サカイクがお届けする新着記事一覧 (30/34)
みなさん、お子さんへのクリスマスプレゼントはもう決まりましたか?お子さんへのリサーチをしている最中のご家庭もあるでしょう。中にはお子さんのほうから「○○が欲しいな」というアピールもあるようですが、サッカー少年少女の保護者の皆さんも「ボールが欲しい」「新しいスパイクがいいな」などお子さんからのリクエストを受けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、サカイクのセレクトショップで人気の商品の中から、今からでもクリスマスまでにお届け可能な「サッカーがうまくなるグッズ」を厳選してご紹介します。お子さんのプレゼントに迷っている方、サッカーがうまくなりたいお子さんに喜んでもらえるアイテムばかりなので参考にしてみてください。ただいま年に一度の感謝祭開催中です!一部商品がとってもお得になっておりますのでぜひご覧ください。ただいま年に一度の感謝祭セール開催中!>>テクダマ発売開始から飛ぶように売れ、入荷するとすぐに完売になってしまうサッカー上達専用ボール「テクダマ」。サッカーが上手くなるためには、技術、戦術の理解とともに、ボールを自在にコントロールするスキルを身に着けること。グラウンドは平坦なところばかりではありません。イレギュラーなバウンドをしたり、バランスを崩しながらもボールをコントロールする場面もたくさんあります。そういった時に必要な「調整力」。これこそが本当にうまい選手が身に着けているもの。脳からの指令伝達を身体が実行できる力が大事なのです。そういった神経経路が鍛えられる仕組みのテクダマなら、普段の練習の中で使っているだけで自然と調整力を習得できるのです。また「うちは運動神経内から無理」と思っている親御さんもこのボールを使うことで、イレギュラーバウンドへの対応などに慣れ、試合で使えるボールコントロールが身につくので、ぜひお子さんにプレゼントしてみてはどうでしょうか。テクダマの詳細、購入はこちら>>KENGOアカデミー背が低くても、足が遅くてもサッカーがうまくなる45のアイデア。中村憲剛選手が映像で解説してくれるDVD「KENGOアカデミー」でサッカー脳を高めるサポートをしてあげませんか。中盤、ボランチを任されているけど、どう動けばいいかわからない。試合中何を見ていつパスを出すの?といった選手が抱える悩みに、中村憲剛選手が解説。Jリーグ屈指のサッカー脳を持つ中村選手の解説で、動き方、判断するタイミングなどサッカーに必要な知識を身に着けることができます。中学入学時の身長は136cm、周囲の対格差で挫折を感じサッカーから離れた時期もあったけど、考える力を武器に大きな選手と戦う方法を身に着けてきたという中村選手が自身の経験をもとに積み重ねてきた、サッカーがうまくなるためのアイデアが詰まっています。シンプルパッケージとなりお求め安くなりました。この機会にぜひ。KENGOアカデミーの詳細、購入はこちら>>タニラダー週1の練習で早くなる!サッカー選手2万人以上が実践したスピードアップトレーニングの決定版「タニラダー」で、お子さんの走るスピードを高めてあげませんか。「足が速くなりたい」は昔も今も、多くの小学生の願望ですよね。足が遅いのには理由があります。速く走るための基本のき、「正しい姿勢」「正しい身体の動かし方」を身につけるところから始められるベーシックから、ボールのある動きを伴うアドバンストまでご用意しております。たった4マスだからこそ速さに必要な要素が身に付きやすい。長すぎるラダーは足元を見てしまったり、終盤姿勢が崩れたりして正しい「速さ」が身につかない。タニラダーは速さを習得するための要素がギュッと詰まったトレーニングアイテムなのです。単純に走るのは速いけど、サッカーの試合になるとぎこちない、切り返しについていけない、などもタニラダーのトレーニングで解消できます。速くなりたい、動きをよくしたいお子さんにおすすめです。タニラダー各サイズの詳細、購入はこちら>>フレックスクッションドリブラーの生命線、股関節の可動域を広げる話題のストレッチツール「フレックスクッション」。あなたのお子さんは身体は柔らかいほうですか?最近は身体が固い子どもたちも増えているようです。身体が固いのはケガにもつながりやすいので、柔軟性はできれば小学生年代から注意したいもの。ストレッチで可動域を広げることでパフォーマンスアップにも繋がります。ですが、正しい姿勢で行わないとストレッチの効果も得られません。骨盤の向きを~と言われてもピンとこない子どもたちも、このクッションを使えば座るだけで正しい姿勢で効果的に体を伸ばすことができます。日本やヨーロッパの強豪25チームに採用され、練習や試合後のコンディショニングに取り入れられている「フレックスクッション」でコンディショニングのサポートを。お子さんだけでなく親御さんも使って一緒に楽しんでください。フレックスクッションの詳細、購入はこちら>>リバウンドボード一人でもトラップやパス、ワンツーのトレーニングができる壁打ち練習アイテム「リバウンドボード」。複数人で練習するほうが試合に近い状況なのはわかっているけど、近所の友達はサッカーしないし、兄弟姉妹も自主練に付き合えない、など様々な事情で一人で練習できるアイテムが欲しい、という親御さんは多いもの。このリバウンドボードを使えば、パスを出してパスを受ける練習ができます。ひとりでも2人で行うプレーの練習が可能になるリバウンドボードで実戦的な動きを身につけることができます。簡単に持ち運べ、上下を逆に設置すれば初心者・低学年が苦手な「浮き球」を返してくれるので恐怖心克服とトラップの練習にも。住宅事情により自宅の壁にボールを打たれるのはちょっと困る、という親御さんたちにもおすすめしたい商品です。リバウンドボードの使い方例、購入はこちら>>アルファゴール自宅でシュート練習!Jリーグ25チームが導入するゴール感覚を研ぎ澄ますミニゴールでシュート力を磨く。日本サッカーの長年の課題「シュート力」。少年サッカーの練習では簡易的なゴールを使うこともありますが、素材によってはシュートの跳ね返りが返ってこないのでセカンドボールを拾う意識などが身につきづらいという側面があります。軽くて安全なアルミ製でできたこのアルファゴールは、思いっきりシュートしてもボールがしっかりリバウンドするので、シューター以外の選手もゴールを意識してトレーニングすることができます。遊びの場面でもそのような意識をもって繰り返すことで、自然とゴールへの意識が定着していくもの。10秒で簡単に組み立てられてしまう時もコンパクト。ベガルタ仙台のトップチームが採用しシュート練習などに使われています。また、川崎フロンターレやモンテディオ山形などのスクールにも導入。サイズもバリエーションがあるので、クリスマスプレゼントだけでなく卒団記念の贈り物などにもピッタリです。アルファゴールのサイズ各種詳細、購入はこちら>>ただいま年に一度の感謝祭セール開催中!>>
2020年12月09日日本サッカー協会(JFA)の松田薫二グラスルーツ推進グループ長が、賛同パートナーを訪問し、現在の取り組みや今後の展望について話を聞くこの連載。今回は千葉県木更津市に拠点を置く、房総ローヴァーズ木更津FCです。クラブの代表を務めるのは、ジュビロ磐田などで活躍した、カレン・ロバートさん。木更津に素晴らしいグラウンドを建設したカレンさんと松田部長の対談後編では「ローヴァーズドリームフィールド」(人工芝グラウンド)設立の経緯に迫っていきます。(取材・文鈴木智之)カレンさんが廃校を再利用してフルピッチのサッカーグラウンドを持つことになったきっかけとは<<前編:元Jリーガー、カレン・ロバートさんが野球人気の地、木更津にサッカークラブを作ったワケ<グラスルーツ推進6つのテーマ>■廃校を再利用してグラウンドを確保松田:「ローヴァーズドリームフィールド」を見せてもらいましたが、素晴らしい施設ですね。クラブカラーの赤が鮮やかで、目に飛び込んできます。カレン・ロバート(以下カレン):ドリームフィールドはミズノさんが作ってくれたのですが、チームカラーの赤を入れるところはこだわりました。ほかにもヨーロッパでよくある、立ち見席も設置しています。松田:この施設を作るきっかけは、イオンモール木更津にフットサルコートを作るところから始まったのですか?カレン:サッカークラブを運営する以上、フルピッチのサッカーグラウンドを所有することは、誰もが抱く夢だと思います。「フルピッチのコートがほしいけど、場所もないし、どうしようか」とクラブスタッフと話をしていたら、たまたま木更津市の行政の方と話をする機会があり、廃校になった中学校の再利用の話が出ていました。松田:廃校は放置しておくと、老朽化して危険ですし、治安の悪化につながります。まさにグラスルーツ推進賛同パートナーの「社会課題への取り組み」ですね。カレン:当時僕は海外でプレーしていたので、行政への提案は松川(耕平/ローヴァーズ株式会社取締役)がやってくれました。それで公募が通って、木更津市立中郷中学校のグラウンドと体育館を改修し、人工芝の「ローヴァーズドリームフィールド」と「中郷アリーナ」が完成しました。後者だった建物は宿舎として改築中で、2021年度の完成を目指しています。2020年10月にオープンしたローヴァーズドリームフィールド赤い人口芝が鮮やか■サッカーだけでなくバスケ、バレーなど他競技への貸し出しも松田:廃校を利用してグラウンドを作る動きは増えてきていますが、ローヴァーズさんもその形だったのですね。施設の建設費用はどうやって捻出したのですか?カレン:銀行に借りました。フットサルコート運営の実績があったので、グラウンドに関しては比較的スムーズに話がまとまりました。松田:グラウンドは貸し出しもしているそうですが、どのエリアをターゲットにしているのですか?カレン: 東京、神奈川、千葉のスポーツ団体です。サッカーは当然のこと、アリーナではフットサル、バスケット、バレーボールなどもできます。都心からアクアラインを使えば、車で40分ほどで来ることができます。袖ヶ浦ICからも車で5分の距離なので、アクセスはかなり良いと思います。松田:東京や神奈川はチームの数に比べて、グラウンドの数が圧倒的に足りていません。東京都リーグの試合をするために、千葉のグラウンドまで行くこともあります。カレン:東京もそうですし、横浜や川崎からも、アクアラインを通ればかなり近いので、たくさんの方に利用してもらえるのではないかと思っています。中郷アリーナはバスケやバレーなど様々な競技団体に貸し出しも行っている■障がい、経済格差に関わらず一緒にサッカーができるように松田:障がい者サッカーの活動はどうしていますか?カレン:ローヴァーズのビジョンに「障がいや経済格差などに関わらず、みんなで一緒にサッカーができるように、地域をスポーツでつなぐ」というものがあります。最初は船橋市の生涯スポーツ課さんから委託されて、健常者の子ども向けと知的障がいの子ども向けにサッカー教室をさせてもらうところから始まりました。それがきっかけでローヴァーズのコーチが、知的障がい者の指導者ライセンスを取得したり、講習会をローヴァーズの施設で行うなどして、関わりが深まっていきました。松田:どのような年代の子たちを教えているのですか?カレン:小学生の特別支援学校の子たちです。そういう子の親御さんはサッカーに対するハードルが高いみたいで「本当に大丈夫かな?」と思いながら参加されるのですが、来てみたらすごく楽しんでくれて、「来て良かったです」と泣いて喜んでもらうこともあるので、そういう姿を見ると、もっと活動を増やしたいと思います。松田:障がいがある子達が運動する場が少なく、親御さんも「迷惑をかけてはいけない」という思いが強く、外に出さないこともあるようです。日本障がい者サッカー連盟では、年に1回「JIFFインクルーシブフットボールフェスタ」というものをやっていて、障がいの種別を問わず、健常者と障がい者をミックスして試合をしています。子どもの頃から交流を持つことで、大人になるまでに偏見や差別が植え付けられなくなるのではないかと思っているんです。カレン:障がい者に対する専門的な指導の知識も必要なので、学ぶことができる環境も作っていきたいです。松田: JFA では指導者ライセンス保有者のためのリフレッシュ研修で、障がい者サッカーコースを設けています。障がいがあっても、こうすれば一緒にサッカーが楽しめるということを学んでもらっています。千葉県でも開催を予定していますので多くの方に参加してもらえたらと思います。■近隣クラブとの協力で女子の育成、房総エリアを盛り上げたい松田:ローヴァーズは女子チームもありますが、なぜ女子も作ろうと思ったのですか?カレン:サッカーをやりたい女の子が多かったので、ジュニアのチームを立ち上げました。近隣に「オルカ鴨川」という女子のクラブがあるので、そこと協力して、選手を橋渡ししていければと思っています。木更津は内房、鴨川は外房と呼ばれる地域です。ローヴァーズにはチーム名に「房総」と入っているので、お互い協力して、房総を盛り上げていきましょうという話をしています。松田:サッカーをやりたい女の子が多いのは良いですね。カレン:この辺りは、習い事の数がそれほど多くないことも関係しているのかもしれません。夫婦共働きも多く、子どもたちの送迎をおじいちゃん、おばあちゃんがしてくれている家庭もあります。松田:子どもたちは、どの辺りから通っているのですか?カレン:木更津、袖ヶ浦、君津、富津の上総(かずさ)四市と呼ばれる地域の子達が多いです。遠いところは鴨川や市原、千葉市から来ている子もいます。松田:ぜひ、房総地域のサッカーを盛り上げていただけたらと思います。グラウンドづくりにしても、いろいろな人の参考になると思います。■子どもたちには失敗したからとすぐ諦めず、成功するまで頑張ってほしい松田:最後に教えて下さい。なぜクラブのカラーを赤にしたんですか?カレン:マンチェスター・ユナイテッド(イングランドプレミアリーグ)が好きなのと、強いチームは赤か青だろうというところから始まりました。チームカラーを青にすると「市船でしょう?」と茶化されそうだったので、赤にしました(笑)。ちなみに「ローヴァーズ」はヨーロッパのクラブでよく使われる名前で「成功を求めてさすらう人」という意味があります。子どもたちには「失敗したからといって諦めずに、成功するまで頑張ってほしい」という意味も込めて、名付けました。松田:素敵な名前ですね。グラウンドだけでなく、来年には宿舎もできるということで、楽しみにしています。カレン:はい。ありがとうございました。
2020年12月08日リーダーシップというと、以前は付いて来い!という強い人物像を描きました。今は仲間と協力しあえる、人のことを気遣うことができる、フォローし合える人のことだとサカイクキャンプのライフスキル講習では伝えています。サカイクキャンプではリーダーシップとは「相手の立場に立って行動できること」を念頭に子どもたちと接しています。キャンプを過ごす中で子どもたちがどう変わるのかを菊池健太コーチに聞きました。(取材・文:前田陽子)サカイクキャンプで選手同士話し合う姿■強いキャプテンシーから気遣いの人へ。リーダーシップ像が変わった「リーダーシップ」というと保護者世代のみなさんは、強い精神でみんなを引っ張る、組織の上に立つといった、強さや行動力、対人コミュニケーションに長けた人だとイメージする方もいるかもしれません。サッカーでいうと、うまい子がキャプテンのように指示を出すようなことを考えるかと思いますが、じつはサカイクキャンプに参加する子たちは、自分から前に出て思いを伝えることが苦手な子が多いのだと菊池コーチは言います。元日本代表の中田英寿さんや本田圭佑選手のような、強い意志で選手を鼓舞するようなリーダー像もありますが、現在のリーダーシップは協力し合え、人のことを気づかうことができ、互いをフォローし合える人だとサカイクキャンプのライフスキル講習では伝えています。1人でみんなを引っ張り、重責を一身に担うのではなく、自分の得意分野は精一杯頑張って、不得意なところはできる子に任せて協力して勝利を目指す、そんな人が現代のリーダーシップと考えているのです。元鹿島アントラーズの内田篤人さんも「プレイ中の気配りが大切」だと言っていましたが、近年はJFAのトレセンでも同様で足元の技術だけでなく、気配りのできる子が評価されています。菊池コーチはこんなエピソードを教えてくれました。以前、サカイクキャンプの練習中にコーチやトレーナーさんが重いジャグを抱えているのを手伝ってくれた子がいたそうです。その子はピッチの中でリーダーシップをとるような子ではなかったそうですが、そういうことも素晴らしいいリーダーシップだとコーチたちは考えているのだそう。「相手の立場に立って行動してくれることもリーダーシップだよ」と、みんなの前で伝えるとその子は嬉しそうな表情を見せ、同時に自信もついたようだったとコーチは振り返ります。自発的に行った行動を褒められ、認められて、「こういうこともリーダーシップなんだ」と気が付いたその子は、以降の練習中も少しずつ声が出せるようになったそうです。■思いは伝えなければ、伝わらない。そのために自信をつけるもちろん旧来の「言葉や行動でみんなを引っ張るリーダーシップ」も発揮できればいいのですが、できない子の方が圧倒的に多いものです。思いはあってもどう伝えたらいいのかわからないのです。でも、大人やまわりの人が行動や言葉を認めて評価することで、自信が付きます。そうすると自信をもってプレイができて、自信をもって話せるようになると菊池コーチ。些細な事でも認められる、受け入れられることで、その自信が人に思いを伝えることの糧になるのだそうです。ですが、すべてを褒めたたえればいいのではなくメリハリが必要なのだそう。「褒めて伸ばすことはいいと思いますが、今の子はどんなプレーでも褒められているので、その子の『特にいいところ』を指導者に伝えてもらっていないように感じます」と語るコーチ。「幼少期から始める子が多いので何となくサッカーはうまくできている子は多いです。キレイにボールもつながるし、サッカーの形はできています。けれど、そういった足元の技術だけでなく自分の考えを持ってプレイの意図は何なのか、『僕はこうしたい』ということを伝えることがサッカー選手には大切だと考えます。それを伝えることで仲間からも意見が出て、前向きな話にしようというコミュニケーションになります。リーダーシップもそうですが、まずは自分の思いを伝える力が大事だと思います」と、サッカーではボールコントロールだけではなく、自分の考えを伝えることが重要なのだと教えてくれました。■自分を知ることで自信がつき、積極的にプレイできるようになるサッカーの技術向上と自信はリンクします。サカイクキャンプでは、例えば守備の時に、積極的にボールに向かって行けたことを良かったと認めたうえで、「行き過ぎると抜かれるから、どこまで追うかタイミングがポイントだよ」などと具体的なことを示すそうです。すると子どもは、まず褒められたことで自信が付き、きちんと話を聞く耳が持てます。「頭の中で理解してトライ&エラーで続けてもらい、うまくいったところで褒めます。そこ子の判断を認めて、そのうえでチャレンジしようと言い続けることが大事」だと菊池コーチ。サッカーはミスの多いスポーツなので、ミスは当然あるもの。たくさんのトライ&エラーが子どもたちに自信を与えることができるのです。ライフスキルをキャンプに導入するにあたり、コーチたちはまず学ぶことからスタートしたそうです。どうしたら子どもたちが心からサッカーを楽しめるんだろう、どうしたらいきいきした顔で過ごせるのか、子どもたちが考えながらプレイするようになるのか、どういう風に声をかけると子どもたちにわかりやすいのか、その辺りの考えを深めていったのだそうです。以前はコーチたちそれぞれの感覚でやっていたことが、ライフスキルプログラムで共通認識ができたので、指導の中で同じワードが出てくるようになりました。そのおかげで、子どもたちも迷いなくキャンプを楽しむことができるようになったと感じるそうです。「今の子はみんな技術がすばらしい」と技術面で以前よりうまい子が増えているとコーチは言います。真似をすることが得意で、動画で見ているのかリフティングなどは低学年の子でも放っておいたらずっとやっているそうです。ですが、キャンプが始まってサッカーをやったらうまくいかない子も多いのだとか。リフティングなど、ひとりで行う自分の世界ではうまくても、サッカーは人と関わって成立するスポーツなので、足元でボールを扱う個人の技術だけでは不十分なのです。チームメイトがいて、対戦相手の仲間がいて、みんなで意見を出し合い勝ちに向かって協力する、本来のサッカーをサカイクキャンプで体験することができます。自分で考え行動すること、上手くいかなくても再度チャレンジする姿勢、周囲の状況を理解し、自発的に協力できることは、サッカーのプレーにもつながっているのです。家では親に甘えてしまって、指摘されるとふてくされてしまう子も、大好きなサッカーを楽しみながら過ごすキャンプでは、同じことをコーチに指摘されても素直に聞く耳を持てたりするもの。サッカーも普段の生活でも一回り成長してほしいなら、この機会にサカイクキャンプに参加させてみませんか?
2020年12月07日サッカー人口は年々に増加し、身近なスポーツとして多くの人が触れてきました。幼い頃からボールを蹴ってきた子どもたちも増え、1993年に開幕したJリーグの発展によって競技の裾野が広がったと言えます。「プロサッカー選手」になりたいと口にする小中学生も少なくなくありません。多くの親御さんたちが子どもたちの夢を応援しています。では、プロサッカー選手になるために何が求められるのでしょうか。今回はU-19日本代表監督を務める影山雅永監督にお話をお伺いしました。(C)松尾祐希■個人技=足元の技術、ではない昨年のFIFA U-20ワールドカップでは日本を2大会連続でベスト16に導いた影山監督。2年半の月日をかけてU-18世代からチームを強化し、その中で多くの選手と接してきました。大人の入り口に立つ高校生、初々しさが残るプロ1年目の選手や飛躍を遂げようとする若手です。彼らと幾度となく膝を付き合わせ、成長を見守ってきました。各年代のトレセンスタッフやアジア諸国で育成年代の指導に携わってきた過去の経験を踏まえ、プロサッカー選手になるためには技術面とメンタル面に必要な資質があると言います。まず、技術面では何が重要なのでしょうか。影山監督は言います。「日本サッカー協会の基本的な考えとして、個人の能力を磨く指針を持っています。そう提唱すると、『個人技ばかりを磨いてどうするんだ』と言われる場合も少なくありません。ただ、私たちは個人の能力を技術だけだと思っていません。状況の認知や技術を発揮する術も含めて個人の能力だと考えているからです。スペインでは『チーム戦術を小学校年代からやっている』という方がいらっしゃるかもしれませんが、(国として)別の指標も持っています。(ジュニア年代の)試合も7対7で行なっていて日本とは異なりますし、リーグ戦のレギュレーションも違います。僕らも勝たせたいのでチーム戦術を取り入れるべきなのかもしれませんが、それよりも小学生や中学生に対しては大人になってから役立つような、個人として持っている力をもっと引き立てるような指導をしていくべきだと思います。もちろん、チーム戦術も将来的には大事。だけど、個人の力を伸ばすためにも早い段階から個人戦術を磨いてほしいのです。個人と戦術で比べるわけではありません。状況を判断する。技術を出す。点を取る。ボールを奪う。個人戦術を将来につながるように磨いて欲しいですね」■日本の指導において、技術よりも意識させるべきこと個人技という言葉に踊らされず、1人で戦う術を身に付ける。ただ、個人戦術を含めた個の力を伸ばす作業は子どもたちのメンタリティーにも影響されます。だからこそ、影山監督は指導者のスタンスが重要だと言います。「子どもたちが意識するだけではなく、指導者が意識させることが大事です。社会性なども含めてこれまでの日本には、自分で意見を出して議論して考えて言葉を発する日常があまりありませんでした。海外では自分の考えを持つことをすごく重要視されていて、何か物事に対して自分の意見を言うのは当たり前。逆に持っていないことが恥ずかしいことですらある。それが日常の会話の中にあって成り立っています。海外では自分としての考えを述べることを日常からトレーニングしているので、日常からそのような会話が自然と生まれます。ですが、日本ではあまり見られません。子どもたちが指導者の顔を見ながらプレーすることがよくあると思います。『何をしたらいいの?』と選手が訴えれば、指導者が解決策を教える。それで止められると『次はどうしたらいいの?』と選手が聞けば、指導者は『次はこうしよう』と伝えます。どんどんそうやって教えて行く。でも、サッカーは得点を取って、得点を取られないようにするスポーツです。サッカーの原理原則を考えながら、指導者が子どもたちに考えさせるように投げ掛けるべきで、他の国以上に意識させなければいけないと私は思います。」■子どもたちの心を焚きつけて本気にさせることが大事手取り足取り教えるのではなく、意見を自ら出し、自分で解決をする。そうした能力を習得するのは簡単ではありません。では、影山監督は子どもたちとどのようにして向き合うべきだと考えているのでしょうか。「トレーニングで自主性を育めれば良いですが、簡単ではありません。そのためには『ゴールを奪う』『ゴールを守る』といったサッカーの原理原則を踏まえ、子どもたちの心を焚きつけるべきではないでしょうか。日本では黙っていると、グラウンドに来た子どもたちはボール回しを始めてしまいます。また、遊びの中でミニゲームしても簡単にはシュートを打ちません。なぜならば、周りからひんしゅくを買うからです。そういうスタンスを子どもたちに伝えていくのは時間を要するので、指導者として導いてあげる必要があるかもしれません。勝利至上主義とは違います。得点を取る。得点を取られたくない。相手からボールを取りたい。相手からボールを取られたくない。本質の部分を焚きつけて、子どもたちをもっと本気になってやらせるべきだと考えています」このように藤枝東は人間的成長を促しながら、かつてのような高校トップを目指しています。同じ高体連で2019年プレミアリーグ王者の青森山田高校らとはまだまだ実力差があると小林監督は感じているそうですが、藤枝東らしく文武両道を貫き、自主性や自立心を生かしながら進化を遂げていければ理想的。そうなるように今後も高いレベルに突き進んでいくつもりです。■指導者が教えるから闘争心が失われる子どもたち本来が持つ本能をいかに引き出し、闘争心を焚き付けられるか--。長年、育成年代の指導に携わってきた影山監督は歳を重ねるに連れて薄れていくと感じているそう。しかし、これはサッカーを教え過ぎることで生まれる弊害でもあると感じています。「闘争心は持っておかないといけません。幼稚園や小学校の低学年の子を集めてサッカーをやると、ゴールを目指して必死にプレーします。倒れてもまた立ち上がってシュートを打ちますし、一生懸命ボールを追いかけます。それは生まれた国が関わっているわけではなく、子どもが本来思っているやりたいことなんです。逆に指導者が教えることで失われる部分かもしれません。特に守備に関してはボールを奪いに行く子どもに対して、『相手に外されてはいけない』と言う時があります。ボールを取りに行くポイントを理解しないといけませんが、ボールが取れるのに飛び込まないで我慢する大人のサッカーを教え込んでしまう場合も少なくありません。闘争心を持ってボールを奪う。自然とやっていれば学べることを学べなくしているのは指導者の責任かもしれません」■内田篤人さんが感じた日本とドイツのサッカーの違い現在、日本を飛び出し、欧州のトップリーグでプレーする選手が増えてきました。海外で活躍する選手が成功している理由の1つはプレーの強度やコミュニケーション能力に長けていたからでもあります。現在U-19日本代表でロールモデルコーチを務める内田篤人氏もその1人です。影山監督は言います。「僕らのチームでコーチをしてくれている内田篤人氏はドイツで初めてプレーした時に『別のスポーツかと思った』と言っていました。身体の大きさも違うし、スピードも含めて能力が高い選手が集まっているから感じた違いかもしれませんが、ボールを取る部分に関してはプレーのインテンシティがまるで違います。外国人の指導者は日本に来ると必ず言及しますし、過去に日本代表監督を務めた外国人監督も『そこを高めなければいけない』と言っていました。ぶつかることを否定して、サッカーはもっと綺麗にやるもの。日本は世界で言われているサッカーとは少し異なる育ち方をしてきたのかもしれません。コミュニケーションもそうです。海外では自分の意見を言います。一歩間違えると日本では生意気に取られてしまうかもしれませんが、意見を言うのは当然で言わないことが罪となる場合もあります。海外でプレーしている日本の選手はそういう環境に身を置いているので意見を言えます。意見を聞いて、ディスカッションする。2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会の時も西野朗監督(現・タイ代表監督)が発信しなくても、要求し合うことが日常になっていたと聞きます。なので、子どもたちに思っていることを言うことは大事だと思いますし、指導者は自然とそれができる環境を整えることが大事だと感じています」■久保建英や齊藤未月が持つ、自ら発信する力はどうやって身に付いたのか今まで影山監督が接した選手の中にも自発的に行動する選手がいたそうです。それが久保建英選手や齊藤未月選手です。「久保建英選手は練習で周りと同じ形でメニューを消化しませんでした。違う発想を持っているので、『それをやらなきゃダメですか?』と聞いてきます。他の選手がトレーニングの意図や方法を理解していない場合もあるので、『最初は周りと同じようにやって、手本を示してくれ』と言っていました。彼はスペインで過ごしていたので、相手が考えていないことをやろうという思考を持っているのかもしれません。また、前回のU-20ワールドカップでキャプテンを務めた齊藤未月選手は自分の意見を持っていましたね。チームに対してもこうしたいというのをハーフタイムや試合前に必ず言っている。子どもたちが自発的に発信できることはそうそうないので、周りにそれを求めていた大人がいたのかなと感じます」本来持っている本能を呼び起こしながら、いかにサッカー選手として成長して大人になっていくのか。指導者はその手助けをするために子どもたちと向き合っていくべきなのかもしれません。影山雅永(かげやま・まさなが)福島県の磐城高校を経て筑波大学に入学。同期の井原正巳氏(現・柏レイソルヘッドコーチ)、中山雅史選手(アスルクラロ沼津)らとプレーし、卒業後は古河電工(現・ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。Jリーグでも活躍し、1995年は浦和レッズ、翌年はブランメル仙台(現・ベガルタ仙台)に籍を置いた。引退後は筑波大学の大学院で学び、1998年にはワールドカップに初出場した日本代表で対戦国のスカウティングを担当。その後はケルン体育大学などで学び、2001年からはサンフレッチェ広島でコーチを務めた。以降はアジア各国でA代表や育成年代の監督を歴任。2009年からはファジアーノ岡山のヘッドコーチに就任し、翌年からは監督として指揮を執った。2017年からはU-18日本代表監督(U-20ワールドカップを目指すチーム)となり、昨年5月のFIFA U-20ワールドカップ・ポーランド大会ではチームを2大会連続となるベスト16入りに貢献。現在はU-19日本代表監督として、来年開催予定のFIFA U-20ワールドカップ・インドネシア大会を目指している。(取材・文・写真:松尾祐希、JFA)
2020年12月02日日本サッカー協会(JFA)の松田薫二グラスルーツ推進グループ長が、賛同パートナーを訪問し、どんな取り組みを行っているのかを聞くこの連載。今回登場するのは、千葉県木更津市に拠点を置く、房総ローヴァーズ木更津FCです。クラブの代表を務めるのは、ジュビロ磐田などで活躍した、カレン・ロバートさん。木更津に素晴らしいグラウンドを建設したカレンさんに「施設の確保」を始めとするクラブ設立の背景、グラスルーツの活動について伺いました。(取材・文鈴木智之)リコプエンテFCが自前のグラウンドを作った理由とは......<グラスルーツ推進6つのテーマ>■カレン・ロバートさんが育成年代のクラブを設立した理由松田:房総ローヴァーズ木更津FCは、JFAのグラスルーツ推進・賛同パートナー制度の中の「施設の確保」「引退なし」「女子サッカー」「障がい者サッカー」「社会課題への取り組み」の5つに賛同してくれています。カレン・ロバート(以下カレン):はい。松田:今回の対談では、なぜクラブを作ろうと思ったのか。そしてグラウンドや施設をどのようにして作ったのかなど、賛同パートナーの方々の参考になるような話を聞かせていただければと思います。カレン:はい。よろしくお願いします。松田:元Jリーガーが育成年代のクラブを作り、グラウンドまで作ってしまったというケースは、あまり聞いたことがありません。カレンさんはオランダやイングランドなど、海外でのプレー経験も豊富なので、ヨーロッパの影響を受けたのかなと推測しますが、クラブ設立のきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?カレン:僕は茨城県の土浦市で生まれて、小学3年生まで、つくば市でサッカーをしていました。その後、小学4年生から中学生(ジュニアユース)までは柏レイソル、高校では市立船橋でプレーさせてもらい、千葉県にお世話になりました。松田:レイソルジュニアで全国優勝、レイソルのジュニアユースでは全国3位、市立船橋でも全国優勝をしていますね。カレン:すごく良い環境でサッカーをさせてもらっていたんだなと、プロになって改めて感じました。ヨーロッパでプレーする中で、将来のことを考えていたときに、漠然とですけど「千葉県に恩返しがしたいな」と思い立ち、すべてはそこから始まりました。そのときは、縁もゆかりもない木更津にクラブを作るとは思いませんでしたけど(笑)■野球人口の多い木更津にクラブを作ることになったキッカケカレン:船橋市にJクラブがないこともあって、最初は船橋市でスクールを立ち上げて、少しずつ積み上げていこうと考えていました。それで2013年に千葉県の佐倉市や白井市で、市立船橋時代の仲間とスクールを始めて「5年以内に自前のグラウンドを持ちたいね」という話をしていました。松田:サッカー関係者にとって、グラウンドの所有は、誰もが描く夢ですよね。カレン:そうしたらあるとき、木更津に良い物件があることを知りました。それがイオンモール木更津です。将来的にはクラブチームを作りたかったので、フットサルコートを3面作ることができるのは魅力的だなと。グラウンドは大きい方がいいですから。僕はそれまで、木更津には行ったこともなかったのですが、「イオンモールができるのだから、木更津は今後伸びるんじゃないか?」と思い、グラウンドを作ることにしました。松田:イオンモール木更津のフットサルコートは、カレンさんというか、ローヴァーズが作ったのですか?カレン:僕が現役時代に貯めたお金と、銀行からお金を借りて作りました。土地はイオンモールに借りています。広さはフットサルコート3面でソサイチができるぐらいです。松田:木更津は野球のイメージが強いですが、サッカー熱はどうなんでしょう?カレン:木更津には高校野球の名門、拓大紅陵高校や社会人野球チームなどがあり、野球が盛んな土地柄です。ただ、サッカースクールやクラブを作り、運営していく中で、地域の人達の熱意を感じています。じつはサッカーの需要も高かったのだと思います。子ども達はすごくピュアで、身体能力が高いんです。他の地域の人達に「木更津の子って、足が速いよね」「身体が大きいよね」と言われることも多いです。しっかり育てれば、面白い選手が出てくる土壌はあると思っています。2020年10月にオープンしたローヴァーズドリームフィールド■実力がある選手にはチャンスを与えられるクラブにしたい松田:ローヴァーズにはどのカテゴリーがあるのですか?カレン:まずはジュニアユースを作り、ジュニアは去年、U‐9、U‐10のチームを作りました。それとユース、社会人があり、女子は小1~小6まで募集しています。松田:女子も含めて、カテゴリーは多岐に渡りますね。こんなクラブにしたいというイメージはありますか?カレン:オランダで見てきたものを再現したい気持ちがあります。具体的には、若手育成型のクラブです。オランダはとくにそうですが、日本のように年功序列ではなく、アヤックスでは、ハタチそこそこの選手がキャプテンをしています。それでチャンピオンズリーグで活躍していて。日本ではまずありえないですよね。松田: 実力主義ですね。オフト(元日本代表監督)がヤマハにいた時はそうでしたね。ちょうどその頃、私はヤマハにいたのですが、大卒の22、3歳の選手がゲームキャプテンをしていました。オフトはオランダ人なので、考え的に通じるものがあるのかもしれません。カレン:サッカー選手は、若ければ若いほど価値があります。ヨーロッパに行って、それを気づかされました。将来的には、若い選手を海外に送り出すクラブにしたいです。そのためには、環境も含めて投資をしていくつもりです。■地域に根ざしたクラブを目指す松田:トップチームは Jリーグを目指しているのですか?カレン: J1、J2を最初から目指すのではなく、近い目標としてはJ 3入りを考えています。僕はイギリスでもプレーしましたが、地域に根づいた街のクラブが各駅にあって、5000人、1万人程度のスタジアムに人が集まって、すごく良い雰囲気なんですよね。ローヴァーズがそうなれれば良いですし、そこから先は木更津の方々や地元の企業さんが「上を目指そう」と言ってくれるのであれば、全力で応えたいと思っています。松田:話を聞いていると、すごく現実的で進め方がよくわかっているなと感じました。ヨーロッパでご自身の目で見て、経験しているのが大きいんでしょうね。カレン:僕はJ 2でもプレーしましたが、練習場などの環境が整っていないところもまだまだ多いです。クラブを作るにあたり、まずはそこをクリアにしたいと思いました。今年の10月にオープンした「ローヴァーズドリームフィールド」(人工芝グラウンド)を作ることができたのは、かなり大きかったと思います。
2020年12月01日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「アウトサイドでターンができない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。最初は小指の付け根辺りでボールを触ることが難しいかもしれませんが、このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、足の外側を使ってボールをうまくコントロールしながらターンする動きを身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親の前に目印を置く2.子どもはドリブルをしながら目印をアウトサイドターンで回って戻る3.足のどの部分でボールを触るか意識しながら何度か前へのドリブルを繰り返す4.目印に来たときに親が取りに来るので素早くアウトサイドターン5.慣れてきたら、スピードを上げる6.それができるようになったら、親はDF役としてターンするときにボールを取りに行く速さを調節する【ポイント】・小指の付け根あたりでボールを触ってターンする・慣れるまではボールをよく見る・ターンしたときに相手とボールの間に自分の身体を入れると取られなくなる・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!
2020年11月30日人数が少なく全学年一緒に練習せざるを得ないこともあるが、上級生の保護者が納得しない。「低学年にしかメリットがない」「下の子たちと練習しても高学年はうまくならないのでは」「下の子たちのお世話係じゃない」など不満の声が。年齢ミックスで練習することで上級生も成長することをわかってもらうにはどうすればいい?とのご相談です。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、年齢ミックスで上級生にもたらされる5つのメリットをご紹介します。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手をつかんでまで止める、競り合いで負けると「死ね」と暴言を吐く子、どう指導すればいい?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。小学校のスポーツ少年団で全年齢を指導しています。これまで何度も紹介されているかもしれませんが、改めて異年齢やレベルがバラバラのチームで上級生(または上手い子)が、下の子たちと一緒に練習することのメリットを教えてください。所属人数が少ないのでどうしても年齢ミックスで練習をせざるをえないのですが、学年が上の子たちの保護者は、「小さい子たちと練習させてもメリットがあるのは下の子たちだけで、上級生にメリットがないのでは?」「レベルの違う(下手な)子たちと練習しても上手くならないのでは?」「小学生年代ではまだ指導者に与えてもらうことがメインなので、5、6年生も下級生のお世話係ではなく、ちゃんと指導してほしい(技術、戦術をコーチから与えてほしい)」という方も少なくありません。一人で全学年を見ているので、時間的にも限りがありますし、年齢ミックスで練習することで上の学年も伸びるということを理解していただきたいのです。異年齢と一緒に練習することで伸びるスキルなど、改めて具体的に教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。保護者の方々からなかなか理解を得られず、苦戦している様子ですね。でも、実践されている異年齢での活動は、とてもいいことです。ぜひ横割りに変えたりせずに粘り強く取り組んでください。■「僕らが言うと小学生が文句を言うから、言いたくない」という中学生例えば、私が地元の大阪で行っている「サッカープレーパーク」では、上は中学生から、下は小学校低学年の子どもも来ています。縦割りで一緒にミニゲームをすると、中学生が口をとがらせて苦情を申し立てます。「小学生がひとりで勝手にドリブルで行っちゃうから困る」「ボールをすぐに大きく蹴るから、やりたいサッカーができない」私が「小学生に自分たちから指示を出して動かせばいいじゃない?」と言っても、「僕らが言うと文句を言うから、言いたくない」と言うのです。少子化もあって、中学生、小学生の双方が、兄弟、姉妹やいとこ、親戚といった異年齢の子どもとのコミュニケーションの経験がありません。中学生には、どうやったら年下の小学生を動かせるかを考え、言い方やタイミングを工夫することができない。小学生は、お兄さんたちの言うことを聞いてサッカーをしたら、上手くなったり、いいことがあると思えないのです。経験していないからです。■年齢ミックスで練習すると上級生も確実に成長するそれぞれがもっと小さいときから私の指導を受けて育っていたら、もっと違う状況になるはずですが、一緒にサッカーをしてきていないため理解できません。「どうして小学校の低学年と一緒にやらなきゃいけないんだ?」と戸惑っている姿が見えます。例えばそんな姿を見かけたら、上級生の親御さんは心配になって「みんな同じ学年で能力が似通っている横割りのほうがいい」と思うのかもしれません。しかしながら、縦割り集団で上級生は確実に成長します。年上の子が異年齢で活動するメリットはたくさんあるのです。ここでは五つに分けてお話ししましょう。■コーチングスキルやカバーリングのスキルなどサッカーの技術も高まるまずひとつめ。上級生は、コーチングを覚えられます。「こういうとき、どこに動いたらいい?」と問いかけるコーチングができるようになります。ボールをもらいたいときは、「ほら、ワンツーやるよ」と声を出しながらパスをすればいいとわかります。二つめ。力の差が大きいと能力が高い子のほうが伸びないのではないかと思いがちですが、それは違います。足が速くて技術もある子が、足の遅い子が間に合うようなパスを出してあげたり、試合でその子のぶんもカバーしようと集中し懸命に走ったりするようになります。三つめ。サッカーのスキルも、異年齢集団で十分鍛えられます。例えば、高学年対抵学年のゲームは、高学年にペナルティをつけると白熱した戦いになります。小さなコートなら4対6、もう少し大きければ5人対8人でやるなど、上の学年の子たちに負荷をかけるといいでしょう。負荷のかかった状況で、3人に囲まれたりしてもボールをキープできたり、数的不利のなかで頭を使ってサッカーをするトレーニングになります。ペナルティは、人数以外でもつけられます。「ドリブルはダメ。パスしかできません」とか「すべてダイレクトプレーでやってください」などと厳しめな条件を付けます。技術も判断スピードも必要なので、体格やスピードに劣る下級生が相手でも「頭」が疲労します。どんなペナルティをつけるか、ルールにするかを、どんどん考えてください。何かを教え込むのではなく、そんなふうにルールや方法を工夫できるのが指導者の役目なのです。■高学年で周りに追いついてない子は成功体験を積んで自信をつけることができる四つめ。サッカーに対して、主体的に臨む姿勢が生まれます。低学年の子どもと一緒に練習する際は、いい意味で余裕があるので「自分たちがうまくなるためには、どうしたらいいのかな?」と考えてもらいます。例えば、低学年が保持しているボールを、体をぶつけて奪いに行くのではなく「パスカットでしか奪ってはいけない」という高学年ルールを自分たちで考え出すこともできます。考え出すために、指導者がヒントをあげてください。一から十まで大人が伝えるのが指導ではありません。技術や戦術を磨く方法を、高学年の子どもたち自身が生み出すこと。そういったことも、異年齢のなかで行うことで出てきやすくなります。五つめ。高学年でも能力がまだ同学年に追いつかない子どもにとっては、自分も対等以上にやれて自信がつきます。相手は年齢が下であっても、うまくできたプレーのイメージをつかんだことには変わりありません。そういった子たちは同学年の横割りだと、うまい子に遠慮したり、すぐパスをしてしまって頼ってしまう部分があるので、そういった遠慮の解消にもなります。■指導者が最初から答えを持ってなければいけないわけではない(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)サッカーのコーチングは、指導者があらかじめ答えを持ってやらなくてはいけないわけではありません。逆に答えを持たず、子どもたちの思考や活動に広がりを与えてくれる。それが、異年齢の集団での活動だと思います。こんなこともあるよね。答えはひとつじゃないよ。自分のコーチがそんな見方をしていれば、より多くの学びを子どもたちに授けられると思います。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年11月27日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、最終回となる今回のインタビューは、問題解決能力やチャレンジし続ける姿勢を身につける方法、子どもの視野を広げるために親はどうすればいいかについてお送りします。<<第三回:練習量が多い=一生懸命ではない。元レアルのサルガド氏が指摘する日本の保護者の「誤った認識」■若ければ若いほど柔軟に感覚を変えていける――世界に出たとしても誰もが必ずプロサッカー選手という夢を掴めるわけではありません。サッカーから離れたあとにグローバルな社会で生き抜く人間力が身につけられる、というのが稲若さんの考え方の一つです。稲若さん自身、若くしてアルゼンチンにサッカー留学したことがきっかけとなり、今に繋がっていると思います。「僕の場合、何も助けとなるものがなかったことが逆に良かったと思っています。最近、アフリカに3回ほど行きましたが本当に良かった。アフリカに求めるものは『何もないこと』ですが、現代の便利な世の中と比べられるからすごくいいんです。僕が若いときにアルゼンチンにサッカー留学した当時、携帯も何もなかったので、自分で一から調べないと生きていくことができませんでした。公園に行って集まってくる子どもたちに飴をあげて、聞いた言葉を家に帰って辞書で調べることを1年くらい繰り返して、それで言葉を覚えたんです。わからないことを自分でどうにかする方法を覚えたし、そういう姿勢が今の僕を作っています。これがダメならば次はこれだ、という次の次の次の選択肢まで考えられる思考になっていったのですが、僕がそうだったように、人は若ければ若いほど柔軟に感覚を変えていけると思います。海外に飛び出して行けば、頼る親もいないし、自分から人に聞かないとわからないし、聞くための言葉すらわからないから、必死に言葉を覚えるという良い循環になると思います。日本だと周りが簡単に教えてくれるので、自分で解決する力はなかなか身につきません。ちなみに、僕の会社でサッカー留学する場合は、朝起きたら子どもたちはまず部屋の掃除をします。掃除から始まり、ご飯を食べて、それから練習をする、という規律の中でしっかりと生活してもらいます。日本にいれば、朝起きてからまず掃除はしないですよね。普段とは異なる新鮮な感覚で生活ができることもサッカー留学の良いところだと思います。親がいない環境になれば、自分でやるしかありません。日本にいれば失敗すらできないようになっています。失敗する前に親が失敗を防いでしまうこともありますからね。ある程度の学年の子でも、暑かったら(子どもに)帽子をかぶらせるかどうかも親が判断してしまうのが今の日本です。この点、海外から帰国すると子どもが自分で洗濯をするとか、掃除をするとか、食器を洗うとか、そういう行動をする姿に親御さんたちは子どもの成長を感じるようです」■親の視野が広がれば、子どもの視野もひろがる――今回書かれた書籍『世界を変えてやれ!』の中には年長さんがサッカー留学した話も収録されていますが、稲若さんは年齢に関してはどう考えていますか?「子どもが海外に行きたいと思ったときがタイミングだと思います。もちろん、人それぞれタイミングは異なります。子どもが海外に行きたいと思うきっかけには、出会う人とか、出会うための環境にいるとか、そういう影響が大きいです。その年長さんのケースは、年長さんで海外留学するかどうかの最終判断は親が決めることなので、こちらもその判断を受け入れてスペインに行きましたが、特に何も問題なく終わりましたよ。その親御さんは『うちはこの子に6歳になるまで自分たちの愛情は精一杯注いだので、これからは他の人の愛情でどう育つのか見てみたいのでスペインに送ります』と初めは悩みながらも決断されていました。ほとんどの親御さんが言うのは『うちの子はまだしっかりしていないので......』『迷惑をかけるので......』ということです。そうやって子どもにブレーキをかけてしまうのですが、迷惑ではないし、わが子を心配する気持ちもわかります。ただ、これだけは覚えておいてください。そういったご家庭の場合、わが子が親のステイタスを越えることは、まず無いです。親の視野が広がれば、子どもの視野が広がります。親がチャレンジを続けるのであれば、子どもも間違いなくチャレンジを続けます。自分の行動によって子どもの将来に多大なる影響を与えると思ってください。大事なのは、子どもが真剣に悩んだ結果、自分で決めたときに親が背中を押すことができるかどうかです。それは親が決めることであり、子どもの未来を左右できることなのです」サッカーでもなんでも、失敗することで「じゃあどうすればいいか」を学ぶ機会になります。親がチャレンジする姿を見せないのに、子どもが失敗を恐れずチャレンジする力を身につけられるでしょうか。子どもの成長や自立、社会で生きていくための思考力や判断を身につけてほしいと願っているのに、わが子を心配しすぎてブレーキをかけてしまうのではなく、子ども自身が考えて決めたことを後押ししてあげることが最大のサポートなのです。<<第三回:練習量が多い=一生懸命ではない。元レアルのサルガド氏が指摘する日本の保護者の「誤った認識」稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年11月26日サカイクキャンプ独自のカリキュラム、サッカーを通じて社会を生きる力を育む「ライフスキル」プログラム前回はサカイクキャンプで身に付くライフスキルの中から「感謝の心」と「コミュニケーション力」を中心に菊池健太コーチにお話しを聞きました。いずれもピッチ上ではもちろん、学校など普段の生活でも必要な力です。具体的な言葉や方法を示すのではなく、自分で考えさせる伝え方をすることで、感謝の心とコミュニケーション力を引き出しつつ、考える力も同時に身に付けられます。(取材・文:前田陽子)サカイクキャンプでは練習中や試合のハーフタイムに子どもたちどうしで「何ができるか」「何をすればいいか」を話し合う機会がたくさんあります<<足元の技術習得より「ごめん」「ありがとう」が言える、人を気遣えることがサッカー上達につながる理由■サッカーができるのは親のおかげ。子どもたちはそう思っていますサカイクキャンプではまず「サッカーは何人でするスポーツ?」と聞きます。そして「誰がいるからサッカーができると思う?」と。すると子どもたちは「親」と口を揃えます。普段子どもたちが親に対して「サッカーをできること」についてお礼を言うことは少ないと思いますが、本当はちゃんと感謝しているのです。でも、気持ちは言葉に出して伝えなければ相手に伝わりません。サカイクキャンプのライフスキル講習では、伝えることの大切さも話しているので、キャンプから帰った時に親御さんに「ありがとう」が言える子になっているはずです。次に、サッカーをできる理由を問うと、一緒にプレーする仲間や審判の声が上がります。子どもたちは相手チームのことを敵と言いがちですが、敵ではなくサッカーをする仲間です。「相手がいないとサッカーはできないから、相手選手だよね」と話します。相手選手をリスペクトすることも感謝の心に通じます。相手選手と同時に大切なのがチームメイトです。子どもたちの中でもどうしても上手い下手で優位が付いてしまい、うまい子が全体を仕切ってしまうことがよくあります。その際には「サッカーを楽しむ権利は全員が持っている。唯一それがみんなに均等にあることでそれを奪う事は許されないことだよ」と伝えるそうです。「下手だからチームに入れないとか、Bチームだからあっち行っていろとか。少なからずまだこういう態度があるので、それは絶対にダメなことで、してはいけないことだ」ということをきちんと理解できるまで伝えると菊池コーチは教えてくれました。サカイクキャンプは、初めての子からトレセン活動の子まで誰でも参加できます。できる子に「サッカーはみんなで楽しむスポーツだから、誰かのミスをカバーしてあげることが大事。誰かのミスをつついているようでは勝つことはできないよね」と声をかけると、「よし、やろう!」と士気が高まることも多いのだとか。中には「あいつのミスじゃん、なんで俺がカバーしないといけないの」といった他責的な発言をする子もいるそうですが、「サッカーがうまい子は、このキャンプ以外の場所にもたくさんいて、その時々によっては君も"上手じゃない方"になるかもしれない。その考え方は間違っているよ」ということを言い聞かせるそうです。そして、そういった子をわざとうまいチームにいれてみたりするのだそう。そうるすことで考え方を変えてほしいし、サッカーの本質を理解してほしいと考えているからだと菊池コーチは言います。■コミュニケーションは"目的のために前向きな話をする"こと試合中に声を出してコミュニケーションを取ろうと言われても、どんな声かけがいいのか、どうしたらいいのか分からない子が多いのが現実です。「どんなコミュニケーションがあるの?」と聞くと、どうしても言葉にすることが多く出てきます。今年は新型コロナウイルスの影響で難しいですが、ハイタッチや抱き合って喜んでいるシーンなどの写真を見せて「これもコミュニケーションだよね」とコミュニケーションの方法は様々あることを伝えています。サカイクキャンプのコーチたちが考えるコミュニケーションは、目的のために前向きな話をするということ。何でもかんでも伝えていいよとなると、「おまえちゃんとやれよ」「今のボール取りに行けよ」「シュート決めろよ」など味方にダメ出ししてしまいがち。これもコミュニケーションのひとつと言えるかもしれませんが、後ろ向きでマイナスなこと。前向きな話をすると雰囲気も良くなって結果も良くなります。ですが、その際に具体的な言葉を教えることはありません。サカイクキャンプでは、試合のハーフタイムには必ずコーチたちが「どんな話をしようか」と声をかけます。負けているとマイナスな言葉が多くなるので、「うまくいかないなら逆転するためにどうすればいいだろう、何ができるかを話すといいよ」とアドバイスをすると前向きな会話が増えてくるそうです。ですが、残念なことに負けているとどうしてもあら捜しになってしまい、ダメだったところを見てしまう子が多いのだとか。子どもたちは、普段接している人が話しているように言うのでしょうね、とコーチたちは見ています。子どもたちが発する言葉を聞くと、「チームで結構厳しく言われているんだろうな」とか、周囲に前向きな言葉をかけられる子は「チームでもいい声をかけてもらっているんだな」というのはわかるものだそうです。子どもは体験からしか言葉が出ないので、周囲の会話の質が自然と身に付いてしまいます。親御さんたちにもいつもどんな言葉をかけているのかを、振り返ってもらえるといいかもしれません。キャンプでは「伝える」ことを大事にしていますが、それは声に出すことだけではありません。時に目線やしぐさ、アイコンタクトでのコミュニケーションをとることもあります。コーチから子どもたちへ親指を立てて「今のプレーはグッドだよ」とジェスチャーも。どの子もグッドサインを出してもらえると嬉しくて笑顔になるものです。高学年になるとコーチがしていることをマネしてくれるなど、コミュニケーションのレパートリーも増えていくことも多いそうです。■環境ができれば、子どもたちは自然とコミュニケーションをとるようになるキャンプで泊まる宿舎は、他の利用者も泊っています。施設内でほかの利用者に出会った際や施設の方へ「おはようございます」「こんにちは」など、コーチたちが積極的にコミュニケーションをとるところを見せることで、子どもたちも自然とあいさつができるようになるそうです。感謝の心にも通じますが、宿舎の人へ「ありがとう」が言えるのはとても喜ばしい光景です。うまくいかない事に対して前向きな意見を言うなど、自分のチームの戻ってからも発言できることを期待しているとコーチは言います。サカイクキャンプに来た時は引っ込み思案でもじもじしている子もたくさんいますが、3日間で確実に変わるそうです。子ども同士が慣れてくるというのもありますが、初日と最終日では全く違う表情、態度になると言います。最終日はずっと一緒にやっていたチームのような雰囲気になり、住所を交換して年賀状のやり取りをしたりする子たちもいるそうです。コミュニケーションは無理やり取らせるものではありません。どんなことをしたらいいかというヒントを与えてあげることが大事だと菊池コーチは言います。大人が環境を整えてあげれば子どもたちは自然とコミュニケーションが取れます。ですので、子どもがいろんな人とお話するようにあれこれ口をだしたり、演出してみたりする必要はありません。大人はあまり介入しないことが一番だとサカイクキャンプでは考えています。<<足元の技術習得より「ごめん」「ありがとう」が言える、人を気遣えることがサッカー上達につながる理由
2020年11月24日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、第3回目のインタビューは、スペインの親から学ぶ、子どものサポートに必要な距離についてお送りします。<<第二回:レアル中井選手、ビジャレアル久保選手のように若くして海外へ渡るメリット、デメリットとは■家に帰ってからもサッカーの話はしない――子どもの夢を叶えるためにサポーター役となる親ができることはどんなことでしょうか?「まず、これは触れておかないといけないのですが、海外と比べたとき、日本の親は指導者と距離があります。あまりグイグイ聞くことはありません。なぜ聞かないかといえば、自分の子どもを試合に出してもらえなくなる怖さを感じているからです。海外のクラブはビッグクラブでも小さなクラブでも、親が『うちの子は何が足りないのですか?』などと監督にガンガン聞きにいきます。スペイン人はLINEのグループに監督も入っているほどで、そこで親は言いたい放題です。ただ、指導者側も親に何を言われようと何でも答えられるし、話ができます。『どうして試合に出られないのか?』と聞かれれば論理的に理由を説明できます。論理的に説明できないと、親を納得させることができないことが多い。だから指導者と親の距離が遠くなってしまうのだと思います」――欧州では親が子どもにサッカーを教えることを明確に規制しているクラブもあると聞きます。その点は指導者と親の関係についてしっかり線引きをしているのですね。「レアル・マドリードにも『親は親でありなさい』という考え方があります。親が子どもを指導することの何が問題かと言えば、試合中に子どもが親の顔を見るようになってしまうのです。すると指導者の話を聞かなくなるし、リスペクトもなくなる。それは子どもにとってもチームにとっても良いことではありません。スペイン人は自分の子どもに対してサッカーのことはあれこれ言いません」――スペインの親御さんたちは試合中も何も言いませんか?「もちろん、審判にはすごく文句を言いますよ(笑)。あとは『がんばれ!』とか『行けるぞ!』とか、応援者としての声は当然ありますが、監督がいる前で、親が我が子に『ここをこうしろ!』などと言うことはありません。家に帰ってからもサッカーの話はしないという感覚は多くの人たちが持っています。これが日本の場合、親は指導者には指摘することはなくとも、自分の息子にはあれこれ言ってしまいます。場合によっては、その子のお父さんが監督をやっているチームもあるし、公私混同になってしまうと子どもはきついです。海外ではそういうケースはほぼありません」■日本の親は真面目ですごく一生懸命――例えば、レアル・マドリードのミッチェル・サルガドは日本に何度も来日してサッカークリニックの指導などに当たっていますが、日本の親についてどう言っていますか?「日本の親は真面目ですごく一生懸命。でも、『一生懸命だからこそ教え過ぎてしまう、これが日本だ』と言っています。練習に置き換えれば、それは練習量の多さに変わり、量をこなせば努力は報われると信じている。しかし、サルガドも海外の指導者たちも『一生懸命とはそういうものではない』と言います。本来あるべきは『一生懸命だからこそ何かを言うのを我慢しましょう』という姿勢です。子どもが親にあれこれ言われればプレッシャーに感じるし、伸びるものも伸びません」――では、親としてのベストなサポートとは何でしょう?「シンプルですが、親のやるべきことをしっかりやる、ということです。しっかりご飯を作り、しっかり食べさせて、練習に連れていく。そしてグラウンド内のことは監督やコーチに任せる。子どもが悩んでいるときに、親が子どもの変わりに指導者に聞いてあげるのはいいと思いますが、日本の場合、多くは指導者に聞く前に悩んだままチームを辞めてしまうケースが多い。それは違うのではないでしょうか。それも指導者と親の距離が遠いことが原因にあるようには思いますが」――サッカーで留学することについても伺いたいのですが、子どもが留学したいと言い出したときに親はどうサポートすべきでしょうか。「子どもが何かのきっかけで『海外に行きたい』となったときに、親の反応は二つです。驚いてしまうか、行かせてあげようと思うのか。驚くというのは親が心の準備ができていない証拠です。そういう親はだいたい『まだ早い』などと言って(子どもを)否定しがちです。早いなどと言っているうちに限りのある留学の枠は埋まってしまい、チャンスを逃します。一方、海外経験がある親は心の準備ができているのですんなり子どもの背中が押せます。つまり、子どもどうこうよりも親の問題の方が多いということです。頭ごなしに『まだ早い』と否定されてしまった子どもは、ひとまず我慢して、やがて諦めて、結局はやる気がなくなってしまうものです」――サッカー留学について、親として必ず押さえておくべき情報などアドバイスがあればお願いします。「サッカー留学には適正価格があり、国によって異なりますが、相場は2か月で50万円ほどでしょうか。べらぼうに高い価格の会社もありますし、逆に価格とクオリティが合っていると感じれば自ずと人は集まります。その見極めはしっかりして下さい。また、注意すべきは、留学に行く国を狭めないことです。欧州に行きたい、南米に行きたい、という姿勢に固執し過ぎることなく、もし叶わなかったときでも別の国を選択すれば留学を経験するチャンスはあるし、物事を大きな面で捉えてチャンスを掴まえることが重要だと思います。僕は今までいろんな国に行きましたが、どの国に行っても大きな刺激があることは間違いありません」子どものためと思ってやっていることがプレッシャーになって、伸びるものも伸びなかったら逆効果ですよね。また、対話できれば解決の糸口が見つかるかもしれないのに、悩みを抱えたまま辞めてしまい、結果としてより悪い状態になることもあります。ピッチ再度ではうるさく喚くけれど、指導者としっかり対話ができ、家で子どもを追い詰めないスペインの保護者の姿勢は親のサポートのあり方として参考になる部分があるのではないでしょうか。<<第一回:世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年11月20日部活かクラブチームか、本人が悩んで決めた進路。学業との両立、努力を続けることを約束して進学したのに、テストは平均点よりずっと下、内申点は「2」。サッカーでもチーム練習以外ではやる気が感じられない。大事なことを伝えようとすると機嫌が悪くなり怒鳴って暴れる。シングルマザーで下の子はまだ6歳なのに、生活が長男中心に回っているのに意欲が感じられず、サポートがばかばかしいと思えてくる......。とのご相談をいただきました。子どもが思春期、反抗期を迎えた時どうすればいいのか、漠然と不安に思っている保護者も多いのでは?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<怒りっぽくチームで浮いてしまう息子を何とかしたい問題<サッカーママからのご相談>子どもは中学生なのですが相談させてください。サッカー中学年代を部活動で過ごすのかクラブチームで過ごすのか、本人が悩み考え、クラブチームで高校サッカー強豪校を目指すと決めました。学業とサッカーの両立が私との約束、努力を怠らないことがチームの代表との約束です。ですが、蓋を開けてみたらテストの点数は平均よりはるかに下で内申点は『2』。サッカーも、チームの練習の時以外は全く意欲が感じられません。大事なことを伝えようと私が口を開けば、すぐに機嫌が悪くなり怒鳴って暴れます。ゆっくり休む・栄養を取る等の心掛けもゼロ。朝も起きれず、夜練の用意もギリギリまでやらない。とにかく様々な事にやる気が感じられません。私はシングルマザーで、まだ6歳の弟もいます。生活のあらゆる事が長男のサッカーを中心に回っており、家族の協力や我慢の元に成り立っているこの生活。協力や応援していること自体がバカバカしいとさえ思えてくる今日この頃です。思春期・反抗期を迎えた13歳の男の子にどう接したら良いのでしょうか?<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。シングルマザーで6歳と13歳の兄弟を育てているお母さんに頭が下がります。日々、大変なことがたくさんあるでしょう。■思春期は「四六時中誰かとけんかしたい状態」私のママ友もシングルマザーがたくさんいます。私自身はシングルではないけれど、新聞記者の夫は土日も不在のため子どもが小さいときはシングルのママとその子どもたちとよく遊んでいました。土日は他のご家庭はお父さんがいるからです。そんなこともあって、他に何かの取材でお会いした方を含めると多くのシングルマザーと知り合っています。みなさん時間がないため、子どもがきちんとやっているか気になります。忙しいので「あ、そういえば、テストの点はどうなったのかな?」とか「サッカーは?」と、時々思い出したように子どもに目が向きがちです。「面」ではなく「点」で見ているため、どうしてもマイナス面ばかり抽出してしまいがちです。そして、このことは兄弟であれば第一子に対して顕著です。仕事も育児も大変なので、お兄ちゃん(お姉ちゃん)、ちゃんとやってよ、と依存する感覚が少なからずあるように思います。これは共働きでも同じだと感じます。「しっかりやってほしい。お願いだから」という感覚は、自分の不安を解消したい、安心したいという思いではないでしょうか。それゆえに結果を求め、指示命令が多くなります。よって、最も重要な「気持ちを聴く機会」を逸してしまいます。特にご長男さんは13歳なので中学1~2年生でしょうか。お母さんがおっしゃるように「思春期・反抗期」です。この時期は急速な体格の変化もあってホルモンバランスが崩れます。以前、小児心理医の先生に「女の子であれば一年中生理の状態、男の子は四六時中誰かとけんかしたい状態」と聞き、納得したことがあります。■反抗できるということは、親を信頼している証拠そこで、私から三つアドバイスをします。ひとつめは、お母さん自身が自分に自信を持つこと。上記の話をされた先生は、思春期の子どもに反抗されると悩んで受診する親たちに向かって「よかったねえ。おめでとう」と祝福していました。なぜなら、親に対して自分の感情丸出しで反抗できるということは、親を信頼しているからです。どんな態度を見せても、親は自分を嫌わない、という自信がある。それは息子さんにとって、家庭が安全・安心な場所であるということ。それまでの子育てが悪くはなかった証だと、その先生はおっしゃっていました。つまり、私もよくセミナーで伝えていますが、「くそばばあ!」などとわが子に言われたら、子育ては成功。「ほほう、来たね、来たね、思春期おいでなすったね」と、どんと構えてください。お母さんの子育てが悪かったから荒れているのではないのですから。例えば、夏が過ぎるころ台風が訪れますが、豪雨強風が襲来することで、海水がかき混ぜられサンゴが生きていくのに適切な海中環境になるそうです。それと同じように、息子さんもプンプンすることでストレスを発散しているのです。■やきもきするかもしれないが、無駄に世話を焼かないことふたつめ。上記のように解釈したのち、心得てほしいのは「無駄に世話を焼かない」ということです。前述したように、思春期は人生で初めて自己認知、自己覚醒する時期です。大人から見れば些細なことが気になってきます。そのように、子どものほうが大人に近づき変化をしているのに、親のほうがいつまでも小学生のときと同じ対応をしていれば歪(ひずみ)がうまれるのは当然です。したがって、息子さんにかかわるあれこれを注視しないことが肝要です。内申点「2」も、練習のとき以外で意欲が感じられないことも、朝起きられないことも、練習の用意をギリギリまでやらないことも、見て見ぬふりをしてください。■大人の説教を素直に聞ける時期ではない。親は「言う」より「聴く」を意識して三つめは「伝えなければ(言わなければ)よりも、聴かなければ」を心がけてください。ご相談文に「大事なことを伝えようと私が口を開けば、すぐに機嫌が悪くなり怒鳴って暴れます」とあります。この時期の子どもたちは、大人のお説教を素直に聴ける精神状態ではありません。だって、四六時中誰かとけんかしてやっぞコノヤロー!と構えている(大袈裟ですが)状態なのです。無駄なことはやめたほうがいいでしょう。それに、お母さんのおっしゃる「大事なこと」を、すでに息子さんはわかっています。強豪校に行くのなら生活管理をきちんとしなくてはいけないこと、内申点が2のままではいくらサッカーがうまくても、推薦の範囲内の点数でなかったりすること。受験できる学校の範囲も狭まること。多少のずれや表現の違いはあるかと思いますが、お母さんが「ちゃんとしてほしい」と望んでいることは、息子さんもわかっています。何より、自分自身「ちゃんとしたい」と思っているはずです。でも、何かで心が乱れたり、サッカーや勉強がが上手くいかなかったりすれば、落ち込んだり、やる気をなくしたり、ゲームや友達とのおしゃべりに逃げたりします。前述したように、思春期は自分を客観視する最初の時代です。「ああ、おれって駄目な奴だ」「大してサッカー上手くないじゃん」とか「勉強もダメじゃん」と自分と向き合っています。大人でもダメな自分と向き合うのって怖くないですか?大人になっても向き合えない人、お母さんの周りにもいますよね?息子さんはそこに初めて直面している。よって不安定になるのは無理ありません。■ニコニコからプンプン、突然機嫌が変わる時期に親はどうすればいいか(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)わが家の娘が中学2年生の頃、私たち親は彼女を「いきなりプンプン」と陰で呼んでいました。ニコニコ笑っていたかと思うと、突然機嫌が悪くなるのです。ある日、夫、娘、私と3人で出かけたとき、夫が娘に話しかけても返事をせず、何回目かに振り向いて「うるさいっ!」と怒りました。私たちは(いきなりプンプン、出たね)と目くばせしながら知らん顔して歩いていると、娘は道端で立ち止まりシクシク泣き始めました。「自分でもわかってるの。でも、そうなっちゃうの。そういう自分が大嫌いなの」私は彼女の肩を抱き寄せ「大丈夫だよ。いま思春期だから仕方ないんだよ。ママたちはどんな○○でも大好きだよ」と話しました。息子さんも自分がどうするべきかわかっていいます。だから、ここは大人であるお母さんのほうが豪雨強風を受け止めてあげてください。去る子は追わず、来る子は拒まず。「いつでも話を聴くよ」ということのみ伝えたら、あとは一緒にプンプンしていていい。子どものほうから何か言ってきたときは話を聴きましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年11月19日サカイクキャンプ独自のカリキュラム、サッカーを通じて社会を生きる力を育む「ライフスキル」のプログラムでは、子どもたちが生きていく中で必要なスキルとされる「考える力」「リーダーシップ」「感謝の心」「チャレンジ」「コミュニケーション」の5つの力をサッカーをしながら学べます。親御さんたちもライフスキルの概念に賛同してご参加いただいている方も多いのですが、では具体的にライフスキルが高まるとサッカーにどう影響するのか、まではいまいちよくわからない、という方もまだまだ多い様子です。そこで今回は、子どもたちを指導しているサカイクキャンプの菊池健太コーチに「ライフスキル」とはどういうものなのか、子どもたちがどう成長できるのかを聞きました。(取材・文:前田陽子)サカイクキャンプでコーチの話に耳を傾ける子どもたち■ピッチ上で仲間をフォローできる人が求められている以前は足元の技術など個人技を磨くことが推奨されましたが、今はチームにいかに貢献できるか、チームのためにプレイできるかが求められる時代。そのためには、一緒にプレイする仲間を知り、自分のことを仲間にわかってもらう必要があります。そこで必要になるのがライフスキルです。ピッチ内外で考え、サッカーができることに感謝し、いろいろなことにチャレンジして、コミュニケーションを取り、リーダーシップでチームを導く。技術の習得に比べて、パッと見て変化がわかることではありませんが、ここを磨くことで技術も向上していくのです。JFAでも"判断も含めてテクニック"と言っています。育成年代の選手たちに求めるスキルとして「仲間をフォローすることができる選手」を高く評価するとも言っています。元日本代表の内田篤人さんも、その判断力の早さ、仲間との連携意識やプレーの正確性に定評がありました。サカイクキャンプではこれからのサッカーや人生に必要なライフスキルを知り、体感することができます。■サッカーというスポーツの本質を知る「チームプレイであるサッカーは、勝つことを目的に仲間同士が互いをフォローするもので、それがサッカーというスポーツでフォローし合うことが当たり前であることを子どもたちに伝えています」と菊池コーチ。すると自然とミスをフォローするプレイが増えていきます。自分のタイミングでボールを蹴っていた子が、コミュニケーションを知ると仲間を思ったパスが出せるようになります。俺が活躍すればいいという、独りよがりのプレイが減っていくのです。サッカーはミスのスポーツであり、助け合いが必須です。ミスをしたら「ごめん」と謝ること、味方がフォローしてくれたら「ありがとう」とお礼を言えること。その瞬間に口にすることは難しくても、普段からごめんなさい、ありがとうが言える習慣が身に付いている子は、ピッチの中でも助けてもらいやすかったりして、結果として試合が上手く回るのです。親御さんたちはどうしても個人技のところに注目してしまい、何点取った、何人抜いたで褒めたり残念に思ったりしますが、子どもたちの中には目立たないけれど丁寧なパスが出せたりする子もいて、そんな子はとても技術が高いとコーチたちは評価します。菊池コーチは「足元の技術は後からついてきます。ボールを扱う技術は大事ですが、丁寧さや気遣いができる選手はすごいんです」とも。一概に技術と言っても個人のものとチームの中でのものの2種類があります。もちろん、どちらも伸びるといいのですが、まずはサッカーの本質であるチームプレイを学ぶことが小学生年代には大切だとサカイクでは考えています。■キャンプに参加することが、チャレンジの第一歩キャンプは初めての場所、初めての友達、初めてのコーチ。泊りで行くのは子どもにとってすごく大きなチャレンジです。これは大人でもなかなか難しいこと。まずはキャンプに行こうと決断した子どもの勇気を褒めてあげましょう。その上で、キャンプへの持ち物は自分で何が必要かを考えて判断させて持たせてください。サカイクキャンプでは支度から子どもに任せてほしいという思いもあり、細かく持ち物を提示していません。3日間必要なものを自分で考えてほしいのです。寒い時期ならピステ持ってくる子もいますし、洗濯するから少しでいいという子もいます。そういう様子を見ていると親御さんは手をかけずにやってくれているなと思います。反面、「一日目の上はコレ、下はコレ」とセットしたものを持ってくる子もいます。親御さんなりの子どもへのサポートかもしれませんが、そういった子は柔軟な発想ができず、2日目に雨が降ったりして、翌日分(キャンプの最終日)を着替えに使うと、最終日の朝に「もう着る服がない」と大騒ぎすることもあるのだとか。子どもたちが準備した上での忘れ物はコーチたちは想定済みです。シャンプーや洗剤などの細かなものから、サッカーに必要なボールなどもサカイクキャンプでも準備しているので、忘れ物をしても安心してください。もちろん、忘れ物をしない方が良いのですが、忘れてしまったときにどうするかが大事で、その過程をコーチたちはどう解決していくかを見守っています。レガースやソックスなど借りれるものならチームメイトに「貸して」と言えること、チームメイトが忘れ物をして困っていたら「貸してあげようか」と提案できること、そういったお互い助け合って協力することが大事なのです。そのようなことが自然にできるようになると、例えばボールを奪われそうな時など、ピンチの際に仲間にヘルプを求めること、味方がピンチの時は自分が助けに行くことなど、サッカーの動きにもつながっていきます。ピッチの外での行動が変わるとピッチの中の行動も変わります。ライフスキルが身に付くと、技術も伸びてくるのです。■キャンプに来た子どもたちは、必ず成長しますサカイクキャンプに参加する子には、すべてにおいて、自分で考えて行動できる子になって欲しいとコーチたちは考えています。サッカーもコーチや周り仲間に何かを言われてプレイするのではなく、自分の判断でプレイを選択できる子になってほしい。いずれ社会に出てからも自分の意見をしっかり持って、自分で考えて判断ができる、そんな子になってくれたらと思っています。そのために小学生の間はサッカーは自由で楽しいと感じてもらいたい。中学高校に行けば自然とサッカーも厳しくなり、社会人になれば仕事もしなくてはなりません。なので、根底に楽しさ、仲間と協力するすばらしさを蓄えてほしいと考え、コーチたちは子どもたちと接しています。
2020年11月17日子どもたちの「考える力」をサポートし、サッカーがうまくなるためにサカイクが制作した「サッカーノート」。質問に答えて書き進めていくことで、自分の考えを言葉にできたり、プレーのアイデアが湧いてくるのでおすすめです。そこで今回は、サカイクサッカーノートを熟知している、サカイクキャンプのコーチ陣に「このように活用すれば効果的」という使い方を教えてもらいました。ぜひ参考にしてみてください。(取材・文:鈴木智之)<<サカイクサッカーノートに込められた思い、たくさんかける工夫など制作秘話■書くことが苦手な子もスラスラ書けるサッカーノート菊池コーチはサカイクサッカーノートを「質問に答えることで、書くことがスラスラ出てくるノート」と表現します。「各ページに質問があるので、それに沿って自分で書き進められるノートです。自分の思ったことを素直に書くのが、一番いいと思います」サッカーノートを書き慣れていない場合、「何を書けばいいかわからない」という声を耳にします。そんなお子さんに対し、柏瀬コーチは次のようにアドバイスを送ります。「コーチやお父さん、お母さんにノートを見られることを前提に書くのではなく、自分はどう思ったかを、正直に書いていくといいと思います。ノートの中にある質問も、答えやすく、書きやすいものなので、できるところから始めてみましょう」菊池コーチは「サッカーノートはテストではないので、良い、悪いはありません」と話し、次のように続けます。「思ったことを素直に書く中で、1日、2日と書き進めると、内容が少しずつ具体的になり、変化が現れます。それが、考える力が高まっている証です。サカイクキャンプでも、初日と3日目のノートを比べると、見違えるようにたくさん書けるようになった子もいます」サカイクサッカーノートには、書き方の説明も記してあるので、何を書けばいいかわからなくなった場合、前のページに戻って「こう書けばいいんだ」と参考にすることができます。白紙のノートだと、何を書けばいいかわからず、戸惑ってしまうケースも見られますが、質問つきのサカイクサッカーノートは、その心配もありません。記入例※画像をクリックして拡大できます【詳細】子どもたちが自ら進んで書き出す、たくさん書けるようになるサカイクサッカーノートの表紙デザインなど■失敗の反省でなく、改善点などポジティブなことを書こうまた、サカイクサッカーノートは、開発者のひとり「しつもんメンタルトレーニング」の藤代圭一さんの「ポジティブな気持ちで、前向きに、サッカーも私生活もがんばってほしい」という想いが込められています。それも踏まえて菊池コーチは子どもたちには、「良かったことをたくさん書こう」と言っているそうです。「人間って、良かったことより、悪かったことの方が記憶に残りやすいですよね。『なんであの場面でシュートを外してしまったんだろう』とか、『自分のパスミスが失点につながった』とか。ネガティブなことを書き続けると、気持ちも下向きになってしまいます。なので、まずはできたことやコーチに褒められたことを書いてみる。その次に『こうすればできそうだぞ』など、改善点を書くといいと思います」サカイクサッカーノートには、イラストでプレーを振り返る箇所があります。サカイクキャンプのコーチ陣が「自由に書いてみよう」と言うと、「ドリブルでカットインしてシュートを打てた」「サイドでスルーパスを受けて、チャンスになった」など、子どもたちが楽しんでイラストを描いていくそうです。絵で描くことは、イメージトレーニングにもなるのでおすすめです。子どもたちが、楽しんで書き進めることができるサカイクサッカーノート。コーチや保護者の学びにも役立つようです。菊池コーチは「子どもたちが書いたノートを読むことで、自分が伝えたことが、どの程度浸透しているのか、理解しているのかという目安にもなります」と話します。「指導者としては、『自分が言ったことが、これぐらい伝わっているんだな』と確認の作業にも使うことができます。サカイクキャンプで『チャレンジ&カバー』を練習をしたのですが、子どもたちが書いたノートを見ながら『ここは伝わっているな』『ここは理解が不足しているな。使え方を変えてみよう』など自分の指導を振り返り、トレーニングメニューや伝え方を変更したこともありました」■サッカーノートを通じて会話だけじゃ伝わらない子どもの考えが分かる柏瀬コーチは「ノートを通じて、親子間でのコミュニケーションが円滑になるのも良いですよね」と笑顔を見せます。「試合中や試合後に、自分の子に対して厳しく言ってしまうこともあると思います。そこで、試合直後は厳しく言ってしまったけど、ノートには前向きな言葉を書いてあげたりすると、お子さんも親御さんの気持ちをわかってくれるのではないかと思います」柏瀬コーチの話を聞きながら、菊池コーチは「親子間のコミュニケーションに、ノートはすごく役立っています」と実体験を語ります。「ノートを見ることで、子どもがどんな一日を過ごしたのかを知ることができます。『今日のサッカー、どうだった?』と訊いても『普通』とか『勝ったよ』とか、素っ気ないことも多いのですが(笑)、ノートを見ると、どんなことがあって、どんなことを考えていたのかもわかるので、読むのが楽しみです」サカイクサッカーノートは改良を重ね、ひと足先にサカイクキャンプで導入しました。質問形式にすることで考えやすくなり、書く量も増えました。また、書き続けることで「思考力がついた」「文章の組み立てができるようになってきた」という声も聞こえてきます。「今まで、サッカーノートに何を書いていいかわからなかった子には、すごく書きやすいノートだと思います」(菊池コーチ)「ノートを書いていたけど止めてしまった子も、改めて『こうやって書けばよかったんだ!』とわかりますし、書こうという気になるノートだと思います」(柏瀬コーチ)何を書けばいいかわからなかった子達が書けるようになり、思考力アップの後押しをしてくれるサカイクサッカーノート。たくさんの子どもや保護者、コーチから好評のノートを、ぜひ試してみてください!【詳細】子どもたちが自ら進んで書き出す、たくさん書けるようになるサカイクサッカーノートの表紙デザインなど
2020年11月11日このたびサカイクでは、これまでよりさらに読者の皆様に寄り添ったコンテンツを提供するため、リアルな読者の声を聞く場を設けました。今回は読者の生の声を聞く『オンライン座談会』を開催しました。参加者のみなさんは、お子さんのサッカーについて様々な悩みをお持ちで、サカイクのコーチ陣が質問やお悩みに回答させてもらいました。ここでは、その一部を紹介します。「これは私と同じ悩みだな」「こんな考え方もあるんだな」など何かを感じて、少しでもお役に立てたらうれしいです。(構成、文:鈴木智之)サカイクコーチが読者のご相談に回答しました■「戦力外通告」受けているチームから移籍した方が良いの?【お父さんからの質問】(小3、街クラブ所属)息子は小学3年生で、来年度に向けて、チームの選手コースを目指しています。現状は、チームの選抜にギリギリ選ばれたり、外れたりする状況です。本人は4年生になっても、そのチームで友人と一緒にサッカーをしたいと言っていますが、コーチからは「戦力として見ていない」と言われています。また、コーチにびびって気軽に話せないことがあり、コーチとの関係性を築けていないようです。親としては、その状況で来年も同じチームに行かせるかどうか悩んでいます。コーチに厳しめに見て貰えているのはありがたいことなのですが、ちょっとしたことで交代を命じられたり、先発からベンチに変更させられることがあります。その状況下でサッカーを続けて、本当に楽しめているのかな? と思うことがあります。他のチームを探すべきでしょうか?【サカイクコーチの回答】私の子どもも似た境遇だったので、お気持ちはすごくわかります。私の子は小学校低学年のときにスクールでサッカーを始めて、3年生のときに選手コースに選ばれました。最初ははりきっていたのですが、次第に「行きたくない」「足が痛い」と言い出すようになりました。よくよく聞いてみると、コーチにプレーのダメ出しをされることが多く、プレッシャーからサッカーを楽しめなくなっていたのです。私はそこで「もしクラブを辞めたかったら、辞めてもいいよ」と言いました。親としては、子どもがいきいきと楽しんでサッカーをすることが、何よりも大切だと感じたからです。ただし、「クラブを辞めさせることが、はたして正解なのだろうか?」と、たくさん悩みました。そこで思ったのが、「小学生のときに、プレッシャーを感じながらサッカーをすることの是非」です。サッカーを続けるのであれば、中学、高校とカテゴリーが上がるにつれて、嫌でもプレッシャーはついて回ります。だからこそ、何も小学生の時から、厳しい環境でサッカーをしなくてもいいのではないかと思ったのです。最終的には子どもの意見を尊重し、クラブを辞めることになりました。そのことをコーチに伝えると「逃げるのか?」と言われたり、周りの保護者からは「一緒にやろう」と言われましたが、サッカーが嫌いになることが一番良くないことだと思ったので、そのクラブを辞めて、別のクラブを探して入りました。その甲斐があり、いまでも楽しくサッカーをしています。相談者さんは、まずお子さんの気持ちがどうなのかを聞いてあげてほしいと思います。試合に出られなくても、本人が楽しくできていれば、まだ3年生なのでチームを変える必要はないと思います。お子さんの将来、5年後、10年後のことを考えて決断してみてください。■ワンマンで傲慢な指導者のもと、実戦経験を積めないのを何とかしたい【お父さんからの質問】(小3、スポーツ少年団所属)小学3年生の息子が、40年近く続いている少年団に通っています。クラブの代表がかなりのワンマンで、人の言うことを聞きません。昔から傲慢だったようで、他のチームから敬遠されています。そのため、練習試合や招待試合などのお誘いが少なく、試合の機会が限定されています。大会などで知り合った、他チームのコーチから試合を申し込まれることもあるのですが、その旨を代表に伝えても「あそことはやらない!」など一蹴されてしまいます。そのため、実戦経験が乏しい状況です。息子の学年の子たちはみんな意識が高く、保護者も含めていいメンバーだと思っているので、チームを移るのは最終手段だと思っています。子ども自身は楽しくやっているのですが、どうすればいいでしょうか?【サカイクコーチの回答】指導者と保護者の意見が食い違うことは、よくあるケースです。保護者同士の関係性は良さそうなので、子どものために何ができるかを話し合いながら、根気強く、積極的に意見を交換し合うのが、子どもたちのためになると思います。そこでポイントなのが「子どもたちのために」という視点から、指導者に働きかけることです。その際に、言い方や伝え方には、とくに気を配ると良いと思います。ベテラン指導者は保護者に意見されると、自分がやってきたこと全体を否定されていると感じ、感情的になってしまうことがあります。そうではないことをしっかりと伝えて、対話を続けていってみてください。大変だとは思いますが、いまこそ保護者間のチームワークを発揮するときです。■子どもの積極性を引き出す声かけのポイントは「未来の話」【お父さんからの質問】(小3、スポーツ少年団所属)小3の息子は聞き分けが良い一方、親としてはもう少し、積極性がほしいと思っています。その辺りのことを私が指摘すると、すねてしまいます。うまく言葉をかけてあげたいと思いつつ、3年生は自我が出てくるので子どもになんて声をかければいいか、距離感に悩んでいます。【サカイクコーチの回答】お気持ちはお察ししますが、なるべく子どもにあれこれ言わないことです。まずはそこが出発点だと思います。そのうえで、どうしても言いたいことがあるのであれば、試合後に反省会をするのではなく、「次の試合で、どう頑張るか」について話してみてください。良くなかったプレーは、お子さん自身が一番よくわかっています。それについて、お父さん、お母さんがあれこれ言っても「わかってるよ、うるさいなぁ」となってしまいます。なので、できなかったことに対して言うのではなく、「今度の試合はどんなプレーをする?」「どんな気持ちでプレーしたらいいかな?」など、未来の話をしてみましょう。そうすると「3点取る」とか「守備を頑張る」など、子どもは話してくれると思いますよ。■勝ちにこだわる指導になっていじめを受けた。この状態から抜け出すには?【お母さんからの質問】(小3、スポーツ少年団所属)小学3年生長男のことです。赤ちゃんの頃から人一倍敏感で、恐いことや、痛いことが嫌いです。保育園の友達がたくさん入るからと、1年生からサッカークラブに入ったのですが、親から見ると、サッカーが向いているとは思えず、夢中になっているとは言い難い面があります。そのため、上達も遅いです。でも本人は友達とワイワイやっているのが楽しく、友達と遊びたいからサッカーをやっているという状態です。それでも体力はついてきているし、友達と一緒に過ごせて、楽しそうにしていました。しかし、3年生になるとレベル別でチームを分けることになり、お父さんコーチ達がやりたかった、勝ちにこだわるサッカーが始まってからは、練習や試合中に怒鳴られる事が多くなり、チームメイトにも責められるようになりました。ついには、一緒に朝練をしている別のチームの子からいじめを受けました。その時に「この状況から抜け出すには、みんなから離れるか、サッカーが上手くなるしかないんじゃない?」という話をしたら、「みんなと一緒にいたいしサッカーもやめたくない」とのこと。それならば、もう少し練習しようかとなり、朝10~20分程度、一緒に練習をする事になりました。長くなりましたが、うちのような子でもサッカーで変われたケースありますか?また、上達するための練習メニューを知りたいです。【サカイクコーチの回答】サカイクには「親子でできる練習メニュー」がたくさん掲載されているので、ぜひそちらを参考にしてみてください。ただ、ひとつ心に留めておいてほしいのが、「お子さんの気持ちはどうなっているか?」です。ちょうどいま、成長のための根っこを生やしている段階だとしたら、必要以上に水を与えてしまうと腐ってしまうので、保護者のペースで水をあげないようにしましょう。「この子はどういう風に成長していくんだろう」と楽しみに、長い目で見ると良いと思います。突然、試合に負けたことで練習を始めたり 「上手くなりたい!」という気持ちが芽生えることがあるので、その瞬間を見逃さず、大事にしてあげてほしいと思います。<サカイク3分動画トレーニング>「リフティングが苦手」という悩みを改善するトレーニング■「速いだけだな」など傷つく事ばかり言うコーチ【お母さんからの質問】(小4、クラブチーム所属)コーチの声かけがひどいんです。「このやろう、何やってんだ」なんて当たり前。息子は足がすごく早いのでチームで一軍というかトップにいますが、指導者に「お前は早いだけで何もできない」「走ることしかできないんだろう」など、しょっちゅう心ないことを言われるんです。ちょっと体調を崩したら「小さいヤツだな」など、子どものメンタルを傷つけることが多いコーチで。チームは足技を重視していて、技ができなかったり、リフティングも既定の回数ができないと練習に参加させてもらえません。全国を目指すチームなので求める水準が高いのは理解していますが、コーチの指示通りに動かないと次の試合に出してもらえなかったりするので、いつも委縮して思い切りプレーできず伸び悩んでいます。そんなことが日常茶飯事なので、楽しくプレーできていない。折れそうな心を親がどう支えていけばいいのでしょうか。【サカイクコーチからの回答】正直リフティングは時間と努力でみんなできるようになります。サッカーという競技はどうしても数値で表せない要素が多いので、評価ポイントの一つとしてリフティングを重視するチームもあると思うのですが、今現在それほどリフティングができなくても大丈夫です。ボール遊びとしてはリフティングは良いのですが、クラブの規定などを設けることによって苦にならないと良いですね。回数を気にするのでなく、遊びとして楽しくやれれば良いです。私が教えているスクールの生徒たちもそんなにたくさんリフティングできませんよ。10歳ぐらいからゴールデンエイジに突入するので、技術や技の習得はこれから追いついてきます。今は楽しい気持ちをもたせてあげることを優先してください。お子さんにとっては、親御さんが一番の味方でファンであることが大事だと思います。試合後に「どうだった?」「こうしたほうがよかったんじゃない?」など反省会を始めてしまうと、子どもの逃げ場もなくなるので、先ほど別の質問で回答したように「未来の話」をするとよいですね。いかがでしょうか。今回の「オンライン座談会」は、当初の予定時間をオーバーするほど、たくさんのトピックが寄せられました。参加者のみなさんは、お悩みをサカイクキャンプコーチに話すことで、心が軽くなったり、改善のヒントを得ることができたようでした。今後もこのような場を設けていく予定ですので、「私もこんな相談がしたい」「話を聞いてほしい」という方がいらっしゃいましたら、ご参加をお待ちしています。
2020年11月10日元日本代表のキャプテン長谷部誠選手の出身校、藤枝東高校は、高いレベルで勉強とサッカーを両立している学校としても知られています。県内トップクラスの進学校がどのようにして文武両道を行っているのか、同校出身の小林公平監督にお話を伺いました。選手自身が映像を編集してプレー分析も行うなど、自分たちで課題改善を行う取り組みなども伺ったのでご覧ください。(取材、文:本川悦子)藤枝東高校サッカー部の部員たち。練習後にチームメイトと談笑する姿■選手自身が映像を編集してプレー分析も名門・藤枝東がオンラインミーティングやサッカーノートのアプリを駆使して選手との意思疎通を図ってきたというのは前編でお伝えしました。彼らはそれ以外にもテクノロジーを使った活動を積極的に行っています。その1つが練習・試合の動画分析です。選手数人が公式戦や練習試合、紅白戦を撮影し、編集したものを共有ファイルにアップ。それを全員が帰宅途中や帰宅後に映像確認し、感想をサッカーノート(アプリ)に書いたり、ミーティングで議論し合ってフィードバックする形を取っているのです。今年から使っているソフトでは、個人のシュートシーンやゴールシーン、被ゴールシーンに特化した映像編集ができるほか、セットプレー時の好守も確認が可能です。さらには時間帯ごとのパス・シュート数などのデータも出てくるので、チーム全体が自分たちの課題や収穫を明確に捉えられます。こうした科学的アプローチの有効性を小林公平監督も実感しているといいます。「現場で見ている感覚と後から映像で振り返る感覚は全然違います。実際にプレーしていた選手も自分の一挙手一投足を映像で客観視すれば、何が課題でどう改善すればいいのかハッキリします。試合前に対戦相手の映像分析をするチームはよくありますけど、日常的に映像を使って可視化する作業に慣れておけば、将来的にそういう仕事に携わることも可能だと思います。ツエーゲン金沢入りが内定している稲葉楽選手もJクラブの練習に参加した時『藤枝東ではプロ同等の分析やスカウティングをしていることが分かって大きな自信になった』と話していました。藤枝東は社会のリーダーになるべき人材を育てている部分も大きいので、これからも可能な限り多くの情報を入手して、有効活用していくように、選手たちには働きかけていきたいと考えています」■加圧トレーニングの定期計測でフィジカル管理データ管理という意味では、2018年から取り入れている加圧トレーニングの定期的計測を行い、練習や試合に生かしています。今年のコロナ禍で3か月間活動休止になったこともあり、選手たちの太もも周りの筋肉が落ち、体脂肪率が増えてしまったといいます。そこで再び加圧トレーニングに注力し、フィジカル強化を図って、最大の目標である高校サッカー選手権に備えているのです。「6月時点ではそこまで数字的な変化は見られなかったのですが、夏場になって計測したら平均4~5㎝ダウンという状況が鮮明になりました。『これは大変だ』と危機感を抱き、意識的に取り組みました。日本ユース年代のSランクである高円宮杯プレミアリーグ参加チームと我々の一番の差はやはりフィジカル。僕が藤枝東の監督に就任した6年前も技術・戦術面の違いはほとんど感じませんでしたが、身長体重を筆頭に当たりの強さや激しさ、走力の部分が劣っていると痛感させられたんです。その差を縮めるべく、サッカーノートのアプリを導入したり、管理栄養士さんに食育の話をしてもらったりとさまざまな試みをスタートしましたが、短時間で筋量を増やせる加圧はかなり効果がありました。10月に計測したところようやくコロナ前の状態に戻った印象ですが、継続しないと意味がない。選手も自覚を持って取り組んでくれています」■高2まで目立った選手でなかった長谷部誠が急激に伸びたキッカケ小林監督が自ら行動を起こす重要性を繰り返し強調するのも、1学年上の長谷部誠選手(フランクフルト)という偉大な存在を目の当たりにしているから。長谷部選手は高2まではそこまで目立った選手ではなかったものの、高2の終わりに静岡県選抜に選ばれ、高いレベルに目覚めてからはグングンと成長していったそうです。練習から100%でやるように意識も変わり、意欲的にサッカーと向き合うようになって、浦和レッズ入りというチャンスをつかみました。2008年にドイツに渡り、日本代表に定着し、8年間もキャプテンを務めるといった飛躍的成長には小林監督も驚きを禁じ得なかったといいます。「高校生は何らかのきっかけをつかめば長谷部さんのようになれる可能性を秘めている」と今も自らに言い聞かせているのです。「県選抜に入ってからの長谷部さんは『自分は十分やれる』という自信と手ごたえをつかんだのか目の色が変わっていきました。浦和入りした後、長谷部さんのいるサテライトと練習試合をしたことがあるのですが、もう手が付けられないレベルになっていた。『17~19歳の2年間でここまで変わるのか』と本当にビックリしましたね。当時は服部(康雄=静岡県サッカー協会副会長)先生が指導されていましたけど、サッカーの楽しさを面白さを追求する姿勢を重んじていましたし、主体性や自主性も大事にしていました。そういう環境だったから長谷部さんは伸び伸びとやれたし、自分で気付いて成長できたんだと思います。僕自身も『ここでもう1回サッカーをやりたい』と感じたのが指導者になったきっかけです。そういう藤枝東の文化を引き継ぎ、発展させていくことが自分の大きな仕事。入ってくる選手も『長谷部さんみたいになりたい』という子が年々増えています。つねに誠実で多くの人に愛されるのが長谷部さん。今の選手にも『愛される選手になりなさい』とことあるごとに声をかけています」このように藤枝東は人間的成長を促しながら、かつてのような高校トップを目指しています。同じ高体連で2019年プレミアリーグ王者の青森山田高校らとはまだまだ実力差があると小林監督は感じているそうですが、藤枝東らしく文武両道を貫き、自主性や自立心を生かしながら進化を遂げていければ理想的。そうなるように今後も高いレベルに突き進んでいくつもりです。小林公平(こばやし・こうへい)藤枝東高校出身。高校時代は県を代表する左サイドバックで、全国総体準Vや国体制覇などに貢献。国士舘大卒業後、藤枝東高非常勤講師、湖西高監督を経て2015年に藤枝東高校サッカー部監督に就任。
2020年11月09日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、第2回目のインタビューは、若くして海外へ渡ることのメリット、デメリットについてお送りします。<<第一回:世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法■レベルの高い環境で練習ができることが大きなメリット――久保建英選手(ビジャレアル)や中井卓大選手(レアル・マドリード)が若くして海外でプレーしていますが、彼らのように海外でプレーするために現状ではどのような方法がありますか?「正直、現状ではFIFA(国際サッカー連盟)の規約第19条(国際移籍は18歳以上の選手のみ許される)があり、日本人選手が若くして海外でプレーするのは年々厳しくなっています。日本である程度有名な選手の場合、若年層の子がサッカーで海外に来た場合、まずFIFAが移籍を容認することはありません。Jクラブの下部組織に所属しているとか、セレクションに合格したとか、そういった情報がネットに出てしまえば、その時点で18歳になるまではどんな方法でも現地の公式戦には出場できません」――すると、現時点で日本人が海外でプレーをするには18歳の誕生日を迎えてから、ということになりますか?「良い例として挙げるとすれば、現在スペインの2部Bにいる吉村祐哉選手が辿った道のりです。現在2部Bには日本人が3人いるのですが、そのうちの一人です。祐哉は15歳で海外に渡って3年間は練習生で過ごしながら18歳の誕生日を迎えた時点でテネリフェと契約しました。最初はチームと契約はできないけれど練習生として練習試合や国際大会には出場できます。何よりも非常にレベルの高い環境で練習ができることが大きなメリットです。現地のチームが練習でも練習試合でもしっかりと扱ってくれるという条件があるのならば、これは一つの良いキャリアの歩み方だと思います。早い段階で海外に渡り、まずは言葉を覚える。言葉を覚えないと何にせよ厳しい道になります。そして環境に慣れて18歳のタイミングでチームと契約するのが現状のベストだと思います」――18歳から逆算して早めに行動するということですね。「そうです。ただし、ただ単に海外に行くだけでは意味がありません。調べもしないで海外に行って、あまり競争力のない低いレベルの環境に入っても意味はないからです。海外に行ったことだけで満足してしまう子どももいますが、刺激になる環境に身を置かないとその先が難しくなると思います。スペインでは若い世代であれば1部でも2部でも練習生として参加できる場合があるので」■子どもへの"投資"と捉えられるか――例えば、15歳で海外へ渡ることにはメリットもデメリットもあると思います。「メリットはリアリティが湧くことです。日本でプロを目指すというのは、学生からプロになることを指しますが、あちらではプロの集団の中からプロを目指すことになります。それは日本にいるのとは全然違います。そういう環境に早く入ることで心に火がつきます。リーガの選手たちは環境がものすごく良いのはもちろんですが、毎年選手が入れ替わるのを目の当たりにしているので、『やらないとまずい』という気持ちに駆られます。あとは、海外に行けばわからないことが多いから当然失敗します。失敗するからこそ成長します。失敗を糧に、自分で解決する方法を覚えるようになる。それが後の人生においてもプラスになるのです。一方、デメリットは学生生活を送れない、青春時代がなくなる、といったことでしょうか。学歴に焦点を当てればデメリットでしかありません。でも、僕は子どものときに自分が思った好きな道に突き進んだからこそ今があるし、学校に行けないなんてことは親が感じるデメリットなんですよね。学歴を大事にした結果、親自身が今の人生は楽しいと思うのであれば正解かもしれません。でも親が毎日が大変だと思いながら過ごしているのであれば、何かを変えなければ子どもも同じ道を歩んでしまいます」――仮に15歳から現地のクラブに練習生として所属するとしても、スペインで3年間、契約しないままに過ごすとなるとお金がかかります。親からすればお金の心配はあると思います。「お金はかかりますが、これは投資です。ほとんどの親は"子どもに投資する"という考え方を持たないと思います。『うちはお金がないから、お前は我慢しろ』と言われた子どもが夢をあきらめないといけない。そんなケースはざらにありますね」――例えば、15歳から3年間現地で生活するためにはいくらかかりますか?「スペインだと月に20万円ほど。3年間で600万円ほどでしょうか」――Jクラブユースでも高体連でも、高校を卒業して18歳になってから、親の援助を受けながら海外に挑戦するケースも増えていますが、これはどう見ていますか。「現状ではそういうパターンが増えていますが、それでもTC(トレーニング・コンペンセーション/23歳以下の選手が移籍する場合に移籍先からお金が支払われる制度)が発生するので、現地のクラブがすぐに契約するという流れにはなりにくいです。最初はプロ契約をせずに試合に出してくれるケースも結構あります。ただ、クラブもどこかでプロ契約をしないといけませんから、自分のところで育てて、契約するだけの価値を見出せたときにプロ契約をするという方法はあるにせよ、そこまでよく見てくれるクラブは少ないですね。高校やJクラブが『TCは破棄します』といった協力をしてくれるところもあるし、そうであるならばかなり話は変わってくると思います」<<第一回:世界のクラブが日本人選手に求めるスキルとは。レアル中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年11月06日チームメイトからのからかいを真に受け怒ってしまい、チーム内で浮いてる息子。すぐ大声を出して怒ってしまうので、成り行きを見てないコーチたちに息子だけが怒られることも。そんなことが続き、「おれだけが全部悪い」「おれがバカだから」と涙をこぼし自分で頭をゲンコツで殴ることも......。普段のちょっとしたことで過剰に怒られている感じがするものの、息子にも原因があるので指導者陣に相談しづらい、とのご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<スパルタ母のしごきで息子がやる気喪失。父はどうすりゃいいの問題<サッカーママからのご相談>こんにちは。現在小2(7歳)の息子は、1年前からスポーツ少年団でサッカーをしています。当初は息子を入れて学年3人だったのが、今では人数が増えて同学年7人になりました。人数が増えて嬉しい反面、仲間から浮いた存在になっている息子についての相談です。息子はちょっとしたからかいなども真に受けて怒ってしまうことが多く、チーム内で距離を取られてしまいがちです。怒って大声を出したり、からかいにすぐカッとなってしまうため、余計に面白がられて更にからかわれたり、その結果、指導者にきつく叱られることが多々あります。そんなことが何か月か続き、家にいるときに息子が「おれだけが全部悪い」「おれがバカだから」「おれは全然できてない」と涙をこぼし始めました。頭を自分でゲンコツで殴ることも数回ありました。いつも息子が騒ぎだすことで指導者が気付くため、その時点では息子ひとりが怒っていて、からかっていた子や周りではやし立てた子は特に叱られることはありません。それで、自分が全部悪いと言っているようです。本人は納得いかないけど、そうやって自分を納得させようとしているように感じます。息子自身も集中力がなく、よそ見や砂いじりをしていたり、他の子にふざけてちょっかいを出すときもあり、そこは直していかなければならないところだと思っています。すぐに怒ってしまうので、それで他の子から距離をとられてしまうのも大人としては理解できるところです。集中力が足りないのも、怒りやすいのも、息子自身も直さなければと思ってはいるようですがすぐには改善できず、同じことで注意を受け続けて「またできなかった」と失敗体験を積み重ねてしまう日々。サッカーも、自主トレを続けている割には他の子のようには技術が身につかず自信がないので引け目になっていて、色んなことを受け流す余裕がないんだろうと思います。チームの子とうまくいかないこと、サッカーがなかなか上達しないこと、指導者からも問題児と認識されていること、息子自身が自分をダメだと言い始めていること、色んなことが積み重なってしまってどこからどう手をつけていいのかわかりません。集中力がなくて試合でもベンチ態度が悪い(砂いじり、草いじり、よそ見など...)ことや、すぐに怒って輪を乱すことなど息子に非があることが多いので、普段のちょっとしたことで過剰に怒られている感じがするものの、指導者陣に相談しづらいです。何かアドバイスをいただけませんでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。よくぞご相談してくださいました。小学校で過ごすぶんはそこまで大変ではないけれど、サッカーチームという集団活動になると、さまざま難しい局面を迎えてしまう。そういったお子さんは決して少なくありません。さまざまなきまりやルールがその子にとってハードルが高かったり、サッカーのスキルの優劣に打ちのめされたりする。そのため自己肯定感が下がってしまい、せっかくの楽しいサッカーの時間が苦痛になってしまう――。息子さんは、まさにそんな状況ではないでしょうか。■心の成長がゆっくりなだけ。周りの子と同じように、と働きかけるのは逆効果私も長男がとっても個性的でしたので、それなりに状況を察することができます。すぐにカッとなって手を挙げる。試合で相手にファウルされると、すぐに報復する。小学5年生くらいまで、ほうぼうで謝ってばかりいました。お母さんも個性豊かな息子さんに少しばかり苦労されているようです。さまざまトラブル続きで、親のほうも疲れちゃいますね。でも、大丈夫。焦る必要はありません。息子さんは、ほかのお子さんよりもほんの少しだけ心の発達がゆっくりなだけです。一見すると短所ばかりと思えるかもしれませんが、このように個性的なお子さんには、まだ本人や親御さんが気づいていない「いいところや才能」を隠し持っていることが多いのです。そこに密かに期待を寄せながら、今はまずはリラックスして、息子さんをおおらかな目で見てあげてください。子どもの発達がのんびりしているのに、親や周囲の大人たちが「周りの子と同じようにしなさい」と働きかけてしまうと逆効果です。親の側は「これもひとつの個性だ」と受け取って、ここはのんびりいきましょう。■7歳ならベンチで砂いじりをするのはある意味自然なことそこで、私からは「のんびり子育てプラン」の3ステップをお伝えします。良かったら参考にしてください。その1。他のお子さんと少し異なる個性を、できる限りおおらかに受け止めましょう。すでに前述したことではありますが、ここが非常に重要です。一度、整理してみましょう。例えば、「集中力がなく、よそ見や砂いじりをしていたり、他の子にふざけてちょっかいを出すときもあり、そこは直していかなければならない」と書かれていますが、なぜこのような行動をしてしまうのでしょうか?息子さんが「性格の悪い子」だからでしょうか?「意地悪な子」だからでしょうか?どれも違います。息子さんは7歳です。この年齢で、試合に出ておらずベンチにいるときに、砂いじりをするのはある意味自然なことです。だって、暇なんですから。お母さんも電車に乗って、文庫本も読み終わってしまった、なんていうとき、スマートフォンをいじったりしますよね。コーチは仲間のプレーを見るようにと言うでしょうが、難しいことです。子どもの見方はいろいろあるかと思いますが、私がコーチなら「ベンチでも集中して試合を観なさい」と命じて、その通りやってしまう子がもしいたら、大人の言うことを聞きすぎるという面でその子のほうが心配です。ただ、ここで私が「できる限り」受け止めて、と書いたのは、受け止めきれないことがあってもいいよということです。腹が立ったり、情けなかったり、息子さんに「ちゃんとしないさい!」と怒りたくなる(もう怒っちゃってるかもしれませんが)瞬間もあるでしょう。そういうときは、少し息子さんのこの問題と距離を置きましょう。たまには、練習や試合を休んで二人でどこか遊びに行ってもいい。たまには、お父さんがおられれば、お父さんに、いなければ他の大人に任せてもいい。子育てをお休みする時間が必要です。常に頑張ったりしなくていい。とにかくぼちぼちいきましょう。■昔ながらの忍耐と根性ではなく、逃げ場を作ってあげてその2。母子とも自己肯定感を上げる。「おれだけが全部悪い」「おれがバカだから」「おれは全然できてない」と涙をこぼし、頭を自分でゲンコツで殴る、と書かれています。これはいけません。まだ7歳で、ゆっくりめの彼にとって、少々ハードな環境のようです。ここはぜひ「ダメなんだから頑張れ」と圧迫して、這い上がらせる昔ながらの手法で接するのではなく、まずは彼がそう感じることに心を寄せましょう。「辛いね。でも、気にしなくていいよ」「きつかったね。でも、大丈夫だよ」「バカとか誰が言ったの?お母さんは全然そう思わないよ」と慰め、励ましてください。無言で背中をさするだけでもいいです。そして、サッカーについては「一度始めたのだからやり通せ」などと言わず、「嫌だったらいつでもやめていいよ」「他のことをしてもいいよ」「他のチームを探そうか?」と逃げ場所を作ってあげてください。それとともに、お母さんも自信を持ってください。サカイクにメールを出してまで、成長がゆっくりめな彼と真剣に向き合っている。そんなお母さん、素晴らしいと思います。ピンチの時は、成長するチャンスの時間です。いつの間にか解決して、子どもは成長していきます。チームの子とうまくいかない。サッカーがなかなか上達しない。指導者からも問題児と認識されている。息子自身が自分をダメだと言い始めている。どこから手をつけていいかわかりません、とありますが、これらはすべて繋がっています。他者を変えるのはなかなか難しいので、まずは自分をダメだと思っている息子さんの心をほぐすことから始めましょう。■時には親が言葉で補ってあげることも大事(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)その3。コーチに相談する。サッカーの活動が始まれば、そこは選手とコーチたちの空間です。親御さんがさまざま口を出すことではありませんし、ただ見守っていれば良いのです。指導者の方については「すぐに怒って輪を乱すことなど息子に非があることが多いので、普段のちょっとしたことで過剰に怒られている感じがする」と述懐されています。であれば、そこはお母さんの言葉で補ってあげてください。「少し発達がゆっくりめなので、ご迷惑をかけることがあるかしれませんが、長い目でみてもらえませんか?」と。もしそれで迷惑がられたり、叱り飛ばすようなことが続くのなら、一度お子さんと相談してチームを替えたほうがいいかもしれません。以前に比べて、サッカーのコーチの方々は子どもについてとても勉強されています。子どもの発達は個人で大きな差があり、そこを受け止める重要性をご存知の方は多いです。担当コーチが難しそうなら、クラブの代表の方に相談してもいいでしょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年11月03日サッカーを思いきり楽しんでほしいけど、勉強も疎かにしてほしくない。親御さんたちの本音ですよね。元日本代表のキャプテン長谷部誠選手や中山雅史選手の母校で、サッカー強豪校であり、県内でもトップクラスの進学校、藤枝東高校ではどのように文武両道を実現しているか、小林公平監督にお話を伺いました。セレッソ大阪のU-15出身で、卒業後はプロ入りが決まっている稲葉楽選手からも、どのように毎日サッカーと勉強に取り組んでいるか聞いたのでご覧ください。(取材、文:本川悦子)藤枝東高校サッカー部の部員たち。この日はテスト明けで1週間ぶりの部活ということもあり、練習後もグラウンドで会話を楽しんでいました■長谷部誠選手らを生んだ文武両道の名門新型コロナウイルス感染拡大で開催が不安視されていた第99回全国高校サッカー選手権大会が、12月31日から1月11日に予定通り実施されることが決まりました。全国の高校サッカー部員にとって非常に明るいニュースと言えるでしょう。サッカー王国・静岡の名門・藤枝東高校もその朗報を受け、11月の決勝トーナメントに挑みました。J2・ツエーゲン金沢入りが決まっている3年生のDF稲葉楽選手も「今年は夏の高校総体がなくなり、全国大会は冬の選手権だけなので、何とか県大会で勝って本大会に行きたいです」と力を込めていました。残念ながら1日の東海大翔洋戦で0-2と黒星を喫し、全国行きは叶いませんでしたが、彼らは精一杯戦い抜いたことでしょう。過去4度の選手権優勝を誇り、中山雅史選手(アスルクラロ沼津)や長谷部誠選手(フランクフルト)ら数々の日本代表選手を輩出した同校は文武両道の名門として知られています。2020年度の偏差値は66と静岡県でトップ5に入っており、100人近いサッカー部員たちも勉強とサッカーを両立させています。セレッソ大阪U‐15出身の稲葉楽選手も「入学時点では成績が学年でも下の方だったけど、練習が終わって家に帰ってから必ず勉強をすることを日課にしたら目に見えて上がりました。周りも頭のいい子ばかりだし、『何事も自分から率先してやろう』という自立心が自然と養われたのがよかったと思います」とチーム全員の学習意識の高さを強調していました。■選手たちの精神的な不安を取り除くためにオンラインを活用藤枝東OBで長谷部選手の1学年下、大井健太郎選手(ジュビロ磐田)と同期に当たる小林公平監督も選手たちの自主性を尊重しています。「最後の選手権まで部活動を続けてほしい」という指揮官の思いに応えて、例年であれば、トップチームの選手は全員残り、Bチームの選手が早めに引退するのが常でした。しかしコロナ禍の今年はトップチームから引退者が出たといいます。「2月末に全国一斉休校となってから、僕らは3か月間活動を休止しました。まず感染しないことを第一に考えましたが、いつ再開できるのか、どの大会が行われるのか全く分かりませんでした。そういう中で受験を重視する選手が出るのは仕方ないという思いもありました。そんな中でも体力面をキープし、マイナスを最低限にとどめるための工夫は凝らしました。まず運動生理学やトレーニング理論を学んでもらおうと週1回のズームミーティングを始めました。加えて、管理栄養士による食事管理のミーティングを1回、トレーナーのリモートトレーニングを1回と合計週3回はオンラインで交流を持てるようにしたんです。選手たちは学校に来られず、練習もできなくて精神的な不安感を感じていました。私も精神科医の先生に相談しましたが、『オンラインでもいいからつながりを持てるようにした方がいい』とアドバイスを受け、実行に移しました」小林監督からのアクションに呼応するように、選手たちも絆を深める活動を率先して始めました。その1つが動画を使ったリレー。各自の目標を、動画を通じて伝えあったり、リフティングリレーをするなど、今どきの高校生らしい試みを始めたのです。4人1組でラインビデオを使ったリモートトレーニング動画を投稿するといった取り組みもありました。仲間が懸命に追い込んでいるのを見れば、「自分もやらなければいけない」という意識になるもの。そうやって選手個々が向上心を持ち続けて苦しい3か月間を乗り切ったのだといいます。■もっと選手を信じていい、選手たちは十分やれる「教師の自分にとっても、これだけ長期間の空白期間は初めてで、選手以上に不安感は強かったと思います。そこで自分もJFAのフィジカルトレーニングメニューを配信していただけるように旧知の先生にお願いしたり、指導者同士のオンライン交流会に参加したりしました。そこで感じたのは『もっと選手を信じていい』ということ。僕らが直接的に行動を起こせる機会が少なくなる中、彼らに自主的かつ主体的に行動してもらう場が増え、十分やれるなという手ごたえを感じたんです。3年生のレギュラーの選手が引退を決断したのは残念ですが、藤枝東としては進路も非常に重要だと考えています。我々としては高1の段階で希望を出してもらっていますが、スポーツ推薦や指定校推薦で関東大学1部や関西1部の大学には毎年選手がお世話になっていますし、一般受験で国公立やMARCH以上の大学に進む子も多い。そのあたりを基準にして文武両道にチャレンジしています。コロナを経てそういう意識を高めてくれる選手が増えたのは、前向きな点だと思っています」■サッカーノートを通して選手の内面を良く知ることができる藤枝東では小林監督就任2年目の2015年からアプリのサッカーノートを導入していますが、それも選手の自立心の高さを実感する一助になったようです。朝晩の体温・体調管理はもちろんのこと、選手が不安に感じていること、サッカーと学業を両立する上での懸念材料などを書いてもらい、毎日提出してもらうことで、彼らの内面に深く切り込むことができたといいます。「アプリだと休校期間も共有でき、選手とコミュニケーションを定期的に取れたので、非常に有難かったですね。6月の活動再開後は往復の電車や移動途中などに記入し、送ってもらっていますが、時間の有効活動という観点から見ても助かります。サッカーノートの中には、疲労度を1~10段階で判定し、選手自身に申告してもらう項目があるのですが、それも強度の高い練習を取り入れるに当たって有効です。選手権予選などの大きな大会前は追い込みたいという一方でケガも防がなければいけません。一番いい落としどころを探るうえでも役立っています。こうやって要所要所で数値を取り入れながら可視化できるデータを蓄積していけば、いずれは藤枝東サッカー部の大きな財産になる。そんな期待も抱いています」この記事が掲載される「サカイク」は、小学生向けなのでアプリではなく紙のノートですが、子どもたちがたくさん書けるようになる工夫を施したサッカーノートを販売しています。編集スタッフの依頼で小林監督にその内容を見ていただくと、「なるほど、これは書きやすいですね」と回答いただきました。サカイクサッカーノートの内容を見ていただきました小学生年代で、特にサッカーを始めたばかりでサッカーノートを上手く書けない子のために、いくつかの質問を用意して、書くのが苦手な子どもたちも自分の考えをたくさん書けるようになる工夫が施されているのですが、ページごとの設問を見て「ただ自由に書くのではなく、設問があることで思考力をつけるベースになりそうですね」「うちの選手たちにも聞いてみたい設問ですね」など高く評価してくれました。もともとITを駆使できる小林監督ですが、今回のコロナ禍を通して、利用できるテクノロジーを最大限生かしながら、強い藤枝東を築き上げていくことの重要性を再認識したようです。ご自身がITが好き、というのもあるそうですが「社会に出て重要なビジネスシーンで活躍する生徒も多く輩出する学校なので、最先端の情報に触れさせたいという思いもあるのです」と語ってくれた小林監督。彼らには文武両道の名門ならではのやり方で高校サッカー界に新風を吹かせてほしいものです。(後編に続く)小林公平(こばやし・こうへい)藤枝東高校出身。高校時代は県を代表する左サイドバックで、全国総体準Vや国体制覇などに貢献。国士舘大卒業後、藤枝東高非常勤講師、湖西高監督を経て2015年に藤枝東高校サッカー部監督に就任。
2020年11月02日小学生でサッカーを始めたばかりのお子さんの中には、リフティングの練習に取り組んでいる人も多いのではないでしょうか。この記事では、サッカーを始めたばかりの初心者に向けてリフティングのコツを解説します。ぜひコツを押さえて練習に取り組んでみてください。リフティングは回数は重要ではない小学生の場合、リフティングの回数が多くできる=サッカーが上手いと捉えているケースが少なくありません。確かにリフティングがたくさんできることは、サッカーの上手さの1つの側面ではあります。しかし、リフティングの回数が少ないからと言ってサッカーが下手なわけではありません。まずは、その点を理解しておきましょう。リフティングの目的は身体を上手に動かせるようになることリフティングで大切なのは回数ではなく、身体を上手に動かせるようになることです。小学生の中には、リフティングが何回もできる選手は少なくありません。回数だけ見ると、1,000回を超える選手もいるでしょう。ここで重要なのはその選手が、身体のどの部分でそれだけの回数をこなしているのかということです。もしかしたら、利き足のインステップだけ、太ももだけで1,000回をこなしている選手もいるかもしれません。しかし、このような場合だと、先ほどお伝えしたリフティングの目的「身体を動かせるようになること」を達成できていると言えません。利き足のインステップを中心として1,000回のリフティングを達成した選手に対して、インステップ以外の特定箇所でリフティングやってもらうと、おそらく多くの選手は続けられないはずです。なぜ続けられないのかというと、得意な部分以外に関しては自分の思うように身体を動かせていないためです。逆に言うと、部位に関係なくリフティングができるような選手は、回数をこなすことはできなくても、身体を上手に動かせていると言えます。そのような選手なら、試合中に急に来たボールに対しても、身体を上手に動かしコントロールして次のプレーに移ることができるはずです。サッカー初心者が押さえておきたいリフティングのコツここでは、サッカー初心者に向けて、リフティングのコツについて解説します。リフティングは毎日練習をすることが大切ですが、コツを押さえておくことで、上達速度が上がるはずです。ぜひ参考にしてみてください。インステップのコツリフティングで主に使用するのがインステップです。インステップのリフティングをする場合、足の甲のどこでボールを触るとボールが真上に上がるのか感覚をつかむことが大切です。インステップはボールに触れる位置が少しでもずれると、思いもしない方向に飛んでいってしまいます。そのため、甲の様々な部分にボールを当て、真上に飛ぶ部分を把握するようにしましょう。インサイドのコツインサイドのリフティングをする場合、インサイドをボールに対して平行にすることが大切です。ただし、平行にするために足の位置を高くすると、リフティングが安定しません。そのため、足の位置は低くして、膝を返したり足首を返したりすることで、平行を保つようにしましょう。アウトサイドのコツアウトサイドのリフティングをするときに、重要なのは軸足の膝のクッションを使うことです。アウトサイドを使ってボールを蹴り上げるというよりも、膝のクッションでボールを突くイメージを持ってください。太もものコツ太もものリフティングは、太ももをちゃんとあげることが大切です。十分に上がっていないと、ボールに当たる面が斜めになってしまうので、ボールが真上に上がりません。また、リフティングをするときは、体の中心を意識して行うようにしましょう。ヘディングのコツヘディングのリフティングをするときは、ボールの真下に入り額の中心にボールを当てることを意識しましょう。真下に入り、額にちゃんとボールが当たればボールが真上に飛びます。一方で、これがずれているとボールは前後左右に飛んでいってしまいます。また、リフティングの際には足を前後に開いておくと安定感が増すので試してみてください。自主練でリフティングは上達するリフティングを上達させたい場合は、こまめに自主練を行うことが大切です。1週間に1回の自主練で何時間も練習するより、毎日10分、15分でも練習する方が着実に上達します。先述の通り、リフティングは回数ではなく、身体を上手く使えるようになることが目的です。毎日少しずつ練習することで、様々な部位でのリフティングができるようになるでしょう。リフティングの練習には「テクダマ」がおすすめリフティングの練習をしたい人には「テクダマ」の利用がおすすめです。テクダマは、4号球と同じ重量でありながら、大きさは2号球サイズとなっているボールです。独自開発のバランス設定によって、不規則な回転やバウンドをするため扱うのは簡単ではありません。このテクダマでリフティングの練習をすると、ボールのイレギュラーな動きへの対応が求められるので、脳や神経系にたくさんの刺激を与えることができ、集中力が養われます。また、予測不能なボールの動きに合わせて身体を使わなければいけないので、身体を上手に動かせるようになるでしょう。ぜひ、リフティングの練習にテクダマを取り入れてみてください。まとめリフティングは回数に注目してしまいがちですが、その目的は身体を上手に動かせるようになることです。特定の部位だけでなく、様々な部位でリフティングできるようになれば、試合中でも自分の思ったようなボールコントロールができるようになるはずです。ぜひ、今回紹介したコツを参考にリフティングの練習に取り組んでみてください。
2020年10月30日全国を目指すレベルなので、日々の練習や土日の遠征などいろんな面で過酷だからと親の判断で移籍させたが、退団したことを後悔し、前のチームに戻ったけど1年のブランクは大きく下の学年にも抜かれ試合に出られそうにない。自分が先導して移籍させた選択が良くない方向に行ってしまい、わが子を傷つけた。卒業まで2年半ぐらいあるけどどうすれば......。というお悩みをいただきました。親の判断で移籍させるかどうか、悩んだことがある方もいるのでは。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<スパルタ母のしごきで息子がやる気喪失。父はどうすりゃいいの問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。 このような相談できる場所があり、ありがたく思います。小4の息子はスポ少に所属しています。全国を目指すチームなので、まあまあレベルは高いです。1年生からサッカーを始めましたが、3年生から4年生までの1年間、毎朝学校が始まる前の1時間の練習と土日の県外遠征などあまりに過酷だと感じ他のチームに移籍しました。ですが、少年団を辞めたことを後悔し、4年生になった今年の春、また全国を目指す今のチームに戻りました。しかし1年のブランクは大きく、同学年の子どころか下の学年の子にも抜かされてしまっており今後も試合には出られそうにありません。それもこれも全て私が移籍を誘導をしてしまった結果だと思います。私が良かれと思って選んだ道が最悪な方向に行ってしまい、我が子を傷つけることになってしまいました。息子はまた頑張ったらみんなに追いつけると思っていますが、全国を目指すチームなのでそう甘くはありません。周りの子どもたちもみんな頑張っていて日々上達しているので、1年間緩い練習をしてきた息子との差が縮まるとも思えません。こんなにも厳しい現実が待っているとは気がつかず、またチームに戻してしまいとても後悔しています。辞めて後悔、戻っても後悔。あと2年半どのように過ごせばよいでしょうか。 よろしくお願いいたします。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。「あと2年半どのように過ごせばよいでしょうか?」お母さんは、私にそう問われていますが、2年半をどう過ごすかを決めるのは、息子さんご自身です。まず、その考え方を変えましょう。■サッカーも勉強も子どもが自分の意思で決めること、と胸に刻んでサッカーも、勉強も、進路も、もっと言えばその日をどう過ごすかも、息子さんの意思で決めることです。息子さんの人生は、息子さんのもので、お母さんのものではありません。そこをまずは自分の胸に刻んでもらえませんか?そうしなければ、過度な干渉をやめるスタート地点に立てません。この連載や、それ以外でも、子育てが上手くいかないケースの大きな要因は、親御さんの過干渉であることが非常に多いです。ぜひ、「過干渉な親からの脱却」を目指してください。いまは、非常にお辛いですね。自分が指図しなければ、とか、干渉しなければこうならなかったと後悔の日々かと思います。しかしながら、お母さんはご自分の力で、子育ての失敗にすでに気づいています。「私が移籍を誘導をしてしまった結果だと思います。私が良かれと思って選んだ道が最悪な方向に行ってしまい、我が子を傷つけることになってしまいました」とご自分で書かれていますね。このように、大人になって自分自身の行いを否定するのは勇気のいることです。ところが、お母さんはそれができている。お母さんは、人を育てる力があるのです。どうか自信を失わず「今から過去のダメ親だった自分にリベンジするのだ」という勇気を持ってください。以下、私から三つアドバイスさせてください。■まずは自分の行動の間違いを認め、お子さんに謝ることが重要まずは、息子さんに謝りましょう。●チームの移籍をお母さんが誘導し、振り回してしまったこと。●その際に、息子さんととことん話し合うなど、時間の余裕をもたなかったこと。●息子さんの意見をじっくり聞かなかったこと。●「このチームはあまりに過酷だ」とか「やはり元のチームのほうが」などと、お母さんの感覚や考えを基準に移籍を繰り返し、息子さんの気持ちを最優先してこなかったこと。●過干渉な母親だったこと。そのあたりをきちんと伝えましょう。その際は「許してね」などと許しを請うのではなく、とにかくご自分の行動の間違いを認め、謝ることが重要だと思います。二つめは、子育てを勉強してください。過干渉が子育てにどんな悪影響を及ぼすか、それを学んでください。ネットに「子育て、過干渉」と打ち込んでもいいし、そこに「サッカー」を入れてもいいでしょう。過干渉親についての本もたくさんあります。同時に、干渉せずに子どもを育てるメリットも学んでください。例えば、子どもは「選ぶ」機会を増やすことで成長していきます。そのためには、小学生段階で親は離れたほうがいいのです。例えば、私が十数年前に勉強した、イギリスの小児科医で臨床心理の専門でもあるウィニコットの教示をお伝えします。ウィニコットは、母親と子どもとの関係において「ほどよい母親(good enough mother)」であることが大切だと言います。「ほどよい母親というのは、初めは幼児の欲求にほぼ完全に応じ、やがて時間の経過につれて、母親がいなくてもひとりでいられるようになってきたら、子どもへの対応を少しずつ減らしていく」つまり、「初めはしっかりと子どもに関わり、だんだん離れる育児のできるお母さん」が「ほどよい」。このグッド・イナフ・マザーをぜひ心がけてください。■親の言う事を聞いていればいい、という育児は間違いまた、日本の著名な小児科医は、親が手をかけて子どもを「育てる力」と、子ども自身の中にある「育つ力」の関係性を以下のように解説しています。●0~3歳頃「育てる力」>「育つ力」(育てる力が上回る)●4~6歳頃「育てる力」=「育つ力」(両方の力が同じくらい)●7歳以上「育てる力」<「育つ力」(育つ力が上回る)この説明からわかるように、子どもが小学校に入学したら、「育つ力」を信じて、子どもの成長を見守るような親御さんが、子どもを成長させるのです。ぜひ、そういったことを学んで、過干渉親を脱却する糧にしてください。論理を根っこから理解せず、「干渉しないほうがいい」と他人から言われたところで、人はそうそう変われません。ぜひぜひ、子育てを学んでください。なんで今更子育てなんか勉強しなきゃいけないの?と思うかもしれません。が、私たちの多くが施された、圧迫して、厳しく言い聞かせて、お母さんの言うことを聞いていればいいのよ、という子育ては、実は間違っています。違う手法をぜひ身に着けましょう。■子どもが自分で考えて決める機会を与えてみようそして、三つめ。干渉をやめるには、まず、上記の考え方をご自分に刷り込んでいく作業が必要です。日常生活から、「どうしたい?」「どうする?」と問いかけます。お手伝い一つでも、あれやって、これやってと頼むのではなく、何か手伝えることがあるか自分で考えてやってみて、と伝えましょう。二度の移籍を、親御さんに従い、ついてこられた息子さんは、もしかしたら従順に育っていないでしょうか?よく言えば素直。違う見方をすれば、自分で考えられない、自分で決められないところがあるかもしれません。ただし、それは彼に能力がないわけはまったくありません。これまで、そういった自ら考える、悩む、決める機会を与えられてこなかっただけです。ここからが、子育てのやり直しの一歩です。■親としてのリスタートであり、大きなチャンスでもある(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして、最後に。私は、こうなって良かったとさえ思います。もし、2つ目のチームでうまくいって満足していれば、「ほら、お母さんの言ったとおりにしてよかったでしょ」ということになります。ママについて行けば大丈夫、私についてこさせれば大丈夫と、親子して間違った認識を持つところでした。これは、お母さんの母親としてのリスタート。大きなチャンスなのです。まったくもって落ち込まなくていいのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年10月28日「将来海外でプレーしたい」そんな純粋で大きな夢を抱く子どもたちに「正しい努力をさせてあげたい」。そう願うのが親の本音ではないでしょうか。新刊『世界を変えてやれ!―プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』では、「日本と世界を繋ぐ橋渡し」役の著者・稲若健志氏が、将来を夢見る選手たち、保護者、指導者に向け、アドバイスを送っています。今回は改めて稲若氏に聞いた、子どもたちの夢を叶えるために知っておきたい世界の常識、などを、全4回にわたってインタビューでお届けします。■レアルの中井選手から学ぶ世界で生き抜く方法――世界で戦える選手を間近で見てきた稲若さんが考える、世界のトッププレイヤーが持っているものとは何でしょうか。「技術、メンタル、フィジカルがあることは大前提ですが、世界で活躍するトップレベルの選手たちは自分で『習慣』を作ることができます。先日、元スペイン代表監督のロベルト・モレロが話していました。メッシやネイマール、スアレスのようなスーパースターは何が違うのかといえば、『サッカーの中で生活をしている』と」――24時間、サッカー選手ということですか?「そうです。例えば、スポーツドリンクは糖分が入っているから飲まない、といった日々の行動を徹底的に習慣にしていける選手が世界に行けます。プロでもピッチ上では頑張っていても、ピッチ外のちょっとした誘惑に負けてしまう選手もいます。でも、世界のトッププレイヤーたちは例外なく細部に気を遣っているし、それを当たり前にできています」――その点、稲若さんがずっと間近で見てきた中井卓大選手(レアル・マドリード所属)はどうでしょうか?「僕はピピ(中井卓大選手の愛称)のことを8歳から知っていますが、8歳の頃から毎日、朝起きたら欠かさずストレッチや体幹、ボールタッチをしてきました。歯を磨くのも朝ご飯を食べるのも30分のトレーニングのあとで、雨が降ろうがサボったことはないと思います。『毎日が勝負』というスタンスで、一段ずつ階段をのぼっていった選手です。最初からレアル・マドリードの今のカテゴリーまでたどり着けるという考えはなかったと思いますし、まずは自分のいるカテゴリーで全力を尽くし、その結果、また次のカテゴリーへと。その繰り返しでのぼっていったのです。正直、ピピが今のようになるとは思っていませんでしたが、ピピは人一倍努力をして、一歩ずつ階段をのぼっていった先に今のカテゴリーまで上がったという選手です」■世界のクラブが日本人選手に求めているものとは?――世界のクラブは日本人選手に何を期待しているのでしょうか?「一般的に日本人は『真面目』『監督の言うことは聞く』『言われたことはできる』という評価をされています。ただ、今の久保建英選手(ビジャレアル)もそうですが、チームでのポジショニングのバランスやディフェンス力の低さが試合出場を阻む足かせになっているように見えます。日本では『うまい選手が海外で使われる』と思っている人も少なくないかもしれませんが、欧州ではまず『チームにハマる選手が使われる』というのが常識です」――チームにハマるというのは?「技術が高いのではなく、"何かをしっかりと持っている選手"です。『言われたことをしっかりできる』『ポジショニングをミスしない』『ボールを取られてはいけない場所で絶対に取られない』といったことです。たとえ技術が高くても、チームの一員としてハマるための力が劣っていると、監督は『まだ使えないな』と判断するということです。試合に勝つことができる監督は、何より11人全員がしっかりと意図どおりに動けるかを見ています」――それを踏まえて、日本人選手が海外のスカウトから目に留まるためには?「目に留まるのは、ボールをこねくり回す選手ではなく、走るときに走る、守るときに守れる、そういった判断力が高い選手が評価されます。その上で、結果を残せば目に留まる可能性は高まります。どうしたってチームが弱ければ個々の活躍はなかなか目につきません。チームがある程度は強く、チームの中でやるべきプレーを体現しながら、DFならば1対1に負けない、FWならばゴールを奪う、そうやって個人として結果を残せる選手が目に留まります」――ちなみに、日本のU‐12世代と海外の子どもたちの違いは感じますか?「スペイン代表やレアル・マドリードで活躍したミッチェル・サルガドとは2013年からの付き合いになりますが、そんなサルガドがよく日本の子どもたちを見て『リアルがない』と言います。シュート練習をするときに子どもたちが『これはワンタッチですか?』と聞くことに対して『グラウンドにいるのは自分。コーチに聞く前に常に自分で判断しなさい』と指摘する光景をよく見ます。これには親の過保護も関係しているのだと思います。夏場の熱中症対策として子どもに帽子を被らせてサッカーをさせる親もいます。子どもの命を守る対策を取ること自体はおかしくありませんが、低学年のうちだけならまだしも、高学年になっても親が「○○しなさい」と指示して、子どもに判断させないこともあります。危ないからと言って子どもからリアルを奪ってしまえば、結局子どもは逞しくならず、試合にも勝てません。サルガドがいう『リアルがない』を真剣に考えるべきだと思います」――その差を埋めるためにはどうすれば?「日本の場合、親はサッカーをあまり見ないし、指導者も海外まで行って現地のサッカーを見るための時間も取れない忙しさなので、結局は自分の経験則だけで指導してしまう傾向が強いと思います。そうなると、サッカーについて周りが正解をわかっていないから、子どもが迷子になってしまう。海外の場合、指導者たちは常に近隣諸国のサッカーを見に行ってアップデートを繰り返しています。そういう指導者が親から『何でうちの子は起用されないのか?』などと突っ込まれても、理路整然と答えることができるだけの理論武装ができています。だから親にも指導者に対するリスペクトがあるので、指導者と親の距離感が近いという関係性があります。この海外のリアルを知るためには、やはり自分の肌で感じるしかないと思います。同年代のバルサの子どもたちのプレーをYouTubeなど動画サービスで見たときに『うまい!』と思っても、実際にどのくらいうまいのか、どのくらい差があるかはわかりません。指導者も、子どもも、親も、実際に海外に行って体感しないとわからない明確な差というものがあるし、わかった気にならないで、現地で体感することをスタートラインにしてはどうでしょうか」稲若健志(いなわか・たけし)株式会社ワカタケ代表。1979年生まれ。神奈川県出身。藤嶺学園藤沢高校卒業後、ディエゴ・マラドーナに憧れアルゼンチンに渡航しプロ契約を結ぶ。愛媛FCや栃木SCなどでプレーしたのち引退。帰国してからも10年以上に渡り、毎年アルゼンチンを訪れ、指導や教育を学び、26歳のときに株式会社ワカタケを設立。中井卓大選手の挑戦の支援を通し、レアル・マドリードに強いパイプを持つ。レアル、アトレティコ、セルタなど日本でのキャンプ及び海外キャンプのライセンスを持つほか、世界各国につながりを持ちリーガ主催のジュニアの大会への出場権も保有。世界を子どもたちに見せるべく、年間1000人以上の子どもたちに海外にいく機会を作っている。
2020年10月27日チームによって欲しい選手が違うのは理解できるけど、やっぱり知りたい「Jクラブのスカウトが声をかける選手の特徴とは?」という読者の疑問に答えるこの企画。川崎フロンターレのアカデミースカウト担当の大田和直哉さんに聞く「Jクラブのセレクション」について。後編です。後編では、セレクション時の保護者の振る舞いや、受ける時の心構え、自立に対する考え方など、セレクションに興味のある子どもたち、保護者に向けて、ためになるお話をたくさん聞くことができました。(取材・文:鈴木智之)<<前編:Jクラブのスカウトが見るポイントは?川崎フロンターレのアカデミースカウトが語る選手評価ポイント■どんな保護者なのかを気にする割合が増えている――選手をスカウトするときに、その選手の保護者のキャラクターを気にする指導者やクラブは多いと聞きます。大田和さんはどのように考えていますか?クラブとしても、その選手の保護者がどういう人なのかを、気にする割合は年々増えています。ただ、誤解してほしくないのですが、その保護者が良い、悪いというのではなく、「どのような人なのか」を把握することが大切だと考えています。だからこそ、スカウトの段階で保護者の方とコミュニケーションをとり、どのような人なのかを理解するようにしています。――保護者の立場として、フロンターレにスカウトされるような「上手な子」を、どのようにサポートすればいいのでしょうか?これは私の印象になるのですが、私が良いなと思える選手の保護者は、子どもをサポートしようとしすぎるのではなく、自分が好きなことをやって、輝いている人が多いように感じます。仕事や趣味など人によって様々ですが、親が自分の人生を楽しんでいる姿を見て、子どもも同じように、好きなサッカーを楽しくやっています。その姿を見ると、すごく良いなと思います。――何人ぐらい受けに来るのですが?U-10の場合、今年は2日間、3部に分けて行ったのですが、1回60人なので、全部で180人ほどになります。その中で合格するのは、学年によって違うのですが、1学年10人程度で運営しているので、3年生の場合、現U-10カテゴリーに3年生が4人いるので、セレクションで合格する子は4~6名程になります。■身の回りの事ができれば「自立」なのか?海外と日本の違いに見る本当の自立とは――ジュニアサッカーの現場において「子どもの自立」がキーワードになることが多いですが、保護者が手をかけすぎると、自立を妨げることになるのでしょうか?最近、「自立ってなんだろう」と考えていて、思い当たったことがあります。私は2年前からフロンターレのアカデミーのスカウトをしているのですが、それまでは中国の広州富力で、U‐10の監督をしていました。中国の保護者は子どもの送迎は当たり前、練習前後には着替えを手伝ったりと、日本人から見ると過保護に見えました。日本でいう「自立」とは、自分のことを自分でやることだととらえられていて、私もそういう考えでした。――多くの日本人がイメージする「自立」は、「自分のことは自分でする」ですよね。中国の子たちは、着替えを保護者に手伝ってもらったりと、日本人がイメージする自立とはかけ離れています。でも、自分が思っていることを相手に伝えたり、大人に意見を聞かれたときに答える能力がすごく高いんです。ヨーロッパもそうですが、日本以外の国は、保護者と子どもの距離がすごく近い印象を受けます。でも、子どもは自分の意見をしっかり言える。海外では「自分の意見をはっきり言う」ことが自立と考えられていて、日本の場合は「自分の行動範囲のことを自分でできる」ことを自立と言っているのではないかと思います。――「自立」の種類というか、受け止め方が違うのですね。多くの日本の子どもは、自分の意見を言うのが苦手です。コーチがみんなの前で「このプレーはどう思う?」と聞くと、黙って答えないといった場面も目にします。海外の子の場合は「僕はこう思う」「それは嫌だ、やりたくない」など、自己主張ができます。はたして、日本と海外のどちらが本当の自立なのだろうかと考えています。どちらもできるような選手がいたら、確実にサッカーが上達するスピードが速いと思います。■久保建英は過去のどの選手よりもピカイチだった――フロンターレジュニアに所属していた選手には、久保建英、三好康児、板倉滉、三笘薫、宮代大聖などのプロ選手がいますが、彼らのジュニア時代のエピソードはありますか?アカデミーの玉置(U‐15監督)に聞いた話ですが、久保建英選手がセレクションに来たときは、過去のどの選手と比べてもピカイチだったと。彼は自分がしたいプレーをするというよりも、試合の状況を見て、どこにボールが来そうかを予測してポジションをとり、相手ボールのときは、自陣ゴール前まで下がってボールを奪って、そこからドリブルで全員抜いていくようなプレーをしていたそうです。もちろんドリブルだけでなく、相手を引きつけて、味方にアシストをすることもあったそうです。玉置は「ピッチ上の監督のように、試合を作っていた。あの年齢でそんなことができる子は見たことがない」と言っていました。宮代大聖はトップチームの中でも、シュート技術が高い選手なのですが、ジュニア、ジュニアユースの頃からその技術はずば抜けていました。――セレクションでは、自分の得意なプレーをしてアピールすることが大切なのですね。自分の武器はこれだというものがある選手は、それを出すことが大事だと思いますし、ミスを恐れず、得意なプレーをしてほしいと思います。――サッカーはチームスポーツなので、自分がやりたいプレーだけをしていても、味方の信頼を勝ち得なかったり、ボールが回ってこないことがあります。そのバランスはどう考えていますか?セレクションの試合の合間に、その日初めて会った選手に「どこのチーム?」などと積極的に話しかけて、選手同士で人間関係ができていると、試合でその子にボールが集まりやすいことがあります。セレクションでボールが集まりやすいのは、チームの中で一番上手な選手か、オフザピッチでチームメイトとうまくコミュニケーションがとれる選手だと思います。――セレクションで、人間性の部分をチェックするところはありますか?そこはすごく見たいのですが、セレクション会場で、一人の子どもと接する時間は限られています。そのため、セレクションのときにコーチがなるべく話しかけるようにしていて、どのような受け答えをするかは気にしています。■セレクションはチャレンジの場――セレクションは緊張すると思いますが、心構えのアドバイスはありますか?緊張する子としない子がいると思いますが、子ども自身が、絶対に受かりたいから緊張するのか。もしくは保護者のプレッシャーがすごくて、受からなくてはいけないと緊張してしまうのか。そのどちらかだと思うので、後者の緊張は無くしてあげたいですね。保護者の方は「結果は考えずに、自分のプレーを出してきたら?」など、お子さんが緊張しないような言葉をかけてあげるといいのかなと思います。スクールに来るような感覚で、楽しんでいつものプレーができるような声かけをしてもらえたらと思います。――反対に、良くない保護者の関わり方はありますか?セレクションでたまに見かけるのが、試合と試合の間に保護者が自分の子どもを呼んで、指示をしたり、ダメ出しをしている姿です。子どもにとってプレッシャーになったり、過緊張になりかねないので、良くないと思います。――最後に、今後セレクションを受けに来る選手に対して、メッセージをお願いします。スカウトで小学生や中学生に声をかけると、「○年生のときに、フロンターレのセレクションに落ちたんですよ」と言われることがあります。低学年のときにセレクションに落ちたとしても、成長するにつれて「良い選手」と評価を受ける例はいくらでもあるので、早々に可能性を見極めない方がいいというのはお伝えしたいです。それと、セレクションの結果に対して、子どもより保護者が一喜一憂しないことですね。セレクションに落ちたときに、保護者がすごく悲しんで「フロンターレなんかもういいよ」など、マイナスの発言をすると、子どもは影響されサッカーに対してマイナスな気持ちが生まれてしまいます。セレクションをテストの場ととらえるのではなく、チャレンジする場という気持ちで、来ていただけるとありがたいです。<<前編:Jクラブのスカウトが見るポイントは?川崎フロンターレのアカデミースカウトが語る選手評価ポイント大田和直哉(おおたわ・なおや)神奈川県出身。少年時代には川崎フロンターレ U-15に所属。2008年から2016年まで川崎フロンターレスクール・普及コーチを務め、2009年には3種神奈川県トレセン川崎北地区コーチも兼務。2017年広州富力足球倶楽部U-10監督に就任。2018年からアカデミー部門のスカウト兼コーチを務めている。所有ライセンス:日本サッカー協会公認B級ライセンス
2020年10月26日ボールを奪いに行ったり、近くの味方が抜かれた時は相手選手を追いかけるけど、それ以外の場面で連係プレーが少ない。DFとGKが連携してプレーできるようになってほしい、プレーのイメージを共有してお互いの声かけができるようになるにはどう指導したらいい?という質問をいただきました。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、今回も具体的なトレーニングの例を挙げてアドバイスを送ります。参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手やボールとの距離感が理解できない小6、中学入学までに幅と深さの意識を身につけさせる練習を教えて<お父さんコーチからの質問>いつも連載を拝見しています。指導年代は小学生年代全般ですが、今シーズンは主にU-12を見ています。相談したいのは主にDFとGKの連係イメージを共有させることと、お互いの声かけ(コーチング)についてです。ボールを奪いに行ったり、近くにいた味方が抜かれたときに一生懸命相手選手を追いかけるなどのフォローはできていますが、それ以外の選手の動きが連動できていません。もっと連動して守備ができるように指導したいと思い、いくつかのパターンを用意して練習しているのですが......。最近では小学生年代でも自分たちで戦術を決めて試合に臨むチームもあるようで、私たちもそうなりたいと思っています。何より、自分たちで考えられる力をつけてほしいのです。どんな時にピンチになるか、どんな時がチャンスなのかを理解して、お互いに声をかけあって欲しいのですが、その辺の理解を促進するトレーニングがあれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。ゴールキーパーとフィールドプレーヤーとの連携を高めるには、試合やミニゲームでの攻撃の際にキーパーにビルドアップに加わるよう指示することです。■まずは連携の感覚を養うキーパーはゴールキックを蹴ることなく、なるべくサイドバックかストッパーに出すように言います。そこで相手がボールを奪いに来たら、またすぐキーパーに返せば取られません。そして、キーパーはまた、センターバックやサイドに出せばいいのです。最初はゆっくりと回すようにします。まずはそういうことをして「連携している」という感覚を養ってください。それをやってくと、次に「守る時も同じだ」ということに気づきます。誰が誰がボール保持者に最初にディフェンスに行くのか。カバーはどうするのか。だんだん見えてくるので、最後尾にいるキーパーからもコーチングの声が生まれてきます。ところが、これを守備から入ってしまうと、どうして守ることに意識が向いてしまいます。したがって、必ず攻撃から入って相手の先手を取る方法さえ知れば、スムーズにできるようになります。■トレーニングでの状況設定のしかたでは、練習はどうするか。まずは2対1の状況をつくればボールを取られないことがわかります。相手トップがボールを奪いに来ても、サイドバックがいて、センターバックもいるので取られません。例えば4バックなら、守備4人とキーパーがいて相手2人という5対2の状況設定でトレーニングをします。逆にディフェンス側から見たら、数的不利の時にどう守るかをここで練習できます。6年生くらいになるとそんな練習をしていく必要があるのですが、このようなビルドアップトレーニングを実際に行う人は少ないようです。すぐ試合をしてしまい、そこでやろうとします。ところが、試合になると相手に取られたらいけないと怖くなるので、焦ったキーパーやバック陣がすぐに前線に大きく蹴ったり、ミスをしてしまいます。ですので、同じ状況が何度も出てくるような設定をつくって、練習をさせてください。■攻撃と守備どちらが先か、ではなく両方一緒に高める練習のスタートが2対1で、それをベースに考えていけると、問題なくビルドアップできるようになります。例えば、相手ボールでスタートする。さあ、どういうふうに守りますか?次にディフェンスをしていてボールを奪ったら、攻撃に転じます。前進できるようつながないといけません。ところが、つなぎ方を知らないと、また取られる。つまり、守り方を知っていても、奪ったボールをつなぐことを知らなければ、取られ続けることになります。よくコーチ同士で「攻撃を先に覚えるのか、守備が先か」という話になります。いい攻撃をしてくれると、守る側は守備力を磨けます。守備力がアップすれば、そこをこじ開けなくてはいけないので、つなぐ力やアタックのスキルは向上します。鶏が先か卵が先かという話と似ていますが、両方を一緒に高めていくことを目指します。守備の場合、ファーストディフェンダーがまずはボールを奪いに行って、次はセカンドがいくというかたちで、全体で連動します。ところが、日本の少年サッカーの場合は、ファーストディフェンダーがボールを取りに行きません。このアプローチのところで、コーチの皆さんは「飛び込むな」と選手に言ってしまいます。でも、取りに行かないと取れません。相手は、プレッシャーを感じずに自由に何でもできてしまいます。これは、プロ選手でさえ同じ状況です。取りに出ていかないため、なかなかカバーリングを学べません。そこが大きな問題です。■相手に抜かれても追いかけてゆくように導いてあげる皆さんはドイツやスペインなど海外のサッカーをよくご覧になると思います。見ていると、プロたちが足を踏まれているシーンがよく出てきます。ボールを保持している選手が、寄ってきた相手に足を踏まれ倒れる場面があります。これが日本なら、体を寄せに行きます。子どもも同じようにやるので、体ごとぶつかってしまう場面が多くなるようです。それを考えると「相手にかわされてもいい。思い切って行け」と育成年代には言ってあげるべきだと思います。しかし、抜かれて失点して負けるのを避けるため、前述したように「飛び込むな」と命じてしまう。非常に根が深い問題です。このあたりの指導は、コーチの「生きざま」「生き方」みたいなものが現れるようです。取りに行って一度かわされると、日本の子どもは諦めてしまいます。かわされても、抜かれても、それでも追いかけてゆく気持ちが大切なのです。指導者がそこで「もう一回追いかけてごらん」と導いてあげてください。■日本の子どもは戦術理解に乏しい(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ご相談者様が尋ねている「連携の声」は、戦術を理解することで出てきます。声ではなく、頭の問題といえます。相手が攻めてきた時に、どんなふうに守ったらいいのか。そういった戦術理解が、日本の子どもは乏しいようです。キーパーであれば、背後からディフェンダー全員を見て、相手が右から攻めてくるけれど、左のスペースはどうかな?と考えられる。つまり、ボールだけ見ていてはダメで、マークが外れそうな仲間に「そこケアしよう」「裏来るよ」などと教えてあげる。戦術眼やゲーム感を身に付けなくてはいけません。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年10月23日サッカーの上達に欠かすことのできない「サッカーノート」。有名プロ選手から子どもまで、サッカーをする人々のマストアイテムになりつつあります。サカイクでもサッカーノートを開発し、サカイクキャンプに参加している子どもたちや「サッカーノートがほしい!」というお子さんに向けて、提供を開始しました。そこで今回はサカイクサッカーノートの開発に携わった、「しつもんメンタルトレーニング」の藤代圭一さんと、サカイクキャンプでメインコーチを務める菊池健太コーチ、サカイクサッカーノートの開発責任者、竹原和雄部長による、「考える力を育むサカイク流サッカーノートの書き方」をお伝えしたいと思います。(取材・文:鈴木智之)【詳細】子どもたちが自ら進んで書き出す、これまでよりたくさん書けるようになるサカイクサッカーノート■サッカーノート=反省、では続かないサカイクサッカーノートの特徴のひとつ。それは「子どもたちが、自分から進んでやる気になる、ポジティブな質問」が、いたるところに散りばめられていることです。一般的なサッカーノートはサッカーのプレーや練習内容、その日の反省や日々のコンディションといった「サッカー面」にフォーカスしたものです。サカイクキャンプも最初はそのような内容でノートを制作していたのですが、「サッカーの話だけだと、子どもたちは正解を探して書くようになり、自由に自分の考えを書くところから離れてしまっていた」(菊池コーチ)という面もあり、改良を加えました。たとえば、1ページ目の質問は「なりたい自分に近づこう」というテーマで「どうしてサッカーをはじめましたか?」「サッカーの好きなところはどんなところですか?」「いつも応援してくれる人は誰ですか?」など、「自分を知る」ことから入っていきます。それらの質問を考えた藤代さんは、理由を次のように明かします。「サッカーノートを書く=反省するというイメージを持っている指導者や選手が多く、書くことが長続きしないケースも見てきました。サカイクさんもそうですし、僕もそうですが、サッカーノートを成長するためのツールとして、ポジティブに活用してほしかったので、最初のページに『質問の答えに正解はないから、楽しんで答えよう』というメッセージを入れました」■子ども自身が「成長したい」という気持ちになる工夫サカイクサッカーノートは「目標を達成するための、小さな一歩」を積み重ねることを大切にし、「1ヶ月後、どうなっていたら最高ですか?」「そのために、どんな工夫をしますか?」など、書いて終わりではなく、なりたい自分をイメージし、そのためにどうすればいいかという、行動に落とし込むように作られています。竹原部長は、サカイクサッカーノートの開発についての想いをこう語ります。「大人でもそうですが、真っ白いノートを渡されて『考えて書きなさい』と言われても難しいですよね。ビジネスには『フレームワーク』という言葉がありますが、子どもにもある程度、思考の枠組みを与えてあげることが大切だと思います。ただ、それは型にはめるという意味ではありません。サカイクサッカーノートは、子どもたちが自由に考えられる余白も大切にしながら、子ども自身が『成長したい!』というマインドセットになるための工夫をたくさんこらしています」竹原部長の意見を受けて、藤代さんは「サッカーノートを個人で完結させるのではなく、監督やコーチ、チームメイト、お父さん、お母さんとのコミュニケーションツールとしても使ってもらえたらいいですよね」とイメージを語ります。「サッカーノート書き終えた後に、友達同士で見せ合うと、互いに全然違う答えを書いていることがあります。そこで相手を知ることができますし、比較対象がいることで、改めて自分の考えが明確になったり、自分が大切にしていることがはっきりします。なので、ノートは一人で完結するのではなく、他者と関わり合いながら作ってほしいと思います」■キャンプで導入したら保護者にも好評実際にサカイクキャンプでは、サッカーノートを使い、一日の最後にノートを書く時間を設けています。菊池コーチは「コーチが『ノートを見ながら、グループで話し合おう』と言わなくても、自然と、子どもたち同士で『何て書いた?』とコミュニケーションが生まれています」と笑顔を見せます。サカイクキャンプが終わり、家に帰って親御さんにノートを見せながら、「1日目はこんなことがあって......」と話をするお子さんもいるとのことで、保護者からは「サッカーノートを通じて、子どもの様子が知れるので良い」と評判のようです。藤代さんは「保護者の方々は、お子さんがどんなことを考えているのか、表面的なことは知ることができても、奥底の部分を知るのは難しいもの」と言います。「子どもの様子を見て、『うちの子、やる気が見られないんです』『すぐ諦めちゃうんです』という感想を持つ親御さんがいますが、表面的に見えるものだけでは、わからないことがあります。子どもが奥底に持っている気持ちを、親御さんにも知ってほしいという願いから、子ども自身が進んでたくさん書くことができるようなノートにしました」■サッカーノートを続けさせるポイントサッカーノートを継続して書くのは大変です。一人で書くだけだと、途中で飽きて辞めてしまうかもしれません。藤代さんは「ノートに対して、好意的に関わってくれる人がいると、長続きすると思います」とアドバイスを送ります。「コーチが子どもたちに提出させて管理をするか、罰則やルールを設けないと、続かないという声も耳にしますが、指導者や保護者など、ポジティブなメッセージを送ってくれる人が周囲にいて、好意的に関わってくれる人がいると、続けやすいと思います。それがお父さん、お母さんなど、子どものことを一番に考えて、応援してくれる人であれば最高ですよね」成長への考え方を身につけて、サッカーに対して前向きに取り組むための助けとなる、サカイクサッカーノート。チーム単位で使用したり、親子間のコミュニケーションツールとして活用するなど、使い方は様々です。ぜひ、お子さんの成長に、役立てみてはいかがでしょうか?
2020年10月21日秋や冬、春先など寒さを感じる季節のサッカーには防寒ウェアが欠かせません。この記事では、防寒ウェアの1つである「ピステ」についてその概要からメリット・デメリット、選ぶ時のポイントなどについて解説します。サッカーを始めたばかりでどのような用具を買えばいいのかわからない、というお子さんやその保護者の方はぜひ参考にしてみてください。ピステとはピステとは、サッカーの練習時に着用するウェアの1つです。主に使用されるのは長袖タイプのピステで、冬場などの防寒対策として活躍しています。多少の雨や風なら寒さをしのぐことができるので、身体を冷やすことなくプレーすることができるでしょう。裏地にメッシュや起毛が使われており、保温性の高いものや薄手の生地のものなど、バリエーションも豊富です。ピステは前面にファスナーがなく頭からすっぽり被るプルオーバータイプの防寒着のことウィンドブレーカーやジャージとの違いサッカーの防寒着というとウィンドブレーカーやジャージを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。これらのウェアも防寒対策として活用はできますが、ピステとの大きな違いがあります。それは、ウィンドブレーカーやジャージにはチャックがついていることです。サッカーの場合、胸でボールをトラップすることもあるため、チャックがあると胸トラップの際に金具にボールが当たり痛い思いをする可能性があります。一方で、ピステはチャックがなく頭からすっぽりとかぶるタイプのウェアなので、トラップ時に痛みを感じることもありません。ピステのメリットピステを着用すると様々なメリットが得られます。ここでは、ピステのメリットについて解説します。動きやすいウィンドブレーカーやジャージの場合、チャックがついていることもあり、着用時に重たさを感じることがあります。重いと動きにくくなってしまうため、いくら防寒対策になっても練習中の着用には向いていないケースもあるでしょう。一方で、ピステであれば、チャックがなく、非常に軽いため動きにくさを感じることはありません。選手のプレーの妨げにもならない点はピステの大きなメリットです。コンパクトになる薄手の生地のピステであれば、コンパクトな状態に畳むことができます。サッカーの練習に行く場合、ボールやシューズ、飲み物など荷物が多くなりがちなので、コンパクトになるピステは非常に便利でしょう。撥水性・速乾性に優れているものもピステの素材によっては、撥水性・速乾性に優れているものもあります。そのため、多少の雨や雪の中での練習であれば、特に濡れていることを気にすることもないでしょう。また、洗濯後はすぐに乾くので、練習が続く場合や練習の翌日に試合がある場合など、2日連続での使用にも向いています。洗濯をする親にとっても重宝するはずです。デメリットメリットの多いピステですが、デメリットも少なからず存在します。それは、薄手のピステの場合、生地が破れやすいことです。例えばプレーの最中にスライディングをしたり、転んだりすると破けてしまうケースもあるので注意してください。ピステの選び方ここでは、ピステを選ぶ際のポイントについて解説します。購入時は着用時のシチュエーションを考えて選ぶのがポイントです。サイズは少しゆったりしたものピステは、基本的に中にユニフォームや練習着を着た状態で着用します。そのため、サイズは少し大きめのものを選ぶようにしましょう。ユニフォームや練習着と同じサイズを選ぶとピステ着用時にパツパツになってしまうので注意してください。安いものを購入するのも◎デメリットとして紹介したように、ピステは破れやすいという特徴を持ちます。高価なものを買ってすぐに破けてしまう、となると後悔するかもしれません。そのため、破けて買い換えることを想定して、安いものを購入するのも1つの選択肢となります。まとめ今回は、ピステの概要とメリット・デメリット、さらには選び方などについて解説しました。寒い季節の練習には防寒対策が欠かせません。チャックがなくトラップ時に痛みを感じず、動きやすいピステは練習時におすすめです。バリエーションも豊富なので、お子さんに合ったピステもきっと見つかるでしょう。
2020年10月20日サカイクには、読者のみなさんからの声がたくさんの寄せられます。その中で多かったのが「Jクラブのセレクションについて知りたい!」というもの。いろんなチームでセレクションやスカウト活動がありますが、実際Jリーグの育成組織ではどんなポイントに注目しているのか気になる方は多いようです。そこで今回は川崎フロンターレのアカデミースカウト担当の大田和直哉さんに協力していただき、フロンターレのセレクション事情について伺いました。前編では、コロナの影響で始まった、オンラインスカウト『F活』や、セレクションでの評価ポイントなどをお伝えします。(取材・文:鈴木智之)日本独自の制度「トレセン」の意義とは(写真は少年サッカーのイメージ)■リモートスカウト活動「F活」とは――大田和さんの肩書は「アカデミー スカウト担当」とありますが、普段はどのような活動をしているのでしょうか?川崎フロンターレアカデミーのスカウト担当として、Jrユースに入る選手、ユースに入る選手に対するスカウト活動をしています。小学6年生と中学3年生をターゲットとしていますが、小学生は2年生から、中学生は1年生の大会から視察に行っています。クラブには、アカデミー担当のスカウトが私ひとりしかいないので、コロナの前は、土日は一日3、4会場回って、試合を見ていました。――コロナで選手を見る機会が減ってきていることもあり、『F活』というリモートスカウト活動を始めたそうですね。はい。今年の6月末から、『F活』というリモートスカウトをしています。企画当初、8月末までは小学5年生を対象にしていたのですが、9月中旬から小学4年生、5年生に広げています。内容としては、最大5分の自己紹介を含めた、自由な動画と、編集していない試合の動画を送ってもらっています。――『F活』で対象としているのは、現小学4、5年生なので、2022年にJrユースに入る選手ですね。はい。2021年に入学する選手(現小学校6年生)のスカウトとセレクションは、9月に実施しましたので、その次の学年の選手を対象にしています。――『F活』の応募条件に「エリートクラスに通うことができる範囲に住んでいること」とありますが、遠方から通っている子は、どのあたりから来ているのでしょうか?クラブとして1番は川崎市の選手がたくさん来てくれる事を願っていますが、実際には神奈川県内各地や東京の多摩川沿いの地域の選手も多く在籍していて、アカデミーの選手では千葉や埼玉から通っている子もいます。川崎は交通の便が良いので、遠方からも通いやすいと思います。――フロンターレのトップチームは、2017、18シーズンを連覇していますし、アカデミーからトップに昇格して活躍する選手も増えてきているので、子どもたちからの反応も良いのではないですか?トップチームは素晴らしいサッカーをしていて、スカウト活動に行くと、たくさんの指導者様にそう言ってもらえます。ですが、アカデミー組織を見ると、FC東京さんや(横浜F・)マリノスさんは、ユース年代でプレミアリーグに所属しています。我々はひとつ下のプリンスリーグなので、追いつき、追い越せを目標に活動しています。――フロンターレジュニアには、U-10とU-12のカテゴリーがあります。U-10に入るのにも、セレクションがありますよね。はい。U-10は小学4年生を中心に、3年生も数名いるので、セレクション自体はU-8、U-9の子が受けるもので、毎年9月中旬に行われます。6年生が受ける、Jrユース(U-13)のセレクションは、夏休み明けの9月初旬から始まります。セレクションは1次、2次とあり、それ以降は3次や練習参加といった形になります。――何人ぐらい受けに来るのですが?U-10の場合、今年は2日間、3部に分けて行ったのですが、1回60人なので、全部で180人ほどになります。その中で合格するのは、学年によって違うのですが、1学年10人程度で運営しているので、3年生の場合、現U-10カテゴリーに3年生が4人いるので、セレクションで合格する子は4~6名程になります。■U-10とU-12では評価ポイントが変わる!?――セレクションでは、どのようなことをするのですか?走力テスト(30m走)をして、一次セレクションはミニゲーム。二次セレクションから8人制に近づいていきます。一次セレクションは参加者が多いので、見逃しがないように、アカデミースタッフだけではなく、スクールコーチの力を借り多くのスタッフでチェックをしています。――評価ポイントはどこでしょうか?U-10に関しては、抽象的になってしまうのですが「何かを持っている選手」です。それが技術、スピード、身体的な特徴、声を出して指示が出せる(リーダーシップ)など、こうでなければいけないと型にはめるのではなく、その選手を見ていて「この部分がいいな」と感じるものがあるかどうかですね。――U-12になると、評価のポイントが変わってくるのですか?フロンターレではジュニアやエリートクラスなどの内部選手を1番に考えているので、Jrユースに向けて、足りないポジション、強化したいポジションの選手を選ぶこともあります。また、Jrユースは11人制になるので、身体能力の高さなどもチェックしています。――U-12は何人所属しているのですか?今年の6年生は16人います。その中からU-13に上がるのは16人中10人、昨年は13人中12人、上がりました。この数字からもジュニアで預かった選手を大事に育成し、上のカテゴリーにつなげる指導が出来ていると思っています。エリートクラスにも選手がたくさんいるので、そこからU-13に入る子もいますし、スカウトで入る子もいます。――12歳の時点で、将来を見極めるのは非常に難しいですよね。うちのクラブでJrユースに上がれなかった子が、別のJクラブに行って、1学年上のカテゴリーで試合に出て、活躍したケースもあります。Jrユースからユースに上がれなかったけど、高校サッカー選手権で活躍した、浅倉廉(静岡学園→拓殖大学)のような選手もいます。横浜FCさんでプロになった安永玲央は、フロンターレのJrユースからユースに上がれず、横浜FCユースに入ってプロになりました。セレクションでは全てを見ることが出来ないので非常に難しい決断をしなくてはいけません。先に述べたように選手の成長時期は人それぞれで、セレクションで合格しなかったり昇格できなかった選手が活躍している例もたくさんあります。「セレクションに落ちた=サッカー選手になれない」と思うような認識にならないで欲しいです。■昇格できなかった子たちの「その後」も追っている――ジュニアからJrユース、Jrユースからユースと、上のカテゴリーに昇格できなかった選手を継続してチェックしているのですか?はい。チェックしています。これまではいませんが、ジュニアからJrユースに昇格できなかった選手が他のクラブに行って、ユースに上がるときに戻ってくるケースも考えられます。ただし、Jクラブに行きたい子が多いので、別のJクラブのJrユースに入ると、そこからうちのユースに戻ってくるのは現実的ではないのですが......。最近はジュニアからJrユースに上がれなかった子に、近隣の街クラブを紹介して、そこで成長して、ユースの段階でフロンターレに戻ってくればいいなという考えも持っています。エリートクラスに入っている子でも、Jrユースに入れない場合もあるので、進路先をサポートしてあげて、Jrユースは街クラブでプレーして、ユースからうちに来るという流れも少しずつでき始めています。――リソース的にすべてを自分のクラブで賄うのではなく、近隣に良い育成をするクラブがあれば、そこと協力しながら選手を育てるのは、理にかなっていますね。中学生年代で試合に出ることはすごく大切です。親御さんが、お子さんをJクラブに入れたい気持ちもわかりますが、僕としては、その子がチームの中心としてプレーできる環境にいた方が、今後の成長につながると思っているので、クラブとしてもそのような取り組みをしていますし、より多くの選手を育成できる方法を検討しております。大田和直哉(おおたわ・なおや)神奈川県出身。少年時代には川崎フロンターレ U-15に所属。2008年から2016年まで川崎フロンターレスクール・普及コーチを務め、2009年には3種神奈川県トレセン川崎北地区コーチも兼務。2017年広州富力足球倶楽部U-10監督に就任。2018年からアカデミー部門のスカウト兼コーチを務めている。所有ライセンス:日本サッカー協会公認B級ライセンス
2020年10月19日努力しろ、朝練しろ、やる気が見えないと言い、休日は朝から息子を公園に連れていき、いろんなメディアで集めたトレーニングを実践するスパルタで過干渉な妻を変えたい。というお父さんからのご相談をいただきました。うまくはないけど楽しくサッカーをしていたのに、母親のダメだしと強制練習でサッカーが嫌いになってしまうことが心配だと言っても「子どものためなの!あなたは甘い」と言われ話し合いができなくて......とお悩みをいただきました。今回のご相談に、スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんは、ご自身も同じような体験があると言います。かつての体験と取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<サッカーチームでいじめ?親はどう振舞えばいいのか問題<サッカーパパからのご相談>このコーナーは母親からの相談が多いようなのですが、妻の過干渉などについて相談させてください。9歳の息子がサッカーをしています。監督からチームの方針などは事あるごとに言われているので、試合や、練習中は指示や大声を出すことはないのですが、帰ってからはダメだしばかりです。努力しろ、朝練しろ、やる気が見えないと言い、休日は朝から息子を公園に連れていき、サカイクをはじめとしたいろんなメディアで集めたトレーニングを実践しています。私の方は、プロになってほしいわけでもないですし、まだ3年生なのでコーチの言う事に耳を傾けたりチームメイトと仲良く協力できればいいのでは、と思っています。何より妻のスパルタで子どもがサッカーだけでなくスポーツを嫌いになってしまう方が嫌です。なので「子どものスポーツに熱くなりすぎだよ」と言うのですが、「息子のためを思ってやっているの。何が悪い。あなたの考えが甘い」と話を聞いてくれません。息子はレギュラーではなくチームの中では平均的か少し下手なぐらいです。それでも試合は楽しそうにしていたのですが、最近は妻のダメ出しと強制自主練でやる気が無くなってきているように思います。私自身は楽しんでいてくれればいいよ、と伝えているのですが、子どもにとって母の影響は大きいもので、このままサッカーが嫌いにならないか心配です。親の過干渉が子どもにとって良いことはないと思います。家庭で解決する問題なのかもしれませんが、先輩ママとして島沢さんのアドバイスをいただけませんでしょうか。<島沢さんのアドバイス>わわわ!デジャブかと思いました。奥様、十数年前の私とよく似ています。この度はご相談をいただきありがとうございます。私も息子が小学3年生くらいまで、試合中はぎゃんぎゃん叫んでいました。ただ、私はビデオでダメ出しをしたり、自主練させたりはしませんでした。それは、仕事で忙しく、息子のサッカーに分配するエネルギーが残っていなかったためで、余裕があればやってしまったかもしれません。ただし、そんなふうに「ダメなヤツ」だったので、奥様含めた多くのママやパパがついつい熱血になってしまう感覚や理由が理解できます。■息子がより幸せな人生を送れる基盤を作ろう、と夫婦で同志感覚を持つ立派な指導者の方々は、なぜあんなに熱くなるのかわかりませんねえと「僕らは君らとは違う感」を醸し出すのですが、私は心の片隅でホントかいなと疑っています。何の後悔も失敗もせず、最初からとても良くできた親など、ほとんどいません。特に、圧迫して子どもを奮起させる教育観が強い日本では、親たちもそうやって育てられています。よく言われることですが「育てられたように育ててしまう」のはある意味当然なのです。私は自分のライターという仕事のなかで、さまざまな子育ての専門家に出逢い、その方々の知見とエキスを呑んで、自分の子育てをある程度変えることができました。しかしながら、それと同様、あなたに奥様の子育てを変えるエキスになれとは言いません。ここで大事なのは「一緒に子育てを勉強して、少しでもいい親になろうね」という"同志感覚"です。われらの息子をよりよく、より幸せな人生が送れる基盤を作ろうぜ――そんなふうに奥様に寄り添う姿勢と心構えをまずはをつくってください。■考えが甘いのは過干渉しているほう。子どもの成長を阻害している以下、具体的なアドバイスを五つ贈ります。①子育てに関する本を読んで勉強するネットで「サッカー子育て本」と検索してみてください。書籍名でトップにあがるのは『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』と『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』です。これらは、今や「少年サッカーの神様」と言われる池上正コーチの書籍で、私が一緒に作った本です。少年サッカー親の子育てバイブルと言われているものなので、ぜひ参考にしてください。ほかに、脳科学者の林成之先生が著した『<勝負脳>の鍛え方』(講談社)という新書もお勧めです。子どもの発達が理解できます。②自分の自信を作るあなたが「妻のスパルタで子どもがサッカーだけでなくスポーツを嫌いになってしまう方が嫌」で、「子どものスポーツに熱くなりすぎだよ」とアドバイスすることはまったくもって正しい。正しいけれど、今のところ「息子のためを思ってやっている。あなたの考えが甘い」と一蹴されています(サッカーだけに。いや失礼!)。ところが、考えが甘いのは、実は妻のほうです。なぜなら、言うことを聞かせ、無理やりでも自主練をやらせていることは、こうしなさい、ああしなさいと働きかけているので、子どもは自分で「上手くなるにはどうしたらいいんだろう?」と考えることもしなくていいし、楽です。お母さんの言うとおりにして、それでも上手くならなかったら、思春期になって「お母さんのメニューが悪かった!ちっともうまくならないじゃないか!」と怒ってちゃぶ台をひっくり返したり、家庭内暴力に出ます。楽をした(させられた)分、こころ(脳)が成長していないので、自分で段取りして前進しなくてはいけない年齢になると、一気に成長が止まってしまうのです。一方で、わが子に主体性を持たせるような子育てをしている家庭の子どものほうが、中学、高校でスポーツも勉強も大きく伸びます。「もっと上手くなりたいなら自分で考えてごらんよ。ただ、ママもパパも楽しくサッカーしてくれればそれでいいけどね」子どもと距離を置き、その子に対し主体性を求める。それこそが、本当の厳しさです。そんなことに比類する事柄とその根拠が、ご紹介した本にたくさん書かれています。それを読んで、あなたのほうが自信をもってお母さんと向き合える態勢を整えてください。■過干渉な親は賢い人が多い。だからこそできる解決法③自分と向き合う本にこうこう書いてあるんだよと伝えるのが目的ではありません。まずは、ご自分に自信を持ってほしいと思います。なぜなら、ご相談の文章を読むと、あなたは息子さんのために何をすべきかをすでに理解しているし、行動も起こしています。全面的に正しい(拍手です)。しかしながら現時点では「妻のダメ出しと強制自主練でやる気が無くなってきている」状態で、このままサッカーが嫌いにならないかと心配しつつも、話が通じない妻に対しお手上げ状態。いつ順番が回ってくるかわからないこの相談コーナーにメールを書かれるのですから、メール文以上に深刻な状況と察しています。問題を解決するためには、まず、妻ではなく、あなたが自分と向き合い、変わることです。お父さんは、きっととてもやさしい方だと思います。そのやさしい性格のまま、一日も早く自信をつけてお母さんと話し合って下さい。④どんな子育てがいいかを話し合ういきなり過干渉はやめろと切り出すのではなく「最近、やる気失ってるみたいだよね。ちょっと話し合わない?」と二人でテーブルにつきましょう。ケーキとかお茶を用意して、世間話のように。最初に、妻の奮闘をねぎらってあげてください。子育てよく頑張ってるよね、と。子に過干渉な親は総じてエネルギーがあり、賢い方が多いようです。できる人だから、サッカーの練習方法など情報を集められるわけです。でも、ママ、どうもちょっと違うようだ。僕と一緒に、サッカー少年の子育てを勉強しようよ。少し違う頑張り方をしないか?と提案してみましょう。■相手を許しながら、少しずつ変えること(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)⑤干渉することをひとつずつ減らす・自主練は、息子さんから誘ってこなければやらない。・試合後のダメ出しはやめる。ひとつずつ、なくしましょう。「いや、ママ、上手くなってほしいという気持ちはわかるけれど、そこは譲れない。わが家では、こういう子育てにしようって話し合ったよね」奥様を許しながら、変えていく。そんなイメージです。お父さん、落ち込むことは何もありません。妻の過熱癖に早く気付いてよかったのです。たかが子どものサッカー。そこを忘れてほしくないので、文中に寒いシャレなど挟んでみました。ピンチのときは、大人も子どもも成長する時間です。ここを切り抜ければ、とても素敵な家族になれると思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年10月14日サッカーをする子どもたちや保護者にとって、興味の対象である「トレセン」について、日本サッカー協会(JFA)ユース育成ダイレクターの池内豊さんに話をうがかいました。インタビュー後編では、トレセンの意義やオフ・ザ・ピッチでの取り組みなどをお伝えします。(取材・文:鈴木智之)日本独自の制度「トレセン」の意義とは(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:トレセンは日本代表への切符?どんなスキルを重視しているの?日本サッカー協会に聞いた最新トレセン事情■トレセンは日本独自の活動なぜ海外にはトレセンがないのか池内さんはトレセンの意義について、まずはこう話します。「トレセン活動の意義として、拮抗したレベルで練習や試合ができることがあります。子どもたちに『お山の大将』で満足しないように刺激を与え、勝ちか負けかどちらに転ぶかわからない相手と試合をする中で、『どうすれば、相手を上回ることができるか?』を考えるようになります。その環境を用意するのが、トレセン活動の意義のひとつです」上達のためには、レベルの拮抗した相手と試合やトレーニングをすることが必要です。その環境があれば、子どもたちは自ら考え、成長するための努力に視線を向けていきます。「ヨーロッパには、シーズンを通したリーグ戦があり1部、2部、3部とカテゴリーに分かれていることで選手のレベルに応じたリーグに参加できる環境が整っています。そして、一番上のカテゴリーである1部のクラブに、質の高い選手がいます。日本も育成年代にリーグ戦を導入し始めましたが、クラブのカテゴリー分けも含めて、整備している途中です。そのため、色々なチームに良い選手がいます。そこでトレセンを活用し、選手の発掘や刺激を与える場としています」池内さんは「ドイツには、日本のトレセンを参考にした活動がありますが、それ以外の国には存在しないと思います」と話し、その理由を「育成はクラブでするものという考えがあるからではないでしょうか」と言います。日本のジュニア年代では、リーグ戦を最優先ととらえないクラブも多く、ヨーロッパのように、リーグ戦を中心シーズンが進んでいく文化が浸透していないのが現状です。シーズンを通して、レベルが拮抗した相手との試合ができれば、一番の強化になるのですが、トーナメント形式をベースとした大会が多く、リーグ戦がカレンダーの中心になっていない以上、トレセンという日本独自の活動が広まってきたことも合点がいきます。■トレセンで実力を存分に発揮するための準備日本サッカー協会としても、トレセンをさらに有効活用できるように、リーグ戦の導入と平行して、トレセンの整備にも取り組んでいるようです。「これまで、トレセンの指導はボランティアの方々に支えられてきました。その環境を少しでも良くするために、47FA(都道府県サッカー協会)に技術の専任者を置いて、地域のトレセンのリーダーになってほしいと思っています。そこにJFAが補助金を出す形で進めていて、47FAのうち20ほどの地域で実施しています」静岡県では、すでにその制度が導入されていて、JFAのサポートを受けた専任者が指導しています。池内さんは「指導の質が上がり、選手のレベルも上がってきました。その成果が、(2019年の)国体(U‐16)での優勝にもつながっていると思います」と手応えを口にします。トレセンやセレクションなどの「選ばれる舞台」でプレーするのは緊張するもの。なかでも、経験の少ない子どもたちは、緊張して普段の力が出せないといったこともあるでしょう。そんな子どもたちに対し、池内さんは「前日や当日に何かをしたとしても、大きく変わることはありません。だからこそ、そこまでに何ができたか、いい準備ができたかが大切になります」とエールを送ります。「トレセンやセレクションで力が発揮できなかった、メンバーに入れなかったとしても『自分はこれだけやってきたのだから、後悔はない』という心理状態になれるかどうかです。プレー会場で不安を感じるのは、やり残したことがあるということ。次はそうならないように、頑張るしかありません。12歳のときにトレセンに選ばれなくても、コツコツやってきた子が追い越していく例は、たくさんあります。次のチャンスは絶対にあるし、それが報われる環境が日本サッカーにはあります」■サッカーがうまくなるために必要なことは日常生活にも関わっているトレセンではオン・ザ・ピッチのプレーに加えて、日常生活での取り組みや姿勢も大切にしているそうです。JFAのトレセン活動では、「トレセンの選手として」と題し、生活習慣の5か条を制定しています。それが、次の5つです。1:自分の物の管理に責任を持とう2:ルールを守ろう3:あいさつをしよう4:サッカー選手として、何をすべきかをいつも考えよう5:何事も積極的に!前向きに!池内さんは「自分で判断して実行することなど、サッカーがうまくなるためにすることは、実際の生活にも関わってきます」と言います。「ただし、大人が『あいさつしろ』『片付けしろ』『準備しろ』と言って、子ども自身に理解させず、形だけやらせても意味がありません。指導者に言われたから、チームのルールだからカバンをきれいに並べるのではなく、なぜカバンを並べたほうがいいのかを考え、そのために行動することが大切なのです。それができたら、ピッチの中で自分で判断して、実行したことが力になり、サッカー自体も伸びていくと思います」ピッチ内外で自分で判断し、行動すること。レベルの高い仲間と切磋琢磨すること。そのような日々の積み重ねこそが、サッカー選手としての成長につながります。トレセンはその一助になりますが、12歳の時点で選ばれなかったといって、悲観する必要はありません。子どもも保護者もそれを念頭に入れて、一喜一憂せず、自らの課題に向き合って、地道にトレーニングしていくことこそが、成長のためにもっとも大切なことではないでしょうか。池内豊(いけうち・ゆたか)現役時代はフジタ工業クラブサッカー部などに所属、1981年には日本サッカーリーグ1部で新人王を獲得。日本代表としてワールドカップ予選にも出場。引退後は名古屋グランパスエイトユースで指導者の道に進む。2007年にU-15日本代表監督に就任、2009年のFIFA U-17ワールドカップでも指揮を執った。現在はJFAユース育成ダイレクターを務める。
2020年10月12日まだまだポジショニングの理解が浅く、相手選手やゴールとの距離感が上手くつかめていない小6の子どもたち。「幅と深さ」の意識が足りないという事だが、どう身につけさせたらいいのか。というご相談をいただきました。みなさんはどのように指導していますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、幅と深さを理解するのにお勧めメニューをご紹介しますので参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<U‐10年代の運動能力を高めたい。サッカーの時間にできるお勧めメニューを教えて<お父さんコーチからの質問>こんにちは。学校のチームで6年生を見ることになったのですが、どのように教えてよいのか悩んでいます。年齢的にももう団子サッカーではないですが、まだまだポジショニングというか、相手選手やゴールとの距離感が上手くつかめていない子がいます。幅と深さの意識が足りない、という事だと思いますが、練習でどのように教えれば理解しやすいのか、どんな練習方法が良いのか、という部分で悩んでいます。子どもたちはみんな同じ学校に通っていて、小1から一緒にサッカーを始めたメンバーなので気心も知れているし、お互い言いたいことを言える関係性なので、サッカーの理解度が深まればプレーの質もお互いのコーチングなどの質も上がるのではないかと思っています。中学以降もサッカー部に入る子が多いので、今のうちに意識させた方が良いだろうと思っているのですが、何かいい指導方法はありますか?<池上さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。距離感、サッカーで言うところの「幅と深さ」を理解する、させるメニューや明確な指導法が、日本ではあまり浸透していないようです。■幅と深さを理解する三つのステップ幅と深さを理解するには三つのステップがあります。横に広がると何が得か。深さがあると、どんなことが起きるのか。まずはここを子どもたちに説明してください。例えば、狭いエリアでボールをもらうと、相手のディフェンダーとも味方とも距離が近くなる。相手からすぐにプレッシャーを受けてしまって、逃げられない。要するに、ボールマンがプレーすりエリアが狭くなるわけです。混雑していて、相手ディフェンダーが塊になっているような状態なので、ドリブルやパスですり抜けられません。一方で、味方同士が広がっていれば、一人ひとりのプレーエリアが広いため、相手ディフェンダーがボールを取りに来ても交わしやすい(逃げやすい)。ボールを取られずにすむ。相手のディフェンダー同士の間隔が空いてくるので、間にパスを通しやすいし、ドリブル突破もやりやすくなりますね。それが「横」の説明です。この論理は、「縦」についても同じです。前に走ってボールを受ける。つまり、深くプレーすれば、ゴールに近くなります。ゴールに近いところにボールが入ったとしたら、そこにカバーリングにいける選手は少ないはずです。ディフェンダーと1対1の場面になりやすい。そうすると、チャンスになります。そして、これが、守備側の視点から教えるとすれば「ピンチになるよね」ということです。これをホワイトボードを使ったりして、まずは口頭で説明してください。■どうすれば幅が取れるか、プレーを止めて考えさせる二つ目は、ミニゲームです。説明を聞いて意識してプレーしようとしても、最初は狭くなりがちです。そういうときは、一度フリーズさせます。「はい、動かないで。そこにいて」と一度止めるのです。「今の状況を見てごらん。どうなってますか?」そんなふうに、問いかけます。選手たちが状況を理解しやすい場面でストップしているので、狭くなってプレーしづらい状態であることが可視化できます。実際、横に広がれず(幅を使えず)、真ん中に固まることが非常に多いです。「ほら、見てごらん?どうしたいいかな?」そこで選手と話し合います。「もっと、ぼくがタッチラインのほうに寄ったほうがいい」など、意見が出てきます。「じゃあ、何を考えると広がれるかな?」そのようなやりとりをしながら、時間をかけて伝えましょう。自分たちで気づいて、解決する時間を確保してあげることが重要です。私のこれまでの経験から言っても、6年生は相当時間がかかるでしょう。広がって、ボールもらうときに「次は何を考えるか。どう動くか」といったことがなかなか理解できません。狭い状況でも、自分ひとりでドリブルしてしまう場面が多いです。そうではなく、みんなが幅と深さを理解して、いいタイミングで動き出せば、ボールがサイドに渡って、一度真ん中のポストマンに当てて、ワンツーでもらったサイドの子が折り返す。ゴール前にポストマンや二線目から走り込んだ選手がゴールする。そんなイメージが持てるようにしたいものです。昔風にいえば「パターン練習」というのがあります。サイドに振って中に当て、逆サイドにまた振って折り返してゴールする。そんな練習です。それをすると、ひとつのパターンにとらわれてしまいます。それよりも、原理原則を伝えてください。広がると、こういうことが起きるでしょ?真ん中は、サイドに広がっているからこそ使える。そんな柔軟な理解です。これを理解すれば、真ん中に入れると見せかけて、サイド使うといった相手を欺くプレーができるようになります。■幅と深さを覚えるためにオランダが行うのは「5対2」三つめのステップは、幅と深さを覚える練習です。ひとりのプレーヤーが使うエリアを広くする。相手が寄ってきて狭くなったら、逆サイドにふる。そんな原理原則を学ぶために、オランダでは「5対2」を行います。その際、横長の長方形のグリッドを使います。正方形が二つ横に並ぶ感覚です。そこで、半分の正方形のなかで4対2をする、ひとりは逆の正方形で離れてポジションを取る。そんなイメージです。例えば、ゴールに向かって左側の正方形のなかで4対2を始めます。左の端のほうに寄せるイメージです。そこから、スペースを広げておいた右にパスをする。右の選手がドリブルでゴールに向かっていけば、守備の2人のうちひとりが寄ってきます。その状態で4対1の数的優位になっているわけです。ところが、6年生くらいになると反対に出せばいいと思うので、最初はすぐに逆サイドに蹴ったりします。2人も中間守備のままで、サイドから逆サイドへ渡るだけになりがちです。その場合はストップして、ゴールへ向かうなどして、相手守備をどちらかに引き寄せるのが重要だと伝えます。相手をしっかり引き付けてから逆に出す。その感覚を覚えてもらいます。そうすると、幅と深さが身につきます。■スルーパスとサイドチェンジの両方を学べる練習(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)オランダのこの練習が面白いのは、例えば左に引き寄せて守備2人がくると、その間を通して逆サイドに出せばスルーパスのイメージになります。一方、2人を引き寄せ、その外側から逆サイドにパスをすれば、それはサイドチェンジのイメージになります。オランダサッカー協会は、このトレーニングで、スルーパスとサイドチェンジの両方を学べると考えています。オランダでは1970年代から行われていた練習なのですが、低学年からそれをやっています。17歳以下のカテゴリーになると、前出の5対2をダイレクトパスでやらせます。私はこのトレーニングを、YMCA時代に6年生にやらせていました。そうすると、簡単に相手のプレッシャーを抜けられます。そうやって幅と深さを理解した子どもたちは、YMCAの全国大会でチーム全員が出場して優勝しました。最近スタートさせたアカデミーでも、小学3年生くらいからこの練習をやろうと思っています。また、拙書『サッカーで子どもの力をひきだすオトナのおきて10(DVD付き)】』で、最後の「サッカークリニック」の章で、これの参考になりそうなメニューの説明をしています。DVDでは、それらのメニューを私が実際に指導しています。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年10月09日サッカーをしている子どもたち、高学年になると「トレセン」の存在を知りますよね。チーム内で上手いと思っていた上級生がトレセンに呼ばれて行ってきた、というのを間近で見ることも増えます。プロになった選手たちも少年時代からトレセンに参加している経験を持つ選手も多く、上手くなりたい子どもたち、さらには保護者にとって「トレセンに選ばれるかどうか」は重大な関心事です。そこでサカイクでは、日本サッカー協会(JFA)のユース育成ダイレクターの池内豊さんに、トレセンの目的や選ばれる選手の特徴などをうかがいました。(取材・文:鈴木智之)トレセンでは何を見ているのか日本サッカー協会に聞きました(写真は少年サッカーのイメージ)■トレセンの目的はタイムリーに刺激を与えることトレセンとは、クラブを主とした選手育成と平行して、日本サッカー協会や都道府県協会、地区協会などが選手を選抜し、「個の育成」を目的に行う活動のことを言います。トレセンには、下から地区トレセン、47都道府県トレセン、9地域トレセン、ナショナルトレセンというカテゴリーがあり、U‐12年代から活動しています。トレセンの意義や目的について、池内氏は次のように言います。「トレセン活動自体は、30年以上前から始まっていて、12歳頃から選手をセレクトして、上を目指している子たちに、タイムリーに刺激を与えることを目的としています。(トレセン活動の最上位カテゴリーである)ナショナルトレセンでは、サッカーについての考え方などを、ナショナルトレセンコーチが選手たちにしっかりと伝え、最終的にはA代表につなげていきたいと思っています」トレセン活動の手応えについては「各地域から幅広く選手を見ることができるのは、ひとつの成果だと思います」と話します。「U‐12のナショナルトレセンから、U‐13/U‐14のエリートプログラムへの橋渡しができるようになり、エリートプログラムから、U‐15代表につながる選手が非常に多くなってきました。選手発掘の流れができてきたのは成果だと思います」■トレセンは将来を保証するものではない一方で、課題も感じているようです。それは、U‐15代表を経験した選手から、A代表へと上り詰める選手があまり見られないこと。「U‐12からU‐15までのつながりはできてきましたが、そこから上(A代表)への流れはまだまだです。私も監督をしていましたが、U‐17代表からA代表に進む選手は10%程度しかありません」これは言い換えると、12歳、15歳、17歳の時点で高い評価を受けていたとしても、将来どうなるかはわからないということです。池内氏もそこは認めていて、「U‐12のトレセンであれば、12歳の時点で良い子に刺激を与える場がトレセンであって、選ばれたからといって、将来につながる保証はどこにもありません。それは毎回のトレーニングで伝えるようにしています」と話します。「トレセンに選ばれたことで、選手や保護者が天狗になってしまうのは、我々が一番危惧することです。トレセンに選ばれなくても、悔しさをバネに頑張れば、絶対に次につながります」■「テクニック」とは判断力を伴うもの池内氏自身も、高校時代、自分以外のチームメイトのほとんどが国体メンバーに選ばれる中、選抜から漏れたことがありました。その悔しさをバネに「普段の3倍練習した」ことで、国体選抜を飛び越えて、年代別の日本代表に入った経験があるそうです。とくに12歳前後の年代は、成長による個人差が大きい時期です。身体の大きさ、パワー、スピードといった部分では、成長速度や生まれ月による影響など、様々なことが関係してきます。「私自身、育成年代に何十年と携わっていますが、子どもの頃は成長に個人差があるので、見極めが難しいです。12歳の時点では、プラスマイナス5歳ほど、成長に個人差があると言われています。指導者はそれを頭に入れて、評価することが大切だと思います」サッカーには、身体の大きさや成長スピードに関わらず、高めることができるものがあります。それがテクニック(技術)です。池内氏は「成長の個人差に関わらず、テクニックを身につけることは必要です。そこに早熟、晩熟は関係ありません」と、言葉に力を込めます。「テクニックとは、技術に加えて判断を伴うものです。状況を観て、判断して、一番良いと思うプレーを選択し、そのための技術を発揮する。そのすべてを『テクニック』という言葉に込めています。ボールを止めて、蹴る動作の質を高めるのは当然のことで、サッカーは動きながら、ゴールに向かいながら、どういうテクニックを発揮することができるかが大切になります。ぜひ、動きながらのテクニックを身につけてほしいと思います」サッカーの試合中、ボールに触っている時間はほんのわずかです。テクニックに加えて「オフ・ザ・ボールの動き」も同時に身につけていくことで、試合の中で消えることなく、攻守に関わることができるようになります。「テクニックの他に大切なのは、ボールを持っていない場面(オフ・ザ・ボール)での動きの質を上げることです。具体的には、ボールに近い所での攻守に渡るサポートです。攻撃ではボールを失わないためのサポートや、相手の守備を突破するためのサポート。守備では味方が抜かれた時のサポート、ボールを奪うためのサポート。ボールから遠いところでも、ポジションをしっかりととることを含めて、ボール周辺のオフ・ザ・ボールの動きは身につけてほしいと思います」■相手との駆け引きや判断を伴う中でのシュート練習をそして何より、「シュートのテクニック」を高めることにも、目を向けてほしいそうです。「サッカーの目的はゴールを決めることなので、子どもたち全般に言えることですが、シュートのテクニックはもっと練習してほしいですね。どこにボールを蹴るかというコントロールもそうですし、相手との駆け引きや判断を伴う中でのシュートは、もっとトレーニングした方がいいと思います」技術だけでなく、判断をともなう「テクニック」を身につけること。それが将来、良い選手になるために必要なことと言えるでしょう。トレセンでは、レベルの高い仲間と切磋琢磨することで、より精度の高いプレーをするためにはどうすればいいかを考えたり、コーチのアドバイスから刺激を受けられる場になっているようです。後編では、トレセンに向けた準備やリーグ戦の意義などについて、話は進んでいきます。池内豊(いけうち・ゆたか)現役時代はフジタ工業クラブサッカー部などに所属、1981年には日本サッカーリーグ1部で新人王を獲得。日本代表としてワールドカップにも出場。引退後は名古屋グランパスエイトユースで指導者の道に進む。2007年にU-15日本代表監督に就任、2009年のFIFA U-17ワールドカップでも指揮を執った。現在はJFAユース育成ダイレクターを務める。
2020年10月08日