更新日:2020/12/29
私立高校無償化は不公平でずるい?所得制限のシミュレーションも!
- 私立高校無償化に対する世間の声
- 無償化の対象となる年収制限について
- 支援金額のシミュレーション
- 私立高校無償化の背景
内容をまとめると
- 2020年4月より、私立高校実質無償化制度が始まった
- 年収によっては最大396,000円が支援金として支給され、私立高校の平均授業料を上回ることから「実質無償化」とされている。
- この制度には、”不公平だ”という声がある
- 不公平だといわれる理由には、年収制限がある
- 支援金額の判定については、課税標準額が基準となっている
- 世帯年収や家族状況によって支援内容は異なるので、学費に不安がある方はお金のプロに相談するとよい
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目次を使って気になるところから読みましょう!
私立高校無償化は不公平・ずるい・おかしいという声が!
私立高校無償化については一見誰もが喜ぶ制度のように思えますが、制度の適用には年収制限があることから、以下のように不公平・ずるい・おかしいといった反対意見も聞かれます。
年収1,000万円超なので対象外となる。年収が高い分、多くの税金を支払っているのにその恩恵を受けられず、他の家庭の学費に充てられるのは不公平だ。(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3481774)
子どもが教育を受ける権利は平等であるべきはずなのに、そこに年収による線引きをするのはおかしい(http://kvoice.pref.fukuoka.lg.jp/voices/detail/id:1724)
例え年収が低くても、不動産や金融資産を多く持っていて生活に余裕がある人もいる。一方で、年収は高いが資産もなく生活にそこまで余裕がない場合もある。それなのに年収だけで判断されるのは不公平だと思う。(https://realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/14137303774/)
私立高校無償化が不公平だと言われる理由は世帯年収や所得制限にある!
- 制度の対象となる世帯の年収制限について
- 世帯年収の計算方法について
- 家庭の状況別の支援金額について
世帯年収が910万円未満の家庭に支援が!590万円未満は実質無償化!
私立高校無償化の対象となるのは、世帯年収が910万円未満の家庭です。なかでも、令和2年4月の制度改正により、世帯年収590万円未満の家庭への支援金額が引き上げられています。各年収ごとの支給額については、以下の見出しにてご紹介します。
この引き上げによって、年収590万円未満の家庭への支給額が最大396,000円となり私立高校の授業料の平均額を上回ったことから、「実質無料化」といわれています。
実際に支払う授業料が免除されるのではないこと、高校の授業料によっては実質無料とならないことにご注意ください。
支援金額の判定基準となる計算方法
令和2年7月以降の、私立高校授業料の支援金の額は、以下の計算で算出された金額をもとに決まります。
市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額
調整控除とは、扶養控除などの家族状況に応じた控除のことを指します。また医療費控除などの所得控除は基準となる課税標準額を引き下げますが、ふるさと納税などの税額控除については課税標準額に影響しません。
ここで算出した額が154,500円未満の場合は、最大額である396,000円が支給されます。
支援金額を両親の働き方(共働きかなど)や子供の数でシミュレーション!
支援金額は、共働きか片働きか、子どもは何人かなどによって異なります。ここでは家庭の状況に応じた、世帯年収と支援金額について具体例とともにご紹介します。
家庭の状況 | 118,800円の支給 | 396,000円の支給 |
---|---|---|
片働き・高校生の子ども2人 | ~約950万 | ~約640万 |
片働き・大学生と高校生の子ども | ~約950万 | ~約650万 |
共働き・高校生の子ども2人 | ~約1,070万 | ~約720万 |
共働き・大学生と高校生の子ども | ~約1,090万 | ~約740万 |
(出典:文部科学省 私立高校授業料実質無償化に関するリーフレット)
ここでいう高校生は扶養控除の対象者、大学生は特定扶養控除対象者です。将来の教育費を検討するにあたっては、働き方はどうするのか、どのくらいの世帯年収を想定した働き方をするのかを考えるようにするとよいですね。
一方、母子家庭や低所得世帯では私立高校無償化に賛成の声も
制度利用に年収制限があることから、高校授業料実質無償化については不公平との声がある一方で、母子家庭や低所得世帯にとっては経済状況を理由に子どもの進路の選択肢を狭めなくてすむと賛成の声もあがっています。
本来、子どもが教育を受ける権利は平等です。しかし、母子家庭など経済的に余裕のない世帯ではどうしても比較的学費の高い私立高校への進学を諦めてしまうことがあります。
年収によって支援額に差を設けることで、本当に困っている世帯に対して授業料の実質無料を実現し、母子家庭や低所得世帯でも私立高校への進学がしやすくなっています。
私立高校無償化はいつから始まった?無償化に至った背景と反対する意見
私立高校授業料無償化に先出ち、公立高校については2010年に当時の民主党政権下で無償化が実現しています。
その後、2017年に連立与党であった公明党が制度の拡充による私立高校実質無償化をマニフェストに掲げ、2020年4月に私立高校授業料無償化実現に至っています。
ここでは、無償化実現までの背景などについて、以下のとおりご説明します。
- 公明党、自民党の私立高校無償化に対する意見
- この制度について、不公平だとの声が挙がる背景
公明党の私立高校無償化に対する意見
私立高校無償化については、連立与党である公明等が2017年の選挙の際にマニフェストとして掲げています。
そもそもは2010年の当時の民主党政権のもと、公立高校の実質無償化が実現されました。これは公立高校の授業料平均である118,800円を就学支援金として支給するものです。公立高校の平均の授業料が118,800円以下であることから、2010年の時点で公立高校の実質無料化は実現されているといえます。
この制度をさらに拡充させ、私立高校の平均授業料額である年間約40万円を支給することで私立高校授業料実質無償化の実現を掲げました。
自民党の私立高校無償化に対する意見
一方で同じく連立与党である自民党については、2017年の選挙の際には私立高校の実質無償化については言及していません。
このときに自民党が掲げていたのは、幼稚園・保育園といった幼児教育の無償化です。この時には、真に支援が必要な低所得層の子どもに対して、高等教育(=大学、専門学校等)の無償化についても触れていますが、私立高校の授業料についてはマニフェスト内では触れていません。
しかし、連立与党である公明党が私立高校授業料無償化を掲げたこともあり、2019年の政策パンフレット内に2020年4月以降の私立高校実質無料化を掲げ、実際に2020年4月に政策が実現されることとなりました。
国民は不公平さなどの理由で私立高校無償化に反対する意見も多かった!
私立高校の実質無償化が掲げられたとき、国民からは賛成意見だけでなくその不公平さなどから反対意見も多くありました。その主な理由は以下の通りです。
- 子育て家庭のみを優遇することへの不公平感
実質無償化を実現するための財源は、国民が負担する税金です。全国民が負担する以上、子どものいる家庭に対してのみ税金を使うのではなく、平等に恩恵を受けられるようにするべきだ、そうしないと不公平だ、という意見です。
- 経済状況に応じて、就職・公立高校への進学を選択するべき
高校は義務教育ではない以上、無理に私立高校へ進学させる必要はないという意見です。
しかし、実際の高校進学率は約98%であることや、親の経済上状況で子どもの進路が制限されてしまうことで、階層の固定化が進むといった意見があり、私立高校無償化は実現されることとなりました。
大阪府・京都府・東京都は先立って私立高校無償化を実施していた!
実は大阪府・京都府・東京都では、従来から私立高校の生徒に支給される国の就学支援金制度に都府独自の支援を行い、全国に先立って私立高校無償化を実現していました。
その背景には、公立・私立のそれぞれの生徒数の割合があげられます。以下に、大阪府・京都府・東京都を含む主要都道府県の公立・私立の生徒数について表に示しています。
公立生徒数(%) | 私立生徒数(%) | |
---|---|---|
大阪府 | 58.4% | 41.6% |
京都府 | 55.1% | 44.9% |
東京都 | 41.6% | 58.4% |
愛知県 | 68.6% | 31.4% |
北海道 | 76.3% | 23.7% |
(出典:文部科学省 学校基本調査)
この数字を見てもわかるように、先立って私立高校授業料無償化を実施している地域は、私立高校に通う生徒数が多い傾向にあります。そこで、子どもの教育機会の平等を実現するために、全国に先立って私立高校無償化を実施しているとも考えられます。
私立高校無償化の所得制限はふるさと納税を利用しても有利にならない!
すでにご説明したとおり、支援金の支給金額は以前はふるさと納税を利用した場合に引き下げが可能な「所得割合計額」でしたが、2020年7月よりふるさと納税の影響を受けない「課税標準額」に変更となっています。
これは、自治体が従来の制度を問題視し、見直しを求めたために新しい基準に変更となったものです。
高校だけではなく大学無償化も始まっている!
幼保無償化・高校無償化など、教育費負担の軽減策がいくつか行われていますが、実は大学についても2020年4月より無償化されています。
ここでいう大学とは、所定の大学・短大・高等専門学校・専門学校のことを指しています。対象となる学生については、住民税非課税世帯またはそれに準じる世帯の学生とされており、高校無償化の対象よりもより限定的といえます。
支援内容については、世帯年収に応じて以下の2つがあります。
- 授業料等減免
- 給付奨学金
また、国公立・私立、四年制大学・短期大学、自宅通学・自宅外通学など条件によって上限額が決められています。
教育費を用意するにあたっては、今ある制度を活用しながら計画的に貯めておく必要があります。どの制度が対象でどのくらいの支援を受けられるのか、教育費はいくら、どのように貯めるのか、お金のプロに相談しながら早めに計画的に貯めることが大切です。