある日突然やる気がなくなったり、勉強が嫌いになってしまったりするケースも珍しくありません。×NG×「100点取れたから○○あげる」100点を取れたご褒美として、子どもが欲しがっていたものやお小遣いをあげるという親は少なくないでしょう。しかし、教育評論家の親野智可等氏によると、子どもが何かを達成するたびにご褒美をあげていると、子どもが「何かくれないと勉強しない」と言い出したり、「じゃあ、いくらくれる?」が口癖になってしまったりする可能性があるのだそう。さらに、「お金や物をもらうために勉強する」という意識が強くなって、勉強そのもののおもしろさや価値を知ることができなくなり、自主的に勉強する姿勢が見られなくなる場合もあるのだとか。×NG×「○○ちゃんよりも良い点が取れたね」子どもの兄弟姉妹や、同級生と比較して褒めてはいませんか?これは子どもにとって「他人よりも優れている=褒めてもらえる」と認識させるきっかけになってしまうため、良い声かけとは言えません。保育士として15年以上、福祉施設や託児所、保育園などさまざまな場面で保育業務に携わってきた市川由美子氏によると、ほかの子どもと比べて褒められた子どもは、他人に対して必要以上に競争意識を抱いたり、逆にほかの子どもよりも自分ができていないと感じた際に強い劣等感を覚えたりするそうです。子どもを伸ばす褒め方4つ子どもを伸ばすために、以下の褒め方を実践してみましょう。「よく頑張ったね」100点という結果ではなく、子どもが頑張った過程を褒める方法です。このように褒められた子どもは、次回100点が取れなくても、「前回は頑張ったから100点が取れた」という経験をもとに「今回は頑張りが足りなかったかもしれない」と気づくことができます。また、前述した「すごい!」という褒め方も、「頑張ったね」と組み合わせて使うことで、子どもに「100点だけがすごい」と思わせることがなくなりますよ。 「〜〜したから、100点がとれたんだね」「テスト前に自主的に勉強していた」「勉強時間をいつもより増やしていた」など、100点を取れた要因となるような本人の具体的な努力や、以前と比べて成長している点を褒める方法です。白梅学園大学子ども学部や鎌倉女子大学児童学部で非常勤講師を勤める塚崎京子氏によると、子どもにとって最も嬉しいことは、物をもらえることではなく、親に認めてもらえることだそう。小さな成果や努力でも、親に本気で褒めてもらえたと実感できると、子どもにとって何よりのご褒美になるのです。 「やってみて、どうだった?」国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチの石川尚子氏は、子どもによっては、褒められることで「いつも褒められるようにしなければならない」と感じる可能性があると指摘しています。石川氏いわく、ただ褒めるのではなく、子どもの気持ちに耳を傾けて受け止め、尊重する姿勢を見せることが、自己肯定感を育むことにつながるのだそう。たとえば、子どもが100点を取ったら、まずは「どうだった?」と聞き、子どもが「簡単だったよ」と答えたら、「そうなんだ。簡単だったんだね」と、ただただ気持ちを肯定してあげるのです。もちろん、子どもが嬉しそうにしていたり、褒めてほしい様子が見られたりしたら、「頑張ったね!」と声がけするのもOKです。 「〜〜してくれて、ありがとう!」褒める言葉の代わりに感謝の気持ちを伝えるのも効果的です。「100点とれるくらい頑張ってくれて嬉しいよ!」でもいいでしょう。自分がしたことに対して感謝されると、子どもは親に認められたと感じ、自信を持つことにつながります。子どもにお手伝いをしてもらったときなどにもおすすめです。 ***子どもを褒めるのはいいことですが、結果ではなく、それまでの過程を褒めることが大切です。褒めることを通して、子どもが「これまでの努力を認めてもらえた」「お父さんやお母さんは自分をしっかり見てくれている」と実感できるよう、工夫してみましょう。文/田口 るい(参考)プレジデントオンライン|「100点答案」を褒めると勉強嫌いになる東洋経済オンライン|子どもを「ご褒美で釣る」親はなぜダメなのかさぽナビZ会|子どもにとって「ご褒美」とは?All About|ほめてるつもりでほめてない?NGな子どものほめ方現代ビジネス講談社|子どもを伸ばす「ほめ方」とダメにする「ほめ方」は大違い!ベネッセ教育情報サイト|上手に子どもを褒めて、自信をつけてあげよう!ベネッセ教育情報サイト|子どもを「褒める」前に大切なこと
2019年08月11日何度注意しても同じ間違いを繰り返したり、悪ふざけをしたりする子どもに対して、「早く○○しなさい!」「なんでそんなことするの!」なんて言ってはいませんか?仕事や家事に追われていると、どうしても余裕がなくなってしまい、子どもに対してそのような言い方をしてしまいがちですよね。しかし、社会的に成功している人の多くは、子どもの頃に「○○しなさい!」と言われることがなく、「よく褒められていた」と言います。今回は、褒め言葉がもたらす子どもへの影響や、日常で使いたい「褒めワード」をご紹介しましょう。褒められて育った子どもは成績が伸びる!?子育てするにあたって、子どもを褒めることが大切だというのはよく言われていることですよね。しかし、ただ褒めればいいというわけではありません。子どもを伸ばす褒め方と、そうでない褒め方があるのです。子どもを伸ばすために大切なのは、“能力” ではなく “努力” を褒めることなのだそう。アメリカの心理学者であるキャロル・S・ドゥエック氏は、数百人の子どもたちを2つのグループに分けて、次のような実験をしました。子どもたちに難しい問題10問を出題して解かせ、1つのグループには「頭がいいね」と能力を褒め、もう1つのグループには「頑張ったんだね」と努力を褒めるというものです。その後、新たな問題に挑戦するかどうかについて子どもたちに聞いたところ、能力を褒められたグループは嫌がる子どもが多く、努力を褒められたグループは9割の子どもたちが喜んで挑戦したのだそう。能力を褒められたグループは、「もしいい点がとれなかったら、『頭がいい』状態ではなくなってしまう」と考えるようになってしまい、消極的になったのだといいます。さらに、子どもたちに簡単な問題を解かせたところ、能力を褒められたグループは成績が落ちただけでなく、そのうちの4割が自分の得点を聞かれた際に水増しして答えていたそうです。一方、努力を褒められたグループは成績が伸び、意欲的な姿勢がみられたとのこと。「頭がいいね」「天才だね」などと能力を褒めてしまうと、子どもの成長を止める可能性があるのです。努力そのものを褒めることが、子どもの成長にとって良い影響をもたらします。褒めることで生まれるさまざまな力保育士として15年以上、福祉施設、託児所、保育園など、さまざまな場面での保育業務に携わってきた市川由美子氏によると、褒めることによって以下のような効果が期待できるそうです。・チャレンジ精神が生まれる市川氏によると、子どもは褒められることで「自分は認められた」という気持ちになり、やる気が生まれるそう。また、失敗した際には、頑張ったことや挑戦した気持ちを褒めてもらえることで、もう一度トライしてみようという姿勢につながるといいます。・自己肯定感が生まれる市川氏いわく、親から褒められることは、子どもにとって大きなパワーになるそうです。どんなときでも親に「頑張ったね」と褒めてもらえた子どもは、親に愛されていると感じ、自分のことを大切にできる自己肯定感が育まれるそうです。子どもを成長させる褒めワード&NGワード「早くしなさい!」など、ついつい子どもに言いがちなNGワードは、以下のように成長につながる褒めワードへ変換してみましょう。×NG「やってみなきゃわからないよ」↓◎OK「そっか、不安だよね。こうすればできると思うよ!」(by 教育評論家・親野智可等氏)子どもが何かに対してネガティブになっているときの声かけです。親はついチャレンジさせることを優先してしまいがちですが、親野氏いわく、まずは子どもの不安な気持ちに寄り添ったうえで背中を押してあげることが重要なのだそう。 ×NG「ちゃんとやりなさい!」↓◎OK「(子どもと一緒に取り組みながら)ちゃんとやりなさい!」(by 「教育の鉄人」とも呼ばれるカリスマ教師・杉渕鐵良氏)炎天下で一緒に汗を流している人に言われる言葉と、日陰で涼んでいる人に言われる言葉では、受け取る意味が変わってくると杉渕氏は言います。ただ頭ごなしに怒っても、子どもに親の気持ちは伝わりません。しかし、子どもと一緒に取り組みながら伝えることで、言葉の重みが大きく変わるのです。 ×NG「頑張れ!」↓◎OK「よくチャレンジできたね!」(by 国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ・石川尚子氏)「頑張れ!」と命令形で応援するよりも、できたことを承認する声がけをすると、「自分はまだまだやれるんじゃないか」「もっとできるんじゃないか」と、未来に可能性を感じ、子どもが粘り強くなっていくのだそう。 ×NG「我慢しなさい!」↓◎OK「本当は遊びたかったんだよね」(by 東京都市大学人間科学部教授・井戸ゆかり氏)幼い子どもに無理に我慢させると、自発性が伸びなくなってしまうと井戸氏は言います。我慢することを強いるより、まずは子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。我慢できたら「よくできたね!」「本当は遊びたかったのにね」と褒めてあげることで、子どもは我慢することの意味に気づいていきます。 ×NG「ミスがあったね」↓○OK「前回よりも成長したね!」(by ヴァイオリニスト・西谷国登氏)例えミスがあったとしても、ほんの少しでも成長しているところがあれば、子どもを褒めることが大切だと西谷氏は言います。「できなかったこと」よりも「できたこと」に目を向けて褒めることで、子どもの才能が伸びていくのだそう。***子どものさまざまな力を引き出す「褒め言葉」。普段の生活から意識して使い、子どもの可能性を伸ばしてあげましょう。文/田口 るい(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもが大成していく「褒める」教育――我が子の才能を伸ばすために親がすべきことStudyHackerこどもまなび☆ラボ|「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは “○○上手な親” だった!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「ちゃんと宿題やりなさい!」に効果がない理由。子どもに“響く”声かけの方法とは?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」ベネッセ教育情報サイト|上手に子どもを褒めて、自信をつけてあげよう!ベネッセ教育情報サイト|自分に自信がない子[教えて!親野先生]ベネッセ教育情報サイト|「がんばれ!」と言うだけでは動けない子どもにかける言葉[やる気を引き出すコーチング]NEWSポストセブン|子供の学力を上げるには「能力」ではなく「努力」を褒める
2019年08月11日ついに夏休みが始まりました。この時期に頭を悩ませるのは夏休みの宿題、特に「自由研究」は、お子さんだけでなく親御さんにとっても悩みのタネになっているのではないでしょうか。そこで今回は、自由研究のお悩みを丸ごと解決するために、テーマ選びからまとめ方まで本当に役に立つ情報を紹介します。まだ自由研究に慣れていない低学年(1年生、2年生、3年生)のお子さんから、ほかの子とはちょっと違うものに挑戦したい高学年(4年生、5年生、6年生)のお子さんまで、楽しく自由研究に取り組めるコツが満載です。小学生のお子さんを持つ親御さんは必見ですよ!夏休みの自由研究【小学生向け】:テーマ探しのコツ自由研究の一番の難関といってもいいのが「テーマ探し」です。自由研究のテーマの選び方・基本ポイント「自由研究のテーマ選びがグンと楽になるポイント【こどもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第2回】」では、テーマ選びの基本ポイントを解説しています。自分で進めていけるものかどうか休みが終わるまでに自由研究を終えることができるか使う材料はそろえられるか危ないことではないか この4つの条件を満たしていることが、自由研究のテーマに適しているかの基準となるので覚えておきましょう。とくに1年生、2年生(低学年)のお子さんの場合、大人の目線で条件に当てはまっているかを判断する必要があります。また当然ですが、自由研究のテーマ選びでもっとも重要なのは「興味があるかどうか」です。簡単そうだから、材料がすぐ手に入りそうだから、先生から評価されそうだから、といった基準で選ぶのではなく、「好き」のその先の「もっと知りたい=好奇心」を刺激する題材であることが理想的だといえるでしょう。自由研究のキットに安易に頼るのはNGそもそも夏休みの自由研究は、子どもの自主性や問題解決能力を育てることを目的としています。「自由研究ってどうしてあるの?【こどもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第1回】」でお伝えしたように、中学受験専門塾の代表である矢野耕平氏も、親が考えるべきことは「子が『期限に間に合うように自由研究を終わらせる』のを目的にするのではなく、子が『自由研究を通じて、自らが探究心を醸成していく』ように導くこと」だと指摘しています。これらのことをふまえると、小学生の自由研究をテーマにしたネタ本やキットなどの多くは “結論ありき” であり、子どもたちをその結論に誘導するような内容であるため、安易に頼ることはあまりおすすめできません。小学生の自由研究・おすすめテーマ一覧ここから先は、無限にある夏休みの自由研究のテーマを分類してわかりやすく解説します。1年生向けの簡単なものから、2年生・3年生向けの少し難易度が高いものまで、画像つきで詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。◯工作情緒と知性が融合した作品ができあがる【パステルすみ絵】想像力と創造力がつまった作品ができあがる【コラージュ絵本】自然の不思議を感じさせる作品ができあがる【フロッタージュ】プログラミング思考を発揮する作品ができあがる【廃材モーターロボット】 ◯理科(実験・観察)身近な“水”の不思議にせまる【水の蒸発の実験】エコの意識も高まる【くず野菜を育てる実験】科学と工作、両方楽しめる【廃油キャンドルづくり】月の形が変わる仕組みが理解できる【月の満ち欠けの観察】雲の様子から天気や気温との関係性がわかる【雲の観察】天体や宇宙への興味が広がる【星・星座の観察】恐竜の謎を解くワクワクを味わう【恐竜しらべ】 ◯家庭科(理科・手芸)ただ混ぜるだけなので気楽にチャレンジできる【夏野菜たっぷりおかずマフィン】五感を使った料理体験が子どもを成長させる【冷や奴のカリカリじゃこのせ】感謝の気持ちと自立心が育まれる【弁当づくり】はじめての針と糸で集中力を養う【葉っぱのコースター】 ◯簡単・1日でできるテーマ動物園、水族館、科学館などの施設や、企業のイベントに参加する 夏休みの自由研究【小学生向け】:工作小学生が行なう夏休みの自由研究の定番といえば「工作」です。ここでは、1年生でも簡単にできる「絵をメインにした工作」から、小学校6年生の理科の授業で学ぶ「電流のはたらき」につながる電池を使ったロボットづくりまで、子どもの好奇心と創造力をぐんぐん伸ばすテーマをまとめました。市販の工作キットで作る作品とは違う、世界にひとつの自分だけの作品ができあがりますよ。パステルすみ絵を描こう:情緒と知性が融合した作品ができあがる!普段あまり使うことがない画材「パステル」を使った作品づくりにチャレンジ!絵を描くことが好きな1年生、いつもとは違う道具を使って表現したい2年生、3年生のお子さんにおすすめです。パステルで背景を仕上げたら、先の尖った割りばしペンを使って墨絵を描いていきます。集中力もつきますよ。☆パステルすみ絵について詳しくは以下の記事をごらんください。作品の色合いから子どもの感情が推測できる!?「パステルすみ絵」【夏休みの自由研究(工作)】コラージュ絵本をつくろう:想像力と創造力がつまった作品ができあがる!絵本『はらぺこあおむし』でも使われている技法が、この「コラージュ」です。絵具で描写するだけでは表現できない模様や素材感をほどこすことができるので、ぱっと目を惹く個性的な作品が完成します。お子さんの発想力に驚かされること間違いなし!☆コラージュ絵本について詳しくは以下の記事をごらんください。・触って感じて想像する美術遊びをしよう!家にある素材ですぐできる「コラージュ」・いつものお絵かきとはひと味違うぞ!コラージュ絵本作家になろうまた、芸術的な技法を取り入れた絵を描いてコラージュ絵本の素材として使用するのもおすすめです。ワンランク上の作品に仕上がりますよ。︎大胆で芸術的な表現「ドリッピング」絵の具をたっぷりの水で溶いて筆につけ、画用紙の上からポタッと垂らしましょう。ストローで息を吹きかけたり紙を傾けたりして絵の具を動かしていくと、不思議な色の流れが浮かんできます。何色も重ねると奥行きが出て、より芸術的な作品に。☆ドリッピングについて詳しくは以下の記事をごらんください。「ドリッピング」のやり方を写真で解説!親子でアートを楽しもう︎独特な世界観を簡単に作り上げる「デカルコマニー」画用紙の上にチューブから直接絵の具を出し、指や筆を使って思うがままに色を伸ばしていきましょう。絵の具が乾かないうちに紙をペタンと折り、ゆっくりと開くと左右対称の不思議な模様が目の前に現れます。お花や魚などの形に切り抜いたり、画用紙の余白に絵を描いたりすることで、独特な世界観の作品ができあがりますよ。☆デカルコマニーについて詳しくは以下の記事をごらんください。「デカルコマニー」ってどういう意味?作品制作の簡単なやり方教えます。フロッタージュで作品をつくろう:自然の不思議を感じさせる作品ができあがる!「フロッタージュ」とは「擦りだし」という技法です。葉っぱの葉脈の凸凹を色鉛筆で綺麗に擦りだすことで、木の種類によって葉っぱの形や葉脈の太さが違うことに気づきます。小学校4年生になると理科の授業で光合成について学ぶので、低学年(1年生や2年生)のうちから葉っぱの仕組みを意識するきっかけになるでしょう。☆フロッタージュについて詳しくは以下の記事をごらんください。葉脈ってなに?子どもたちの創造力や好奇心を刺激する「葉っぱのフロッタージュ」廃材モーターロボットをつくろう:プログラミング思考を発揮する作品ができあがる!ロボットをつくる材料は、プリンのカップやペットボトルなどゴミとして捨てられてしまうものばかり。身近な廃材と電池を組み合わせてロボットをつくる作業は、子どもにとってとてもワクワクするものです。また、電気を使った工作は、小学校6年生で学ぶ「電流のはたらき」にもつながるので、機械やロボット好きのお子さんはぜひ挑戦してみてください。☆廃材モーターロボットについて詳しくは以下の記事をごらんください。想像をそのまま作品にする。直感力勝負!「廃材モーターロボット」【夏休みの自由研究(工作)】夏休みの自由研究【小学生向け】:理科(実験・観察)工作に並んで小学生の自由研究の定番といえる「実験・観察」。4年生の理科の授業では水の蒸発や星座について学ぶので、理科・科学に苦手意識が芽生える前に楽しみながら学ぶきっかけにもなりますよ。水の蒸発の実験:身近な “水” の不思議にせまる!水の蒸発は小学校4年生の理科で学習しますが、1年生、2年生、3年生の低学年のうちに仕組みを知っておくと、いざ授業で学ぶときにスムーズに理解が進みます。実験を通して、容器や置き場所を変えることで水の減り方がどのように変化するかがわかるはず。まとめ方のコツもわかりやすく説明しているので、事前に確認してから観察の準備をするといいでしょう。☆水の蒸発の実験について詳しくは以下の記事をごらんください。コップの水はどこへ消えた?水の蒸発スピードを調べる実験方法【夏休みの自由研究(理科)】くず野菜を育てる実験:エコの意識も高まる!普段なら生ゴミとして捨ててしまう野菜の切れ端を再生させることを「リボーン・ベジタブル(リボベジ)」と呼ぶそう。イチから植物を育てて観察日記をつけるのはハードルが高くても、リボベジなら「クズ野菜」「水を張ったトレイ」「光」のたった3つの要素が揃えばすぐに野菜づくりが始められます。エコの概念を学ぶ良い機会にも。☆くず野菜を育てる実験について詳しくは以下の記事をごらんください。くず野菜を育てて再生する様子を観察してみよう【夏休みの自由研究(理科)】廃油キャンドルづくり:科学と工作、両方楽しめる!サイエンスプロデューサーの米村でんじろう先生おすすめの「廃油キャンドルづくり」。料理でつかった油の残りをジャム瓶などに注ぎ、芯をさして油処理剤で固めると、簡単にキャンドルが完成します。芯はタコ糸でも代用できますよ。☆廃油キャンドルづくりについて詳しくは以下の記事をごらんください。【米村でんじろう先生インタビュー第3回】子どもの目がキラキラ輝く!おうちでできる理科・科学の実験月の満ち欠けの観察:月の形が変わる仕組みが理解できる!月の満ち欠けについては小学校4年生の理科で学習しますが、3年生までに月の形が変わる仕組みを理解しておくと安心ですね。観察するときは「同じ時間・同じ場所」が原則なので、夏休みの間も規則正しい生活を送ることを意識させるきっかけにも。☆月の満ち欠けの観察について詳しくは以下の記事をごらんください。小4理科の学習に直結!月の満ち欠けを調べて、その理由を考えさせるコツ【夏休みの自由研究(理科)】雲の観察:雲の様子から天気や気温との関係性がわかる!雲については5年生の理科の単元「天気の変化」で学習します。もしお子さんが幼少時から空や雲に興味を示していて、しょっちゅう「なんで?」と疑問をぶつけてくるタイプなら、ぜひ自由研究で調べさせましょう。雲の観察を続けていると天気や気温との関係性に気づくので、そのうち雲を見ただけて天気の傾向を予想できるようになるかもしれませんよ。☆雲の観察について詳しくは以下の記事をごらんください。雲を観察してみよう!小5理科につながるまとめ方【夏休みの自由研究(理科)】星・星座の観察:天体や宇宙への興味が広がる!都会では満天の星空を見ることは難しいですが、夏休みを利用して大自然のもと星空を眺めたり、プラネタリウムや科学館で星座を身近に感じたりすることで、子どもの知的好奇心は刺激されます。もちろん自宅から見える範囲で星空を観察すれば、立派な自由研究ができあがりますよ。親子で一緒に図鑑を見ながら星座の魅力に触れてみませんか?☆星・星座の観察について詳しくは以下の記事をごらんください。知的好奇心を学びに!小4理科「月と星」につながる5つの学習サポート恐竜しらべ:恐竜の謎を解くワクワクを味わう!男の子なら恐竜に興味がある子も多いのではないでしょうか?恐竜の名前を覚えたり図鑑を眺めたりする段階から一歩進んで学びにつなげるには、「恐竜しらべ」がおすすめです。国立科学博物館の『恐竜博2019』をはじめ、毎年夏休みには全国で恐竜展が開催されています。自由研究に役立つ化石の発掘体験や、イベント型のフィールドワークが充実しているので、ぜひ足を運んでみてください。☆恐竜しらべについて詳しくは以下の記事をごらんください。恐竜ハマり体験は小6理科につながる!【子どもの探究心をもっとくすぐる4つのヒント】夏休みの自由研究【小学生向け】:家庭科(料理・手芸)続いては、お母さんやお父さんのお手伝いが好きなお子さんや、細かい作業が得意なお子さんに向けて、家庭科(料理・手芸)の自由研究を紹介します。この自由研究を通じて、わが子の成長を感じることができるでしょう。夏野菜たっぷりおかずマフィンをつくろう(料理):ただ混ぜるだけなので気楽にチャレンジできる!「おかずマフィン」は包丁もコンロも使わないので、はじめて台所に立つお子さんにぴったり!材料を分量通りにきっちり計って、混ぜて、オーブンで焼くだけです。作る過程を写真に撮ったり、スケッチしたりして、細かく記録しましょう。味の感想や家族の反応なども添えると、自由研究としてうまくまとまります。☆夏野菜たっぷりおかずマフィンについて詳しくは以下の記事をごらんください。子どもを成長させる料理体験を!『夏野菜たっぷりおかずマフィン』【夏休みの自由研究(家庭科)】冷や奴のカリカリじゃこのせをつくろう(料理):五感を使った料理体験が子どもを成長させる!少しステップアップしたメニューに挑戦したいなら「冷や奴のカリカリじゃこのせ」がおすすめ。カリカリに焼いたじゃことうすあげがアクセントになり、大人も子どもも美味しく食べられます。包丁と火を使うレシピなので、安全に充分気をつけてチャレンジしてみてくださいね。☆冷や奴のカリカリじゃこのせについて詳しくは以下の記事をごらんください。包丁は本物を。熱の危険は“温度体験”で覚える。『冷や奴のカリカリじゃこのせ』【夏休みの自由研究(家庭科)】弁当づくり(料理):感謝の気持ちと自立心が育まれる!「お弁当はお母さんに作ってもらうもの」から「自分でも作れるもの」へと意識を変えることで、お子さんの自立心を促し、食べ物への感謝の気持ちが深まります。まずはどんなお弁当を作りたいか、イラストを描いてイメージをふくらませるところからスタートします。材料をそろえて調理を開始し、それぞれのおかずをバランス良く詰め合わせるまでの過程を、写真に撮ったりスケッチしたりするといいでしょう。☆弁当づくりについて詳しくは以下の記事をごらんください。お弁当作りには学びがつまっている!「生きる力」を育てる「弁当の日」ルール葉っぱのコースターをつくろう(手芸):はじめての針と糸で集中力を養う!家庭科の授業が始まっていない低学年(1年生、2年生、3年生)のお子さんには、手芸はまだ早いかな?と思っている親御さんも多いはず。しかし、いざ針と糸を持たせたら意外と集中して取り組むものです。時間がたっぷりある夏休みは、親御さんが丁寧に針と糸の使い方を教えてあげるチャンス。まずは、身近な植物の葉っぱを使って、フェルトのコースターづくりから始めてみませんか?☆葉っぱのコースターについて詳しくは以下の記事をごらんください。葉脈をランニングステッチ!はじめてのお裁縫に「葉っぱのコースター」【夏休みの自由研究(家庭科)】夏休みの自由研究【小学生向け】:簡単・1日でできるものここからは、簡単にできる自由研究や確実に1日で完成させられる自由研究を紹介します。集中して短時間で終わらせたいお子さんにおすすめです。1日で終わる自由研究のテーマ選びのポイントテーマを決める際には「楽なもの」「すぐに材料が手に入るもの」などを基準に選ばないようにしましょう。「自由研究を1日で仕上げる秘訣【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第4回】」でお伝えしたように、お子さんにとって興味があるジャンルに絞ってから、その中でもあまり時間がかからないテーマを見つけ出してください。たとえば「サラダをシャキッとさせるには?」「洗濯物のシミ抜き実験」など、家事にちなんだテーマなら親から子へわかりやすくアドバイスできます。親子で一緒に「おうちの中にある疑問」を探してみるとヒントが見つかるかもしれません。自由研究を1日で確実に完成させるポイントは、「まとめ方」をイメージしながら進めていくこと。取りかかる前に完成図を明確に思い描いていれば、必要な材料や情報を選ぶことができるはず。無駄を極力省き、最短ルートでゴールにたどり着くにはどうすればいいか、お子さん自身にもしっかりと認識させましょう。最近では、小学生の自由研究に活用できるキットも充実しています。基本的にはキットに頼ることはおすすめできませんが、「どうしても何も思い浮かばない」「自由研究のヒントが欲しい」というのであれば、ホームセンターなどでアイデアのもとになりそうなキットを探してみてもいいかもしれませんね。キットを活用しつつオリジナリティを出すには、ひと工夫加える必要があります。展示用に凝った土台を作ったり、作業の工程を細かく記したレポートを付け加えたりすると、ぐっと個性的な作品に仕上がりますよ。科学館などで自由研究のイベントに参加するのもおすすめ親子で遠出できる時間があれば、動物園や水族館へ連れて行き、楽しみながら自由研究用のレポートをまとめてもいいですね。出かける前にテーマを絞って、どこを重点的に観察するか、きちんとメモをとっておきましょう。家に帰ってから図鑑で調べ直すときにも役立ちます。また、科学館や企業が開催しているイベントに参加するのもおすすめです。夏休み期間中は、科学実験教室やワークショップなど体験型のイベントも充実しているので、ぜひ参加して自由研究のヒントにしてください。■日本科学未来館東京都江東区青海2-3-6最先端の科学技術を楽しく学べるサイエンスミュージアム。科学、生物、環境、ロボットなどの実験教室を開催。■科学技術館東京都千代田区北の丸公園2-1身近な科学から宇宙を取り巻く不思議まで、最先端の科学・産業技術を紹介。毎日たくさんのプログラムとイベント、ワークショップを開催している。■東芝未来科学館神奈川県川崎市幸区堀川町72-34 スマートコミュニティセンター2F体験しながら科学を学べる施設。大人気のサイエンスショーは毎日開催!■はまぎんこども宇宙科学館神奈川県横浜市磯子区洋光台5-2-1地上5階から地下2階まで、宇宙船をイメージした体験型科学館。プラネタリウムも併設されている。夏休みの自由研究【小学生向け】:まとめ方のコツ最後に自由研究のまとめ方について詳しく説明していきます。自由研究のおすすめのまとめ方・4パターン自由研究のまとめ方は、テーマによって異なります。「自由研究のまとめ方のコツ【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第3回】」でお伝えしたように、低学年(1年生、2年生、3年生)のお子さんには、次の4パターンのまとめ方がおすすめです。◯実験系研究の全体像が一目でわかるように、模造紙などの大きな用紙を使って1枚にまとめます。先に小さな紙で下書きをして、要点をまとめてから作成しましょう。字やイラストを大きく描くと印象的に仕上がります。◯観察系観察対象が毎日少しずつ変化していく様子がわかる『日記形式』でまとめるといいでしょう。変化の様子を見比べやすいように、ページのデザインを統一するのがコツです。◯工作系作る過程を記録したレポートをまとめて、作品と一緒に提出しましょう。作りながら感じたことを文章で表現すると、自由研究としての完成度がアップします。◯調べ学習系ノートよりも大きいスケッチブックにまとめるのがおすすめ。絵の具も使えるので、色鮮やかで印象的な仕上がりになります。自由研究のまとめに必須の5要素基本的にはお子さん自身がやりやすい形態や書き方でまとめることが大切ですが、どのまとめ方をしても次の5つの要素を入れることを忘れずに。1.表題とサブタイトル人に「読んでみたい」と思わせるインパクトのあるタイトルを考えましょう。表紙には研究の内容が伝わるサブタイトルも添えるとさらに目を惹きます。2.この実験(観察・作品づくり)をすることにしたきっかけなぜ興味をもったのか、動機や目的をはっきりさせることを意識しましょう。3.準備したものどんなものを揃えたのかを書くと読む人の参考になります。4.手順と実験内容(作業工程)写真やイラストを使って書く工程をわかりやすく説明しましょう。5.結果と感想もし失敗しても事実をありのまま書きましょう。次の成功につなげるために、物事を多角的な視点で見る訓練にもなります。自由研究をまとめる作業を側で見ていると「ここをもっとこうしたらいいのに」とつい口を出したくなりますが、そこはぐっとこらえて子ども自身に任せましょう。人に伝えることの難しさを実感したり、わかりやすくまとめるにはどうしたらいいか工夫したりする経験こそが、大きな成長につながります。***「夏休みの自由研究」と聞くと、少し憂鬱な気分になる親御さんも多いはず。ですが本来、自由研究は子どもの好奇心や探究心を深める絶好の機会でもあるのです。普段からお子さんが何に興味があるのか、どんな体験をしたいと考えているのかを注意深く観察するように心がけると、自由研究でやりたいことや表現したいことが見えてくるはずです。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|自由研究ってどうしてあるの?【こどもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第1回】PRESIDENT Online|夏休みの自由研究で“親のレベル”がわかるStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|自由研究のテーマ選びがグンと楽になるポイント【こどもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第2回】自由研究の輪|自由研究とは?Study Hacker こどもまなび☆ラボ|作品の色合いから子どもの感情が推測できる!?「パステルすみ絵」【夏休みの自由研究(工作)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|触って感じて想像する美術遊びをしよう!家にある素材ですぐできる「コラージュ」Study Hacker こどもまなび☆ラボ|いつものお絵かきとはひと味違うぞ!コラージュ絵本作家になろうStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|「ドリッピング」のやり方を写真で解説!親子でアートを楽しもうStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|「デカルコマニー」ってどういう意味?作品制作の簡単なやり方教えます。Study Hacker こどもまなび☆ラボ|葉脈ってなに?子どもたちの創造力や好奇心を刺激する「葉っぱのフロッタージュ」Study Hacker こどもまなび☆ラボ|想像をそのまま作品にする。直感力勝負!「廃材モーターロボット」【夏休みの自由研究(工作)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|コップの水はどこへ消えた?水の蒸発スピードを調べる実験方法【夏休みの自由研究(理科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|くず野菜を育てて再生する様子を観察してみよう【夏休みの自由研究(理科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|【米村でんじろう先生インタビュー第3回】子どもの目がキラキラ輝く!おうちでできる理科・科学の実験Study Hacker こどもまなび☆ラボ|小4理科の学習に直結!月の満ち欠けを調べて、その理由を考えさせるコツ【夏休みの自由研究(理科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|雲を観察してみよう!小5理科につながるまとめ方【夏休みの自由研究(理科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|知的好奇心を学びに!小4理科「月と星」につながる5つの学習サポートウォーカープラス|恐竜イベントStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|恐竜ハマり体験は小6理科につながる!【子どもの探究心をもっとくすぐる4つのヒント】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもを成長させる料理体験を!『夏野菜たっぷりおかずマフィン』【夏休みの自由研究(家庭科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|包丁は本物を。熱の危険は“温度体験”で覚える。『冷や奴のカリカリじゃこのせ』【夏休みの自由研究(家庭科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|お弁当作りには学びがつまっている!「生きる力」を育てる「弁当の日」ルールStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|葉脈をランニングステッチ!はじめてのお裁縫に「葉っぱのコースター」【夏休みの自由研究(家庭科)】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|自由研究を1日で仕上げる秘訣【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第4回】日本科学未来館科学技術館東芝未来科学館はまぎんこども宇宙科学館Study Hacker こどもまなび☆ラボ|自由研究のまとめ方のコツ【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第3回】
2019年08月10日昨今の公園や広場では、ケガや事故の予防のために、さまざまな禁止事項が設けられています。もちろんケガや事故を避けることは大切ですが、子どもには思う存分身体を動かして遊んでほしいものですよね。そんな元気なお子さんにおすすめなのが「プレーパーク」です。今回は、プレーパークの概要や、おすすめのプレーパークをご紹介しましょう。プレーパークってどんな場所?プレーパークとは、子どもが自由に遊べる野外広場のことで、冒険遊び場とも呼ばれています。1943年にヨーロッパで生まれたプレーパークは、近年日本各地に広まっており、現在全国400カ所以上設置されているのだそう。乳幼児、小学生、中高生、その親や祖父母、地域の人々など、さまざまな年代の人々が訪れる場所で、場合によっては保険料がかかることもあるようですが、入園料はかからないことが多いようです。最近は、多くの公園でボール遊びや木登りなどが禁止されているもの。しかし、プレーパークでは禁止事項をなるべく設けず、子ども自身が責任を持ちながら何かに挑戦したり、冒険したりして自由に遊ぶことがコンセプトになっています。そのため、ボール遊びや木登りはもちろん、たき火や泥んこ遊び、手作りの遊具などで思いっきり遊ぶことができるのが特徴です。NPO法人 日本冒険遊び場づくり協会の代表・関戸博樹氏は、「遊ぶ」という自発的で主体性をもつ行為こそ、子どもが社会に出てどう生きるかの土台となっており、人の心身の育ちに直結しているといいます。関戸氏いわく、地域の中に「子どもの都合」を守れるプレーパークを創り出すことによって、子どもたちがそこで仲間を探して遊びを生み出し、さらには自らと自らの持つ力に向き合いながら育っていくことができるそうです。プレーリーダーって?プレーパークには、プレーリーダーというスタッフがいます。プレーリーダーの役割は、プレーパークに危険物がないかチェックしたり、一緒に遊具を作ったりして子どもたちの遊びをサポートすること。遊び方がわからない子どもや、慣れない場所に緊張しているような子どもがいた場合には、声がけし、プレーパークを楽しめるようにリードしてあげることもあるのだそう。また、遊びを通して子どもたちとプレーリーダーの間に信頼関係が生まれ、親や先生にはなかなか話せないような悩みを相談するケースもあると言います。愛知県にある「てんぱくプレーパーク」のプレーリーダーで、保育士の経験もある雪岡抄代子さんいわく、プレーリーダーの役割は「子どもたちが思いついたこと、やりたいことを試行錯誤しながら実現できる環境を考えていくこと、手出し口出しをせず見守ること」だそうです。本当に危ない局面では大人がすぐにストップをかけますが、プレーパークでは、「危ない」「汚い」「やってはダメ」「早くしなさい」と言った口出しはNGなのだとか。小さな危険やケガから学べることあまり禁止事項を設けておらず、子どもが自由に遊べるプレーパークですが、「ケガをしないか心配」という保護者の方もいるかもしれません。しかし、「てんぱくプレーパーク」代表の沢井史恵さんは、次のように述べています。「危険を測るのは経験値、感覚。たとえば小さいときに転んだ経験がないと、大きくなって転んだとき、受け身がとれなくて大ケガをしてしまうかもしれないですよね。火を使った遊びにしてもそう。慣れている子は火の怖さも知っています。火に慣れていない子は、上手な子の手元をしっかり見て、扱い方を学んでいくんです」(引用元:COE LOG中部電力|心と体を解き放つ、子どもの「やりたい!」をかなえるプレーパーク)全国のプレーパークづくりを支援している特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会によると、人間は危険から自分の身を守る本能を持っており、特に子ども時代には小さなケガをしながら、大きな事故を避けられるような勘や、身のこなしを覚えていくのだそう。そのため、プレーパークは、実体験を通して「こうすると危ないから、もうやらないようにしよう」という危機管理能力を自然と身につけていく場ともいえます。イギリスで冒険遊び場作りに尽力したアレン・オブ・ハートウッド卿夫人は“Better a broken bone than a broken spirit”(心が折れるより骨が折れる方がマシ)というモットーを掲げていたそう。骨が折れるのも良くないですが、身体面のケガにばかり注意を払っていては、「やってみたい」「遊んでみたい」という気持ちがポッキリと折れてしまうかもしれません。もちろん、本当に危険なことをしようとしていたり、ケガをしたりした場合にはプレーリーダーがすぐに対応してくれるので、さほど心配はいらないと言えるでしょう。関東のおすすめプレーパーク3つ最後に、関東のおすすめプレーパークをご紹介します。●渋谷はるのおがわプレーパーク東京・渋谷区の代々木公園のすぐ近くにあるプレーパークです。タープを張ってくれるため、雨の日でも遊ぶことができます。ベーゴマ&くぎさし大会や、季節の遊びなどを行なうおしゃべりカフェといった、定例イベントも開催されています。●プレーパークせたがや東京・世田谷区の世田谷公園の一角にあるプレーパークです。乳幼児向けのイベントもあり、夏には手作りのウォータースライダーも楽しめるそう。同系列のプレーパークに「羽根木プレーパーク」「駒沢はらっぱプレーパーク」「烏山プレーパーク」もあります。●川崎市子ども夢パーク神奈川県・川崎市高津区にあるプレーパークです。水遊びやたき火ができる野外広場のほか、楽器の練習ができるスタジオ、屋上や屋根裏、ログハウスなどさまざまなスペースがあります。また、乳幼児向けの絵本の読み聞かせも行なっているそう。最寄りのプレーパークはこちらから検索してみてくださいね。→全国冒険遊び場検索マップ***子どもに遊ぶことの楽しさを実感してもらえるだけでなく、自主性や危機管理能力が育つことにもつながるプレーパーク。休みの日に、ぜひ親子で訪れてみませんか。文/田口 るい(参考)学研キッズネット|思いきり自由に遊べる「冒険遊び場(プレーパーク)」を知っていますか?学研キッズネット|自分の責任で自由に遊ぶ、冒険遊び場「プレーパーク」~‟こがねい子ども遊パーク“インタビュー~特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会|冒険遊び場とはCOE LOG中部電力|心と体を解き放つ、子どもの「やりたい!」をかなえるプレーパークプレーパークせたがや|イベント(TOP)渋谷はるのおがわプレーパーク川崎市子ども夢パーク特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会|全国冒険遊び場検索マップConobie|「心が折れるより、骨が折れたほうがマシ」子どもの育ちを促す“危険”と向きあおう
2019年08月09日お菓子にジュース、ラーメンや調味料、地域の特産品、車に飛行機、製鉄……。私たちの周りには、あらゆる「工場」があります。ものづくりの現場を実際に見たり体験できたりする工場見学は、年齢を問わず人気のお出かけスポットとして定着してきました。夏休みの家族でのお出かけ先としてもおすすめですが、自由研究のテーマとしても最適です。工場見学が子どもにとってどんな学びになるのか、どのようにこの先の学習につながっていくのか、あらかじめ私たち大人が知っておくと、ただ楽しむだけの工場見学からワンランク上の教育効果が期待できますよ。今回は、夏休みの自由研究という視点から、工場見学へ行く前の準備、見学に持っていくと良いもの、見学後のまとめ方などについてご紹介しましょう。工場見学は、ものづくりのプロセスを学ぶだけの場ではない小学生の頃、社会科見学で工場見学へ行ったことのある方は多いのではないでしょうか。昨今は、子どものみならず、大人を対象とした工場見学も日本各地で開催され、人気を博しています。また、夏休みには親子を対象とした工場見学を企画するところも多く、家族でお出かけする際にもぴったりのスポットです。なぜ、工場見学は人気があり、注目されているのでしょうか。ひとつには、普段の生活では見られないものがそこにあるからでしょう。いつも目にしている商品が、長いベルトコンベア上で、ひとつひとつのプロセスを経て徐々に完成していく様子や、出荷までの流れを知ることができます。そこから、ものづくりの大変さやムダのない効率的な動きなど、さまざまことを学べますよね。工場見学はしばしばテレビ番組でも紹介されていますし、企業のホームページなどで疑似体験できるものもあります。ものができあがっていくプロセスを「見る」「知る」だけで良いのであれば、テレビやホームページでも十分かもしれません。しかし、実際に工場へ足を運んで見学すれば、「聞く」「嗅ぐ」など五感を使って、ものづくりを体感できます。隣の人の声も聞こえないほどの大きな機械音、赤々と燃える鉄の塊やゴム製品の独特の臭いなど、ひとつの製品が完成するまでを五感をフルに使って体感できるのが、工場見学の醍醐味といえるでしょう。また、現場で働いている人の生の声を直接聞くこともできるため、子どもたちにとって貴重な経験になることは間違いありません。日常生活では見ることができない仕事の現場を見学できるのも、工場見学の魅力です。例えば、鉄道の沿線でよく見かける巨大な群をなす製鉄工場や化学工場の内部は、工場見学の機会がなければ滅多に入ることはできませんし、初めて見る仕事も多いでしょう。神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏は、子どもにとって工場見学はキャリア教育の一環になると述べています。工場見学を通して、人が働く様子を間近で見学し、さまざまな職業の存在を知り、理解を深めることができるのです。加えて、事前学習から当日の見学、そしてまとめまでのプロセスが自由研究として扱いやすいという点も、工場見学が注目されている理由のひとつではないでしょうか。コツコツ観察を続ける必要もありませんし、家族で出かけて楽しみながら夏休みの宿題も一緒に済ませてしまうことのできる工場見学は、研究テーマとしてお得ですよね。自由研究で工場見学へ行くための準備工場見学に行くときは、どれだけ事前準備できるかが大きなポイントです。最終的な満足度を大きく左右する、事前準備に必要なことをまとめます。●目的を決めるまず、目的を決めます。例えば、身の回りにあるものが、どのように作られているか乗り物は、どんな技術を使って作られているか地域の特産品は、いつからどのように作られ続けているかなど、日常生活において身近なものや、お子さんが好きなもの、地域の特色と関連づけられるものをテーマに選んであげると、レポートのまとめ作業までお子さんのやる気をキープしやすくなります。どんな工場へ、何のために行くか、親子で話し合って決めましょう。●見学する工場を決める目的にあった工場を探します。会社のホームページを見て、工場見学の開催日や所要時間、人数、年齢制限、場所などを確認して、条件に合うものを選んで予約をしましょう。「工場見学夏休み親子」とキーワード検索をして探してもいいですし、次のようなサイトでは、地域別や業態別で工場見学を探すこともできます。学研キッズネット|工場見学ナビいこーよ|親子におすすめ!工場見学特集2019●工場の下調べをする教育評論家の親野智可等氏は、工場見学に行く前に会社のホームぺージを見て、見学する工場の名前、作っているもの、場所、働いている人の数、ものづくりの流れ、どんな技術を使っているかなどを事前に下調べしておくことを推奨しています。大まかに把握しておくと、見学するときに理解がスムーズです。調べていくうちに、分からないことやもっと知りたいことが出てきたら、見学時に質問できるようにリストにまとめておくと良いでしょう。工場見学、こんなところに注意!●持ち物は、早めにリストを作る当日、持っていくものは下調べをしながらリストを作っておくと、「あれを持ってくればよかった!」とならずに済みます。例えば、筆記用具、ノート飲み物カメラ、ビデオカメラなどの撮影機器(撮影が許可されている場合)は必需品になるでしょう。ノートは、下調べしたことや聞きたいことを書き留めておくと、現地でポイントを押さえて見学しやすくなります。●レポート作りを見越して、撮影OKな工場を選ぶ工場によっては見学時の撮影を禁止している場合もあるため、なるべく撮影OKの工場を選ぶことをおすすめします。写真や動画は、後から見返したとき、その場では気づかなかったことに気づけることもあるため便利です。また、まとめる際に写真を使うと見栄えもよくなりますね。●見学中は五感をフルに使う写真もビデオも重要ですが、撮ることばかりに気を取られては、せっかくの見学も魅力半減です。親野智可等氏は、記録を取る前に、目、鼻、耳、口、感触の五感をフルに活用して、自分の感覚で味わうことを勧めています。機械の動き、工場の中の音、臭いなどを体全体で吸収するつもりで見学しましょう。●暑さによる体調不良に注意!暑さが厳しい夏休み中なので、熱中症にならないよう、水分補給は十分な備えをしておきましょう。工場によっては、外を歩いて移動することもあるので、天気が急変したときに備えて傘など雨具をもっていくと安心です。●大人と離れて行動するときは緊急時の連絡手段を確認しておく工場見学は、子どもだけで体験できるものもあるようです。その場合には、緊急時に備えて、携帯電話を持たせるか保護者の電話番号を記したメモを持たせるようにしましょう。工場見学が終わったら、レポートにまとめようまとめ方は発表スタイルによって適した方法がありますので、お子さんと話し合って決めてくださいね。●壁新聞教室に展示する場合やコンクール出品を狙う場合におすすめです。大きな模造紙1枚にまとめると全体像がわかりやすく、一度に多くの人に見てもらえるのもメリットです。●ファイル詳しく調べたことをまとめるのに適しています。レポート内容を項目ごとにページで区切り、たくさんの情報を載せましょう。●紙芝居自由研究の内容を、クラスやグループで発表する場合に適しています。裏にセリフを書いておくと説明しやすいですよ。工場で見学した流れをおさらいし、事前に学習したことを補足説明として入れながら、見学を通してわかったことや感想、新たな疑問や次に取り組みたい課題などをレポートにまとめます。自分で描いた絵や撮ってきた写真、見学でもらってきたパンフレットなどを切り貼りしながらまとめると、具体的で見栄えの良い作品になるでしょう。***お住まいの近くで工場見学ができる会社を探すのもいいですが、思い切って家族旅行のプランに工場見学を組み入れてみるのはいかがでしょうか。全員の休みがなかなか合わないご家庭でも、旅行を楽しみながら家族みんなで自由研究に取り組んだという夏休みならではの思い出にもなるためおすすめですよ。(参考)ベネッセ教育情報サイト|キャリア教育にもなる工場見学専門家がすすめる、家族でできる見学前のコツとは?ベネッセ教育情報サイト|自由研究にも活用できる!工場見学に行こう!!【前編】~見学の目的~ベネッセ教育情報サイト|自由研究にも活用できる!工場見学に行こう!! 【後編】~見学とまとめ方のコツ~PRESIDENT Online|子どもの人生が変わる「工場見学」は学研キッズネット|工場見学のポイント学研キッズネット|工場見学ナビいこーよ|親子におすすめ!工場見学特集2019親力講座(親野智可等ブログ)|夏休みの自由研究は工場見学がオススメ
2019年08月09日お子さんたちは夏休みをいかがお過ごしですか。昔は、夏休みには多くの地域でラジオ体操が行なわれていましたので、子どもたちもそれに合わせて早起きをしていたものです。最近ではそのような光景が少なくなり残念ですね。夏休み中に学校のプールが開放されている場合には、ぜひ参加して水と仲良くなるといいでしょう。塾や地域のスポーツチームでの練習、家族との帰省など予定がぎっしりつまっている人もいると思います。人によって過ごし方はいろいろですが、夏休みは何か普段できないことにチャレンジするとてもいい機会です。ご家庭で、夏休みをどう過ごすかをしっかり話し合って、計画的に充実した夏を過ごせるといいですね。夏休み中の「遅寝・遅起き」はこんなに危険!夏休みをどう過ごすかによって、体や心に大きな影響が出ます。特に、学校がお休みだからといって「遅寝・遅起き」の生活を続けていると、体調が崩れてしまいます。具体的には、体のだるさを感じる、食欲がなくなる、精神的にも意欲が低下して「何もやる気がしない」という状態になる、などの問題が起きてしまうのです。私の養護教諭時代の経験では、夏休み明けに、もともとやせていた子どもがますますやせてしまったとか、太り気味だった子どもがさらに太ってしまったなどということがよくありました。前者は、もともとたくさん食べられないうえ、夏のだるさで体を動かさないためにますます食欲がなくなり、そうめんなどの口当たりがいいものしか食べられなくなるケース。後者は、食欲の旺盛さは維持しつつも体を動かさなくなる分、そのまま体重増につながってしまうケースです。例えば、夏の間に身長が3cmも伸びたのに、体重は逆に1kgぐらい減ってしまった子どもや、身長は確かに伸びたものの、体重の増加が身長の伸びを極端に上回る子(1ヶ月で5kg増)などもいました。先ほど述べた心身の調子だけでなく、こうした体の成長にも、夏休み中の生活の仕方は大きく関係しているのです。人間の体のリズムは、夏休みだからといって変わることはありません。7月号でも紹介しましたように、生活リズムが崩れると「夏バテ」や「熱中症」にもかかりやすくなりますので、規則正しい生活1日1回以上は外に出て汗をかくぐらい体を動かす食事は3食しっかり食べるの3つは、きちんと守りましょう。1日のスタートはやはり、家族そろって一緒に朝ごはんを食べることをお勧めします。ゲームなどのやりすぎに要注意夏休みには、ゲームなどのやりすぎにも注意が必要です。自由時間が長いのをいいことにゲームばかりしていると、知らないうちに依存症になってしまう可能性があるからです。最近は若者たちの間でゲーム依存症が増えています。これは世界的にも問題になっており、世界保健機関(WHO)は2019年5月にゲーム依存症を「精神疾患」として位置づけ、治療が必要な疾病に分類しました。特に問題なのは、ネットにつないで友だちと競い合うようなゲームです。夢中になると、1日中お部屋にこもったり、夜更かしをしてしまったりすることにもつながります。こうしたゲームは若者のみならず小学生の間にも広がってきていて、小学生のなかにもゲーム依存症に近い人(予備軍)が出てきているのです。お子さんがゲームに依存しないためには、各ご家庭で 「ゲームの時間は1日何時間」と決め、それをしっかり守らせることが大切です。また、何もすることがないとついついゲームを手にしてしまうことになりますから、1日をどのように過ごすのか、何をするのかなどを「親子できちんと決めて、行動する」ことを大切にしましょう。そういう意味では、学校のプールの活用や、地域の児童館などが開催する催し物などへの参加をお勧めします。夏休み中に見られる、休み明けの“不登校”の兆し夏休みが終わると、ほとんどの子どもたちが真っ黒に日焼けして、友だちや先生に久しぶりに会うことを楽しみに元気に登校してきます。しかし、なかには夏休み明けに学校に来られなくなるお子さんもいます。その原因はいろいろなことがあり得ますが、ひとつには「生活リズムの崩れ」による影響が挙げられます。先に述べたような「遅寝・遅起き」に代表される夏休みの不規則な生活のせいで、「夜眠れない」「朝起きられない」「体調が悪い」といった不調が起き、それが気力・体力の低下につながってしまうのです。そういった不調が、単なる生活リズムの乱れによるものにすぎない場合には、朝多少無理やり起こして活動させても大丈夫でしょう。ですが、もしかしたらその現象が「学校に行くことが辛い」というサインである可能性も。その場合には子どもの接し方に注意が必要になってきます。「学校に行くことが辛い」のはなぜなのか、誘因となっているものを探り、丁寧に対応する必要があるのです。その誘因は、夏休み中というより1学期の生活の中にあったかもしれません。学習のつまずき、友だちや先生との関係、あるいは家庭の中にある心配などです。夏休みこそ親子でしっかり向き合い、お子さんが不安に感じていることは何かを理解し、対策を考えましょう。また、子どもにストレスが見受けられる場合は、普段はできない家族旅行や解放的な自然環境のなかで、体も心もリラックスして遊び込むことがとても有効です。自然には、人間に癒しを与えてくれるたくさんのエキスがありますし、とことん遊ぶと頭がすっきりし、よく眠れます。親御さんもお子さんと一緒に体を動かせば、日頃の疲れやストレスが解消されるはず。夏休みの家族の過ごし方としてはもってこいだと思いますよ。普段は子どもとゆっくり話をする時間が取れない方も、夏休みは絶好のチャンスです。長い休みを有効活用しましょう。就寝が遅くなったら、翌朝は寝坊OK?NG?夏休みならではの親御さんの困りごとに、いくつかアドバイスをいたしましょう。【親御さんからの質問 1】夏祭りや帰省、旅行など、イベントがあるたびに生活リズムが崩れ、一度崩れるとなかなか元に戻りません。特に、就寝時間がどうしても遅くなってしまいます。何日間ぐらいまでなら生活リズムが乱れても大丈夫でしょうか?生活リズムの崩れは、意識的に直さないとなかなか元に戻りません。時差ボケの経験がある親御さんはわかると思いますが、昼間とても眠かったり夜中に眠れなかったりしても、昼間の活動を続けているうちに2~3日もすれば元のリズムに戻ります。ですから、「生活リズムの崩れが何日までなら大丈夫か」というより、リズムの乱れが直るのには2~3日かかることをまずは知っておいてください。イベントなどで疲れて帰ってきても、翌日の朝はとにかくあまり寝坊しないで、体を動かしましょう。昼寝は30分ぐらいならいいかと思いますが、長く寝すぎたり夕方近くに眠ったりしてしまうと、夜の睡眠に響きますので要注意です。また、外出が続けば体も疲れますので、新学期が始まる前1週間はなるべく遠出などは控え、普段どおりの生活に戻すことが大切だと思います。テレビは1日何時間まで見せていいの?【親御さんからの質問 2】外で長時間遊ばせると熱中症が怖いし、かといって家の中で過ごさせるとテレビを長時間見たがります。「テレビの見すぎは良くない」と思うのですが、そもそも1日何時間ぐらいまでなら子どもにテレビを見せてもいいのでしょうか?親として安心できる指針が欲しいです。今の時代は、テレビ視聴だけでなくゲームやDVD、インターネット動画など、メディアとの接触時間をトータルで見ていくことが必要だと思います。特にYouTubeは、子どもたちの多くがなりたい職業にYouTuberを挙げている(※)ことからも、その視聴時間はかなり長いことが予想できます。(※2018年9月、学研教育総合研究所学研教育総合研究所調べ)私が小学校で養護教諭をしていた頃、夏休み明けの子どもたちに、長期休み中のメディア接触時間を調査したことがあります。そのなかに、テレビやゲームの時間を合わせて1日6時間~8時間と答えた子がいたのにはびっくりしたものです。また、いま教鞭をとっている短大の学生のなかにも、1日5~6時間はメディアを見ているという学生がいます。彼らの多くは、短大生になってからというより、子ども時代からメディアに長時間接触しているのだとか。幼少期のメディアの視聴習慣は長きにわたって影響を及ぼすといえそうです。ご家庭でのテレビの視聴時間は、「1時間」とか「2時間」というような決め方だと、ドラマの途中でも見るのを止めなくてはならなくなってしまいます。1週間を通してどの番組を見るのかを決め、おおよそ1日2時間程度だと理想的ですね。午前中1時間、午後1時間などのような規則を作るといいでしょう。しかし、親が見ているのに子どもはダメというのも矛盾がありますから、テレビを消したら親子で一緒に何かをするというような方策が必要だと思います。一緒に料理を作るとか、本の読み聞かせをするなど、家族でコミュニケーションを取る時間にしたいですね。「10歳の壁」は夏休み中に越えられる?【親御さんからの質問 3】うちの子は、夏休み前あたりから学校の勉強が難しく感じると言うようになり、勉強への苦手意識が出始めました。夏休み中に少しでも苦手な箇所を克服してもらいたいのですが、あまりうるさく言うのもかわいそうな気がするし、「このまま不登校になったらどうしよう?」と心配になります。どう声をかけてあげたらいいでしょうか?今、「10歳の壁」という言葉がよく使われていますね。その1つに挙げられるのが、10歳前後の子どもが勉強面や心理面でつまずき劣等感を抱いてしまうこと。学校の勉強で抽象的な思考が始まるこの時期に、「勉強が難しい!」と感じる子どもたちが増えているのです。昔はこうした問題はなかったのか、というと、昔もあるにはありました。ですが、昔は今日ほどには社会も親も勉強のことを気にしなかったので、子どもたちも「勉強はきらい!」と平然としていられたように思います。しかし、今は3年生ぐらいの子どもでも、「自分はクラスの中で勉強ができる方だ」とか「できない方だ」ということをかなり意識しているようです。「勉強ができない」という自覚が自尊感情の低下につながらないようにしたいですよね。お子さんの授業のノートやテストの結果を見て、どこでつまずいているのかを把握し、親御さんが教えてあげられればそれが一番いいかと思います。しかし、高学年になるとなかなか学習も難しくなります。難なく教えられることばかりではなくなってきますので、親御さんもお子さんの教科書をみて「ママにできるかな~」などと言いながら、一緒に勉強するといいでしょう。また、事情が許せば夏休みに友だちを呼んで一緒にグループで宿題などに取り組むのもお勧めです。友だち同士の教え合いもいいですね。「勉強って、わかると面白い!」という経験を、夏の間にぜひたくさんさせてあげたいものです。心も体も元気で新学期を迎えるために長いお休みの間には新しい体験や楽しい思い出ができるように、家族でいろいろ話し合ってみましょう。おうちのお手伝いなども、子ども自身が家族の一員として役立っていると実感できるチャンスです。子どもが少し頑張ったらできそうなことをお願いし、達成できたら「助かったよ」というメッセージを伝えてあげましょう。意欲が増し、心の成長にもつながるはずです。夏休み明け、「友だちに会うのが楽しみ!」「こんな作品作ったから早く先生や皆に見せたい!」といった楽しい気持ちで、心も体も元気で新学期を迎えられるといいですね。(参考)yomiDr.|ゲーム依存症は「精神疾患」…WHOが分類改訂日本海新聞,「中高生ネット依存93万人」,2018年9月1日付.学研教育総合研究所|小学生白書Web版2018年9月調査 6.将来について 将来つきたい職業(全体ランキング)
2019年08月08日2019年の前半は「平成最後の」や「令和最初の」といったフレーズをよく見聞きしましたよね。せっかくの良い機会ですから、関心が高まった今年ならではのテーマとして、「元号」について自由研究で調べてみてはいかがでしょうか。古くは東アジア諸国で使われていた元号も、今や日本にしか残っていない文化になってしまいました。普段はあまり気にかけていない元号について調べると、私たち保護者も新しい発見ができるかもしれません。2019年こそ「元号」を学ぶ最良の年2019年の4月初めに新しい元号が「令和」と発表され、改元された5月1日を過ぎてからもしばらくの間、テレビや新聞などのメディアでは元号についてのさまざまなトピックスが取り上げられていました。国内はもちろん、海外からも大きな関心を集めた一大ニュースでした。ゴールデンウィークの真っただ中に改元されたこともあり、皇室での古式ゆかしい儀式を家族そろってテレビで見たという方も多いのではないでしょうか。これまで小学校の学習指導要領には元号は含まれていませんでしたが、文部科学省によると、2020年度に導入される新要領から、小学3年の社会の授業に元号が盛り込まれることになったのだそう。今のうちから先取りして学習しておくと、元号について興味や関心が深まるきっかけになるでしょう。身近な話題かつ、日本の大切な文化として、自由研究で調べるのにふさわしいテーマですよ。元号について調べるなら、こんなテーマがおすすめ令和にちなんだ「元号」の調べ方の例として、小学1年から3年のお子さんが取り組みやすいものをご紹介します。●そもそも元号とは?・元号が最初に使われたのは?・いつ変わるの?・元号の作り方にルールはある?・どうやって元号を決めた?●今までに使われてきた元号を調べる・最初の元号「大化」から「令和」までの元号の数・よく使われている文字のランキング・一番長かった元号、短かった元号●明治以降の元号について詳しく調べる・明治、大正、昭和、平成、令和のそれぞれの元号の意味・それぞれどんな時代だったか●「平成」への改元と「令和」とで変わったこと・平成時代にはいなかった「上皇」とは・儀式のときの服装の色が違う理由・改元のための儀式についてテーマを決めるうえで注意するべきなのだ、どのくらい掘り下げるか・どのくらい広げるかというスケールの見定め。とてつもない作業量になると、お子さんの集中力が途切れてしまうことも考えられます。お子さんの興味関心や、集中力の度合いをみながら、研究の大きな枠組みを作ってあげるといいでしょう。元号について調べるのに活用したい資料どんなテーマにするか決まったら、次のような資料を活用して情報を収集していきます。●新聞自宅の新聞でも良いですし、図書館へ行けば過去の新聞を閲覧することもできます。改元の決定、新元号「令和」の決定、改元の日を報じる新聞を入手してどんなことが書いてあるのか、調べてみましょう。また、新聞は「平成」と「令和」、2つの元号の発表のタイミングや即位の礼の違いを比較したいときなどにも役立ちます。 ●書籍・雑誌分かりやすい説明がほしいときは、子ども向けに発行された書籍や雑誌を活用しましょう。小学生から中学生を対象に簡潔に書かれた本は多々あります。『天皇と元号の大研究 日本の歴史と伝統を知ろう(楽しい調べ学習シリーズ)』高森明勅 監修(PHP研究所)カラーで写真や資料がたくさん掲載されているので、当時の様子もイメージしやすく、調べ学習に適した一冊です。『月刊ジュニアエラ 2017年3月号』(朝日新聞出版)朝日新聞の編集委員による記事です。改元の全体像を把握しやすい構成になっています。バックナンバーですが、Kindleや図書館で閲覧することができます。このほかにも次のような書籍もおすすめです。『イラストでわかる 日本の元号』日本の元号研究会 編集(池田書店)『元号(げんごう)でたどる日本史』グループSKIT 編著(PHP文庫)お子さんと読みやすい本を探してみてくださいね。 ●インターネット簡単に情報を収集できるといえば、やはりインターネットでしょう。宮内庁や神社本庁のホームページには改元(お代替わり)の特集ページがあります。宮内庁|お代替わり関係特集お宮キッズ(神社本庁)|元号がかわるよ『御代替り』そのほかのサイトではある程度の情報の精査が必要になりますので、大人がサポートしてあげましょう。どんなキーワードで検索してたどりついたのかをメモしておくと、あとでまとめるときにも参考になります。 ●その時代を知る人昭和生まれの家族や親戚に「昭和」から「平成」に変わったときの話を聞いてみましょう。せっかくの夏休みですから、遠くに住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんのところへ遊びに行って、当時の話を聞いてみるのもいいですね。 元号について調べたら、こんなふうにまとめようテーマによってまとめ方は異なりますが、次のような順番でまとめるといいでしょう。このテーマを選んだ理由どんな資料を使って調べたか調べて分かったこと感想 中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1副代表の辻義夫氏は、自由研究のまとめ方には「壁新聞」「タブロイド・パンフレット風」「研究レポート風」の大きく分けて3つの方法があると述べています。「壁新聞」は大きな模造紙1枚にまとめるもの。「タブロイド・パンフレット風」は二つ折りにした画用紙をタブロイド新聞やパンフレットに見立ててまとめるもの。「研究レポート風」は複数枚のレポート用紙にまとめるものです。絵を描くのは得意だけれど文章を描くのは得意ではないというお子さんは「壁新聞」。書きたい情報が多い場合には「タブロイド・パンフレット風」や「研究レポート風」がおすすめなのだそう。調べた情報の量と、お子さんの得意な分野に合ったまとめ方を選ばせてあげましょう。***パパ・ママも、「昭和」から「平成」になったときのことを覚えていれば、どんどん教えてあげましょう。当時の写真や思い出の品を楽しみながら研究できるといいですね。(参考)関西電力forキッズ教えて!かんでん|世界で元号を使っているのは日本だけ!?|AERAdot. |「平成」は2018年で終了そもそも元号って何?こどもまなび☆ラボ||元号って?天皇って?関心が高まる今がチャンス!日本の歴史と伝統が丸ごとわかる一冊とは?宮内庁|お代替わり関係特集お宮キッズ(神社本庁)|元号がかわるよ『御代替り』リセマム|【GW2019】いよいよ始まる新時代…子どもと一緒に「元号」を学ぶ書籍5選高森明勅監修(2018)『天皇と元号の大研究 日本の歴史と伝統を知ろう(楽しい調べ学習シリーズ)』, PHP研究所.『月刊ジュニアエラ 2017年3月号』,朝日新聞出版.日本の元号研究会編集(2018)『イラストでわかる 日本の元号』, 池田書店.グループSKIT編著(2016)『元号(げんごう)でたどる日本史』, PHP文庫.日本経済新聞|学校「令和」どう教える?「自分なりの意味を」日経DUAL|プロが伝授自由研究のカッコイイ見せ方・まとめ方
2019年08月07日物事に興味を持ち、「もっと深く知りたい!」と思う気持ちを「知的好奇心」といいます。知的好奇心は、大人になるにつれ失われがちなもののひとつです。「子どもの頃は知的好奇心旺盛だったけど、大人になって変わった」という方も少なくないはず。しかし、そんな自分の状態が、子どもに悪影響を及ぼしているかもしれないのです。なぜならば、親の知的好奇心の有無は、子どもの知的好奇心のみならず学力にまで関係してくるから。今回は、親子にとって知的好奇心がいかに大切かを知り、知的好奇心を育むためにできることは何かを考えてみます。知的好奇心旺盛な子は学力が高い!勉強ができる子や、成績のよい子には、知的好奇心旺盛な子が多いと言われています。教育関連著書を多く世に送り出している脳医学者の瀧靖之さんは、「賢い子」の条件を問われた際、「自分から『知りたい』と思える、知的好奇心が旺盛な子ども」と答えています。動物や植物、運動、どんなことでも良いのですが、興味を持った対象に自分からおもしろがって調べたり取り組んだりすることができる子だと思います。勉強にしても、テストの点数を取るのが目的ではなく、そもそもおもしろいからやっている。だから努力とも思わず夢中になることができる、そんな子どもですね。学ぶことが楽しくて仕方ないから、自然と学力が伸びていく。その土台となるものが、「もっと知りたい!」という学びへの意欲、すなわち知的好奇心なのです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?)例えば、ある外国の歌手の音楽に興味を持ったとしましょう。その音楽についてもっとよく知りたいという思いから、曲の歌詞に出てくる英単語を調べるようになることが考えられます。好きな曲の歌詞が理解できると、その喜びから、英単語を調べること自体が楽しく感じられるようにもなるかもしれません。そうすれば、自然と英語を勉強するようになるでしょう。知的好奇心は、こうして学びの土台を築いていくのです。実際、学力の高い人たちの多くが、知的好奇心を育むことの大切さを実感しています。東京大学新聞社の調査によると、東大生の95%が、小学生時代の学習姿勢として「知的好奇心を育むこと」が「大切」(とても大切だと思う・まあ大切だと思う)と答えたそうです。これは、「柔軟に考える力をつけること」(92%)や「塾や学習教室に通うこと」(23%)より多い回答でした。親の知的好奇心が子どもに影響するでは、子どもの知的好奇心を育てるには、どうすればいいのでしょうか。文部科学省が実施している全国学力・学習状況調査から、親が子どもを図書館や劇場、科学館などの文化施設によく連れていく家庭で育った子どもは、そうでない子どもより学力が高いことがわかっています。このことにより、親に頻繁に文化施設に連れていってもらった子どもは、それぞれの場所で知的好奇心を刺激され、その経験がのちの学習習慣につながったと考えられます。また、同調査では、家にある本の数が多い家庭で育った子どもの学力が高いことも明らかになっています。しかし、だからといって、急に子どもに大量の本を買い与えたり、「本をたくさん読みなさい」と言い聞かせたりしても、効果がないことは誰でも予測できるでしょう。MP人間科学研究所代表であり、心理学者の榎本博明さんは、親自身の知的好奇心が子どもの知的好奇心、ひいては学力の高さにつながっていると指摘します。つまり、蔵書数の多い家庭は、親自身が知的好奇心が強く本をよく読むため、その結果として家庭の蔵書数が多くなる。さらに、子どもと一緒に美術館・劇場や博物館・科学館、図書館といった文化施設に行こうと思う。そのような親の心理傾向が子どもにとって知的刺激に満ちた環境を生み出すのである。(引用元:Business Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明)また、一般社団法人教育デザインラボ代表理事であり、教育専門家の石田勝紀さんも、同様の意見を持つひとりです。石田さんは、「親の持つ “好奇心” そのものが子どもに伝播する」と明言しています。親が物事に興味を持ち、それについて楽しそうに学ぶ姿を日常的に見せていれば、それが子どもにも伝わっていくというのです。「親が、日々ワクワクした気持ちで『もっと知りたい!』と自ら学習していくような人間であればいい」(引用元:東洋経済オンライン|伸びる子の親は日々「好奇心」で生きている)つまり、子どもの知的好奇心を育てるには、まずは親自身が知的好奇心を育まなくてはならないのです。子どもと一緒に大人が無理なく知的好奇心を育むには……しかしながら、大人が日々仕事や家事、育児で忙しいなか、新しいことを始めたり、物事を深く探究したりすることは簡単なことではありません。「重い腰が上がらない」という方も多いでしょう。そんななかでも、子どもと一緒ならできることがあるはずです。好奇心を育むために、親子で無理なく始められることをご紹介します。声に出して言い聞かせる第一歩として、物事に興味を持つことが大切です。とはいえ、実際には日常生活のなかに心惹かれる物事が見当たらない、という方がほとんどでしょう。しかし、本当に心惹かれる物事は存在しないのでしょうか?そう感じるのは、自分自身が物事に対する興味の “アンテナ” を張っていないからかもしれません。先ほどご紹介した石田さんは、自らの「好奇心」という原動力を動かすために、日常的に「日々、楽しんでしまおう」「一見つまらなくみえるものを、おもしろくしてしまおう」と、口癖のように声に出しているそうです。声に出すと、意識が高まります。つまり、物事に対する興味の “アンテナ” を張っているのです。そうすると、小さな変化に気づいたり、ワクワクすることに出会えたりと、物事に興味を持ちやすくなります。まずは、毎朝1回、あるいは思いついたときにでも、「何かおもしろいことはないかな?」「今日も楽しく1日を過ごそう」と、子どもに語りかけてみましょう。子どもに言いながら、自分に言い聞かせるのです。そうして、子どもと一緒に、物事に対する興味の “アンテナ” を張ってみてください。 同じ習い事をしてみる子どもの習い事について「練習しなさい」と一方的に言っていませんか?親がお尻を叩くだけでは、子どもの好奇心はそこで止まってしまいます。前出の脳医学者・瀧先生は、息子さんと “一緒に楽しみながら” ピアノを習っているそうで、「子どもに何かをさせるなら、まず親がやること」がとにかく大事だと力説しています。「子どもの好奇心を思いっきり育てるためには、親自身も子どもと一緒に楽しむ経験が大切」なのです。幼少期に親子一緒に本気で知的好奇心を高めることで、子どもは親を模倣し、中学生・高校生になってからもその知的好奇心で生きていけるのだそう。親子で同じ習い事――うまくいけば、親子共通の趣味ができるかもしれませんよ!***親が知的好奇心を育むことで、子どもの知的好奇心や学力にもよい影響を及ぼすという好循環が生まれます。また、その過程で、親自身が幅広い知識を身につけたり、自分の新たな一面を発見したりと、これまでにない経験ができるはずです。このコラムを読んで、「よし、何か見つけてみるか!」――そう感じた方ならば、すでに一歩、いや十歩以上、知的好奇心の世界に向かって歩き出しているのではないでしょうか。子どもは親の姿を見て育ちます。いつまでも新しいことに挑戦する精神を忘れず、生き生きと輝く姿を見せていけたらよいですね!(参考)ベネッセ教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?Business Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明東洋経済オンライン|伸びる子の親は日々「好奇心」で生きている東大新聞オンライン|東大生の4割超が利用した、小学生時代の通信教育とは?「達成感を求めて楽しく勉強できる」生活百科|好奇心を失わないための10個の方法ベネッセ教育情報サイト|脳医学者も実践!子どもの「知的好奇心」を伸ばす“たった1つの秘訣”
2019年08月07日「スーパーで売られている野菜や魚はどこからやってきたの?」そんな何気ない疑問を解いていくと、私たちの生活にあふれる身近なものたちの産地の特色がわかってきます。特産地の気候や、旬などを調べることで、地理と食育の両方を学ぶこともできますよ。今回は、食品の産地についての具体的な調べ方や、自由研究として発表するためのまとめ方をご紹介します。国内だけでなく、海外から輸入している食材についても調べれば、ぐるりと世界一周できる自由研究です。社会の勉強にもつながる「食品の産地調べ」私たちを取りまく食の環境は、この数十年で大きく変わりました。農業の機械化によって生産性が大きく向上し、ITで管理された物流が発展したことで、世界各地のバラエティに富んだ食材が全国のスーパーに並ぶようになりました。その一方で、しばらく前に話題になった「魚は切り身の状態で海を泳いでいると思っていた」という話ほどではないにしろ、魚や野菜が本来どのように育てられ、どこから届けられているのかを知らずに口にしている子どもたちが多いことも現状です。子どもが食材の産地を学ぶことについて、中学受験のプロである小川大介氏は、著書『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』の中で、以下のように言っています。小さいうちは、子どもが実生活のなかで実感が持てる地名や地域を地図で教えてあげることから始めます。(中略)「今日のお魚はどこの海で獲れたんだろうね」とパックの表示を見て、「長崎って書いてあるよ。随分遠くの海で泳いでいたんだね」と、地図で位置や距離感を教えてあげることもできます。(引用元:小川大介著(2016),『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』,すばる舎.)食材の産地を調べることは、食育になるだけでなく、スーパーや小売店、コンビニエンスストアなどでどのように商品が販売されているか、私たちの消費生活が国内外の地域とどのように関わっているかなど、小学3年生の社会で学ぶ内容にもつながっています。まだ社会の勉強をしていないお子さんでも、自由研究で先取りして調べることで、より興味・関心が湧いて学習意欲が高まりますよ。産地調べには、こんな食材を取り上げてみようもちろん、スーパーのすべての食材を調べるわけにはいきませんから、テーマを絞っておく必要があります。品数が豊富で旬の季節のわかりやすい野菜や果物、鮮魚は特に調べやすいでしょう。野菜や果物は、旬によって産地が変わるのがわかりやすい食材です。調べる食材を数種類選び、7月下旬、8月中旬、8月下旬などタイミングを決めて産地をチェックするといいでしょう。具体的にテーマをいくつかご紹介します。きゅうり、ナス、ピーマンの夏野菜は、どこから届いているのかな?旬が夏ではない野菜や果物は、どこで栽培しているのかな?手巻き寿司に使う材料(例:マグロ、サーモン、イカ、エビ、卵、いくら、きゅうり、米、海苔、醤油)の産地を調べてみよう! あるいは、反対のパターンとして、「先に産地を決めて該当する食材をスーパー店内で探す」という方法も宝探し感覚で楽しめますよ。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニアの5大陸から届いた食材にはどんなものがあるのかな?食材の産地で世界一周してみよう聞いたことのない国名が記された食材を探して、地図で照らし合わせてみよう 農林水産省「こどもページ」では、大豆や米、トマトなどの野菜の生産県トップ3クイズで遊びながら産地を学べるゲームがあります。ぜひ参考にしてみてください。2020年はオリンピックイヤーなので、「金メダルと同じ産地の食材は?」のような切り口もおもしろいですね。スーパーで食材の産地を調べるときのポイント実際に食材を調べるときのポイントをいくつか紹介します。●売り場にはどんな種類の食材があるか野菜や果物、鮮魚コーナーを訪れて、どんな種類の食材が売られているかリストアップします。●食材の産地はどこか全てを調べることは難しいので、「夏野菜」や「果物」などテーマを絞って、産地を調べましょう。産地表示について地理学を専門とする奈良教育大学の岩本廣美教授は、ラベルだけでなく、野菜などが入れられていた段ボール箱や、商品の箱も注意深く見てみるとよい、としています。ほかにも、産地は価格のPOPに書かれていることもありますし、シールで貼られていることもありますよね。また、原産地と加工地が記されている場合は、どちらもメモしておきましょう。●商品の並び方に特徴はあるか例えば、玉ねぎのコーナーでは、北海道産の玉ねぎが6玉で1つのネットに入れられて特売になっている一方で、淡路産がバラ売りされている……。なんて光景に出合うかもしれません。同じ食材でも売り方が違うことに気づいたら、詳しく調べてみましょう。調べたことをわかりやすくまとめようスーパーで見つけたことをもとに、どんな食材がどこから届いているかをまとめていきます。日本や世界の大きめの白地図を用意し、色分けして書き込んでいくのがわかりやすくておすすめです。岩本教授は、書き込みやすく、色をぬりやすい「北海道から沖縄県までを1枚におさめた地図」や「都道府県の境界線が記入されている地図」が良いとしています。まとめていくうちに、「地元でも採れるのに、なぜ遠くの産地からも届いているのだろう?」「夏には採れない野菜なのに、1年中売られているのはどうして?」などの新たな疑問が生まれてくるかもしれません。そういった場合には、本やインターネットを使って調べてみましょう。国内最大規模の店舗数を持つスーパーマーケットチェーン株式会社マルエツでは、産地研修や商品知識検定を取り入れていて、「商品についてお客様に直接説明すること」を心がけているそうですよ。マルエツに限らず、店員さんに質問してみるのもひとつの手ですね!***自宅に近いスーパーと、帰省先や旅行先のスーパーで同じ種類の食材を調べて、産地の違いを比べてみるのも夏休みならではの切り口になります。親子で楽しく食材の産地を調べて、世界一周を目指してみてくださいね。(参考)ベジ探(独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜情報総合把握システム)|「野菜マップ」で野菜の生産地について調べてみよう!ベジ探(独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜情報総合把握システム)|野菜マップ夏休みの自由研究 カンタン解決策特集!(ベネッセ)|ふだん食べている肉や魚、野菜がどこからきているかを調べよう!学研キッズネット|調べ学習 地域(ちいき)のスーパーを調べよう文部科学省|小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 社会編帝国書院|授業のなかの地図活用小川大介著(2016),『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』,すばる舎マルエツ|2018年 会社案内
2019年08月06日じつは今、ゲームがもたらす教育的効果や有用性が、さまざまな研究によって明らかにされています。ゲームに対するイメージは、「なんとなく教育に悪いもの」から「学習に有効活用できるツール」へと変わりつつあるのです。今回は、世界ではすでに700億円もの市場規模にまで発展した “eスポーツ” の将来性に関連して、子どもたちの学習にも取り入れられているゲームの教育的効果について考えていきましょう。なりたい職業に「eスポーツのプロ選手」がランクイン!?みなさんも一度は “eスポーツ” という言葉を耳にしたことがあるはずです。でも、それがいったい何を意味するのか、そしてなぜ今注目されているのか、詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか。「eスポーツって、ただゲームで対戦することでしょ?」「ゲームばかりしていたら不健康だし、コミュニケーション能力が低下しそう」「子どもがプロのゲーマーを目指したいって言い出したらちょっと心配……」ほとんどの親御さんにとって、ゲームやeスポーツへの認識はこの程度だと思います。とくに私たちが子どものころは、大人から「ゲーム=よくないもの」と言い聞かされていましたよね。だからこそ、自分の子どもがゲームに熱中しすぎないように注意を払っているのではないでしょうか。しかし今、ゲームを取り巻く環境は大きな転換期を迎えています。2019年に株式会社クラレが実施したアンケートによると、小学生男子の「将来就きたい職業」1位の「スポーツ選手」の内訳に大きな変化があったそう。なんと、定番のサッカー(40.9%)、野球(29.6%)、テニス(6.1%)に次いで、新たに “eスポーツ” が4.3%もの支持を得たのです。それは、バスケットボール(3.5%)よりも高い数字でした。このことからも、eスポーツは子どもたちの間でじわじわと人気の高まりを見せていることがわかります。脳科学者の茂木健一郎氏は「2020年の教育改革が目前に迫るなか、親の価値観のアップデートが急がれます」と述べています。親の生きてきた時代と、子どもが生きている時代は違うことを、自覚してほしいですね。僕がおすすめしたいのは、子どもたちに聞き取り調査をすること。たとえば子どもにとっての「スター」の概念が映画俳優からテレビのタレントに代わり、今はユーチューバーがもてはやされているなど、親には想像できない変化があります。(引用元:洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』, 洋泉社.)まずは、今の子どもたちが目指したいと思っているものや憧れているものを知り、その理由を理解する必要があるとのこと。「よくわからないけれど、ユーチューバーやプロゲーマーなんてだめ!」では、もはや時代遅れなのかもしれません。その歴史とeスポーツを取り巻く環境の変化「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称であり、複数人のプレイヤーで対戦するゲームをスポーツと解釈して「eスポーツ」と呼んでいます。海外ではプロスポーツとして賞金や集客もビジネスモデル化されているジャンルですが、日本ではまだそこまで浸透していません。その歴史は意外と古く、1997年にアメリカで設立された「サイバーアスリート・プロフェッショナル・リーグ(CPL)」が、ゲームをして賞金を得る “プロゲーマー” の起源といわれています。CPLをきっかけにプロ化の流れが本格始動し、日本でも2000年ごろにはプロゲーマーが誕生していたようですが、活動は長続きしなかったそう。その後、2010年に梅原大吾さんが日本人初のプロ格闘ゲーマーになったことで、メディアでも少しずつ取り上げられるようになりました。そして2018年、インドネシアで開催された「第18回アジア競技大会 ジャカルタ・レバノン」で、ついにeスポーツが公開競技として実施されたのです。さらに、アジアオリンピック評議会とAlisportsは、2022年開催予定の「アジア競技大会中国・杭州」において、公式スポーツプログラムにeスポーツを採用することを発表しました。このように、eスポーツは着実にその規模を拡大し、ゲームは「家でひとりでやるもの」から「大勢の観客の前でテクニックを披露して競い合うスポーツ」へと変貌を遂げたのです。ゲーミフィケーションは子どもの能力をぐんぐん伸ばす!人は、努力に対する適切な評価や報酬が得られるとわかると、その行為を持続する傾向があるそう。ほとんどのゲームは課題設定とクリアの繰り返しで進んでいくので、その心理的効果を理解すると、時間を忘れてゲームに夢中になってしまう人が多いこともうなずけます。『ゲーミフィケーション』とは、「ゲームが人を夢中にする仕組みを利用して、さまざまな問題を解決しよう」という考え方です。今、そのゲーミフィケーションを活用して、知識や技能などを学ぶために役立てる流れがあるといいます。海外ではゲーミフィケーションに関する研究がさかんであり、認知的な学習や、物事に対する積極的な態度を身につけるのに効果がある、といった研究結果も出ているそう。また、一般的な教育方法よりも、ゲーム学習のほうが知識や記憶の定着に効果的であるとの結果も出ています。このことからも、ゲームは遊ぶためのものだけではなく、もはや優れた学習ツールとしても評価されていることがわかるでしょう。日本のゲーミフィケーション研究の第一人者、東京大学総合教育研究センター特任講師・藤本徹先生は、「適度なゲームは子どもの発達にポジティブな影響を与える」といいます。その理由として、次の要素を挙げています。○ゲームには「課題をどうやって攻略するのか」という先を見通す力、より良い手順に気づく力、状況を判断する力が必要であることから、それらの能力が自然と身につく。○とくにデジタルゲームは、自分のアクションに対するフィードバック(反応)が即座に行なわれるため、瞬発的な対応能力が鍛えられる。○難易度のレベルが上がると、プレイの仕方を調整したり、すぐに別の解決策を試したりできるので、問題解決の能力が向上する。○ネット上で「ゲームプレイ動画」や「ゲーム実況」などの動画を見ることも、ひとつの “学習” である。なぜなら、上手な人の状態を見て自分のことに “気づき” を得られる「モデリング学習」を自然とこなしているため。過去の研究では、子どもがゲームを通して読解力や問題解決能力がついたという報告もされているそうです。楽しみながら効率的に学ぶ手法は、これからますます活用されていくでしょう。奥深いeスポーツの魅力をもっと広めよう!デジタルゲーム研究の一環としてeスポーツの研究をしている馬場章さんは、まだ研究段階としつつも、「eスポーツプレイヤーは、遂行力、達成力、集中力、瞬発力、思考力、あるいは動体視力といった身体的な能力、さらに整理心理的な能力も優れているということが少しずつわかってきています」と述べています。そして何より、デジタルゲームは内容によっては仲間と協力して勝ち進んでいかなければなりません。隠されたしかけを一緒に探したり、協力してアイテムを手に入れたりと、目的を達成するための協調性や社会性を培う側面もあるといいます。つまり、プレイするのは自分ひとりでも、他者とのコミュニケーションは必須であり、その能力が優れている人がプロとして活躍できるのです。eスポーツが盛んな国では、プロゲーマーはサインを求められるくらい地位が確立されています。その市場規模は約770億円、オーディエンスは2020年には約5億人に達すると予想されているほどです。その一方、ゲーム産業の最先進国でありながら、“eスポーツ後進国” の日本では、いまだに一般的な認知度やプレイヤーの地位が低いのが現実です。その原因として、法律の壁や日本人のゲームに対する価値観、また「スポーツらしくない」という先入観などが複雑に絡み合っていることが指摘されています。その先入観を払拭するためにも「eスポーツプレイヤーの知能的なすごさを正しく伝えることが重要」と述べるのは、立命館大学ゲーム研究センターの中村彰憲教授です。つまり「反射神経や戦略性、先読みや駆け引きのテクニックなど、世界の強豪に勝つ “すごさ” をいかに伝えていくかが今後の課題になる」とのこと。ゲームを身近なコミュニケーションツールとしている子どもたちにとって、eスポーツプレイヤーはもうすでに「憧れの対象」として認識されています。大人は新しいものを柔軟に受け入れることが難しいかもしれませんが、子どもからその魅力や楽しさを教えてもらう良いきっかけになりそうですね。***現代のゲームは、簡単に知らない相手とコミュニケーションをとることができます。「顔が見えない相手には個人情報を教えない・直接連絡をとらない」というルールを徹底しましょう。また、1日1~2時間を目安に、適度に休んだり身体を動かしたりするよう意識させてください。ルールさえ守れば、ゲームは子どもの世界を広げて、さまざまな能力を向上させるのに役立つでしょう。(参考)株式会社クラレ|小学6年生の「将来就きたい職業」、親の「将来就かせたい職業」|小学6年生の「将来就きたい職業」男の子編洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.Bauhutte|eスポーツとはどんなスポーツ?話題のオリンピック新種目「eスポーツ」を丸裸!eスポーツ発信プロジェクト|一般社団法人 日本eスポーツ協会(JeSPA)理事「馬場 章」様へのインタビューStudy Hacker|やる気に欠けている人が「ドラクエ感覚」で勉強を楽しむシンプルな方法。日経DUAL|第一人者に聞くゲームが開く新たな学習の可能性Benesse WOMEN’S PARK|デメリットばかりじゃない!子どもがゲームをやるメリットとは?Kodansha Bluebacks|なぜ日本ではプロゲーマーが「アスリート」と呼ばれないのか
2019年08月05日野菜には、水に浮くものと沈むものがありますよね。このテーマは、夏休みの自由研究として大変ポピュラーなもの。親御さんのなかには、ご自身が子どもの頃にやったことがある方もいるのではないでしょうか。今回は、水に浮く野菜と沈む野菜を調べるときに必要なものや、調べる手順などを紹介します。大人も知っているようで知らないことの多い、水に浮く野菜の秘密をお子さんと一緒に探ってみませんか?水に浮く野菜、浮かない野菜を調べてみよう食事の準備をしているときに、ボウルの水に浸した野菜を見たお子さんから「どうしてこの野菜は沈まないの?」と尋ねられたり、たらいで冷やしているスイカを見て「どうして大きくて重いのにぷかぷか浮かんでいるの?」と不思議がられたりした経験がある方は少なくないはず。今年の夏休みの自由研究は、子どもにとって身近な疑問である「水に浮く野菜、浮かない野菜」について調べてみてはいかがでしょう。大人は「水よりも比重が軽ければ浮くし、重ければ沈む」ということを知っていますが、じつは例外もあることをご存じですか?ご存じなかった方は、お子さんと一緒に楽しんで勉強してみましょう。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員である武庫川女子大学の藤本勇二先生が、「実験を通して身近な野菜に関心を持つことができる」と話しているように、この実験をすることで、理科の勉強にもなるうえに、いろいろな野菜の名前を覚えられます。そして、夏が旬の野菜を知ることで食育にもなる、非常に学びの多いテーマなのです。調べてみようという気持ちが「非認知能力」を育むそれだけではありません。子ども教育のプロフェッショナルである白梅学園大学の増田修治先生は、この実験は「非認知能力を育むことができる」と話しています。このクイズで、なにが浮く浮かないといった知識を教えようとしたわけではありません。子どもたちはクイズをとおして、自分の頭でうんと考えた。そして、「面白い」だとか「やってみよう」「調べてみよう」という気持ちになった。こういう能動的な心情を、自分のなかでつくり出せる力――それが非認知能力なのです。(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|クイズで育む!?子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方)「水に浮く野菜、浮かない野菜」を調べることで、非認知能力も育まれるのであれば、実験しないなんてもったいないですよね!浮くかどうか調べるための野菜を準備しよう前出の藤本先生が提案する実験方法と、郡山市ふれあい科学館HPにある「浮く野菜・沈む野菜の科学」を参考に、以下の野菜を準備しましょう。ここでは野菜の選び方が重要です。次のポイントを参考にして、できるかぎりたくさんの野菜をリストアップし、用意します。●水に対する比重が軽そうな野菜ピーマン、オクラ、ブロッコリーなど●比重が重そうな野菜カボチャ、ダイコン、スイカなど●土の中で育った野菜ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎなど●地上で育った野菜キュウリ、ナス、トマトなど実験をしていくうちに、ある法則が見つかるのですが、その法則に当てはまらない「例外の野菜」も存在します。その例外にあたる「トマト」と「玉ねぎ」をそっとリストに加えておくと実験が充実しますよ。実験には、大きめの水槽がなければ水をはったシンクやお風呂を使うのがおすすめです。スーパーの鮮魚コーナーなどで、発泡スチロールの箱を分けてもらえるか尋ねてみてもいいですね。調べ方のコツ、写真やスケッチをするときのポイント●最初は結果が分かりやすいものからスタート実験する前に、それぞれの野菜が浮くか沈むかを予想してみましょう。多くの子どもは持ってみた感覚で、軽ければ浮く、重ければ沈むと予想するでしょう。まずは、ピーマンやオクラなど分かりやすく浮きそうなものから始めてみて、予想が的中する楽しさを味わわせてあげると意欲が高まりますよ。●写真か?スケッチか?記録の取り方には一長一短記録のとり方には、写真を撮影するかスケッチをするかの2パターンがありますね。お子さんが好きなほうを選んで進めるのが一番ですが、記録を残す意味では写真のほうが便利でしょう。スケッチでは着眼点として抑えたところ以外の記録を取りこぼしてしまうことがありますが、写真であれば実験中に気づくことのできなかった違いを後から見つけられることがあります。スケッチの良いところは、全体図の記録がとりやすいという点ではないでしょうか。例えば、大きな模造紙を水槽に見立てて、野菜の浮き沈みを実寸大のイラストで表現すると、パッと見てわかりやすく、見ごたえもあります。また、30年以上 “お受験美術” を指導してきたアトリエpetit代表の丹内友香子先生は、スケッチをすることで観察力がアップすると話しています。●一通り調べたら、発展問題にチャレンジ!一通り、野菜を水に浸けて浮き沈みを調べたところで、わかったことをメモにまとめます。そのうえで、新たに疑問に思うことが出てきたら、時間の許すかぎりいろいろな実験をしてみましょう。例えば、野菜を細かく切ったらどうなるか?1日置いたらどうなるか?塩水に浸したらどうなるか?炭酸水に浸したらどうなるか?大人でも結果の予想に迷ってしまうかもしれませんね。ぜひ、親子でいろいろ試してみてください。調べ学習が終わったら、レポートにまとめよう実験結果のレポートをまとめるときの一例を以下に紹介します。実験をしようと思ったきっかけ冒頭にあるような「食事の準備をしているときに水に浸した野菜を見て疑問に思った」など、実験をしようと思ったきっかけを書きましょう。用意した野菜写真やスケッチを活用して、まとめましょう。どんなルールで集めたのかも記入しておくと良いでしょう。予想と結果必ず、「予想」と「結果」のどちらも書くようにします。表にして一覧でまとめると見やすく、比べるのも簡単になります。もしくは、上述したように大きな模造紙にスケッチで結果を一覧にして、野菜のイラストと結果がリンクするようにまとめるのもおすすめです。わかったこと・感想予想と結果を見てわかったことや、調べているときや調べ終わってからの感想をまとめます。結果をもとにした発展問題の実験をしたら、そのときの結果もここに加えましょう。 ***写真やスケッチを活用して、見やすくわかりやすいレポートを作りましょう。実験で使った野菜は、お子さんと一緒に料理しておいしく食べてくださいね。(参考)郡山市ふれあい科学館スペースパーク|科学の広場 浮く野菜・沈む野菜の科学All About|水に浮くもの/沈むものを自由研究!野菜の浮き沈みを調べよう学研キッズネット|ぷかぷかくだもの「うき」「しずみ」実験キッズ@nifty|水に浮く野菜しらべStudy Hackerこどもまなび☆ラボ|クイズで育む!?子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方学びの場.com|ぷかぷか浮かぶ、浮力の科学【科学遊び】[小5・理科・家庭科]
2019年08月05日子どもの運動に関する著書を多く持つ遠山健太さんは、「子どもが自由に遊んでいるときのほうが運動能力がアップする」と話しています。ということは、「ブランコの乗り方はね……」なんて、親が教えないほうがいいってこと!?■参照コラム記事はこちら↓運動神経アップだけじゃない! 「できた!」という達成感が自信につながる “公園遊び” の魅力。
2019年08月04日小さな子どもにケガや失敗はつきものだとわかってはいても、つい危険から遠ざけてしまうのが親心。わが子を大切に思うほど、「ほら、危ないから高いところに登っちゃダメ!」「そんなことしたらケガするよ!」と、口を酸っぱくして言ってしまいますよね。でも、安全な場所にずっといるわけにはいきません。子どもはいずれ大きくなり、やがて自分の力で困難や危険を乗り越えなければならないのです。今回は、「子どものうちに体験しておきたい危険なこと」について考えていきましょう。危険を排除した環境で子どもはどう育つ?TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さんによると、幼いうちから「小さな危険」を伴う遊びをきちんと体験することが重要だといいます。子どもをどんどん危険から遠ざける昨今の傾向をふまえて、危ないものはすべて排除するような環境で育つ子どもの将来を危惧している嶋村さんは、次のように述べています。そんな環境で育った子どもは、チャレンジできないまま体だけが成長し、本当の危険や恐怖を実体験のなかで得ることができない。そうなると、自分の痛みを知らないばかりか、他人の痛みにも共感することができないのです。それは、子ども自身はもちろん、その周囲の人間にとっても危険なことでもあります。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?)高さの感覚は5歳までに80%が育つといいます。もし幼少時に高いところに登らせてもらえずに、「高いところはこわい」という感覚をもてないまま中高生になったとしたら、悪ふざけのつもりで命が危険にさらされるようなことをやりかねないのです。小さいうちに危険を体感し、成長した後により大きな危険を招かないようにすることこそ、大人として子どもに教えてあげるべきなのではないでしょうか。子どもは、一番身近で大切な大人に見てもらって「すごいね!」と言われることによって、自信につながり自己肯定感を高めることができます。逆に失敗して落ち込んだり、怒られてしょげたりしているときも、その気持ちを受け止めてくれたという安心感が次なる力を生みます。たとえ失敗しても、立ち直って「また挑戦しよう」というチャレンジ精神が大事なのですね。子どもが体験するべき“危険なこと”とは?2007年、TEDで話題になった講演があります。それは「子どもがすべき危険なこと」についてです。この講演では、子どもたちに対する安全規制の行きすぎに言及し、「あえて危険なことをやらせて、安全な環境を自分でコントロールする術を学ばせるべき」という提案をしています。プレゼンターは、コンピューター科学者でティンカリング・スクール創設者でもあるゲイバー・タリー氏です。“ティンカリング” とは、楽しみながら機械をいじり、修理、改造、発明をするという意味。その教室では、自分の手でなにかを作ることの楽しさを子どもたちに教え続けています。タリー氏は講演の中で、アメリカで製造されたり販売したりしている製品につけられたすべてのビニール・フィルムに、『窒息注意』の警告が書かれていることを嘆き、安全ゾーンの範囲を狭めることで、身のまわりの世界との接し方を学ぶ貴重な機会から遠ざけていると危惧しているのです。もちろん、子どもたちを危険から守ることは必要です。(中略)しかし、それが過保護になってしまっては、子どもたちの危険に対する判断力が養われず、社会の責任が果たせません。私たちがするべきなのは、未知のもの(またはよくわからないもの)と、本当に危険なものとの区別をつけられるよう、子どもたちに学ばせることです。(引用元:ゲイバー・タリー 著/金井 哲夫 訳(2011),『子どもが体験するべき50の危険なこと』,オライリー・ジャパン.)タリー氏は、子どもに「力量」をつけさせることこそがもっとも重要だと述べます。ここでいう「力量」とは、“現実世界で困難な問題に遭遇したときに、うまく対処できる力” です。「力量」がない人は、簡単でわかりやすい対策が見つからないとすぐにあきらめてしまう傾向があり、最初の失敗でくじけてしまうことが多いそう。■力量が高い人の特徴・問題の前後関係を調べ、必要な道具と素材を探し、いくつかの対策を考えることができる。・障害を乗り越える力があり、失敗を教訓として役立てることができる。・物をいじくり回して仕掛けを探るくせがある。・よく質問をし、答えが得られないときは自分で答えを見つけようとする。・深くはなくても広範な知識を持っている。・自分に自信を持っている。このように、どんな状況でも何が起きても対処できることが自信につながるというわけです。その「力量」をつけるために、タリー氏は著書で『50の危険なこと』をするべきだと提唱しています。その中からいくつかご紹介しましょう。○高いところから落ちてみよう落ち方を習得することで、地面から受ける衝撃を上手に逃がすことができます。安全に飛び降りる方法を心得ておけば、高所でパニックに陥ることも少なくなるでしょう。○家電品を分解しよう魔法の箱のように思われている家電製品の中身がどうなっているか、知りたくない子どもはいません。不要になった電化製品を分解してみると、ひとつひとつの小さな部品にも役割があることがわかります。そしてどんなに複雑なものでも、その一部がわかれば最終的には全体を理解できるようになるはずです。○ナイフで削ろう道具を使いこなす技能を高めるには、“実行して結果を見る” という繰り返しの行動が重要です。力を入れすぎないこと、一度に厚く削ろうとしないこと、ナイフの刃が届くところに人がいないこと、必ず自分から向こうに向かって刃を動かすこと。これらの約束は必ず守らせましょう。○レシピ本に逆らおう新しいものを発明するためには、実験、テスト、改良という過程を踏む必要があります。自分だけのレシピを作り出すことで、台所がより身近な場所になるでしょう。好きな材料を集めて、混ぜ合わせたら美味しそうだと思う組み合わせを考えます。小麦粉やバター、卵、チョコレートなど、分量は自分で考えて、すべて混ぜたらオーブンで焼き上げます。子どもの自信は「刃物」と「火」によって育つ!?小さいうちは遠ざけがちな「刃物」と「火」。ただしこれらは生きていくために必要不可欠であり、早いうちから身につけておくことでさまざまなメリットをもたらします。食育・料理研究家の坂本廣子さんも、「刃物と火を扱えるようになれば、これほど子どもの自信につながる体験はない」といいます。どちらも事前にしっかりと注意点を確認し、約束を守ることを条件として使わせるようにしましょう。刃物をつかうとき子どもに言い聞かせること1.包丁の使い方を説明して、「守ってね」とお約束する2.子どもを信頼して包丁を渡す3.危なっかしくても手を出さずに見守ること親が子どもを信じて見守る姿勢を貫くことで、子どもは信頼してもらったと感じて期待を裏切りません。心配性の親御さんはつい柔らかいものばかりを切らせようとしがちですが、にんじんなどの固い野菜も切らせてみましょう。基本の「ネコの手」だけでなく、手の平で押し切るときには指先をピンと伸ばすことも教えられます。包丁の使い方に慣れたら、手の平の上で豆腐を切るのにもチャレンジしてみましょう。豆腐をそっと手の平の真ん中にのせて、包丁をまっすぐにおろし、刃が手に当たったらまっすぐ上げるのがポイントです。火を使うとき子どもに言い聞かせること1.火の扱い方を説明して、「守ってね」とお約束する2.つけ方の前に、消し方をおしえる3.やけどの手当ての仕方も教えておくまずは火の消し方から教えます。火を消して、確実に消えていることを確認してからつけ方を教えましょう。「熱くなっているところは触らないよ。もし触っちゃったらすぐに冷やせば大丈夫だからね」と安心させてから火をつけます。坂本先生は、「火や刃物を使えるようになれば子どもの自信につながります。安全を確保し、やり通すことができたという自信が子どもの達成感と自立心を育むのです」と述べています。「まだ早いかな?」「うちの子にはできないはず」と思い込むのではなく、わが子を信じてチャレンジさせてみましょう。***「ケガや火傷をさせないように」といつも注意深く見守り、ときには先回りして危険を排除することも、親の愛情のひとつです。しかし、子どもの自立心や自己肯定感を育てるには、成功体験をベースにした自信が必要不可欠。私たち大人が思っているよりも、意外と子どもたちは感覚的に危険への対処法を知っているものですよ。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?Study Hacker こどもまなび☆ラボ|中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」YouTube|TED|ゲイバー・タリー「子どもにさせるべき5つの危険なこと」ゲイバー・タリー 著/金井 哲夫 訳(2011),『子どもが体験するべき50の危険なこと』,オライリー・ジャパン.『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.
2019年08月02日子どもが巻き込まれる事件や事故のニュースを目にするたびに、親御さんたちの不安は募るばかりなのではないでしょうか。子どもたちを取り巻く環境は、昔に比べてずいぶんと変わりました。さらにいうと、2、3年前の「安全の常識」が、今では「危険で警戒すべきもの」になってしまうほど、世の中はものすごいスピードで変化しています。では今、私たちは親として、責任ある大人として子どもたちをどう守ってあげればいいのでしょうか。成長するにつれて、子どもはひとりで行動することが増えていきます。そしていずれは、親の目の届かないところで自分の世界を築いていくのです。だからこそ、小さいうちから、「自分の身を守る術」や「危険を察知して回避する能力」をしっかりと身につけられるように導いてあげる必要があるのです。「自分は大切な存在」と認識することが第一歩幼いうちはどこへ行くにも手をつなぎ、目を離さずに見守っていたわが子も、小学生になったらひとり行動がぐんと増えます。頼もしい反面、危険な目に遭わないか心配でたまりませんよね。身近な危険から子どもを守るための活動に尽力している危機管理教育研究所代表の国崎信江さんは、「のびのび育てる(安全な環境で安心して過ごす)ことと、自由にさせる(危険に対して無防備である)ことは別のこと」といいます。安全な環境でのびのび育てるために大切なのは、子どもに過剰な恐怖心を植えつけないことと、子どもに身を守ることの意味を理解させる、ということ。よく「最近物騒な事件ばかりで心配。怖いから気をつけてね」と何気なく言っていませんか?しかし、それでは子どもの不安を煽るだけだといいます。大事なのは、子どもに「自分の存在がどれほど親にとって大切で、自分が危険な目に遭うことは親にとっても悲しいこと」と気づかせることです。たとえば、「あなたが誰かに傷つけられたり、すぐに探せないような場所に連れて行かれたりしたら、お父さんとお母さんは悲しくてたまらない」と、親の気持ちを伝えて抱きしめてあげるといいでしょう。すると子どもは、自分を守る意識が芽生えて、自分の身体を大切にするようになります。そのうえで、犯罪が起きやすい場所や人との接し方、また子ども同士で遊ぶときとひとりになるときにはどんなことに注意すればいいのか教えてあげましょう。親の見守りに加えて、具体的な対処法を教えることが大切です。具体的な声かけと確認すべきこと防犯の意識は、親子ともに常にもっておくべきです。神奈川県警察ホームページ内では「声をかけられる場所ごとの対応策」が、セコム株式会社が運営する『子どもの安全ブログ』では、「声をかけられる状況ごとの対応策」が数多く紹介されています。どうやら、昔と違い、不審者の手口はかなり変化しているようです。日頃から「こんなときはどうする?」と想定した会話をすることで、親も子どもも安心して過ごすことができるはず。いくつか会話例を挙げてみましょう。「学校からの帰り道、車に乗った知らない人が『お母さんが事故に遭った。一緒についてきて』って言ってきたらどうする?」「知らない人から『○○ちゃんだよね?』と自分の名前を呼ばれたらどうする?」「突然知らない大人から道を聞かれたらどうする?」このように、いつ遭遇してもおかしくない危険な出来事をシミュレーションしてみます。とっさのとき、子どもはつい大人の言うままに流されてしまいがちですが、それが危険であることを認識させなければなりません。「車から声をかけられたらすぐに逃げて。コンビニとかに入ってお店の人に助けを求めるようにしてね」「自分の名前が書かれているものを持ち歩くときは名前を隠すようにしようね。傘や水筒、カバンも見えないところに名前を書くようにしよう」「大人が子どもに道を尋ねることはないよ。本当に困っていそうだったら、近くにいる別の大人に聞いてもらってね」ほとんどのご家庭では、「困っている人には手を差し伸べよう」「誰にでもきちんと挨拶をしよう」と言い聞かせているかと思います。しかし、世の中には子どもを狙った犯罪が多いことも事実です。だからこそ、とっさのときに子ども自身が危険を察知して、自分の身を守れるように教えてあげなければならないのです。親子で確認!子どもがひとりで外出するときの注意点まず子どもに自覚させなければならないのは、「ひとりでいる子どもが狙われる」ということ。通学路や習い事の行き帰りの道は慣れているから安全だと思いがちですが、その油断が気の緩みにつながるので注意が必要です。セキュリティーサービスを提供するALSOKは、そのホームページの中で、「町に潜む危険な場所を、親子で確認し、話し合うことが大切」だと呼びかけています。見通しが悪い、人通りが少ない、密室になる、助けを呼んでも声が聞こえない、などの危険な場所を実際に確認しましょう。また、『犯罪から子どもを守る』の著者である国崎信江氏は、仕方なく危険な場所を通らなければならないときの行動についても、親子で話し合っておくべき、と話しています。そこをどうしてもひとりで歩かなければならないときは、警戒して足早に一気に通り過ぎること、そしてあらかじめ子ども110番の家のような駆け込み場所を決めておくことも忘れないようにしましょう。友だち同士で遊ぶときは、帰る時間、遊ぶ場所、友だちの名前を伝えるのはもちろん、遊ぶ場所を移動するときにも親に連絡することを徹底しましょう。子どもが面倒がったとしても、「お母さんはあなたと離れているときも常に心配しているよ」というメッセージを伝え続けることが大事です。また、持っていることで安心しきってしまうのが「防犯ブザー」。自治体によっては小学校入学時に全児童に配布することもあるようです。使う機会が訪れないのが一番いいことですが、いざというときに最大限に効果を発揮できる使い方をしっかりと確認してから持たせるようにしましょう。まずチェックしたいのが、ちゃんと音が鳴るかどうか。気づいたら電池が切れていた!ということもあるので注意が必要です。国民生活センターによると、「最低でも1ヶ月に一度は家庭で保護者が作動確認を行ない、電池の点検と交換も定期的に行ないましょう」とのこと。子どもには、乱暴な扱いをして強い衝撃を与えてしまうと壊れてしまうことを言い聞かせましょう。また、万が一防犯ブザーを使う状況になったとき、鳴らしてから遠いところへポイっと投げるといいそうです。相手は音を止めようとしてブザーのところへ行くので、その間に逃げることができます。このように、「いざというときどうするか」を親子間でしっかりと話し合うことが、お互いの安心感や信頼感にもつながるのです。お留守番は短時間から慣らしていこう親の留守中に子どもが家の中で危険な目に遭うという事件もよく報道されています。そのため、「うちはまだまだお留守番はさせられないわ」と神経質になっている親御さんも多いのではないでしょうか。しかし、ある程度の年齢になったら、短い時間でもお留守番ができるように練習しておきたいもの。そのためには、「絶対に約束を守ること」を徹底させなければなりません。株式会社CHINTAIホームページには、いつもの留守番ルールにくわえて、「イレギュラーな事態を想定した特別ルールを決めておくべき」とあります。親子で決めたルールは、何度もシミュレーションをして安全確認を徹底しましょう。■ピンポンや電話には出ない「近所の人だったら?」「宅急便だったら?」「緊急の電話だったら?」という例外を設けたい気持ちにもなりますが、昨今の物騒な社会状況を鑑みて、基本的には対応しないように言い聞かせるべきです。外出先から子どもに連絡を取りたい場合や、子どもからどうしても親に連絡したい場合は、固定電話のナンバーディスプレイで親の携帯番号を確認できるようにしたり、子ども用の携帯電話を持たせたりして対応するようにしましょう。■家の中の危険を一緒に確認するつい見過ごしがちですが、家の中にも危険な箇所はあります。普段は親が注意して遠ざけているものや、子どもの目に入らないように気をつけているものなどはありませんか?包丁やカッターナイフ、ライターなど、絶対に触らないように言い聞かせましょう。また、念のためガスコンロのロックをかけておくと安心です。***いくら子どもの安全を守るためでも、親が四六時中ぴったりとくっついているわけにはいきません。子ども自身が自分の身を守るには、防犯の知識をつけること、そして『自分を大切に思うこと』が何よりも重要です。自分がどれほどかけがえのない存在か、また、自分に何かあったら大切な人たちが悲しんでしまう、と認識させましょう。(参考)危機管理教育研究所|家庭での指導|狙われにくい子どもにするためにウーマンエキサイト|小学1年生初めてのひとり行動…子どもの危機管理は大丈夫?独立行政法人 国民生活センター|防犯ブザーの電池切れや故障に注意!ーいざという時のために家庭で点検をーAll About|一人でお留守番は何歳から?安全対策やお留守番ルール子どもの安全ブログ|子どもを誘う悪質な「声かけ」にだまされないで!子どもの安全ブログ|もしかして不審者!?悪質な「声かけ」をどう見わけるか子どもの安全ブログ|再確認!「子供が出かけるときの約束」について神奈川県警察|子どもを犯罪から守るために危機管理教育研究所|家庭での指導CHINTAI情報局|子供だけで初めてのお留守番! 事前に考えておきたい留守番対策まとめ
2019年08月02日運動も勉強も習い事も、はじめるには早いに越したことはない!と思ってしまいがち。けれども、子どもの発達段階を考慮して教育を進めないことには、子どもにとっても親にとっても、かえって負担になってしまいます。ここでは、4歳〜7歳の幼児期から小学校入学までの時期の子どもの発達と学び、そして親が意識しておきたいことについてご紹介します。ただし、年齢についてはあくまでもひとつの目安ですので、興味関心や刺激を与えるヒントとしてご覧いただければと思います。■4歳―親子の会話で語彙力アップ【4歳頃の子ども】自分が成し遂げたことは自慢し、大人にほめてもらおうとする4歳。「ママみて!」「すごいでしょ」といったアピールが増えてくる時期です。語彙数は1500を超え、長い文章を使い、もののありかを説明するときは位置を示す言葉を使ったり、所有関係を表す言葉も使い分けます。【教育のヒント】言葉をどんどん吸収する4歳の子とは、それまで以上に「親子の会話」を楽しむことが何よりの知育になります。大人の語彙力が子どもの言葉の数に大きな影響を与えるといっても過言ではないでしょう。下記のように、ものの名前を単純に教えるような一方的な言葉かけではなく、より丁寧な表現をして会話を楽しむようにしてみましょう。×「鳥さんだよ」→〇「かわいいスズメさんがいるよ。エサを探しているのかな」×「風が強いね」→〇「ゴォーッと強い風が吹いているね、飛ばされちゃいそう!」また、4歳頃になると「子どものためになる習い事をさせなければ!」と考える親御さんも多いようですが、無理強いは禁物。イヤイヤ通ったところで、思ったような成果は出ないものです。4歳くらいの時期なら、子どもがその場所に「行ったら楽しい」と思えているかどうかを基準にするとよいでしょう。先生や周りの子どもたちと楽しい時間が過ごせるのであれば通わせ、浮かない顔をしている子に「何歳までに始めないと……」と親が焦りながら無理強いしても、かえって苦手意識を持たせることになってしまいます。■5歳—遊びから想像力や自制心を学ぶ【5歳頃の子ども】集団生活に慣れ、ルールのある遊びやゲームを楽しめるようになってくる5歳。語彙数が2,000程度にまで増えているため、ジョークを言ったり、物語を語ったりして、大人を楽しませてくれることも。また、この頃になると、物の名前だけでなく、“その言葉の意味” や “文脈の中での使い方” を質問することがあります。これは「言葉には明確な意味と比喩的な意味がある」ということを理解しているからです。【教育のヒント】言葉の持つ意味を理解しはじめる5歳くらいの子。「ごっこあそび」も好きな年頃ですが、これには、ことば(セリフ)やもの(おもちゃ)を巧みに使い、状況や社会的なできごとを他者と演じることで、想像力や自制心を学ぶ重要な役割があります。また、ごっこあそびに伴う子どもの空想ドラマは、貪欲に知識を吸収させるチャンスだと、教育コーチングオフィスSaita Coordination代表で(財)生涯学習開発財団認定コーチの江藤真規さんは言います。たとえば以下のように、親も一緒になって子どもの好奇心を上手に利用して自然に学びを増やすのもよいでしょう。《ごっこあそびで「テーブルマナー」を知る》お姫さまごっこで「お姫さま、きょうはナイフとフォークでお食事をしてみましょう」と誘ってみます。たとえおもちゃのカトラリーでも、扱い方が自然と上達していくのがわかるはずです。《ごっこあそびで「文字の練習」をする》学校ごっこの先生役になったら「さあ、ノートに名前を書いてみよう!」と促し、生徒役になったら「先生!『山』ってどう書くんですか?」と子どもに聞けば、一生懸命調べたり覚えたりしようとします。もちろん、ごっこあそびの最中で「そうじゃないでしょ!」などと叱るようなことがあってはいけません。「こうするともっと素敵なお姫さまね」「◯◯くん、書けるようになったね!」などと褒めながら、あくまでも遊びのなかで、さりげなく教えてあげるのがよいでしょう。■6歳—日常生活の工夫で学習の土台づくり【6歳頃の子ども】児童期の入り口に立つ6歳。この頃には、物語の展開を構成する起承転結がわかるようになったり、時間の概念を獲得したり、また、文字や数などの知的な活動への興味も芽生え始めます。自分や友だちの名前、街の看板などの文字を読んだり、エンピツで文字を書いたりする子どもも出てきます。【教育のヒント】小学校入学前後は特に、先取り学習に励む親子などに影響を受けて焦ってしまったりしがちですが、お手伝いやふだんの生活のなかで学びをつかみ取れることもたくさんあります。たとえば算数なら、小学校入学前に15くらいまで数えられれば数の概念はしっかり頭に入っているので、それ以上は無理に教えなくても大丈夫、と『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』(廣済堂出版)の著者であり祖川幼児教育センター園長の祖川泰治さんは言います。普段の生活のなかでのちょっとした工夫で、楽しく学習の土台づくりをしていきましょう。《おやつで算数を学ぶ》無味乾燥な数字の足し算や引き算よりも、体で実感する算数が大切な時期。お菓子を一列に並べ、「今日は右から5つまで食べよう」と言ってみたり、「ママは3つ、◯◯ちゃんは2つ、全部でいくつかな?」などと聞いてみましょう。クイズのように楽しみながら大好きなおやつを食べるとなれば、子どももごきげんで答えてくれるはずです。《買い物で算数を学ぶ》お菓子やおもちゃをねだる子どもに、たとえば「100円よりも安いものならば買っていいよ」と言えば、必死になって探すはず。なんとなくでも数の概念がわかるようになり、百の位にも親しみが出てきます。そのうち足し算を覚えたら、複数の値段を合算して100円になるように選ぶこともできるようになります。《看板で文字を学ぶ》街中で、看板の文字の当てっこクイズをしたり、「“A” という字を見つけてみよう!」と、知っている文字を探し歩いたり。子どもには先入観がないからこそ、難しい漢字だろうと英字だろうと関係なく、多くの文字を学びとろうとします。《お手伝いでものの名前を学ぶ》子どもは「ごはん」や「コップ」などの身近なものの名詞は知っていても、意外と「お玉」や「しゃもじ」などの名詞は知らず「ごはんをよそうやつ」なんて表したりします。お手伝いをしてもらうときにも、「ママがお玉で味噌汁を注ぐから、お椀を運んでくれる?」というように会話におり込んでみるといいでしょう。知っている言葉が増えることは自信にもつながります。■7歳—決まった時間で生活リズムを身に付ける【7歳頃の子ども】授業や宿題がどういうものかわかるようになり、勉強をすることに少しずつ慣れてくる7歳前後。脳の回路が発達し始め、判断力や記憶力も、急速に高まっていきます。本格的に学習を開始するのに適した時期です。【教育のヒント】この頃に基本的な生活習慣を時間によって決めておくと、体内リズムも作られ、勉強の習慣づけもしやすくなります。朝起きて、朝ごはんを食べ、学校に行き、おやつを食べ、習い事に行き、夜ごはんを食べ、宿題をして、お風呂に入り、寝る、というような基本的な生活を、できるだけ決まった時間に行なうようにするといいと、江藤真規さんは言います。時間が決まっていれば、無理なくその行動に移ることができます。自然と気持ちが動くので、抵抗が少ないのです。当たり前の基本的生活習慣がリズミカルに整っていることは、子どもの体内リズムを作る上でも大変役立ちます。また、基本的な生活のペースがきちんとできていれば、その他の用事を組み込むことも簡単です。自分が自由に使える時間帯がはっきりするからです。しかも、その組み込んだ用事にも比較的抵抗なくとりかかれるので、大きな時間の節約になります。同じ時間に同じことをする、この単純な習慣が、大きな時間を作り出す源となるのです。(引用元:江藤真規(2009) ,『勉強ができる子の育て方』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.)目安となる時間を決めておけば、たとえば8時頃お風呂に入ったら、ベッドに入る9時までは自由時間!というように、生活にも楽しみやメリハリがついてきます。おすすめは、親も子どもと一緒の時間帯に行動すること。家庭内の計画も立てやすくなり、子どももよりスムーズに生活習慣を身につけられるようになるはずです。***年齢を目安にまとめてみましたが、大切なのはこどもの個性や適性です。しっかりと向き合いながら、その子に合ったペースで学びの基礎を育んでいけるといいですね。文/酒井絢子(参考)江藤真規(2009) ,『勉強ができる子の育て方』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.祖川泰治(2015) ,『小学校前の3年間にできること、してあげたいこと』,すばる舎.内田伸子 (2017) ,『子どもの見ている世界誕生から6歳までの「子育て・親育ち」』,春秋社.デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス子どもの心と体の図鑑』,柊風舎.公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび4歳頃の子ども公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび5歳頃の子ども公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび6歳頃の子ども
2019年08月01日いま、博物館や科学館が改めて注目を集めていることをご存じですか?話題の展示にたくさんの人が詰めかけて長い列ができている光景は、ここ数年、テレビ番組でもよく見かけるようになりました。夏休み中の博物館や科学館は、子ども向けの特別企画が催されていることが多いので、自由研究のテーマに迷っている方にもおすすめのスポットです。今回は、博物館や科学館が注目されている理由や、実際に訪れるときに必要な準備・自由研究のまとめ方についてご紹介しましょう。この夏は、お子さんと一緒に博物館や科学館で楽しく学べる自由研究に取り組んでみませんか?博物館は子どもの興味を掘り下げるきっかけになるかつて「学校の社会見学で訪れるところ」といったイメージの強かった博物館は、いまや幅広い年代がこぞって楽しむお出かけスポットとなりました。博物館や科学館が注目されるようになった背景には、スタンダードな総合博物館が特別企画展示に力を入れていることや、鉄道・宇宙・恐竜・おもちゃ・アニメ・ラーメンといった子どもにも親しみのあるジャンルに特化した専門博物館が増えていることなどが挙げられます。また、最近では、展示されているものも、古い資料や模型のみならず、動画やバーチャル体験なども充実してきています。知識を深めるためのアプローチが多彩な点も、人気の理由のひとつだと言えるでしょう。平成29年度に実施された学力調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書によると、親が子どもを、美術館・博物館・科学館・劇場・図書館といった文化施設に連れて行っている場合ほど、子どもの学力が高いという結果が出ているのだそう。MP人間科学研究所代表であり心理学博士の榎本博明氏は、この結果について、小さい頃から親に連れられて文化施設に出かけることで知的好奇心が刺激され、のちの学習意欲につながるからだと推測しています。特に博物館や科学館は、興味をもったテーマについて深く知識を掘り下げることができるので、子どもの興味を掘り下げる良いきっかけになります。夏休みの自由研究で取り上げる題材としてもぴったりですよね。自由研究を、博物館や科学館に通う入り口にしてみてはいかがでしょうか。博物館や科学館へ行く自由研究は「準備」がキモ実際に、博物館や科学館をテーマにした自由研究を進めるには、大まかな手順として準備・見学・まとめの3つに分けられます。そして、この3つの中で自由研究の出来栄えを最も大きく左右するのが「準備」です。見学するまでの流れについて例をご紹介しましょう。●テーマを決めるどんなテーマについて調べるか、親子で話し合います。博物館や科学館によって、取り扱っているテーマはさまざまです。日本博物館協会のサイトでは、加盟している施設を分類や地域で検索できるようになっています。日本博物館協会のサイトはこちら。サイト内の博物館の分類を見ると「総合・郷土・美術・歴史・自然史・理工・動物園・水族館・植物園・動水植」と、とても幅広いことがわかります。ここでお気づきになったかもしれませんが、じつは動物園や水族館も博物館の仲間です。まずはお子さんが「何が好きか」「どんなことを知りたいか」を聞いてテーマを絞りましょう。お住まいの地域によっては、希望のテーマを取り扱う施設が近くにない場合もありますので、第3希望くらいまでリストアップするのがよさそうですね。●見学する博物館・科学館を決めるテーマが決まったら、行き先を決めます。たとえば「動物」をテーマに調べるなら、「太古の昔に生きていた動物」か、「絶滅しそうな動物」か、はたまた「動物の育て方」かによって、博物館か動物園か、適した行き先が異なりますよね。テーマと行き先がマッチするよう、情報を収集しましょう。また、夏休みの旅行を計画している場合は、旅先で見学できそうか考えてみるのもいいですね。●行き先の下調べをする見学先が決まったら、下調べをします。どんな展示があるのかだけでなく、開館時間、入館料、施設までのアクセス方法などもお子さんと一緒に調べることで、学びが広がりますよ。●知りたいこと、聞いてみたいことをまとめるたとえば、先ほどの「動物」がテーマであれば「どんな一生を送るのか」「仲間の動物にはどんな種類があるか」「どのあたりに生息しているのか」など、知りたいことをノートにリストアップしていきます。大まかにまとめてあるだけでも、目的をもった見学をすることができて効率的です。上野動物園教育普及係の井内岳志さんは、動物の体の部分の「細かな特徴を見比べる」ことを提案しています。動物の「目の位置」や「足の形」などです。目は動物によってついている場所が違います。草食の動物の目がついている場所は、頭の横のほう。(中略)逆に、肉食の動物の目は前の方についています。(中略)指が何本あるかなど、足の形もさまざまです。馬は1本指、ウシやキリン、シカは2本指(さらに小さな2本の指をもつことも)、バクの後ろ足やサイは3本指です。鳥の場合は、前に向いている3本の指のほかに、後ろに向かって親指が1本ついているものがあります。(引用元:Study Hackerこどもまなび☆ラボ|「夏休みの自由研究」は動物園で。上野動物園おすすめの“調べ学習”のテーマとポイント)また、井内さんによると、家であらかじめ親子で本や図鑑を読んでおくと、動物や動物園について興味が深まるそうです。そして、園内を回るときには小さな図鑑を持って歩くと、実際に動物を見ながらいろいろと考えることができるのですって。博物館や科学館の見学で注意したいポイント●当日の持ち物は早めに準備行き先や日程が決まったら、下調べをしながら持ち物リストを作ります。特に必需品なのは、これらです。筆記用具、ノート飲み物カメラ、ビデオカメラ(撮影が許可されている場合に限る)水分補給用の飲みもの筆記用具は、ペンのインクやシャープペンシルの芯で展示物を汚さないよう鉛筆をもっていきましょう。ノートは下調べしたことや聞きたいことを先に書いておくと、現地でポイントを押さえながら見学できてスムーズです。●写真は撮影できるかどうか常に確認する写真撮影NGの会場が多いですが、最近は撮影OKのエリアやSNS用のフォトスペースなどを用意している会場も増えてきています。撮影可能なスペースを逃さないよう、写真が撮影できるかどうか常に確認しながら見学しましょう。また、撮影ができずレポートに貼れる写真がない場合には、会場で配られるパンフレットを切り貼りして活用するのもおすすめです。●水分補給は入館するまえに済ませる水分補給のための飲みものは、持参することをおすすめします。ただし、館内は飲食禁止というところがほとんどなので、入館前にしっかり水分補給しておきましょう。●大人はあまり口出ししない大人の視点から、つい「ほら、あれ見てごらん」「これも見ておくといいよ」と声をかけてしまいがち。しかし、「スーパー保育士」として子育てに関する研究・執筆・講演活動を行なっている原坂一郎氏は、ぐっと我慢することを勧めています。大人と子どもの視点は違いますし、子どもは子どもなりに関心を抱いたものを見て、感動や発見を覚えているのです。子どもがどんなことに興味をもって、何を見ているのかを優先してあげましょう。見学してわかったことをまとめるときのポイント博物館や科学館の見学内容は、次のようにまとめるとわかりやすくなります。調べようと思ったきっかけどんなテーマで見学したか見学する前の予想(テーマに対する仮説)博物館や科学館で調べて分かったことこの研究をしてみた感想見学先の施設情報(名称、場所など) 特に「博物館や科学館で調べてわかったこと」は、メインの内容でボリュームが大きくなるので、まとめるのも大変です。お子さんが途中で飽きてしまわないよう、写真やパンフレットを使って見てきたものを振り返ってみるなどのサポートをしてあげましょう。「自由研究がきっかけで博物館にハマった!」というお子さんは、「博物館の達人」を目指してみてはいかがでしょうか。全国の博物館を10回利用し、学んだことの記録と感想文を国立科学博物館へ提出すると、認定証をもらえる企画です。夏休みならではの楽しい思い出にもなりますね。「博物館の達人」について、詳しくはこちら。***博物館や科学館は、子どもの学びを深める最良の教材とも言えます。もし、アニメやマンガを調べたいとお子さんが言い出したとしても、「もっと研究にふさわしいものに」とテーマを変えさせないことが大切です。好きなことで調べ方を学ぶほうが意欲も高まりますし、仕上がりもきっと満足いくものになるでしょう。(参考)ベネッセ教育情報サイト|おもしろくて、ためになる!博物館の歩き方【前編】見学編ベネッセ教育情報サイト|おもしろくて、ためになる!博物館の歩き方【後編】自由研究活用編国立科学博物館|博物館の達人についてSHINGA FARM|4歳児から楽しめる! 子どもと国立科学博物館をまわる5つのポイントBusiness Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明ベネッセ教育情報サイト|親子で美術館・博物館に出かけてみよう!芸術の秋を親子で楽しみたい!【PR】
2019年08月01日夏休みの自由研究は、普段の生活ではなかなか取り組めないことにトライするいい機会です。家族旅行もそのひとつ。今年の夏休みは、家族旅行をまるごと自由研究のテーマにして、楽しみながら学んでみてはいかがでしょうか?今回は、家族旅行が自由研究に向いている理由と、実際に自由研究で取り扱うときに必要な準備や注意点、まとめる際のコツなどをご紹介します。家族旅行を自由研究にして、体験そのものを学びにつなげる子どもは長い夏休みに入りますが、親は仕事や家事が全部休みになるわけではありませんよね。そのなかで、皆の休みを合わせて出かける家族旅行は、親子一緒に過ごせる貴重な時間になります。もちろん、日頃の疲れを癒すためにゆっくり羽を伸ばすのも良いですが、この機会を生かして、お子さんの夏休みの自由研究に取り組んでみてはいかがでしょうか。遠出した旅行先の土地ならではの体験をテーマにして、お子さんに旅行先でのプランを立てさせるのもいいですし、前もって調べさせるだけでも十分な自由研究になりますよ。旅行を通じた子どもの教育が「旅育」と呼ばれていることを、ご存じですか?観光マーケティングを専門とする東洋大学の森下晶美教授は、「旅育」を「旅は人間性の成長を促すとする考え方で、旅によって得られる知識や興味・価値観の広がり、共感力を人の成長に役立てようとするもの」と定義しています。同教授いわく、旅育には以下の3要素が含まれているのだそう。①旅の体験(異文化・非日常体験、旅先での交流など)、②人との時間共有(家族・友人との共通体験、想い出づくり、日常と比較した共有時間の長さなど)、③旅を素材とした教育(職業教育、郷土教育、地理・歴史教育、国際化教育など)(引用元:日本国際観光学会|“旅育”の現状と定義を考える)学校で行なわれる社会科見学や修学旅行を家族単位で実施するのが「旅育」だと言えますね。家族旅行を自由研究にするならプランづくりからせっかく自由研究に家族旅行を取り上げるのですから、旅行プランを立てるところからお子さんも家族会議に参加させましょう。たとえば、次のような流れで準備を進めるのがおすすめです。旅行の日程と行き先を決めるパパ、ママ、子どもの行きたいところや休みがとれる日を調整して、旅行の日程と行き先を決めます。お子さんに家族の希望をヒアリングさせて、まとめてもらってもいいですね。どんなことを調べたいか決める旅先でどんなことを調べたいか決めます。インターネットで検索したり、図書館や書店でガイドブックを入手したりして情報を集めましょう。レポートでまとめられるよう、情報を集めた方法もメモしておくようにします。訪れる先を決め、下調べをする調べたいテーマにあった行き先を探します。ここでもインターネットやガイドブックを活用しましょう。行き先が決まったら、その施設についての下調べをします。どんな内容が調べられそうか、持ち物、営業日時、交通アクセス、大まかな所要時間や入館料などをメモに控えておきましょう。 たとえば、旅行先に合わせて次のようなテーマはいかがでしょうか。●海外旅行では……・旅行先の国の言葉で挨拶してみよう。英語は通じるかな?・古い建物を訪れてみよう。いつの時代に作られたのかな?・マーケットを探検してみよう。日本にある食べ物とない食べ物は?●国内旅行では……・道の駅や直売所をめぐって、旅行先の名産を調べよう。・旅の途中でお世話になった、はたらく人々(乗務員、駅員、フロントマン、土産物店員など)を特集しよう。・キャンプでごはんを作ろう。●帰省旅行では……・お盆の過ごし方(時期、お墓参りの仕方、仏壇へのお供えなど)を知ろう。・おじいちゃんやおばあちゃんの子ども時代の話を聞いてみよう。大がかりなテーマでなくても、十分自由研究になります。お子さんの興味に合わせてテーマを決めるのが、意欲的に取り組めるコツです。必要な情報を旅行先でゲットしよう旅の計画・下調べ・体験・わかったこと・感想などを書いておくノートは、持ち運びしやすい大きさがおすすめです。屋外で立ったままでもメモをしやすいよう、ノートの表紙はかためのものが良いですね。旅行先では、カメラやビデオ撮影ができるようなら、なるべくたくさんの写真や映像を残しましょう。加えて、ノートにスケッチやメモで感想を記しておくと、あとでまとめるときに便利です。観光地には、記念スタンプやパンフレットが置いてありますので、極力もらってくるようにしましょう。記念スタンプは専用の白い紙を持っていくと、あとでまとめるときに切り貼りが楽になりますよ。チケットの半券や切符なども、できるだけ保管するようにしましょう。旅行から帰ってきたら、こんなふうにレポートをまとめようレポートは、最初のプランづくりから次の順にまとめていきましょう。旅の行き先と日程、プランこの行き先を選んだ理由、テーマの説明どんなことを調べたか、わかったこと感想 ●A4サイズのポケットファイルが便利大きな模造紙や画用紙のスケッチブックにまとめるのも良いですが、コピー用紙にまとめて、同サイズのポケットファイルに収納してまとめるのはいかがでしょう。もし、まとめている段階で書き間違えてしまっても新しい紙に書き直して差し替えることができますし、追加で調べてわかった情報を加筆するのも簡単です。また、旅先でもらったパンフレットやチケット類も収納できますね。●ひとつひとつの項目を欲張らない楽しい思い出は、ひとつ残らず記録したいところですが、お子さんの集中力と相談しながらメリハリをつけてまとめていくように声かけしましょう。すべての項目にフルパワーで取り組もうとして、途中で息切れしてギブアップ!しないための大人のサポートは大切です。レポートをまとめるのが苦手だという人は、JTBが運営する「旅いく」の体験ノートを活用するといいでしょう。フォーマットは、サイトで会員登録(無料)するとダウンロードできますよ。「旅いく」のサイトはこちら。旅先で撮った写真やパフレット、スタンプなども活用して、オリジナリティあふれるレポートを作ってみませんか?***家族旅行を自由研究にする場合は、旅の前に調べ学習をしっかり行ない、帰ってきてからのまとめは簡単にするのがポイント。ギリギリまで大変な思いをしなくて済みます。楽しい思い出になるはずの家族旅行が、辛い自由研究の思い出にならないようにしたいものですね。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「旅育」が流行中!成功させる6つのメソッドと、季節別おすすめプランStudyHackerこどもまなび☆ラボ|旅の計画には “正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方日本国際観光学会|“旅育”の現状と定義を考えるStudyHackerこどもまなび☆ラボ|忘れてはいけない “旅の記録”。旅先での成功体験を思い出すたび「自己肯定力」が高まるママノート|夏休みの自由研究のテーマに“家族旅行”を活用してみよう!スクスクのっぽくん|夏休みの旅行やイベントは子供も計画から参加させよう!自由研究にも役立つ過ごし方JTB旅いく|体験ノート
2019年07月31日小学生の夏休みの宿題のなかで特に悩ましい、読書感想文。毎年夏休みが来るたび、どうすればいいか困ってしまう親子は多いはず。この記事では、夏休みの宿題の大定番・読書感想文の書き方(小学生版)を徹底解説します。本の選び方から原稿用紙への書き方、推敲の仕方、親のかかわり方、声かけの例まで、これを読めば読書感想文のお悩みは全部解決!読書感想文を初めて書く1年生や2年生はもちろん、もっと上手に書けるようになりたい3年生以上の小学生を持つ親御さんも、ぜひお読みください。読書感想文(小学生)の書き方:本選びから完成までの全体像ここからは、こどもまなび☆ラボの人気連載、文章力養成コーチ松嶋有香先生による「親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン」の内容をベースに、小学生の読書感想文の書き方を編集部がまとめて紹介します。■ 読書感想文が完成するまでの手順一覧まずは、読書感想文を完成させるまでの手順を確認しておきましょう。本を選ぶ本を読みながら付箋を貼る親子で対話して、子どもから感想を引き出す文を作る原稿用紙に下書きする見直して清書する → 完成!これが全ステップです。見通しをもって取り組んでくださいね。小学生の読書感想文は、「親子で」取り組むことをおすすめします。じつは、1年生から4年生までの小学生は、読書感想文の書き方をまだ学校では習っていません。学習指導要項では、5年生、6年生の国語で学習することになっているのだそう。読書感想文を初めて書く子どもや、読書感想文にまだ慣れていない子どもに、「さぁ好きな本を選んで書きなさい」と言ったところで、うまくいくわけがありません。親御さんの的確なサポートは不可欠なのです。■ 小学生が読書感想文を書くとき、親が必ず意識すべきこと子どもの読書感想文をサポートするにあたり、親が強く意識すべきことがあると松嶋先生は言います。それは次のこと。親ができることは、たった1つ。「子どものすることを否定しないこと」(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第1回:夏休みのラスボス、読書感想文※下線と色による強調は引用にあたり施した)「その本で読書感想文書くの?こっちの本にしなさいよ」「そんな感想じゃおかしいじゃないの」などと、子どもが選んだ本や言った感想にケチをつけてはいけません。やる気を削いでしまいますので、よく注意してくださいね。★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第1回:夏休みのラスボス、読書感想文■ 読書感想文に取り組む期間本選びから読書感想文の完成までに費やす期間の理想は、「1日1~2時間ぐらいずつ取り組んで、全体で約2週間」というのが松嶋先生の見解です。次の言葉にあるように、読書感想文は子どもが大きく成長するチャンス。短い期間で楽に片付けようと思わないで、親子で焦らずじっくり読書感想文に取り組むといいですね。読書感想文は、本をきっかけに自分と向き合う経験です。まずは、このことをしっかり受け止めてください。自分と向き合った気持ちを言葉に直すことが楽になると、嫌なことを嫌と言える子になります。本当の気持ちを説明できる子になります。(引用元:同上)読書感想文(小学生)の書き方:手順1. 本を選ぶさてここからは、読書感想文のノウハウを具体的に紹介していきます。まずは、本選び。松嶋先生いわく、読書感想文の本を選ぶときの鉄則は次の3つです。親子で「リアルの本屋」に行く子どもに「好きな本」を選ばせる子どもが選んだ本を、親は「否定しない」1. 親子で「リアルの本屋」に行くインターネットで本を買う大人は多いと思いますが、小学生の読書感想文の本は、必ずリアルの本屋に出向いて選んでください。子どもが実際に手に取りながら、お気に入りの1冊を見つけることが大事です。なるべく大きな書店に行くと選択肢が広がるので、なお良いといえます。2. 子どもに「好きな本」を選ばせる子どもには「好きな本を選んでいいよ」といってあげましょう。大人はつい「この本は感想文を書きやすいかどうか」を気にしてしまいますが、「子どもが興味を持っているかどうか」「子どもがその本を好きかどうか」のほうがずっと大事なのです。また、読書感想文の本といえば物語をイメージしがちですが、自然科学の本や写真集でもOK。実際、虫の写真集を読んで読書感想文を書いた小1の子が賞をとった例もあるそうですよ。『青少年読書感想文全国コンクール』の課題図書から選ぶべきなのかどうかも気になるところ。これについて松嶋先生は「お子さんが好きな本が、たまたま課題図書で選ばれた本なら、その本で良い」(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第2回:そうだ、本屋へ行こう!)とアドバイスしています。基本的には自由図書でいいようです。3. 子どもが選んだ本を、親は「否定しない」こうして子どもが選んだお気に入りの1冊を、親は絶対に否定してはいけません。子どもの選択が親の想定外だったり、「この本で大丈夫かな?」と心配になるような本だったりしても、「おもしろそうな本だね!」「楽しみだね!」と前向きに受け止めてあげましょう。子どものやる気がグンと上がります。★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第2回:そうだ、本屋へ行こう!読書感想文(小学生)の書き方:手順2. 本を読みながら付箋を貼る読書感想文を書く本を手に入れたら、次は本を読みます。ポイントは、本を読みながら付箋を貼ること。読んで「心が動いたページ」に、付箋を貼ってください。■ 付箋を貼る場所の例付箋を貼るべきページは、例えば次のような箇所です。お子さんに教えてあげると分かりやすいでしょう。「ああ、分かる」「へーそうなんだ」「わ、びっくりした」「最高!」など心が動いたところに、付箋紙を貼っていきます。また「なんで?なんでそうなるの?」「信じられない」「無茶だ」「ひどい!」そういうマイナスイメージでも構いません。(中略)「こんな気持ち、最低だ。言葉にしたくない……」そんな重症な場合も貼っておきましょう。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第3回:読書感想文を前提にした本の読み進め方※太字は引用にあたり施した)付箋を貼るときは、心の動きを表す言葉を付箋に書き込んでおいてください。また、付箋はあとで剥がしますので、ページ数を書くことも忘れないように。そして、一通り本を読み終えたら、付箋が貼ってあるページをもう一度読み直し、さらなる気付きがあれば付箋に書き加えてください。貼った付箋の数が多くなりすぎた場合や、似たようなところに付箋を貼った場合などの対処法などは、下記の記事で解説されています。★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第3回:読書感想文を前提にした本の読み進め方読書感想文(小学生)の書き方:手順3. 親子で対話して、子どもから感想を引き出す次は、子どもから感想をさらに引き出すプロセスに入ります。先ほど、子どもの心が動いた箇所に付箋を貼りましたね。その付箋にページ数が書いてあることを確認し、剥がしてコピー用紙などの白い紙に貼りましょう。そうしたら次は、子どもの心がなぜその箇所で動いたのか、親子で対話をしながら子どもの考えを深堀していきます。■ 子どもの感想を深堀する問いかけの例子どもから感想をさらに引き出すために、親は子どもに次のようなことを質問してみましょう。「なぜ、ここで感動したのか」「どうして、そこが気になるのか」「もし自分だったらどうするのか」「もし、魔法でストーリーを変えられるとしたら、どうしたいか」「どうして付箋に○○と書いてあるのか」(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第4回:自分と向き合う時間にこそ読書の意味がある※太字は引用にあたり施した)■ 子どもから感想を引き出す際の注意点この過程で子どもから出てくる言葉を、親は否定することなく素直に聞き入れましょう。そして、子どもが発した言葉をすべて、親が先ほどの白い紙にメモしていきます。そうすると、付箋「どうして心が動いたのか?」という質問子どもが話した答えがセットになった紙が何枚もできあがるはずです。まだ文になっていないメモ書きの状態で、子どもの感想の言葉がたくさん引き出されましたね。この紙のことを、以後「質問シート」と呼びます。なお、この対話のなかでもしも子どもからなかなか言葉が出てこなくても、きつく質問したり焦らせたりしないようにしましょう。またこの作業は、特に低学年の場合は、親子で対話をしながら行ないます。高学年の子で自問自答ができそうな場合は、子ども自身にさせてみても良いそうですよ。★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第4回:自分と向き合う時間にこそ読書の意味がある読書感想文(小学生)の書き方:手順4. 文を作る先ほどできあがった質問シートにある、「『どうして心が動いたのか?』という質問」と「子どもが話した答え」の2つをセットにして、文を作っていきます。文を作りながら、適宜言葉を足していきましょう。この段階ではまだ原稿用紙は使いません。引き続きコピー用紙などの自由に書ける紙を使います。■ 質問シートをもとにした感想文の作り方・例文の作り方について、松嶋先生が分かりやすい例を紹介しています。これは、『桃太郎』を読んだ子が「キジのことが心配だ」という感想を言っていた場合の例です。【質問シートに書かれた内容】質問「どうしてキジが心配だったの?」答え「ずっと役に立たないからいらいらした」【文の作り方】質問と答えをセットにする「ぼくは、キジが心配だった。ずっと役に立たないので、いらいらした。」言葉を足す「ぼくは、キジがずっと心配だった。ちっともみんなの役に立てないので、ちょっといらいらして見てた。」メモに残された言葉から、文章を肉付けする「犬は強いでしょ?猿は頭が良いでしょ?でもキジは何もできなかった」という会話をしていたなら、次のような文になる:「犬は、大きな声でワンワン吠えて、鬼をやっつけると思ったし、猿は頭が良くて手先が器用だから、すごく活躍すると思った。でも、キジは何もできないと思った。ぼくは、桃太郎がなぜキジをお供に選んだのか、ちょっと分からなかったくらいだ。」(「【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第5回:質問と答えをセットにしてみよう」より抜粋)■ 文章の肉付けのコツ上記のようにして文章を肉付けするときのコツのひとつに、オノマトペを活用するという方法があります。オノマトペとは、「ワンワン」「ドンドン」などの擬音語、「ひやひや」「ゆったり」などの擬態語のことです。また、つい使ってしまいがちな「うれしかった」「悲しかった」などの単純な言葉は、ぜひ別の言い方で表現してみましょう。そのためには親が問いかけを工夫してあげると、より具体的な感想文になりますよ。「例えば何の時みたいにうれしかったのか」「どんなふうに体が変化したの?」といった質問をして、言葉を増やしていきます。質問をすれば答えが出ますよね。その答えを書けば良いのです。「うれしくて涙が出た」「鳥肌が立つくらいうれしかった」など、自分の体の変化を書くといいでしょう。(引用元:同上※太字は引用にあたり施した)★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第5回:質問と答えをセットにしてみよう★表現力アップのコツは、文章術のプロ・山口拓朗さんによる連載「作文力の伸ばし方講座」でも解説されています。合わせてお読みください。オノマトペで作文の表現力を伸ばす――「富士山が“ジョジョッ”とあらわれた」でも間違いではない!?オリジナルの比喩で、表現力のある作文に激変――“それ” は “ほかの何” に見えるのか?読書感想文(小学生)の書き方:手順5. 原稿用紙に下書きする手順4で作った文を原稿用紙に書いていきましょう。でもまだ、この段階では下書きですよ。■ 読書感想文の書き出しのポイントまず気になるのは「書き出し」ですね。松嶋先生いわく、読書感想文の書き始め方のコツは次のとおり。読書感想文も(ブログと)同じで、採点者から見ると、結論が先に書いてあった方が食いつきやすいのです。(中略)なので、結論はもったいぶらずに、先に書いてしまうのがいいと感じます。また、結論を先に書く方法だと、あとに熱量が続きやすくなります。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第6回:やっと国語教師の出番です※カッコ内は引用にあたり補った)ここまででいくつか文章が出来上がっていますよね。それらのうち、子どもが特に強く抱いた感想を結論として、出だしに持ってくるようにします。親子の対話の過程で子どもから何度も発せられた言葉は何だったか、と考えるとわかりやすいでしょう。■ 結論を膨らませる結論から書き始めたら、適宜段落を変えつつ、結論に関係のあるエピソードや具体例を盛り込んでいきます。ここまでの過程で話題の違う文章がいくつかできているかもしれませんが、読書感想文に盛り込む文章は結論に関係のある文章だけです。結論と関係ない文を削ったことで文字数が少なくなったなら、残った文章にあるエピソードや自分の気持ちをより詳しく書いて、文章を肉付けしていきましょう。なお、いまは下書きですので、文と文がつながっていない「箇条書き」のようなスタイルでも大丈夫です。★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第6回:やっと国語教師の出番です★書き出しの工夫のコツ、ユニークな書き始めの例については、「作文力の伸ばし方講座」の記事も合わせてお読みください。「書き出し上手」は「作文上手」!作文を魅力的にする“書き出しのパターン”12選読書感想文(小学生)の書き方:手順6. 見直して清書する→完成!これで、読書感想文の下書きが一通り書けたら、次は推敲をします。一晩時間を置いてから、親子で一緒に文章を見直しましょう。■ 読書感想文の推敲のコツ推敲のコツは、音読をすること。松嶋先生は次のようにアドバイスしています。昨日書いた作文を読んでみます。声に出して読んでみましょう。声に出して読んでみて、気づくことがあれば、赤ペンで書いていきます。・こっちの文が先に来た方がいい、・この文はもう少し強調しよう、・この文はやっぱりいらない、そういう気づきはどんどん書き込みます。音読すると、不思議と、書き入れたい言葉や、書き直したい言葉が出てきます。また、ここまでの段階では文が箇条書きになっているのですが、文と文のあいだに入れたい言葉も自然に出てくるはずです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第7回:推敲の仕方)細かな表現の修正に加えて、構成そのものを変えたくなることもあるでしょう。その際は、文単独ではなく段落ごと移動させてください。そうしないとバランスが崩れてしまうそうですよ。これは低学年のお子さんには難しいので、親御さんのアドバイスが不可欠ですね。こうして下書きの原稿用紙に赤字を入れ終わったら、最後に新しい原稿用紙を用意して、清書をしてください。■ 読書感想文のタイトルのつけ方読書感想文の題名のつけ方も気になるところ。よくあるのは「○○○○を読んで」というタイトルですが、これではありきたりすぎます。松嶋先生によれば、8割の子がこの題名で読書感想文を書いてくるのだそう。子どもが自分の心と一生懸命向き合ってできた、その子にしか書けない読書感想文です。ここまでで使用した付箋のメモからキーワードを拾ってみるなどして、我が子らしいタイトルを一緒に考えてあげましょう。タイトルをつけ終わったら、これで読書感想文は完成です!★詳しい解説はこちら【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第7回:推敲の仕方【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第8回:ようこそ内省の世界へ★締め方の工夫のコツ、印象的な終わり方の例については、「作文力の伸ばし方講座」の記事も合わせてお読みください。作文の印象は “最後の一文” で決まる!――個性的な余韻を残す「締めくくり」のワザ読書感想文(小学生)の書き方:原稿用紙の使い方読書感想文の書き方を一通り解説しましたが、読書感想文の初心者や、作文そのものにまだあまり慣れていない小1・小2・小3・小4の子をもつ親御さんにとっては、原稿用紙の使い方も不安ですよね。原稿用紙で作文を書いたのは十数年前、という親御さんも多いはずですから、小学生の子どもに教える前にぜひ原稿用紙の使い方をおさらいしておきましょう。きちんとした体裁で書かれた原稿用紙は、読み手に良い印象を与えますよ。【1】題名読書感想文のタイトルは、1行目の上から2~3マスを空けて書きます。【2】氏名題名の次の行に、一番下の1マスを空けて書きます。姓と名の間は1マス空けます。学校名、学年を書く場合は、氏名の上にそれぞれ1マス空けて書きます。(学校やコンクールの要項に従ってください)【3】本文本文の書き始めや、段落が変わるときは、一番上を1マス空けます。【4】読点(、)・句点(。)テン(、)やマル(。)は、1マス使って書きます。句読点が行の一番上のマスに来てしまうときは、前の行の一番下のマスに、文字と一緒に書きます。【5】かぎかっこかぎかっこ(「」)は、1マス使って書きます。心の中で思ったことや強調したいことを書くときには改行せず、話したことを書くときには改行します。会話文を書く際は、一番上のマスに始まりのかぎかっこを書き、会話文の最後に終わりのかぎかっこを書きます。終わりのかぎかっこと句点は同じ1マスに書きます。話した内容が2行以上にわたるとき、2行目以降の一番上の1マスは空けても空けなくてもかまいません。【6】二重かぎかっこかぎかっこの中でさらにかぎかっこを使う場合は二重かぎかっこ(『』)を使います。書籍の名前を書く場合も二重かぎかっこを使います。原稿用紙の使い方(例)(画像は編集部にて作成)なお、学校名や学年などの記載法ほか書き方の形式については、通う小学校や応募するコンクールの決まりがある場合もありますので、必ずその指定を確認するようにしましょう。『青少年読書感想文全国コンクール』の応募要項はこちらから確認できます。***夏休みの読書感想文の宿題に真剣に取り組めば、子どもはたくさんの文章を書ける喜びや、一生懸命取り組み作品を完成させることの達成感を味わえます。何より、自分の心と徹底的に向き合うという、得がたい経験ができるはず。親御さんも、子どもの内面を知ったり成長を感じたりできることは間違いありません。ぜひ親子で一緒に読書感想文を書き上げましょう。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第1回:夏休みのラスボス、読書感想文StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第2回:そうだ、本屋へ行こう!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第3回:読書感想文を前提にした本の読み進め方StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第4回:自分と向き合う時間にこそ読書の意味があるStudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第5回:質問と答えをセットにしてみようStudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第6回:やっと国語教師の出番ですStudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第7回:推敲の仕方StudyHackerこどもまなび☆ラボ|【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第8回:ようこそ内省の世界へStudyHackerこどもまなび☆ラボ|オノマトペで作文の表現力を伸ばす――「富士山が“ジョジョッ”とあらわれた」でも間違いではない!?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|オリジナルの比喩で、表現力のある作文に激変――“それ” は “ほかの何” に見えるのか?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「書き出し上手」は「作文上手」!作文を魅力的にする“書き出しのパターン”12選StudyHackerこどもまなび☆ラボ|作文の印象は “最後の一文” で決まる!――個性的な余韻を残す「締めくくり」のワザNHK|NHK高校講座ベーシック国語第21回「原稿用紙の使い方」ベネッセ教育情報サイト|原稿用紙に書く
2019年07月30日学校から配られた課題一覧に目をとおし、なんとかテーマは決めたものの、なかなかどうしてここからが進まない……。「ほら、早く描いちゃいなさい」「えー、何描いていいのかわからないよ」なんて、夏休みのポスターが面倒くさい宿題のひとつになっているご家庭も少なくないのではないでしょうか。そんな悩みを解決すべく、今回は「絵が嫌いな子でも楽しく描ける!夏休みポスター」の描き方をご紹介します。アドバイスをくれたのは、筑波大学で日本画を学び、現在は、海外で子どもたちに「絵を描く楽しさ」を教えているYUKA先生。ご自身も、9歳と4歳の男の子のママです。親の手が入った絵は子どもを “失敗した気持ち” にさせるついつい、手も口も出したくなってしまう、低学年の夏休みのポスター。でも、絵に正攻法はないのです。だから、基本的には子どもの感性にまかせて描かせてあげるのが◎。「まずはね……」なんて、一から手順を説明しながらの制作は、あまりおすすめできません。なぜなら、そうやって親の手が入った絵は、どんなに上手に描けたとしても、「親の言う通りに描かされた」と感じたり、「僕(私)の絵はダメだったんだ」と、子どもを失敗した気持ちにさせてしまったりするから。そもそも絵を描くということは、創作活動ですから、子どもの好きなように描かせてあげるのが正解です。子どもの感性は、私たち親が考えている以上に豊か!好きにやらせてあげれば、その子の感性はもっともっと育っていくはずですよ。それに、楽しく描く時間があるからこそ、次の創作活動への意欲も続くし、自分に自信も持てるのです。とはいえ、「ねえ、何から描いたらいいの?」なんて質問があるかもしれません。今回はそんなときのための、“ちょっとしたコツ” をご紹介します。過去の入選作品を鑑賞する理由とは……!?まず、実際に描き始める前のポイントを。<1>応募するコンクールを親子で決める一学期最終日、学校から持ち帰ってきたプリントには、ズラ―っと応募可能なコンクールの詳細が書いてあるはず。お子さまと相談をして、どのコンクールに応募するかを決めましょう。「こっちのほうが描きやすいんじゃない?」なんてことは言わず、お子さまが描きたいものを選びましょう。<2>コンクールの詳細や過去の入選作品を確認子どもの作品がいくらすばらしくても、テーマ、生き物の選び方、画用紙サイズ、画材などが規格から外れてしまったら×です。募集要項をよく読んでおきましょう。また、昨年度の入選作品がネットなどで確認できる場合は、ぜひチェックして、どんなところがすてきか、親子で感想を語り合ってみてください。制作のヒントがたくさん隠されていますし、作品を鑑賞することで美術への興味が膨らむ機会になりますよ!今回は、生き物の絵画コンクールを例に挙げてみます。過去の入選作品を見てわかったことをまとめてみました。■入選作品はどれも画用紙中央に大きく生き物が描かれている。■多少バランスが悪くてもいい。■生き物の特徴をしっかり描けている。■人気の生き物ではない。■実際の生き物を手にとって観察したことがわかる。図鑑丸写しではない。■絵がうまい必要はない。(※ここ重要ポイントです!)<3>対象物を決めるもちろん、本人が描きたいものがあるときはそちらを優先します。しかし、「描きたいものがない」「何を描いていいのかわからない」などの場合は、「描きたくなるものを見つけるぞ~」と探しに出かけてみましょう。せっかくなので、みんなが見過ごしがちな生き物(コンクールによっては、植物など)を探してみてください。その他大勢が描く生き物と被らないことは、なかなか目を惹くと思いませんか?また、探し出した生き物は(可能であれば)自宅に持ち帰り、じっくり観察を。そして特徴を簡単にメモしておきましょう。メモはイラスト(スケッチ)でなくても、言葉でもいいですよ。親がメモしてもOKです。「背中の模様が顔に見える!」「見た目より羽がゴワゴワしてる」など、親子の会話で出てきた「生き物の印象や感想」も制作中のヒントになるのでメモします。このメモ作戦は、美大受験でも色彩構成の際に使うこともあるテクニックです。想像力が必要なとき、このメモを見るだけであら不思議!その言葉からイメージがどんどん膨らんできますよ。制作中、子どもが行き詰まったときにも、最初のインスピレーションを思い出させる言葉として有効です。すぐに使える【構図】【下図】【ぬり方】テクニック!画用紙を目の前にして、サラサラと描ける子はとても少ないでしょう。子どもが迷ってしまったときは、そっと背中を押してあげるようなアドバイスをしてあげてください。ここで気をつけていただきたいのは、あくまでも “アドバイス” だということ。絶対にこう描くべき、というのではありません。基本は、「子どもの好きなように」「子どもの感じたままに」描かせてあげてくださいね。全体の構図を考える一番のポイントは、描きたいものを、できるだけ大きく、真ん中に持ってくること。このとき、絵を見た人に「何を伝えたいのか」を考えましょう。たとえば、「トンボが空にたくさん飛んでいるところ」であれば、とにかくトンボを数多く描いたほうが伝わります。逆に、「トンボの目がどうなっているのか」を見せたいのであれば、画用紙いっぱいにトンボの目を描いてもおもしろいと思いますよ。ほかに、孔雀の羽の美しさを伝えたいのなら、羽に注力して1枚1枚描いてみてもいいですね。それからもうひとつ、じゃんじゃん誇張して描いてヨシ!生き物の特長や、描きたいものを目立たせたいと思ったときは「やりすぎかな?」と思うくらいドーンと描いてみるのがオススメです。下図を描くときの注意点下書きは、最初から細かく描き始めないのがコツです。鉛筆を軽く持って、あたり(線で大まかな位置決めをする作業)をつけてから描きましょう。消しゴムで何度も消すと画用紙が削れてしまうので、できたら一発描きにチャレンジしてみよう、と提案してみてください。集中力をキープできます。うまく描けなかった場合は、練り消しを使うと◎ですよ。そして、ときどき休憩を入れて「絵を離して見る」時間を作りましょう。夢中になって描いているときは、細かい部分しか見えていないことが多いので、客観的に作品を眺める機会を作るのです。画用紙の真ん中に描いてはいるけれど「なんだかたいぶ小さく描いてるな」といったときに、少し離れたところから絵を見てもらうと、全体を俯瞰で見られるので、描き足すべきところがイメージできます。観察・感想メモを見返してもいいでしょう。このとき、親が無理やり中断させてしまうと、子どものやる気を削いでしまうので注意です。悩んで手が止まったときを見計らって、声をかけてあげてください。また、「下書きは絶対!」としてしまうと、色を塗るときに「はみ出してはいけない……」と考えてしまったり、絵に勢いがなくなったりしてしまいます。制作途中でどんどん変えていくつもりで描き進めましょう。未就学児や小学校低学年であれば、クレヨンでの下書きもオススメ。クレヨンの油分は水彩絵の具をはじいてくれるので、にじむことなく簡単に塗り分けができますよ。色の選び方とぬり方色の選び方やぬり方の正解はひとつではありません。たとえば、「メモにあった “ワクワク” って、どんな色が似合うかな?」と提案してみてください。色選びに悩む子どもの選択肢が広がると思いませんか?もちろん、何色を選んでも大正解!自分で色を選ぶことで、「描かされている」という気持ちになりません。それに、我が子の “ワクワク” が何色なのか、親としても知りたいですよね。あるコンクールの受賞作品は、なんと赤色で暑い夏を表現し、真っ青な水と対比させる大胆な配色でした。こういった色使いは、たくさんの作品を一度に見ている審査員が近寄って眺めたくなるもの。上手な絵を描く必要はないのです。空だって土だって海だって、いろいろな表情がありますし、見る人によっては感じ方も違います。子どもが選んだ色が「大正解」なのです。子どもが一生懸命取り組んだ作品にはパワーがある未就学児や小学校低学年の子どもにとって、作品を制作することは、とてつもない集中力とエネルギーを要します。ですから、途中で疲れてしまったり、飽きてしまったりするのは当然です。そんなときは、描いている途中であっても、お子さまの作品のすばらしいところ、おもしろいところを “具体的に褒めて” あげてください。「上手だね」ではなく、「〇〇が本当に光っているみたいでいいね!」といった具合です。そして、「△△の特徴をもっと描き込んでみようか。お母さん見てみたいな」など、励ましながら制作を進めていきましょう。ぬり間違え、はみ出し、思ったとおりの形が描けない――それらは決して失敗ではありません。親子一緒に試行錯誤してみてくださいね。できあがりの作品だけでなく、悩んで楽しむ時間もその子の成長にとって大事な時間ですから。制作には根気がいります。だからこそ、うまい下手を超えて、一生懸命取り組んだ作品にはパワーがある。制作テーマについて、子どもとじっくり話し合ったり、実物を触って匂いをかいだり、テーマにまつわる歌を一緒に歌ったり、食材なら味見をしてもいいでしょう。私たち親ができることは、子どもからテーマについての興味を引き出し、制作意欲を高めてあげること。刺激から得た情報を、絵に表現するならどうしたらいいのかを、隣で一緒に考えてあげること。そんなスタンスで子どもに寄り添ってあげると、その子の作品は自主性のある、気持ちのこもったすばらしいものになるはずです。***夏休みのポスターに限らず、つい「上手に描けているかどうか」「正確に描けているかどうか」を気にしてしまう親御さまも少なくないでしょう。でも、子どもの感性で描いた作品が一番なのですね!好きなテーマを楽しみながら表現できた子は、きっと「絵を描くこと」が大好きになるに違いありません。今年のポスター制作が、お子さまにとっても親御さまにとっても、楽しい夏休みの思い出のひとつとなりますように。
2019年07月30日B君「女の子が喜んでいる」私「どうして女の子だと思ったの?」B君「髪が長いからだよ」私「他に女の子だと思えたことはある?」B君(作品を見直してから)「ピンクのワンピースを着ているから」私「なんで喜んでいるの?」B君「楽しそうな格好をしているし、周りにピンクのお花があるから」これは、Julia Wegenerというドイツのアーティストによる本作品について、私が子どもと行った対話です。はじめに子どもは結論めいた発言をしがちです。その後、私からこんな疑問を差し挟みました。私「髪が長いから女の子だと決められるの?」B君「髪が長かったり、ピンクのワンピースを着ていたりするから女の子だとは限らないかも」B君「表情をよく見ると、笑ってはいないので、喜んでいるとも限らないね」B君「髪が長いんじゃなくてかつらかもしれない、帽子かもしれない」私「なんでかつらや帽子かもしれないと思ったの?」B君「髪にしては、大きさや色、模様、形が変だから」B君「人間ではなくて妖精かもしれない」私「なんで妖精かもしれないと思ったの?」B君「雲みたいな白い空間に浮いていて、ピンク色の光の粒を出しているから」このように様々な見え方の可能性を考えながらも、色彩や丸みを帯びた形状などの全体の印象から、やっぱり女の子が喜んでいると結論づけました。親子で実践!7つの力を育む「対話型鑑賞」「観察力」「推論する力」「他者を受容して理解する力」「再考する力」「表現力」、そして「自ら学ぶ力」と「コミュニケーション能力」。これらの7つの力を育ててくれるのが、アメリカ発の新しい美術鑑賞教育法「対話型鑑賞」です。連載第1回目ではその効果を、第2回目では家庭での実際の進め方についてお話ししました。時には美術館で対話型鑑賞ワークショップが開かれることもありますが、地理的・時間的に制約のある方も多いでしょうし、プログラムの対象年齢に達していないお子さんもいるかと思います。ですが対話型鑑賞は、美術館に足を運ばなくても、ご家庭で気軽に取り組めるもの。ちょっとしたコツをおさえれば、年齢問わず、幼児から小学生以上のお子さんまで親子で簡単に実践できます。自宅のリビングで、家族みんなでアート作品を味わう。対話を通して子どもの思考の特性を知り、親子の絆を深める。日々の生活にそんな習慣を取り入れ、お子さんにとってアート鑑賞が身近なものに感じられるようになるといいですね。そこで第3回目となる今回は、対話のポイント、ご家庭で作品を鑑賞する時の場の設定、頻度や時間などについて、実践例と共にご紹介しましょう。論理的思考・非認知スキルを伸ばす対話のポイント冒頭の会話で私が行ったのは、子どもの発言を受け入れた上で、その理由を聞くことです。この問いかけにより、子どもは自分の思いや考えの根拠づけを行うという、論理的な思考を始めます。さらに他の理由を尋ねることによって、複数の根拠を立てるようになります。同時に、作品を注意深く見直し、他の見え方の可能性を探り、再考することを学びます。最終的には自分自身の見え方を保持しつつ、他の可能性にも目を向けられるようになっていきます。対話を重ねるうちに、子ども自らが進んで発言の根拠を語り始めるようにもなります。こうした鑑賞を通した対話の積み重ねによって、子どもの論理的思考力を引き出し、促していきましょう。論理的思考の芽生えを見守ってあげることが、子どもの非認知スキル、自立的に学ぶ力、メタ認知能力、コミュニケーション・スキルを培うことにつながっていきます。ちなみにこの作品には、子どもには馴染みがないと思われる文字(ロシア語)も記されています。どんなことが書かれているのか子どもと一緒に想像してみるのも一興かと思います。親子双方にメリットが!コツは子どもの視点をたどることそれでは、対話のポイントを踏まえて、実際に親子で対話型鑑賞に挑戦してみましょう。今回は、アーティスト金燦さんによる作品のカードを使います。この4枚を見てください。お子さんからどんな発言が得られるでしょうか?鑑賞するとき、まず親御さんに心がけていただきたいのが、子どもに寄り添うこと。できる限り、子どもと同じ視点で作品を鑑賞することをお勧めします。子どもの視点の移動を一緒にたどることで、その子の関心の向け方や思考の動きを知ることができるからです。お子さんの言葉を受け止め、理解を示してから、「なぜそう思ったの?」と問いかけてあげましょう。お子さんの最初の見方とその根拠、対話を通して見つけた様々な可能性、そして導き出した最終的な結論……。我が子の思考の過程を知ることは、その子自身をより深く理解することにつながります。一方お子さんは、愛するご両親の庇護のもとで、作品の世界を自由に旅するような安心感を得るでしょう。心地良い空間の中で、自由な感性を最大限に発揮して、芸術鑑賞を楽しむことができるようになるのです。作品の向きを変えると見え方が変わる!?前回、メトロポリタン美術館やシカゴ美術館の無料オンラインサービスから、約45万点の所蔵作品が楽しめるとお話ししました。このようにネットから得られた作品は、プリントアウトして鑑賞することをお勧めします。なぜなら、作品を指さして確認したり、作品の向きを変えたり、立ててみたりすることで、見え方が変わってくるからです。子ども達は、自発的に作品の方向を変えて見たり、作品の周囲を回って見たりして、様々な角度から作品を探究するようになるでしょう。例えば、先ほどご紹介したアーティスト金燦さんによるカードを子ども達に渡して、鑑賞してもらいました。すると子ども達は、カードの向きを変えたり組み合わせたりして作品の意味を探ると同時に、新たなストーリーを紡ぎだし、別の作品として仕上げたのです。作品を注意深く観ると同時に、表現することも始めるのですね。子どもだけではなく、全ての人間にとって、鑑賞と表現は表裏一体の行為なのです。週に1度、10分間を美術鑑賞に捧げよう親子での鑑賞の頻度に決まりはありません。ですが、1週間に1回など、定期的に行うことが理想です。1つの作品の鑑賞にかける時間も、作品や子どもの関心の向け方によって異なりますが、少なくとも10分から20分程度はかけたいですね。親子間の対話が途切れても、作品を観続けることに意味があります。じっくり時間をかけて鑑賞を楽しみ、子どもの新たな発見を待ちましょう。3~4作品を続けて鑑賞するのがおすすめ◎特にお勧めするのは、コンセプトを決めて、1回の鑑賞で3~4作品を続けて観ることです。同一のコンセプトの作品を続けて観ることで、作品同士の比較が自然に行われるため、関係性を把握しやすくなります。子どもの観察力が高まり、思考が刺激され、親子の対話の質も深まるでしょう。さらに、作品に対する感じ方や思考の過程を連続して紐解いていくことで、子どもの感覚・思考の特徴やその変化が手に取るようにわかり、親御さんとしても子どもの成長を感じやすくなるはずです。作品のコンセプトの組み方コンセプトの組み方としては、2つのパターンがあります。■同じジャンルで統一する→ジャンル例:人物画、肖像画、風景画、静物画、抽象絵画■テーマ(題材)で統一する→同一のテーマについての複数の異なるアーティストによる作品群例えばテーマを、新約聖書からの題材「受胎告知」にするとしましょう。これは古くから人気のテーマで、数々の芸術家たちに好まれて描かれてきました。先日はルネサンス期のイタリア人画家フラ・アンジェリコ、サンドロ・ボッティチェリ、クレタ島出身のエル・グレコの3人のアーティストによる「受胎告知」の3作品を、子ども達と鑑賞しました。テーマは共通していますが、異なるアーティストからは全く異なる作品が生まれます。描かれている人物の姿勢・表情・衣裳、場所・物、作品の構図、色彩の共通点、相違点など、対話の話題は尽きることがありませんでした。そして最終的には、描かれた人物像や出来事に関心が移っていきます。子どもの発言を肯定し、優しく問いかけて親御さんの中には、親子で作品を鑑賞したときに、子どもと話すことが見つからなかったらどうしよう、と不安に思う方もいるかもしれません。でも心配はいりません。お子さんはきっと、作品を見て感じたこと、思ったことを、胸の内にたくさん秘めているはずです。そして親御さんは、ただお子さんの思いを受け止め、考えを深めるためのサポートをしてあげるだけでいいのです。まずは、お子さんの言葉を復唱して、理解を示すこと。その上で「なぜそう思ったの?」「どう感じたの?」と問いかけること。子どもの発言を肯定し、思考をそっと引き出してあげることが、ファシリテーターとしての大人の役割です。前回ご紹介した5つのおすすめ画像入手方法を参考に好きな作品を見つけ、ぜひご家庭で対話型鑑賞に挑戦してみてください。次回は絵画以外の作品、写真や絵本、文字情報の鑑賞、そして表現力を高める対話の具体例をご紹介します。※Julia Wegener、金燦による作品画像は、それぞれのアーティストから許可を得て使用しています。個人の鑑賞以外の用途の使用はできませんので、ご注意ください。
2019年07月29日夏休みの自由研究の最大の難関、テーマ選び。今まさにテーマ選びに悩んでいるお子さまたちのために、連載『まなびの本棚』でおなじみの“本選びのプロ”日販図書館選書センターが、とっておきの自由研究本を選んでくれました。1年生、2年生のころのように「ただ好きなもの、興味のあるものについて調べる」だけではなく、3年生からは一歩進んでより深い学びにつなげることを目標にしてみませんか?この自由研究をきっかけにして、高学年以降の学習への意欲を高められるようになれば、より充実した夏休みになるでしょう。☆1・2年生向けはこちら→“自由研究本”パーフェクトガイド for 1・2年生『小学生の自由研究パーフェクト3 . 4年生』(成美堂出版)成美堂出版編集部(編)自由研究のやり方からまとめ方まで、全28テーマをわかりやすく解説しています。小学校3年生・4年生のレベルに合ったものが見つかるので、お子さん自身もやりがいを感じられるはず。知らなかったことを知る喜びを覚えれば、高学年からの学習との向き合い方も変わるかもしれませんね。選書センターコンシェルジュより夏休みの自由研究、テーマ探しに苦労していませんか?「何をやったらいいんだろう?」「やりたいことが見つからない……」と悩んでいるお子さんは、まずこちらを参考にしてみてはいかがでしょう。「実験」「工作」「観察」「調査」の4つのテーマ別に幅広いアイディアが載っているので、 やってみたいものや興味を引くものが見つかるはずです。とくに「観察」「調査」は、毎日の天気や食事などの日常生活にまつわることも、継続して調べると立派な研究につながると気づかせてくれます。『小学生の自由工作パーフェクト高学年(4 . 5 . 6年)編』(成美堂出版)成美堂出版編集部(編)遊べる工作、動きが楽しい工作、飾って自慢できる工作をたっぷり紹介した1冊です。高学年向けなので少し難易度が高めですが、難しい工作にチャレンジしたい、夏休みだからこそ時間をかけて物づくりをしたい、というお子さんにおすすめです。選書センターコンシェルジュより夏休みは工作をしよう!と決めているお子さんにはこちら。「遊べる」「動く」「かざる」といった目的別に、さまざまな工作のアイディアが紹介されています。お家にある材料や100円ショップで手に入る道具で作れる点もポイント。所要時間と難易度の目安が示されているので、腕に自信のある方はぜひ難しい工作にチャレンジしてみてください。材料から探せる索引も便利です。『図書館版 発酵菌ですぐできる美味しい自由研究』(あかね書房)小倉 ヒラク(著)子ども向けの麹づくりや味噌づくりのワークショップを開催するなど、発酵をテーマに活動する研究者・小倉ヒラクさんによる自由研究本です。簡単なものから難しいものまで掲載しているので、どの世代でも気軽に挑戦できる内容になっています。出版社より著者の小倉ヒラクさんは、“発酵の展覧会”を開いた注目の人です。発酵菌を育てて、ヨーグルトから天然酵母のパンまで身近でおいしい食べ物を作り、自由研究にまとめる方法を紹介します。可愛らしい手描きのイラストでわかりやすく解説しています。『理系アタマがぐんぐん育つ 科学のトビラを開く!実験・観察大図鑑』(新星出版社)ロバート・ウィンストン(著)著者・ロバート・ウィンストン博士は有名な科学者です。この本では、実験がうまくいかなくても、「次はどうしたらうまくいくだろう?」と新しい方法を思いつく思考力を育ててくれます。科学に興味のある子どもはもちろん、そうでない子どもにもおすすめの1冊です。出版社よりこの本で紹介する実験は、庭、バルコニー、公園、森の中など、私たちの身のまわりに目を向けたものばかり。水の動きやはたらきがわかる実験、天気を観測したり記録したりする実験、植物の成長や動物の行動について深く知る実験……、自然界から学べることは山のようにあるとわかるでしょう。この夏休みは自由研究をきっかけにして、自然の中でいろいろ挑戦してみて!『つくって遊べる!小学生のおもしろ工作 3・4年生 自由工作にぴったり』(メイツ出版)立花 愛子・佐々木 伸(著)3年生〜4年生くらいの小学生は、身近な大人の趣味や創作の世界に触れることで、大きな成長をします。大人と一緒に集中する時間を過ごし、自分の手を動かしながら工夫して何かを作り上げることは、自分自身と向き合う貴重なひとときです。親子で一緒に工作に取り組み、作ったもので一緒に遊ぶことは、これから高学年へと成長する子どもたちにとって、かけがえのない思い出になるでしょう。出版社より★工作が苦手な子どもでも作れる「かんたん工作」★ちょっと難しくても大人と一緒なら大丈夫「チャレンジ工作」★ペットボトルや空き箱をリサイクル利用した「リユース工作」作ったあとも「遊べる」「飾れる」「使える」、楽しいアイデア30種類をわかりやすく解説します!
2019年07月28日かつてはモーツァルトや宮沢賢治、現在ではスティービー・ワンダーなどが所持しているといわれる「共感覚」という現象をご存じですか?じつは、共感覚は赤ちゃんなら誰でも持っているものなのだそう。今回は、共感覚の概要や具体例、メリットやデメリットについてご紹介しましょう。共感覚とは?共感覚(シナスタジア)とは、ひとつの刺激に対して、1種類の感覚のみでなく、ほかの種類の感覚も覚える知覚現象のことを指します。いくつかの感覚が混合するようなイメージです。代表的なのは「『大きい』は赤、『小さい』は青」など「文字に対して色を感じる(色字)」、「パトカーのサイレンの音は黒、消防車のサイレンの音は黄色」などと「音が聞こえると色を感じる(色聴)」といった現象です。その他、痛みに対して色を感じたり、数字に対して香りを感じたりと、さまざまなバリエーションがあるのだそう。自身も共感覚者であり、共感覚に関する論文を多数発表してきた関西学院大学理工学部の長田典子教授は、文字に対する感じ方について次のように述べています。ひらがなやアルファベット、数字、それから画数が少なければ漢字にも色を感じます。たとえば『あ』は赤で、『い』は白、『う』は白に近いグレーという具合に、それぞれの文字に色を感じるんです。数字だと、1は白、2はオレンジ、3は水色……と、やはり数によって違う色を感じます。(中略)色の見え方や感じ方は、共感覚者によって違います。『目の前にべったり色が見える』という人もいますが、私の場合は、このあたり(言いながら後頭部を両手で覆う)に色が浮かぶんです。目の前にはっきり『見える』というより、頭の中に『感じる』。(引用元:現代ビジネス|「共感覚」の持ち主には、世界がこんなに違って見えていた)赤ちゃんは共感覚を持っている!?視覚と聴覚、嗅覚と味覚など、複数の感覚が作用する共感覚ですが、じつは、赤ちゃんの頃は誰もが共感覚を持っているという説もあります。赤ちゃんの脳は、視覚や嗅覚などの感覚を個別に処理する機能が未熟で、視覚や嗅覚が混在するケースがあるためです。ワシントン大学心理学部教授のアンドルー・N・メルツォフ氏は、生後1カ月の赤ちゃんを対象に、共感覚にまつわる実験を行ないました。その内容とは、表面がツルツルのおしゃぶりとボコボコのおしゃぶりのいずれかを、赤ちゃんに見えない状態でくわえさせたあと、赤ちゃんにそれら2つのおしゃぶりを見せるというもの。その結果、多くの赤ちゃんは自分がくわえていたほうのおしゃぶりをじっと見つめていたといいます。このことから、赤ちゃんは口からの触覚情報から視覚情報を得ており、2種類の感覚を共有している共感覚者だといえます。脳が成長するとともに、それぞれの感覚野をつないでいた経路が遮断されて共感覚を失うことがほとんどですが、中には経路が遮断されることなく大人になっても共感覚を持ち続ける人もいるのです。共感覚を持っていることのメリット文字に色がついて見えたりする共感覚は、物事を記憶する手助けになることが多いそうです。そのため、共感覚がある人は記憶力が良い傾向にあります。前出の長田教授は、歴史の年号や電話番号を数字から感じる色の配置で覚えていたそう。たとえば、「1192」は「白・白・赤茶色・オレンジ」なのだとか。また、「いいくに」としてしまうと、平仮名から感じる色の配色が「白・白・白・黄色」になってしまい混乱するため、語呂合わせは好まないのだそう。また人の名前も、文字から感じる色を手がかりに覚えられると言います。ちなみに、暗算や暗記、言語習得能力に非常に優れていることで有名なダニエル・タメット氏も共感覚所持者です。彼は、色を使って円周率を22,514桁まで暗記しているのだそう。共感覚者ならではの悩みも共感覚がある人のことを、「数字や文字が楽に記憶できてうらやましい」と感じた方も多いかもしれません。しかし、共感覚者ならではの悩みもあるのだそう。東京大学大学院教授で共感覚研究の第一人者である横澤一彦氏いわく、数字に色がついて年号が覚えやすいとしても、たとえば5と8が同じ色に見える人の場合は「358」と「355」を混同してしまうことがあるのだそう。このようなデメリットがある点から、共感覚を持っていることは特段大きなメリットにもデメリットにもならないだろうと言われています。共感覚が記憶力をサポートすることは確かにありますが、逆に邪魔してしまう場合もあるのです。横澤氏によると、かつて共感覚者は10万人に1人という珍しいケースで、芸術家や天才に多いとされてきたものの、最新の研究では100人に1人程度の割合で存在することがわかってきたのだそう。しかし、共感覚を持っている本人が「自分は人と違うのではないか」「なぜ自分だけが文字に色がついて見えるのだろう」と悩み、共感覚を持っていることを隠すケースが珍しくないため、共感覚者への理解や周知は進んでいないのが現状です。もし自分の子どもが共感覚者だったら?子どもが共感覚であった場合、子育てをするなかで親が戸惑ってしまうこともあるようです。『日本共感覚研究会』を立ち上げ、共感覚の研究を行なう岩崎純一氏のもとには、「小学生の息子が『この算数の問題はショートケーキの味がする』と言うんですが、私はこれからこの子をどう育てていけばいいのかわからない」と、共感覚の子どもを持つ親からの悩みが寄せられたことがあるそう。岩崎氏は、もし子どもが共感覚を持っていることがわかったら、肯定的に考えることが大切だと述べています。「病気だと構えないで、もしかしたら生かせる道があるかもしれないと肯定的に考えてほしい(中略)だって、“このケーキの味がする時は、答えが正解の時だ”なんてことになれば、共感覚は役立つかもしれませんから」(引用元:NEWSポストセブン|文字に色がついて見える共感覚者の親は「天才かも」と考える)もし子どもが「1が赤い」「犬の鳴き声が黄色い」など、共感覚者ならではの発言をしたら、否定せずに受け止めてあげることが大切だといえるでしょう。***共感覚者ならではの物の見方や感じ方は、共感覚がない人にとってはなかなか理解しがたいものです。しかし、その独特の感性が、生きるうえで役立ったり、得意分野を伸ばしたりすることにつながる場合もあります。もし子どもが共感覚を持っていたら、その子の個性としてしっかり認めてあげましょう。文/田口 るい(参考)保育のお仕事レポート|知ってる?色覚も視野も大人と全く違う!子どもの世界の見え方とは現代ビジネス|「共感覚」の持ち主には、世界がこんなに違って見えていたNEWSポストセブン|激レアと思われていた共感覚者じつは100人に1人程度NEWSポストセブン|文字に色がついて見える共感覚者の親は「天才かも」と考えるリスタ!|「共感覚」の不思議な世界と誰でもできる簡単トレーニング法imidas|なぜ音や文字に色が見えるのか?
2019年07月28日「子どもが我慢できなくて困っている」という悩みを抱える親は多いものです。しかし、我慢には、子どもにとって良い影響をもたらすものと、そうでないものがあることをご存じですか?今回は、子どもの成長に欠かせない我慢と、子どもをダメにしてしまう我慢についてご紹介しましょう。「我慢できる子ども」は将来伸びる!生きていくうえで、我慢しなければならない場面は多々存在します。スーパーで買い物をしてレジの行列に並ぶときや、車の運転中に赤信号で止まるとき。怠けたくても学校や会社に行かなければならないときや、人間関係……。もし我慢ができなければ、多くの人に迷惑がかかったり、事故やトラブルが起こったりするのは当然。子どものうちから我慢することを覚えるのは、協調性を育てて周囲の人々と良好な関係を保つために、そして社会の一員として生きていくために、欠かせないことなのです。また、米コロンビア大学の心理学者ウォルター・ミシェルが考案した「マシュマロ・テスト」という実験では、我慢と学力に関係があることが示されています。この実験は、186人の4歳児の目の前に1個のマシュマロを置いた状態で「しばらく我慢すればマシュマロを2個食べられるけど、もし今すぐにマシュマロを食べてしまったら2個目のマシュマロは食べられないよ」と告げたあとの様子を観察し、自制心の高さを測るというもの。その結果、マシュマロを食べることを我慢して2個目のマシュマロを獲得できた子どもは、全体の2~3割しかいませんでした。そして、マシュマロ・テストを受けた子どもたちが22歳になるまで追跡した結果、当時我慢できた子どもは我慢できなかった子どもに比べて、青少年期に問題行動が少なく、アメリカの大学入試で標準的に用いられているSAT(大学進学適性試験)で平均より高い点数を取っていたことがわかったのです。また、成人後の肥満指数が低く危険なドラッグなどに手を染めていない、さらに対人関係が良好で自尊心が高いとの報告もありました。幼少期に我慢できるかどうかは、その後の人生に大きくかかわってくるといえるでしょう。しなくてもいい我慢、させてない?しかし、子どもの我慢する力を育てたいからといって、何でも我慢をさせればいいというわけではありません。文京学院大学大学院特任教授の平山許江氏によれば、子どもに我慢をさせすぎると、次第にやる気を失い、「やりたい!」という気持ちや意欲が減退してしまうのだとか。やりたがらなくなってしまった子どもに「やりなさい」と促すのは、やりたがる子どもを「やめなさい」と制するよりも難しく、成長に支障をきたす恐れもあると言います。何でもかんでも我慢をさせることは、子どもにとってストレスです。「あれもダメ」「これもダメ」と妥協させられ続けた子どもは、「どうせきっとこれもダメなんだろう」と諦めてしまい、意欲を失い、主体性が損なわれていきます。自分の欲求を我慢するのは、大人でも難しいですよね。幼い子どもにとってはもっと難しいもの。子どもの意欲を殺さずに、我慢する力を育てるためには、子どもに合わせた我慢の度合いを考え、時には我慢しなくてもいい環境を与えてあげることも大切なのです。子どもが伸びる我慢・子どもをダメにする我慢我慢のなかには、「子どもでも必ずしなくてはいけない我慢」と「子どもにとって悪い我慢」があります。しなくてはいけない我慢は、子どもが伸びるきっかけにもなる大切な要素です。まずは、子どもが伸びる我慢についてご紹介しましょう。精神科医で評論家の和田秀樹氏は、我慢が伸ばす3つの力について次のように述べています。◎こんなことをしたらカッコ悪いと考えて我慢する→社会性が伸びる和田氏いわく「おもちゃを買ってもらえないから、泣いて駄々をこねたい。でも、周りの人に笑われるから、できない」「すごく楽しくてはしゃぎたい気分だけれど、今は電車の中だからそんなことをしたら恥ずかしい」などの「こんなことをしたらカッコ悪い」という感覚が自分を高めたいという欲求につながり、我慢する力が育っていくのだそう。こうした経験を重ねるうちに、人の目を意識するようになり、社会性が育っていきます。 ◎相手の気持ちを想像して我慢する→思いやりの心が育つ集団生活を送るなかで、時に失敗を重ねながら「こんなことをしたら○○くんは怒るだろうな」「これを言ったら△△ちゃんは傷つくな」ということを覚えて、自分の感情をコントロールできるようになると、相手の立場を考えた思いやりのある行動ができるようになると和田氏は言います。親はどうしても子ども同士のケンカや争いを避けようとしがちですが、子どもはこれらを通して我慢することを覚え、思いやりの心を育てるのです。 ◎我慢することで「ひとりでできた!」という快感を覚える→自立心が育つたとえば、小さい頃はオムツが必須ですが、ある程度成長すると、一定時間我慢してからおまるやトイレで用を足せるようになりますよね。すると、親御さんが「よくできたね!」と褒めてくれます。和田氏いわく、このとき子どもは「お母さんに頼らずに自分の力でできた!」という自立の快感を味わうのだそう。子どもは、その快感をもっと味わいたいためにまた我慢し、さらに自立の快感を味わう……というループで、我慢する力と自立心を伸ばしていきます。そのため、我慢と自立には、親が褒めてあげることが欠かせません。子どもが我慢できたら、きちんと褒めてあげましょう。 一方の「子どもにとって悪い我慢」について、東京家政大学ナースリールーム主任の井桁容子氏は以下を挙げています。×大人の都合で子どもを我慢させる自宅では許していることを、ほかの人に「だらしない親だ」と思われたくないがゆえに、人前でだけ「ダメ」と叱ったことはありませんか?普段なら許していることを、イライラして「ダメ」と禁じたことはありませんか?このように、大人の都合で我慢させるのはNGです。子どもには、大人の都合はわかりません。井桁氏いわく「あるときは良いけど、あるときはダメ」と対応を変えると子どもは混乱し、その行為が良いことなのか、我慢するべきことなのかわからなくなってしまうそう。 ×威圧的に「ダメ」と我慢させる「子どものため」「しつけ」という理由でなんでも「ダメ」と我慢させたり、子どもがやりたがらないことを無理にやらせたりすることはNGです。なぜダメなのか、子どもがきちんと理解できなければ、禁止してもまた同じことを繰り返してしまうでしょう。威圧的に我慢させるのではなく、「なぜダメなのか」「なぜやらなければならないのか」を説明してあげることが大切だと、井桁氏は言います。反対に、理由を説明できないものは我慢させるべきではないと言えますね。 ×人のせいにして我慢させる「店員さんに叱られるよ」「あのおじさんが怒ってるよ」「先生はこう言ってたよ」など、第三者のせいにして叱ったことはありませんか?このように、親以外の誰かのせいにして我慢させると、子どもは「その人の目の届かないところならやっていい」と解釈してしまい逆効果です。なぜダメなのか、親自身の思いを説明してあげなければ、我慢ができるようにはなりません。 井桁氏によると、こうした悪い我慢を強いられた子どもは、無気力になったり、人間関係がうまく築けなかったり、自分の感情をうまくコントロールできなくなったりする可能性があるそう。子どもに悪い我慢をさせていないか、親は日頃の言動を振り返ってみることも必要ですね。***我慢は生きていくために大切なことではありますが、状況や言い方によっては悪影響を及ぼす場合もあります。子どもに我慢を教える際には、それが子どもにとって本当に必要な我慢なのかどうかを考えてみることも大切でしょう。文/田口 るい(参考)こどもまなび☆ラボ|我慢ができない子どもは “親の愛” を試してる!?「自制心」が育つ親の言葉こどもまなび☆ラボ|「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは “○○上手な親” だった!PHPファミリー|子どもにさせていい我慢、わるい我慢PHPファミリー|わるい我慢をさせてない?子どもに我慢を教えるコツPHPファミリー|「我慢する力」は、どう育まれるのかPHPファミリー|子どもを我慢させる時、受け止める時東洋経済オンライン|「おやつの我慢勝負に勝つ子」が優秀なワケベネッセ教育情報サイト|小学校以降の成長のベースとなる「我慢をする力」は家庭で伸ばす!【前編】
2019年07月27日「今年こそは自由研究を早めに終わらせるぞ!」と意気込んでいたものの、いざ夏休みが始まると楽しいイベントや遊びの予定が満載で、結局8月後半になってあわてて取りかかることに……。そんな経験、ありませんか?どちらかというと苦手意識を持つ人が多い自由研究ですが、テーマさえ決めてしまえば、あとは順序立てて進めていくだけ。そう、自由研究の最大の難関は「テーマ選び」なのです。そこで、今まさにテーマ選びに悩んでいるお子さまたちのために、連載『まなびの本棚』でおなじみの“本選びのプロ”日販図書館選書センターが、とっておきの自由研究本を選んでくれました。きっと「これだ!」とひらめくヒントを与えてくれますよ。☆3・4年生向けはこちら→“自由研究本”パーフェクトガイド for 3・4年生(※近日公開予定)『おまかせ自由研究&調べ学習』(朝日学生新聞社)朝日小学生新聞編集部(編)自由研究や調べ学習で何をすればいいのか、どうやって進めればいいのわからない小学生にぜひおすすめの一冊。『朝日小学生新聞』に掲載された記事をもとに、実験や観察を上手に進める方法や具体的な観察の仕方など、30項目に分けて紹介されています。出版社より夏休みの宿題で一番悩ましいのは「自由研究」。そのお手伝いをしたい!と『朝日小学生新聞』の記者が専門家に取材した記事をまとめた本です。進め方や検索術も紹介しているので、「やり方がわからない」「できるか心配」という人にも安心です。全ページカラーで、バラエティーに富んだ題材を選んでいますので、まずは気軽にページをめくって、興味のあるものをさがしてみてくださいね。『小学生の自由研究パーフェクト1 . 2年生』(成美堂出版)成美堂出版編集部(編)1、2年生のレベルに合ったテーマの見つけ方から発表の仕方まで教えてくれる低学年向け自由研究本の決定版!身近なものを使ってできる実験や、みんなで遊べる工作など全28テーマを、小学生にもわかりやすく写真やイラストを使って丁寧に解説しています。選書センターコンシェルジュより夏休みの自由研究、テーマ探しに苦労していませんか?「何をやったらいいんだろう?」「やりたいことが見つからない……」と悩んでいるお子さんは、まずこちらを参考にしてみてはいかがでしょう。「実験」「工作」「観察」「調査」の4つのテーマ別に幅広いアイディアが載っているので、 やってみたいものや興味を引くものが見つかるはずです。とくに「観察」「調査」は、毎日の天気や食事などの日常生活にまつわることも、継続して調べると立派な研究につながると気づかせてくれます。『小学生の自由工作パーフェクト低学年(1 . 2 . 3年)編』(成美堂出版)成美堂出版編集部(編)牛乳パックや段ボールなど身近な材料でできる工作を48アイテム紹介しています。身の回りにあるものを使って作り出す驚きのアイテムの数々に、きっと子どもたちも夢中になるはず!選書センターコンシェルジュより夏休みは工作をしよう!と決めているお子さんにはこちら。「遊べる」「動く」「かざる」といった目的別に、さまざまな工作のアイディアが紹介されています。お家にある材料や100円ショップで手に入る道具で作れる点もポイント。所要時間と難易度の目安が示されているので、腕に自信のある方はぜひ難しい工作にチャレンジしてみてください。材料から探せる索引も便利です。『こどもが探せる 川原や海辺のきれいな石の図鑑』(創元社)柴山 元彦・井上 ミノル(著)大人気ガイドブックシリーズに待望の子ども版が登場!水辺で見つけられる鉱物を、現地で見くらべやすい原石のままのすがたで紹介しています。シリーズ最多の40種の鉱物図鑑に加え、子どもを連れて出かけやすい全国の石の採集スポットを20ヶ所紹介しているので、この本を片手にぜひ家族で探しに行ってみませんか?出版社よりルビー、サファイア、ガーネット……あこがれの鉱物や宝石は、実は身近な川原や海辺でも見つけられるんです!鉱物の分類や拾い方をマンガでわかりやすく解説しているので、大人から子どもまで石探しを楽しめる一冊になっています。「鉱物図鑑の作り方」は自由研究にぴったりですよ。『100円ショップでわくわく科学実験』(いかだ社)青野 裕幸(著)「ふわふわ電気くらげ」「立方体のシャボン玉」「骨格標本をつくろう」など、子どもの好奇心を刺激するワクワクドキドキの実験テーマが満載!100円ショップで簡単に材料をそろえられるので、無理なくたくさんの実験にチャレンジできます。出版社より遊びながら学べる科学実験!物理・化学・生物・地学の各分野から難易度別に紹介、「化学の目」で詳しい原理を説明している本です。作り方のポイントや実験方法も丁寧に解説しているので、低学年のお子さんも楽しみながら学べますよ。『100円ショップでつくってあそぶ なつかし!伝承おもちゃ&あそび』(いかだ社)吉田 未希子(著)昔なつかしいおもちゃとあそびをたっぷりと紹介している一冊。ゲームやインターネットを遊びのツールにしている今の子どもたちにとっては、逆に新鮮に感じられるかも!?材料はどれも100円ショップで手に入るので、気軽に日本文化に親しむことができます。出版社より輪投げ、お手玉、チャンバラ、かかし……。昔ながらの伝承玩具とあそびを100円グッズで再現してみよう!折る、切る、貼る、などの「工作の基本」も詳しくレクチャーしています。オールカラー・ふりがなつきで、1年生でもわかりやすい内容になっています。『コロコロロボット Kids工作BOOK』(いかだ社)野出 正和・古川 孝(著)身近な廃材を利用して、自分だけのオリジナルロボットを作ろう!写真やイラストで作り方や遊び方を丁寧に解説しています。ロボットの仕組みに興味があるお子さんにおすすめです。出版社より「こんなロボットがあったらいいな」とお子さまの創造力を刺激する楽しいアイデアが詰まっています。空き箱、牛乳パックほか身近な材料で作れるものばかりなので、ロボットづくりを通じて物を大切にする気持ちも学ぶことができるでしょう。
2019年07月27日図書館や本屋にはたくさんの本があふれていますが、子どもにはどんな本をすすめたらよいのでしょうか?物語が好きな子や、図鑑ばかりの子など、子どもの本の好みもさまざまです。『読書力アップ! 学校図書館の本のえらび方』や『今こそ読みたい児童文学100』などの著書がある児童文学評論家の赤木かん子さんに、子どもに適した本の選び方をお聞きしました。編集/木原昌子(ハイキックス)取材・文/田中祥子写真/児玉大輔(インタビューカットのみ)乱読で感覚が養われる本には推奨年齢や学年が書いてあります。ですが、子どもによって好みや成長は違います。基本的にはしごくシンプルに、子どもに ”好きな本を” “好きなように”読ませてあげればいいのです。具体的には、公共図書館に連れていって、子どもが持ってきた本は何でも「ああいいよ、いいよ」といって読んであげる……本屋さんに行って、その子が欲しいというものを「ああいいよ、いいよ」といって買い与える……という姿勢です。特に図書館はただなので心置きなく借りられるでしょう。赤ちゃんだって気に入れば最後まで見ているし、嫌だと思えばそっぽを向いたり、手で邪魔をしたりしますよ。その “イヤだ!” という気持ちは大切にしなければなりません。命に別状のないことは、子どもの判断を受け入れたほうがいいのです。そのときに大事なことは、親である自分がその本を好きかどうかは考えないということ。お子さんとあなたは別の人間だし、性別の差も、なん十歳もの年の差もあります。同じ本を楽しいと思うことのほうがまれでしょう。赤ちゃんや幼児が嫌がったら「そうなの~、これは嫌なんだね~」といって本を閉じて、次の本に移ればいいだけ。読んでつまらない本はあるかもしれませんが、読んで害になる本というのは、普通の本屋さんや図書館にはまずないといっていいでしょう。ですから、子どもの「この本が嫌い」というのは好みであって、わがままではありません。普段から公共図書館で「読んで~」と子どもにせがまれるまま本を読んでやっていると、普通の子どもでも3千冊、本が好きな子どもなら1万冊以上の読書をすることになります。そのなかにつまらない本が混じってもいいのです。たくさん読んだなかには、子どもがワンシーンだけ、1ページだけ好きになる本もあれば、1冊丸ごと気に入ってしまうような完成度が高い本もあるでしょう。一方で、全然子どもの気に入らない本があるのも当然のことです。つまらない本を知らないと「この本はおもしろいんだな」ということがわかりません。子どもには膨大な時間がありますから、乱読することで感覚やものを見る目を養わせましょう。小さなお子さんを持つ親から「うちの子は同じ本ばかり破れるまで何度も読みます」という相談を受けることがありますが、それはとても良いことです。大人だって自分が好きで買った音楽のCDは何度も繰り返して聴くでしょう。好きな曲が終わると、わざわざ戻して好きな曲だけもう1回聴いたりするじゃないですか。曲が楽しいと思うのは、何回も聴いて覚え、歌えるようになってから、だと思いませんか?次にこのメロディが来る、この歌詞が来ると知っていて「来る来る来る、来た~!」というのが楽しいし、何度も聞くうちに最初は気がつかなかった細部まで理解が深まります。これは本でも同じこと。子どもたちは誰に教えられなくても、本能的に本の読み方を知っているのだと思います。繰り返し読むことで本を深く読み込むことができ、喜びも深くなることを知っているのです。ですから、そんなふうに何度も読みたい本が見つかったらラッキーですね。もちろんお気に入りができなくても心配はご無用。それは、子どもそれぞれの個性です。低学年で脳をじゅうぶんに耕すこれまでお話ししてきたように、子どもに読み聞かせをするときには、子どもの喜ぶ本を選んであげてほしいと思います。逆にいえば、読み手である親が「必要な本」「良い本」と感じる本は選ばないようにすることです。なぜなら、子どもに本を読んであげる一番大きな目的は「子どもを幸福にすること」、そしてもうひとつの目的は「子どもに本を好きになってもらうこと」だから。楽しくないけど必要な本を読むのは、もっと大きくなって本を好きになってからでもじゅうぶん間に合いますよね?そして、子どもには気がつかない大人の本のなかにも、子どもが喜ぶ本が案外あるものです。たとえばクジラが大好きなら、大人用のクジラの写真集を喜んでくれるでしょう。子どもに本を選ぶときには、「この本を読んでもらいたい」ではなく「これを見せたらあの子がどんなに喜ぶかしら」を基準にしてください。小さな頃は、偏った本の選び方をする子もいます。物語を読むのが嫌いな子どもを持った親御さんから、「うちの子は本を読むのが苦手で……」と相談されることがありますが、そのようなことで頭を抱える必要はありません。そういう子をよく見ると、たいてい図鑑などを好んで見ているもの。前回お話ししたとおり、本は内容で2種類に分かれます。1つは物語などの「空想系」の本、もう1つは現実に起きることが書いてある「リアル系」の本です。政治、芸術、スポーツ、自然科学、歴史、地理、産業など、本のうちの9割はリアル系ということになります。子どもに読書をさせるなら物語を読ませないといけない、と思っている親御さんが多いですが、そんなことはないんですよ。それに、必ずしも小説を好めば頭が良くなるというわけではありません。科学者は頭がいいグループだとは思いますが、彼らのなかには小説を読まない人たちも多くいます。(もちろん例外は常に存在するし、ジャンルによってもかなり違いますが。私の感覚では、物理学者は一番小説を読む人が少ないように感じています)特に、低学年のうちは図鑑が好きな子どもが多いですね。これはとても大切なことです。低学年は脳を耕している時期。いわば、種をまく前の畑の土に栄養をたくさん入れてふかふかにしている時期です。そのためには、何でも屋さんのように手当たり次第に雑学を入れなければならないと本能的に知っているのですね。また、低学年のうちは1つのものに1つの答えがあるものを好みます。答えがないようなもの、範囲の広いものは理解できないのです。図鑑のなかでは、1つの絵に対して1つの名称と解説が記されていて、解決できないことは基本的に載っていません。それから、子どもの知識に関する話題として、最近は知っている言葉の数が極端に少ない子どもが多いという報告があります。たとえば、小学1年生の体育で「足首を掴んで」と指導したら、「足首って、どこ~?」という騒ぎになった、という話がありました。言葉を増やすには、たくさんの言葉を「聞く」必要があります。誰だって、聞いたことのない言葉は覚えられません。ですから、小さいうちから大人がなるべく豊かな語彙力で話しかけてあげましょう。また、普段の生活で「見る」「試してみる」などの経験がなかなかできない自然科学などについては、テレビの科学番組が一番だと思います。ビジュアルを見ながら説明を聞くことができるので、新しい言葉も理解しやすいのです。育児や教育にテレビは害だという意見もありますが、見せたい番組を親が選ぶなど工夫して賢く利用するほうがいいでしょう。高学年になると図鑑は卒業?小学4年生くらいで図鑑に見向きもしなくなる子どもが増えはじめます。その頃になると前頭葉が発達してくるからです。前頭葉は感情をつかさどる部分なので、徐々に人の気持ちがわかるようになり、そちらに関心が向くのです。「自分とは違うけれど、こういう暮らしや生き方をしている人がいる」ということを理解できるようになると、物語や伝記などが読めるようになってきます。そうすると、読む本ややりたいことが変わってくるというわけです。子どもたちは成長の過程で本能的に、「この時期にはこれをして、これを会得しなければならない」と知っているかのように振る舞います。そして能力も変化していきます。赤ちゃんのころの驚異的な記憶力(これがあるから言語を習得できるわけです)や共感能力、耳から聞いたことで理解できるといった能力はだんだんと落ちていき、そのかわりに文字を読んで理解する能力、人の気持ちがわかる能力、客観的に見る能力などに取って代わります。低学年で耕した頭に、高学年から種をまきはじめて、実の収穫ができるようになるのは高校卒業くらいでしょうか。大きな実が収穫できるように、小さな頃に子どもの脳を知識と本でしっかりと耕してあげたいですね。***豊かな読書経験は子どもの将来への糧となることがわかりました。図書館をうまく利用して、日常的に本を手に取るようにしたいですね。子どもの読書量は親の読書量と比例するという調査結果が出ています。ぜひ親子一緒に図書館に出かけてはいかがでしょうか。『改訂版調べ学習の基礎の基礎』赤木かん子 著/ポプラ社(2011)■ 児童文学評論家・赤木かん子さん インタビュー一覧第1回:自由研究のテーマが簡単に見つかる「3つのキーワード」手法~調べ学習のコツ・前編第2回:自由研究の“正しい”調べ方とまとめ方。絶対に守るべき「体裁の基本」~調べ学習のコツ・後編第3回:図書館の本の9割は○○系!子どもに物語をすすめる親が図書館を活用しきれていない理由第4回:「つまらない本」を知ることも大事。図書館での“3千冊の乱読”から子どもが養う大事なもの【プロフィール】赤木かん子(あかぎ・かんこ)児童文学評論家。長野県松本市生まれ。法政大学英文学科卒業。子どもの頃に読んだけれどタイトルや作者名が分からなくなってしまった本を探し出す「本の探偵」としてデビュー。現在は、児童文学やミステリーの評論、子どもの文化の研究を始め、図書館の改善活動にも積極的に取り組む。主な著書に『改訂版調べ学習の基礎の基礎 (かんたん!たのしい!調べ学習)』『本で調べてほうこくしよう』(ともにポプラ社)、小学校1年生から使える科学のシリーズとして『ヒマワリ』『アサガオ』『タンポポ』『イネ』ほか(新樹社)、『お父さんが教える図書館の使いかた』(自由国民社)など。
2019年07月26日夏に公園の木々や街路樹などでたくさん見つかる「セミのぬけがら」。外に出るたびどんどん発見して、いつの間にかどっさり集めている……なんてお子さんも多いのではないでしょうか。そんなセミのぬけがらを、今年の夏は自由研究に活用してみませんか?セミのぬけがらを使った自由研究の方法とまとめ方について、おすすめ本のご紹介とともにお伝えしていきます。自由研究の素材は「日常で手に入りやすいもの」がベスト!子どもも親も頭を悩ませてしまう、自由研究のテーマ探し。実験する?観察する?オリジナルでやる?キットを使う?材料は何を使う?……考えれば考えるほど、なかなか決まらないものです。自由研究のテーマを選ぶうえで、押さえておくべき大前提があります。それは、「子どもが興味を持っているかどうか」。加えて、「自分で進めていける」「夏休み中に終えられる」「材料がそろう」「危なくない」といった条件を満たす必要があります。(詳しくはこちら:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自由研究のテーマ選びがグンと楽になるポイント【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第2回】)以上の点をクリアするもの……それが「セミのぬけがら調べ」です。夏の子どもの興味をそそる素材が、身近な場所で楽しく遊ぶついでに用意できてしまいます。お金をかける必要も、遠くまで出かける必要もありません。これを学びに活かさない手はありませんね。セミのぬけがら調べのメリットセミのぬけがら調べには、ほかにもいくつかのメリットがあります。特定非営利活動法人環境ネットワーク・文京によると、それは次の5点。①セミはどこにでもそれなりの数が生息している。②種類が限られている。③抜け殻によるセミの種類の見分け方は、少しだけコツを覚えれば誰でも簡単にできる。④セミの抜け殻は逃げないため、子どもでも簡単に採取できる。⑤生きているセミを採取するわけではなく、セミの抜け殻を主な餌としている生き物もいないと考えられるので、抜け殻を採取してもそのエリアの生態系に与える影響は小さくて済む。(引用元:環境ネットワーク・文京|平成 29 年度 親子生きもの調査「セミの抜け殻しらべ」実施結果報告書)※太字は引用にあたり施したセミは、幼虫時代を土の中で過ごした後、土から出てきて木などに登り、羽化して成虫になります。その“跡”を示すのがぬけがらです。ですから、ぬけがらを調べることは、すなわちセミの生息の実態を調べることになります。この自由研究によって「自分の学区内でも、A公園とB公園では生息するセミの種類が違う」といったことを発見できたら、子どもは身近な自然環境における生態系にもっと興味を持つようになるでしょう。また、もしも虫が苦手な子どもや親御さんでも、“ぬけがら” だったら触れるかもしれませんよね。虫嫌いな子にもチャレンジしやすいテーマなのではないでしょうか。セミのぬけがら調べのやり方とポイントそれでは、セミのぬけがら調べの方法を詳しく紹介しましょう。用意するものセミのぬけがらの種類を見分ける本(例『クイズでさがそう!生きものたちのわすれもの ①まち』佼成出版社)記録用のノートぬけがらを保管しておく箱(種類別に分けられるよう、5個ほどあると便利) やり方近くの公園や林など、土・樹木がある場所を観察点としていくつか選ぶ。観察点でセミのぬけがらを集める。ぬけがらを見つけたら、「見つけた日にち」「見つけた場所」「天気」などを記録しておく。夏休み中何日間か継続して、セミのぬけがら集めを続ける。見つけたセミのぬけがらが何という種類のセミのぬけがらなのか、本で調べて分類する。セミのぬけがら集めと分類が終わったら、観察点別、セミの種類別などにぬけがらの数を合計して表や円グラフを作り、次のようなことを分析する。・観察点によって、セミのぬけがらの数や種類に違いはあるか・見つけた日の天気によって、セミのぬけがらの数や種類に違いはあるか・樹木の種類によって、セミのぬけがらの数や種類に違いはあるか・木の幹や枝、葉の裏など、どのような場所でセミのぬけがらが見つかりやすいか自由研究の動機や、手順、結果、感想などをまとめる。図表や絵を描いたり、写真を貼ったりできるよう、スケッチブックや模造紙などを使うのがおすすめ。(詳しくはこちら:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自由研究のまとめ方のコツ【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第3回】)セミのぬけがらの見分け方のポイントセミのぬけがらの見分け方は、『クイズでさがそう!生きものたちのわすれもの ①まち』(佼成出版社)にて紹介しています。小宮輝之 監修/こどもくらぶ 編生きものが大好きなお子さんにぴったり! 「生きものたちのわすれもの」シリーズ先ほどご紹介した『クイズでさがそう!生きものたちのわすれもの ①まち』は、足跡や食べ跡、ふんなどから、どんな生きものの“忘れ物”かを探検するシリーズの第1弾。セミのぬけがらのほかにも、私たちと一緒にまちでくらしているスズメやモグラ、タヌキなどの忘れ物を、豊富な写真で紹介しています。忘れ物の「主」である昆虫や動物、鳥などの生態や、それらを取り巻く自然環境を楽しく学べる本として、自由研究の題材に最適ですよ。監修は、上野動物園元園長の小宮輝之氏。「だれの忘れ物かな?」写真を見て推測し、次のページを開くと、忘れ物の「主」とその生き物情報が掲載されているQ&A形式となっていて、コラムも充実しています。このシリーズには、第3弾までありますので、お子さんの興味にあわせてぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?『クイズでさがそう!生きものたちのわすれもの ②森』小宮輝之 監修/こどもくらぶ 編ウサギやリス、キツネ、鳥など、森でくらす生きものたちの忘れ物に迫ります。巻末に、「忘れ物」を探しに行くときの服装や持ち物、注意点についても紹介しています。『クイズでさがそう!生きものたちのわすれもの ③水辺』小宮輝之 監修/こどもくらぶ 編川、池、海、用水路、田んぼなどの水辺でくらす生きものたちの忘れ物を紹介しています。夏に出かけることが多い水辺では、どのような生きものたちの忘れ物が見つかるのでしょう?調べてみるときっと面白いですよ。***身近な生きものについて理解を深めたなら、その興味はほかの生きものや、より広い自然環境へと向かっていくことでしょう。自由研究がその良いきっかけになるといいですね。(参考)環境ネットワーク・文京|平成 29 年度 親子生きもの調査「セミの抜け殻しらべ」実施結果報告書科学実験・原体験データベース|「セミのぬけがら」で環境について調べてみよう!科学実験・原体験データベース|セミの抜け殻を集めよう学研キッズネット|セミについて調べちゃおうStudyHackerこどもまなび☆ラボ|自由研究のテーマ選びがグンと楽になるポイント【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第2回】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自由研究のまとめ方のコツ【子どもの“やりたい”を引き出す!夏休みの自由研究 第3回】
2019年07月26日「14ひきのシリーズ」(童心社)でおなじみの、人気絵本作家のいわむらかずおさん。いわむらさんが、子どもたちに「絵本」と「自然」を同時に楽しんでもらいたいという想いで開設した「いわむらかずお絵本の丘美術館」を知っていますか?栃木県那須郡那珂川町の雄大な自然の中に佇む美術館で、その周辺には作品の舞台となる里山の自然が楽しめるフィールドが広がっています。その名も「えほんの丘」。今回は、えほんの丘に込めた想いを、美術館館長・絵本作家のいわむらかずおさんにうかがいました。自然の中で暮らす生きものたちを描く私は1970年に絵本作家として仕事を始めました。その5年後の1975年に、東京を引き払うことにしたんです。「14ひきのシリーズ」のような、自然の中で暮らす生きものたちが主人公の絵本を作ろうという発想が生まれたんですね。そのためには、作者である私自身も、主人公たちと同じように家族と自然の中で生活しながら、描いていこうと考えたんです。そこで栃木県の益子町に移り住み、雑木林の中に家を建てて、家族と暮らしながら創作をしてきました。作品を見ればわかるように、周りの自然をよく見ながら描いていく、そういう仕事をしてきたわけなんですね。「絵本・自然・こども」がテーマの美術館ここで創作を始めた当初は、雑木林で子どもたちが遊んでいる姿がよく見られました。でも、1980年代後半から1990年代にかけて、自然の中から子どもの姿がだんだん消えていったんです。子どもたちが自然体験から離れていくことが心配になり、家族と話をしているうちに、自然の中に美術館を作ろう、と考えるようになりました。街ではなくて、自然の中にある美術館。キーワードは「絵本・自然・こども」。そんな、広いフィールドや農場のある絵本美術館を作ることにしたわけです。1993年に計画を立て始め、5年の準備期間を経て、1998年に「いわむらかずお絵本の丘美術館」が開館しました。絵本作家として、今までは栃木県益子町の住まいの周りをイメージしながら描いてきましたけれども、今度はそのフィールドを北に40kmくらい広げて、美術館の周りの自然を舞台にしながら、さらに創作を続けようと考えたわけです。「えほんの丘」のフィールドから生まれた作品たち読み物が主体となる『ゆうひの丘のなかま』(理論社)のシリーズは、物語の舞台が、えほんの丘のフィールドの中に具体的にあるんです。例えば、うさぎと野ネズミが会って話した場所はあの坂を登った上だよ、というのが、全部あるんですね。『ふうとはな』(童心社)も、美術館周辺で野うさぎの赤ちゃんと出会ったことがきっかけで、イメージが広がったシリーズです。「14ひきのシリーズ」(童心社)に出てくるとっくんのトラックをモチーフに描いている『とっくんトラック』(ひさかたチャイルド)も、えほんの丘で生まれた作品ですね。こんなふうに、えほんの丘をフィールドとして、そこから生まれてきた絵本はたくさんあります。えほんの丘は、遊具もなく、草はらと雑木林と農場が広がっているだけの場所。そこに興味がわかない人には、おもしろくもなんともないかもしれません。でも、私の作品と一緒に周りの自然を歩くことで、伝わるものがあるんじゃないでしょうか。自然に絵本の世界を重ねることでイメージが広がる作品の舞台となる場所を訪れ、作品に描かれていることを体験することで、絵本の世界がふくらむでしょう。フィールドの自然に、物語が重なってくることで、イメージが広がりますね。すごくふくよかな、奥行きのある自然に感じられるはずです。『14ひきのとんぼいけ』(童心社)の舞台となったとんぼ池も、ただのため池があるわけではないんです。もちろん、ただのため池が存在するだけでも価値はあるんですけれども(笑)。ため池に絵本のお話を重ねることで、作品の主人公であるねずみの子どもたちが、いかだで漕ぎ出していった様子が、ありありとイメージできるようになるんですね。フィールドの自然と絵本を味わう「朗読とおはなし会」美術館では、毎月2回「朗読とおはなし会」を行なっています。おはなし会では、季節の自然の中での植物の営みや生きものたちの様子について話をしています。その日の午前中、えほんの丘を自分で歩いて、いろんなものを見つけてくるんです。例えば、今の時期は外をちょっと回っただけでも10種類以上の木の実が見つかりますから、それを少し取ってきて、ひとつひとつ見せるだけで、おもしろい話ができます。その後、木の実が出てくる絵本を読むんです。カエルの卵を見せたあと、それが登場する『14ひきのぴくにっく』(童心社)を読んだこともありますね。こんなふうに、まずフィールドの話をして、それとつながるような作品を読む、ということを主にやっています。その季節のフィールドの話をすれば、何かの絵本とつながりますからね。そうすると、絵本と自然が結びつくでしょ。絵本の舞台になった場所があり、絵本が生まれた背景を作者の肉声で聞くことができる。読み手と聞き手の間に、特別な関係が生まれてくる。それは価値のあることだと思います。自分で言うのは変だけれども、今なら作者が生きていて、来てくだされば会えますからね(笑)。たくさんの生きものと出会う体験をしてほしい「14ひきのシリーズ」は1983年から描き始めたから、もう35年になります。35年もたつと、描きはじめた頃に読んでくれた子どもたちの多くは、お母さん、お父さんになっているんです。最近は美術館を訪れる人たちの中にもそういう読者がたくさんいて、作者としては本当に嬉しいことです。子どもを連れてきたお母さんが「小さいときに大好きだったんです」と言って、ところどころ破れ、カバーもなくなった、ボロボロの絵本を大事に持ってきて見せてくれることもあって。子どもが主たる読者である、絵本ならではのことですよね。こんな田舎に、たくさんの方々が来てくださること自体が、すごいことなんです。本当に読者の方たちに支えられて、ここまでこれました。そんな読者の皆さんに、せめて少しはお返しができたら、という思いで、活動を続けています。子どもたちには、もっともっと、自然体験をしてほしいですね。フィールドの自然の中で、たくさんの生きものたちと出会ってほしい。そう願っています。【プロフィール】いわむら かずお1939年東京生まれ。東京芸術大学工芸科卒。主な作品に『14ひきのあさごはん』(絵本にっぽん賞)など「14ひき」シリーズ、エリック・カールとの合作絵本『どこへいくの?To See My Friend!』(童心社)、『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(偕成社/サンケイ児童出版文化賞)、『かんがえるカエルくん』(福音館書店/講談社出版文化賞絵本賞)、「トガリ山のぼうけん」シリーズ、「ゆうひの丘のなかま」シリーズ(理論社)などがある。98年栃木県馬頭町(現・那珂川町)に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館、絵本・自然・こどもをテーマに活動を続けている。
2019年07月25日