更新日:2020/12/20
公務員の共済組合は生命保険の代わりとしておすすめ?メリット・デメリットも解説
- 公務員の共済組合とは
- 共済組合の保障
- 公務員とその妻の生命保険の必要性
- 共済制度のメリットとデメリット
- 公務員の方におすすめの保険
内容をまとめると
- 共済組合とは、公務員や私立学校職員が加入する社会保険組合で、医療に関する給付や年金などが給付される
- 共済組合のメリットは、保険料が比較的安いこと、幅広いリスクに対応していること、家族も被扶養者として加入できることなど
- デメリットはカスタマイズできないこと、共済貯金は共済組合が破綻した時に保護されないこと
- 公務員は共済組合があるので、ほとんどの場合生命保険に入る必要はなく、共済の保険でカバーできない自動車保険や火災保険などのみ加入すれば十分
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目次を使って気になるところから読みましょう!
公務員の共済組合とは?
まず、共済組合とは何かを知る必要があります。
独自の制度ですので、多くの人は「とっつきにくい」「むずかしそう」といった印象をもっているかもしれません。
ですが、基本的なしくみを理解していないと、いざというときにどのような助けがあるのかもイメージしづらいものです。
- 共済組合の基本的なしくみ
- 共済保険の保障内容
- 民間の保険会社との違い
共済組合は公務員同士で支え合うための仕組み
- 国家公務員共済組合法
- 地方公務員等共済組合法
- 私立学校教職員共済法
といった法律に基づき成り立っているのが特徴です。
組合員とその家族の生活を安定させ、福祉を充実することを目的につくられ、医療保険、年金基金の役割を担います。
共済組合は大きく分けて3種類
共済組合は、大きくわけて
- 国家公務員共済組合
- 各種地方公務員共済組合
- 私立学校教職員共済
と3種類あります。
名前のとおりですが、国家公務員とその家族を対象とする「国家公務員共済組合」、地方公務員とその被扶養者が加入する「地方公務員共済組合」、私立学校の職員とその家族が対象の「私立学校教職員共済」となります。
それぞれの保険者数および加入者数(被保険者数)は下記のとおりです。
保険者数 | 被保険者数(千人) | 被扶養者数(千人) | |
---|---|---|---|
国家公務員共済組合 | 20 | 1,079 | 1,121 |
各種地方公務員共済組合 | 64 | 2,872 | 2,714 |
私立学校教職員共済 | 1 | 563 | 349 |
※平成28年度末時点
国家公務員が加入する国家公務員共済組合の保険者数は、省庁ごとなどに分かれており全部で20組合です。
地方公務員の地方公務員共済組合は64組合存在します。
※詳しくは厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」をご参照ください。
共済保険の保障は「短期給付」と「長期給付」
共済保険の保障には
- 短期給付
- 長期給付
民間の保険会社と共済組合は何が違うのか
- 加入者の対象範囲
- 営利目的か否か
- 根拠となる法律
- 国家公務員共済組合であれば「国家公務員共済組合法」
- 各種地方公務員共済組合であれば「地方公務員等共済組合法」
公務員の共済組合は生命保険の代わりになる?
ここまで共済組合制度について解説してきましたが、そろそろ「公務員の共済組合は生命保険の代わりになるか?」という本題にはいっていきましょう。
ここでは、公務員の共済組合が生命保険の代わりになるかについて
- 基本的には十分カバーできる(生命保険の代わりになる)
- 公務員における民間の生命保険の考え方
- 生命保険がいらないケース
結論:理由がない限りは共済保険で十分
残された家族は遺族厚生年金(※2015年9月30日以前は遺族共済年金)が、18歳の誕生日がきてから最初の3月31日を迎えていない、またそれよりも小さな子どもがいる場合はさらに遺族基礎年金が受け取れます。
さらに加入組合によって詳細は異なりますが、一定金額を積み立てることで会員同士の相互扶助を行う組織である互助会から、死亡弔慰金や遺児育英資金給付金なども支給されます。
共済保険では補えない保障を民間保険でカバーするのが基本
さきほどの結論の根拠として、具体的な事例を見てみましょう。
亡くなった夫の平均月収が40万円、残されたのが妻と子ども1人として
- 遺族基礎年金は100万円程度
- 遺族厚生年金は老齢厚生年金×3/4相当で、このケースでは50万円程度
生命保険が不要な公務員の例
生命保険の必要性について、結論としては不要だということを述べてきましたが、公務員とひとくくりにいっても、それぞれの家族構成や貯蓄額などによって状況は異なってきます。
ここでは、特に民間の生命保険が不要な公務員のケースを考えていきます。
具体的には
- 独身である
- 共働きで子どもがいない
- 十分な資産がある
公務員の共済組合にはどんなメリットがあるの?
公務員の共済制度に加入していれば、多くの場合で生命保険を検討する必要性は低く、加入するとしても必要最低限の保障でよいということをお伝えしてきました。
充実している公務員の共済制度ですが、メリット・デメリットについても気になりますよね。
ここではまず、共済組合のメリットとして
- 保険料が比較的安い
- さまざまなリスクに対応している
共済組合のメリット①:非営利ではないので保険料(掛金)が安い
共済組合の保険料の計算式を見てみましょう。
共済会の保険料は
被保険者(組合員)の標準報酬月額×その年度の保険料率
で計算します。共済組合の事業はいくつかありますが、保険料は共済組合のそれぞれの事業
- 長期給付事業
- 短期給付事業
- 福祉・保険事業
ごとに別々に計算されます。
国家公務員と地方公務員の長期給付の保険料率は、2018年9月以後は民間企業勤めの一般のサラリーマンである厚生年金第1号被保険者と同じ、18.3%で固定されました。
一方、いわゆる健康保険にあたる短期給付の保険料率(平均)は下記のようになっております。
健康保険組合 | 協会けんぽ | 国家公務員共済組合 | 地方公務員共済組合 | |
---|---|---|---|---|
平均保険料率 | 8.31% | 10.0% | 8.20% | 9.36% |
健康保険組合については平成24年度、国家公務員共済組合および地方公務員共済組合については平成25年度のデータによる
従業員数700名以上の企業が設立することのできる健康保険組合や、中小企業を中心とした協会けんぽに比べ、特に国家公務員共済組合は保険料率が低く設定されているのがわかります。
地方公務員共済組合は大企業による健康保険組合よりはやや高いものの、やはり協会けんぽよりは低い保険料率となっています。
このことから、公務員は民間企業に勤める一般の被保険者よりも優遇されている傾向にあるといってよさそうです。
共済組合のメリット②:幅広いリスクに対応している
ここまでお伝えしてきたとおり、共済組合(連合会)には短期給付と長期給付があります。
短期給付からはいわゆる健康保険、長期給付からは年金(老齢・障害・遺族・退職)が支給されます。
つまり、共済組合という組織は、病気になったときや出産したときに必要な保障を受けられるだけでなく、退職したり障害をおったり、死亡したときにも必要な給付をおこない、組合員とその家族の生活をリスクから守ってくれるのです。
そういった意味で、幅広いリスクに対応している保険といえるでしょう。
共済組合のメリット③:家族を扶養に入れられる
- 日本国内に住所を有し、主に組合員の収入によって生計を維持されている配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟など
- 組合員(被保険者)と同一の世帯に属する3親等内の1.以外の者
共済組合の被扶養者となると、
- 保険料の支払わなくてよい
- 被扶養者の疾病に対しても短期給付が受けとれる
- 扶養手当が支給される
などのメリットがあります。
特に扶養手当については、一般の企業であっても規約で決められていればもらえますが、公務員の場合は法律でしっかりと定められているので確実に受けとることができ、お得な制度といえるでしょう。
具体的な扶養手当の支給額(国家公務員)は
- 配偶者13,000円
- その他6,500円(※配偶者がいない場合、親族の被扶養者1人目が11,000円になる特例あり)
となります。
地方公務員の扶養手当についても、組合によって異なるものの、国家公務員とほぼ同じ水準のようです。
公務員の共済組合のデメリットとは?
共済組合の制度は幅広く保障されるなどのメリットをみてきましたが、デメリットはあるのでしょうか?
そう多くはないですが、民間の制度の方が充実している点もあります。
共済組合制度のデメリットとして、
- カスタマイズができない
- 共済貯金においてペイオフが適用されない
共済組合のデメリット①:カスタマイズ手段がない
- 医療であれば健康保険とほぼ同じ内容+α
- 年金であれば厚生年金の内容
- 子どもが生まれたら死亡保障額を増やす
- 自身の健康状態をふまえて医療の特約をつける
共済組合のデメリット②:共済貯金などを運用する組合が破綻すると保障が受けられない
公務員の妻は生命保険に入った方がいい?
公務員の夫の扶養に入っている妻は、生命保険に加入する必要性があるでしょうか?
組合員が亡くなったときにはまず、遺族基礎年金に加えて長期給付から遺族厚生年金が支給されます。
前の項でも述べましたが、夫の平均月収が40万円で子が1人いる妻の場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金をあわせて月額12.5万円程度です。
遺族年金の額に、貯金や妻自身の収入などをあわせた金額と、残された家族が生活していくのに必要な金額の差額が「必要保障額」です。
必要保障額が限りなく0に近ければ民間の生命保険に入る必要はありません。
なお、住宅ローンを借りるときにはほとんどの場合、団体信用生命保険に入ることが要件になっており、契約者が亡くなってしまったときにはローンの残額に対する保険がおりるため、住居費については考えなくてもよいケースが多いでしょう。
また生命保険に入るとしても、やたらと多くの保障をつけるのではなく、必要保障額相当で十分だと考えられます。
参考:生命保険以外で公務員が入ったほうがいい保険とは?
これまで、公務員における生命保険の検討の必要性についてご説明してきましたが、生命保険以外の保険で、入った方がよいとされる保険はあるのでしょうか?
結論からいうと、共済組合の保険でカバーできない内容のみ、検討すべきだといえます。
ここでは、
- 公務員が入った方がよい保険についての考え方
- 公務員の方におすすめする保険
共済保険だけではカバーできない保障についてのみ加入を検討する
保険料は固定費の中でも金額が大きくなりがちで、家計への負担になりやすいものです。
予測できないリスクを恐れ、ついついたくさんの保障をつけてしまう方もいると思いますが、すでに加入している共済制度の保障内容と重複するような、もったいない保険の入り方は避けるべきです。
共済組合の保険ではカバーしきれない内容についてのみ、民間の保険に加入するのが効率的です。
たとえば生命保険であれば、何度か出てきている「必要保障額」相当の保障で十分です。
その他、具体的な「必要性が高い可能性がある保険」については次の項でご説明します。
公務員の方に加入検討をおすすめしたい保険を紹介
公務員の場合、共済制度と重複してしまうような保険に入る必要がないことはここまでご説明してきたとおりです。
死亡保険は死亡率が低い60歳までであればほぼいりませんし、収入保障保険などは配偶者が専業主婦(夫)だと必要になる可能性が高いですが、公務員に多い共働きのケースではあまり必要ありません。
ですが、共済の保険ではカバーしきれない項目もいくつか存在し、具体的には
- 自動車保険(任意保険)
- 火災保険
- 地震保険
公務員の方にとって生命保険は必ず必要とは限らない
今回は、公務員の生命保険の必要性などについて解説してきました。
最後に主なポイントをまとめてみます。
- 公務員は民間の生命保険に入る必要はあまりない
- 共済制度は比較的保険料が安く、幅広いリスクに対応している
- 医療保険へは扶養者も加入することができる
- 共済制度のデメリットとしては、民間のものに比べてカスタマイズ性が低いことや、共済貯金がペイオフの対象にならないことなどがある
- 共済制度ではカバーされない、自動車、火災、地震といった保険を検討するのがおすすめ