シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (17/28)
先日ある公共放送の女子アナウンサーと、民放の男性アナウンサーが結婚したことを発表。異なる局のアナウンサーが結婚することは珍しいだけに、話題となりました。一般社会では、たまたまつきあっている相手が同業他社に勤めていたということは、比較的よくあることではないでしょうか。もちろん、恋愛関係は会社には関係ないことですので、特に問題視されることではないと思われます。しかし、都市伝説レベルではありますが、ネットの書き込みを見ると、会社によっては「ライバル関係にある同業他社社員との結婚を禁じる」という誓約書を書かされるケースや、結婚を認めないなどといわれることがある模様です。真偽の程は不明ですが、仮にこのようなことが行われていた場合、法的に成立するのでしょうか?パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解を伺いました。Q.同業他社社員との結婚を会社から止められた……法律的に認められる?*画像はイメージです:認められない(会社のいうことに従う法的義務はない)。「実際にそのようなことが行われているのか俄に信じ難いところですが、仮に“競合する同業他社の従業員とは結婚しません”という内容の誓約書を会社に提出していたとしても、そのような誓約は「公序良俗」に反して無効とされるでしょう(民法90条)。また、会社(上司)が「同業他社の従業員との結婚は認めない(禁止する)」などと言ったとしても(それを「業務命令」と言うかどうかは別として)そのような公序良俗に反する命令に従う法的な義務はないといえるでしょう。なお、結婚したことを理由に会社が降格や異動を命じた場合は、“不当な目的”に基づく違法な人事権の行使として無効になると思います。ただ”結婚したことを理由として降格・異動したのかどうか”という点について、会社は当然”そのような意図ではない。能力やスキル、勤務成績等をふまえた正当なものだ”というでしょうし「不当な目的に基づく降格・異動である」と立証することは、なかなか難しいこともあると思います」(櫻町弁護士)実際にこのようなことが行われているのかは不明ですが、仮に「同業他社との結婚だから認めない」という措置をとられた場合、無効を主張することはできるようです。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kou / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月31日家族間の揉め事は、非常にデリケートな問題です。血の繋がりがあるだけに、たとえば酷い暴力や虐待を受けている場合など、犯罪行為が発生していようとも、それが表に出にくく、「我慢」してしまうことが多いようです。よくあるのが、別々に暮らしている息子が家に侵入し、勝手にお金を持ち出すケース。また、妻の稼いだ金を仕事もせずギャンブルや遊びに明け暮れる夫が勝手に持ち出してしまうこともあります。これは本来窃盗罪に当たるはずですが、家族である場合、刑が科されないこともあるようです。本当でしょうか?Q.家族間の窃盗に刑が科されない場合もあるって本当?*画像はイメージです:本当です。刑法244条に以下のような規定があります。配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができないしたがって、配偶者や直系血族または同居親族の場合、告訴があっても免除となるため、刑は科されないということになります。ただし、それ以外の親族については、親告があれば刑が科される可能性はあります。配偶者や直系血族との間における窃盗罪の刑の免除は、「法は家庭に入らず」という考え方を受けたもので、家族間のトラブルは当該家族のルールに基づいて解決すべきであるということから、「法の介入」を制限していると考えられています。少々納得いかないような気もしますが、これが現実なのですね。 *記事監修弁護士: 髙田 英治(髙田総合法律事務所。企業法務をメインとしつつ、相続・離婚・交通事故等の個人に関わる法律問題も幅広く取り扱う)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*ろじ / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月30日先日、ある掲示板の運営者がネットTVに出演。累計30億円という多額の損害賠償請求を受けていることを明かしたうえで、「踏み倒した」と発言しました。彼によると賠償請求は10年経過すると時効となるそうで、「そんなものは払わなければいい」などと発言。その態様が物議を醸すことになりました。*画像はイメージです:民事裁判で賠償義務が認められているにもかかわらず、「無視して踏み倒す」行為は、やはり許されていいものではないように思われます。強制的に支払いを迫ることはできないのでしょうか?星野法律事務所の星野宏明弁護士にお訊きしました。 ■支払いに応じない場合強制執行を行うが……「民事では、債務者の預金や不動産、現金その他財産の差押によって、債権者の金銭債権を回収することになっています。これを強制執行といいます。強制執行するためには、支払いを命じる判決などの債務名義が必要です。損害賠償を命じる判決もこの債務名義となりますが、債務者が判決で命じた内容に従って任意に支払いをするとは限りません。そうすると、判決の内容を強制的に実現するために、強制執行をする必要があります。しかし、強制執行するために、債権者側で債務者の保有している財産を調査し、裁判所からは時に現実的には困難なまでの財産の特定を債権者側に求められることがあります。そのようなとき、賠償を命じる判決に債務者が従わない場合であっても、(1)債権者側が債務者の財産を調査できない(2)債務者に本当に財産がないに該当する場合は、強制執行しても実際には債権を回収できないことになります」(星野弁護士) ■踏み倒しても刑事罰にはならない「実際の事件では支払いを命じる判決があっても、債権者側が債務者の財産を調査できない場合や、債務者に本当に財産がないケースはかなり多数あります。このような場合、執行官の強制執行妨害など積極的な妨害をしない限り、判決にただ従わないだけでは判決を無視して踏み倒しても犯罪ではないので刑事罰になりません。したがって現状は、債務者が判決に従わず財産が不明か不存在のため強制執行による判決内容実現も不可能で、事実上支払いを命じる判決を踏み倒されるケースは多数に上ります」(星野弁護士) ■法改正での改善が期待される「現在の運用では、預金などを金融機関の本店に一括して調査照会できないなどの不都合もあり、踏み倒しとなるケースが後を絶ちません。民事執行法改正により、債務者の預金の金融機関本店への一括調査手続きの導入などが議論されているところであり、今後の改善が期待されますが、それでも債務者に本当に財産がない場合には債権回収の対策のしようがありません」(星野弁護士) 残念ながら損害賠償請求を「踏み倒す」行為は、現状可能となってしまっているようです。今後の制度改善に期待したいところですね。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*buri327 / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月29日日々、交通の要となっている信号機。青は進むことができる、黄色は基本的に止まれ、ただし急停止など危険を伴う場合は進むことができる、赤は止まれを意味しています。この表示を見ながら、車や歩行者のそれぞれが安全に道路を通行します。仮にこの信号が怪しい動きを始めてしまったら、すべてが混乱します。信号機は定期的にメンテナンスを行われているため、誤作動することは殆どないといっても過言ではありません。しかし、稀に信号機がおかしな動きをする事案が報告されています。2016年には、信号が突然青から高速で点滅状態になったうえ、歩行者の信号機がすべて消えてしまうという不具合が発生しました。ところで、信号機故障が原因で事故が発生した場合、誰に責任が発生するのでしょうか?Q.信号機故障が原因で事故が発生した場合、誰に責任が発生する?*画像はイメージです:原因によりますが都道府県や電力会社に責任が発生することがあります。一口に故障といっても様々なものがあるためケース・バイ・ケースですが、信号機の誤作動を放置したことが原因で事故が発生した場合は、設置・管理責任のある都道府県に責任が発生することがあります。また、停電による信号機の不点灯であり、電力供給できない原因が電力会社の人為的ミスによるものであった場合は、電力会社も責任を負う可能性もあります。ほとんどの信号機はしっかりと整備されているため、誤作動を起こす可能性は極めて低いと思われます。しかし、一部にはそのような事案も報告されていますので、「信号が誤作動を起こすことがある」ということを頭の片隅に入れて置くことをおすすめします。 *記事監修弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*baphotte / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月27日最近は婚活ブームなどとよばれ、パーティやアプリなどを使って結婚相手を探している人が多いようです。もちろん、職場や学校などでお相手を見つけたという人もいるでしょう。年齢が進むと、「交際するなら結婚を」と考える人が多く、結婚を前提に交際を始めるケースもあります。しかし、男女の仲ですから、「結婚する予定だったのに別れた」ということは、多々発生することです。年齢と交際期間を重ねているにもかかわらず、突然別れを切り出されたということになると、結婚を意識していた側とすると、「話が違う!」と思い、なんらかの慰謝料を請求したくなります。そのようなことは、可能なのでしょうか?Q.結婚を前提に長年交際を重ねてきたのに突然振られた場合、慰謝料を請求することはできますか?*画像はイメージです:明確に「婚約」をしていればとれる場合もありますが、基本的には難しいものと思われます。「結婚を前提に」というのは「口約束」で、自由恋愛になります。「別れたから慰謝料をとる」というのは、自由恋愛を縛ることになってしまうため、気持ちは痛いほどわかるのですが、なかなか難しいのが現状です。ただし明確に「婚約」があった場合は話が別で、慰謝料を請求する余地はありますし、浮気が原因であれば相手方に賠償を求めることもできるでしょう。「婚約」があったと認定される条件は厳しく、例えば結納を交わしていた場合や式場を既に予約していた場合、または、婚姻を前提として同居を開始した場合など、単なる「交際」「同棲」とは明確に区別できる状態に至っていることが必要です。ただし、訴えが認められたとしても僅かな金額になるケースも少なくありません。「結婚を前提に」交際していたにもかかわらず別れるという行為は道義的にみれば「問題」に思えますが、基本的には「自由恋愛」のため、法的な責任を問うことは相当難しいと考えてください。 *記事監修弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*深澤カラス / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月27日*画像はイメージです:住居に関する会社の福利厚生は、住宅手当や社宅制度があります。社宅制度の内容は会社によってまちまちでしょうが、社有社宅にせよ借上げ社宅にせよ、退職時には社宅から退去することが一般的です。では、従業員が退職するときに「退職したんだから明日社宅を出ろ!退去が遅れたら退職日以降の賃料を払え!」と言われた場合、このような即時退去または賃料全額負担の要請に応じなければならないでしょうか。今回は、退職時の社宅退去時期などについて解説します。 ■「明日出ていけ」という要請には応じなくともよいある程度の規模の会社で社宅制度を導入している場合には、社宅管理規程が置かれていることが多く、自己都合退職であれば2週間から1ヶ月程度の退去のための猶予期間が置かれていることが多いです。もし、社宅に関する規程がなかった場合であっても、上記程度の合理的な猶予期間なくなされる即時退去には応じる必要がありませんし、会社の元従業員に対する賃料相当額の損害賠償請求も認められないでしょう。なお、賃料に占める社宅使用料の割合にもよるのですが、社宅制度による補助は給与と同視されますので、会社が即時退去に応じないことを理由に未払給与から社宅使用料を超える金額を天引きすることは違法の可能性が高いです。 ■社有社宅と借上げ社宅とで違いはあるか社宅制度は、居住者が役員または従業員の地位を有する者その他会社の認める者であることを前提に、福利厚生の一環として、一定期間に限定して従業員に安く住居を利用させるものです。ですから、会社が物件を所有している社有社宅であろうと、民間の賃貸物件を借りている借上げ社宅であろうと、会社と従業員との契約は、条件付使用貸借または独自の社宅利用契約であるといえます。賃貸借契約とされることはないといってよいでしょう。そのため、会社と従業員等の関係では、社有社宅と借上げ社宅の場合とでとくに違いはなく、基本的には社宅管理規程によって定まります。「明日出ていけ」という要請に応じる必要がないことも同じです。会社によっては、従業員個人名義の契約でも借上げ社宅制度が利用できたり(まぁこれは住宅補助に当たるでしょうが)、退職時に法人名義から個人名義への変更を認めて退職後も同じ住居に住み続けたりもできるようです。このように、社宅制度は基本的に会社が内容を自由に決められるものですが、「明日出ていけ!無理なら賃料相当額の全額を払え!」という極端な要請についてまで従業員が従う義務はないというのが結論ですね。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月24日*画像はイメージです:先だって、格安海外旅行の代理店が倒産しました。その原因にはパックツアー客の減少もあるようです。今やLCC全盛で世界中どこでも格安で行けて、ホテルもネットで予約できる時代です。スマホがあり、電波が通じる場所なら地図も表示され現在位置もわかります。海外・国内を問わず、パック旅行といえば土産店に客を案内、その売上のある程度を代理店にキックバックするような習慣もあったと聞きます。自由に旅行する観光客が増え、こうした細かい利益も減っていたのかもしれません。ちなみに、こうした客の誘導とキックバックは罪にならないのでしょうか?星野法律事務所の星野宏明弁護士にお訊きしました。 ■キックバックは違法ではない「旅行会社が旅行ツアーの内容として飲食店や土産物店にお客を送迎し、潜在的なお客を紹介する代わりに売上の一定割合を手数料としてキックバックしてもらう取決めは、違法ではありません」えっ、それは意外です。思い切り結託した罠に追い込むような印象ですが……。「ひと昔前の旅行ツアーでは、添乗員付きの団体行動が多く、格安の海外旅行や国内旅行双方にこのような仕組みが盛り込まれていることが多くありました。しかし、近年では、せっかくの休暇での旅行時間中に望みもしない土産物店を回ることで結果的に値段が安くなるメリット以上にツアー客の旅行満足度が下がることから、旅行募集案内に明記したり、土産物店を回らないツアーも増えています。旅行業界の場合、土産物店を紹介することで安いツアーを設定できる反面、価格と内容が満足できないものであれば、結局旅行商品が売れないだけのことですから、特に禁止されていません」確かに日本人もですが、日本に来る外国人観光客もネットで調べてスマホ片手の自由旅行が多い印象です。 ■キックバック禁止の法律はないが不当に長い時間の拘束は問題パック旅行客を増やそうと、旅行代理店は新聞にシニアを対象にした広告を盛んに打っているとか。そうした旅行では土産店に連れて行かれるかもしれません。「現行法上では、旅行会社が特定の飲食店や土産物店をお客に利用させることでキックバックを受け取ることを禁止する規定はありません。そもそも異業種の業者同士で潜在的な顧客を紹介し、成約した場合の仲介手数料を受け取ることが禁止されているケースの方が例外であり、限定的です。その際たる例は、弁護士法で、弁護士の顧客を紹介したことの対価を支払ってはならないことになっています」なんと旅行会社の話のはずが弁護士につながってしまいました。弁護士は一般業種と異なり、顧客紹介の対価について制限を受けているわけですね。では、旅行業者が連れて行った店からいくらもらっていても問題はないのでしょうか?「民法の『契約の自由の原則』から、どのような行為に手数料をいくら支払うかは、当事者で自由に合意できるのが原則です。先の弁護士への有償の顧客紹介の禁止や、不動産仲介手数料の上限など、弊害が大きい場合に例外的に法律で制限があるだけです」なるほど、このあたりは経済活動を活発化するような力学が優先されているようです。ただし、必要以上に長い時間お店に拘束されたり、買うまで外に出られないなどの場合は問題になるそうです。「客さんに対する無駄な拘束時間があまりに多く、ツアー内容で案内した旅行内容とあまりにもかけ離れた場合は、債務不履行の責任が生じる可能性がなくはありません」万一、そんな目にあった場合は、ツアー会社に抗議を。 ■土産物を買わせる目的の場所に連れて行かれても買わなければいい!ちなみに、今は落ち着いた中国人観光客の日本での爆買いですが、その真っ最中、よく繁華街の外れにあるデパートでもなんでもない雑居ビルに中国人観光客がバスから降りてゾロゾロ入っていく様子を見かけました。のちにTVの報道で知ったのですが、どうやらそこで日本製品やブランド物を買い物させていたのです。しかも免税店よりお高めの値段で……。「そもそも、その値段で買うかどうかは自由ですから、“買わされている”と法的には評価されません。“他店と同じ値段”“他店より安い”などと謳っていたとしても、法的には少し過剰な宣伝文句にすぎず、容易に比較できるので、詐欺になるケールはほとんど想定できません。他店より高い水準の店舗に案内しても、そこで買うかどうかという選択の自由がある以上、そもそも日本で違法になることは想定できず、警察が指導することもありえません」たしかに、いくら以上買えという強制はありませんでした。そこは、冷静に消費者目線で判断すればいいわけですね。幸い、今や海外旅行はどの国でも物を買うより体験や絶景、文化に接する方向にシフトしています。みなさんもお金で買えないプライスレスなことを求めて旅行にお出かけください。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月24日*画像はイメージです:月12日、あるお笑い芸人が、酒気帯びの状態で路上に停車していた自動車に寝ているところを発見され、逮捕されるという事件が発生しました。発見当時、同芸人が乗っていた自動車には右前輪・後輪がパンクしていたうえ、バンパーにも衝突痕とみられる傷があったことから、飲酒運転によって事故を起こしたものとみられています。今回の件では、逮捕直前に一緒に飲酒していたとみられる女性がInstagramで画像を公開したことも、問題視されています。事の重大さがわからず軽い気持ちで公開したようですが、これは場合によっては罪に問われることがあるようです。 ■何人たりとも飲酒運転をする可能性のある人間に酒を勧めてはならない道路交通法第65条に以下のような条文があります。第65条何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。2何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。3何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。自動車で帰ることをはっきりと認識している状態で、一緒に酒を呑むことは3項に違反していますので、罪に問われる可能性が高いでしょう。また、飲酒運転した者が事故を起こした場合「業務上過失致死傷罪」、重大事故の場合は「危険運転致死傷罪」が適用されることになりますが、こちらでも車で来ていることを知りながら飲酒を黙認した場合は、「幇助」の罪に問われることがあります。今回の場合も、画像を公開した人物が仮に自動車で来ていることを知りながら一緒に酒を飲んでいたことになれば、当然幇助の罪を疑われることになると思われます。少々、軽率だったかもしれません。飲酒運転は重大犯罪であり、これまでにも身勝手な人間によって大変に痛ましく、怒りを禁じ得ないような死亡事故が発生しています。自動車運転者はもちろんですが、一緒にいる人間も「飲んだら乗るな」ということを意識し、注意喚起をするようにしましょう。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*8suke / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月23日*画像はイメージです:ココリコの田中直樹さんと小日向しえさんの離婚が報じられ、2児の親権は田中さんが持つことが報道されました。夫婦が離婚し父親が親権を持つ率は約12%(平成29年我が国の人口動態・厚生労働省)ということから、これは少し珍しいケースといえます。子を持つ夫婦が離婚する際、親権の他に重要なのが養育費についてです。現在、養育費の不払い横行がひとり親家庭の貧困原因として問題になっています。養育費不払いには心境や収入の変化などの原因が考えられますが、時が経てば変化はあって当たり前です。離婚時に取り決めた養育費を支払うことが難しくなるのはありえることです。このような場合、養育費の金額を変更することはできるのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士にお聞きしました。 ■場合によっては養育費の変更は可能離婚時に決めた養育費の額は後から変更できますか?また、変更が認められるのはどのような場合ですか?「変更は認められます。ただし養育費の減額が認められるのは、離婚後に事情の変更がある場合です(民法880条)。事情変更として認められるのは、子どもが大きな病気をしたり、進学したりすることで、特別の費用が必要になった場合や、義務者の収入が失業等で減少した場合、権利者の収入が増加した場合などとされています(冨永忠祐編・『離婚事件処理マニュアル』より)。もっとも、どんなに重大な事情の変更があっても、養育費を全く支払わなくてもよいということにはならないでしょう」(理崎弁護士)養育費の変更にはどのような手続きが必要でしょうか?「まずは元配偶者との間で協議することになります。協議が整わない場合には、裁判所に対して養育費減額の調停・審判を申し立てる必要があります。一方的に養育費の金額を減額したり、支払いをストップしたりすることはできません」(理崎弁護士)養育費の減額は可能です。しかし、養育費を取り決めた時と同様に、必ず子を養育している元配偶者の同意が必要となるのです。どのような事情があったとしても、一方的な減額や取りやめはただのバックレと同じです。 ■養育費を受け取るのは元配偶者ではなく“子”元配偶者がお金持ちと再婚し裕福な生活を送れるようになった場合、養育費支払いを取りやめることはできますか?「元配偶者がどんなにお金持ちと結婚したからといって、自分の子どもであることには変わりはないので、養育費をまったく支払わなくても良いということにはなりません」離婚しても、元配偶者が再婚しても、子が自分の子であるという事実は変わりません。子の生活保持義務を負い、その費用を負担する責任があるのです。親である限り、子を養育し続けなければならないのです。養育費は法的に義務付けられたものではありませんが、現在、法務省は不払い時の強制執行などを含めた法改正を検討しています。支払いが難しい状況になっても無断で支払いをやめるのではなく、金額の調整を行うことで子の健全な育成をサポートするべきではないでしょうか。 *取材協力弁護士:理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】イメージです* SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月22日*画像はイメージです:今月、世界各国で企業などがランサムウェアと呼ばれるウイルスの被害を受ける事態が相次ぎました。このウイルスは、コンピューターのデータをロックし、解除のために金銭の支払いを要求するタイプ。コンピューター内の大切なデータを人質にするのです。ところで、誰もがコンピューターに大切な個人情報やデータを保存していると思いますが、これを他人に見られたくないという方はいませんか?特に性的な趣味に関わるデータなどは家族には見られたくないものです。「俺が死んだら家族に見られる前にパソコンを壊してくれ!」なんてことを友人に言った経験がある方も少なくないのではないでしょうか?これを実行しても問題ないのか、あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお聞きしました。 ■「PCを壊して」は委任契約の一種「もし自分が不慮の事故などで先に死んだら、家族に見つかる前にコンピューターを壊すなどしてデータを消してくれ」と友達と約束していた場合、これを実行しても法的には問題ありませんか?「問題ありません。『自分が死んだら、○○して欲しい』という依頼は、委任契約の一種と考えられます。民法上、委任者が死亡した場合、委任契約は終了するとされています(民法653条)。ですが、「委任者が死亡しても委任契約は終了させない」という当事者の意思(合意)があれば、その合意が民法の内容よりも優先します。なので、この例の友人は、亡くなった方との間の委任契約に基づいて、コンピューターのデータ削除をすることができます」(高野倉弁護士)なるほど、このような約束も、法的には契約として認められるのですね。しかし、亡くなった方の所有物であるデータを勝手に処分することで、何かの罪に問われたり遺族から訴えられたりする可能性はないのでしょうか?「契約上の権限に基づいてデータを消去するので、民事上も刑事上も違法ではありません。ただし、遺族との間でトラブルになる可能性はあります。データの削除を依頼したかどうか(委任したかどうか)がはっきりしない場合などです」(高野倉弁護士) ■トラブル回避には生前の準備が必要遺族から責められるなどのトラブルを防ぐために、生前にしておくべきことがあればお教えください。「トラブル回避のために有効な方法は、以下の3つです。(1)契約書・委任状の作成まず、契約書及び委任状の作成は必須です。委任されたこと、データを削除する権限があることを明確にするためです。これがないと、権限がある・ないでトラブルになります。(2)遺族との事前の協議契約書及び委任状を作成したら、そのことを遺族に話しておくと、トラブルをよりよく回避できます。「自分が死んだら、Bさんがコンピューターの処分をしてくれるから」と話しておけば、データの削除もスムーズになります。(3)データの一定期間の保管また、一定期間は、データを保管しておくべきです。そのことを、契約書にも記載しておくのがよいと思います。相続でもめたときに、「あのとき削除したデータに何かあったかも知れない」という話になると、紛争に巻き込まれる可能性があるからです。(2)(3)まで行うことは、事実上難しい場合も多いと思います。特に(2)については、家族に『実は、卑猥な画像をため込んでいて……』という話はしづらいと考えられます。とはいえ、ぼやかして『色々と整理してもらう』と曖昧な話をすると、(3)で懸念したような事態になるかも知れません。」(高野倉弁護士)自分のコンピューターを友に託す、それ自体には法的な問題はありません。しかし、後のトラブルを避けるためには相応の準備が必要なのです。コンピューターにデータを保存する時は常にこのことを頭の片隅に置いて置いたほうがいいかもしれません。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです*ふじよ / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月21日東京・新宿や上野などの歓楽街では、道を歩く人に「お遊びいかがですか」「3,000円ポッキリでキャバクラいかがですか」などと声をかける「キャッチ」が存在しています。言葉巧みに誘うキャッチに「それなら良いな」とついていくと、飲食した後に「ビール1杯10万円」など法外な金額を請求される、いわゆる「ぼったくり被害」の報告が、あとをたちません。地元民なら、ある程度危険地帯がどこであるかは理解しているのですが、旅行中の人々などが餌食になってしまい、楽しい旅行が台無しになることもしばしば。法外な値段を要求された場合、ほとんどの人は脅されるなどして金額を支払ってしまっているようです。しかし、本来なら断ることもできるはず。店側が当初の「甘い言葉」と違う「法外な値段」を要求してきた場合、断ることはできないのでしょうか?ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解を伺いました。Q.ぼったくり店からの「法外な請求」支払いを拒否することはできる?*画像はイメージです:できます。諦めずに戦いましょう。「表示の仕方にもよると思いますが、たとえば3,000円で飲み放題の場合、適用範囲が、どの範囲なのか(時間・種類等)、その上で、それがわかる形で表示されていたか、が問題になると思います。契約行為として、認識して飲食したか、ということになると思います。そのような表示がないまま、法外な金額を請求されることは、恐喝や強要、もしくはいわゆる“ぼったくり条例”違反です(東京都など)。適切に料金表示をしなかったり、不当な勧誘・取り立てをした場合には、6月以下の懲役または50万円以下の罰金さらに営業停止命令があり得ます。あきらめずに闘いましょう!」(森川弁護士) ありえないほど高額な値段を「そうなる」と認識させずに店側が請求した場合は、恐喝・強要やぼったくり条例違反に該当する犯罪行為となるようです。怖い思いをするかもしれませんが、安易に支払わず毅然とした態度をとり、戦うようにしましょう。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*つきのさばく / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月21日*画像はイメージです:先日婚約を発表した女性キャスターのお相手に、複数の婚外子がいることが判明。すでに認知をしているそうですが、その振る舞いについては疑問や批判の声があがっています。女性キャスターの婚約者も該当するのですが、芸能人など莫大な経済力を持つ男性には「隠し子」が存在しがち。生前本妻の家族に隠し子の存在を文字通り隠し続け、亡くなったあとにひょっこりと姿を現し、「子どもだから遺産を分けて欲しい」と名乗り出ることがあります。本妻側としては、青天の霹靂で、かなり納得がいかず「一銭もやりたくない」と思うもの。法律的に見て、突然名乗り出てきた隠し子に対し遺産を支払う必要性はあるのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 ■突然遺産相続を名乗り出てきた「隠し子」に支払う義務はある?「どんな方にも避けられないが死というものですが、親が亡くなったことで生じる様々な人間模様は、まさに事実は小説よりも奇なりを地でいくものといえるでしょう。亡くなった親に“隠し子”というのもまさにその一つ。実は自分に腹違いの兄弟が、という場面は弁護士業務では珍しくなかったりもします。さてそんな“隠し子”がいて、遺産相続を名乗り出た場合の遺産の分配ですが、端的にいえばその方も立派な相続人のひとりであり、相続権を持つのが原則です。しかし、相続権を持っているのは法律上の親子関係まで有している必要があります。この点、婚姻関係にある男女の間で生まれた子については、原則として法律上の親子関係があるものと推定されますが(民法772条1項)、婚姻後200日以内に生まれた子や、婚姻解消後300日経過後に生まれた子、さらには婚姻関係にない男女から生まれた子については嫡出推定の恩恵を受けず、別途法律上の親子関係を発生させる認知の手続きをとる必要があります。そのため、仮にたとえば亡父との間に親子関係があることが明確であっても、自分の母親との間の関係上、嫡出推定を受けず、認知も受けていない場合には相続権はないことになります。ただし、その場合、子として、父の死後3年以内に認知の訴えを提起することで、父の死亡後でも認知の効果を得ることができます(民法787条)。なお、かつては法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を嫡出でない子として、嫡出子に比べて相続分が2分の1とされておりましたが、平成25年9月4日、最高裁により意見である決定が出されたため、それを受けて民法900条4号が改正され、嫡出・非嫡出問わず、相続分は平等として扱われることになりました。そのため、ご質問に対する回答としては、“隠し子”もいち相続人として、平等な相続権を有するため、遺産分割協議等によって相続分を定めることが必要になります。余談にはなりますが、実際上、父の死亡時において認知などによって亡父と隠し子の間に法律上の親子関係が発生していることが戸籍等から明確になっていれば、実際の銀行口座名義の変更等においては亡父の出生時から死亡時までの戸籍謄本の提示が求められることが通常で、それを取得する際に、隠し子の存在が明らかになることが多いです。このような場合、隠し子とされる本人ですら、相続が発生したあとに連絡を受け、自身の実親の存在を知るということも少なくありません。もとの家族からすれば唐突にきょうだいが現れたということで戸惑うこともあるかもしれませんが、きょうだいが増えたことを前向きにとらえられるような日が訪れるといいですね」(大達弁護士) 「隠し子」は、レアケースのようにも思えますが、弁護士業務では比較的珍しくない話なのだそう。仮に遺産相続の際にそのようなことに遭遇した場合は、専門の弁護士に相談すると、明確な答えを出してくれることでしょう。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月20日*画像はイメージです:妻や交際相手よりも母親を大事にする男性、マザコン。交際中はなかなか気がつきづらいため、結婚してから夫がそれに該当することに気がつく人も少なくないようです。この「マザコン」という言葉ですが、1992年に放送されたTBSドラマ『ずっとあなたが好きだった』内で、佐野史郎さんが異常なほど母親を愛する亭主「冬彦さん」を演じたことがきっかけで広まっていったといわれています。 ■「マザコンだから離婚する」ことは可能?「ずっとあなたが好きだった」では、冬彦の異常なマザコンぶりに配偶者である美和(賀来千香子さん)が愛想を尽かし、最終的に離婚することになります。「ドラマのなかの話だし……」と考えている人もいるかもしれませんが、「マザコン」の夫に辟易している既婚女性は意外と多いと言われています。その殆どが我慢しているようですが、なかには本気で離婚を考えている人もいるようです。離婚を決意したとき、気になってくるのがそれが離婚理由になり得るかということ。夫が別れることに同意をすれば問題はありませんが、拒否した場合は民法770条1項に定められた離婚原因が必要となるため、確認しておく必要があります。離婚原因とは、裁判で離婚を認めてもらうために必要な事情のことをいいます。離婚原因として、以下のような事情が定められています。一 配偶者に不貞な行為があったとき。二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。五 その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。上記のようにマザコンであることのみでは離婚原因に当たりませんので、マザコンであることのみをもってただちに離婚することはできません。 ■婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するかを吟味する必要ありそうなると「夫がマザコンだから離婚を認めてください」ということはできないということのように思えますが、必ずしもそうではありません。マザコンが原因となって夫婦生活が破綻しやり直せない状態になった場合、民法770条1項5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるものとして離婚が認められることになります。実際に夫がマザコンであることによってどのように夫婦関係に悪化しているかをまとめておき、「このような理由から夫がマザコンであることによって既に結婚生活が破綻しており、もうやり直しができないような状態である」と主張し、それが認められることになれば、離婚できます。仮にマザコン夫との離婚を考えている場合は、証拠を十分に集めたうえで弁護士と相談してみるのが良いでしょう。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月19日5月7日、川谷絵音さんが『ワイドナショー』(フジテレビ系)で復帰。メインコメンテーターの松本人志さんやヒロミさんらとトークを繰り広げましたが、視聴者からは川谷さんに対して厳しい声が多かったようです。騒動がここまで大きくなった原因は、不倫発覚後2人が交際が事実であるにもかかわらず、“友達で押し通す予定”といったLINE上のやりとりが発覚したことにあると思われます。このほかにもお笑い芸人と女性芸能人の不倫のやりとりなど、たびたびLINEの内容が流出し、週刊誌などに掲載される事案が発生しています。これは本来極めて私的なやりとりですから、不特定多数に公表されるべきものではないはず。このような行動は、罪になるのではないでしょうか? Q.LINEの内容を勝手に出版社にリーク……これは犯罪ではありませんか?*画像はイメージです:基本的に犯罪にはならないと思われますが、不法アクセス禁止法違反に該当する場合はあります。当然ながらLINEの内容はプライバシーで保護されるべきものですから、この内容を不特定多数の目に触れるようなメディアに掲載することは、プライバシー侵害による不法行為になります。したがって、該当者のLINEをスクリーンショットする、ログを取ってダウンロードするなどして個人情報を持ち出した人間、そしてその情報を不特定多数に公表した出版社・Web管理者は、不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。しかし、基本的にこれらの行為は犯罪行為とはいえません。もっとも、LINEの内容を盗んだ経緯がログイン・パスワードなどを不正入手したうえで、スマートフォンに不正に侵入し、得たものであれば、不正アクセス禁止法違反となり、その罪を問われる可能性があります。芸能人が不倫など不適切なやりとりをしている内容が公表された場合、当人たちの「バツの悪さ」や訴訟費用、世間への心象などから提訴に踏み切らないことが一般的ですが、他人のプライバシーを勝手に公表することは民事上、場合によって刑事上の責任を問われるおそれがあるため、するべきではありません。 *記事監修弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*aijiro / Shutterstock
2017年05月19日*画像はイメージです:電車内での痴漢行為を疑われた男性が逃走し、線路に降りたりビルから転落したりして死亡するという事故が続きました。この数カ月、嫌疑をかけられた男性が同様に逃走してトラブルになるケースが相次いでいます。痴漢行為を疑われた際に「逃げる」ことが得策でないことは当サイトでも複数の弁護士が指摘していますが、ネット上では「痴漢冤罪を回避するためにはその場から逃げろ」というアドバイスが未だに多く見られます。一度逮捕されてしまったら疑いを晴らすことが難しいというイメージは根強いようです。疑いを晴らすためには証拠が必要となります。この時、重要になるのが周囲の目撃証言です。そこで今回は、痴漢行為を目撃した際側の振る舞いについて、エジソン法律事務所の大達 一賢弁護士にお聞きしました。 ■捕まえる前に証拠保全を痴漢行為を目撃した際に望ましい行動や、目撃者としてできることなどがあれば教えてください。「逮捕した際に言い訳を許さないように、また冤罪の疑いがある場合にはそれを晴らすための証拠保全をしておきたいところです。携帯電話の写真や動画の撮影、周囲にいる他の方々との事実認識の共通化などです。その上で、痴漢をしている人物のうち、実際に痴漢行為に及んでいる手などを掴み、痴漢行為に及んでいるのが誰なのかを、改めて写真や動画などを撮影しておくことが望ましいです。刑事訴訟法は現行犯逮捕については何人たりともできると規定していることから(213条)、逮捕の正当性を後に証明できるようにしておきたいところです」(大達弁護士)映像などの証拠があれば、犯行を立証しやすくなります。被害者や目撃者の記憶による証言以外の重要な証拠となることでしょう。痴漢を捕まえる際は、目撃者としてどのようなことに注意すればいいですか?被害者の助けになるためにはどのようなことが必要でしょうか?「一度痴漢の犯人だと思い込んでしまうと、思考が狭くなってしまい、重要な事実を見落としてしまうことがあります。まずは、何かの拍子に手や足などが当たっているだけなのではないか、他に犯人と思しき人物がいないか、などをよく観察してください。この時に必要なのは、“痴漢がするであろう言い訳を封じることができるのか否か”、また逆に、“この人が本当に痴漢行為をしていたといえるのか、事実認識に誤りはないか”という観点だと考えます。慎重になりながらも、かつ犯罪行為を見逃さぬよう冷静な目線で観察し、その上で先に述べたとおり証拠保全を行うよう注意してください」(大達弁護士)被害者の苦痛を思えば痴漢を取り押さえることが最優先に思えるかもしれませんが、取り違えによる冤罪を防ぎ犯行を確実に立証するために、落ち着いて観察し証拠を残しましょう。 ■決めつけは絶対ダメ!それでは、目撃者としてしてはいけないことは何でしょう?「何らの証拠も確証もないにもかかわらず、一方的な決めつけで痴漢呼ばわりをするということは、してはいけません。いたずらに冤罪を招くことにつながりかねないばかりか、実際に犯人であったとしても、証拠不足であることから逃げ得を許すことにもなりかねません。また、被害者を辱めることにもつながる恐れがあります。目撃者の不確実な証言により痴漢の冤罪が生まれた過去事例も少なくありませんので、常に冷静に物事を観察することが肝要です」(大達弁護士)取り違えによる痴漢冤罪は、被害者だけが起こしているわけではありません。決めつけや不確実な証言は、被害者にとっても痴漢行為を疑われている人にとっても迷惑なものです。大切なのは正しい状況把握、そして証拠です。痴漢冤罪という悲劇をこの社会から減らすには、自分が疑われないようにするだけでなく、誰もが痴漢に対して冷静に適切に対応することが大切なのではないでしょうか。 *取材協力弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです* Matej Kastelic / Shutterstock
2017年05月18日昨今、某ハンバーガーチェーン店に「裏メニュー」が登場し、話題となっています。今回のように「裏」を堂々と公表するのは稀で、通常は常連や馴染みの客などに振る舞われるメニューにない料理のことを「裏メニュー」と呼びます。メニューに載っていないわけですから、当然ながら料金も定かではありません。事前に「いくらで」と打診されることもありますが、値段を明かさず最後に請求されることもあるようです。仮に裏メニューの提供を打診され、「せいぜい5,000円くらいだろう」と思っていたら、じつは1万円と想像より少し高かった。その場合、ほとんどの皆さんは支払いに応じると思うのですが、「高すぎる」と拒否したくもなります。断りたいところですが、勝手に値段を「思い込んだ」ことが悪いとも思われるだけに、しぶしぶ受け入れている人はほとんどでしょう。しかし、やっぱり納得いかないのも事実。一体法律的に見て、拒否することはできないのでしょうか?三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。 Q.「裏メニュー」の値段を聞かずに注文し、想定より少し高い金額を請求された場合、支払いを拒否することはできる?*画像はイメージです:拒否することは難しいと思われます。「なかなか難しいところだなと思います。想像よりは少し高かったとしても、実際に出てきたものに対する値段としては必ずしも法外とはいえないという場合には、“店の雰囲気や他のメニューの値段からこの程度の値段だろうと想定した”ということをもって、例えば“錯誤”によって契約は無効(民法95条)、などの主張をすることは困難であろうと思います。いきなり思っていたのよりも高い金額を言われ、困惑してしまうお気持ちは重々お察しいたしますが……」(伊東弁護士)裏メニューの性質上、その値段が法外でないかぎり、錯誤などを問うことはできないようです。裏メニュー打診時に、勇気を出して金額を確認しておいたほうがいいかもしれません。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*よっしー / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月17日*画像はイメージです:自分がカラオケで歌う様子を動画投稿サイト『YouTube』で投稿した男性に対して、東京地裁が、カラオケ機器メーカーの著作隣接権を侵害するとして公開禁止を命じる判決を言い渡したという報道がありました。しかし、YouTubeは、JASRACやNEXTONEなどの著作権管理事業者と包括契約をしており、これらの管理楽曲をYouTubeで使用することは可能なはずです。なぜ、今回、公開禁止を命じる判決が言い渡されたのでしょうか?また、「著作権」とは異なる「著作隣接権」とは何でしょうか?アクシアム法律事務所の高木啓成弁護士にお伺いしました。 ■1.著作隣接権とは?作詞・作曲をした人は、「著作者」として、「著作権」が発生し、この「著作権」は、音楽ビジネスでは、JASRACやNEXTONEなどの著作権管理事業者が管理しています。そして、これらの著作権管理事業者は、様々な楽曲の利用者(レコード会社、放送局、コンサートホール、YouTubeなどの動画投稿サービス)に対して、楽曲の使用を許諾する代わりに著作権使用料を徴収しています。YouTubeは、これらの著作権管理事業者と包括契約して著作権使用料を支払っているので、利用者は、楽曲をカバーしてYouTubeに投稿することができるわけです。他方、作詞家・作曲家ではなく、その楽曲を歌った歌手やバックミュージシャン、多額のレコーディング費用をかけて楽曲の音源を制作したレコード会社には、「著作権」は発生しません。しかし、これでは、たとえば、その楽曲CDの海賊版が出回ったとき、歌手やレコード会社は差止請求や損害賠償請求ができない、ということになってしまいます。これでは不都合なので、歌手やレコード会社(正確にいうと、「レコード製作者」)にも、著作権に似た「著作隣接権」という権利が与えられており、海賊版などに対して法的請求ができるようになっています。そして、重要なところですが、YouTubeなどの動画投稿サービスは、「著作権」はクリアしているものの、一部を除き「著作隣接権」はクリアしていません。ですので、たとえばCDの音源をアップロードすることは、そのCD音源の「レコード製作者」の「著作隣接権」の侵害になってしまうのです。 ■2.今回の判決今回の判決を読むと、「自分がカラオケで歌う様子をYouTubeで投稿した男性は、カラオケ機器メーカーの“レコード製作者”としての“著作隣接権”を侵害している」という判断がなされています。ただ、ひとつ疑問が生じます。「レコード製作者」の権利は、音楽をマスターテープなどに固定(録音)することにより発生します。CDの音源のように、レコーディングを行ってマスターテープに固定(録音)することが典型例です。逆にいうと、音楽を何かに固定(録音)しなければ「レコード製作者」の権利は発生しないはずです。しかし、通信カラオケの音楽は、一部の楽曲を除き、カラオケ店での利用者のリクエストに応じて、専用サーバーから、その楽曲のmidiデータ(譜面やテンポ、音の種類などの情報)が配信され、店内のカラオケ機器が受信し、その都度、その機器付属のシンセサイザーで再生する方法で演奏されているはずです。カラオケ機器や専用サーバーに、カラオケ楽曲の全ての音源が保存されているわけではありません。だから、利用者が、曲のキーやテンポを自由に変更できるわけです。そうすると、それぞれのカラオケ曲については、音楽の「固定」という過程が存在しないように思います。それぞれのカラオケ曲にレコード製作者の著作隣接権が発生するのか、またはカラオケ機器のシンセサイザー音源自体に著作隣接権が発生するのか、検討の余地があるように思います。ただ、今回、被告側がこの部分を詳細に争わなかったので、原告であるカラオケ機器メーカーの主張が全面的に認められたのだと考えられます。 *取材協力弁護士:高木啓成(アクシアム法律事務所。エンターテイメント法務、離婚や不貞行為などの男女関係の法律問題、交通事故(被害者側)、労働問題(会社側、従業員側どちらも対応)を取り扱う。)*取材・文:編集部【画像】イメージです*ろじ / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月16日*画像はイメージです:東京都立川市でカーブミラーを叩き割った男性が、逮捕されるという出来事がありました。同市では2月以降カーブミラーを割られる被害が40件以上確認できており、関与していないか調査しているとのことです。ところで、このカーブミラーを叩き割るというこの行為はどのような罪に当たるのでしょうか?交通事故にも繋がりかねない行為ですが、解説してみたいと思います。 ■カーブミラーを破壊することはどのような罪になるのかカーブミラーを破壊した場合に成立する可能性のある犯罪としては、刑法261条の器物損壊罪や同法124条の往来妨害罪が考えられます。もっとも、このうち往来妨害罪は、「陸路」、つまり道路そのものを損壊したといえる場合に成立する犯罪です。しかし、カーブミラーは道路そのものではなく、道路の付属設備に過ぎないと考えられることから、結論としては、カーブミラーを破壊しても往来妨害罪には該当せず、器物損壊罪が成立するのみということになるでしょう。器物損壊罪が成立する場合、犯人は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料に処せられる可能性があります。なお、刑法上の器物損壊罪が成立するのは、あくまでもカーブミラーを「故意に」損壊した場合に限られます。したがって、例えば交通事故でカーブミラーを壊してしまった場合のように、故意ではなく「過失で」損壊してしまったに過ぎない場合には、器物損壊罪は成立しません。ただし、たとえ過失であっても民法上の不法行為は成立しますので、交通事故でカーブミラーを壊してしまった場合でも、カーブミラーの所有者に対する損害賠償責任は免れません。 ■壊されたカーブミラーが原因で交通事故が起きたら…?また、壊されたカーブミラーが原因で交通事故が発生したといえるのであれば、犯人が事故当事者に対しても損害賠償責任を負う可能性はあるでしょう。しかし、通常は、犯人が事故当事者に対してまで責任を負うことは少ないのではないかと思います。なぜなら、カーブミラーが壊されていた結果、道路の見通しが悪かった場合でも、運転者はそのような道路状況を前提に前方に注意して運転すべきであり、仮に事故が発生した場合も、事故発生の直接の原因は、運転者の前方不注視であると判断されることの方が多いと考えられるからです。他方で、確かにカーブミラーが壊されていたことも、事故発生の一因ではあるでしょうが、それはあくまでも間接的な原因に過ぎず、法律上の因果関係まで認められることは少ないだろうと思います。ただし、例えば犯人がカーブミラーを破壊した際、現に車両がカーブに差し掛かっており、運転者もカーブミラーを見ながら運転していたにも関わらず、突然カーブミラーが破壊された結果、交通事故が発生してしまったというような特殊な事情がある場合には、犯人が事故当事者に対しても損害賠償責任を負うことは十分考えられます。 *著者:弁護士 髙田 英治(髙田総合法律事務所。企業法務をメインとしつつ、相続・離婚・交通事故等の個人に関わる法律問題も幅広く取り扱う)【画像】イメージです*TATSU / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月15日*画像はイメージです:いくつかの案があるようで、決定はしていないようですが、2027年に品川-名古屋間、2045年に品川-大阪間で、リニアモーターカーの開通が予定されています。開通がなされれば便利な世の中にはなりますが、そうすると、 当然路線付近の住民に対して立ち退きの要求がなされることが予想されます。大規模な立ち退きとなるとトラブルがつきものです。そこで、今回は法律的な観点から立ち退きについて解説をしていきたいと思います。 ■立ち退きに関する法規制借地借家法という法律では借り主(借地権者といいます。)は強く保護されています。借り主が契約期間の満了前に契約を更新する意思を大家(借地権設定者といいます。)に伝えた場合には、原則として自動的に契約が更新されます。大家さんが契約の更新を拒絶できるのは、正当な理由がある場合に限られます。そして、正当な理由があるといえるかどうかについては、大家さんが土地の使用を必要とする理由や、立ち退き料の支払いの申し出がある場合には、その申し出を考慮して判断されることになります。つまり、土地使用の必要性がどれだけ高いかということと立ち退き料の申し出の有無、金額等が総合的に考慮されて、大家さんの立ち退き要求が正当かどうか判断されることになるのです。 ■支払われるはずの立ち退き料が突然支払われなくなったら?例えば、かりに100万円の立ち退き料の支払いを受けることによって立ち退きを承諾したにもかかわらず、大家さんが後日その支払いをしないと言い出した場合、立ち退きを拒絶できるでしょうか。大家さんの支払い拒絶は、立ち退きに関する合意に違反する行為です。ですので、借り主としては、これを理由に合意自体を解除して、立ち退きを拒絶することが可能です。このように大切な合意であっても、実際には書面が作成されないことも少なくありません。そうすると、トラブルが生じた時に、実際に立ち退き料の合意があったかどうかうやむやにされ、立ち退き料が当初の金額よりも減額されたり、強硬に立ち退き料なしでの立ち退きを迫られることもあり得ます。手書きでも結構ですので、合意書を作成し、大家さんの署名押印をもらっておくことが重要です。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月13日*画像はイメージです:ゴールデンウィークも終わり、これからだんだんと暖かくなっていきますね。ただ、そうなってくると食べ物の取り扱いに気を遣わないといけませんよね。例えば、飲食店で食事をした後に、嘔吐や下痢などに悩まされたり、寄生虫を食べてしまったり……。そういった被害に遭った場合に損害賠償ができるのか、どうすればいいのかについて考えてみました。 ■食中毒!? と思ったら生ものなどを食べた後、おなかの調子が悪い、吐き気がするといった場合、食中毒が疑われます。重篤な症状になる前に病院で診察を受けましょう。食中毒にもさまざまな原因があり、症状が出るまでの期間等も異なるようです。まずは、病院で原因を特定してもらうことが第一歩だと思います。医師との問診等により、特定の食品からの感染が明らかになれば、医師から保健所へ届出をして食中毒と認定してもらうことも出来る可能性があります。食品衛生法では、医師は食中毒患者と診断した際は、最寄りの保健所長に届けなければいけないということになっています。保健所から食中毒であると認定されてしまえば、飲食店は営業停止等の処分を受ける可能性があります。また、そこに至らずとも調査などが入るとそれだけでよからぬ噂が立ち、客足が途絶えることもあります。それを避けるために、示談を求めてくる飲食店も有り得るでしょう。 ■個人で食中毒になった場合よくニュースなどで目にするのは、「集団食中毒」というもので、一人だけが食中毒になったというのは案外目にしません。それは、一人だけが食中毒になったとしても、そのお店で飲食したことが原因で食中毒になったかどうかという原因が特定しにくいからです。例えば、同じ日にその飲食店で食事をした何名もが同じ症状に悩まされているというのであれば、まさにその飲食店に原因があると判断しやすいですが、たまたま一人だけが食中毒になったというと、ほかで食べた物が原因じゃないかという可能性も有り得るからです。ただ、一人だけが食中毒になったといっても、絶対に損害賠償が認められないというわけではありません。はっきりとした原因さえ判明すれば、賠償は受けられます。 ■損害賠償の中身賠償の対象となるのは、まずは食べた料理の代金でしょう。誰も、食中毒になるような料理を注文したわけではありません。まともな料理を出していない以上、少なくとも食中毒の原因であると特定された料理の代金は返還を受けられます。次に、病院にかかった費用、交通費なども賠償を受けられます。すでに支払った病院代やタクシー代などのレシートは取っておくようにしましょう。その他、慰謝料、仕事を休んで収入が減った分を補てんするための休業損害分なども賠償の対象となります。慰謝料は、基本的には完治までにかかった入院、通院期間などをもとに算定します。収入が減った分については、例えば直近3か月分の平均的な金額からその治療期間にいくらくらい収入が減ったかなどを計算すれば算定できます。損害の計算は個別的な事情にも左右されます。お近くの弁護士さんにご相談することも一つの手です。きっと、皆さんのお力になってもらえると思いますよ。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*freeangle / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月12日*画像はイメージです:沖縄で宅配郵便業をてがける運輸会社の運転手が、ダイレクトメール約500通を破棄していたことが明らかになりました。最近では、再配達や宅配便の利便性の向上から、運送業界の負担が増加している傾向にありますが、こういった行為はどのような法に触れるのでしょうか。解説していきたいと思います。 ■民事上も刑事上も違法結論からいうと、送り主のダイレクトメール(荷物)を配達せずに廃棄している以上、民事上も刑事上も違法となります。民事の面では、損害賠償責任を負うことになりますが、捨てたドライバーが直接荷主に対して損害賠償責任を負う他、運送会社もドライバーの不法行為につき使用者責任(民法715条)を負い、賠償義務があります。ダイレクトメールを配達せずに捨てたドライバーは運送会社の業務を履行する者なので、運送会社は荷主に対して運送契約上の債務不履行責任として賠償義務を肯定することもできます。いずれにしても、民事上の賠償責任が発生することになります。 ■刑事上の責任ドライバーがダイレクトメールを配達せずに廃棄した行為は、刑法上、いくつかの罪と関連します。可能性があるのは、信書隠匿罪、(業務上)横領罪、窃盗罪、器物損壊罪、私用文書毀棄罪などですが、結論からいうと、器物損壊罪のみ成立すると考えられます。まず、ダイレクトメールは基本的には「信書」に当たらない場合が多いので、信書隠匿罪にあたる可能性は低いです。横領罪や窃盗罪は、不法領得の意思という物を自己の所有物とする意思が必要であり、廃棄目的の場合には成立しません。私用文書毀棄罪にいう私用文書とは、権利義務に関する文書をいいますので、やはりダイレクトメールは基本的に該当しないことになります。したがって、ドライバーがダイレクトメールを配達せずに廃棄した行為は、刑法上の器物損壊罪となります。 ただし、運送会社が荷主に謝罪し、自主的に補償するなどした場合は、実際には刑事事件としては立件しない可能性も高いでしょう。再配達や荷物量の急増による輸送網の疲弊が大きな問題ともなっており、対策が求められるところだと思います。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Quang Ho / Shutterstock
2017年05月10日*画像はイメージです:自民党のある議員が、既婚者でありながら、愛人と結婚式を挙げていたことが判明。しかも本妻は癌で闘病中だったうえ、この愛人とは別の女性議員とも交際していたといわれています。かつては大名などを中心に妻(正室)以外の女性を妻(側室)とすることが認められていましたが、現行法ではこの「重婚」は、日本では禁止されており、犯罪になります。重婚は犯罪ということは理解している人が多いと思いますが、実際にどのような場合に法律に反するのかご存じない人も多いのではないでしょうか?そこで今回は重婚の罪について、解説していきます。 ■刑法・民法それぞれに抵触民法に以下のような条文があります。配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。(民法732条)一夫多妻制を導入している国もありますが、日本では民法によって重ねて婚姻をすることは違法と定められています。そして、刑法でも配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。(刑法184条)との条文があり、重婚をした場合は罪に問われることになります。ただし、ここにいう「婚姻」とは、婚姻届を提出した正式な結婚(「法律婚」といいます。)のことです。内縁や事実婚は含まれません。結納をした、結婚式を挙げた、同棲した、という場合も「重婚」にはなりません。なので、既婚者が配偶者以外の人と内縁関係・事実婚の関係になったとしても、「重婚」にはなりません。「重婚」になる場合は極めて限定的です。既婚者が離婚届を偽造して提出し、法律上の離婚を成立させた上で別の人と婚姻届を提出したという場合に重婚罪で処罰した裁判例があります。したがって某議員は、疑惑が事実であっても、重婚罪に問われることはありません。ただし、不貞行為の場合と同じように、損害賠償責任(民法709条)が発生する可能性はあります。重婚的な行為は、処罰されないとしても、今回のように離党を余儀なくされるなどして、社会的地位も失うことになります。既婚者でありながらほかの異性と交際とするということは、現在の世の中ではモラル的に「ありえない」行為といえます。 *記事監修弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月09日時間に正確な日本の鉄道ですが、まれに発生するトラブルには無力です。特に多いのが、踏切の「人立ち入り」。「なかなか開かない」「遮断機が降りそうだけれど行けると思った」などの理由から鉄道車両が近づいたにも関わらず踏切内に立ち入り、鉄道を止めてしまうことがあります。その場合、後日鉄道会社から損害賠償を請求されることがあるのは、皆さんご存知のとおりです。しかし、仮に止めてしまったとしても、「故意」でなく、自動車の故障や急な体調不良など、致し方ない理由で踏切内に立ち入り、鉄道の運行を止めた場合は、情状酌量があっても良いように思いますし、「わざとじゃないので」と支払いを拒否したくなります。そのようなことは可能なのでしょうか?星野法律事務所の木川雅博弁護士にご意見を伺いました。Q.故意ではなく、急な体調不良などで踏切を通過できず、電車を止めてしまい、鉄道会社側から請求があった場合、それを拒否することはできる?*画像はイメージです:故意でなくとも過失があれば損害賠償義務は生じる。「鉄道会社の電車を止めた人に対する損害賠償請求は民事上の責任追及であるところ、民法709条は、故意ではなく過失(注意義務違反)により他人に損害を与えた場合でも損害賠償義務を負うと定めていますから、理由のいかんを問わず、電車を止めた人に過失がある場合には鉄道会社に生じた損害を払わなければならなくなります。実際には、電車を止めてしまった場合でも鉄道会社から損害賠償請求をされることは少ないのですが、それは、(1)自動車の故障や急な体調不良で電車を止めてしまったことについて過失があるとまではいえない場合(そのように鉄道会社が判断した場合)(2)電車を止めた人に過失はあるが、鉄道会社に振替輸送費や旅客対応のための余分な人件費等の損害が生じなかった場合(3)電車を止めた人に過失があり、かつ、鉄道会社に損害は生じたが、諸々の事情により鉄道会社が請求をしない場合上記のいずれかに該当するからだといえます。つまり、法律上は、電車を止めた人の過失によって鉄道会社に損害が生じたときは、鉄道会社からの請求を拒否することはできないということなのです。踏切の警報機が鳴らなかったために踏切内に閉じ込められてしまった場合など、電車を止めてしまったことについて鉄道会社にも過失がある場合には、過失相殺により実際の賠償額は低額になります。また、自動車と列車が接触し、車両の修理費や乗客の治療費が生じたときは、自動車保険(対物・対人)を使うことができるので、その場合は実際に多額の負担を強いられることにはならないでしょう。もし、鉄道会社から損害賠償請求をされてしまった場合は、まずは自身の落ち度と保険適用の有無を検討し、次に過失相殺が適用されないかを検討することになります。なお、このように解説すると、踏切や線路内に人がいるのを見かけたときに非常停止ボタンを押すのをためらってしまうかもしれませんが、正当な理由で非常停止ボタンを押して電車を止めても鉄道会社から損害賠償請求をされることはないでしょうから、緊急の場合には非常停止ボタンを押して人命を救うことを優先していただければと思います」(木川弁護士)法律上、止めた人の「過失」によって鉄道会社に損害が生じた場合は、いかなる理由があろうとも拒否することはできないようです。ただし、減額などの余地は残されているよう。この場合は、弁護士に相談してみるのが賢い選択と言えそうですね。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*moga / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月08日*画像はイメージです:明治時代に成立してから110年ぶりに改正案が閣議決定された強姦罪。強姦罪という名称が廃止され、強制性交等罪という新たな罪名になろうとしています。いくつかの大きな変更点がありますが、そのひとつがこれまで女性に限定されていた被害対象に男性も入るようになったことです。望まない性行為を強いられる苦痛は男女ともに同じですから、これは現実に即した大きな変更といえるでしょう。ところでこのように望まない性行為の強要が夫婦間で行われた場合は、犯罪になるのでしょうか?和田金法律事務所の渡邊寛弁護士にお聞きしました。 ■夫婦間でも強姦罪・強制わいせつ罪が成立夫婦間で相手から望まない性行為を強いられた場合、これを強姦罪や強制わいせつ罪などに問えますか?「夫婦間でも強姦罪・強制わいせつ罪が成立します。かつては夫婦間に強姦罪を認めないのが通説とされていました。なぜかというと、現行刑法の条文上、強姦は、暴行又は脅迫を用いて女子を『姦淫』することとされます。『姦淫』とは不正・不道徳な性交を意味するため、夫婦間に『姦淫』はあり得ないからです。また、夫婦は相手に性交渉を要求する権利があることがその理由とされていました(強姦罪を否定する立場も、暴行罪、脅迫罪等の成立は認めます)。しかしながら、夫婦間に性交渉を要求する権利があるとしても、暴行・脅迫を伴うような時はもはや適法な権利行使とは言えません。現在では夫婦間でも強姦罪・強制わいせつ罪を認める立場が有力です。平成19年9月26日の東京高裁判決も、夫婦間での強姦罪の成立を認めています。なお、万が一結婚相手や同棲相手から暴力を受けているようなことがあればDV法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)による保護を求めることもできます」(渡邊弁護士)前述の通り刑法上の強姦罪の規定は110年変わっていませんが、その解釈は時代に合わせて変わってきており、現在は場合によっては夫婦間でも強姦罪や強制わいせつ罪が成立するそうです。 ■法的には夫婦の性交渉をどう解釈しているのか先程の渡邊弁護士のお答えに「夫婦間に性交渉を要求する権利がある」とありますが、これはどのようなものなのでしょう?「夫婦間には性交渉を求める権利・応じる義務があります。とは言っても、民法上、性交渉を求める権利が明示的に定められているわけではありません。夫婦間だからといっていつでも相手に性交渉を求めることができるものではありませんし、性交渉を命ずる判決を求めて裁判が起こせるわけでもありません。夫婦の性交渉については、性交の拒否または不能が離婚事由になるかという形で、法的な判断がなされることがあります。例えば、結婚後約1年半の同居期間中夫が性交できなかった事案では、裁判所は、夫婦の性生活は婚姻の基本となるべき重要事項であると指摘し、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)があるとして、妻からの離婚請求を認めています(最高裁昭和37年2月6日判決)。また、夫が自分が性的不能であることを告げずに結婚し、約3年半の同居期間中に性交渉がなかった事案で、妻からの離婚や慰謝料の請求を認めた裁判例もあります(京都地裁昭和62年5月12日判決)」(渡邊弁護士)夫婦間での性交渉が法律で定められているわけではなくとも、性交渉が婚姻の継続に関わる重要なものとして扱われている以上、性交渉を求める権利と応じる義務があると解釈できるのです。これを知らずに結婚する方は結構多いのではないでしょうか?「ただし、結婚後に肉体的・精神的理由で性交不能になったとか、単に年を取って性交不能になったような場合には、離婚事由として認められないでしょう。夫婦間で性交渉を求める権利・応じる義務というより、円満な性生活を求める権利と言った方が適切かもしれません」(渡邊弁護士)円満な性生活がどのようなものなのかは、個人によって、夫婦によって、違うものでしょう。お互いが納得し、満足する形で、強姦や強制わいせつに問われることのない夫婦生活が送れるようにしたいものです。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月07日*画像はイメージです:今年4月、元SMAPの中居正広さんが恋人と半同棲中という報道がありました。結婚前の同棲率は7割ともいわれ、結婚のお試し期間として同棲するカップルはかなり多いようです。とはいえ、結婚に至らず別れてしまうこともあります。関係性の清算と同時に共同生活も清算するという大きな負担のためか、様々なトラブルが起こることもあるようです。中でも気になる私物の処分について、和田金法律事務所の渡邊寛弁護士にお聞きしました。 ■勝手な処分は器物損壊罪にあたる同棲解消して出て行った恋人が、私物を引き取ってくれない。連絡しても無視という状況で勝手に処分した場合、罪に問われる可能性はありますか?「器物損壊罪に問われる可能性があります。残された物は元恋人の所有物なため、勝手に処分すると、刑法上の器物損壊罪となり得ますし、民法上も損害賠償責任を負う可能性があります。実際に器物損壊罪に問われるか、損賠償請求されるかはケースバイケースになりますが、恋人が出て行って間もない時期に、感情に任せて一切合切捨ててしまうようなことは止めた方がよいです。アルバムや思い出のある物など、財産的な価値がなさそうなものでも、主観的な価値が認められることがあります」(渡邊弁護士)どんな事情があっても、他人の私物を勝手に処分することは器物損壊罪に当たるのです。いくら邪魔でも、相手の承諾なく処分してはいけません。 ■所有権には時効なし!恋人関係の解消と共に連絡を遮断する方もいます。私物に関して連絡しても無視、居場所も不明という場合、相手の私物はどうすればよいでしょうか?「相手の実家などで引き取ってもらうのがベストです。可能であれば、相手の家族など代わりに残置物を預かってもらえる人を探して託すのが一番よいです。預ける先がないような場合は、処分も検討せざるを得ませんが、処分の前には、残置物引取りを催促し、引き取らなければ処分することを通知しておいた方がよいです。返事がないことが直ちに所有権の放棄になるわけではありませんし、所有権に時効はありませんから、いつまで預かれば処分してよいという区切りはありません。残置物の内容や量にもよりますが、現実的には、引取りの催促・処分の予告をした上で、もはや文句も言われないだろうという時期を見計らって処分するほかないでしょう」(渡邊弁護士)“もはや文句も言われないだろうという時期”とは、判断がなかなか難しそうです。同棲を始める前に終わった後のことを考えるのは無粋かもしれませんが、同棲前に私物を預けたり緊急時に連絡すべき人をお互いに伝えておくと、いざという時のトラブル回避につながるのではないでしょうか。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】イメージです*KAORU / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月06日自転車は原則として1人乗りが義務付けられています。幼児席が設置されている場合などの例外はありますが、基本的に2人乗りは道路交通法に違反した行為となり、赤切符が切られることになります。自転車の2人乗りが道路交通法に違反した行為であることは周知されていると思いますが、映画やドラマのなかでカップルが仲睦まじく一緒に自転車に乗る様子に憧れた人や、移動手段の共有から2人乗りをする人がいるようです。軽い気持ちで自転車に2人乗りして走っていたら、自動車と衝突してしまった。この場合、通常の自転車対自動車の事故との過失割合は変わってくるのでしょうか?ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解を伺いました。Q.自転車で2人乗りをしていたら、車とぶつかった…2人乗りだと過失割合は変わる?*画像はイメージです:変わる可能性が高い。「“二人乗り”は、自転車側の過失割合が重くなる要素になると思います。事故の態様によるでしょうが、自転車側の運転手の過失が事実上、推定されると思います」(森川弁護士)やはり通常の「自転車対自動車」の事故よりも、自転車側が2人乗りしていた場合は過失割合が高くなるようです。そもそも、違反行為なわけですから、当然ですね。2人乗りが禁止されている理由は重大な事故につながりやすいということが一番大きな要素です。非常に危険であるということを認識してください。安易な気持ちで2人乗りをすると、取り返しのつかないことになります。絶対にやめましょう。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*8suke / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月05日*画像はイメージです:次から次へと不倫問題が浮上する芸能界。不倫が発覚すると、謹慎したり番組を降板したりすることもありますが、人によっては、全くお咎めがないというケースも珍しくありません。不倫がきっかけで全ての仕事を降板させられた……というケースがあったことを考えれば、謹慎すべきにも思えるのですが。芸能界は、様々な意味で異質ということでしょうか。ところで、一般の会社に勤めている場合はどうなるのでしょうか? ■一般社会なら左遷も……一般社会で不倫していることが発覚した場合、周りの目はかなり冷ややかなものになるでしょう。とくに当該者が同じ職場に勤める者同士だった場合、2人は一緒に働くことができなくなり、一方が左遷されることも考えられます。企業はそのような「不貞」に厳しいイメージがあります。社会では倫理観も問われるわけですから、当然であるような気する一方、少々「厳しすぎる」気もします。法律的に見て、不倫した社員を企業が左遷することは許されるのでしょうか?ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に見解をお伺いしました。 ■就業規則や契約違反になる場合は妥当「不倫は基本的には勤務先の業務とは関係ないプライベートな問題です。ですので、勤務先の業務に何らの問題も引き起こしていないにもかかわらず、不倫をしたことそれ自体で懲罰的な左遷などをすることはできません。ですが、不倫が元で、勤務先の就業規則や契約に違反することになる場合もありえます。例えば、不倫相手との密会や連絡により業務を怠ることが頻発するようなケースや、社内で不倫相手と不適切な行為(例えば性的な行為)などを反復して行うことにより職場の風紀を乱すようなケースです。このような場合には、例えば異動や減給など、就業規則に従った不利益処分を受けることもありえます」(寺林弁護士)会社と全く関係ないところでの不倫で、業務に支障をきたしていない場合は、たとえ発覚したとしても左遷することはできませんが、社内での不適切行為が発覚した場合は就業規則に則った形での処分が可能となるようです。不倫のリスクは大変高いものということがおわかりいただけたでしょうか?そのような関係を続けている人は、やめることをおすすめします。 *取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*AH86 / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月04日*画像はイメージです:に家族で車で帰省されるという方も多いと思います。その際、遠方であれば高速道路を使う方も多いでしょう。家族連れだとついつい車中での家族団欒に夢中になり、交通違反を犯してしまうこともあり得ます。そこで今回は、高速道路で気を付けたい交通違反6つを取り上げて解説していきます。 ■最低速度違反高速道路では最低速度が決められており、指定速度がない限りは時速50キロ未満での走行に対しては、普通車の場合、違反点数1点、反則金6,000円の反則金のペナルティが科されることになります。 ■ガス欠高速道路上でガス欠で停車してしまった場合には、高速道路運転者遵守事項違反ととなるようです。つまり、ガス欠にならないよう事前に点検する義務を怠ったというものです。普通車の場合には違反点数2点、反則金9,000円のペナルティが科されます。 ■路肩走行路肩走行も高速道路上は違反となります。渋滞時に時折見受けられますが、普通車の場合、違反点数2点、反則金9,000円と定められています。 ■追い越し車線の長距離走行これは一般道も同じですが、道路の混雑具合に関わらず、追い越し車線を譲らずに長距離走行することも違反となります。普通車の場合には、違反点数1点、反則金6,000円と定められています。 ■あおり運転高速道路では、時速80キロで走行する場合には80メートル程度、時速100キロで走行する場合には100メートル程度の車間距離を取ることが必要とされています。車間距離が短すぎたり、速度が遅い車両を後ろからあおることは違反にあたり、普通車の場合には、違反点数2点、反則金6,000円のペナルティの対象となります。 ■左車線からの追い越し皆さんご存知かと思いますが、先行車の追い越しは必ず右側の車線から行わなければなりません。左車線からの追い越しに対しては、普通車の場合、違反点数2点、反則金9,000円のペナルティが科されます。 なお、高速道路走行時には、渋滞時に、ハザードランプを点灯するという「暗黙の了解」がありますが、これはあくまでマナー(慣習)に過ぎず、法律に定められたものではありません。様々な意見はありますが、NEXCO(高速道路株式会社)でも渋滞時のハザードランプは推奨されていますので、注意喚起のために点灯するようにしてみてはいかがでしょうか。せっかくのゴールデンウィークも、交通違反の取締にあっては台無しです。しっかり交通ルールを守り、楽しい休日をお過ごしください。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*ABC / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月03日強風時や豪雨、設備の不具合などが原因で起こる停電ですが、この停電時に交通事故が起きた場合、過失の割合はどうなるのか、ご存知の方はいらっしゃるでしょうか?過失割合とはどういったことか、過失割合の考え方などと併せて解説していきたいと思いますので、ご覧ください。*画像はイメージです:■過失相殺・過失割合(過失相殺率)とは?交通事故に遭っても被害者側に何らかの不注意(=過失)があったと考えられる場合、被害者は、被った損害に相当する金額全額について請求したとしても、加害者側の主張や裁判所の判断によって減額されてしまいます。このように被害者側の過失を理由に加害者の賠償すべき額を減額することを過失相殺といいます。過失割合とは、損害の全額のうち被害者が自身の過失を理由に責任を負う(=減額されてしまう)割合のことです。過失割合は、「20:80」とか「○の過失は6割」といったように表現されます。 ■交通事故の過失割合(過失相殺率)交通事故の過失割合(過失相殺率)については、「大量の同種事案を公平・迅速に処理するため、古くから賠償額や過失相殺率に関する基準化が図られて」います。(※1)交通事故の過失割合(過失相殺率)は、道路状況・当事者の状況・交通規制・運転態様等を類型化して、こういった類型の場合は基本「○○:○○」で、修正要素に該当する事実がある場合は「-○○」・「+○○」といったように判断されるようです。 ■停電時の交通事故の場合『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂四版)』は、交通整理の行われている交差点と交通整理の行われていない交差点を分けて過失相殺率を類型化していますが、「信号機が設置されていても、黄色や赤灯火の点滅信号が表示されているだけの交差点は、「交通整理の行われていない交差点」(法36条)である」(※2)としています(同43頁)。「黄点滅」の場合を「交通整理の行われていない交差点」というのであれば、停電時の交差点についても「交通整理の行われていない交差点」としていいのではと考えます。したがって、信号機が作動しておらず誰がどのような進行をするのか予測不能なわけですから、車を運転する者としては、誰がどのような進行をしても事故を起こさないように徐行・安全確認をすべきであり、そうしないと著しい過失ありと判断されかねません。例えば、停電時の交差点で、一方の車(A車とします)が(A車から見て)左の方から交差点に進行してきた車(B車とします)に衝突したとして、双方同程度の速度であれば、Aの過失60、Bの過失40といった感じになりますが(左方優先)、A車が減速しておらずB車が減速していたとすれば、Aの過失80、Bの過失20といった感じになるわけです(ただし、道路の幅員等その他の条件は同じで他に特段の事情もないものと仮定します。)。 ■国・県・電力会社の責任原動機付自転車と大型乗用自動車が交差点で衝突した交通事故について、遺族が、国・県・電力会社を相手に、交通事故の時点で信号機が停電により作動していなかったとして賠償を求めた裁判例もあります。(※3)この事案の停電は、配電線の強化工事のための停電であり、人為的な停電でした。電力会社は、県に停電にする旨を通知していましたが対応が不十分であったようです。この裁判例で、裁判所は、信号機の設置・管理の権限について、国にはないから国には損害賠償責任はない、県には権限があるから損害賠償責任がある、電力会社には独占的・継続的に電力を供給する地位にあるので損害賠償責任があると判断しました(ただし、原告らが請求する損害賠償額は全て填補済みなので原告らの請求を棄却)。このように県や電力会社の賠償責任を認めた裁判例もありますが、事案次第であり、停電に至った経緯・停電を把握した後の県や電力会社の対応状況・交通事故の状況等によって認められる場合もあれば認められない場合もあるのではと考えます。強風や豪雨等の自然災害によって停電になったということであれば、強風・豪雨が治まり修繕や事故防止の対応ができるようになったにもかかわらず放置していたといった事情がないと責任は認められないのではと考えます。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【参考】※1:東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂四版)』別冊判例タイムズ第16号39頁※2:一方が黄点滅、他方が赤点滅の場合につき最一小決昭44・5・22刑集23巻6号918頁、黄点滅の場合につき最一小判昭48・9・27判時715号112頁※3:浦和地方裁判所昭和57年5月17日判決【画像】イメージです*Good morning / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月02日今年のゴールデンウィークは土曜日が祝日となってしまった影響から、例年に比べると「大型連休」というには少し寂しい長さになっています。ただ、5月の1日、2日に有給休暇を取得すれば連休期間を大きく伸ばすことができるため、この2日間に有給休暇を利用しようと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかしながら、この2日間に有給休暇を申請したところ、「皆に休まれると仕事が回らなくなる」という理由で有給休暇の申請を却下されてしまった方もいるのではないでしょうか。こういった理由で有給休暇の申請が却下されるのは仕方ないことなのでしょうか?Q.GW前後の有給休暇申請は却下されても仕方ない?*画像はイメージです:会社には有給休暇の「時季変更権」があるためある程度は仕方ないと言えますが、単に「忙しいから」という理由だけで却下することは許されません。上記にもある通り、会社は従業員の有給休暇申請に対して「時季変更権」という権利を有しているため、有給休暇の申請が却下されたからといって即違法になる訳ではありません。しかし、一方で会社は従業員が希望に沿う形で有給休暇を利用できるように配慮する義務があります。よって、この配慮を行わずに時季変更権を一方的に行使することはできません。具体的には、・有給休暇の申請を行った従業員の代わりは本当にいないのか(その日その人に休まれると本当に仕事が回らないのか)・代わりを探す時間的余裕があったかどうか(従業員からの有給休暇申請がどのタイミングでなされたのか)などを総合的に考慮して、配慮が適切になされたかを判断することになります。ただ、この判断というのは非常に難しい(合法・違法の線引きが難しい)ため、確実に有給休暇を利用するためには、直前に申請するのではなく時間的余裕を持って上司や同僚などと交渉しながら計画的に申請を行うといいでしょう。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*monzenmachi / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月01日