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真空管電圧計の製造からスタートして日本を代表するAVメーカーに成長。現在はAVやゲームのハードウェア製造にとどまらず、音楽、映画、金融など多種多様な事業を展開するソニー。その、世界に誇る巨大企業は科学教育発展のための助成財団を運営しています。その助成財団「ソニー教育財団」が設立された経緯、その主な活動内容について公益財団法人ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さんにお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ソニー創業時から教育振興の重要性を説いた創業者・井深大現在のソニー教育財団という名称になったのは2011年からですが、その大本となる教育助成活動がはじまったのは1946年の創業から13年後の1959年のこと。じつは、ソニーの創業者である井深大は、創業時の『設立趣意書』のなかですでに教育振興の重要性を説いているのです。当時、まずはじめたのは「ソニー小学校理科教育振興資金」というものでした。とはいえ、教育の助成をするにも会社の資金に余裕がないとできるものではありません。ソニーの経営が軌道に乗ることとなった大きなきっかけは、トランジスタラジオ、それからテープレコーダーのヒットでした。当初のテープレコーダーは軍が使っていたような大型のものです。それを小型化し、コンシューマー向けのものを開発した。最初の主なお客は裁判所でした。裁判記録をつくるため、速記に代わってテープレコーダーが採用されたのです。ただ、裁判所といってもそんなにたくさんあるわけではありませんよね。では、次の大きなお客はというと、これが学校だった。1950年から1960年ごろにかけては、NHKが学校向けの教育放送をスタートし、学校では映像や音の活用が加速化するなど「視聴覚教育」が盛んになった時期です。わたしが中高生の頃にもLL教室などにテープレコーダーはありましたが、当時はもっと幅広い使われ方をしたようですね。こうして、学校がテープレコーダーを導入してくれたおかげで、ソニーは大きな利益を得ることができました。そして、その利益をどうしたか。井深大は「学校から頂いた利益は学校に還元しよう」と考えたのです。画像提供:ソニー教育財団こうしてはじまったのが「ソニー小学校理科教育振興資金」でした。現在も「ソニーの教育助成論文」として続いています。これは、小中学校の理科の先生から理科教育論文を募り、優秀な論文を執筆した学校に助成金やソニー製品を贈呈するというもの。論文の内容は、たとえば「てこの原理をこういうオリジナルの手法で教えている」というような授業内容についてのもの、あるいは「いま授業で抱えているこういう問題を解決するために今後はこんなことを試してみたい」といったPDCAサイクルのような、先生方が日常的におこなっているアイデアや工夫についてのものです。子どもたちではなく学校、先生に助成金を贈るということには、明白な理由があります。テープレコーダーが大きな利益をもたらしてくれたとはいえ、資金は限られていました。そういう状況において、どうすればより多くの子どもたちの教育を支援できるでしょうか。答えは、「先生を支援すること」です。50人の子どもではなく、50人の子どもを教えている50人の先生たちに資金を使う。そうすれば、2500人の子どもたちの教育に資金が有効活用できます。こうして、学校の先生たちを支援するというかたちとなったのです。子どもの「科学する心」の芽生えを大人にも共有してほしい当初、小中学校を対象にはじまったこの活動も、現在では幼稚園、保育所、認定こども園にまでその対象を広げています。幼稚園等から募集するのは「『科学する心』を育む保育実践」をテーマとした論文です。「科学する心」とは、わたしたちは7つの項目で定義づけていますが、ここではかいつまんで説明しましょう。幼い子どもにとって身近な生きもののひとつに、ダンゴムシがいます。はじめてダンゴムシに触れ、どんどん集める子どももいれば、なかには半分に折って殺してしまうような子どももいるでしょう。でも、そういうことを子どもがしなくなるためには、大人が「殺しちゃ駄目」と言うのではなく、子ども自身が実感として「命の大切さ」を感じる必要がある。植物学とか動物学といったものだけではなく、道徳に近いようなものも含めて理科をとらえる心――それを、わたしたちは「科学する心」だと定義づけています。そして、子どもの「科学する心」が芽生える瞬間をぜひ大人も共有してほしいのです。そのためにはじめたのが、『「科学する心」を見つけようフォトコンテスト』です。これは、子どもが探求し感動した姿をとらえた写真を募集するというもので、2018年でもう12年目になりました。じつは、カメラを通して見ると、普段は気づかなかった子どもの表情に気づくこともあるものです。自然など周囲のものに触れて、子どもは「これってなんだろう?」「不思議だなあ」といった豊かな表情を見せてくれます。それは、まさに知的好奇心の表れです。幼児の頃には、たとえば九九のようないわゆる勉強をすることよりも、興味を持ったものにぐっとのめり込む、遊び込むことが、のちのちの学習能力を高めることになると思うのです。知能指数などでは測れない集中力や興味関心の強さといった非認知能力が、引いては認知能力を高めていくのではないでしょうか。そのためにも、子どもが周囲のものに興味を持つ瞬間、「科学する心」の芽生えの瞬間を、ぜひ親御さんもしっかりと見つめてあげてください。■ ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さん インタビュー一覧第1回:ソニーが“子ども投資”を59年間も続ける深い理由第2回:世界のソニーが手がける「プログラミング教育サポート」(※近日公開)第3回:卒業生400人、みんな理系じゃないから面白い。ソニーの凄すぎる自然教室の全貌(※近日公開)第4回:日本人教員がビックリするのも納得。豪州が取り組むSTEAM(スチーム)教育の凄さ(※近日公開)【プロフィール】高野瀬一晃(たかのせ・かずあき)1954年1月18日生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業。1990年、ソニー株式会社入社。資材調達のエキスパートとして1993年からドイツ、ハンガリー、フランス、スウェーデンなどヨーロッパ各国に赴任。2005年に本社へ復帰し、DI事業本部、テレビ事業本部の資材部門部門長、調達本部本部長、調達担当役員(SVP)などを歴任し、2015年に定年退職。その後、公益財団法人ソニー教育財団理事長を務める。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年11月18日テレビ番組の影響もあって、俳句人気が高まっています。今や全国で子どものための俳句大会が開かれるほど子ども俳人が増えているのです。俳句には、語彙力や表現力を向上させる学びの要素がたくさんあります。短い文の中に思いを込める難しさと面白さ、知れば知るほど奥深い俳句の世界は、子どもの素直な感性を生かすのにぴったりです。「俳諧は三尺の童にさせよ。初心の句こそたのもしけれ。(三冊子)」と、あの松尾芭蕉も子どもに俳句を詠ませることを勧めています。そんな俳句の魅力に迫ってみましょう。俳句の歴史室町時代末期に広まった連歌、俳諧。17世紀に松尾芭蕉の『おくのほそ道』で確立された「蕉風俳諧」が俳諧のその後の流れを大きく変えました。江戸時代末期には衰退していた俳諧でしたが、明治時代に正岡子規を中心に盛り上がった文学運動(俳句革新運動)により、俳諧は俳句へと発展したのです。正岡子規が創刊した文芸誌『ホトトギス』は現在の俳句界の礎を築いたと言われています。俳句の魅力次に俳句を詠むことの魅力を詳しく見てみましょう。■感受性が育まれる俳句には季語があります。季節を表す句を作るためには、まず観察が大事。ものを見て、そのものや季節を感じて、表現する、その細やかな心に感性が宿ります。眺めているうちに愛着が湧いたり、興味が湧いたり、日常にワクワクを発見することで、そこからさらに世界が広がっていくかも知れません。■豊かな言語感覚が身につく俳句は五七五の17音に想いの全てを込めなければなりませんので、無駄を無くし、言葉を選ぶ必要があります。自分の言いたいことにぴったりな言葉を探しながら様々な語彙や表現に出会うでしょう。その過程で言葉の美しさに気づき、豊かな言語感覚が身についてくるのです。■年齢は関係ない俳句は季語などのいくつかの“決まりごと”さえ知れば、誰でも作ることができます。特別な道具はいりませんし、場所も選びません。親子で一緒に楽しむことができるのも魅力ですね。ピクニックに行った公園や、好きな食べ物のことなど、同じお題で句を詠んで、お互いの句を楽しんでみましょう。■心の拠り所になる得る聖路加国際病院名誉院長・日野原重明さんとの俳句の文通で話題になった小林凛くん。彼は壮絶ないじめの苦難を、俳句を綴ることで乗り越えました。俳句に心情を吐き出すことでなんとか自分を保つことができたのです。“表現する”ことは子ども自身の心の拠り所になり得ますし、親がそれを見て、子どもが何を考え、どう感じているのかという心の機微に気づくことができるツールにもなるのです。小学生が俳句を作るときの3ステップ俳句といってもどう始めればいいのか、俳句を作る“コツ”もよくわかりませんよね。子どもが作る俳句の魅力はのびのびと自由なところ。決まりごとがあるといってもあまり難しく考えず、子どもらしい感性で作っていいのです。俳人の金子兜太氏は著書の中で「俳句は遊びの延長であってほしい」と話しています。また最近は俳句を小学校の授業で取り入れている学校もあるようです。実際に小学生に俳句の指導をされた前田正秀先生の例がとてもわかりやすいのでご紹介します。(1)七五調のリズムを味わう「古事記」「日本書紀」の時代から続く日本古来の叙情形式である五七調と七五調は昔から日本人には心地よいリズムなのです。まずそのリズム感に馴染むことが俳句への第一歩。そのためには俳句の音読が有効だそう。手拍子も合わせるなど楽しくリズムを取ってみましょう。江戸時代の3大俳人である、松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶、明治時代の正岡子規の名句を鑑賞することは、俳句を始める際とても役に立つでしょう。ぜひお子さまと一緒に手拍子を取りながら音読してみてください。(2)「自分だけの発見」を俳句に最初は17音に言葉をはめることに集中しますが、慣れてくると内容にもこだわろうとするようになるのだそう。そんな時アドバイスするとしたら、「自分だけの発見」にこだわること。見たものを写生するように言葉する、体験を具体的に、家族や友達を題材にするなど。まずは興味を持った身近な題材から始めてみましょう。(3)気持ちを書かずに気持ちを表す題材が見つかったら、次は表現方法でのコツです。子どもは素直に嬉しかったこと、悲しかったことをそのまま言葉にするかもしれません。しかし俳句では直接表現よりも間接的な言葉でその感情を表して読者に想像してもらう方がいい句となります。初げいこ心も竹刀もまっすぐに(引用元:金子兜太監修(2014),『子どもと楽しむ俳句教室』p102, 誠文堂新光社.)このように場面を詠むだけで清々しい心意気の心情が表せると素晴らしいですね。ポイントは、「気持ちを書かずに気持ちを表す」ですよ。(4)俳句を鑑賞し合う俳句を作った後はお互いの句を鑑賞し合いましょう。友達同士でも親子でも、自分が作った句が褒められれば嬉しいですし、次の励みにもなります。人が作った様々な句に触れれば俳句を見る目も育ちます。子どもの俳句番組に出演した教育評論家の尾木直樹氏は、俳句を作る過程で心が解放され、イキイキと変わっていく子ども達の表情に感動されています。大人のものに比べるとひねりはあまり効いていませんが、率直な表現が心にストレートに響くのです。まずは素直に一句、始めてみましょう!***今の俳句人気の立役者と言える俳人、夏井いつき先生もおっしゃっています。「センスや才能がなくても誰でも簡単にできる。自分が思ったことやしゃべったことを俳句にできるとおもしろくなってくる」。夏井先生の元には小学生からもたくさんのファンレターが届くそうです。俳句は子どもたちをも魅了してしまう証拠ですね。俳句を詠むことで、日本語の幅が広がり、表現豊かになります。国際化が進むいまだからこそ、日本語の美しさを再認識し、言葉を大切にできる人が増えることはとても大事なのではないかと思います。(参考)心揺さぶる算数の授業をめざして|総合的な学習の時間「俳句づくり」Woman excite|感性を磨く俳句づくりのコツ文春オンライン|尾木ママが語る俳句の魅力「思わぬ自分、思わぬ他者を発見できる」毎日新聞|子育て親子 秋晴れに 言葉紡ぐ目 閃閃とコトバンク|三冊子金子兜太監修(2014), 『子どもと楽しむ俳句教室』, 誠文堂新光社.
2018年11月17日たくさんの手助けが必要だった赤ちゃんの頃とは比べものにならないくらい、自分でできることが増える4歳。言葉の数も増え、きちんとコミュニケーションがとれるようになってくるのもこの頃です。しかし同時に、自分のこだわりや主張を通そうとして周囲とぶつかってしまったり、急に初めてのことに物怖じするようになったりも。それ以前にはほとんど悩むことなどなかった問題が次々と現れる、いわゆる「4歳の壁」にとまどってしまう保護者も多いのではないでしょうか。子どもの成長過程において4歳がどんな時期であるのかを踏まえながら、親が心がけたい対応の仕方をご紹介していきましょう。心が急に成長し、コントロールが難しくなる時期オランダ心理学会(NIP)認定心理士でポジティブ育児研究所代表の佐藤めぐみさんによると、子どもは4歳を過ぎると大脳の発達が進み、脳や心の認知能力が大きく伸び、より複雑な思考ができるようになってくるそう。その急な変化に子ども自身は戸惑いや葛藤を感じ、気持ちのコントロールがうまくできなくなってしまうんだとか。そこから生まれた言葉が「4歳の壁」です。ただ、その “壁” の高さは人それぞれ。「魔の2歳児」や「3歳児神話」などといった言葉が影響し「4歳になればきっと楽になるだろう」という印象が生まれ、ちょっとしたことでも 親が “壁” と感じてしまうパターンもあります。見通しがつき、自制心が芽生える4歳少し先のことまで見通しがつくようになり、今やりたいことと、この先やりたいことを天秤にかけ、先のお楽しみのために我慢するという自制心が生まれてくるのがちょうど4歳頃。子どもの中に「〜ダケレドモ〜スル」という自制心が生まれてくると、「痛かったけど、わざとじゃないからたたき返さない」「悔しいけれど、たたかずにことばで伝える」など、ぐっと自分の中で衝動を抑えて、「よりよい自分」をつくることができるようになってきます。(引用元:西川由紀子(2013) ,『かかわりあって育つ子どもたち2歳から5歳の発達と保育』,株式会社 かもがわ出版.)ただし「よりよい自分」をつくりたいという気持ちがあったとしても、衝動が抑えられずイライラすることも、もちろんあるのです。もしも子どもがそのイライラに任せてつい手が出てしまったり、攻撃的な態度や行動を取ってしまったら、頭ごなしに叱るのはNG。まずはどうしてそうしてしまったのか、どうしたらよりよくなるのかを、一緒に考えてあげましょう。そのきっかけがたとえどんな些細なことだったとしても、「なんだ、そんなこと?」とは言わず、子どもの目線になって寄り添ってあげることが大切です。見通しがつくからこそ、物怖じしてしまう4歳それまではどんなことにも果敢にチャレンジしていたのに、4歳頃になって急に臆病に……という変化が現れることもあります。3歳を過ぎると想像力が急に働きだし、たくさんの疑問を持つと同時に、目に見える世界と想像の世界の両方を恐れるようになる、と動物学者のデズモンド・モリス氏は言います。かしこくなればなるほど、自信が積み上げられてきたこれまでと違って、ここで獲得するかしこさは、自分の不十分さに気づくかしこさでもあります。時には、自我が萎縮して「やりたくない」と言ったり、はつらつとした子どもらしさとは異なる表情を見せます。(引用元:同上)人からの評価にも敏感になっているこの時期。親からの声がけや、大人同士の会話にも注意が必要になってきます。やってしまいがちなのは、せっかく子どもが褒められているのに、謙遜のつもりでうっかり子どもの心を折れさせてしまうこと。たとえば、ほかの子のママに活発な様子を褒められても「いえいえ、全然!活発でも親譲りで運動はダメなんです」なんて応えてばかりいると、子どもは「どうせ僕は運動がダメなんだ」と意欲を失ってしまいます。幼い子どものあらゆる挑戦は、スポーツの試合などとは違い、「結果が全て」ではありません。がんばっていること、夢中になっていることに対しては、ほんの少しの進歩にも着目し、褒めたり励ましたりしてあげたいものです。「〜しなかったら、〜になっちゃうよ!」は完全にNGワードまた、成長と共にできることが増えてくるにつれ、言うことを聞いてくれないことが余計にもどかしく感じることも多くなってきます。すると思わず「〜しなかったら、〜になっちゃうよ!」とマイナスの事例を挙げながら叱ってしまいがち。しかし、いやなことが待っているから……と考えながら動くのは、子どもでも大人でも、決して楽しいものではありません。なかなか言うことを聞いてくれないときに、お仕置きのような罰を与えたくなるかもしれませんが、お仕置きや体罰などはしつけとしては有効ではありません。しつけは、望ましい行動を教えること。お仕置きや体罰は、その場の問題行動を止めることはできますが、新たな行動を学ばせる力はありません。(引用元:All About|「4歳児は天使」の誤解?! 反抗期や癇癪の心理と対策)このように、お仕置きや体罰などは、教育的にほとんど効果がないのです。逆に、「〜したら、〜できる」という、後に「お楽しみ」が待っているようなプラスの想像力を働かせる声がけなら、自発的に動いてくれることも増えますよ。たとえば、ご飯を食べるのが遅い子どもには、以下のような【OKワード】が効果的です。【OKワード】「しっかり食べて“ごちそうさま”をしたら、◯◯で遊べるね」【NGワード】「のんびり食べていると、遊ぶ時間がなくなっちゃうよ!」また、小さなことでもできたことをほめてあげると、次もがんばろうと思えるもの。【OKワード】「脱いだお靴を揃えてえらい!きっと次にお出かけするときも気持ちが良いね」【NGワード】「またお靴が脱ぎっぱなし……もう、何度言ったらわかるのよ!」「やればできるじゃない。だったらいつもちゃんとお靴を揃えてよね!」このように、ちょっとした良い部分や成長に気づける親のまなざしが、子どものモチベーションにつながります。***子ども自身も内部で葛藤している4歳の時期。親が自分に寄り添ってくれたと実感してもらうことが、いちばんの対応策と言えそうです。忙しい毎日に子どもと真っ向から向き合い続けるのは難しいものですが、見守り励ますことを心がけることを忘れなければ、きっと壁を乗り越えていけるはずです。文/酒井絢子(参考)All About|4歳児の言葉や身体の発達と成長ポイントAll About|「4歳児は天使」の誤解?! 反抗期や癇癪の心理と対策camily|4歳時のしつけ、子育てで意識すべきことベネッセ教育情報サイト|4歳男児の反抗期にどう対処していくべきか西川由紀子(2013) ,『かかわりあって育つ子どもたち2歳から5歳の発達と保育』,株式会社 かもがわ出版.デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス子どもの心と体の図鑑』,株式会社 柊風舎.
2018年11月16日皆さんは英語の「慣用表現」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。イディオム、熟語、成句、句動詞、定型表現、ことわざなどいろいろな言い方がありますが、これらはすべて慣用表現です。また、英会話の勉強では必ず出てくる「依頼する」や「提案する」などの「機能表現」も、慣用表現の一種です。適当に英語の慣用表現をリストしてみましょう。・generally speaking(一般的にいうと)・look up to…(…を尊敬する)・Give me a break.(いいかげんにして)・How about…?(…はどうですか)・had better…(…したほうがよい)このように、慣用表現には多種多様な表現が含まれます。せっかく単語帳で覚えたのに、うまく使えない?皆さんはこうした慣用表現を、今までどのようにして学習してきたでしょうか。ご自身のお子さんには、どのように学習してほしいですか?慣用表現の学習方法について、大学生に聞いてみると、主としてこの2つが挙げられました。・熟語帳を覚える・教科書に出てきた熟語を覚えるさらに「熟語をうまく使うことができるか」と尋ねたところ、残念ながら覚えたけど、うまく使えないという回答が圧倒的に多くみられました。そして「英語学習の中で、慣用表現はどれぐらい大切と思うか」という質問には、どちらかといえば覚えたほうがいいけど、単語や文法のほうが重要という回答が目立ちました。英語力アップに欠かせない「慣用表現力」私たちは、日々の会話で、その都度、単語と文法を使って、自由に表現を作りだしています。これを「自由表現」といいます。しかし、どの言語にも、数多くの「慣用表現」があります。デンマークの著名な言語学者、イエスペルセンは、こう述べています。言語は「自由表現」と「慣用表現」を両輪として機能する私も、この考え方に賛成です。英語力を高めるためには、自由表現を作るための文法力と単語力と同様に、慣用表現力にも注目する必要があると考えています。コツは「ネットワーク化」慣用表現を上手に使って自分の思いを表現する力、これが「慣用表現力」です。慣用表現力があれば、言いたいことを最も的確に表現することができます。例えば、謝罪する際に、日本語では「どうもすみません」と言いますね。英語だと “I’m sorry.” と言うでしょう。どちらも、謝罪の気持ちを端的に示す慣用表現です。大切なのは、慣用表現をバラバラに暗記するのではなく、関連づけて「ネットワーク」として学ぶこと。ネットワークのように整理して学ぶことができれば、慣用表現を自分自身の英語のレパートリーとして加え、あなたの英語力の一部にすることができるでしょう。「驚き」を表す慣用表現今回は、第1弾として「驚き」を表すための慣用表現を取り上げます。「驚き」と一言で言っても、このようにたくさんの種類がありますね。・うれしい驚き・悲しい驚き・信じられない驚き・偶然の出来事に対する驚き慣用表現を自分のものにするためには、慣用表現のネットワーク化が重要だと先ほどお話ししました。でも、どのようにネットワーク化すればいいのでしょうか?「驚き」を表す慣用表現の場合、ネットワークを作成する際の基準はタイプ分けです。以下、便利な表現を6つのタイプ別にまとめてご紹介しましょう。「びっくり!」を表現するための6つのネットワーク 1. 間投詞を使う驚いた時、つい反射的に「えっ?」と言ってしまう人も多いのではないでしょうか。「えっ?」「わあ!」のような、喜怒哀楽の感情を直接表した語を「間投詞」と言います。英語でもたくさんの間投詞がありますよ。・Wow!(うわー!)・What!(何!)・Holy cow!(何てこった!)2. 驚いたことを言葉で表現する驚いたことを「ああ、びっくりした!」と言語で表現することもありますね。・What a surprise!(びっくりした!)・That’s amazing!(それは驚きだ!)・Unbelievable!(信じられない!)3. 本当かと問うびっくりするようなことを耳にすると、つい真偽を確かめたくなるものです。・Really?(本当?)・That can’t be true.(まさか!)・Are you serious?(マジ?)4. 偶然のことに驚く全く予期しないところで旧友に遭遇するなど、時には偶然の出会いに驚くこともあるでしょう。・What a coincidence!(偶然だね!)・Wow, it’s a small world.(わっ、世の中って狭いね)5. 相手に驚いたかと聞く相手にびっくりするようなニュースを伝えた上で「ねえねえ、驚いた?」と尋ねることもありますね。・Isn’t that a surprise?(びっくりだよね?)・Can you believe it?(信じられる?)6. 驚きを事後的に描写するびっくりして印象に残ったことは、なかなか忘れないもの。後から回想して「あれは~のような驚きだった」と描写することもあるでしょう。・do a double take(驚いて自分の目を疑う)・jump out of one’s skin(死ぬほど驚く)目を疑うほど驚くときに「2度見する」ことがありますが、英語では、“do a double take” という言い方があります。この “take” は名詞で「撮影のテイク」に近い意味合いだと思われます。「2度撮りをする」ことから「自分の目を疑う」という意味になるのでしょう。また、“jump out of one’s skin” は「皮膚から飛び出す」というイメージで、「死ぬほど驚く」に近い表現です。状況を思い描いて、感情を込めて表現する練習をこれらの「驚きの表現」をうまく使うには、見たり、聞いたりしたことに対して、素早く反応することが肝心です。つまり、瞬発力が必要なのです。一見簡単そうな表現も、タイミングよく使おうと思えば難しいもの。普段から、状況の中に身を置き、感情を込めて表現する訓練をしておく必要があります。例えば「結婚なんてありえないと思っていた共通の友人が、いよいよ結婚することになった」という状況で交わす会話文をご紹介します。このやりとりを参考に、音読練習してみましょう。A: Fred is getting married.フレッド、結婚することになったよ。B: Wow! Really? Are you sure?何!本当?確かなの?A: Yeah, I heard it from his father.確かだよ。フレッドのお父さんから聞いたんだ。ポイントは、ただ音読するのではなく、驚きの気持ちを乗せながら読むこと。状況を頭に思い描いて、気持ちを込めて、登場人物になりきって練習してみてください。感情を込めて練習するには、一人では味気ないもの。練習相手がいるといいですね。親子で交互に音読してみて、どちらがより感情を込めて話せているかを競ってもいいでしょう。日本語でも、日常生活の中で驚くようなことがあるときは、自然と表現に感情がこもるもの。英語ではさらに、少しオーバーなくらいに感情を込めて、表現する練習をしておくといいですね。
2018年11月16日ジブリの映画には、イギリスがよく登場します。『ハウルの動く城』や『借りぐらしのアリエッティ』、『思い出のマーニー』はイギリスの児童文学をベースにしていますし、『天空の城ラピュタ』の舞台はウェールズをモデルにした架空の国です。日本の子どもたちになじみのあるジブリ映画は、ある意味では、より大きな英文学の世界、イギリス史の世界へと子どもたちを誘うさまざまな糸口を隠し持っています。今日は、身近なジブリ作品から、親子で少し知識の幅を広げてみましょう。『天空の城ラピュタ』製作のきっかけは宮崎駿のウェールズ訪問『天空の城ラピュタ』をご覧になったことはありますか?炭鉱で働く少年、パズーの元に、ある日空から少女、シータが降ってくることから始まる冒険活劇です。海賊ならぬ空賊や、失われた古代文明の技術など、ロマンチックなモチーフが多く、人気があります。宮崎駿作詞、久石譲作曲の主題歌『君をのせて』も有名ですね。架空の世界を舞台にした物語ですが、実はこの映画は、宮崎駿がイギリス、ウェールズの炭鉱街を訪れたことに大きな影響を受けています。宮崎駿がウェールズを訪ねたのは、ちょうど1984年から1985年にかけてのこと。サッチャー政権のもと、国営の炭鉱が次々と閉鎖され、炭鉱でのストライキが起きていた時期でした。そのような背景もあり、『ラピュタ』は、イギリス労働者の団結や、19世紀からのイギリス労働者階級の文化をある程度知っていると、非常に面白い映画でもあります。ウェールズってどこ?4つの地域で構成されているイギリスとはいえ、イギリス、という国名がイングリッシュ(English)から来ていることを考えると、イギリスのウェールズ、という言い方はちょっと語弊があるかもしれません。ウェールズはUK、すなわち「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」(イギリスの正式国名)の中の一つの国、になります。連合王国、の名の通り、イングランド、スコットランド、そしてウェールズの王国が集まってできているのがUKです。イギリスの次期国王はプリンス・オブ・ウェールズと呼ばれますね。北アイルランドは、1922年、アイルランドが独立するにあたり、UKの内部にとどまりました。今回はふれませんが、複雑な政治的背景を持っています。ウェールズにはすでに王はいませんが、独自の言語と文化を保っています。お子さんと一緒に地図を確認してみてください。こちらの地図の黄色い部分にあたります。『天空の城ラピュタ』にみる、イギリスの階級と文化「空から女の子が降ってきた」——印象的なシーンで始まる『ラピュタ』の冒頭で、少年パズーは鳩に餌をあげ、トランペットを吹いています。朝日が差し込み、炭鉱を照らす美しい場面です。『天空の城ラピュタ』には、イギリスの労働者階級の文化を象徴するものがたくさん登場します。冒頭の短いシーンをはじめとして、映画の中から、その鍵となるモチーフを一緒に読み取っていきましょう。1. 炭鉱主人公パズーは、鉱山で働く見習い機械工です。パズーの親方、ダッフィーも、鉱山の地下道にあるエレベーターやエンジンなどの大型機械を扱うベテラン機械工です。石炭は産業革命を可能にした、ある意味イギリスの繁栄の基礎となる燃料でもあります。2. トランペット工場や炭鉱の騒音にも負けずに美しい音色を奏でるブラスバンドは、労働者に広く愛された楽器です。現在でもイギリスでは、かつての工業地帯にブラスバンドの伝統が根付いていることが多いのです。産業革命以降の労働者と金管楽器の強い結びつきがわかります。3. ハトパズーは鳩を飼っていますね。レース鳩の飼育は、そもそもは教育をうけた、どちらかといえば上のほうの階級の趣味として始まりました。チャールズ・ダーウィンも飼っていたのです。しかし19世紀の終わり頃には、多くの労働者階級の、特に男性の間で人気を集めるようになります。レースにつきもののギャンブルも行われ、それこそ炭鉱で稼いだ日銭を鳩のレースに費やす人々も現れました。もちろん純粋に鳩の世話とレースを楽しむ人々もいました。空を飛びたい、というパズーの純粋な夢を表しながら、同時にパズーが労働者階級の子供であることを端的に表現するシンボルとして、鳩はうまく機能しています。4. ストライキのポスター空賊から逃げ出すパズーを質問もせずに助けようとする親方の家には、ストライキのポスターが貼ってあります。イギリスの労働者階級は、自分たちを「労働者階級」と認識し、団結することで、その権利を広げていこうとした側面を持っています。例えば、賃金の引き上げや労働時間の短縮を求めるために、労働組合を作ってストライキをすることもありました。同時に、集まって勉強会をするなど、お互いの教育レベルを上げるための試みも行われました。産業革命の引き起こした急激な工業化の歪みを、労働者自身が団結することで、是正しようとしたのです。ジョン・レノンが1970年に Working Class Hero「労働者階級の英雄」という歌を発表したことを、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。労働者階級には、労働者階級独自の文化やものの考え方があり、そこに誇りを持つべきだ、という考え方は、今でもイギリス社会に根強く残っています。アニメ映画をきっかけに親子で学びを深めようさて、ウェールズ、階級といったテーマに着目して、皆さんに親しみのあるアニメ映画のモチーフをいくつか解読してみました。子どもを持つ親としては、そういった知識を背景に、家庭での語り合いを広げたいですし、また、これをきっかけにより広い作品群へと手を伸ばしていきたいところです。では、ウェールズの作家、あるいは労働者階級を扱った物語で、日本語で入手しやすい作品には、どのようなものがあるでしょうか。人気作家「ロアルド・ダール」の児童書から階級問題を学ぶウェールズ出身の児童小説家でどうしても忘れることができないのは、ロアルド・ダールです。『チョコレート工場の秘密』『マチルダはちいさな大天才』などの作品を目にしたことがある方も多いでしょう。『チョコレート工場の秘密』はティム・バートン監督により映画化され、ジョニー・デップも出演して話題を集めました。『マチルダはちいさな大天才』は『ハリー・ポッターと賢者の石』が出る以前、イギリスで児童書部門の売り上げ1位を独走していた作品です。独特のブラックユーモアで知られる作者ですが、彼の作品群から階級間の対立を描いた『ダニーは世界チャンピオン』をご紹介しましょう。労働者階級の父と子の愛情を軸に、犯罪物語を「子ども向けに」書いてしまうダールならではの作品です。我が家の読み聞かせは6歳ぐらいから始まりましたが、自分で読むのであれば小学校中学年以上でしょうか。日本語訳は少々分厚い本になりますが、子どもをぐいぐいと引き込むお話です。映画やテレビ、そしてゲームでも、身近に知っている作品の中には、しばしばより広い世界へと結びついているものがあります。以前ポケモンとシェイクスピア、今回は『天空の城ラピュタ』とイギリスの労働者階級についてお話ししましたが、それだけではありません。実にさまざまな子ども向けエンターテインメントの中に、新たな学びのきっかけとなる要素が散らばっているのです。誰もが一度は見たことのある映画。隣に座って鑑賞し、そこから親子の対話へとつなげてみませんか?こうしたちょっとした知識をきっかけに、お子さんと一緒に調べてみるのも面白いはずです。日常の中に、学びの種を探してみる。受け身ではなく、自ら主体的に学ぶことを楽しむ。親御さんのそんな姿が、お子さんの学びに対する姿勢を形作るのかもしれません。(参考)Martin Jones, “Pigeon Fancying and Working Class Culture in Britain, c.1870-1950” in Cultural and Social History, Volume 4, Issue 3, pp. 361–383.ロアルド ダール, 田村 隆一 訳(1972), 『チョコレート工場の秘密』,評論社.ロアルド ダール, 宮下 嶺夫 訳(1991),『マチルダはちいさな大天才』,評論社.ロアルド ダール, 柳瀬 尚紀 訳(2006), 『ダニーは世界チャンピオン』,評論社,
2018年11月15日難関大学に通う学生たちは、どんな幼少期を過ごしてきたのか――。将来、我が子をそれらの大学に入れたいと願う親であれば、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。幼少期の過ごし方のなかでも、特に「遊び」は興味深い内容のひとつ。どれくらい遊んでいたのか、どんな遊びをしていたのか、気になりませんか?そこで、今回は難関大学のなかでも最上位とされる東京大学にスポットを当て、在校生や卒業生の幼少期の遊び方について調べてみました。“親子遊び” が学力向上につながっている!?そもそも、東大に通うほど頭のいい人たちは、子どもの頃から遊びよりも勉強に時間を割いていたのではないか――そんなイメージを抱く方もいるでしょう。しかし、必ずしもそうとは限らないようです。イメージとは裏腹に、東大生はよく家で遊んでいたのだそう。しかし、その遊びの内容はというと、「クイズ」「レゴ」「パズル」「九九」など。これらの遊びを、親子で日常的に行っていたと言います。またある記事では、「小さい頃から子どもと一緒に遊んだ」「子どもの興味に付き合った」「遊び習慣が学習習慣につながった」という親の共通点が挙げられています。なかには、「夕食後、毎晩のように2時間ほど一緒に遊んだ」という方もいました。その遊びの内容は、「ブロック」「つみき」「ジオラマづくり」など。ある親御さんは、手作りのカードで「神経衰弱」を楽しんだそう。ここで注目すべきは、親自身が意識的に子どもと遊んだということではないでしょうか。親と一緒に遊ぶことで、「遊び」が「学び」につながり、ひいては「学力向上」につながったと考えられているようです。東大生の約7割がレゴブロックで遊んでいた多くの東大生が幼少期に経験した遊びとして注目を集めている遊びがあります。それはプラスチック製の組み立て式おもちゃ、レゴブロック(通称:レゴ)です。レゴジャパン株式会社は、2018年に東京六大学(東京大学、早稲田大学、慶応大学、明治大学、立教大学、法政大学)出身者600名を対象に、「レゴと知育の関連性に関する調査」を実施。東大生の68%がレゴ経験者であることを明らかにしました。また、「子どもの頃にレゴで遊んだという経験が、自身の能力やセンスに影響がありましたか?」という質問に対し、東大出身者の85%が「影響があった」と回答。そして、「影響があった」と答えた東大出身者の約2人に1人が、「集中力」「創造力」「イメージ力」の3つの力を伸ばすことに役に立ったと答えました。ほかにも、3人に1人が「東大に入るために一番必要な能力」は「集中力」だと回答しています。レゴで遊ぶことによって、「集中力」を含む、いろいろな能力を伸ばすことができると言えるでしょう。実際、様々な東大出身者やその親が、各所でレゴの経験談とその魅力を語っています。■佐藤亮子さん(4人の子どもを東大に合格させたカリスマ主婦)(「お子さまは何歳からレゴを始めましたか?」という問いに対し)2歳からさせました。レゴは、何歳からでも楽しめるのがいいのではないでしょうか? 私も、子どもと一緒に作ってよく遊びましたが、全然退屈しないのが、不思議でした。大人でも十分楽しめるところが他のおもちゃと違うところです。(引用元: PR TIMES|レゴジャパン株式会社プレスリリース東京六大学出身者600名に聞いた「レゴと知育の関連性に関する調査」)■ 木村美紀さん(東京大学大学院修了)レゴブロックは、1人でも集中して遊べるし、家族みんなで共同作品を作ることもできるので、いろんなスタイルで楽しめるのも魅力だと思います。(引用元:MAG2NEWS|美人東大タレントが明かす、わが子を東大生にしたい親がすべき9つの事)■桜雪さん(東京大学生)父がたくさん遊んでくれて、いつも一緒に新しいルールの遊びを作っていました。あと、映画や絵本をよく観たり読んだりしていたのと、ずっとレゴで遊んでいたのはよく覚えています。(引用元:インターエデュ・ドットコム|現役東大生アイドル! 桜雪さんインタビュー)これらを読むと、レゴは家族で一緒に楽しめて、学力向上にもつながる遊びだということがわかります。「さっそく子どもにやらせたい」と思う方も多いのではないでしょうか。テレビゲームやスマホゲーム、やらせても大丈夫?一方で、一般的に勉強の妨げになる可能性があると考えられ、親から制限されることの多い遊びもあります。そのひとつとして挙げられるのが、テレビやスマホなどの電子機器を用いたゲームです。東大生は、これらのゲームとどう向き合っていたのでしょうか。公益財団法人東京大学新聞社が現役東大生(院生も含む)を対象に行ったゲームに関するアンケート調査によれば、回答した357名のうち、「ゲームをまったくやらなかった」と答えた人は43名(全体の約12%)でした。逆に、ゲームをやったことのある東大生のなかには、「最長で1日12時間以上ゲームで遊んだことがある」と答えた人が80名(全体の約22%)もいたそうです。この結果をどう思いますか?幼少期に積極的にゲームで遊んでいた東大生は多いように感じませんか。また同調査では、「親など家族と、ゲームとの関わり方について話し合ったか」という問いもあり、196名(約55%)が「はい」と答えたといいます。つまり、過半数の家庭で親がルールを決めたり、子どもに注意喚起したりするなど、何らかのかたちで介入していたことがうかがえます。興味深い回答もありました。「現在のレベルでは勝てない敵を倒したいときに、自分のレベルを上げる、弱点を探す、仲間を作るなどの行為をすることは、ゲームだけでなく、現実の勉強にも応用可能。(文系・男性・1年)」といった、ゲームと勉強の関連性について語った人もいたようです。これはゲームで経験したことを、学力向上に生かすことが可能であることを示しているのではないでしょうか。この結果を見ると、どうやら「ゲーム=勉強に悪影響を及ぼすもの」ではなさそうです。「ゲームをするのはOK、だけどルールはしっかり守ろうね!」と、親子間で時間や約束事などを決めてから遊ぶことが大切なのですね。***東大生のなかには、幼少期に家族とよく遊び、その経験を学力向上につなげた人がたくさんいることがわかりました。親子一緒に「遊ぶ」ことで「集中力」が鍛えられるなら、今度の週末には子どもと本気で遊んでみてはいかがでしょう?もしかしたら、お子さまの集中力はすでにかなり鍛えられているかもしれませんよ!(参考)インターエデュ・ドットコム|東大・京大生に共通すること・しないこと 〜東大・京大生が育つまで<総集編>〜プレジデントオンライン|親と“神経衰弱”する子が東大合格するワケPR TIMES|レゴジャパン株式会社プレスリリース東京六大学出身者600名に聞いた「レゴと知育の関連性に関する調査」MAG2NEWS|美人東大タレントが明かす、わが子を東大生にしたい親がすべき9つの事インターエデュ・ドットコム|現役東大生アイドル! 桜雪さんインタビュー東大新聞オンライン|5人に1人は「1日12時間以上ゲーム」経験者 ~東大生のゲーム事情~
2018年11月14日料理と同じように作文にもレシピが必要今は料理が得意なお母さんやお父さんにも、かつてレシピとにらめっこしながら料理を作っていた時期があるのではないでしょうか。なぜレシピが必要かといえば、一度も作ったことのない料理を何も参照せずに作るのは難しいからです。一度も料理をしたことのない人が、食材と調味料だけ渡されて「おいしい肉じゃが」を作りなさい、と言われても作れるわけがありません。誰もが初めはレシピを必要とするのです。作文は料理に似ています。10歳に満たない子どもに「ちゃんと作文を書きなさい!」と怒っている親御さんは、レシピも見せず、また、やり方も教えずに「おいしい肉じゃがを作りなさい」と言っているのと同じです。まだ文章の作り方を知らない子どもたちに必要なのは、作文の書き方がわかる「作文レシピ」の存在です。子どもも喜ぶ「誘導文付きテンプレート」「作文レシピ」とはどういうものでしょうか?それは文章の流れ(手順)を教えてあげるテンプレートのことです。たとえば、筆者は大人向けの文章講座のなかで、よく「結論優先型」というテンプレートを紹介します。この型の流れは「結論→理由→具体例→まとめ」です。ビジネスからプライベートまでさまざまな文章に使える万能テンプレートです。しかし、このテンプレートを子どもに渡しても、使いこなすのが難しいかもしれません。そこで、子どもには簡略バージョンの「結論→理由→まとめ」をおすすめしています。しかも、より使いやすいものにするために、丁寧な「誘導フレーズ」まで付けています。テーマ「わたしの好きなもの」結論:わたしはが大好きです。理由:その理由は(だ)からです。まとめ:だから、わたしはが大好きです。これが基本テンプレートです。実際に書き込むと以下のようになります。テーマ「わたしの好きなもの」結論:わたしは走ることが大好きです。理由:その理由は汗をかくと気持ちいいからです。まとめ:だから、わたしは走ることが大好きです。誘導文があることによって、子どもたちは書くべきことを頭の中で考えることができます。もちろん、これで花マルです。くれぐれも、書いたものに対して「つまらない」だの「もっと詳しく書け」だの言わないでください。作文にケチをつけられた子どもの気持ちは、あなたが作った肉じゃがに、「味が薄い」「砂糖を入れすぎ」と家族からケチをつけられたときのものと同じです。いい気持ちはしませんよね?結論はひとつ。理由は3つまで。このテンプレートを使うときの注意点があります。それは「好きなことは、何かひとつに絞って書く」ということです。わたしは、食べることと、ねることと、あそぶことが大好きです。たとえば、こんなふうに好きなことを3つも書いてしまうと、その続きの文章が書きにくくなります。読む人からしても、3つよりもひとつのほうが頭に入りやすいものです。子どもには「今回は一番好きなものひとつに絞ってみよう。そのほうがカッコいい作文になると思うよ」と伝えてあげればいいでしょう。一方、理由のところは、3つまでなら書いてもいいでしょう。文章がふくらんで読み応えも増します。ただし、ふたつ以上あるときは、以下のようなテンプレートをおすすめします。テーマ「わたしの好きなもの」結論:わたしはが好きです。理由:その理由は<ふたつ / みっつ>あります。ひとつめは(だ)からです。ふたつめは(だ)からです。みっつめは(だ)からです。まとめ:だから、わたしはが大好きです。実際に文章を入れてみます。テーマ「わたしの好きなもの」結論:わたしは走ることが好きです。理由:その理由はみっつあります。ひとつめは汗をかくと気もちいいからです。ふたつめはかけっこでお友だちに勝てるからです。みっつめはたいいくの時間に先生にほめられるからです。まとめ:だから、わたしは走ることが大好きです。この子どもが大好きな「走ること」について、しっかりと掘り下げて考えたことが伝わってきます。書き上げた子どもには、「そっか、○○だから△△が好きなのね」と内容を受け入れる“声がけ”をしてあげてください。親が作文内容を受け入れてあげることで、子どもは、文章を書くことや、自分の気持ちや考えを表現することへの自信を深めていきます。誘導文やテンプレートはアレンジしてOK子どもの年齢や文章レベルに応じて、誘導文をアレンジして構いません。たとえば、このテンプレートを簡単に使いこなしてしまう子どもに対しては、「まとめ」の誘導文を少しレベルアップさせてみましょう。まとめ:わたしは、これからも。「私は、これからも」というフレーズで誘導してあげることで、子どもたちは未来へと目を向けるでしょう。以下のまとめなどは、ちょっぴり感動的な締めくくりではないでしょうか。読後感がさわやかです。まとめ:わたしは、これからもたくさん走って、もっとはやく走れるようになりたいです。作文のテーマも、そのつど自由に変えていきましょう。先ほどは「わたしの好きなもの」でしたが、「わたしの夢」などもおすすめです。テーマ「わたしの夢」結論:わたしの夢はことです。理由:その理由は(だ)からです。まとめ:夢がかなったら(し)たいと思います。おそらく子どもたちもワクワクしながら書くことでしょう。テーマ「わたしの夢」結論:わたしの夢はひこうきのパイロットになることです。理由:その理由は自分でそうじゅうして、空をとぶことが楽しそうだからです。まとめ:夢がかなったらたくさんの人をのせて、せかいじゅうを飛びまわりたいと思います。もしも書けなかったとしても、それはそれです。その子はその子なりに、「わたしの好きなもの」や「わたしの夢」と向き合ったはずです。その答えを出せるのはもう少し先かもしれません。どうしても書けないときは、「どういうテーマだったら書きたい?」と本人に聞いてみてもいいでしょう。子どもと一緒に親も作文にチャレンジ!テンプレートのいいところは、子どもたちがゼロから文章を生み出すのではなく、穴埋めゲーム的に取り組める点にあります。おそらくこの記事を読んだ親御さんのなかにも「このテンプレートは大人でも使えそう」と思った人もいることでしょう。つまり、年齢を問わず、わたしたちは「作文レシピ」を欲しているのです。もちろん、今回紹介したもの以外にも、たくさんのテンプレートがあります。子どもと一緒にテンプレートを考えてみるのもいい方法です。「テンプレート=文章構成」です。それを考えること自体が論理的思考の養成につながります。そうそう、テンプレートを使って作文を書かせるときは、ぜひ親御さんも一緒に書いてみてくださいね。子どもはいつでも親の背中を見ています。「ママ(パパ)も書いている」と思った瞬間から、急に“書きたいモチベーション”がアップする子もいます。書き上げた作文をお互いに発表し合って、それぞれの内容について語り合うのもおすすめです。作文を通じて親子の絆が一段と深まるはずです。
2018年11月14日今は小学校入学前に平仮名や片仮名をマスターする子が大半で、なかには足し算や引き算、英語ができる子もいるようです。我が子も遅れを取らないように早期教育を行うべき?いったい何歳から始めればいい?そんな焦る気持ちになりますが、誤ったやり方をしないように、まずは早期教育について知っておきましょう!そもそも早期教育って?早期教育とは小学校に入る前から教育を取りいれること。胎児・乳児期に行うものは、超早期教育と呼んだりもします。早期教育を行う機関や家庭で読み書きなどを教えたり、英語やピアノ、スイミングなどの習い事を早い段階から始めることなどです。「2~3歳から始める〇〇トレーニング」や「頭のいい子に育つ〇×式子育て」なんてキャッチフレーズも目にしますよね。0~5歳は脳の神経系が急激に発達するので、この時期から経験させることでその子の能力や関心を高めることが狙いと言われています。ただ、その効果は、実はまだ明確に証明されていないのです。専門家や教育に携わるプロの間でもさまざまな意見に分かれているのは現状です。では、結局どうするのが正解なの?という疑問がわきますよね。判断材料となる、早期教育のメリットとデメリットをご紹介しましょう。早期教育のメリット〇子どもの得意分野を知り、伸ばせるスポーツ、音楽、芸術分野……我が子は何に興味があり、何が得意なのか。幼児期の習い事は、そんなことを知る良いきっかけになります。サッカーやピアノ、スイミングなどを体験させる中で、子どもの得意分野がわかってくるでしょう。おっとりしている性格だと思っていた我が子が、実は負けず嫌いだったなど、意外な発見もあるかもしれません。そして、子どもは楽しみながら自分の能力を高めていけます。〇子どもに自信がつく早期教育や習い事を通し、先生や親に褒められたり、時には失敗や困難を乗り越えたりすることで、子どもは自分に自信をつけていくことができます。また、小学校で習う前に平仮名や片仮名、漢字、足し算や引き算を学んでおけば、最初の段階で授業についていけずにつまずく、ということもありません。「私はできる!」という自信は、その後の学習意欲にもつながってくるのではないでしょうか。〇脳の働きに大きく影響子どもの脳の神経系は0~5歳の時期に最も発達すると言われています。そのため、早期教育を行う機関などでは、好奇心が旺盛で、脳が柔軟な子どものうちに教育を開始して脳を活性化することで将来も優秀な人間に育つ、という考えに基づいて行われています。行っていない子に比べて、高い基礎学力を身につけることができると言えるでしょう。早期教育のデメリット●インプット教育の弊害新しい情報を与えることはとても大切ですが、一方的に何かを教え込むインプット教育を続けていると、子どものやる気がダウンしてしまいます。「お母さんに教えてくれる?」など、アウトプットの機会をはさむことで、子どものやる気も学習効果もアップするようです。●自主性の抑圧早期教育はパターン化され、それに反応するという受け身の学習、訓練が多いと言われています。また、「早くできるように」と親が先回りして無理に教えたりすることも良くありません。子どもの自主性・創造性の領域の発達が抑圧され、受け身的になってしまう危険があります。子どもの自主性を育てるためには、親は過度な口出しをせず、失敗もつまずきも見守る姿勢をつらぬくことが大切です。●親同士の競争になってしまいがち「友達の××君が始めたから」「〇〇ちゃんはもうできるから」と他の子と比較し、子どもに過度の期待を押しつけないように気をつけないといけません。親の方が早期教育にハマり、「もっと早く、もっと正しく」と求めすぎると、子どもは精神的に追い詰められてしまいます。親自身がライバル心をコントロールできるようにしましょう。教育学博士・教育カウンセラーの諸富祥彦氏は、著書の中でこう書いています。早期教育をやるかどうか決めるときは、「お子さんの能力」よりも、子どもと親がいっしょに楽しんでできるかどうかを、真っ先に考えるべきなのです。お母さん自信が「誤りを許せない」完璧主義、「ほかの子と張り合ってしまう」ライバル心を抑えられないようなら、早期教育はおすすめできません。(引用元:諸富祥彦(2010),『女の子の育て方』,WAVE出版.)早期教育を始めるか検討の際には、これらのメリット、デメリットを踏まえた上で、お子さんに必要かどうかを判断するのが良さそうです。“教えない”という早期教育にも注目を「子どもが将来困らないように、できる限りの教育をするのが親の役目」「子どもの学力や将来は親から与えられた教育の質や量が影響する」そんな風潮から、我が子にも幼いうちから何かしてやらなければ、と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、諸富氏によれば、子どもの教育において重要なのは、親が何かを「させる」ことばかりではない、とのこと。余計な手出し、口出しをしないこと、子どもの内的な成長をじっくりと見守るということも親の大切な役割のひとつだと指摘しています。人間には一人でいるときにしか起こらないある種の内面的成長があり、そのため、一人になって自分と対話する時間を持たず、絶えず外界からの刺激に身をさらしてばかりいると、想像力や創造性の発達が妨げられるのだそうです。また、共働きの保護者に向けた役立つ情報を提供している『日経DUAL』の記事内では、早期教育について取材した記者が次のように語っています。脳科学分野の権威である小泉英明さんは、「小さいうちにそういった“不自然な教育”に時間を取られて本来伸ばすべきことがおろそかになる」という状況を懸念していました。知育よりも、子どもの意欲を伸ばすことのほうがはるかに大切で、脳が内側から外側へと進化した人類の進化の順に照らし合わせ、「意欲」や「やる気」が関わる脳の内側をまず鍛えるのが一番なんだそうです。(引用元:日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由)様々な考え方がある早期教育。焦らずに、また周りと比べることなく、親子が納得して楽しめるものを探した先にあるのが“答え”なのかもしれません。文/鈴木里映(参考)マイナビウーマン子育て|「早期教育」はどのような教育法?その種類や実践する際の注意点などALL About|早期教育のメリット・デメリット日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由諸富祥彦(2010),『女の子の育て方』,WAVE出版ベネッセ教育情報サイト|インプットよりアウトプットで子どもは伸びる
2018年11月13日子どもがプログラミングを学べる講座やアプリ、ツールが今、どんどん登場しています。これは、2020年度の小学校プログラミング教育必修化を見据えた動き。ですが、IT関係の仕事をしているわけでもない限りプログラミングに馴染みのない大人は多いでしょうし、まして自分の小学生時代には習わなかった分野。それだけに、子どもに何をどう選んであげたら良いのか判断しにくい親御さんは少なくないのではないでしょうか。今回は、プログラミングを体験できる数あるツールの中から、文部科学省が提供する「プログラミン」について、どのような目的や特長があるのかをご紹介します。名前からして分かりやすい「プログラミン」。どこかかわいい響きがあり、親しみやすさを感じますね。親も子どもと一緒にやってみると楽しいかもしれませんよ。「プログラミン」は子ども・初学者にぴったり「プログラミン」とは、文部科学省によって開発されたプログラミング作成サイト。2010年8月に公開されました。絵に動きをつけてアニメーションを作ることでプログラミング体験ができます。「プログラミン」は、プログラミング教育を先行して取り入れている小学校や、子ども向けプログラミング教室などで多く採用されています。例えば、小学校でのプログラミング教育に積極的に取り組んでいる茨城県つくば市では、1・2年生用のプログラミング教材として「プログラミン」を導入。授業の一例として、1年生の国語では、物語に合う背景のアニメーションを「プログラミン」で作成し、音読しながら再生するという授業をしているのだそうです。なんだか面白そうですよね。同市のカリキュラムでは、児童の発達段階に合わせて教材が選択されていて、1・2年生が使用する「プログラミン」はまさに“入門編”の位置づけ。子ども・プログラミング初学者にもぴったりな教材であることが分かります。もちろん、自宅でのプログラミング体験にも最適です。可愛らしくて親しみやすい操作画面「プログラミン」のトップ画面から「プログラムをつくる」のボタンをクリックすると、方眼メモリがプリントされた深緑色の工作板が登場。その上に画用紙が置かれ、カラフルな「プログラミン」の文字が現れます。周りにはハサミ、セロハンテープ、マスキングテープ、色鉛筆があしらわれていて、図工の時間を再現したような親しみやすい雰囲気です。(文部科学省|プログラミンより)ツールの名前になっている「プログラミン」とは、メインのプログラムを作り上げる不思議な生物のこと。「プログラミン」のサイトには、プログラミンは、きみの絵に命をふきこむ不思議な生物。一匹ごとに違う役割をもっていて、動かしたい絵の上に、動かしたい順番で積んであげると、その通りに絵を動かしてくれるんだ。(引用元:文部科学省|プログラミンプログラミンについて)とあります。動きを表す命令(コマンド)は28種類。それぞれの「プログラミン」に親しみやすい名前が付けられているのが特徴です。(画像引用元:文部科学省|プログラミンプログラミンのやくわり表)●プログラミンの名前(一部抜粋)・絵を動かす:ミギクルリン(右に回す)、ジャンピン(ジャンプさせる)、シターン(下に動かす)、ウエーン(上に動かす)・一定時間止める:トケイン・絵の色を変える:カメロン・別の絵にする:キガエルン・最初に戻す:リセットン・フキダシを出す・消す:フキダシン・フキケシン・音を鳴らす・止める:オンプン・ミュートン・繰り返す:ズットン・球を発射する指示:タマーン絵の色を変える「カメロン」は、カメレオンに由来する名前。ゲーム性の高いアニメを作るには必須の「タマーン」は、その名の通り球を飛ばすプログラミンです。ユニークな名前が楽しくて、機能もすぐに覚えられそう。すべてのプログラミン(コマンド)は、文部科学省のサイトで紹介されています。これら28種類の「プログラミン」を、絵を動かしたい順番に上へ積み上げていきます。この操作方法は、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのライフロングキンダーガーテングループで開発された「Scratch」を参考にしたそう。Scratchがコマンドを順番に下へくっつけていくのに対し、「プログラミン」は上へ積み上げる方式を採っています。プログラミンの特長は「簡単」「楽しい」「すぐできる」「プログラミン」の特長は次の3つ。・簡単PC上でドラッグ&ドロップするだけで、動作や指示のコマンドを簡単につなげ、プログラムを作り上げることができます。プログラム言語に頭を悩ます必要はありません。・楽しい直観的に分かりやすくシンプルな設計なので、初めてプログラミングを体験する子どもにとっても分かりやすく、ゲーム感覚で遊びながら学ぶことができます。・すぐできる「プログラミン」自体は、ソフトウェアや各種ツールのインストールは不要です。Webブラウザが使えてアドビシステムズのFlash Playerが有効な、ネット環境にあるPCがあれば、すぐに「プログラミン」を使い始めることが可能。難しい設定も必要ないので、親御さんがITに詳しくない場合でも安心してお子さんに使わせられます。ただし、Flash Playerについては、アドビシステムズが2020年での開発終了を発表しているので、今後の対応が待たれるところです。「簡単」「楽しい」「すぐできる」という3つの特長をもつ「プログラミン」。「プログラミン」に初めて出合った子どもでもその日のうちに、プログラミングを遊び感覚で楽しく学ぶことができるサイトなのです。プログラミングは、見て試して「まねぶ」ことで学ぶ「プログラミン」を使って自分が作った作品は、Scratchと同じように自分以外の人にも見てもらうことができます。「みんなに見せる」という機能を使い、作品を飾る額縁を選んで、タイトルとプログラマー名、作品の説明を書いて保存すれば、自分の作品へのリンクURLが表示されます。このURLをメールやブログ、Twitterで告知すれば、他の人に作品を共有することができますよ。(YouTube|プログラミン-ステップ4:みんなに見せよう!より)非公式ですが「プログラミン研究所」という作品の投稿・共有サイトもあります。また、Twitterでハッシュタグ「#programin」を検索すると、ほかの人が作ったプログラムを見ることもできますから試してみてください。さらに、ほかの人が作ったプログラムはScratchと同じように自分で編集することも可能。「この動きはどのようなプログラミンを組み合わせているのかな」「ここを別のプログラミンで書き換えたらどうなるだろう」というように、いろいろな作品を見たり、別の方法を試したりできます。子どもたちは、「学ぶ」の語源である「まねぶ(真似ぶ)」ことを通して、プログラミンへグを身につけることができるのです。***クレヨン風の絵とかわいいキャラクターが満載の「プログラミン」。同じビジュアルプログラミング言語のScratchと比べ、より日本的なテイストなので、多くの皆さんにとって親しみやすく感じられるでしょう。プログラミングというより、お絵描き・アニメーション作成と言っても良いほど、遊び心いっぱいの楽しいサイトです。小さな子どもはもちろん、プログラミングという言葉を聞いただけで尻込みしてしまうような大人も、プログラミングの世界に足を踏み入れるきっかけになるかもしれません。(参考)文部科学省|プログラミンICT CONNECT 21|小学校プログラミング教育導入支援ハンドブック2018YouTube|プログラミン-ステップ1:プログラミンってどうやるの?YouTube|プログラミン-ステップ4:みんなに見せよう!TECH ACADEMY magazine|「プログラミン」をやってみた!【文科省の子供向けプログラミング学習サイト】Publickey|ゲームプログラミングもできる、やさしい開発環境「プログラミン」、文部科学省が公開Bascule|PrograminWikipedia|プログラミンScratchプログラミン研究所
2018年11月12日子どもが1人、ゾウが2頭、ハトが3羽……。日本語には様々な数え方がありますね。親御さんでさえ、「あれ、単位は何だっけ……」と数え方に迷ってしまうことがあるのではないでしょうか?そんな数え方を楽しく・正しく学べる絵本をご紹介します。『ただしいかぞえかたの絵本』WILLこども知育研究所 編・著/すみもと ななみ 絵突然ですが、ここでクイズです。「お皿」「折り紙」「魚のひらき」はどうやって数えるか、知っていますか?ぜひお子さんと一緒に考えてみてください。クイズの答えは、この記事の末尾でご紹介します。お楽しみに。3歳から楽しめて、何歳になっても役立つ1冊!とりは1わ、ウサギも1わ。日本語って、おもしろい!人や動物、食べものなど、子どもに身近なものの正しい数え方を170項目紹介。数え方を知る知識のページと、実際に数える実践ページで、楽しく数え方を学べます。いろいろな数え方を知り、知的好奇心や言語表現力をぐんぐん育みましょう。小さな子どもが見て楽しい、可愛らしく親しめるイラストが魅力のこの絵本。対象年齢は3歳からで、未就学児のあいだはもちろん小学生以降も長く学び続けられる1冊です。この絵本で紹介されている数え方の中には、大人にとっても「目がウロコ」なものがたくさん!親も一緒になって楽しめば、子どももきっとワクワクしてくれるはずですよ。「数え方」は日本語独特の文化日本語の表現の中にあるたくさんの数え方。個、枚、本、台、冊……。日ごろ子どもと一緒に過ごす空間にあるものを数えるだけでも、いろいろな数え方をすることに気づくはず。日本語では多様な数え方をする背景について、この絵本の「おうちのかたへ」のページでは次のように解説されています。日本語には、さまざまな数えかたがあります。それは、日本人がむかしから、ものごとの姿や形にさまざまな視点をもち、それらと自分たちとの関係や、役割や存在などを「数えかた」として、ことばで豊かに表現してきたからとも考えられます。例えば、「ライオンは1頭だけど、猫は1匹」「ウサギは鳥ではないけれど1羽」といった数え方も、日本語における物の見方がベースになっているのです。いろいろな数え方があることを子どもに教えることは、子どもの語彙力・表現力の発達を促すだけでなく、「どうしてこう数えるんだろう?」という好奇心も刺激します。ひいては、学びを楽しむ姿勢にもつながっていくことでしょう。子どもにとって身近な野菜も、大きさや形によって数え方が違う!お絵描きや工作に使うもの、ちゃんと数えられるかな?【広報担当より】大きな川は「1ぽん」、にゅうどうぐもは「1ざ」、森は「1つ」など、普段意識していなかったものも出てきて面白い! 親子で絵本を楽しんだ後はお散歩して、ふと目についたものを数えてみるのも楽しいですね。***では、最初に出したクイズの正解を発表しましょう。「お皿」「折り紙」「魚のひらき」はいずれも「1枚、2枚……」と数えます!ひらたいものは「枚」と数えるのですね。お子さんは(親御さんは)正解できたでしょうか?「ことばっておもしろいね」そんなことに親子で気づける一冊です。ぜひ、手に取ってみてください。
2018年11月12日IQが頭の良さを表す知能指数であるのに対し、EQは「生きる力」をどれくらい持っているかを表す指数です。時代の移り変わりの中で、周りの要求に応えられる「感性」が必要とされるようになり、IQの高さよりもEQの高さが求められ始めています。そして、幼少期の親との関わりは、EQ教育の第一歩なのです。■参照コラム記事はこちら↓時代はIQからEQへ……。心の知能指数「EQ」って何?
2018年11月11日肌寒くなるこの季節。持久走大会が開催される小学校も多いですよね。しかし、持久走といえばつらくて苦しくて、できれば走りたくない……と、大半の人がネガティブなイメージを抱いているのではないでしょうか。今回は、走ることが苦手なお子さんでも楽しみながら速く走れるようになる「とっておきのトレーニング方法」をお教えします。小学校低学年に向いているトレーニング方法今も昔も、「持久走が好き!」という子より、「苦手だな……」と感じている子のほうが圧倒的に多いですよね。大会に向けてトレーニングをする前に、まずは持久走への抵抗感や苦手意識を払拭することが大切です。【1. スロージョギング】大人が趣味や健康のために行うランニングやジョギングは、楽しみながら自分のペースでできますよね。一方、小学生が体育の授業の一環として持久走を行う場合、たとえ「無理のないペースで」と指示されても、周囲に遅れをとらないようにと、つい速く走ってしまうもの。そのため、すぐに息を切らし、「しんどい、つらい」といったネガティブなイメージにつながってしまうのです。そこで取り入れたいのが「スロージョギング」。隣の人と会話ができるくらいの運動の強さで行うジョギングを意味します。小学生を対象に、岡山大学がこのスロージョギングを取り入れた研究を行ったところ、子どもたちの持久走に対する意識の変化が見られました。方法:低学年でも余裕を持って歩くことができる速度である時速4kmで、8分間スロージョギングの持久走を行う。ゆっくりだけど歩かず続けて同じペースで走るように指示。工夫:できるだけ単調にならないようにBGMを流す、走行中にすれ違うことができるコースを設定し、ハイタッチなど児童たちがコミュニケーションを図りながら楽しく走ることができるようにした。結果:すべての学年においてスロージョギングの授業の前に比べ、持久走に対する意識が「楽しい」「気持ちいい」といった肯定的なものに変化した。(引用:岡山大学大学院教育学研究科研究集録|小学生を対象にしたスロージョギング持久走についての実践的研究)無理のないゆっくりとしたペースで、まずは「走るって楽しい!」というイメージづけから始めてみるといいですね。【2. 5分間走】日本陸上競技連盟が承認している「小学生の長距離・持久走についてのガイドライン」で示した10項目の中には、「持久的体力向上の運動処方として「5分間走」が勧められる」という項目が含まれています。その理由として、「心肺への負担(苦しい時間)が短いことと同時に、フォームが崩れない時間(距離)であること」が挙げられています。箱根駅伝王者・青山学院大学陸上部の原晋監督も、著書『1日10分走る青トレ』(ゴルフダイジェスト社)で、大人向けとして「10分・1,500m」走ることを推奨しています。これもやはり、フォームが崩れない時間・距離を目安としています。5分や10分と聞くと短いように感じますが、負担を減らして合理的に走ることが結果に結びつくのなら、ぜひ試してみたいですね。【3. 正しい走り方】持久走も徒競走も同じ「走る運動」。でもそれぞれ速く走るためのフォームや注意点は違います。持久走では長い距離をラクに走るために適した走り方があるのです。<持久走の正しいフォームと大切なポイント>1.姿勢を良くして走る!姿勢が悪いと呼吸をしにくくなったり、疲れやすくなったりする。しっかりと背中を伸ばして走ろう。2.苦しくなったら息を大きく吐き出す夢中で走っていると呼吸がおろそかになってしまいがち。息を大きく吐くことでたくさん吸うことができるので、呼吸がラクになる。3.腕は力を抜いて軽く振る徒競走の時のように大きく速く振るとすぐに疲れてしまう。力を抜き、足のリズムに合わせて軽く振るのが◎。正しい知識をもとにした効果的なトレーニングは必ず結果に結びつきます。速く、ラクに走れるようになることで、つらくて苦しい持久走を少しでも楽しめるようになるのではないでしょうか。「外遊び」で体力アップ!おすすめは鬼ごっこ!?持久走に必要なものは“体力”です。しかし、体力をつけるために毎日トレーニングをすることは、子どもだけではなく親にとっても大きな負担になります。だからこそ、普段の遊びの中で自然に体力がついてくれたらいいですよね。オリンピック選手にも指導しているゆめおり陸上クラブの松原薫コーチによると「小学生の持久走の練習では、「無理をしないこと」が一番のポイント」とのこと。だからこそ、遊びの中でたくさん身体を動かして、徐々に体力をつけていくことがおすすめなのです。公園を走り回る、お友だちと鬼ごっこをする、それだけでも体力アップにつながります。StudyHackerこどもまなび☆ラボでも、たびたび「外遊び」の重要性についてお伝えしてきました。『体力の向上だけではない外遊びのメリット!子どもが外遊びで伸ばせる力5つ』『一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす!幼児期に重要な3つの外遊び』外遊びをする機会がめっきり減った現代の子どもたち。しかし、外遊びをすることで得られるメリットは計り知れません。1. 鬼ごっこ・基礎体力がつく・体を動かすことの楽しさと意欲を生む・瞬間的な判断力、先を読む力が養われる・素早く動きを切り替える瞬発力「走る、歩く、よける」などが含まれる鬼ごっこは、子どもが楽しく体を動かせる遊びのひとつ。思いきり走って逃げてもよし、緩急をつけながら逃げるのもよし。短時間でもかなりの運動量になりますね。2. ボール投げ・体のバランス感覚が養える・手足を巧みに動かす「巧緻性(こうちせい)」が身につく・「空間認知能力」の習得・スピードに対する認知力どのタイミングでどのように手足を使えば相手にボールが届くのかなど、体全体の動作コントロールが身につきます。大きさの違うボールをいくつか用意して遊ぶほうが効果が高いそうですよ。3. 砂場遊び・「立つ」「座る」という動作を繰り返すのでいい運動になる・「運ぶ」「積む」「持つ」「掘る」ことで体のバランス感覚が養える砂を詰めたバケツを運ぶ、そのバケツを逆さにして、そーっと中身を出す。山を崩さないようにトンネルを掘るなど、微妙な力の加減が必要となってくる砂場遊び。運動能力ではありませんが、社交性や想像力の向上にもつながりますよ。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす!幼児期に重要な3つの外遊び。)走る・跳ぶ・ボールを投げて受ける・ぶら下がる・つかむといった動きは、神経機能の発達を促して運動能力を向上させます。また、走る・歩く・よけるといった瞬発力が必要とされる「鬼ごっこ」は、体力向上にもってこい!そしてなにより、日頃から身体を動かしていることで持久力がアップして、長い距離を走り抜く力を養うことができます。子どもが自信を手に入れる「魔法の言葉」とは?最後に、子どもの心と身体の健康のために、私たち親が日頃から気をつけておきたいことをお伝えします。メンタル面では、励ましの言葉やポジティブな思考を育むためにどうしたら良いか、また健康面では、規則正しい生活と朝ごはんの大切さについて考えていきましょう。【1. 「〇〇君ならできるよ!」】普段から子どもを褒めていますか?多くの日本人は我が子を褒めることが照れ臭く、他人から褒められても謙遜しがちだといいます。しかし、子どものやる気を削ぐのも、やる気を育てて実力以上の力が出せるようになるのも、実は親の声かけが大きく関係しているのです。教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏は、中学生100人を対象に「親に言われてうれしかった言葉」を調査しました。それにより導き出した『子どもに繰り返し言ったほうがいい言葉』の中に、「オマエならやれる!」という言葉があります。心配のあまりつい「大丈夫?」「本当にできる?」「難しいんじゃない?」といった言葉をかけてしまいがちですが、本来ならば、子どもを信じて励まし、背中を押してあげるのが親の役目です。もし子どもが「ちゃんと最後まで走れるかな……」と不安がっていたら、ぜひ「〇〇君ならできるよ!」と声をかけてあげましょう。それだけで子どもは自己肯定感と自信を手に入れて、本来持っている力をさらに伸ばすことができるのです。【2. 朝食メニューは炭水化物+炭水化物】持久走大会当日の朝。緊張のあまり食欲がなかったとしても、最後まで走りきる体力を維持するためにはきちんと食べさせましょう。逆にあまりたくさんの量を食べてしまうと苦しくて走れなくなってしまうので、適量を食べさせる工夫が必要です。プロアスリートも取り入れているスポーツ栄養学をもとにしたメニューでは、試合当日の朝ごはんは集中力を高め、身体を動かすためのエネルギーを補給することを重視しています。たとえば「おもち」と「雑炊」、「うどん」と「おにぎり」など、普段の朝ごはんとは少し違う組み合わせになりますが、即効でエネルギーに変わる炭水化物の量を増やすことが効果的です。また前出の松原コーチによると、胃腸内の炭酸ガスを抑えるヨーグルトもおすすめとのこと。特別なものを作る必要はありませんが、普段の朝ごはんにちょっと変化をつけることを心がけましょう。【3. 規則正しい生活】健康を維持して体力をつけるには、規則正しい生活を送ることが一番です。しかしその習慣は簡単に身につくものではありません。朝すっきり目覚めるには、前日から生活リズムを整えておく必要があります。文部科学省が推奨している『早寝早起き朝ごはん』運動は、たくさんの自治体や企業が賛同して大きな活動へと広がりを見せています。生活習慣の乱れは学習意欲、体力、気力の低下の要因のひとつとして指摘されており、社会全体の問題として考えなければなりません。まずは家庭でできることとして、生活環境を整えてあげましょう。夜更かしせずに、早く寝るためにはどうしたらいいか?朝なかなか起きられないのなら何を改善したらいいか?今抱えている問題点を親子で一緒に考えてみましょう。「元気な1日」を毎日過ごしていれば、それが習慣になります。すると、持久走大会のような「ここぞ!」の時にも力を存分に発揮できますよ。以前のコラム(学力低下を招く「睡眠不足」を改善しよう!子どもがスッキリ起きられるポイント7つ)でご紹介した「気持ちのいい朝を迎えるためのポイント」をおさらいします。1.寝る時間・起きる時間を親子で決める2.朝日を浴びる3.寝る前の環境を整える4.昼寝の時間を見直す5.前日の夜に準備をする6.正しい姿勢で寝る7.家族みんなで(同じ時間に)寝る持久走大会を楽しむためには、日々の暮らしを見直して生活リズムを整え、しっかりと最後まで走り抜く体力をつけることが大切です。本番当日までにできることを積極的に取り入れたいですね。***持久走大会に向けてトレーニングすることは、体力や運動能力のほかに、「最後までやり抜く力」も養います。走っているときは苦しくても、ゴールした後に得られる達成感や清々しさは何ものに代え難いでしょう。きっと将来、困難な状況に打ち勝つ強さにもつながるはずです。(参考)一般社団法人日本スロージョギング協会|スロージョギングとは岡山大学大学院教育学研究科研究集録|小学生を対象にしたスロージョギング持久走についての実践的研究小学生長距離・持久走検討プロジェクト|日本陸上競技連盟「小学生長距離検討会議(プロジェクト)」が示した「小学生の長距離・持久走についてのガイドライン」原晋著(2017),『1日10分走る青トレ』,ゴルフダイジェスト社学研親子のための運動・遊び方情報誌ソトイコ!2018年度秋号|千葉真子さんの走り方教室正しいフォームはこれだ!!ベネッセ教育情報サイト|【小学生のマラソン大会】どんな練習をするといい?本番に勝つための戦略は?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|体力の向上だけではない外遊びのメリット!子どもが外遊びで伸ばせる力5つStudyHackerこどもまなび☆ラボ|一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす!幼児期に重要な3つの外遊びPRESIDENT Online|子供が見違える「短い声かけフレーズ10」明治監修(2017),『かんたん!おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん:栄養満点パワーチャージレシピ』,金の星社「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|「早寝早起き朝ごはん」運動についてStudyHackerこどもまなび☆ラボ|学力低下を招く「睡眠不足」を改善しよう!子どもがスッキリ起きられるポイント7つ
2018年11月10日家族で海外旅行に行ったり、毎日世界のニュースを目にする昨今、「外国」に興味を持つ子どもたちはたくさんいるはず。世界にはどんな場所があって、そこには何があり、どんな人たちが住んでいるのでしょうか。そんな興味をさらに掻き立てるのにおすすめなのが、ミロスラフ・サセック作の「子どもの世界旅行シリーズ」、いわゆる“This isシリーズ”です。絵本でありながら、ガイドブックまたは教科書と言ってもいいほどの内容の濃さ、魅力的なイラスト満載の親子で楽しめる名作をご紹介します。ミロスラフ・サセックとThis isシリーズについてサセックは1916年にチェコスロバキアのプラハで生まれました。画家志望でしたが、両親の反対もあり建築を学びます。1948年にプラハを離れてミュンヘンに移った後の1959年に、シリーズ第1作目の「This is Paris」が誕生しました。その後、このシリーズは全18冊が出版され、人気を博します。1959年には「This is London」で、翌1960年には「This is New York」で、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本大賞を連続受賞するなど、絵本作家、イラストレーターとしてのサセックの夢が叶ったのです。サセックは、実際に旅した現地で全ての絵を描いたそうです。愛嬌のある可愛らしいイラストでありながら、細かく書き込まれたディテール、リアリティのある街の風景画は、その光景を目の前にして描かれたものだと思うと納得ですし、そこには建築で学んだスキルも生かされているのでしょう。写真のように正確な描写でありながら、息を吹き込まれたように生き生きと、写真よりも魅力的なイラストなのです。1980年、サセックは旅先のスイスにて亡くなってしまうのですが(享年63歳)、「もっとたくさんの街をサセックの目と筆を通して見てみたかった!」と残念でなりません。This isシリーズの楽しみ方1. “教科書”として読むThis isシリーズの内容は、ひと言でいうと「街の紹介」です。絵本と思って読むと、その本格的な“紹介”に驚かれることでしょう。街の歴史、エリアの特色、観光地、人々の生活に至るまで、実に的確に言葉と絵で説明されています。それぞれの場所の特色は絵の色味にまでこだわって表現されていて、空気感まで伝わってくるように違いがわかります。行ったことがある場所ならなおさらです。文字も多く、絵本と言ってもミニ知識も含め、小学生のお子さんには学びの多い本となるでしょう。だからと言って堅苦しくなく楽しめるのが、最大の魅力です。(※古くなった情報は巻末で最新情報がアップデートされています)2. “自分の「This is どこそこ」をつくる”日本復刻版の日本語訳を担当しているのが、味わいあるエッセイが人気の文筆家・松浦弥太郎氏です。とつとつとした語り口調と心地いい言葉のリズムが、サセックの緻密な描写の風景画と表情豊かな人々の絵と雰囲気に、とてもしっくり馴染んでいます。松浦氏は昔からサセックに愛着を感じていて、復刻版実現の折には大変な尽力をされています。それだけ、子どものみならず大人をも魅了する絵本なのです。その松浦氏がインタビューの中で楽しい提案をされています。わたしの『This is New York』とか、僕の『This is Paris』、あるいは、『This is 中目黒』、『This is 表参道』でもいい、自分なりの『This is どこそこ』を作る。そんな旅をしてみたらどうかな、って。(引用元:ほぼ日刊イトイ新聞|松浦弥太郎さんにきく、旅のはなし)サセックのスタイルをまねて、自分の好きな場所のThis isシリーズを作ってみるのは楽しそうですね!親子で一緒に旅した場所なら一緒に、お父さんお母さんだけが旅したことがある場所なら、サセックの本になぞらえながら子どもに想い出を語る形でも。旅行の計画がある場所なら、「This isプロジェクト」として準備して、帰国後に親子でアルバムを作るようにまとめるのもいいかもしれません。外国でなくても、国内の好きな場所を調べてみるのも楽しい学びにつながりそうですね。本を読んだ後も、ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。This isシリーズおすすめ5選1. 『This is Paris』シリーズ第1作目。パリを旅行中だったサセックは「子どものための旅行本を作ろう!」と閃きます。ページを開けて最初の言葉は「さあ、到着しました」。パリの全景とともに、一気にその世界に引き込まれます。エッフェル塔や凱旋門、ルーブル美術館など、パリの街を散策している気分にさせてくれます。サセックが街角で見た光景がそのまま焼き付けられているかのようなイラストにパリの魅力が輝く1冊です。2. 『This is London』シリーズ第2作にしてシリーズ中ベストと言われる1冊(ニューヨークタイムズ最優秀絵本大賞受賞作品)です。始まりは、いきなり「なんにも見えないけれど」と、霧のロンドンの場面。パリに比べると少しどんよりした空気感とグレイッシュな色味が“ロンドン”をよく表しています。「バスに乗るには行列に並ばなければいけません」と、ずらりと並ぶ乱れない列には「日本と同じだね!」などの発見もありそうです。名物の2階建バスに乗って、楽しくロンドン観光しましょう!3. 『This is New York』ニューヨークタイムズ最優秀絵本大賞、アメリカ青少年クラブ児童文学最優秀賞をダブル受賞した、シリーズ代表作です。ニューヨークという都市の起源から始まり、見上げる摩天楼、行き交う車や人々、人種のるつぼならではのエリアごとの特色など、ざわざわと忙しいニューヨークの雰囲気がページから伝わってきます。それもそのはず、サセック本人が後に本の中で語っています。「あんな場所は生まれて初めてだった。毎日とにかく忙しく動き回って、それは本が完成するまで続いたよ。(筆者抄訳)」ヨーロッパで暮らすサセックには、ニューヨークは少し雑然としすぎていたのでしょうか。彼の気ぜわしさも本のエッセンスとなっているようです。4. 『This is Ireland』“現存する本の中で一番緑色の本”!そう、緑はアイルランドの色です。バスもお店も制服も、なんでも緑のイメージです。それがアイルランド。1都市がテーマのものが多いのですが、これは国全体がテーマ。はじめに国の地理、歴史、人口などが解説されていて、アイルランドの概要について知ることができます。郊外には荒涼とした自然が広がり、湖や古城や遺跡などがあり、総じて静かでトーン低めの空気感が漂います。筆者はアイルランドに行ったことがあるのですが、まさに”This is Ireland”が表現された1冊です。5. 『This is United Nations』国ではなく、国連がテーマ。本が書かれた1968年当時は、まだ国連が世界平和の希望の星でした。国連の役割や加盟国(国旗で表示)、国連ビル内部の紹介にいたるまで、国連という組織と世界平和への学びを得るのに素晴らしい教材です。今の世界と国連の現状とを比べて、親子で平和について考えるいい導入になるでしょう。難しいお話も可愛らしいイラストで楽しく学べます。***1960年前後に書かれたシリーズなので、情報など古くなる部分もありますが、その魅力が衰えることはありません。それは、サセックが自分の目で見て感じて、土地の本質を見抜いて忠実に表現しているからなのではないでしょうか。ノスタルジーも加わり、さらに輝きを増している気さえします。読んだらきっとお気に入りの場所が見つかるはず。ぜひ手にとって親子で“世界旅行”を楽しんでみてください。写真◎長野真弓(参考)SPACE SHOWER BOOKS|ミロスラフ・サセック生誕100周年!ほぼ日刊イトイ新聞|松浦弥太郎さんにきく、旅のはなしThis is M.Sasek
2018年11月09日今どきの若者たちのコミュニケーション能力低下は、学校や新卒採用などの現場において、ずいぶん前から言われ続けてきました。今の若い世代には、社会で求められる高度で複雑なコミュニケーションに対応できる力が備わっていない、という話は、多くの皆さんにとって「耳にタコ」ではないでしょうか。そして、若者だけでなく、実は子どもたちについても、同じことが言われています。ではなぜ、彼らのコミュニケーション能力は低いと言われているのでしょう。今の子どもたちが、将来社会人生活を送るのに十分なコミュニケーション能力を身につけるためには、どうすればよいのでしょうか。大事なのは、日頃の家庭でのコミュニケーションの在り方です。子どもたちのコミュニケーション能力を伸ばすために、親が家庭でできることを紹介します。コミュニケーション能力低下の背景子どものコミュニケーション能力が低くなったと言われる背景には、社会の大きな変化があります。・ITの発達例えば、夕食の後に、翌日学校で使う持ち物の用意をしていて、何を持っていけばよいのか忘れていたことに気づいたとき、子どもたちはどうするでしょうか。かつては、友だちの自宅へ電話をかけ、応答した家の人に友だちへの取次ぎをお願いし、代わって出た本人に確認をする、というやり方が一般的でした。ですが今では、自分のスマートフォンから友だちのスマートフォンへ、メールやSNSでダイレクトに、しかも声を発することなく、時には絵文字だけでメッセージを送り、確認することができます。今は昔に比べて、友だちと連絡を取り合う際、自分が発声する言葉によるコミュニケーションが必要ない時代なのです。・少子、核家族化もうひとつ、普段の家庭での過ごし方をイメージしてみましょう。今より古い時代には、子どもたちが学校や園から帰ってくると、友だち同士、近所で集まって遊ぶ姿がよく見られたもの。ですが今ではそのような光景を見ることは少なくなりました。そもそも子どもの数が少なくなっているうえに、習い事などで子どもたちの放課後の過ごし方が多様化し、お互いに遊ぶ時間を合わせにくい現状があります。また、夕食時には、同居するおじいちゃんおばあちゃんも含め大人数で食卓を囲んで、その日あったことを話し、いろんな世代の意見を交えながら団らんする――。そんなシーンも、昭和を描いたドラマやアニメでしか見かけなくなりましたよね。こうした家庭環境の変化により、子どものコミュニケーション環境は今と昔で大きく変わってきたのです。コミュニケーション能力の低下による弊害1:人間関係のトラブル社会の変化に合わせるように、今どきの子どもたちが人と関わる範囲は、かつてに比べて小さなものになりつつあります。狭いコミュニティの中で、仲間内や家族とだけ、単語レベルでの短い言葉でやり取りすれば済むようになっているのです。しかし、学校生活では、こうしたコミュニケーションのスタイルがトラブルにつながるケースも。言葉が足りないせいでクラスメートとの意思疎通が不十分になり、人間関係が希薄になったり誤解につながったりすることがあります。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏は、現代の子どもたちのコミュニケーション能力と人間関係の築き方について、次のように述べています。現代の若者や子どもたちの対人関係に関する能力については、「良好な対人関係をつくる能力が低下している」という否定的な見方がある一方で、「周囲の人間関係を的確に把握して、それに自分を合わせるなど高い能力がある」という肯定的な見方もあります。ただ、今時の子どもたちには、仲間同士では必要以上に気を使うのに対して、大人など異世代や仲間以外に対する人間関係には無関心という傾向もあるように思われます。いずれにしても、昔に比べれば、全体的なコミュニケーション能力は低くなったと言っても過言ではないでしょう。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭から)「やばい」「うざい」「きもい」などの無思慮な短い言葉でのやりとりを許し合えるような、小さなコミュニティで過ごしがちな、今の子どもたち。彼らは、人との言葉のやり取りが少ない分、空気を読みながら行動することは得意かもしれません。ですが、身近な関係から一歩外へ出た途端、お互いの言葉が足りないことはトラブルの原因になります。自分の感情をうまく言葉で伝えられなければ、人間関係がうまくいくはずはありませんよね。コミュニケーション能力の低下は、良好な人間関係を築く能力の低下とも言い換えられるのです。コミュニケーション能力の低下による弊害2:将来の就職への悪影響子どもたちの人生をもう少し長い目で見てみましょう。社会人生活、とりわけその第一歩となる就職にも、コミュニケーション能力の低下は大きく影響を及ぼします。全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が2009(平成21)年秋に実施した「学生生活実態調査」によると、目上の人との会話が得意で、家族との会話が多い学生ほど、就職内定率が高いということがわかりました。(引用元:同上)この調査によると、就職が内定している大学4年生は、4年生全体の平均と比べ、家族との会話や友人の数が多く、クラスやサークル等の団体の中でのリーダー経験があり、目上の人との会話が得意で、周囲の意見を尊重できるという特徴があることが明らかになったそうです。幅広い人間関係を形成しているか、自分から積極的に人に働きかけられるか、周囲に共感できるか。コミュニケーション能力の高さは、就職活動の結果までも左右するわけなのです。家庭でできるコミュニケーション能力アップ術子どもたちの明るい将来のために必要不可欠なコミュニケーション能力は、家庭での取り組みによって向上させることができるもの。そこで、家庭ですぐに実践できるコミュニケーション能力アップ術を6つ紹介します。この中にピンときたものがあれば、ご自身のお子さんに合わせて日常会話に取り入れてみてはいかがでしょうか。1. 返事をさせ、言葉のキャッチボールをする親が子どもに話しかけ、子どもから言葉を返させましょう。話をYes/Noで終わらせず、自分の意見をはっきり相手に伝えることで、自然と発する言葉は増えていきます。例えば、お母さんが晩ご飯にシチューを作ろうとしているとき。子どもに「今夜はシチューにしようと思うんだけど」と話しかけるだけでは、子どもからの返事は「いいよ」か「やだ」で終わってしまいます。そこで、次のように問いかけて子どもから具体的な言葉を引き出しましょう。親:今日の晩ご飯はシチューにしようと思うんだけど、〇〇ちゃんはシチューに何を入れたい?子:カボチャを入れて!親:わかった、じゃあカボチャを入れようね。2. どちらか選ばせる「AとBどっちにする?」と選択肢を与えることで、子どもが自分で選ぶ経験を積み重ね、自分の意見をもつ訓練になります。さきほどのシチューの例を続けましょう。親:カボチャ入りのシチューだったら、一緒に入れるのは鶏肉が良いかな?ソーセージが良いかな?子:そうだなー、鶏肉がいい!鶏肉大好きだから!3. 好奇心をもたせるなぜ?どうして?という疑問がコミュニケーション能力を鍛えます。ですから、子どもに疑問や好奇心を抱かせるような場を用意してあげましょう。例えば、シチュー作りをしている様子を子どもに見せ、「ニンジンはカボチャより煮えるのに時間がかかるんだよ」と説明すれば、子どもは「どうして?」と疑問に思うはず。親は、子どもが疑問や興味をもったタイミングを逃すことなく、コミュニケーションを広げていきましょう。4. 長い文章で説明させる親子で長い文章をやりとりするようにしましょう。短い言葉で会話を済ませるのではなく、具体的な内容がわかる文章を作って話すのがおすすめです。子どもから具体的な言葉を引き出すには、親の問いかけの仕方にも工夫が必要。例えば、学校から帰ってきた子どもに、親が学校での出来事を尋ねるとき。「学校は楽しかった?」と聞いたら、子どもは「楽しかった」と答えて終わりです。次のように、子どもが説明しやすいような問いかけをしてみてください。その際、親はなるべく聞き役に回り、子どもがたくさん話せるようにしましょう。親:今日は図工で絵の具を使って絵を描いたんだよね。どうだった?子:うん、面白かった。親:どんなところが面白かったの?子:筆で色を混ぜるところ!親:へぇ!何色と何色を混ぜて、何を描いたの?子:青と黄色と白を混ぜてね、……5. 正解は1つではないことを伝える本を読み聞かせたあとで感想を言い合ったり、テレビ番組を見て意見を出し合ったりして、正解は1つではないのだということを理解させましょう。学校の勉強では、正解か不正解かを求められることが多く、子どもたちは常に正解を求めようとしがちです。著述家で元公立中学校校長の藤原和博氏は、そうした学校教育を経て育った子どもは、何にでも正解があると思うようになり、思考停止してしまうと言います。しかし、実社会には「正解」のない問題がたくさんあるのが現実ですよね。さまざまな考え方があること、正解不正解で片づけていい問題ばかりではないことを、親子のコミュニケーションの中で理解させるのが大切です。6. 多様な人間関係のなかに身を置いてみる核家族化や地域コミュニティの希薄化によって、子どもたちがさまざまな大人と接する機会は減る一方です。地域の行事や公園・駅前で開催されるイベントなど、さまざまな人と触れ合える場に出かけてみましょう。人との関わりが少ないままでは、多様なコミュニケーションに対応できる力が身につくはずはありません。家族以外の大人、年上のお兄さん・お姉さんや自分より小さな子どもなど、様々な人とコミュニケーションをとる機会を増やしましょう。藤原氏は、子どもたちには「斜めの人間関係」を築かせることが重要だと言います。人間関係も家のようなものです。縦の関係というのは「柱」です。それから横の関係は「梁」です。それだけだと地震が来ると倒れてしまう。だから、「筋交い」、斜めの関係が必要です。ちょっとやそっとの人間関係の揺れでもびくともしない子を育てるためには、この斜めの関係をもう一度復興する必要があります。(引用元:内閣府|情報誌「子どもと若者」~子どもと若者への支援に向けて~2009/No.5コミュニケーション力を高めるために)親の私たちも一緒になって、多様な人と積極的にコミュニケーションを取りたいものですね。***現代の社会の仕組みを考えれば、子どものコミュニケーション能力は、自然に任せていてはなかなか伸びないようです。言葉でコミュニケーションをとる機会を意識的に増やしていきましょう。とはいえ、親が何でも先取りしてヒントを出したり代弁したりするのは禁物。じっくり焦らず見守っていってくださいね。(参考)文部科学省|コミュニケーション教育推進会議(第1回)「コミュニケーション能力」に関する指摘・調査等内閣府|情報誌「子どもと若者」~子どもと若者への支援に向けて~2009/No.5コミュニケーション力を高めるためにベネッセ教育情報サイト|就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭から学びの場.com|子どものコミュニケーション力は落ちているのか北海道教育委員会|ほっとねっと July 2016 正しい言葉で心のキャッチボールをStudyHackerこどもまなび☆ラボ|ついに子どもたちにも「語彙力」ブーム到来!語彙力格差に負けないためにできることStudyHackerこどもまなび☆ラボ|知的好奇心がぐんぐん伸びる!東大生の多くが経験している「ハマり体験」とは
2018年11月08日今やすっかり定着した「食育」という言葉。ここ日本では2005年に「食育基本法」が制定され、急速に「子どもと食」についての意識が高まってきました。この「食育基本法」は日本独自の法律であり、国民一人ひとりが食育の推進に取り組むことを目的としての制定されたものです。一方で、海外ではどうでしょうか。生活環境の違い、食文化の違い、食料自給率の違い……あらゆる点で日本との違いがあるにせよ、世界中どの国であっても“健康な人生を送りたい”“子どもに食の大切さを伝えたい”という願いは同じはずです。ここでは、世界各国の食育事情から見えてくるものや、日本でも取り入れられそうなアイデアをご紹介します。今回は、言わずと知れた美食の国・フランスです。グルメ大国フランス。その食育の歴史をひもとくヨーロッパで初めて食と健康についての政策を打ち出したフランスは、まさに食育先進国といえるでしょう。活動の中軸となる国の機関「フランス国立食文化評議会(CNAC)」(1989年設立)は、食の問題に取り組むだけではなく、文化としての食を広める役割も果たしています。その食育活動の中でも重要な位置を占めるのが『味覚週間』と呼ばれる国民的な食育イベントです。1990年にスタートしたこのイベントは、毎年10月の第3週目にフランス全土で開催されます。その目的は、「バランスの取れた食生活を促進する」「食体験を通じ、味覚や風味について様々な提案を行う」といった消費者目線のものから「安全で良質な食品の生産者を勇気づける」「食品の産地、生産方法、質について信頼できる情報を提供する」などと生産者のメリットを考えられたものまで多岐に渡っています。近年では数百もの自治体が参加し、国立食文化評議会や農業・食品・水産省なども加わるまでに発展した結果、国民の8割以上に認知される国民的食育活動へと成長を遂げたのです。この『味覚週間』で実施される取り組みの中で最もフランスらしさを感じさせるのが「味覚のアトリエ」と呼ばれるイベントです。<味覚のアトリエとは?>フランス全土で行われる食のイベント活動。有名な星付きレストランなどの飲食店は、この期間のためのメニューを用意し、学生には学割を利用した特別価格で料理を提供する。この取り組みにより、日頃そのようなレストランを利用できない層が新しい味覚を発見する機会になる。「子どもが有名店で食事なんて」「大人になってからでいいじゃない」と“本物の味”から遠ざけるのではなく、有名店の本格的な味覚に触れることを推奨する、というのがなんともフランスらしいですよね。フランスの学校は食堂も学びの場日本のように給食がないフランスでは、子どもたちは昼休みに自宅に戻って昼食をとっていました。しかし近年では共働きの家庭が増え、ほとんどの子どもたちは食堂(cantine:カンチーヌ)でランチをいただきます。フランスは学校食堂を「食育の場」として考えています。そのため、生徒にきちんと座りきちんと食べることを体験させ、食のバリエーションを伝えることを大切にしているのです。さらに、教育省や経済・財政・産業省、農業・水産省といった関係各省の大臣が連名で「学校食堂での食事と食の安全」と題する指令を出し、あらゆる方面から学校食堂をサポートしています。たとえば、推奨される摂取エネルギーの配分を【朝食2割、昼食4割、4時の間食1割、夕食3割】とし、「昼食はこの割合に従って用意すること」と定めるなど、かなり細かく制定されています。どうしてここまで細かいかというと、しっかりとした理念に基づいたうえで学校食堂を「食育の場」としているからです。この学校食堂に関する指令では、次のような点を教育活動の軸として掲げています。1.生徒の味覚を育て、伝統の料理を評価し、質の良い農産物を推奨すること2.味覚をはっきりと表現できない生徒に対し、味覚に関する正確な言葉遣いや表現力を養わせること3.食品製造の方法や食物の成分について説明すること4.その土地の特産物を賞味すること5.香り、香辛料、エキスを発見すること(引用元:国立国会図書館|ISSUE BRIEF NUMBER 450|欧米の食育事情)香辛料やエキスを自分の舌や鼻で感じ取ることは、繊細な味覚を養ううえで非常に重要です。フランス人のグルメな舌は、こうやって小さいうちから鍛えられているのかもしれませんね。ここで注目すべきは「2」の項目について。味覚と言語能力や表現能力の関係性について、次で詳しく説明しましょう。味覚を言語化する→味覚が研ぎ澄まされる→さらに言語表現が豊かになる!フランスでは食育の要である『味覚教育』と『栄養教育』の授業に多くの時間を割いています。独自のメソッドに基づいたその内容は、基本的なことを子どもにもわかりやすく教えるだけはなく、食を通じて五感を研ぎ澄まし、言語表現にまでつなげることを目的としています。ここでは、ベネッセが2008年に現地で調査した授業内容の一例をご紹介します。8歳~10歳、180人の小学生を対象とした味覚授業は非常に興味深い内容です。まず、子どもたちに五感について説明したあと、さまざまな感覚機能を言語で表現できるように促します。具体的には、以下のような方法で学びます。・匂いを嗅ぎ分け、なんの匂いに似ているか言葉で伝える・何枚かの違う布を触らせた感触を言語で表現させる・料理や飲み物の感触(ねっとりしている、サラサラしている、バリバリしている、など)を表現させるフランスでは自分の思っていることを論理的に、相手にわかるように表現することを小学校から徹底して教育されます。それは食育の一環である味覚教育でも同じです。子どもたちが“味覚の言語化”を学ぶことは、味覚をより研ぎ澄ます効果があり、その鋭敏になった味覚が言語表現をより豊かにする、という感覚と言語との相互作用効果が期待できるといいます。さらにもうひとつ。味覚を言語化できるようになることで思わぬ利点も生まれます。それは「食わず嫌い」が減るということ。見ただけではその味が想像しにくい食べ物への抵抗感は、未知のものに対する恐怖と似ています。その恐怖を払拭するには、言語表現を介した想像力が有効です。自らの想像力により先入観を取り払い、新しいものや知らないものにも挑戦してみようというチャレンジ精神が芽生えるのです。より実戦的な栄養教育を取り入れる効果とは同じくベネッセが現地調査した『栄養教育』では、どのような授業が行われているのでしょう。ここでご紹介する実例は、9歳の小学生24名を対象としたもの。まず、子どもたちには昼食前にメニューを渡し、「栄養アドバイスマシーン」という機械で食べたいものを選ぶように促します。フランス料理らしく前菜→メイン料理→デザートの順番で選ぶよう指示されますが、面白いのは選んだメニューによって与えられるポイントが異なるということ。栄養バランスの良し悪しによってポイントが進呈され、子どもたちは自分が選んだメニューを食べながら「自分のポイントがどのような理由で少なかったのか」などを栄養士を交えて話し合います。このようにゲーム感覚で楽しみながら実践的に学ぶことは、子どもたちにとって深い理解につながることが期待できます。日本に比べて早い段階から「自分で考え、自分で選ぶ」ことに重点を置いた教育をしているのは、食文化の違いも大きいのかもしれませんね。ご存知の通り、フランスの食事はスープ、前菜、メイン料理、チーズやデザート、果物、というように一皿ずつ順番に運ばれます。そのため、味のバランスや栄養の偏りを頭の中で考えてからメニューを決定しなければなりません。つまり、子どもたちの将来の食生活に直結するからこそ、授業の一環として時間をかけて取り組んでいる様子がうかがえます。***美食の国フランスでは美味しい食べ物があふれ、人々は食べることを楽しんでいます。ただしそれは、フランスが国として自国の食文化を守り、受け継いでいくことを前提として制定された教育プランの賜物でもあるのです。「味覚を確立する」という教育、ここ日本でも積極的に取り入れてほしいですね。(参考)農林水産省|食育の推進StudyHacker こどもまなびラボ|「食育基本法」とは?以外に知らない基本理念と内容をまとめてみた国立国会図書館|ISSUE BRIEF NUMBER 450|欧米の食育事情benesse|若手研究者現地調査レポート|フランスの小学校教育における食育TOKYO GAS|ウチコト|【食育】フランス生まれの味覚教育「味覚の一週間」とは?著名シェフによる特別料理教室もご案内!
2018年11月08日「巧緻性(こうちせい)」という言葉を聞いたことはありますか?知っているという方は、お子さんの小学校受験を考えているのかもしれませんね。小学校受験をしなくても、巧緻性は子どもの発達に欠かせない大事な要素。今回は、巧緻性の意味と、子どもの巧緻性を伸ばす方法をご紹介します。巧緻性とは何か小学館の「デジタル大辞泉」によると、「巧緻」とは「精巧で緻密なこと」。そして「巧緻性」とは、一般的に指先の器用さを意味します。同時に、巧緻性は小学校受験で課される選抜試験のひとつでもあります。学校によって異なりますが、小学校への入学試験で行われるのは、筆記試験、面接、運動能力を見る試験など。そのなかに、子どもの巧緻性を見る試験もあります。ハサミを使って工作をさせたり、ひもを結ばせたりするのです。フォレスト幼児教室(東京都練馬区)の室長である武田澄子氏によると、巧緻性の試験では、以下の作業がスムーズにできるかどうかを見られるのだそう。「切る」「貼る」「折る」「塗る」「結ぶ」「巻く」「通す」「丸める」「包む」「ちぎる」(引用元:学研出版サイト|【連載コラム】『ゼロからわかる「お受験」講座』第14回 合格するための「行動観察」トレーニング—その(2)「巧緻性」)上記のような動作は、たいていの大人にとって難なくこなせるものでしょう。しかし、5~6歳の幼児にとってはどうでしょうか。自身が小学生だった頃を思い出してみてください。高学年になっても折り紙をうまく折れない子や、ちょう結びができない子はいませんでしたか。小学校に入る前の子どもにとっては、さらに難しいこと。高い巧緻性を獲得するには意識的なトレーニングが必要なのです。巧緻性を鍛える意味本記事は、子どもの巧緻性を育てることを推奨しています。しかし、それは受験のためではありません。手指の巧緻性を研究する川端博子教授(埼玉大学)らが2007年、小学6年生518名を対象に実施した調査によると、巧緻性を測定する「糸むすびテスト」で成績が上位だったグループは、そうでないグループと比べてさまざまな学習活動を楽しんでいたそう。「漢字練習」「計算練習」「リコーダー」「習字」「裁縫」「工作」の「好きな程度」を、糸むすびテストの成績別・男女別に集計したところ、男子の「リコーダー」および女子の「漢字練習」を除く全ての学習活動において、成績上位グループほど「好きな程度」も高い傾向にありました。この結果は、論文中で以下のように分析されています。即ち、手指の巧緻性は手指を使う学習・繰り返しを要する学習への好き・嫌いに影響し、種々の学習への取り組みと関連することが示唆された。女子の方で6学習の平均得点が有意に高く、これらの学習が好きであり、 学習面で手指を使い、 繰り返し練習することで手指の巧緻性を高めていると考えられる。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:J-STAGE|小学生の手指の巧緻性に関する研究: 遊びと学習面からの一考察)手先が器用な子ほど裁縫や工作を好むのは自然といえますが、計算練習でもそうなのですね。小学校のうちは、漢字を何度も書いて覚えたり、似たような計算問題を何度もこなしたりして基礎的な学力を身につけるもの。巧緻性が高い子どもだと、鉛筆をカリカリと動かすことは苦にならないのかもしれません。また、工作をはじめとした巧緻性を養う遊びは、子どもに集中力をつけることにも貢献します。指先で部品をつまんだり、紙を丁寧に折ったり。このような動作には、目の前の対象物を見極め、自分の指先に意識をやることが要求されるもの。繰り返すうちに集中力が育つことでしょう。子どもの巧緻性を伸ばすことは、集中力をつけることにもつながるといえるのです。巧緻性のトレーニング:指回し体操では、巧緻性はどのような訓練によって養われるのでしょうか?子どもを幼児教室に通わせなくても実践できる鍛え方をご紹介します。「指回し体操」について耳にしたことはありますか?内科医の栗田昌裕氏が提唱した、10本の指を使う運動です。脳が活性化し、創造力や集中力が高まるとして、多くのメディアに取り上げられました。やり方は以下の通りです。まず、半球を包み込む感覚で両手の指先を互いにくっつけ、ふっくらとした円天井をつくります。その状態で、親指から、互いの指がぶつからないようにくるくると回します。回す方向は時計回りと反時計回り、交互に同じ回数だけ行います。最低でも各指20回、秒数で数えるなら30秒は回してください。(引用元:StudyHacker|受験の世界で注目!“指回し体操” が脳をフル稼働させる。速読にも効果が。)栗田氏によると、小学校低学年の子どもには難しいかもしれないけれど、練習によってうまくなるそう。そして、中指と薬指を触れ合わせずに回せる回数によって、巧緻性の度合いが測れるのだとか。ゲーム感覚で、親子でやってみるとよいですね。巧緻性を鍛えるおもちゃ折り紙巧緻性を養う代表的なおもちゃといえば、折り紙です。武田氏も、巧緻性を高めるおもちゃとして折り紙を推奨しています。紙を折ったり開いたりする行為には、指先の繊細な動きが要求されます。きれいな柄の折り紙と分かりやすい教本を買い、作品作りを楽しみながら巧緻性を高められるようにしてあげましょう。もちろん、お手本をよく見てその通りの作品を作ることには集中力も必要です。折り紙は幼児教育に最適なおもちゃだといえますね。ビーズネックレスやブレスレットを作れるかわいらしいビーズのセットが、おもちゃ売り場でたくさん売られていますね。小さなビーズを指先でつまみ、テグスを通すことを繰り返すビーズ遊びは、巧緻性を養うのに最適です。上で挙げた小学生の巧緻性に関する調査でも、ビーズ遊びを含む手芸をよくする子ほど、巧緻性テストでよい成績を出す傾向にありました。性別に関係なく、子どもが興味を持っているビーズのセットを買ってあげてはどうでしょうか。ペーパークラフト折り紙と異なり、ペーパークラフト作成の過程では、ハサミやノリといった道具を使用します。使い方によってはケガをしたり周囲を汚したりしてしまう可能性のある道具ですが、いずれは必ず使い方を覚えなければいけないもの。道具の特性を正しく理解して使えば、巧緻性をさらに伸ばすことができます。ペーパークラフトは書店でも売られていますが、プリンターなど電気機器を製造するキヤノン株式会社のWebサイトからダウンロードして印刷することもできます。保護者の皆さんも、大人向けの難しいペーパークラフトに挑戦してみてはいかがでしょうか。***幼児教育の話題で耳にしがちな「巧緻性」。工作の好きな子どもなら、自然に鍛えられそうですね。外遊びや勉強も大事ですが、手先を動かす遊びの大事さも無視できないといえます。(参考)日経DUAL|お受験の筆記試験考える力を見る問題が増えている学研出版サイト|【連載コラム】『ゼロからわかる「お受験」講座』第14回 合格するための「行動観察」トレーニング—その(2)「巧緻性」J-STAGE|小学生の手指の巧緻性に関する研究: 遊びと学習面からの一考察コトバンク|巧緻StudyHacker こどもまなび☆ラボ|頭が良くなるって本当?脳が育つ「指先を使った遊び」の効果。【幼少期におすすめの遊び3選】StudyHacker こどもまなび☆ラボ|子どもの「集中力」を養う方法。遊びや習い事を活用しよう!StudyHacker|受験の世界で注目!“指回し体操” が脳をフル稼働させる。速読にも効果が。PRESIDENT|テスト前は、指をグルグル回そう!
2018年11月07日絵本・児童書を数多く手掛ける佼成出版社より、おすすめの絵本をピックアップしてご紹介する連載コラム『佼成出版社えほんのこころ』。記念すべき第1回で取り上げるのは、あべ弘士さん作・絵、「ライオン」シリーズ4作品です。元飼育係の作者ならではの動物描写2001年に1作目『ライオンのよいいちにち』が発売されて以降、多くの読者に愛されてきたこのシリーズ。その最大の魅力は、あべ弘士さんが描くダイナミックなアフリカの草原と、どこかほんわかする動物たちの姿です。実はあべさんは、北海道・旭山動物園の飼育係を25年間務めていました。長年動物たちを間近で見てきたあべさんが描く動物たちの表情と、今にも動き出しそうな活き活きとした姿。あべさんの絵本を読むと、見ているものは間違いなく絵なのに、本物の動物とアフリカの景色を目の前にしているかのような気分になります。また、お父さんライオンのユーモアセンスにも要注目。お父さんライオン自ら「なかなか」と言わしめる俳句は実に味わい深いものですよ。そんな「ライオン」シリーズの魅力を4作まとめてご紹介しましょう!お父さんのよみきかせにも。「ライオン」シリーズ3作品1.『ライオンのよいいちにち』ライオンのお父さんは、子どもたちを引き連れ散歩に出ます。出会う動物たちは「子守りをして、えらい」と感心します。ライオンのマイペースな子育てぶりを、大胆なタッチでユーモラスに描く、「ライオン」シリーズの第1作です。【広報担当より】必死に狩りをしているお母さんライオンを遠目に見ながら、「いつもごくろうさんです」と、子どもたちとのんびり散歩を続け、俳句を詠むお父さんライオン。そのマイペースな姿に、こちらまで心がゆったりとしてきます。2.『ライオンのへんないちにち』久しぶりにひとりで出かけたライオンのお父さんは、雨がなかなか降らず、待ちくたびれた動物たちに出会う。やがて雨の気配が強くなり……。厳しい自然と対峙しながらも、ユーモアたっぷりのお父さんライオンが魅力的な絵本、「ライオン」シリーズの第2作です。【広報担当より】日照り続きのサバンナでは、動物たちもどこか調子が悪そう。ですが、ようやく降った恵みの雨に、みんな息を吹き返します。雨の音や感触、匂いまで伝わってくるような、アフリカの自然を体感できる一冊です。3.『ライオンのながいいちにち』雨季が過ぎた頃、ライオン親子が散歩に出かけます。途中、親子は、息を呑むほどのフラミンゴの群れと出会ったり、帰り道にヌーの大群にとおせんぼされたり……。アフリカの魅力満載の、「ライオン」シリーズ第3作。【広報担当より】長い雨が終わり、サバンナの動物たちが活き活きと動きはじめました。フラミンゴの大群、どこまでも続くヌーの群れ、青空を渡っていく白い雲。シリーズ中、最もダイナミックに自然が描かれた、スケールの大きな作品です。14年ぶりの新作。お父さんライオンがパワーアップ!『ライオンの風をみたいちにち』広大なアフリカの大地で日々、家族と仲良く暮らし、心に残る印象的なシーンに遭遇したときに俳句を詠む、ライオンのお父さんが14年ぶりに帰ってきました。「とうさん、きょうはどこへいくの」「とうさんは、きめています。風をみにいきます」「えーっ風ってみえるの?」「みえます」――。ライオンのお父さんが子どもたちを連れて散歩に出かけた先で見つけるさまざまな“風”の姿を叙情豊かに描きます。あべ弘士さんが描くアフリカの情景は圧巻。俳句が出てくる絶妙なタイミングもぜひお楽しみください。【編集者より】『ライオンのよいいちにち』『ライオンのへんないちにち』『ライオンのながいいちにち』に続く第4弾。14年ぶりの発刊となる今作では、ライオンのお父さんが、以前よりも威厳に満ち溢れ、堂々とした佇まいで登場します。どこまでも広がるアフリカの景色の魅力も満載。「アフリカの雲はね、地平線から湧き出るように生まれるんですよ」と嬉しそうに話してくださった、あべさん。そんなあべさんの、アフリカに、そしてライオンのお父さんに対する想いがたくさん詰まった、スケールの大きな作品です。ぜひご覧ください!***佼成出版社より、今後も旬の絵本ニュースを続々発信していく予定です。どうぞお楽しみに!
2018年11月06日「日本の伝統文化」と聞いて、何を思い浮かべますか?茶道・華道、歌舞伎、能、狂言、三味線、俳句、百人一首、和食、折り紙……無形文化遺産として海外からの評価も高い伝統芸能から、子どもたちにとって身近な遊びとして現代でも親しまれているものまで、実にさまざまなものが浮かぶのではないでしょうか。これからも大事に受け継いでいきたい日本文化。近年、子どもへの教育的効果の観点から、改めて注目をされていることはご存知でしょうか?また2020年開催の東京オリンピックを目前に控えて、今後ますます外国の人と交流する機会が増えるでしょう。日本に根付く伝統文化への理解を深めることは、海外の人とコミュニケーションをとる際に非常に役立ちます。ここでは、日本の伝統文化を学ぶことでどんな良い影響があるのか、具体的に考えていきましょう。伝統文化を学ぶことで得られるメリット私たち大人が子どものころに比べて、現代の子どもを取り巻く環境は激変しています。物や情報があふれ、よりスピーディーに、より簡単にと目まぐるしく変化する日常の中で、いつのまにか見過ごされ忘れ去られてしまうものも増えました。とくに、子どもたちが日本の伝統文化について学んだり経験したりする機会が減ってきていると、多くの人が警鐘を鳴らしています。しかし、日本の伝統文化を学ぶことは、現代を生きる子どもたちにとってとても良い影響があります。将棋や日本伝統文化の素晴らしさを子育てに生かすための情報発信を行なっている「株式会社いつつ」の取締役である尾崎久恵さんは、「子育てにもっと伝統文化を取り入れるべき」と述べます。その理由として、以下のような効果が期待できるそう。■どの年代の人とも話ができる子になる日本の伝統文化を知ることで、同世代だけではなく年配の方たちとも会話を楽しむことができる。■アイデンティティの確立に役立つ国際化が進むなか、小さい頃からの実体験に基づいた文化への理解が、自分の言葉で日本の魅力を語れる人間へと成長させる。■日本の歴史に興味を持つようになる長い歴史がある日本の伝統文化。その時代ごとに意味のある成り立ちがあると知ることで、自然と時代の流れや日本の歴史への興味にもつながっていく。■礼儀作法が身につく日本の伝統文化には、礼に始まり礼に終わるものや、きちんとした型が決まっているものが多い。伝統文化を学ぶことで礼儀作法が自然と身につき、意識しなくても日常的に礼儀正しい振る舞いができるようになる。(引用元:株式会社いつつ|日本の伝統文化を利用した子育てが子どもに良い5つの理由)また、オリンピックの開催を控えて、日本の伝統文化の教育を積極的に推進している東京都教育委員会は、その理念を次のように示しています。日本の伝統・文化理解教育は、子供たち自身が今日的な視点から我が国の伝統や文化をとらえ直し、日本のすばらしさを誇りに思うと同時に、世界の中で日本人としてよりよく生きていくために、何をどのように生かしていくかについて理解し実践する教育のことです。(引用元:東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進)ここで言う「伝統・文化」とは、次のことを指します。・長い年月を経て、日々の中で様々な形で伝わってきたもの・現代において評価され価値あるもの・新たな文化となって未来へと連綿と受け継がれて生き続けるものただ“古いもの”だけではなく、“受け継がれているもの”にはちゃんと理由があります。その価値を再確認し、先人の知恵や意志をありがたく学ばせてもらえるということは、子どもたちがより良い人生を歩むための礎となるでしょう。国際交流には欠かせない自国文化への理解度今後ますます国際化が進み、2020年に東京オリンピックが開催されれば、さらに世界中の人々と交流する機会が増えるでしょう。しかし、せっかく英語を勉強して話せるようになったとしても、大切なのは会話の“中身”です。とくに、日本に興味がある外国人にとって、日本の文化・伝統はとても魅力的に映ると聞きます。話をしてみると、一般の日本人よりももっともっと深い知識を持ち合わせていることもあります。日本に根付いている風習を紹介する図鑑『にっぽんの図鑑』(小学館)を監修した信州大学の藤森裕治教授は次のように述べています。海外で異なる文化的背景を持つ人と接するとき、祖国に関する知識と誇りがなければ相手にされない。伝統文化に触れることは『日本とは何か』と考えるきっかけであり、それがあってこそ他者を理解しようとする姿勢が生まれる。(引用元:産経ニュース|知ってますか?!日本の伝統文化子供向け図鑑や紹介本、刊行相次ぐ)異なる慣習や文化の違いを受け入れることができる“多様性”を身につけるためには、海外に目を向けると同時に自分が生まれ育った日本の文化や伝統についても知る必要がありますね。異文化を理解し大切にしようとする心は、自国の文化理解が基盤となって、はぐくまれるものです。そのために、学校は、子どもたちが日本の伝統・文化のよさや豊かさに気づき、その価値や意義を理解するとともに、自分の生まれ育った郷土や自国に誇りと愛着をもち、自分が日本人であるというアイデンティティを確立する教育を推進することが必要です。(引用元:東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進)外国のお友だちから学ぶこと、そして日本の子どもたちから海外に向けて伝えられる文化や伝統を守り抜くためにも、大人として教えるべきことはたくさんあります。子どもたちが日本の伝統文化に興味をもつきっかけを作ってあげることも、大人の大事な役目なのではないでしょうか。世界で人気の日本アニメ。ルーツは鳥獣戯画と葛飾北斎!?世界中で高い評価を得ている日本のアニメーション。毎年フランスで開催される世界最大規模の日本ポップカルチャーイベント「ジャパンエキスポ」では、日本アニメのコスプレをする外国人は後を絶たず、ショーやコンペを取り入れるなど、その盛況ぶりは年々加熱しています。海外の人と仲良くなるきっかけとして、日本のアニメや漫画の話をすると盛り上がると聞きますが、文化的な視点からさらに深い知識を伝えることができたら素敵だと思いませんか?一説によると、日本のアニメの起源はなんと「絵巻物」にさかのぼるとも言われています。日本の代表的な絵巻物と言えば「鳥獣戯画」。平安末期に描かれたと伝えられる鳥獣戯画は、猿や兎や蛙たちが擬人化され、相撲や年中行事などを繰り広げます。また、モネやゴッホらの印象派の画家たちに大きな影響を与えたとされる葛飾北斎。浮世絵で有名な北斎は、河童や妖怪などのキャラクターを登場させたり、庶民の生活を巧みに描写したりと、日本のアニメーションのルーツともされている「北斎漫画」を生み出しました。このように、古くから日本人の独特の発想や表現力は世界の人たちから認められていたのです。「日本のアニメが好き」と話してくれた外国のお友だちに、鳥獣戯画や北斎について教えてあげたらきっと喜ばれるはずです。その経験は、伝える手段として英語を学ぶ原動力になるだけではなく、日本が誇る素晴らしい文化を世界の人たちに伝えたい、という意欲にもつながるでしょう。***国際化が急速に進む中、英語をマスターさせることばかりに気を取られて、肝心の「英語で話す内容」については気が回らないのが現実です。外国のお友だちと積極的に意見交換ができるように、また日本の良いところをたくさん伝えられるように、伝統文化に触れる機会があれば積極的に学ばせてあげたいものですね。(参考)株式会社いつつ|日本の伝統文化を利用した子育てが子どもに良い5つの理由東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進産経ニュース|知ってますか?!日本の伝統文化子供向け図鑑や紹介本、刊行相次ぐ東京都教育委員会|「日本の伝統・文化」教材集|〔体験・創出的な単元〕Japan Expo公式サイト|Japan Expoとは
2018年11月06日手や指のほか、体を使って遊びながら歌う「手遊び歌」。音楽による幼児教育研究を専門とする高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授・岡本拡子先生によると、手遊び歌には、子どもの成長に欠かせない要素がたくさんあるのだそう。ここでは、体を使って子どもの想像力をアップさせる「手遊び歌」として、先生が特におすすめするものを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)子どもの心を捉える「意外性」手遊び歌は、体を使った遊びを伴うことで、子どもの想像力を育むものが多いという特徴があります。そして、子どもが好むのは、「変化」と「繰り返し」が含まれるもの(インタビュー第3回参照)。ただ、なかにはただの変化と繰り返しでは終わらないものもあります。『キャベツのなかから』という手遊び歌もそのひとつ。キャベツのなかから青虫が出てくるという内容で、親指を「お父さん青虫」に見立てるところから歌詞がはじまります。親指がお父さんを示すということは日本の文化ですから、みなさんもその後の歌詞は予測できますよね。子どもたちもそれは同じです。2番は人差し指を使って「お母さん青虫」。その後はお兄さん、お姉さん、赤ちゃんと続いていきます。でも、この歌のいいところはそのままで終わらないところ。最後は全部の指を使って、なんと「ちょうちょ」になっちゃう!この「意外性」が素晴らしくて、子どもたちが絶対に大好きになる歌です。とはいえ、こういった意外性は、子どもがある程度の年齢にならないと楽しめるものではない。そこで、子どもの年齢別にわたしがおすすめする手遊び歌をご紹介しましょう。こどもの年齢が上がるほど歌詞の内容や動きの面白さに目が向く◆0~1歳児向け『おやゆびねむれ』/作者不詳(わらべ歌)まだ小さな子どもには、互いに体を触れ合って遊ぶ歌がよいでしょう。この歌は、親指から順に指を1本ずつ折り曲げたり伸ばしたりしながら歌います。子どもが泣いてぐずっているときや、子どもを寝かしつけたいときにもおすすめですよ。歌うというよりも「語りかける」ように、穏やかに優しい口調でゆっくりと歌いかけてあげましょう。子どもは自然に心が落ち着いて、泣きやんだり眠ったりするはずです。歌いながら親子で触れ合うことで、子どもはお父さんやお母さんの温もりを感じながら安心感を得ることができます。◆2~3歳児向け『ずっとあいこ』/作詞・作曲:阿部直美手遊び歌には指で数を数えたり、グーチョキパーを用いて遊んだりする歌が多いというのもひとつの特徴です。これはその典型のものですね。ただ、それらは「数を覚える」とか、「ジャンケンのルールを覚える」といったような学習効果を期待して歌うものではありません。親子で一緒に歌いながら遊ぶことで、生活のなかで用いる数やジャンケンに親しんだり、自然にそういったあらゆる文化に興味関心を持ったりするようになるというものです。まだ幼い子どもにとっては指を1本ずつ動かすのは少し難しいかもしれませんが、うまくできなくても、楽しんで遊ぶことが大切ですよ。◆4~5歳児向け『くいしんぼうのゴリラ』/作詞・作曲:福尾野歩年齢が上がってくると、子どもの興味は歌詞の内容や動きの面白さに向かうようになります。歌詞の意味をきちんと理解し、描かれた場面を想像することで楽しくなってくる——そんな手遊び歌が数多くつくられています。この歌では、動きがユニークなゴリラが、バナナやレモンなど身近な食べものを食べたときの様子が表現されています。子どもと一緒にイメージを共有して楽しんでみましょう。また、登場する食べものを別の食べ物に置き換えて、オリジナルのものにしてみれば楽しさも倍増すると思いますよ。動きの面白さという点でいえば、『ポキポキダンス』もおすすめ。これは『Hokey Pokey(ホーキーポーキー)』というアメリカの民謡が由来の手遊び歌。動きが激しいものですので、年長さんくらいの子どもが好みます。この歌のいいところは、頭やお尻など自分の体に触れながら、その部位の名称を歌うところ。遊びのなかで、子どもが自分の体に目を向ける、意識することにもつながるはずです。それぞれ有名な歌ですので、『YouTube』などの動画共有サイトにはいくつも動画がアップされています。検索してぜひお子さんと一緒に遊んでみてください。『感性をひらく表現遊び―実習に役立つ活動例と指導案 音楽・造形・言葉・身体 保育表現技術領域別』岡本拡子 著/北大路書房(2013)■ 音楽教育のエキスパート・岡本拡子先生 インタビュー一覧第1回:幼少期における音楽体験の意味――「音楽という環境」を通し子どもの感性を伸ばす第2回:子どもの感性を育む「歌と五感」――幼い子どもの成長につながる歌ってどんな歌?第3回:「手遊び歌」が子どもにもたらすもの――楽しく歌うことが「学びの姿勢」につながる第4回:【年齢別おすすめ】子どもの想像力がアップする!5つの「手遊び歌」【プロフィール】岡本拡子(おかもと・ひろこ)1962年8月25日生まれ、大阪府出身。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程音楽教育専攻修了。聖和大学大学院教育学研究科博士後期課程幼児教育専攻満期修了。聖和大学助手、美作大学短期大学部講師などを経て、現在は高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授。大学在学中より幼稚園や小学校などで「歌のお姉さん」として活動。その後、子育てをしながら大学院で幼児教育を学ぶ。現在は保育者養成に携わりながら、幼児やその保護者を対象としたコンサートや保育現場でのコンサートをおこなうほか、子どもの歌の作詞・作曲を手がける、保育者研修の講師を務めるなど、幅広く活躍する。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年11月05日子どもが描く絵は、乗り物よりも人間の方が大きかったり、蝶々よりも家が小さかったりして純粋で可愛らしい印象です。この子どもらしさあふれる表現方法は、見た人を笑顔にさせる力がありますよね。子どもたちの絵は成長とともに少しずつ変化していきますが、絵の印象が大きく変わるポイントには、「遠近法」という技法が関係しているようです。たしかに小学生くらいから、遠くのものは小さく、近くのものは大きく描ける子が増えてくるような気がします。そういう遠近感のある絵は、なんだか上手に見えませんか?我が子にも早くそんな絵が描けるようになってほしい……と考える親御さまは少なくないのではないでしょうか?そこで今回は、「遠近法」と「観察力」について、心理学、教育学などを取り入れ、画期的な美術教育を提供している『芸術による教育の会』の先生に教えていただきました。文・作品提供/芸術による教育の会空と地面の間にある「ナゾの空間」の正体は!?「遠近法」は平面の紙の中で奥行を表現する技法です。遠くの物は小さいく見えて、近くの物は大きく見えるという自然のルールがあります。そんな遠近法のポイントとなるのは「空」と「地面」の描き方。幼稚園や小学校低学年の子どもたちの絵に見られる特徴として、画用紙の上部に空があって下部に地面があって……なぜか、その空と地面の間に何もない「ナゾの空間」があります。このナゾの空間――それは子どもたちにとっては空気であり「何もない」という表現方法です。そのときに描かれている物は重なりあうことがありません。つまり空間的な認識がないのです。ですから、これらの絵には、奥行きがありません。ですが、小学校3、4年生くらいになってくると、空と地面の間にあった「何もない」空間はなくなり、空と地面がくっついた描写をします。地面の上に人や物が描かれてくるような絵ですね。このあたりで初めて空間認識ができるようになり、「遠くの物は小さく、近くの物は大きい」という遠近法が理解できるようになります。遠近法を学ぶうえでの一番のポイントは、まず子ども自身が奥行に興味を持つことです。これは絵の技法に限ったことではありませんが、子どもがまだ興味すら持っていないのに、親が先回りして無理に教えたり、この時期よりも早く描かせたりすることはあまりおすすめできません。遠近法を用いた表現を子どもが真似したがるまでじっくり待ちましょう。それまでは、ぜひ、そのときにしか描けない平面的な表現を一緒に楽しんでください。遠近法をしっかり理解するには時間がかかるそして、子どもが空間認識を理解し始めると、絵の描き方について悩むことが多くなってきます。山の向こうから川が流れてくる様子を描きたい、立体的なお家が描きたい、こっちにボールが飛んできているところを描きたい、駅のホームにたくさん電車が停まっている様子を描きたい――。子どもたちは試行錯誤をしながら、イメージした物を描写しようとするでしょう。本人的には、「思ったように絵が描けない!」ということが増えるかもしれません。しかし、遠近法をしっかり理解していく過程の子どもたちの表現は、とてもおもしろく、それらは子どもたちが大きく成長した後は見られない表現ばかりです。例えば、滝のように見えるものが実は川だったり、ジュースの缶の上の部分と底の部分が両方とも描かれていて、缶が潰れているように見えたりします。大人から見て間違った描き方に見える表現は、ウラをかえすと、子どもが自分で考えて描いてみた表現です。そして、自分で新しい表現を取り入れてみるような子は、「あれ、何かが違う!?」と思ったときに違和感を感じます。そして、周りの人に描き方を聞いたりするでしょう。その試行錯誤を繰り返しながら、遠近法を理解していくのです。遠近法を意識し始めてからしっかりと理解するまでの数ヶ月間の作品は、時間がたってから見返してみると感慨深いものがありますよ。平面的な絵とともに、大事にとっておくことをおすすめします。「五感」を使って観察する力を磨こう!子どもが観察してものを描くことができるのは、小学校3年生くらいからと言われています。それは、小さい子どもたちは目で見て絵を描いておらず、感じたものを表現しているからだと言われています。実際に、視力の弱い子(弱視)と視力が良い子の観察画はほとんど同じという実験結果もあるのです。小さい子どもが観察画をする場合は、描写力よりも、「五感を使って観察する力を磨く」ことをテーマにすることをお勧めします。簡単にやり方をご説明しましょう。<草花を描く>・あらゆる角度から観察してみる(上から、横から、近くから、ちょっと離れたところから)・花や葉っぱのにおいを嗅いでみる・花びらや葉っぱ、茎を実際に触ってみる・花や葉っぱ、茎について、気がついたことを話す茎にある産毛を発見したり、葉っぱのギザギザに気がついたり――。子どもたちの観察眼の鋭さに、親御さまはびっくりするでしょうね。このとき、子どもの発見をたくさん褒めてあげてください。そうすることで、子どもはもっと注意深く観察するはずですよ。そしてじっくり観察したら、さあ、絵を描いてみましょう!子どもたちは、自分が見つけた大きな(小さな?)発見を、画用紙いっぱいに描いてくれるでしょう。果物を描く場合は「どんな味がするのか」想像してもらったり、実際に食べて「味わって」から描いてみてもおもしろいですね。***五感をたくさん刺激してあげることで、観察力だけでなく、その子の感性をぐんぐん伸ばすことになります。子どもたちには、見て、触って、匂いを嗅いで、食べて、ときには音を聴いて、いろいろなことを感じ取ってほしいものです。【プロフィール】芸術による教育の会(げいじゅつによるきょういくのかい)東京、神奈川、埼玉、千葉、インターネット上に約100教室の美術教室を運営。在籍生徒数約3800人。「世界の子どもたちとアートを通してつながりたい!」を将来のビジョンとし、言葉の壁をアートで乗り越えた未来を目指しています。■芸術による教育の会ホームページ「芸術による教育の会」は、5つの事業と60年以上の実績をもとに美術を通して、子どもたちの成長に寄り添います。■お家でビジュツ!動画で学べる!作品を掲載できる!どこでもアート!!「びじゅつでつながろうどこでもアートきっず」・インターネット美術教室なので、自宅でレッスンが受けられます。必要な教材は発送します。・お子さまに合わせたカリキュラムを作成し、個性を引き出して伸ばします。・それぞれの成長段階や個性に合わせた技術指導を行います。・YouTubeの動画もあるよ。いろんな工作動画を見て下さい。どこでもアート公式チャンネルはこちら
2018年11月04日「手遊び歌」というものを聞いたことがあるでしょうか。手や指のほか、体を使って遊びながら歌う歌のことです。その名前は知らずとも、そう聞けば「ああ、あれね」とわかる親御さんも多いでしょう。音楽による幼児教育研究を専門とする高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授・岡本拡子先生によると、手遊び歌には、子どもが成長するために欠かせない要素がいくつもあるのだとか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ただのグーも子どもにはひげやこぶ、鼻に見える「手遊び歌」とは、手や指での遊びを伴った歌のこと。もともとは、子どもたち自身がつくって歌い継がれてきたわらべ歌の一種です。みなさんにもおなじみの『通りゃんせ』『かごめかごめ』『はないちもんめ』なども、手だけではなくて体全体を使うものではありますが、そのひとつだと言えるでしょう。手遊び歌は、体を使う遊びを伴うわらべ歌の現代版です。そして、いまではだんだん大人が提供するものも増えてきました。そのため、「大人の都合」による歌もあります。有名なところだと『ひげじいさん』もそのひとつ。歌詞の最後は「手はお膝」です。つまり、幼稚園や保育所の先生が「手は膝に置いてちゃんとお話を聞きましょうね」というときに子どもたちに歌わせるのです。そういう点ではわたし自身はあまり好きではないのですが、それ以上に素晴らしい点もあります。わたしたち大人にとっては、手を握ったグーはただのグーかもしれません。でも、子どもたちにとっては、歌詞に合わせてグーはおじいさんのひげにもこぶにもなるし、てんぐの鼻にもなる。これが子どもの世界の面白いところ。泥団子をお菓子に見立てるのと同じように、手を使っていろいろなイメージをするのです。また、「繰り返し」が多いのも『ひげじいさん』の特徴でしょうね。子どもって、とにかく繰り返しが大好き。歌ではありませんが、童話の「おおきなかぶ」もそう。大人からすれば、「しつこい!」と感じるほど同じフレーズが繰り返されます(笑)。でも、子どもたちはそれをすごくよろこぶ。子どもにとっての手遊び歌の魅力というと、「変化」と「繰り返し」だと言えるでしょうね。小学校に入学してからの学びの姿勢につながる子どもの教育に熱心な親御さんであれば、手遊び歌が脳の発達を促すだとか、そういうことも期待されているかもしれません。ただ、残念ながら、現状ではそういう実証的な研究結果は得られていません。でも、だからといって手遊び歌になんの意味もないのかといえば、そうではないとわたしは考えています。先に挙げた『ひげじいさん』のような歌なら、間違いなく子どもたちの想像力を伸ばし、感性を育てることにも大いに役立つでしょう。そして、手遊び歌とは、わたしは「文化を学ぶ」ものだとも思っています。ひとつ例を挙げましょう。『ピクニック』という比較的新しい手遊び歌があります。手をお皿に、指をようじやお箸、フォークに見立てて、たこ焼きや焼きそば、スパゲティを食べるという内容です。この手遊び歌を通じて、子どもたちはお皿に乗っている食べもののイメージを膨らませつつ、自然に食べものの名前や食器の使い方を学ぶ。これは、文化を学んでいることに他なりませんよね。また、この歌では、人差し指がたこ焼きを食べるためのようじと「1」という数字のふたつを表します。国によっては親指で1を表すなど、指での数の数え方はまったく異なります。それこそ、日本の文化を学んでいるのです。加えて、手遊び歌のいいところは、基本的に親やまわりのお友だちと一緒に歌うところ。それこそ、呼吸を合わせなければうまく遊ぶことができません。ひとつ、面白い遊びを紹介しましょう。みなさん、有名な『あんたがたどこさ』はご存知でしょう。誰かと一緒に向かい合って歌いながら、歌詞の「さ」の部分で互いの両手を合わせてみてください。さて、うまくできたでしょうか?「さ」を意識するあまり、意外にタイミングが合わなかったという人もいるのではないですか?それでは、今度は曲のリズムに合わせてふたりで体を揺らしながらやってみてください。どうでしょう、今度はきっちりタイミングが合ったのではないでしょうか。これは、ふたりの呼吸、リズムをきちんと合わせられたからです。子どもは、このように他人と同じことをすることを好みます。おもちゃなどの取り合いになるのはそのため。お友だちと同じものを持ちたい、同じことをしたいという欲求があるからです。そうして他人と同じことをすることによって、子どもたちは「人とつながっている感覚」を育み、社会の一員として育っていくのです。はっきりとした研究結果としては示されていないものの、手遊び歌には、コミュニケーション能力や言語能力などさまざまな力を伸ばすという側面も確かにあるでしょう。でも、なにかの力を伸ばすために子どもに歌わせる、というのではなく、生活のなかで楽しみながら歌うだけで十分なのです。それがやがては、小学校に入ってからの学びの姿勢につながるのではないでしょうか。『感性をひらく表現遊び―実習に役立つ活動例と指導案 音楽・造形・言葉・身体 保育表現技術領域別』岡本拡子 著/北大路書房(2013)■ 音楽教育のエキスパート・岡本拡子先生 インタビュー一覧第1回:幼少期における音楽体験の意味――「音楽という環境」を通し子どもの感性を伸ばす第2回:子どもの感性を育む「歌と五感」――幼い子どもの成長につながる歌ってどんな歌?第3回:「手遊び歌」が子どもにもたらすもの――楽しく歌うことが「学びの姿勢」につながる第4回:【年齢別おすすめ】子どもの想像力がアップする!5つの「手遊び歌」【プロフィール】岡本拡子(おかもと・ひろこ)1962年8月25日生まれ、大阪府出身。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程音楽教育専攻修了。聖和大学大学院教育学研究科博士後期課程幼児教育専攻満期修了。聖和大学助手、美作大学短期大学部講師などを経て、現在は高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授。大学在学中より幼稚園や小学校などで「歌のお姉さん」として活動。その後、子育てをしながら大学院で幼児教育を学ぶ。現在は保育者養成に携わりながら、幼児やその保護者を対象としたコンサートや保育現場でのコンサートをおこなうほか、子どもの歌の作詞・作曲を手がける、保育者研修の講師を務めるなど、幅広く活躍する。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年11月04日自分の感情を言葉にできず、泣きわめいたり、怒ってしまったり、物に当たってしまったり……。そんな場面で、保護者のみなさんは子どもにどう接していますか?親の接し方によっては、子どもが余計にストレスを抱えてしまったり、周囲の友だちとのトラブルを起こすきっかけになったりしてしまいます。そしてその積み重ねが、その子のコミュニケーション能力にも影響してくるでしょう。そこで、親としてどんな声がけをし、寄り添うべきか。さらに、子どもの「自己表現」を上手に引き出す方法をご紹介します。子どもの「気持ち」を親が「言葉」にしてあげるボキャブラリーがまだまだ未熟な幼少期の子どもにとって、自分の感情をうまく言葉にすることは難しいこと。しかし他者とのコミュニケーションを考えたときに、自己表現はとても大切なのです。では、気持ちを表現する言葉をどのように引き出していけばいいでしょうか。まず、自分の気持ちを表現するためには、子ども自身が自分の気持ちを知ることが重要です。親は、子どもの様子から気持ちを察知して、その気持ちを言葉にしてあげましょう。「子どもがとても「嫌な気持ち」でいる場合は、「イライラする」「悲しい」「悔しい」「寂しい」のように感情にもさまざまな種類があります。しかし、子どもが自分自身でどのように感じているのかを理解することは難しいです。周りの大人が、話を聞いてあげて、「それなら、その『嫌な気持ち』は『悔しい』ってことだと思うよ」というように、子どもの気持ちを言葉にしてあげましょう。子どもの気持ちに「ラベル」を貼ってあげるようなイメージです。」(引用元:NHKエデュケーショナル|子どもの気持ちを知るヒント「思いを『言葉』で伝えさせる」)このように、子どもが初めての感情に向き合っているときは、親がその気持ちに当てはまる言葉や表現を代弁してあげるのです。すると、子どもが自分の今の感情と言葉をリンクさせて、それを習得することができます。また、このような感情と言葉のリンクを繰り返していると、周りにいる友だちの気持ちも理解できるように。そして友だちが、自分と同じような気持ちをもっていることや、ときに違う気持ちになることがわかるようになります。子どもが言葉を選んでいるとき、親は「待つ」!子どもが自分の気持ちを表現できるように親が代弁してあげることが有効だと紹介しましたが、実は注意点もあります。大人が意図的な代弁をやりすぎてしまった場合、子どもはそうは思っていないのに、親の意見を押し付けられることになってしまうのです。また、自分の望みや気持ちを口に出して伝える前に、何でも大人が代弁してしまったり、叶えてしまったりすると、子どもが周囲の人に自分の思いを伝えようとする意欲が育ちません。もしお子さまが言葉を選んでいるようであれば、「今、この子は一生懸命考えているんだ」と、言葉が出てくるまで待ってあげましょう。大人であっても重要なことを相手に伝えるときは、言葉を選ぶと思います。つい気持ちが焦ってしまうかもしれませんが、「子どもの表現力を育む時間」だと割り切って、ぜひ考える時間を与えてあげてくださいね。この「考える時間」を奪ってしまうと、子どもは考えずに話すようになってしまいます。そしてその癖がついてしまうと、考えること自体が面倒になってしまうかも……。子どもが自分で気持ちを伝えるられるように、親が「待つ」ことはとても大切なのです。子どもが何かを伝えたとき、周囲の大人にしっかりと話が聞いてもらえたという経験は自信につながり、自分の思いを伝えようとする意欲を育てることになります。絵本から豊かな「感情表現」を学ぶもし、自分の言葉選びや表現に自信がない方は、感情表現が豊かな絵本を子どもと一緒に読むなどして、親自身も学んでいくことが有効なようです。たとえば、『どんなきもち?』(西村書店)などは、気持ちを表す言葉がたくさん登場するのでおすすめです。わくわく、びくびく、もじもじ、しょんぼり。むしゃくしゃ、やきもき、うっとり、どきん・・・・。どんな時に、わくわくするのかな。びくびくするって、どういうことかな。怒っていることを伝えるには、どんな言葉があるのかな。(引用元:EhouNaviStyle|「いま、どんなきもち?」 自分のきもちを考える絵本)子どもたちはこの絵本を読みながら、たくさんの気持ちがあることを知ります。「こんなときは〇〇〇という言葉がぴったりだね」など、親子で話し合いながら読んでみましょう。登場する魚たちに共感しながら、自分のもやもやした感情を整理することができるようになるかもしれません。お子さまのお気に入りの絵本にも、気持ちを表す言葉がたくさんあると思います。読み聞かせの際に、「どんなときに〇〇〇って気持ちにななるかな?」など、お子さまと話してみてくださいね。たくさんの言葉を知ることで、お友だちや先生とのコミュニケーションがスムーズになり、園生活や学校生活を今以上に楽しめるようになるでしょう。***最近では、親自身も感情を表現する言葉が貧困になってきていることが問題視されています。「ヤバイ」「マジ」などのボキャブラリーだけでは、複雑な人間の感情を表現することは難しいといいます。まずは、親自身が普段からどんな言葉で気持ちを表現しているのかを見直すことも必要なのかもしれません。子どもが上手に自己表現できるようになるには、小さな頃からの親の接し方や声掛けが影響するようです。子どもの気持ちを察して、事前に言葉選びをしてあげると、今の感情と言葉をリンクさせて習得することができます。もし、言葉選びが難しければ、気持ちについて考えさせる絵本を一緒に読んでみるのも効果的ですよ。文/内田あり(参考)NHKエデュケーショナル|子どもの気持ちを知るヒント「思いを『言葉』で伝えさせる」NHKエデュケーショナル|子どもが自分の気持ちをうまく表現できるようになるには?ベネッセ教育情報サイト|子どもの感情表現を人間的成長につなげる方法PHP Online 衆知|子供の「感情」を育てようEhouNaviStyle|「いま、どんなきもち?」 自分のきもちを考える絵本浦安に住みたい!web|子どもの才能を伸ばすお母さんの接し方その3~”待つこと”と”がまん”が子どもの可能性を伸ばす~ミース・ファン・ハウト作ほんまちひろ訳(2015),『どんなきもち?』,西村書店.
2018年11月03日「空間認識能力」と聞いて、何を思い浮かべますか?近年はVRコンテンツの認知度が高まりつつあることも相まって、サイバーなイメージをお持ちかもしれませんね。実は、子どもの才能を伸ばすにあたり、親としてぜひ知っておきたいキーワードが「空間認識能力」なのです。今回は、空間認識能力の役割とその大切さ、そして子どもが持つ空間認識能力の鍛え方をご紹介します。空間認識能力とは空間認識(空間認知)能力とは、読んで字のごとく、空間を正しく認識できる能力のこと。学術雑誌『研究報告数理モデル化と問題解決』(第33号、2012年)に掲載された論文「ARを用いた空間認識能力向上のための学習方法」によると、空間認識能力の定義は以下のとおり。空間認識能力とは、3次元空間上において、物体の位置や形状・方向・大きさなどの状態や位置関係を素早く正確に認識する能力のことを指す。この能力によって普段生活する中で、目の前にないものでも頭の中で想像し、視覚的なイメージを形成することができる。(太字は編集部が施した)(引用元:情報学広場:情報処理学会電子図書館|ARを用いた空間認識能力向上のための学習方法)日本でベストセラーになった、アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社、2000年)を覚えていますか?この本のタイトルにも表れているように、女性は男性に比べて地図を正しく理解するのが苦手だといわれています。実際、フランス国立科学研究センターの研究員・Antoine Coutrot氏らが2018年に発表した研究によると、あらゆる国で250万人以上の空間認識能力を調査したところ、男性のほうが女性よりも空間認識能力において優れていたそうです。空間認識能力が低いとどうなる?空間認識能力が低いと、地図が読めないという以外に、どのようなデメリットがあるのでしょう?パーソナルジムトレーニングジム「レブルス」の代表を務め、『12歳までの最強トレーニング』( 実業之日本社、2018年)などの著書がある谷けいじ氏は、以下のように警鐘を鳴らしています。子どものうちにこの力がきちんと養われないと、将来スポーツ全般の能力が伸びにくくなります。それだけでなく、たとえば道路を走っている車や自転車と自分の距離がつかめずに事故に遭いやすくなるなど、危険回避能力が育まれにくいという恐れがあります。(太字は編集部が施した)(引用元:オトナンサー|顔から転ぶ、靴ひもが結べない…子どもが“運動オンチ”に育つ家庭にありがちなNG習慣とは?)空間を認識する能力が低いということは、自分と自動車との距離がうまくつかめないということ。「車がこちらに向かってきている。よけないとぶつかってしまう」「車はこちらに向かってきているが、まだ遠い。今なら道を渡っても大丈夫だ」という判断を誤ってしまうのですね。空間認識能力が高いとどうなる?スポーツで活躍できるでは反対に、空間認識能力が高いとどのようなメリットが生まれるのでしょう?スポーツ科学を専門とする髙野淳司・准教授(一関工業高等専門学校)によると、空間認識能力は球技をはじめとしたスポーツにおいて非常に重要だそう。空間認識能力を測定するテストにおいて、ラグビーや野球の競技者は、一般人と比べて高いスコアを獲得したのだとか。2016年のリオデジャネイロ五輪で男子サッカー日本代表チームの監督を務めた手倉森誠氏も、ヘディングがうまくできるのは背が高い人ではなく空間認識能力の高い人だと話しています。また、空間認識能力が優れたスポーツ選手としては、サッカーのディエゴ・マラドーナ選手、野球の鈴木一朗選手、バスケットボールのマイケル・ジョーダン選手などが挙げられるのだとか。フィールド上に散らばる多くのプレイヤーの動きを把握しつつも、ボールの速度や軌道を見極め、自分もそれに合わせて行動する――球技には、非常に高度な能力を要求されることが想像できますね。自動車を上手に運転できる空間認識能力は自動車の運転にも欠かせない能力です。運転中は、自分で自動車を走らせつつ、周囲のほかの車や歩行者・自転車にけして接触しないよう、空間のなかで何がどのように動いているかを正確に把握する必要があります。空間認識能力が高いと、合流や駐車をスムーズに行えることでしょう。職業選択の幅が広がる空間認識能力の高さを活かせる仕事もあります。たとえば、一般社団法人・コンピュータ教育振興協会の主催する「3次元CAD利用技術者試験」の1級・準1級では、2次元の図面を見て3Dモデルを作成する問題が出されます。これを達成するには高い空間認識能力が必要。合格者の進路は、自動車・機械の設計者やオペレーターだそうです。空間認識能力は鍛えられるの?さて、高い空間認識能力を持つことは、人生において大きな得になることがわかりましたね。スポーツや理系の職業に興味を持っている子はもちろんのこと、そうでない子も、自動車の運転や地図の読み取りは生きていくのに必要なスキルです。心理学者のデイビッド・ルビンスキー氏によると、空間認識能力は「人間のなかで眠っている潜在能力のうち、最大の部分かもしれない」とのこと。空間認識能力は、創造力やイノベーションと関連して主要な役割を果たしているそう。机上の勉強という平面的な世界を飛び越えて、空間を立体的・包括的に捉えられる力「空間認識能力」。親としては、子どもの能力を養い、最高のポテンシャルを引き出してあげたいものですね。では、空間認識能力は伸ばそうと思って伸ばせるものなのでしょうか?もちろん、可能です。人類学者のグウェン・デワー氏によれば、訓練によって空間認識能力を向上させられるだけでなく、性別による差さえも縮まるか消滅するそう。次項からは、子どもの空間認識能力を鍛えるためのさまざまなアプローチをご提案します。空間認識能力を鍛えるおもちゃまずは、遊んでいるうちに自然と空間認識能力が育つおもちゃを紹介します。パズル子どもの脳を刺激したり、手先を器用にさせたりするため、小さいうちからジグソーパズルを与えている親御さんもいることでしょう。ジグソーパズルの製作・販売を手がけるシャフト株式会社によると、そもそもジグソーパズルは子どもの教育のために生まれたそう。空間認識能力や記憶力が養える「無限の展開と可能性を秘めた知育玩具」なのだとか。また、以下のような研究結果もあります。空間認識能力を研究するジェーミー・ジロー助教授(米ヴァージニア大学)らが4~7歳の子ども847人に行った調査では、パズル・ブロック・ボードゲームで週に6回以上遊ぶ子どもは、空間認識能力を測定するブロック配置テストにおいて、それ以外の子どもよりも高いスコアを獲得したそう。一方、お絵描きやスケートボードといったほかの遊びの習慣については、スコアとの関連性を確認できませんでした。この結果から、パズル・ブロック・ボードゲームで遊ぶことは子どもの空間認識能力を高める可能性が示唆されました。(太字は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子ども向けパズル」は教育効果バツグン!?選び方とおすすめパズル教えます)パズルには豊かな教育効果があるようですね。子どもにジグソーパズルを買い与える場合、どのようなパズルを選べばよいのかについては、「『子ども向けパズル』は教育効果バツグン!?選び方とおすすめパズル教えます」をご参照ください。ブロック上で挙げた研究では、空間認識能力の高さとブロック遊びに関係があることがわかりました。空間認識能力が高い子どもがブロック遊びを好むのか、それともブロック遊びをたくさんしたから空間認識能力が向上したのかは断言できませんが、ブロックを組み合わせて立体造形物を組み立てることは、3Dの空間を意識することに貢献しそうですよね。ブロックのおもちゃにはさまざまなものがあります。なかでも、「あの藤井聡太さんも幼少期から遊んでいた! 大人気の知育玩具『キュボロ』で “非認知能力” を育てよう。」でもご紹介した「キュボロ」は特に教育効果が高そう。キュボロとは、スイス製の木製おもちゃです。5cmの立方体を組み合わせて遊ぶのですが、ただの積み木ではありません。キュボロの特徴は、ブロックに溝がほられたり穴が開いたりしていること。これらの溝・穴がつながって「道」となるようにブロックを組み合わせ、その道にビー玉を転がして遊ぶのです。ビー玉がうまく転がるようにブロックを組み合わせるのは、頭を使うもの。外側から見えない部分のことも考慮しなければなりません。教育評論家の石川幸夫氏によると、キュボロで遊ぶことによって子どもの空間認識能力が養われるそう。2018年10月現在、大人気のため入手が難しい状態ですが、時間がかかっても手に入れたい銘品といえます。空間認識能力を鍛えるゲーム家庭用ゲーム機やスマートフォンのアプリケーションで遊びながら空間認識能力を鍛えられたら、楽しいうえに教育効果も得られて一石二鳥ですね。そのような便利なゲームはあるのでしょうか?2007年に発表されたトロント大学(カナダ)の研究によると、18~32歳の男女20名に、米エレクトロニック・アーツ社のWindows用ゲームソフト『メダル・オブ・オナー パシフィックアサルト』を10時間プレイさせたあと、視覚処理能力や注意力を測定するテストを実施したところ、ゲームのプレイ前と比べて正解率の平均が61%から74%に向上したそう。『メダル・オブ・オナー』とは、一人称視点のシューティングゲーム(FPS: First Person Shooter)として人気のシリーズです。FPSは、主人公や敵キャラクター、およびマップ全体が画面に俯瞰(ふかん)的に映る三人称視点と異なり、より現実に近い臨場感が特徴。画面に現れる敵や目標物に注意を凝らしながら3D空間を移動し、照準を合わせて敵を撃つ……このような遊びは非常に注意力を要求するため、プレイヤーの空間認識能力を鍛える効果があるようです。とはいえ、『メダル・オブ・オナー』は戦争を舞台にしたゲーム。子どもに遊ばせたくない親御さんは少なくないでしょう。そこで、子どもにも安心して勧められるのが、おなじみのパズルゲーム『テトリス』。メリッサ・ターレッキ教授(カブリーニ大学)らが2007年に発表した論文によると、学生に毎週1時間『テトリス』をプレイさせつづけると、3カ月後には、図形回転についてのテストの成績が大きく向上したそう。『テトリス』は、ロシア出身のアレクセイ・パジトノフ氏が考案したもの。日本では「落ち物パズル」の元祖としてよく知られていますね。上からゆっくりと落ちてくるブロックを回転させ、下に積まれているブロックとうまく組み合わせるゲーム。プレイヤーは限られた時間内に図形の形を素早く判断しなくてはならないので、いかにも空間認識能力が鍛えられそうです。スマートフォンや、携帯ゲーム機「Nintendo Switch」で気軽に遊びつつも、能力の向上が期待できそうですね。空間認識能力を鍛えるトレーニング空間認識能力を鍛えられるおもちゃやゲームを紹介してきましたが、子どもの能力を育てるのに特別な道具を買いそろえる必要はないのです。日常生活のなかで空間認識能力を鍛えられる方法をご紹介します。鬼ごっこ空間認識能力を高めるには、やはり3次元の空間を自由に動き回るのがいちばん。ただでさえ近年は、安全上の理由などで子どもが外遊びをする機会が減っているので、意識して外で遊ばせるのがよいでしょう。前述の谷けいじ氏は、空間認識能力を育む代表的な遊びとして鬼ごっこを挙げています。鬼ごっこは、常に自分と鬼の位置を把握しつつ、園庭や公園にある障害物を利用して移動ルートを考えなければいけない遊び。高いところに登れば鬼を回避できる「高鬼」や、鬼が指定した色の物体を探しながら逃げる「色鬼」だと、さらに周囲への注意力が高まります。転んだりぶつかったりして危ないからと鬼ごっこを禁止せず、たくさん遊ばせることが、子どもの成長につながるといえます。会話の際、大きさや方向を具体的に示す言葉を使う上でも挙げたデワー氏は、子どもの空間認識能力を高める方法として、空間を意識した声かけを挙げています。たとえば、以下のようなもの。シーツをベッドの形に合わせるには、どちらの向きがいいかな?左側の靴ひもは、上を通る?下を通る?そもそも、どちらが左かな?(スーパーで買った)商品は、ひとつのバッグに収まるかな?このベーグルを横に切ったら、どんな形になる?切ってもトースターに入るかな?(引用元:Parenting Science|10 tips for improving spatial skills in children and teens)ふだんは「そっち」「こうやって」という指示語で済ませてしまっている会話に、ものの大きさや方向を具体的に示す言葉を取り入れてみましょう。子どもが空間について考えるきっかけとなります。親にとっても、言語能力を高めるよい練習になりますね。***最近注目を浴びている、空間認識能力。子どもの才能を開花させるには、無視できない要素ですね。机に向かって勉強するだけでは成長させられないこの力を、さまざまな遊びや体験を通じて伸ばしていきましょう!(参考)情報学広場:情報処理学会電子図書館|ARを用いた空間認識能力向上のための学習方法Daily Mail Online|Women ARE as good at reading maps as men … but only in countries with gender equality!Cell Press|Global Determinants of Navigation Abilityオトナンサー|顔から転ぶ、靴ひもが結べない…子どもが“運動オンチ”に育つ家庭にありがちなNG習慣とは?日本バレーボール学会|バレーボール選手におけるワーキングメモリと空間認識の関係一般社団法人コンピュータ教育振興協会|3次元CAD利用技術者試験乗りものニュース|女性は合流が苦手?運転技術、なぜ男女で差がつくのかゲキサカ|[特別編]手倉森誠監督(U-22日本代表)中篇「さまざまなスポーツから身に付くサッカーに必要な空間認知能力」 by 長谷川望StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子ども向けパズル」は教育効果バツグン!?選び方とおすすめパズル教えますNEWSポストセブン|藤井聡太四段の天才脳を育てたスイス製の立体パズルParenting Science|Spatial intelligence: What is it, and how can we enhance it?Parenting Science|10 tips for improving spatial skills in children and teensNature News|How to raise a genius: lessons from a 45-year study of super-smart childrenUniversity of Toronto|Playing an Action Video Game Reduces Gender Differences in Spatial Cognition
2018年11月02日自分が本当に「言いたいこと」と、実際に英語で「言えること」のギャップは、英語を使おうとすると必ずといってもいいぐらい直面する問題です。そうしたギャップに出会ったとき、皆さんはどうしますか?多くの学習者は「沈黙」してしまいますね。日本語で「えーと」が出てから、ぎこちない時間が流れることになります。または、何とか言い換えようとするでしょう。例えば「終身雇用制度」に相当する英語がみつからないとします。ぴったりした英語は “lifetime employment system” ですが、知らなければ、その意味するところをなんとか伝えるしかありません。“You can work until you get old.”(歳をとるまで働く)のような言い換えをする人もいるかもしれませんね。「コミュニケーション方略」の実態この2つの例は、第二言語習得研究者たちが「コミュニケーション方略」と呼ぶ具体的事例を表しています。「えーと」で沈黙するのは「話題の放棄」という方略です。一方、言い換えて伝えようとするのは「パラフレージング」という方略です。放棄は消極的、言い換えは積極的なコミュニケーション方略になります。ほかにも、このような方略があります。・話題の回避・翻訳・手振りで伝える・相手に援助を求めるわからないからと言って、話題を放棄するのはNG日本人学習者は、英語で表現できないと感じたとき、バツの悪い沈黙をした末に、話題を回避したり、放棄してしまう傾向があります。話題の回避は、ある種の防衛本能から生まれるものかもしれません。つまり、英語で表現できず、間違ったことを話すと笑われてしまうかもしれないと思い、自信のない話題をつい避けてしまうのです。しかし相手は、こちらの思いをそのように解釈してくれるとは限りません。場合によっては「自分と話したくないから、無視している」と受け取られることもあります。相手は、あなたの英語に興味があるのではなく、あなた自身に興味があるのです。そのため、回避や放棄といったコミュニケーション方略は、マイナス効果を生む可能性が大です。そこで話題を回避したいときは、そのことを英語できちんと表現する必要があります。I want to talk about this topic, but I don’t know how to express my ideas in my English.(話したいんだけれど、自分の考えを英語でなんて表現すればいいのかわからないんだ)このように言語化すれば、相手は状況を了解してくれるでしょう。「何も言わなくても、相手は自分の気持ちをわかってくれるだろう」という考えは通じません。「インターアクション仮説」とリスク・テイカー間違ったことを言ってしまったら恥ずかしい、というのは多くの英語学習者の心理です。たしかに、間違いを犯すのはリスクです。しかし、ある程度のリスク・テイカーが外国語習得に向いているといわれます。英語が使えるようになるには、使うしかありません。これは明白です。英語で “Leaning by doing” という言い方がありますが、まさに、活動の中で、活動を通して、英語の運用能力を身につけていくことが重要なのです。子どもが母語の運用能力を身につける際にも、他者とのやりとりが鍵となりますね。言語習得は、常にやりとりのなかで進行する。そして、この母語習得のありようは、第二言語習得の場合にも、基本的には通用する。そう考えるのが「インターアクション仮説」です。学習者が実際に英語を使うことを通して、自分の言っていることが相手に通じたり、通じなかったりという経験をするでしょう。それは、相手との共同作業の中で行われる経験です。このような形で、実際に英語を使いながら、英語力を高めていくのです。英語を使う現場に、試験の「減点主義」を持ち込まないで仮にインターアクション仮説が正しいとした場合、「誤り」に対する考え方を変えなければなりません。英語で話そうとすれば、文法なり語彙なり発音なり、何かしらのミスをしてしまうもの。そして間違いは一種の「スティグマ」のようなものとして捉えられ、恥ずかしいという感覚を呼び起こします。「できることなら、ミスなく英語を話したい」。そう考えることは理解できます。しかし、間違うことに過剰反応することで、英語を使う気持ちが削がれてしまうと本末転倒です。学校では、間違いは減点の対象になります。英語などの試験では、65点や70点のように点数がでます。テストでは、それも仕方のないことです。しかし、学校における「減点主義」というものを、英語を使う現場に持ち込むことは正しくありません。子どもには「もっと間違って前進しよう」と伝えてほしいよく、このような「励まし」のコトバを耳にすることがありますね。Don’t be afraid of making mistakes.(誤ることを恐れるな)しかし、このコトバの背後には「間違いを犯すことは怖れの対象になる」という前提があります。それよりも、Make more mistakes and make progress.(もっと間違って、前進しよう)というべきです。何か新しいことをするには、試行錯誤はつきものです。試行錯誤を通して、英語は熟達するのです。特に自然な会話では、誤りに対して寛容なもの。言い間違いがあれば、言い直せばよいのですから。これはお子さんの英語学習を支える上で、親御さんに特に意識してほしいポイントです。たとえお子さんが間違った英語を使ったとしても、決してミスを責めないでください。英語を話す上で、間違いを犯すのは悪いことだと子どもに教え込むことで、将来「話題の放棄」や「話題の回避」をはじめとした、消極的なコミュニケーション方略をとる英語学習者に育ってしまいかねません。そうではなく、まずは英語で表現することに挑戦する姿勢を褒めてあげましょう。英語を使って相手と繰り返し話すうちに、次第に英語力を高めることができるのですから、心配はいりません。間違いは、前進のもと。成功のもとなのです。
2018年11月02日前回は、子ども向けの物語の中に根強く残る「ジェンダーバランス」の悪さについてお話しました。そもそも、女性の登場人物が少ないこと。女性キャラクターの登場の仕方には、ある種のくせがあること——つまり、「良い子ちゃん」であったり「お姫様」「助け役」として出てくることはあっても、主人公や主人公と対等な悪役としてはあまり出てこないこと。書店の本棚をそのまま自宅に持ってきたときに、ジェンダーのバランスが取れているかというと、必ずしもそうではないということ。親の能動的な介入が必要だろうという話もしました。子どもの本棚のジェンダーバランスは「女の子を持つ親」に限られた問題ではなく、男の子の親にとっても意識しておくべき問題である、と考えています。なぜ子ども向け物語のジェンダーバランスが崩れてしまうのか?子ども向けの物語に男の子の主人公が多いことには、いくつかの理由があります。もちろん歴史的な理由もそのひとつです。『白雪姫』や『シンデレラ』など、古くからのおとぎ話では、しばしば女の子たちは受け身で、王子様を待つことで幸せをつかみます。子ども向けの物語は息が長いことも指摘されています。親が子どものときに楽しんだ本を買い与えるので、古典的な名作が現在でも本棚に並びます。古い本は書かれた時代の事情を反映していますから、人種や性別に関しては、どうしても時代に合わないくらい保守的になりがちです。もっと現代的な理由としては「男の子が抱く女の子の主人公に対する抵抗感は、女の子が抱く男の子の主人公に対する抵抗感よりも強い」とされていることが挙げられるでしょう。全く抵抗がないわけではありませんが、女の子は男の子が主人公の物語にも感情移入して読むことができないでもないのに対し、男の子は女の子が主人公であるというだけで、本を読まなくなる傾向にあると言われます。けれど『長くつ下のピッピ』のように、破天荒な女の子を主人公に据えながら、男女を問わず子どもたちに愛されている物語もあるのですから、これもまた一概にいうことはできないでしょう。「一体どのような物語が男の子向け、女の子向け、そして、単純に子供向け、として書かれているのか」という視点も交え、考えなくてはならない問題です。現代は「賢く、行動力のある」お姫様がスタンダード1960年代に児童文学でのジェンダーの問題が指摘されてから、様々な試みがされてきました。最初は「女の子が読むものを変えよう」という動きが目立ったように思います。最近、日本でクラウドファンディングを用いて復刻された『アリーテ姫の冒険』も、そのうちの一冊です。伝統的なプリンセスが「待つ」お姫様であるのに対し、アリーテ姫は賢く、勇気を持ち、非暴力的な形で問題を解決していきます。1983年に小さな出版社から出されたこの本は、すでに出版社そのものがなくなっていることもあり、実は英語での入手は簡単ではありません。本国のイギリスでは、日本で作られたアニメーション経由で読んでみる人が多いようです。英語圏の新しい童話でもお姫様は続々と登場していますが、今ではむしろ、「賢く」「行動力のある」お姫様がスタンダードになっているように思います。身近な例では、最近のディズニープリンセスたちを見てみれば良いでしょう。『モアナと伝説の海』のモアナも、『アナと雪の女王』のアナとエルサも、決して待っているだけではありません。純粋に本だけでいうのであれば、例えば、パトリシア・リーデの Dealing with Dragons(『囚われちゃったお姫さま』※小学校中学年以上対象)に出てくるお姫様は、フェンシングやラテン語、経済学の勉強がしたくてたまらず、うずうずしています。アリーテ姫よりも少し早く、1980年に出版された The Paper Bag Princess (『紙ぶくろの王女さま』)では、悪いドラゴンにドレスを盗まれ、王子様をさらわれてしまったお姫様が、王子様を助けに冒険に出かけます。アリーテ姫や紙ぶくろの王女さまは、のちの「行動する王女たち」の先駆者だともいえるでしょう。女の子には「自分の力で人生を切り拓いた女性の伝記」をそれでも、お姫様だけではないロールモデルを!こんな声がけで始まったのがこちら、『世界を変えた百人の女の子の物語』。全世界36ヶ国で発売され、累計100万部を突破した話題作です。生まれながらに「お姫様」として色々なものを与えられている女の子だけではなく、自分の力で人生を切り拓いていった女性たちの伝記が、多くの女性アーティストのイラストとともに、まるでおとぎ話のような語り口で並べられています。実はこれも、クラウドファンディングで始まったプロジェクトです。675,000ドル強(日本円にして7,500万円強)と、子供の本としては破格の金額をオンライン上で集めました。日本語訳にはひらがながふってありますから、小学校低学年でも読めると思います。読み聞かせるのであれば就学前でも大丈夫かもしれません。お姫様、スポーツ選手、小説家、そしてトランスジェンダーの小さな女の子まで、様々な女性の活躍が収録されています。男の子には「人と違うことを恐れない男性のストーリー」を大きな反響を読んだこの本に呼応する形で発表されたのが、Stories for Boys who Dared to be Different (『人と違う事を恐れない男の子たちのためのお話』日本語未訳)です。不合理な校則に反対するためにスカートを履いた男の子たち、スラムの子どもたちのためにゴミから楽器を作りオーケストラを作った男性、初期のインターネットでのいじめを生き抜いた男の子。こちらも伝統的な「男らしさ」には必ずしも当てはまらないかもしれませんが、様々な形で社会と関わっていった男性が百人、挙げられています。著者たちは、本書を「毒になる男らしさ」(Toxic masculinity)に対抗した本、と位置付けているようです。「毒になる男らしさ」とは、周囲のだれも幸福にしない「男らしさ」のことを指します。かつては女の子に力を与える本を、という声が目立っていたのですが、このように男らしさを考え直そうという動きが、子ども向けの書籍の中に見られているのです。日本語訳はまだ出ていないようですが、本当はセットで読まれるべき本なのかもしれません。男女の枠にはまらない「全ての子供向け」の本も新登場さらに今年10月、「女の子」「男の子」という読者対象の壁を取り払い、「全ての子ども」向けとして書かれた、Stories for Kids Who Dare to be different (『人と違う事を恐れない子供たちのためのお話』日本語未訳)が英語圏で発売されました。女の子に力を与える本と、男の子により柔軟な生き方を提示する本。そのどちらも素敵ですが、本当はいつか、このような、2つが「分かれていない」本がスタンダードになってくれると良いな、と思います。また、『世界を変えた女の子』を男の子が、『人と違う事を恐れなかった男の子』を女の子が、読んでくれると良いなとも思います。「お父さんと子ども」の名作絵本最後になりますが、「ママとぼく」の組み合わせが非常に多い子ども向け絵本の世界から2冊、英語圏でとても愛されている「父と子」の絵本をご紹介させてください。英語圏で絶大な存在感を持つ Gruffalo は、第1作目こそ男性しか出てこなかったのですが、第2作 Gruffalo’s Child では、グラッファローの娘が主人公になっています。私がこの作品で良いな、と思うのは『グラファロのこども』というタイトルです。日本語訳は『グラファロのおじょうちゃん』となっていますが、英語版ではあえて性別がわからない「こども」で統一されています。「男の子だから」「女の子だから」というのではなく、子どもならではの好奇心にそそのかされて、ちょっとした冒険をするチビのグラファロ、チビグラが「たまたま女の子」なのです。疲れて寝ているお父さんと、そわそわしている子どもの組み合わせに、妙なリアリティがあると私は思っています。英語のよみきかせ動画をご紹介しますので、英語版を読むときは参考にしてください。父親が出てくる書籍として、人気が高い絵本をもう1冊ご紹介しましょう。『どんなにきみがすきだかあててごらん』( Guess How much I love you )。大きなうさぎと小さなうさぎが、お互いにどれだけ相手の事を好きだか伝え合っているだけの物語です。シンプルな言葉でつづられる、優しい「パパとぼく」の絵本です。こちらも、英語のよみきかせ動画をご紹介しましょう。幼い子どもたちが大人になっていくにしたがって、男女の関係は、どんどん変わっていくでしょう。ましてや、世界が狭くなっていく今、やがて国を超えて活躍するような子どもたちのためには、より多様性のある物語が本棚にそろっていてほしい。優れた児童書は数多く出版されています。それが実際に子どもたちの手に届くところにあってほしいと、心から願っています。(参考)森 はるな(2005),『白雪姫(ディズニーゴールド絵本)』,講談社.森 はるな(2005),『シンデレラ(ディズニーゴールド絵本)』,講談社.アストリッド・リンドグレーン 著, いしいとしこ 訳(2004),『こんにちは、長くつ下のピッピ』,徳間書店.パトリシア・C. リーデ 著, 田中 亜希子 訳(2008),『囚われちゃったお姫さま』,東京創元社.ロバート マンチ 著, 加島 葵 訳(1999),『紙ぶくろの王女さま』,カワイ出版.うさぎ出版(2017),『モアナと伝説の海(ディズニー プレミアム・コレクション)』,永岡書店.うさぎ出版(2014),『アナと雪の女王(ディズニー・ゴールデン・コレクション)』,永岡書店.エレナ・ファヴィッリ, フランチェスカ・カヴァッロ 著, 芹澤恵, 高里ひろ 訳(2018),『世界を変えた100人の女の子の物語』,河出書房新社.Ben Brooks, Stories for Boys who Dared to be Different,(Quercus Publishing, 2018)Ben Brooks, Stories for Kids Who Dare to be Different ,(Quercus Publishing, 2018)ジュリア ドナルドソン 著, 久山 太市 訳(2008),『グラファロのおじょうちゃん』,評論社.Julia Donaldson, Gruffalo’s Child,(Puffin Books, 2007)サム マクブラットニィ 著, 小川 仁央 訳(1995),『どんなにきみがすきだかあててごらん』,評論社.Sam McBratney, Guess How much I love you,(Walker Books, 2007)
2018年11月01日幼いお子さんをお持ちの親御さん、親子で一緒に歌を歌っていますか?音楽による幼児教育研究が専門の、高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授・岡本拡子先生によると、子どもにとって歌は親とのつながりを感じられるもの。親は子どもと一緒にたくさん歌を歌ってあげるべきなのだそうです。では、幼い子どもの成長につなげるために、いったいどんな歌を歌えばよいのでしょうか。まずは、子どもが歌を歌うことの意義から語っていただきました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)歌は人間的成長に欠かせないもの子どもが歌うことにはたくさんのメリットがあります。ただ、わたしとしては「メリット」という言い方はあまり好きではないんですけどね。というのも、いいことがあるから人は歌うわけではないからです。歌うときには声を使います。そして、声を使うということは体を使うということですから、歌うという行為は人間のプリミティブな欲求、本能に根ざしているものと言えるからです。歌というものが生まれた当初は、おそらく、伝達やコミュニケーションのために、そのうち儀式や神事などに使われたのでしょう。それから、気持ちの高揚や感情を表すひとつの手段として、また、人の楽しみとして使われていった。それが歌なのです。では、子どもの歌となるとどうでしょうか。まず、どこからが歌でどこからが歌ではないのか、ということを考えてみてください。たとえば、子どもがお友だちの家に遊びに行ったときに言う「ひーろーちゃん、遊びましょ」。これは歌でしょうか、歌ではないでしょうか。遊びの輪に入れてもらうときの「いーれーて」「いーいーよ」、あるいは数を数えるときの「いーち、にーい、さーん、しーい」はどうでしょう。これらには決まったリズム、メロディーがあるとも言えますよね。子どもたちは、誰かがつくった歌を歌うだけではなくて、遊びのなかでどんどん気持ちが弾んでくると、たくさんの「歌」を歌っているのです。これらも歌であり、音楽の入り口と言えるでしょう。そして、お母さんなど周囲の大人も子どもと一緒にたくさん歌ってあげるべきだと思います。それにはふたつの理由があります。ひとつは、子どもにとって、歌は親とのつながりを感じられるものだからです。親が乳幼児をあやす際に自然に発する高い音域で抑揚のある「マザリーズ」と呼ばれる話し方で話すと、子どももそれに応えて声を発しますが、じつはその声の波形やリズムは親のそれらとまったく同じなのです。その時点で、親子の音楽的なやり取りははじまっていると言っていいでしょう。それはコミュニケーションというより、「情動の交流」と呼ぶべきものです。子どもが明確に歌と呼べるものを歌うようになるのは1歳頃からですが、それ以前にも赤ちゃんはリズミカルに歌っています。そうして親と「歌」を交わすことで、子どもは親とのつながり、親と通い合っていることを無意識のうちにも感じるのです。それから、親など周囲の大人が子どもと一緒にたくさん歌ってあげるべきもうひとつの理由は、歌が人間的成長に欠かせないものだからです。誰かと一緒に歌を歌う際に重要なのは、呼吸を合わせることですよね。そして、人が呼吸を合わせることが求められるのは歌うときだけではありません。会話のなかでどう相づちを打つかといったことも、人と呼吸を合わせることのひとつでしょう。人は必ず社会のなかで生きていくもの。だからこそ、人との関わりのなかで、「自分が社会の一員なんだ」と感じることは、子どもの成長に絶対に欠かせないものです。人と呼吸を合わせることが求められる歌というものは、そういう社会性を育むことに大きな役割を果たすものだとわたしは考えています。また、親が子どもと一緒に歌えるということは、親子関係がいい状態にあるというサインでもあります。怒ったりイライラしたりしているときには大人は歌いませんよね。歌を歌うということは親がリラックスしていることの証なのです。子どもが健やかに育つためにも、親がそういう心の余裕を持てるような家庭、社会であってほしいですね。歌だけではなく五感が総合的に子どもの感性を育むでは、どういう歌が子どもの成長につながるのでしょうか。幼い子どもの場合、子どもの認知能力や発達ときちんと合っているものである必要があります。簡単に言えば、子どもが「表現できる歌」であるべきでしょう。日本には「わらべ歌」という、子ども自身がつくって歌い継がれてきた歌があります。それらの多くは、日本語のリズムや抑揚に合わせてつくられた音域が狭いもの。子どもにも無理なく発声できて、話しはじめたばかりの子どもでも、しゃべることの延長のような感じで歌えます。幼稚園や保育所の年少さんくらいの子どもの場合だと、有名なところでは『ちょちちょちあわわ』『東京都日本橋』など、赤ちゃんでも一緒にできる手遊び歌がいいでしょう。それから、年少さんの子どもでも歌詞の意味が理解しやすいもの。たとえば、『ぞうさん』『おつかいいありさん』『やぎさんゆうびん』など。これらは、動物に「さん」をつけて人間のように扱っているので、子どもが内容を理解してイメージしやすいのです。最近の保育の現場を見ていると、子どもには難しい歌を歌わせていると感じることもあります。なかには、「大人にも難しいんじゃないかな?」と思うような歌もあるくらい。それに、大人が聴いてうれしい歌も多いですね。子どもの歌と言いながら、大人にウケる歌です。そうではなくて、もっと子どもの発達に目を向けて、それに合った歌を歌わせてあげてほしいですね。そして、大切なのは、いろいろな歌を歌うより、子どもが大好きな歌を(作詞・作曲という意味ではなく)つくってあげること。季節に関する歌なんていいですね。夏になったら、あなたのお母さんが必ず歌ってくれた歌があるとしましょう。子どもの頃の記憶というのは、歌と密接に結びついているものです。すると、大人になっても夏がくるたびに、お母さんの歌とともに、お母さんと散歩したときに見た景色やそのときの草の匂い、つないでいた手の感触といった五感がよみがえってくる。それらのさまざまな感覚こそが、あなたが大人になるための感性を育んでくれたのです。『感性をひらく表現遊び―実習に役立つ活動例と指導案 音楽・造形・言葉・身体 保育表現技術領域別』岡本拡子 著/北大路書房(2013)■ 音楽教育のエキスパート・岡本拡子先生 インタビュー一覧第1回:幼少期における音楽体験の意味――「音楽という環境」を通し子どもの感性を伸ばす第2回:子どもの感性を育む「歌と五感」――幼い子どもの成長につながる歌ってどんな歌?第3回:「手遊び歌」が子どもにもたらすもの――楽しく歌うことが「学びの姿勢」につながる第4回:【年齢別おすすめ】子どもの想像力がアップする!5つの「手遊び歌」【プロフィール】岡本拡子(おかもと・ひろこ)1962年8月25日生まれ、大阪府出身。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程音楽教育専攻修了。聖和大学大学院教育学研究科博士後期課程幼児教育専攻満期修了。聖和大学助手、美作大学短期大学部講師などを経て、現在は高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授。大学在学中より幼稚園や小学校などで「歌のお姉さん」として活動。その後、子育てをしながら大学院で幼児教育を学ぶ。現在は保育者養成に携わりながら、幼児やその保護者を対象としたコンサートや保育現場でのコンサートをおこなうほか、子どもの歌の作詞・作曲を手がける、保育者研修の講師を務めるなど、幅広く活躍する。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年10月31日文章を書くとき、頭の中でいったい何が行われているのか?文章を書くときに私たちが必ずしていることがあります。それは「自問自答」です。「自問自答」とは<自分で問いを立てて、自分で答えること>です。「えっ、私は自問自答なんてしていないけど?」という方は、頭の中で自問自答していることに気づいていないだけです。今日はお昼に和風パスタを食べました。たとえば、あなたが、この文章を書いたとします。そのとき、あなたは頭の中で「今日のお昼ごはんは、何を食べましたか?」と自分に質問をしています。その質問に答えたからこそ、この文章を書くことができたのです。通常、自問自答は、頭の中で高速で行われています。それゆえ、私たちは自問自答している自覚がありません。逆にいえば、この自問自答を意識的に行うことによって、その人の文章力はぐんぐん伸びていきます。話を膨らませるために必要な「自問自答の技術」自問自答で文章作成しているという事実が腑に落ちない方に、もう少し補足説明しましょう。世の中には「今日はお昼に和風パスタを食べました」という文章を膨らませられる人と、膨らませられない人がいます。前者は自問自答が上手な人で、後者は自問自答がヘタな人です。後者がなぜ話を膨らませられないかというと、自分に対して積極的に質問をしていないからです。質問がなければ、当然、答え(=文章の材料)も生まれません。いい文章を書きたいなら、自分に対して、積極的に質問をするしかないのです。質問:和風パスタには、どんな具材が入っていましたか?答え:椎茸とワカメとベーコンが入っていました。質問:味付けはどうでしたか?答え:和風出汁に、バターと醤油がマッチしていました。生姜のアクセントも効いていました。生姜、好きなんです。質問:どこで食べましたか?答え:近所にオープンしたばかりのカフェ・レストラン「BON」質問:なぜ和風パスタを選んだのですか?答え:店長イチオシのメニューだったからです。質問:そのパスタは、いくらでしたか?答え:飲み物付きで880円でした。驚くほどコストパフォーマンスが高かったです。このように、自分に質問し、それに答えることによって、文章の素材がたくさん集まりました。これだけの素材があれば、先ほどの文章を膨らませることは難しくないはずです。【例/SNSへの投稿を意識した砕けた文章】今日のお昼は、近所にオープンしたばかりのカフェ・レストラン「BON」へGO!店長イチオシの「和風パスタ」を食べました。椎茸とワカメとベーコンが入ったそれは、和風出汁に合わせたバター&醤油風味が絶妙。アクセントに加えた生姜も私好みでした。飲み物付きで880円って……コストパフォーマンス高すぎでしょう! 「インタビューごっこ」で子どもから情報を引き出そうここまで、大人が文章作成する例を使って説明してきましたが、文章作成において、子どもと大人の違いはありません。子どもの作文能力を伸ばしたいなら、できる限り早いうちに「自問自答」の習慣を身につけさせることが肝心です。とはいえ、子どもはまだ自問自答がどういうものかわかっていません。「自問自答しなさい」などと言えば、頭が混乱してしまう子もいるでしょう。そこで親の出番です。子どもの自問自答を手伝ってあげてほしいのです。おすすめしたいのが「インタビューごっこ」です。たとえば、子どもが運動会の作文を書けずにいたら、「運動会」をテーマに、子どもと「インタビューごっこ」に興じてください。親であるあなたがインタビュアーを務めます。【インタビューの質問例(運動会について)】◆今日の運動会でいちばん楽しかったことは?◆今日の運動会で何が嬉しかった?◆今日の運動会で悔しかったことはある?◆今日の運動会で感動したことはあった?◆リレーで前の子をよく抜いたね!あのとき、どういう気持ちだった?◆リレーでは最後に抜かれちゃったね。あのときは、どういう気持ちだった?◆赤組の優勝、おめでとう!はじめから優勝する自信があった?◆赤組の優勝、おめでとう!赤組はどうしてあんなに強かったのかな?◆赤組、優勝できなくて残念だったね。優勝した青組との差は何だったのかな?◆応援合戦、楽しそうだったね。応援しているときは、どんな気持ちだった?◆運動会までに頑張ってきた練習の成果は出せた?◆今回の運動会で、もし自分で自分に点数をつけるとしたら何点?親が好奇心をもって質問すれば、子どもも一生懸命に答えてくれるはずです。とくに、子どもが目を輝かせて答えた内容は、作文の背骨になる可能性が大です。その内容を掘り下げる形で、どんどん質問をしていきましょう。「インタビューごっこ」のふたつの注意点。「インタビューごっこ」には注意点があります。それは、「誘導尋問しないこと」と「子どの答えを否定しないこと」の2点です。たとえば「リレーで負けて悔しかったね?」と質問するのは、あまりいい質問ではありません。本人は“悔しいと思っていない”かもしれないからです。また、「リレーでは最後に抜かれちゃったね。あのときは、どういう気持ちだった?」と質問したときに、子どもが「ムカついた」と答えたとします。親としては「悔しかった」という言葉がほしいのかもしれませんが、そこはグっと耐えなければいけません。「ムカついた」というのは、子どもにとって素直な感想です。むしろ、大切にすべきキーワードです。子どもが「別にない」「とくにない」「よくわからない」といった答え方をしたときも、「ちゃんと答えなさい!」などと怒ってはいけません。本人にとって「リレーで抜かれたこと」は、たいして意味のないことなのかもしれません。さまざまな方向から質問をして、子どもが興味・感心をもつエピソードを引き出してあげることもインタビュアーの役割です。「運動会はつまらない!運動も大嫌い!」。なかには、そんな答え方をする子もいるかもしれません。いいじゃないですか。すばらしい個性です。運動会が嫌いな理由を聞いてみてください(尋問にならないよう気をつけながら)。きっとユニークな作文ができるはずです。くり返しになりますが、子どもの答えに対して、親が善し悪しをジャッジしてはいけません。どんな答えも正解です。親がいらぬジャッジをした時点で、それは「インタビューごっこ」ではなく詰問や尋問になってしまいます。すると、子どもは、素直に答えなくなってしまいます(親の顔色をうかがうようになります)。どんな答えであっても、それが“その子らしい作文”を書くために必要な材料と心得ておきましょう。攻守交代してインタビュアーも経験させよう頭の中にある情報は曖昧模糊とした“幻”のようなものです。話すという行為は、その“幻”を形にする重要なプロセスです。質問に答えることによって、子どもは自分の気持ちや意見に気づくことができます。質問に答えることは、子どもの言語能力と思考能力を高めるうえで極めて有効なのです。なお、子どもの自問自答力を高めるためには、子どもに「質問をする経験」を積ませることも大事です。ですので、子どもへのインタビューが終わったら、こんどは親が、子どもからのインタビューを受けてください。テーマは「お母さんの好きな趣味について」「お母さんの子ども時代について」「お父さんの仕事について」「お母さんとお父さんの出会いについて」など、どんなことでも構いません。「いつ?」「どこで?」「誰と?」「なぜ?」「そうして?」「どうやって?」「どれくらい?」など、さまざまなパターンで質問することによって、子どもの質問力が鍛えられていきます。もちろん、インタビューされる側である親は「そんなこと聞いちゃダメ!」などと言わないように。これは子どもの能力を育てるための大事なエクササイズなのですから。くどいようですが、文章を書くためには「自問自答」をくり返すほかありません。10歳に満たない子どもであれば、「インタビューごっこ」が有効です。もちろん、理想は、ふだんから子どもとの会話量を増やして、質問をしたり、答えたりする環境を整えておくことです。そういう環境で過ごす子は、自然な形で自問自答力、ひいては作文力を伸ばしていくことでしょう。
2018年10月31日「子どもには情緒豊かな人間に育ってほしい」と、多くの親御さんが願っているはずです。そのために重要となるものといえば、やはり芸術でしょう。その芸術のなかでも音楽による幼児教育研究を専門とするのが、高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授・岡本拡子先生。2018年4月に新たな幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針が導入された背景、そして幼少期における音楽教育の意義とはどんなものなのかということについてお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)「連続性」の視点で新たに示された「10の姿」2018年に改訂・改定された幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針では、新たに下記のような「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」が示されました。【幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)】1. 健康な心と身体2. 自立心3. 協同性4. 道徳性・規範意識の芽生え5. 社会生活との関わり6. 思考力の芽生え7. 自然との関わり・生命尊重8. 数量・図形、文字等への関心・感覚9. 言葉による伝え合い10. 豊かな感性と表現これまで、幼児期の教育における保育の内容は「5領域」と呼ばれるもので示されてきました。5領域とは「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5つ。ちょっとあいまいでわかりづらいかもしれませんね。ただ、それはあえてあいまいにしたからなのです。5領域導入以前の幼稚園では、小学校の教科と対応しているような言葉で指針を示していました。「音楽リズム」や「言語」、「絵画製作」といった具合です。小学校の教科でいえば、それぞれ音楽、国語、図画工作に対応するということは、誰の目にも明らかですよね。すると、「幼稚園は小学校の準備をする場所なのか」と一部から批判の声が挙がりました。幼児期の子どもは、小学生のように教科ごとになにかを学ぶわけではありません。子どもにとっては、歌でも砂場遊びでもあらゆる活動が学びです。そのため、小学校の教科に対応しないかたちの少々あいまいにも感じられる5つの観点から保育内容が示されてきました。ところが、今度は別の問題が出てきてしまいました。小学校の先生からすると、5領域と言われても、それがどんなものなのかわかりづらいのです。わざわざそうしたのですから、当然と言えば当然です。でも、現在の教育現場でその重要性が声高に叫ばれているのが「連続性」というもの。現在、日本の教育は、幼児期から大学まで共通した言葉で語り、一貫した教育をおこなおうとしているのです。幼児期の保育内容が小学校の先生にとって理解しづらいものだということは、連続性という点からすれば大きな問題です。とはいえ、幼児期の教育はやっぱり5領域の視点からとらえたい。そうして、5領域の内容を誰もが理解しやすい言葉でさらに具体的に示したものが「10の姿」だというわけです。大人がやるべきことは子どもが学ぶための「環境」を用意することこの「10の姿」のなかでいえば、わたしの専門は10番目の「豊かな感性と表現」にあたります。大学では声楽、大学院修士課程では音楽教育、そして大学院博士課程で幼児教育を学びましたので、幼児教育のなかでも音楽と表現や音環境に関わるものがわたしの専門です。いま、保育現場にいる身として強く感じることはふたつ。ひとつは、いまの子どもの周囲にはものがあふれているということ。そして、もうひとつは同じように「音があふれている」ことです。いまの時代、いつもテレビがついていて、ゲームの音やさまざまな機械音が常にしています。本当の静けさはあえてつくらないとありません。ただ、人間の耳というものは都合よくできていて、聞きたくない音を脳の中でカットすることができます。「ルビンのつぼ」はご存じでしょうか?見方によって、向かい合っているふたりの顔にも、あるいはつぼにも見える絵です。人間は、見たいものだけを見て、見たくないものは背景に押しやっていくもの。それは、音においても同じことです。聞きたい音だけを聞いて、聞きたくない音は背景に押しやるので、騒音のなかにいても意外と平気なのです。ところが、幼い子どもはまだそれがうまくできません。子どもにとってはあらゆる音が全部同じ圧力で聞こえるため、いまは子どもにとって非常にストレスフルな時代だと思います。ではどうすればいいかというと、それは「音を選ぶ」しかありません。見ていないときにはテレビは消すとか、あるいは逆に風や雨など自然の音に耳を傾けるとか、意図的に音を選ぶということを子どもに教えてあげてほしいのです。これは、ただ音によるストレスを軽減するためだけのものではありません。子どもの教育にもつながるものです。暮らしのなかでストレスを感じる音というと、たとえばドアを乱暴に閉める音があります。そういう行為をする子どもって、どうでしょうか。ドアは静かに閉めて、ものを人に渡すときにもテーブルに「ドン!」と投げ置くのではなく、相手に「はい、どうぞ」と言って静かに手渡す子どもに育ってほしいですよね。音を選ぶということは、ドアの閉め方やものの扱い方などを通して子どもを教育するということでもあるのです。このように、幼児期の教育というのは、ものや人など、周囲の「環境」を通しておこなうものです。砂場遊びをするなら、砂が環境です。そこに水という環境が加われば、子どもは泥んこになって遊ぶうちにお団子をつくれることに気づくでしょう。最初から「砂に水を入れてこうするとお団子ができますよ」と教えてはならないのです。知識や技術を教えるのではなく、子どもがものや人と関わるなかで自ら気づくことが本当の学びなのですから。そのため、大人がやるべきことは、子どもが学ぶための環境を用意してあげることだとわたしは考えています。赤ちゃんにとっての環境を例に挙げてみましょう。赤ちゃんは最初に口のまわりが発達します。だから、なんでも口に入れて舐めようとする。でも、口に入れてはいけないものもありますよね。そこで「これは口に入れちゃ駄目」とものを取り上げるのではなく、そういうものは最初から排除しておくのです。これも環境を用意するということです。そして、「音楽も環境」のひとつです。ここでお伝えしておきたいのは、「音楽教育」と「音楽家教育」は別のものだということ。音楽家教育はピアニストなど音楽の専門家に育てるための教育で、幼いころからフィギュアスケートを習わせるようなものですね。一方、公教育における音楽教育は「音楽という環境を通した教育」です。確かに音楽教育でも音楽の知識や技術を教えますが、それに重きを置いたものでは決してありません。歌を歌う、聴く、楽器や周囲のもので音を出すといった音楽を通して子どもの感性を磨くことを重視したもの——それが、子どもの成長に欠かせない音楽教育なのです。『感性をひらく表現遊び―実習に役立つ活動例と指導案 音楽・造形・言葉・身体 保育表現技術領域別』岡本拡子 著/北大路書房(2013)■ 音楽教育のエキスパート・岡本拡子先生 インタビュー一覧第1回:幼少期における音楽体験の意味――「音楽という環境」を通し子どもの感性を伸ばす第2回:子どもの感性を育む「歌と五感」――幼い子どもの成長につながる歌ってどんな歌?第3回:「手遊び歌」が子どもにもたらすもの――楽しく歌うことが「学びの姿勢」につながる第4回:【年齢別おすすめ】子どもの想像力がアップする!5つの「手遊び歌」【プロフィール】岡本拡子(おかもと・ひろこ)1962年8月25日生まれ、大阪府出身。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程音楽教育専攻修了。聖和大学大学院教育学研究科博士後期課程幼児教育専攻満期修了。聖和大学助手、美作大学短期大学部講師などを経て、現在は高崎健康福祉大学人間発達学部子ども教育学科教授。大学在学中より幼稚園や小学校などで「歌のお姉さん」として活動。その後、子育てをしながら大学院で幼児教育を学ぶ。現在は保育者養成に携わりながら、幼児やその保護者を対象としたコンサートや保育現場でのコンサートをおこなうほか、子どもの歌の作詞・作曲を手がける、保育者研修の講師を務めるなど、幅広く活躍する。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年10月30日できることなら、我が子を有能な人物に育てたい――そう考える親は少なくないでしょう。しかし、「有能な」と一言でいっても、能力には様々な種類があります。最近は、学校や社会で評価される能力も多様化しています。そんななか、とりわけ今注目されている能力の一つが、考える力=「思考力」です。この能力は、変化の激しい時代のなかで、新しい価値を創造するために欠かせない能力の一つといわれています。そうなると、親としては、子どもの「思考力」を育むためにどうすればいいのか気になるところ。そこで今回は、「思考力」の必要性や意味を踏まえたうえで、家庭でできる育て方について考えていきたいと思います。すでに、授業や入試に取り入れられている「思考力」「思考力」が注目されるようになったきっかけの一つは、大学入試改革です。2020年度から、大学入試センター試験に替わり、「大学入学共通テスト」が実施されます。同テストでは、これまでの知識・技能に加え、「思考力・判断力・表現力」が評価されることになっています。こうした改革を見据え、小学校や中学校、高校においても「思考力」を養う教育が導入され始めています。例えば、かえつ有明中・高等学校で行われている「サイエンス」という授業。思考力をトレーニングする科目として、中学校のカリキュラムに組み込まれています。授業のポイントについて、同校のホームページでは下記のように説明しています。「答え」ではなく「答えを導き出すためのプロセス」を磨くことが“サイエンス”の授業のポイントです。答えのない問題では、自分なりの答えを導き出し、その答えに合う証拠や客観的なデータ、資料で自分の答えの論理性を訴求することが大切です。(引用元:かえつ有明中・高等学校|かえつ有明の教育)また、中学入試においても「思考力」が評価され始めています。ここ数年、「思考力」を問う入試として「適性検査型入試」を実施する首都圏の私立中学校が増えているのです。「適性検査」とは、もともと公立中高一貫校ができたときに導入された、複数の教科を横断して出題されるのが特徴の入試です。知識を組み合わせて解答を導く思考力や、問題文を素早く的確に読み解く読解力などが求められます。私立中学校では、「適性検査型入試」「総合型入試」「思考力入試」「自己アピール入試」など様々な名称で行われており、その数は2018年度入試で過去最高を記録しました。首都圏の中学入試では、2014年から2017年にかけて、「適性検査型(総合型・思考力・自己アピール)入試」を実施した私立中学校は、38校→53校→86校→120校と、年々増加してきましたが、さらに今春2018年度入試では、計136校の私立中が、こうした「適性検査型(総合型・思考力・自己アピール)入試」を実施することが判明しました。(引用元:首都圏模試センター|2018年入試では136校が「適性検査型入試」を実施!)こうしたことから、「思考力」の注目度は今後ますます高まっていくことが予想されます。「思考力」って何?どうやって評価されるのかところで、「思考力」とはどんな能力かご存知でしょうか。通信教育をはじめとした教育事業で知られる株式会社ベネッセコーポレーション、および株式会社Z会は、それぞれが運営するサイトにて、「思考力」の定義について下記のように述べています。『思考力』とは、問題そのものを見つけたり、問題を解決するためのヒント(情報)を探したり、自分が持っている知識を使って解決策を考えたりする力だ。(引用元:Benesseマナビジョン“ミライ応援サイト”|大学入試はどう変わる?思考力・判断力・表現力編)「思考力・判断力・表現力」とは、平たく言うと、世の中や身の回りの問題・課題を、まずは「自分ごと」として考え、さらには他の人の考えにも耳を傾けた上で、「じゃあこうしよう」と新しい解決策を見出していくことと言えます。(引用元:Z-KAI|2021年度以降の新しい大学入試で問われる「思考力・判断力・表現力」とは?_2016.1)これらを読むと、「思考力」はある事柄から問題を特定し、その解決策を見出すまでの過程において使われる能力であることがわかります。そこで、「思考力」を評価するために作成された入試問題の一例として、ある中学校で実施された「思考力テスト」の内容を見てみましょう。【問題1】海外の市場の写真を見て、写真から読み取れる情報をできるだけ多く書き出す。【問題2】(1)日本と海外の生鮮食品売り場の写真を見比べて、気がついた点をできるだけ多く書き出す。(2)また、自分が書き出した内容を見て、海外の市場が日本よりも優れている点はどこだと思うかを述べる。【問題3】もしこの国で暮らすことになり、この市場で買い物をする立場になったときに、必要なスキルはどんなことかを書き出す。【問題4】「【問題3】で答えたスキルはどうして必要なのか」、また「今回のテストで感じたこと」を200字以内で述べる。こうして見てみると、「思考力」を評価するための入試問題は、必ずしも暗記した知識がないと解答できないものではないということがわかります。一方で、考えることに慣れていない人にとっては、解答するのが難しいと感じられるかもしれません。このテストの評価ポイントは以下のようなことだと考えられます。■与えられた資料から情報を読み取る力■与えられた資料を比較し、共通点や相違点を見つける力■自らの考えを再構築し伝える力■自らの考えをまとめる力こうしたポイントを日常的に意識し、子どもに働きかけることが、子どもの「思考力」を育んでいくことにつながっていきます。「思考力」を育てるために親が子どもにできること子どもの「思考力」を育てるために、親は普段からどのような働きかけをすればよいでしょうか。3つの例を挙げてみましょう。1. 「与えられたものから情報を読み取る力」を養う特定のものをよく観察できる機会をつくります。例えば、動物園に出かけ、動物を見ながら、「色は何色?」「どんな特徴がある?」「大きさはどれくらい?」「どんな声で鳴いている?」など様々な質問を投げかけます。子どもは目の前の動物から情報を読み取ろうとし、「思考力」を働かせます。動物園でなくてもかまいません、水族館や植物園などの日常から離れた場所へ出かけてみましょう。初めて見るものであれば、上述したようによく観察し、テレビで観たことがあるものや絵本に出てきたものなどは、「頭の中のイメージ」との違いなどを言語化し、さらなる情報を読み取る練習をしてみてください。親子で一緒に楽しめる場所へ出かけ、たくさん質問を投げかけてみましょう。2. 「比較をしながら共通点、相違点を見つける力」を養う複数のものを見比べる機会をつくります。様々な種類の商品が陳列されたショッピングセンターなどに連れて行き、一緒に買い物しながら商品を比較させてみてください。例えば、部屋に飾る花を選ぶとき、「これとこれ、どっちがいいかな?」と子どもに相談してみます。「色は同じだね。じゃあ、何が違う?」などと語りかけることで、子どもは目の前の2つの商品を見比べ、「思考力」を働かせます。また「この油揚げは3枚で100円だけど、こっちは1枚100円だね。〇〇くんはどっちがいいと思う?」という質問もいいでしょう。お金の概念を理解している子であれば、「3枚で100円の方がお得だね!」なんて言うかもしれません。そのときは、「そうだね、お得だね(子どもの考えを認める)。でも、1枚100円の油揚げの方が味がいいかもしれないよ?」など、別の考え方もあるよ、と教えてあげましょう。色々な視点から物事を見てもいいんだ!ということに気がつくはずです。3. 「自分の考えを再構築する力」を養う一緒にテレビを観て、「自分ならどうするか」を考えさせます。身の回りに起きた出来事や、世の中のニュースについて自分に置き換えて考えさせるのです。また、「自らの考えを評価し、まとめる力」を養うために、考えた結果を意見としてまとめ、語らせます。子どもと一緒にテレビを観ているときは、絶好のチャンスです。例えば、ニュースで誰かの行動が取り上げられたのを観て、「この人がした行動について、どう思う?」「自分が同じ立場だったら、どう行動する?」などと語りかけることで、子どもに自分事として考えさせることができます。難しいニュースでなくたってOKです。「メガ盛り天丼!」などの柔らかいテーマであっても、「〇〇ちゃんは、この天丼をどう思う?」と聞いてあげてください。「こんなに大きかったら誰も食べられないと思う」「私がシェフなら、かわいいミニ天丼をたくさん作りたい。だって、女の子のお客さんが増えそうだから」など、親が思いつかないような「考え」を述べてくれるかもしれませんよ。考えをまとめる力は、ペーパーテストだけでなく、プレゼン力やコミュニケーション力にもつながります。家庭で何度も「考えをまとめる」練習をすることで、知らず知らずのうちに「思考力」がアップするはずです。***今回の3つの例には、子どもの「思考力」を育てると同時に、親子でコミュニケーションがとれるという共通点があります。「思考力」を育てると同時に、子どもとたくさんの会話を重ね、子どもの考えていることを知ったり、新たな一面に気づいたりできるといいですね。(参考)文部科学省|大学入学共通テストについてかえつ有明中・高等学校|かえつ有明の教育ビジネスジャーナル|中学入試改革、知識だけでは合格困難首都圏模試センター|2018年入試では136校が「適性検査型入試」を実施!Benesseマナビジョン“ミライ応援サイト”|大学入試はどう変わる?思考力・判断力・表現力編Z-KAI|2021年度以降の新しい大学入試で問われる「思考力・判断力・表現力」とは?_2016.1
2018年10月29日体育で「ダンス必修」が決まったのは10年前の2008年のこと。当時、ヒップホップダンスが必修化されるという誤解もあり、賛否両論のあったニュースなので記憶している人も多いのではないでしょうか。その後、2011年に小学校、2012年に中学校、2013年に高等学校で、段階的にダンスの授業が始まりました。ふたを開けてみれば、これまでの体育などでお馴染みの創作ダンスやフォークダンスも含んだ「ダンス」を学び、中学生の7割が「ダンスの必修化はうれしい」という調査結果も。実は、「ダンス必修」に苦手意識をもっているのは、子どもよりも大人の方かもしれません。大人の苦手意識を子どもが何となく感じ取り、ダンスを苦手に思ってしまうのは避けたいものです。ダンスはコミュニケーション能力アップにも効果があると言われています。今回はそんなダンスのメリットについてご紹介しましょう。そもそも、体育の必修科目「ダンス」では何をやるの?体育の授業でダンスが必修科目になったと報じられた当時、メディアではヒップホップダンスを紹介されることが多く、「ダンスの授業=ヒップホップ」というイメージをもってしまった方も少なくありません。しかし、2008年3月に告示された中学校学習指導要領の改訂内容には、以下のように書かれています。ダンスは、「創作ダンス」、「フォークダンス」、「現代的なリズムのダンス」で構成され、イメージをとらえた表現や踊りを通した交流を通して仲間とのコミュニケーションを豊かにすることを重視する運動で、仲間とともに感じを込めて踊ったり、イメージをとらえて自己を表現したりすることに楽しさや喜びを味わうことのできる運動です。(引用元:文部科学省|武道・ダンス必修化)ヒップホップは「現代的なリズムのダンス」に含まれ、さらに改定前の体育授業で行われてきた「創作ダンス」や運動会などの学校行事でお馴染みの「フォークダンス」と並んで記載されていることからも、ダンスの授業で取り上げる1ジャンルにすぎないことが分かります。ただし、学校の実態に応じてこれらの3種類の中から1種類以上を選択して取り扱うことになるので、「ダンスの授業=ヒップホップ」という学校もないとは限りません。「ダンス」を苦手に思うのは、親自身が中学時代にもったイメージ?私たちが普段の生活でダンスに触れる機会はどれくらいあるでしょうか。ほかのスポーツや趣味と同様、スクールに通っている人もいれば、上手なパフォーマンスを見るのが好きな人、まったく興味のない人まで、人によってさまざまでしょう。ダンスが苦手だという親御さんの中には、自身の中学時代にダンスの授業で恥ずかしい思いをしたり、気乗りしない振り付けを皆で行なったりした「苦い思い出」があるかもしれません。また当時、テレビ番組の企画で放送されていたストリート系ダンス版甲子園の高校生パフォーマーやキレのあるダンスが人気のアイドルグループなどを見て、ダンスは特別な才能をもった一部の人のものというイメージをもっている人もいるかもしれません。しかし、ここ10年でダンスを取り巻く環境はめまぐるしく変化しているのをご存じでしょうか。ダンス必修化をきっかけに、Eテレでダンス&ボーカルグループのメンバー2名による子ども向けのダンス番組がスタートし、同時期には高校生のダンス選手権も始まり、大阪の高校ダンス部のキレのある演技が一大ブームとなったのは記憶に新しいところです。動画投稿サイトでは、アイドルグループのヒット曲に合わせてご当地ダンスが披露され、人気ドラマのエンディングテーマ曲の振り付けは社会現象を巻き起こしました。「一般人がやるダンスは恥ずかしいばかりで面白くない」というイメージは着実に変わってきています。ダンスはコミュニケーション能力がアップするそれでも、急にダンスを好きになる自信がないという人もいるでしょう。ここで、ダンスが子どもたちの教育にどのような効果があるのか紹介します。【ダンスはコミュニケーション能力がアップする】先に引用した学習指導要領にもある通り、ダンスの授業では「仲間とのコミュニケーションを豊かにすること」が重視されています。上手くダンスを踊ることよりも、仲間とのダンスを通して自分の意見を伝え、相手の意見を聞き、コミュニケーションを図ることが第一。学校のダンス授業にも関わっている、振り付けユニット「振付稼業air:man」の杉谷一隆さんはインタビューで、次のように話しています。自意識が強すぎる人ほど、「人より下手かもしれない」「遅れているかもしれない」と思ってしまう。「うまくならねば」という価値観だと、「自分はダンスは向いてない」「苦手だ」となって、ダンスが嫌いになってしまう。 そういう人を減らしたくて、学校のダンスの授業に関わっています。下手でもいいし、動きがバラバラでもいいんですよ。楽しくコミュニケーションできれば(引用元:withnews|学校の授業でダンスやるのダサくない?有名振付師の答えが深かった)また、コミュニケーション能力は社会に出ても必要とされるもので、企業の採用活動においても常に重視されるものです。ダンスそのものの上達ではなく、その先にあるコミュニケーション能力アップの効果を期待できるのがダンスです。【ダンスはバランスのとれた体をつくる】全身を使って表現をするダンスは体幹や下半身の筋力アップに効果があります。加えて、日常生活であまり使わない筋肉も使うことが多いのが特徴。ヒップホップでは、腕を付け根からグルグル回す振り付けがあったり、足を左右に開いて股関節を動かしたりします。このような動きを繰り返すことで柔軟性がアップするのです。また、ダンスは持久力を必要とします。1曲あたり約3分間、リズムに乗って体を動かし続けると、慣れないうちは息が上がるもの。繰り返していくうちにスタミナがつきます。お子さんのコミュニケーション能力アップや体力づくりに大きく寄与してくれると考えれば、体育のダンス授業を積極的に応援したくなりませんか?***最近は、女子中高生の間で指だけの振り付け動画の投稿が人気ですね。あれもダンスの一部だと考えれば、日常生活の中に意外とダンスは入り込んできているのかもしれません。お子さんが「やってみたい」と言ったら、親御さんも一緒に楽しさを体験してみるのもいいですね。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|ダンス必修化の問題点と今後の課題ベネッセ教育情報サイト|ダンス必修化に中学生の7割が「うれしい♪」と回答!文部科学省|武道・ダンス必修化文部科学省|新学習指導要領に基づく中学校向け「ダンス」リーフレットwithnews|学校の授業でダンスやるのダサくない?有名振付師の答えが深かった
2018年10月29日