(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『中島みゆきオールナイトニッポン月イチ』/ニッポン放送で月1回日曜27〜29時に放送中(全国9局ネット) 『中島みゆきのオールナイトニッポン』は’79〜’87年に放送されていました。読者の皆さんにもリスナーだった方がいらっしゃると思います。そんな番組が復活していることはご存知ですか?月1回、しかも日曜日深夜3時に。 普段は機材メンテナンスを行うため、放送が休止されるこの時間。深夜ラジオ好きらも寝ているタイミングで、2時間の生放送をされているんです。夜と朝の、さらに言うと、週末と平日の分岐点。楽曲からも夜のイメージが合う中島さんにはピッタリの時間かもしれません。 ただ、その独特な語り口は、彼女が紡いできた歌と真逆の雰囲気。昔からのファンにとって懐かしいものですが、初めて触れる方は驚かれることでしょう。底抜けに明るいのです。ハイテンションだけれど、騒がしくはなく、絶妙な抑揚があり……。言葉で説明するのは難しいのですが、それがとても心地よいんですね。 中身は昔ながらの深夜ラジオ。曲を合間に流しながら、リスナーからの投稿を紹介していくスタイルです。月替わりの「今月のお題」のほか、たくさんのコーナーが用意されていますが、中島さんたっての希望で、投稿はハガキ優先。「手書きの感情に任せて突っ走る文字は味があるからいい」からだそうです。 日曜深夜という特殊な時間帯ということもあって、長年のファンから、中島さんに初めて触れる中高生の深夜ラジオ好きまで、いろいろなリスナーがいるのも面白い点です。 昨年夏に「水着」をテーマに投稿を募集したことがあったのですが、中3女子からの「今年、ビキニデビューします!凄く恥ずかしいです」という初々しい声が届いたかと思いきや、続いて紹介されたのは50代女性からのもの。お腹のぜい肉を嘆く内容で、「私が痩せるのが先か、ぜい肉による繊維疲労で水着が破れるのが先か、スリリングな気持ちで毎日泳いでいます」なんてコミカルなお話でした。男性から届いた「ブリーフの上から海パンをはき、それからブリーフを脱ぐ裏技」まで紹介。年齢も住む場所も境遇もまったく違うリスナーたちを、中島さんの笑い声が包み込んでいるような雰囲気なんです。 番組から伝わってくるのは、中島さんのラジオへの思い。番組の最後には、紹介できなかったハガキのラジオネームを可能な限り発表しています。そもそも深夜3時から生放送をやっていることからもその気持ちはわかりますよね。 あるインタビューで中島さんは「私にとって、ラジオは窓のようなもの」とおっしゃっていました。音楽の仕事にこもってしまいがちな中、外の景色と新鮮な空気を与えてくれる場所だと。それはリスナーにとっても言えることかもしれません。もうすぐ夜が明けて、月曜日の朝がやってくる。憂鬱な気分の時、中島さんの笑い声が新鮮な気持ちを呼び起こしてくれるんですよね。 次回の放送は6月10日深夜、鬱陶しい梅雨空も、この番組と一緒なら明るく迎えられるはずですよ。
2018年06月04日(C)オカヤイヅミ/KADOKAWA 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介! 【最推しマンガ】『ものするひと』オカヤイヅミ著・KADOKAWA 仕事以外の場で知り合った方に、職業が小説家であることを伝えると、たいていの場合、少し驚かれる。確かにこの仕事をしているから多くの小説家の知り合いがいるものの、普段の生活において、あまり出会ったことのない職業である。 『ものするひと』は、そんな「小説家」が主人公のマンガだ。杉浦紺、三十歳、男性。純文学の賞をとってデビューした彼は、警備のアルバイトをしながら、小説を考えたり書いたりする日々を過ごしている。 第一話は、彼を含む数名で「たほいや」をするシーンがメインだ。「たほいや」というのは、実際にある遊びで、言葉を使ったものだ。詳しいルールは作中で描かれているのだが、遊びながらふと彼が洩らす心情に、胸をぐっとつかまれる。 どんな職業であってもそうだけれど、小説家になった理由や、小説を書く(仕事をする)上で目指すものや、大切にしているものというのは、人それぞれだ。それが押しつけがましくなく、自然とわかるような形で描かれている。 続く第二話ではさらに、女子大学生のヨサノとの出会いをきっかけに、主人公の気持ちがモノローグで語られる。好きなことを仕事にして生活していくことの自由さ、そして怖さ。 とはいえ、テーマや内容は決して難しいものではなく、むしろするすると読んでしまう。読んでいくうちに、ヨサノであったり、杉浦たちが通うバーの店主であるハナヨさんであったり、主人公以外の人物にも、自然と興味が湧いてくるようになっている。彼らが興味のあるものや好きなもの、送っている生活。 ちなみにタイトルに含まれる「ものする」というのは、『広辞苑』によると、「ある動作をする。ある物事を行う」という意味であるらしい。つまり、あらゆる人は「ものするひと」なのだ。それを知ると、タイトルもより味わい深い。 巻末には、作者のオカヤイヅミさんと、芥川賞作家である滝口悠生さんの対談も収録されているのだが、それも含めて、日常との地続き感が素晴らしい作品だ。特殊な要素もひっくるめながら、きちんと「仕事」や「生活」が切り取られていて、いくらでも読みたくなる。実際、続刊が待ち遠しい。
2018年05月28日『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介! 【最推し海外ドラマ】『ブラックライトニング』 ハリウッドでは、アメコミを原作としたヒーローものの映像化作品が百花繚乱!公開中の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、おなじみのヒーローが大集結する一大イベントムービーとなっています。 でも、アメコミってキャラクターが多すぎて難しそうとか、何作品もチェックしないと物語がわからないからと、腰が引けてしまう人も多いかも。そこで入門編としておすすめなのが、お気楽かつ単体で楽しむことができるドラマ『ブラックライトニング』です。 ブラックライトニングは、アメコミ界のヒーローの中では、若干マイナーなキャラクターで、正体は高校の校長として地域の人望も厚いジェファーソン・ピアース。彼が育った地区は犯罪や殺人が多く、父親を殺された過去があり、9年前にヒーローを引退したという設定です。 このジェファーソンがいい味を出していて、中年の悲哀をまといつつ、包容力のあるキャラクターは好感度満点!学校では生徒の目線に立って、時に厳しく、しかし愛情を持って接する姿には、どこか懐かしの金八先生のようなノリも感じられたり。 一方、家庭では2人の娘、アニッサとジェニファーの良き父であろうと努力し、愛する元妻リンとは復縁を熱望中。そんな中、かつてブラックライトニングが鎮静化させたはずのギャング集団100(ハンドレッド)が再び活発化。街の治安は悪化の一途をたどる現状に、住人たちからブラックライトニング待望論が盛り上がります。ジェファーソンはニーズに応える形で、渋々ながらも覆面ヒーローとして復活を遂げることに。 ブラックライトニングは、電気を操り、電撃を食らわせて相手を倒すスーパーヒーローです。中年になったジェファーソンは、もう年だから「肉体的にも精神的にも辛い」と弱音を吐きまくり。さらに、倒しても倒しても悪には限りがなく、以前のようなハードなヒーローライフに戻ったら、元妻との復縁が遠のくことも懸案事項。ですが、長女・アニッサの「学校の生徒だけが、私たち家族だけが安全なら、それでいいの?パパは同胞を見捨てるの?」という、強い正義感に心を動かされ本気になります。 後に、アニッサはサンダーとして覆面ヒーローの仲間入りを果たすのですが、父娘でビリビリと悪者相手に電撃を放つ絵面のかっこよさ!誰が見ても正体を見破られそうなコスチュームで、派手に見えを切りながら、生身の人間らしいアクションを繰り広げるくだりは、うおおおおっと手に力が入ること間違いなし。 ありえないほどドラマの質が向上し、複雑でハイエンドな作風が好まれる昨今。家族と力を合わせて、あくまでも街単位の平和を守ろうとするピアース一家の物語は、シンプル・イズ・ベスト。「正義ってかっこいい!」と、素直に興奮し、心からエールを送りたくなる快作です。
2018年05月21日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『お笑い』ということで、『オモロー山下』として活動した元芸人で、現在はインタビュアー・ライターとして活動するインタビューマン山下さんが最推し芸人を紹介! 【最推し芸人】3時のヒロイン(福田麻貴・ツッコミ担当/かなで・ボケ担当/ゆめっち・ボケ担当) 最近では珍しい、女性トリオが話題を呼んでいます。お芝居ベースのコントが特徴の、「3時のヒロイン」です。彼女たちは、昨年行われた『女芸人No.1決定戦THE W』(日本テレビ系)で、結成1年弱にして準決勝に進出を果たした実力派芸人。 メンバーは、ツッコミの福田さんにボケのかなでさんとゆめっちさん。3人中2人がぽっちゃりしているところは森三中(デビュー当時は黒沢は痩せていた)を彷彿とさせるのですが、芸風は対照的です。 森三中はお尻を出すことも辞さない昔ながらの芸人気質ですが、彼女たちは歌やダンスを得意とするエンタテインメント性に長けた芸風。 代表的なネタは、福田さんが失恋し落ち込んでいるところから始まります。かなでさんが彼女を慰めていると、突然ゆめっちさんが福田さんの失恋相手と「私キスしたわ」と言い出し、もめ始めます。 その間、しっとりとしたラブソングがずっと流れているのですが、曲中で突然「アッハ〜ン」というセクシーなコーラスが入ってきます。その「アッハ〜ン」になぜか連動して、かなでさんとゆめっちさんがセクシーな動きをし始め、ツッコミの福田さんが戸惑うというネタです。 3人の芝居のレベルも高いのですが、「アッハ〜ン」の動きや表情も仕上がりまくっています。とても結成1年ちょっとのトリオができるクオリティではありません。 彼女らが次世代女芸人トリオとして、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で黒沢率いる森三中と面白ダンス対決をする日も遠くないかもしれません。
2018年05月14日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『村上信五くんと経済クン』/文化放送で毎週土曜日9時00分〜10時00分に放送中 ジャニーズとラジオの関係性を掘り下げるだけでコラムが何本も書けてしまいますが、村上信五さんを語る上でも、ラジオは欠くことができません。関ジャニ∞を結成する前の’02年から文化放送の番組にレギュラー出演。翌年からこの春までの16年間、木曜夜の生放送でパーソナリティを担当していました。村上さんがテレビで見せるトーク術は、ラジオでの経験が土台になっているんです。 そんな村上さんが新たに始めた番組が『村上信五くんと経済クン』。これまでとガラッと変わり、土曜日朝に放送される経済番組です。 「経済」がテーマと言っても、気取った内容ではありません。初回の冒頭に村上さんがニュースを紹介したのですが、「大企業製造業の景況感が8四半期ぶりに悪化」という文章を読むことすらままならず、「チンプンのカンプンですよね」とこぼしていました。まさにリスナーの気持ちを代弁した発言です。「高校には1カ月しか通わなかった」という村上さんと共に、経済を学んでいくのが番組の趣旨なんです。 経済のスペシャリストが毎週ゲストに出演。初回は元財務官僚の山口真由さん、第2回は経済評論家の門倉貴史さんでした。合間にはゲストさんとのフリートークもあり、人となりもわかった上で、経済論が聴けるので、難しい話もスッと頭に入ってきます。 村上さんはわからないことがあったら素直に「わからない」というスタンスで、正直な反応をするんです。例えば、山口さんの口から「アベノミクス」という言葉が出た時。村上さんはうっすらと緊張感を漂わせつつ、その中身について質問していきます。有名な“3本の矢”の話を聞き、「ようやく効果が目に見えて出てきているんですね」と納得。山口さんから「ご理解の通りです」と褒められると、「ちょっとできた。ちょっとわかった」と嬉しそうに話してました。どうです?こんな風に初歩の初歩から掘り下げているんですよ。 他にも、山口さんに日本経済新聞を読んだほうがいいと勧められたら、「日経……取るか。先生言うから間違いないか」と決意したり、門倉さんとは経済学的な見方をした合コントークで盛り上がったり……。単純なトーク番組としても楽しめる内容です。 村上さんが興味津々で番組に取り組んでいるから、リスナーも取っつきやすいんですよね。「仮想通貨」「マイナス金利」「フェルミ推定」……。まさに“チンプンでカンプン”な用語の知識が身に付き、家計に直結する日本経済の今を知ることができます。何となく経済がわかったふりをして過ごしてきた私のような人間が、新年度から聴くのに持って来いの番組なんですよ。 そして強調したいのが、この4月からジャニーズ事務所所属タレントが出演する番組もradikoのタイムフリー、エリアフリーで聴けることになったこと。番組は4月7日に始まったばかり。村上さんと一緒にゼロから学ぶなら、今がチャンスですよ。
2018年05月07日小玉ユキさんのマンガ『ちいさこの庭』は、その名の通り、“ちいさな人”たちと人間の物語を描いた、ファンタジックな作品。親指姫や一寸法師、コロボックルなど小人が登場する物語は、子どものためのものと思っていたけれども、そういう人はいつの間にか“ちいさこ”の存在が見えなくなってしまったのだろう。『坂道のアポロン』の実写映画が先月公開された小玉ユキさんの最新刊は、森に棲むといわれる“ちいさこ”と人間たちのオムニバス。「人間に近い生態だけど、ちょっとだけ異世界に住んでいる生き物というモチーフが好きで、以前にも人魚や地底人、白鳥の化身を描いてきました。ちいさこはその延長という感じなのですが、体の大きさが違うだけで絵的にも面白いので、マンガにする価値がありそうだと思っていました」全5話のなかでちいさこと出会う人たちは、絵本好きな少女、恋愛小説家と編集者、引きこもりの男子中学生など。ちいさこは子どもだから見えるというわけではなく、一度恋をするとそれきり見えなくなってしまうらしい。「恋を絡めたのは、少女マンガだからです。ちいさこが見えなくなる瞬間を描きたいと思ったのが先にあって、見える人と見えない人のやりとりは副産物みたいなものでしたが、実際に描いてみるとそっちのほうが面白かったですね」たしかにそこは、少女マンガ。恋愛小説家なのに見えたり、夫婦の片方だけが見えたりなど、シチュエーションは何かとワケあり。小玉さんが描きたかったというちいさこが見えなくなる瞬間、つまり恋に落ちる瞬間は、誰かを好きになる喜びと、ちいさこと別れる寂しさがないまぜになって、ロマンティックだけど胸が締め付けられるような切なさを覚えてしまう。「特に感動させたいとは思っていないんですが、それぞれのキャラクターに“救い”または“発見”をあげたいな、ということは考えています。短編は限られたなかに状況説明やカタルシス、余韻を詰め込むのが難しいですが、それができたときの気持ちよさは格別です」1話ごとに心が温まりつつ、一冊通して読み終えるとより大きな感動が待っている。オムニバスの醍醐味を味わえる作品だ。『ちいさこの庭』生きる時代も性別も立場も異なる人たちが、ちいさこと出会って不思議な体験をする、5編のファンタジックオムニバス。初めて挑戦したという時代物が新鮮!小学館429円こだま・ゆきマンガ家。代表作は『坂道のアポロン』『月影ベイベ』など。『月刊flowers』5月号より、波佐見焼の窯元を舞台にした大人の恋の物語「青の花器の森」がスタート。※『anan』2018年4月25日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・兵藤育子©小玉ユキ/小学館
2018年04月24日(C)原作:曽根タマラ/作画:モイライ・KADOKAWA 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介! 【最推しマンガ】『メキシコでアミーゴ!』原作:曽根タマラ/作画:モイライ・KADOKAWA メキシコという国名を言われて、すぐに連想するものはなんだろうか。タコス。サボテン。テキーラ。 名物のあとで浮かぶのは、少々物騒なイメージではないだろうか。日本で報道されるメキシコに関するニュースには、マフィアや麻薬といった単語が頻出するように感じられる。実際、検索サイトでメキシコについて調べようとすると、予測変換で、メキシコのあとに、治安という言葉が登場した。治安が悪そうというのが、率直な感想だろう。 本書はエッセイマンガであり、冒頭と巻末を除けば、四コママンガで構成されている。主人公はメキシコで暮らすタマラという女性。とはいえ彼女は日本人だ(おそらく名前はペンネーム)。大学でスペイン語を勉強していた彼女は、メキシコに留学することとなり、それをきっかけに、現在はメキシコで仕事をして生活している。 描かれるのは、メキシコでの日常の風景や、メキシコの人々の姿だ。 そこにはマフィアも麻薬も登場しない。日本文化に興味を持っているダニーや、ダニーの弟で日本のアニメを好むオタクのアレイといった人々だったり、安い値段で乗れる地下鉄だったり、一面にコーラが並ぶスーパーマーケットといった、親しみやすそうな存在のものが多く出てくる。 四コマということもあり、とにかく読みやすい。ふふっと小さく笑いをこぼすうち、自分のイメージしていたメキシコの姿が、どんどん変形していくのを感じる。 この本の中で特に素晴らしいと感じたのは、巻末のエピソードマンガだ。主人公は遺跡観光の帰り道の車の中で、リュックを盗まれ、中のカードを利用されるなどの被害に遭い、厄介な思いをする。 おそらく、このエピソードを入れないという選択肢もあったはずだ。それまでに紹介してきた、楽しく明るいメキシコの姿だけでも、充分におもしろく、作品として完成している。 それでも作者はあえて収録した。自分の知っているメキシコの姿を、正直に伝えようという意思のもとに。さりげない行動のようでいて、とても勇気ある姿勢だ。だからこそ、他の部分で描かれる、魅力的なメキシコの姿が、よりいっそう真実味を帯びて、温度を持つ。 どんなものも一部分だけを見て判断することはできないと知っているはずなのに、つい自分のかたよった知識だけで、全体を決めつけてしまいがちだ。そうした普段の行動を反省し、同時に、広い視野を持たなければいけないと気づかされた。 日本からだと飛行機で半日以上かかることもあり、なかなか簡単には行けない場所だけれど、この本を読むことによって、メキシコとの距離は以前よりも近いものに感じられる。いつか自分の目で、実際に確かめてみたい。
2018年04月23日ゴディバ(GODIVA)から「サブレショコラ ワンダフル シティー ドリーム」が、2018年4月18日(水)から10月31日(水)まで期間限定で発売される。ベルギー産チョコレートガナッシュをサブレでサンドした「サブレショコラ」。なめらかで濃厚なチョコレートガナッシュと軽い食感のサブレの組み合わせが新食感のスイーツだ。今回発売される「サブレショコラ ワンダフル シティー ドリーム」は、「サブレショコラ」の既存フレーバーと、ゴディバのショコラティエが"世界の都市"からインスピレーションを得て、新たに創り出した限定フレーバーの詰め合わせとなっている。限定フレーバーには、ユズとキャラメル香るチョコレートガナッシュをキャラメルチップ入りサブレで挟んだ「キャラメルユズ&ダークチョコレート」や、味わい深い「ダークチョコレート&プラリネ」、サブレのバイオレットチップが香る「バイオレットストロベリー&ホワイトチョコレート」、コクのある「ニューヨークチーズケーキ&ホワイトチョコレート」と、東京、ロンドン、ブリュッセル、ニューヨークをイメージした4種がラインナップ。また既存フレーバーである、酸味とほろ苦さが絶妙な「ラズベリー&ダークチョコレート」や、カシスとホワイトチョコレートが甘酸っぱい「カシス&ホワイトチョコレート」、宇治抹茶を練りこんだ「抹茶&ホワイトチョコレート」、キャラメルクランチ入り「ミルクチョコレートキャラメル」も同時に楽しめる。【詳細】サブレショコラ ワンダフル シティー ドリーム発売日:2018年4月18日(水)~10月31日(水) <期間限定>取扱店舗:ゴディバ専門店、および全国百貨店ゴディバショップ内価格:・5個入(キャラメルユズ&ダークチョコレート/バイオレットストロベリー&ホワイトチョコレート/抹茶&ホワイトチョコレート/カシス&ホワイトチョコレート/ラズベリー&ダークチョコレート) 1,620円(税込)・10個入 3,024円(税込)・15個入 4,212円(税込)・20個入 5,400円(税込)【問い合わせ先】ゴディバ ジャパンTEL:0120-116811(受付時間10:00~18:00)
2018年04月21日(C)2017 Sony Pictures Television Inc. and Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介! 【最推し海外ドラマ】『グッド・ドクター名医の条件』 ’17年度のアメリカの新番組で、高い人気を誇っている一本が『グッド・ドクター名医の条件』。同名韓国ドラマのハリウッド版で、主人公はサヴァン症候群で驚異的な記憶力と洞察力を持つ青年医師、ショーン・マーフィー。高機能自閉症であるため、コミュニケーション能力に問題があるという設定です。 そんなショーンが偏見や差別と向き合いながら、医師として、人として成長する物語。正直、ちょっとあざとそうだなとも思ったのですが、これが大当たり。数かぎりなく医療ドラマを見てきた、アラフィフの筆者の心をもわしづかみにする、どストレートだけれど嫌みのない作りに、毎回気づけばポロポロと涙を流しているのでした。 他者とのコミュニケーションがうまく取れないショーンは、言ってみれば、空気が読めない(読まない)人。そんな彼が、素直に口にする疑問や質問には、思いがけず、はっと気づかされることばかり。 例えば、スター外科医のメレンデス。新入りのショーンを頑なに認めず、同僚たちの面前で「手術は無理だ。俺のチームではやらせない」と言い放ちます。メレンデスは悪人というわけではありません。日々、命と向き合う医療の現場では、患者やスタッフらとの意思の疎通も含めて、ただ一つのミスも許されない。そうした厳しい世界で生きるメレンデスの考え方に、理解を示す人も少なくないでしょう。 しかし、ショーンはメレンデスをまっすぐ見つめて、こう問いかけます。 「あなたは僕が出会った誰よりも優秀だけど、傲慢だ。その方がいい医師になれますか?心は痛くない?それ価値のあることですか?」 誰もが偏見や差別はよくない、どんな人にも平等にチャンスは与えられるべきだと言いながら、現実としてショーンのような人間が平等に機会を得ることが、どれほど困難であるか。そのことは、メレンデスを始めとする基本的には善良な登場人物たちの、本音と建前やダブルスタンダードにこそ見ることができます。 もちろん、世の中はきれいごとだけではやっていけない。それでもショーンの率直な言葉には、純粋に人として、こうありたい、こうあるべきだと思わせる力があります。 トランプ政権のもと、アメリカはかつてないほどの政治不信と不安が蔓延しています。アメリカの視聴者の間には、ホッとするような心温まる人間ドラマを好む傾向も。そんな中で人気を得ている本作は、忘れていた何かを思い出させてくれるような安心感と、すがすがしい後味が魅力です。
2018年04月16日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『お笑い』ということで、『オモロー山下』として活動した元芸人で、現在はインタビュアー・ライターとして活動するインタビューマン山下さんが最推し芸人を紹介! 【最推し芸人】天竺鼠(瀬下豊・ツッコミ担当/川原克己・ボケ担当) なすのかぶりものをして叫ぶシュールなコントなど、尖ったネタで「次売れる」と言われ続けているコンビがいます。独特なボケの川原くんと、元ヤンキーのツッコミ・瀬下くんからなる、天竺鼠です。 キングオブコントで3度決勝進出を果たした実力もあり、多くの先輩芸人からも高評価を得ていますが、現在まで彼らの実力に見合った活躍はできていません。本人曰く、10年前からネクストブレーク芸人と言われているそう(笑)。 僕の持論ですが、売れっ子芸人になる条件は、ネタの面白さとトーク能力の高さだと考えています。 天竺鼠のネタは、実績にもあるように素晴らしいもの。 漫才において、つかみ(最初のボケ)は早ければ早いほどよいとされています。彼らのつかみはとにかく早い。たとえば舞台に出てきてセンターマイクを持ち上げ、自分たちの前に漫才をやったコンビのほうに向かって「(マイクを)忘れていきましたよ!」というボケ。普通ボケには前フリが必要ですが、このボケは自分たちの前の漫才をフリに使うという最速のつかみなんです。 トークに関しても、川原くんはどんな場面でもボケまくります。奇才と呼ばれ、トリッキーなボケを繰り出す野性爆弾のくっきーですらもツッコミに回ってしまうほど。 なぜ売れる条件をクリアしている彼らが、ネクストブレーク枠に甘んじているのか?疑問に思っているとき、東野幸治さんのコラムを読み、「これか!」と納得しました。 ある芸人さんが明石家さんまさんに「テレビに出るには何が必要ですか?」と聞くと、さんまさんは即答で「必要なのはかわいげ」と答えたそう。 川原くんのボケは面白いのですが、かわいげはあまり感じません。彼は基本シュールなボケを続けるため、見ている側はかわいげより「この人は大丈夫な人か?」と不安を感じてしまうのです。対して、くっきーはあのキャラでも時折ツッコむので、そこがかわいくうつります。 しかし、僕は一度川原くんのかわいげを目撃しました。 以前、彼がピース又吉とトーク番組で共演した際、2人とも声が小さいというボケをやっていたときのこと。最初はウケていたのですが、そのノリがあまりにも長く、お客さんが引き気味に。そこで川原くんが「又吉さん!テンション上げていきましょう!」とツッコんで笑いにしていたのです。彼はお客さんが引いている空気を察知して、本当はボケ続けたいところを先輩の又吉に気を使ってボケるのをやめたのです。そこに僕はかわいげを感じました。 こうしたかわいげのある場面を増やしていけば、天竺鼠は売れ切るかもしれません。 しかし、彼らは「売れたい気持ちはあるが自分たちがやっているスタイルを変えてまで売れようとは思わない」と言います。芸に対してとてつもない清さを感じます。 久しぶりに職人気質な芸人を見たような気がしてうれしくなりました。今後の天竺鼠の活躍から目が離せません!
2018年04月09日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『テレフォン人生相談』/ニッポン放送で毎週月〜金曜日11時00分〜11時20分に放送中(全国23局ネット) これまで「面白い」「癒される」なんて番組を取り上げてきましたが、今回はガラッと変わって、心がざわつく番組を紹介します。『テレフォン人生相談』は1965年から続く長寿番組。 人生相談はラジオととても相性がいいんですよね。1人に長い時間をかけることができるし、顔を出さなくていいから、相談をするほうもされるほうもより本音を語りやすい。そして不思議なことに、相談者の声色や語り口からその人間性が強く伝わってくるんです。本当に驚くほどに。雑誌の人生相談だとこうはいかないと思います。だから、未だにいろんな番組で人生相談が行われています。 『テレフォン人生相談』の相談者は中高年が中心。パーソナリティが話を聞き出し、精神科医や弁護士、作家といった方々が客観的に返答するスタイルです。パーソナリティは日替わりで、柴田理恵さんも担当。テレビでは底抜けに明るい方ですが、この番組ではそれを封印して、じっくりと相談者の言葉に耳を傾けています。そうなるぐらい緊張感のある番組なんですね。 ほとんどの相談は「人間関係」に直結します。離婚、不倫、嫁姑や親子の確執、借金、そんな話のオンパレード。なかなかヘビーな番組で、隣家の電話を“盗み聞き”しているようなドキドキを感じます。 ある回では人生に行き詰っているという50代の男性が登場しました。友人に全面協力してもらって整体院を開業したけれど、スタッフに内部をかき回され、経営が悪化。自分もうつ病を患い、奥さんとも折り合いが悪くなり、さらに高齢の母に怒りをぶつけて大げんかしてしまい、関係が切れてしまったというのです。 八方ふさがりの相談者に対し、回答者である男性エッセイストのマドモアゼル・愛さんはこんな風に言い放ちます。「こう言ったら悪いけど、みんなあなたが原因なのね」。自分が悪いと認めるところから始めるしかないと説き、「(あなたは)そんなに自分で考える能力がある人ではない」、「今さらになって、まだ何をカッコつけてるの?」と愛のある厳しい言葉を投げかけました。 この方は一からやり直すと決意されていましたが、毎回うまくいくわけではありません。過去には怒って電話を途中で切ってしまった相談者もいます。反対に温かい言葉に触れて号泣した方もいました。 自己弁護のウソを重ねるワガママな相談者に対し、回答者の先生方が「あなたが悪い」と指摘する瞬間は痛快でもあるんですが、同時に「自分にもこういうところがある」と言われたような気持ちになるんです。相談者を自分に置き換えてみると、心がヒリヒリして、ざわつきます。でも、音声を聴きながらそんな風に考え込むことができるのも、ラジオの魅力かもしれません。
2018年04月02日(C)小山愛子/小学館 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介! 【最推しマンガ】『舞妓さんちのまかないさん』小山愛子著・小学館 舞妓さんという職業を知らない方はいらっしゃらないと思う。実際に京都に足を運んだ際に(住まれている場合はなおさら)、見かけたということもあるだろう。 しかしこのマンガの主人公は、そんな有名な舞妓さんではない。舞妓さんたちが住んでいる、屋形と呼ばれる場所でまかないを担当する、16歳のキヨだ。タイトルの「舞妓さんちのまかないさん」とは、キヨ自身を称したもの。 中学を卒業したばかりのキヨは、同じく舞妓さんを夢とする、親友のすーちゃんと一緒に、青森から京都までやってくる。彼女たちは住み込みで舞妓さんになるための修業を始めるのだが、筋があって優秀なすーちゃんに対し、キヨはまるで向いていない。 舞妓さんになるのはあきらめて青森に帰ったほうがいいと言われ、従うつもりでいたときに、まかないを担当していたおばちゃんが倒れてしまう。市販のお弁当にもみんなが飽きはじめた頃、キヨは台所に余っていたもので親子丼を作りあげる。あたたかな親子丼は、みんなをホッとさせ、それを機に、キヨはまかないを担当するように。 以上が、キヨが「舞妓さんちのまかないさん」となるまでの流れだけれど、一話ずつが短いため、数話を読むうちに、徐々にわかっていくようになっている。そのあたりの描き方もとても上手で、以前の話で登場していた小道具が別の話で再び登場するなど、ささやかな伏線が回収されていくのも読んでいて楽しい。 舞妓さんというと、遠い世界の存在に感じてしまうのだが、このマンガで描かれている彼女たちの姿は、とても親しみやすく、まるで知り合いにいてもおかしくないようなものだ。自分のプリンが他の誰かに食べられてしまったことを本気で怒り、食べたい料理をキヨにこっそりリクエストする。イラストのタッチがとても可愛らしいこともあり、彼女たちが、年下の親戚や友だちであるかのような柔らかな感覚が読者であるこちらに生まれてくる。 まかないさんというだけあって、キヨの作る料理(どれも簡単なレシピ付き!)はとてもおいしそうなのだが、自然に挟みこまれる、舞妓さんの日常に、より興味が湧く。作ってはいけない料理があったり、コンビニに入ることができなかったり。知らなかった事実が、京都をさらに魅力的な場所にさせる。京都、行きたいなあ。そんな気持ちになりながら、今日もこのマンガをついめくってしまう。
2018年03月26日(C)2015 Frank&Bob Films II, LLC All rights reserved 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介!【最推し海外ドラマ】『UnREAL』『バチェラー・ジャパン』という恋愛リアリティー番組を、ご存じだろうか?容姿にも経済的にも優れた1人の独身男性をめぐり、一般公募の25名の女性たちがバトルを繰り広げる。野心満々の女性たちによる、恋愛の駆け引きが見ものだけれど、アメリカのオリジナル版『The Bachelor』のエグさ、過剰さにはかないません。あからさまにセクシュアルな装いで、ぐいぐいと自分を売り込む女性たちの姿に、苦笑いしつつも興味津々。誰が勝者になるか見届けてしまう。アメリカでは知らない人はいないというこの人気番組を模した、架空のリアリティー番組「エバーラスティング」の舞台裏を、赤裸々に描いたドラマが『UnREAL』です。主人公は、仕事はデキるが、公私ともに(特に恋愛)疲れ果て、心が壊れかけているアシスタント・プロデューサーのレイチェル。上司の敏腕女性プロデューサー、クインとともに番組が毎回盛り上がるよう、あの手この手で出演者たちの「非常識な言動」を引き出していく。その手段は、ありえないほど卑怯で、いくらなんでも嘘だろうと思うことの連続。でも、制作にはオリジナル版に携わっていた女性がメインスタッフとして参加しているんですね。だから、本作で描かれる仰天のエピソードの数々は、あながち絵空事でもないのです。職場で男が絡むと、さらに状況はややこしくなる。レイチェルの元彼も、クインの不倫相手も、同僚です。一方で、番組の出演者たちもシングルマザーに薬物依存、遊び人からセクシュアリティーを隠した女性まで、各々が問題を抱えている。好感度大の御曹司アダムにもまた、しょうもない裏の顔が。出演者とスタッフによる複雑な人間模様と平行して、劇中劇の形を取る「エバーラスティング」の勝者のゆくえも、最後まで予想を裏切り続ける。まったく心臓に悪いドラマです。実際に、リアリティー番組を見ていて、仕込みが一切ないと信じている人はいないはず。台本はなくとも、作り手に誘導されなければ、そう上手いこと番組は盛り上がりません。レイチェルは、本心では視聴率が高いだけで中身のないリアリティー番組ではなく、もっと別の、有意義な番組作りに携わりたいと願っている。そのためには、ここで結果を出して認められなければならない。日々全力を尽くしながらも、ばかばかしい番組に骨身を削る我が身を嘲り、やけっぱちになるレイチェルの姿に、働く女性としての苦労を重ねる人もいるでしょう。誰よりもタフに働くレイチェルとクインは、「金、ペニス、権力」を合言葉に、この世界での成功を誓い合います。なんてダイレクト!こんなふうに本音全開、欲望のままに生きることができたら、今より幸せになれるのか?なんて、道徳的な問いかけは後回しにして、まずはドロドロかつ何でもありの愛憎ドラマに、どっぷりと浸ってみれば、日頃の憂さも、どこかへ吹き飛んでしまうはず。
2018年03月19日野村宗弘さんのマンガ『かけおちはスクーターに乗って』、年下男性と美人妻とのワケアリな恋愛を描いた作品。鉄工所で働く人々の日常を、叙情豊かに描いた『とろける鉄工所』など、職業系マンガの描き手として高い評価を得る野村宗弘さん。その一方で、配偶者に浮気されているお隣さん同士の男女が、互いに惹かれ合っていく『うきわ』など、大人のままならない純愛マンガにも、きらめく才を見せる。そんな野村さんの『かけおちはスクーターに乗って』は、後者に属するおすすめマンガだ。「『うきわ』は理性で激情を抑えた結末でした。今度は反対に、恋愛で理性が働かなくなるとどうなるかをテーマにしたいと思ったんです」『かけおち~』の舞台は、海のキレイな田舎町。交番勤務の警察官ケンジは、都会からやって来た10歳年上の人妻エリナと出会う。どこか頼りなさげなエリナにケンジは惹かれていくが、ほどなく「夫から逃げてきた」という危うい事情がわかってくる。しかも、夫の栄吉が、エリナのアパート周辺をうろつき始め、不穏さは否応なく増していく。「トラウマを抱えているらしいエリナさんに同情はするけれど、単純に栄吉が悪者というのも違うような…。恋愛において、自分を尊重することは大切でも、自分しか尊重しなかったら関係はおかしくなる。もちろん、恋に落ちてクレイジーになるのを否定しているわけではないんです。ただ、相手にずっと愛してもらえることを期待しすぎると追いつめてしまう。時間が経てば恋は少し冷めるものだし、それでも思いやりを忘れなければ、ずっと仲良くいられていいんじゃないかと思っております」警察官の職分を忘れ、エリナひとりを守ろうとするケンジ。ついには、禁断の誘いまで口にする。だが、栄吉との関係がこじれているエリナの心情は複雑だ。最初の結婚に失敗していることや、ケンジとの年齢差などが気になって、素直にケンジを頼りにできない。「ケンジがもっと頼りがいのあるタイプだったら、話は簡単かもしれないけれど、僕、イケメンが描けないんですよね。見た目はともかく、イケメンの心がわからない。どんな心理で壁ドンなんてできるんだ、と考えてしまうけぇ(笑)」ちなみに、これほど悩みながら描いたマンガは初めて、と野村さん。「特に、エンディングについては最後の最後まで迷ったんです。賛否両論あるかもしれないけれど、 自分ではこれしか落としどころがないと思って描きました」どんな決着を見るのかを、ぜひ見届けてほしい。『かけおちはスクーターに乗って』23歳の警察官ケンジは、品川ナンバーのスクーターでやってきた美女を見かけ…タイトルには「救う人(ター)」→「スクーター」の意味を重ねた。2巻完結。小学館552円(C)野村宗弘/小学館のむら・むねひろ1975年生まれ、広島県出身。マンガ家。2007年、講談社「第5回イブニング新人賞」で奨励賞を受賞し、本格デビュー。『鉄工所にも花が咲く』も好評発売中。※『anan』2018年3月14日号より。インタビュー、文・三浦天紗子
2018年03月13日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『お笑い』ということで、『オモロー山下』として活動した元芸人で、現在はインタビュアー・ライターとして活動するインタビューマン山下さんが最推し芸人を紹介! 【最推し芸人】ひょっこりはん このネタははやる、ヒットするーーそう思わせる条件というものがあります。 今、もっともその条件を満たしているのがひょっこりはんです。彼のネタは、隠れている場所から「ひょっこりはん!」という掛け声とともに、顔を不意に出すさまで笑いをとるというシンプルなもの。 しかし、バランスボールの陰から絶妙な表情で顔を出したり、ボードの左右どちらから顔を出すかクイズを出し、上から出すというスカシのテクニックを使ったりと、ありとあらゆるバリエーションが用意された、まぎれもないプロのネタです。 その一方で、佐々木希さん、SKE48松井珠理奈さん、斎藤工さんなどの芸能人が、ひょっこりはんのネタをSNSやテレビでマネしています。さらには、赤ちゃんや子犬が、物陰からひょっこり出てきたところを撮影し、後から“ひょっこりはん”という言葉をあてた動画もSNSで話題に。 「マネしたくなる」は売れるうえで大きな条件です。しかも、彼のネタは同じくマネされてブレークしたサンシャイン池崎さんなどに比べ、とにかくマネするハードルが低い。完成度が低くても、決して寒くはならず、最低でも“ほっこりはん”な状態は確保できます。 2つ目の条件として、女子中高生にはやることが挙げられますTWICEのTTポーズも、女子中高生がマネしてブームになりました。 ひょっこりはんも女子中高生に大人気。ティーン向け雑誌『Myojo』『Popteen』から取材が来たそう。撮影時、ひょっこりはんがネタをやると、同席した女子高生モデルが「じわる〜!」と言っていたのだとか。できることなら、じわじわではなく、すぐに笑ってあげてほしいのですが……(笑)。 さらに、ほかの芸人とコラボしやすいことも、テレビに呼ばれる=売れる条件の1つです。たとえばアキラ100%の股下からひょっこりはんが顔を出して、股間を隠すなど、無限の転がし方があります。アキラ100%やとにかく明るい安村のような隠す芸と、ひょっこりはんの出す芸のコラボは、磁石のS極とN極のように相性抜群です。 芸人として売れるには、ネタ以外での能力も重要です。実は彼は、あの風貌にして早稲田大学卒という高学歴。さらに高校時代にソフトテニスで全国大会に出場するほどの運動能力もあり、クイズ番組やスポーツ番組にも呼ばれること必至でしょう。 また、「いないいないばーをやっても笑わなかった赤ちゃんがひょっこりはんをやったら笑った」とお子さんを持つお母さんから感謝されたり、取材を担当した60代のベテランカメラマンが「彼は伸びそうだね」と語っていたりと、独特な風貌は不思議と万人受けします。 赤ちゃんから年配の方まで幅広く愛される、ひょっこりはん。今年はひょっこりはんの笑いが「じわる〜!」こと間違いないでしょう。
2018年03月12日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『シンクロのシティ』/TOKYO FMで毎週月曜〜木曜日15時00分〜放送中 「東京の声とシンクロする」。そんなテーマを掲げる番組が、TOKYO FMの『シンクロのシティ』です。 “シンクロ”には「同期する」という意味があります。では、ラジオでどうやって東京の声と同期するのか。そこで登場するのはVoice収集隊と呼ばれるスタッフたちが東京各地で取材した街の声です。昔からラジオには中継コーナーがあり、一般の方々の声が電波に乗ってきましたが、この番組はそれが中心。ありそうでなかった切り口なんです。 平日の月〜木に放送されていますが、集める声のテーマは毎回違います。例えば2月第2週のテーマは……「祝日を100倍楽しむ術」「くつ下みせてもらえますか?」「買って住みたい街『戸塚』ってどんなところ?」「新婚旅行物語」。本当に毎回対象や視点が違うんです。 テレビとは違って音声だけの街頭取材ですから、皆さんそこまで緊張せずに心境を語っているのが特徴的。ただ、テーマによっては取材も大変で、「お財布みせてくれませんか?」の時は年配の方にムッとされ、「女性ってなんでドラッグストアが好きなんですか?」の時はお店前でお客さんを張っていたために万引きGメンと勘違いされたとか。 “東京”という言葉は無機質なイメージがありますが、番組から浮かび上がってくるのは、温かみのある人々の思いや日常です。東京以外の方もメールで参加しており、様々な意見が集まります。パーソナリティの堀内貴之さんはどんな声も否定することなく、ポジティブに捉えてくれるのがまたいいんですね。 印象的だったのが「不忍池の思い出」の回。20代のカップルが付き合い始めた頃にスワンボートに乗った“ラブラブな思い出”を語っていました。面白いのが、続いて登場した50代の男性にとっては、そのスワンボートが「学生時代に彼女を誘ったが断わられて、その後にフラれた」という“悲恋の象徴”だったんです。そんないろんな思い出の詰まった場所でも、別の50代の女性にとっては“変わらない日常”。その方はずっと不忍池近くに住んでいて、全てがいつまでも変わらない池なんだと話していました。同じ場所に立っていても、感じることは人それぞれ。ピントがまったく違うところに合っていて、それでもシンクロしているんですよね。 これってラジオにも言えると思うんです。同じ番組を聴いていても、年齢や性別やその時の感情はまったく違う。それでも同じラジオを楽しんでいる。しかも音声だけだから“想像する”余地が増えるし、話す人の思いがダイレクトに伝わってきて、人々の声がより身近に感じられる。だから、『シンクロのシティ』はとてもラジオらしい番組なんだと思います。
2018年03月05日(C)コナリミサト/秋田書店 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介! 【最推しマンガ】『凪のお暇』コナリミサト著・秋田書店 最新巻となる3巻が刊行されたばかりの『凪のお暇』は、現在、かなりの注目を集めているマンガである。「人にぜひ薦めたいと思う作品」を基準に選出される「マンガ大賞2018」にもノミネートされているほどだ。 物語の主人公は、大島凪。28歳の会社員である彼女は、日々のささやかな節約を楽しみに、とにかく「空気を読む」ことを心がけている。 周囲に迷惑をかけないように、嫌われないようにしながら、人の分まで仕事をし、こっそり社内恋愛をしている恋人の慎二にも優しく接する。 しかしある日、彼女の張り詰めていた糸は切れる。コップにたまった水が溢れるみたいに限界を超えた彼女は、薄れゆく意識の中でこう悟る。 「空気は/読むもの/じゃなくて/吸って吐くものだ」 思いきり同意して、凪の背中を優しくさすりたくなるような、この真理。いつのまにか空気を読む、読もうとすることに慣れていた自分自身に突き刺さる。 凪は仕事を辞め、慎二と別れ、引っ越しをする。都心2LDKから、郊外の6畳1間。データだけで見たのなら、完全なる脱落だが、彼女の表情は、以前よりもずっと明るくてすがすがしい。必死に毎朝ストレートにしていた髪も、天然の強いくせ毛のままとなり、それもまた似合う。 しかし、さまざまなしがらみから解放されて幸せになりました、で終わるわけではない。毎日は続いていくのだ。わざわざ住所を調べて会いに来た慎二や、自称イベントオーガナイザーの隣人ゴンちゃんとの色恋を巡る人間関係。逆隣に住むクールな小学生のうららちゃんとの不思議な友情。減っていく預金残高。 毎日のように凪の悩みは生まれて、感情は渦巻く。 最新巻ではさらに、遠く離れて暮らす母との関係もそこに加わる上に、ラストでは慎二とゴンちゃんの直接対決などもあり、ますます目が離せない展開となっている。 一時かもしれないけれど、自由が与えられたとき、どんなふうに過ごしていくのが正解なのか。凪の姿を見つめながら、自分だったら、とつい考えてしまう。 とはいえ、終始暗いトーンなのかというと、まったくそんなことはなく、一篇ずつは短いページ数となっていることもあり、サクサクと読み進んでいける。 また、節約家の凪ならではという感じで、時には具体的な節約レシピも紹介されていたりする。2巻の土鍋プリンや、3巻のイワシのフリッターなど、簡単かつ、明日にでも作って試したくなるものばかりだ。レシピ以外にも、風呂敷の変わった包み方やレジ袋を使ったエクササイズなども紹介されていて、高い実用性も兼ね備えたマンガとなっている。 空気を読むことに疲れてしまっている人に、ぜひ読んでみてもらいたい。
2018年02月26日(C)2017 MGM Television Entertainment Inc. and Relentless Productions LLC. All Rights Reserved. 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介! 【最推し海外ドラマ】『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』 環境汚染により、子どもの出生率が著しく下がり、5人に1人しか健康な子どもが生まれない近未来。子どもを産むことができる健康な女性は、国家のために子孫を残すべく、子どもを産む機械=侍女として生きることを強いられている。 ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』は、設定を聞くだけでも、ギョッとするような衝撃作。でも、今の時代に、これが全くの絵空事だと笑い飛ばせる人はいないはず。超高齢化社会に突入し、少子化が切迫した課題として叫ばれる日本においても、リアルな恐怖を覚える人は少なくないでしょう。 原作は、’85年にカナダの作家、マーガレット・アトウッドが発表した『侍女の物語』。30年以上経った今、アトウッドの鳴らした社会への警鐘は、驚くほどの危機感を伴うものとして、ドラマ化を機に注目を集めています。 侍女たちは、体の線が見えない赤いローブに、すっぽりと顔を覆って伏し目がち。常に監視されているのでおしゃべりもできず、反抗すれば厳罰が待っている。夫も娘も、名前すら奪われた主人公のオブフレッド(本当の名前はジューン)は、富裕層である司令官フレッドの子孫を残すために一家に仕え、子どもに恵まれないフレッドと妻と3人で、月に1度の“儀式”に臨みます。これが世にもエグいんですね。 侍女は妻の股の間に頭を置いて横たわり、妻と手を握り合いながら、夫と行為に及ぶのですが、そこに快楽があってはならない。侍女は「歩く子宮であって愛人ではない」のです。物として扱われる女性たちの姿は、女性の人権運動が今また大きなうねりとなっている現代において、さまざまな事例と重なり、むうと考え込んでしまうことも。 この社会では、産める女と産めない女がいるだけ。“コロニー”行きとなる後者の末路は、侍女以上に悲惨です、個人の幸福よりも国家の利益が優先され、密告を恐れて人々が息を潜めて暮らすようすは、全体主義の恐怖をこれでもかと伝えて、心の奥底がシンと冷たくなるよう。 一体、なぜこのような事態になってしまったのか?ドラマでは、断片的にジューンの過去が描かれるのですが、それは私たちが送っている生活となんら変わりありません。少しずつ、何かおかしいな、変だなと思いながら日々を送るうちに、女性差別が至るところで顕在化し、気づけば女性名義の銀行口座は凍結され、仕事を失い、クーデターにより宗教主義国が誕生していた。「弾圧に抵抗した時には遅かった」というジューンの心の声が、鋭く胸に刺さります。 ある時、侍女の1人が「人って慣れちゃうのね」とポツリ。その瞬間の、ジューンのハッとしたような表情が忘れられません。後悔してもしきれないけど、過去は変えられない。屈辱に耐えながら、娘と再会するために生き抜く覚悟を決めたジューンの不屈の闘いは、どのような道をたどるのか。この物語はSFでも遠い未来の話でもない、現代社会を映す鏡なのです。
2018年02月19日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『お笑い』ということで、『オモロー山下』として活動した元芸人で、現在はインタビュアー・ライターとして活動するインタビューマン山下さんが最推し芸人を紹介! 【最推し芸人】チャンス大城 世間には知られず、主に小さなお笑いライブだけで活動している芸人さんを“地下芸人”といいます。 その現役地下芸人界の主がチャンス大城さん(以下・チャンスさん)です。地下への潜伏期間はなんと30年。地下芸人出身の芸人さんを挙げると潜伏期間20年の永野さん、潜伏期間24年のハリウッドザコシショウ。そのはるか上をいく30年というのは、あの綾小路きみまろさんと同じ年数だというから驚きです。 そんな地下芸人のチャンスさんには、ここ1カ月で『すべらない話』に出演、とんねるず『みなおか』の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」では優勝……と、追い風が!実に15年ぶりだったテレビ出演のきっかけを作ったのが、吉本の養成所・NSCで同期だった千原兄弟でした。 養成所時代、チャンスさんはこっそりノートで同期芸人のネタに点数をつけていて、千原兄弟には低く点をつけていたそう。そのノートが偶然せいじさんに見つかり、千原兄弟のトークライブに呼び出しを食らう羽目に。そこで披露したのが、なんと山に埋められたエピソードでした。 チャンスさんは地元の怖い先輩に夜中、山奥に連れていかれ、首まで土に埋められ、そのまま放置されていたそうです。しばらくして、たまたま肝試しに来ていたカップルが急接近。助けてもらおうと、彼らに「すいません」と声をかけると、カップルはチャンスさんを生首の幽霊だと思い、「ギャー!」と叫んで逃げていってしまい、助けてもらえなかったそう……。この話が大ウケし、ジュニアさんのプッシュもありテレビ出演につながったのです。 チャンスさんのトークは、いじめられていたころの話が多いのですが、不思議と笑えます。この不思議と笑える一番の理由は、チャンスさんからにじみ出る哀愁です。 たとえばチャンスさんの埋められた話を若手にされると、いじめられていたときから、まだ時間がそんなにたっていないので生々しくて笑えません。しかし、おじさんが話すと、聞く側はどうしてもおじさんのビジュアルの状態のままで、埋められていた絵を浮かべてしまうのでそのコミカルさに笑ってしまいます。 「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で優勝したネタも、『ザ・ノンフィクション』に出てくる哀愁のあるダメ親父の役で爆笑をかっさらっていました。 つまりチャンスさんの持っている哀愁という武器は、加齢を伴ってこそ輝くんです。43歳でようやく注目された理由もここにあります。 これからどんどん年を積み重ねていくチャンスさん。彼がこれからスタートさせる地上芸人活動の未来は、明るいに違いないでしょう。
2018年02月12日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『今晩は吉永小百合です』/TBSラジオほかで毎週日曜日22時30分~放送中 『今晩は吉永小百合です』は昨年600回放送を達成した長寿番組です。様々なジャンルの音楽をトークで繋ぐ王道のスタイル。12年も続けているだけに、流暢なトーク……と思いきや。不思議とちょっと初々しい感じがするんです。この番組を聴いていると、吉永さんが微笑みながらお喋りしている姿が目に浮かんできます。 テーマを設けて、リスナーさんからのお便りも紹介していきます。長文の投稿が多いんですが、とにかく丁寧に読み上げているのが印象的。男性リスナーからの「夜の一時を癒してくれている吉永さんの声に感銘を受けています」という一文に、「感銘なんていわれるとどうしていいか……。ありがとうございます」なんてテレながら返答していたのも吉永さんらしいところ。気取らず、あくまでも1人の人間としてリスナーと向き合っているのだと思います。 半年に1度放送されるのが、その期間に吉永さんが「見たもの聞いたもの」を紹介する企画です。映画や演奏会、舞台などの感想を話されているんですが、特に熱がこもるのが意外にもスポーツの話。野球も好きで、西武ライオンズの大ファンなんです。昨年の年末には「セ・リーグではカープを応援しているカープ女子もどき(笑)」なんておどけた感じで語られていました。 リスナーさんもそれを知っていて、スポーツに関する投稿も多いんです。野球好きのリスナーさんからは、「東京ドームに設置されている吉永さんの大看板(JR東日本の広告)にホームランの打球が当たらないか、いつもヒヤヒヤしている」というマニアックなお便りも。吉永さんは「当てられたら福が来るかもしれないという気もしますけど、目や顔に当てられたら痛いかなあ。フフフ(笑)」と楽しそうに話していました。 リスナーさんとのやりとりでは、自然な笑い声が何度も漏れてきます。そして、時には真面目な話をされることも。スクリーンの中では見られない吉永小百合がラジオにはいるんです。 考えてみれば、映画中心で活躍している吉永さんの1人喋りを30分間聴けるなんてラジオ以外の媒体はありえないですよね。吉永さんの優しい声を満喫して穏やかな気分になります。最後は必ずこの言葉で終わります。「また来週元気で会いましょう」。日曜日の夜にはもってこいの番組ではないでしょうか。
2018年02月05日全米で『ラ・ラ・ランド』を超える特大ヒットを記録し、日本でも働く女性たちを中心に圧倒的支持を得て話題となった映画『ドリーム』。このほど、本日2月2日(金)のブルーレイ&DVDリリースに合わせ、映画やドラマで大活躍中の本作主演タラジ・P・ヘンソンのインタビュー映像がシネマカフェに到着した。本作は2017年度・第89回アカデミー賞で作品賞をはじめ3部門にノミネートを果たした、NASAの歴史的偉業を支えた女性たちの奮闘を描いた痛快作。実在のヒロインたちを描いた感動のストーリーは全米興収チャートで驚異の11週連続トップテン入り。オスカー女優オクタヴィア・スペンサーや、昨年度『ムーンライト』でオスカーに輝いたマハーシャラ・アリ、同じく『ムーンライト』に出演していたシンガーのジャネール・モネイなど旬な俳優たちに、名優ケビン・コスナーほか実力派俳優たちの豪華競演が実現している。そして、『ベンジャミン・バトン数奇な人生』でオスカーにノミネートされ、「Empire/エンパイア 成功の代償」「パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット」などの海外ドラマでも知られるタラジは、本作の主人公で天才数学者のキャサリンを演じている。キャサリンは様々な差別を受けながらも、その圧倒的な数学力を発揮し、NASAを支えるかけがえのない一員になっていく。今回の映像でタラジは「選ばれて光栄だった。この役は絶対に演じなきゃと思ったの」と語っており、本作に並々ならぬ心意気で臨んだことを明かしている。また、本作で音楽に携わったファレル・ウィリアムスは「タラジは魔法のように感情表現するんだ。たった2秒で別世界へ飛んでいく」とその演技を賞賛。さらにタラジは「喜んでたけど、だんだん怖くなった。私は数学や科学には疎い。だから数式を見るたび汗をかいたわ」と明かし、「跳ばなきゃならないハードルだった。数字や方程式を何とか覚えたわ」と茶目っ気たっぷりに笑い、この役柄ならではの悩みがあったことも吐露。そんなタラジの演技をぜひ確かめてみてほしい。『ドリーム』は先行デジタル配信中、ブルーレイ&DVD発売中・レンタル中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ドリーム 2017年9月29日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開(C) 2016Twentieth Century Fox
2018年02月03日(C)真船佳奈/朝日新聞出版 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介! 【最推しマンガ】『オンエアできない!』真船佳奈 著・朝日新聞出版 多くの人が毎日目にするものという点で、テレビは親しい存在だけれど、一方ではやっぱり遠い存在でもある。 本書は、著者・真船佳奈さんのデビュー作となる。なんと彼女は、テレビ局(テレビ東京)の現役ADとして、毎日働いている。ここに描かれているのは、テレビ局で働く彼女の経験談であり、日常風景だ。 ADの仕事内容について、わかりやすく、おもしろく知ることができる作品なのだ。一話ずつ短い読み切り形式となっているので、サクサク読み進むことができるのだが、紹介されているエピソードはどれも濃厚なもの。 一話目のストーリーをざっとかいつまむと、「上司のディレクターに命じられ、明日早朝までにドングリ600個を集めなくてはならない」という状況。果たしてどんな方法をとるのか、どんな結末が待っているのかは、ぜひ実際に読んで確かめてもらいたいけれど、悲惨なはずの状況も、絵のタッチと切り取られ方によって、笑いながらページをめくってしまう。 終始笑えるトーンで描かれている作品だけれど、最後の十一話目だけは、少しだけ異なっている。 企画取材で知り合ったおばあさん、「あおちゃん」との出会い。戦死したお兄さんの写真を大切に持っているあおちゃんとのやりとりには、つい涙ぐんでしまったし、実際にオンエアされた番組を見たかったなあと心から思った。 どんな一瞬の映像であっても、そこには作り手たちが存在している。もちろんテレビ業界にかぎったことではなくて、あらゆるものに当てはまるのだが、自分も頑張らなくてはいけないな、と改めて思わされるし、テレビを見る目が変わってくる。 親しくて遠いテレビの世界が、読む前よりもずっとリアルに感じられるし、見えないところで働く人たちに、エールを送りたくなる。反対に、エールを送ってもらっているような気持ちにもなる。 また、さらに別の知りたい部分が生まれてくる作品でもある。本書でも軽く触れられている、女性ADの恋愛事情についても、深く掘り下げて読みたいと思った。 おそらく周囲の人が見たなら、一目でわかるほど、リアルな似顔絵や時に実名まで入って、実際の同僚や先輩についての裏話なんかも描かれている。そのため勝手に、「著者の会社での立場は大丈夫なのだろうか」なんて余計な心配までしてしまうほどだが、ぜひシリーズ化してもらいたい。心から待ち遠しい。
2018年01月29日『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介! 【最推し海外ドラマ】『マインドハンター』 犯罪捜査におけるプロファイリングとは、犯罪の性質や特徴から、犯人像を推論すること。映画『羊たちの沈黙』で有名になったハンニバル・レクター博士のように、知的でエレガントな紳士が、実は猟奇的な連続殺人鬼で、天才プロファイラーと双方を出し抜き合いながら名勝負を繰り広げる。現在の刑事ドラマや犯罪サスペンスにおいて、プロファイリングは花形と言ってもいい人気の題材です。 一方で、人気があるからこそ、好青年が突然目を見開き、カリスマ性のある殺人鬼に豹変したり、これみよがしの残酷描写といったステレオタイプに、食傷気味の人もおおいのでは。映画『セブン』のデヴィッド・フィンチャー監督が手がけた話題のドラマ『マインドハンター』は、ど直球の題材なのに、そうした描写はほぼないという変化球。一瞬、肩透かしをくらった感があるかもしれませんが、精神的にじわじわと迫り来る恐怖に、ゾッとする作品なんですよ。 舞台は’70年代のアメリカ。ドラマは、FBIにプロファイリングを専門とする行動科学課が誕生した後、捜査官のフォードとテンチ、そして大学教授で心理学者のカーが加わり、プロファイリングを犯罪学として確立していく過程を描いていきます。その方法は、当時としては画期的。各地の警察へ出向き、FBIの捜査方法を伝授するという職務の一方で、地元刑務所に収監されている、悪名高い連続犯罪者への面会を重ねて、データを集めるというものです。 本作は、FBIの元プロファイラーによるノンフィクション『マインドハンターFBI連続殺人プロファイリング班』がベース。フォードらが面会する連続犯罪者は実名で登場するのですが、彼らは自分たちの話を、FBIが丁寧に聞いてくれることに機嫌をよくしている風もある。おどろおどろしい犯行について、フォードが興味津々で「なぜ?」「どうやって?」と、動機や手口を語らせていくくだりは、思わず前のめりになって聞き入ってしまうほど。 この言葉だけで語られる犯罪者の心理、手口というのが、実に不気味なんですね。なぜかというと、実在の犯罪者たちのたたずまいが、あまりにも自然で、面会シーンの臨場感、現実味が尋常じゃないから。血みどろの犯行を見せられるよりも、ごく普通の、そこら辺にいるようにしか見えない平凡な人々が、淡々と、あるいは嬉々として、まるでそうすることが当然だとでも言わんばかりに持論を展開する姿は、もうヤバいとしか言いようがありません。 「俺は犯罪者の心理を理解できるんだぜ」といった得意気なフォードにもまた、薄ら寒さを感じるのですが、そうした慢心、ある種の幻想は、終盤で木っ端微塵に打ち砕かれます。誰もが思ってもいないような瞬間に、とても静かで、身の毛のよだつような方法で。鬼才フィンチャーが描くプロファイリングのリアルは、これまでとは全く異なるアプローチで、社会や日常に潜む恐怖を伝える怪作です。
2018年01月22日アカデミー賞3部門ノミネートし、NASAを支えた知られざるヒロインたちを実話に基づき描いた映画『ドリーム』が17日、動画配信サービス・ビデオマーケットで配信を開始した。舞台は1961年のアメリカ。当時のアメリカはソ連と熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた。NASAに所属する優秀な黒人女性グループのひとり、キャサリン・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)は天才的な数学の知識を持っており、宇宙特別研究本部のメンバーに配属されるが、白人男性ばかりの職場で劣悪な環境だった。彼女と仲の良い同僚で、管理職への昇進を願うドロシー・ヴォ―ン(オクタヴィア・スペンサー)とエンジニアを目指すメアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)も、理不尽な障害にキャリアアップを阻まれていた。しかしそれでも仕事と家庭を両立させ夢を追い続けた3人は、「宇宙飛行士ジョン・グレンを宇宙空間に送り出し無事に帰還させる」という合衆国の威信をかけた一大事業に尽力し、NASAの頭脳として最も重要な役割を担いながらも近年までほとんど語られることのなかった感動の実話だ。北米では『ラ・ラ・ランド』の興行収入を上回り、映画情報サイト・シネマトゥデイが選んだ2017年映画ベスト20(2017年1月1日~12月31日に劇場、放送、ストリーミングなどで日本初公開された全ての映画が対象)でも、見事に1位に輝いている。また当初、邦題では『ドリーム 私たちのアポロ計画』を予定していたが、映画で中心的で描かれているのがマーキュリー計画であることもあり、SNS上を中心に批判が殺到。結果的に「私たちのアポロ計画」が削除され、『ドリーム』に変更された。
2018年01月18日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『お笑い』ということで、『オモロー山下』として活動した元芸人で、現在はインタビュアー・ライターとして活動するインタビューマン山下さんが最推し芸人を紹介! 【最推し芸人】東京ホテイソン(たける・ツッコミ担当/ショーゴ・ボケ担当) 東京ホテイソンは、ボケのショーゴ君とツッコミのたける君の漫才コンビ。彼らの特徴は、「まねしたくなるツッコミ」です。歌舞伎の見えのような口調で両手を広げてツッコむ。この独特ツッコミで最近ネタ番組の出演を増やしています。 このスタイルになったのは、たける君が地元岡山弁でツッコんでいると周りから「それ千鳥のノブさんじゃん!」と言われてしまったから。方言なので別にいいのでは……?と思いきや、実はノブの岡山弁は、ノブ流に、マイルドにしているそうです。そこで、たける君が20年やっていた備中神楽という、歌舞伎のような伝統芸能の要素を取り入れ今の形になりました。 彼らはたける君が22歳、ショーゴ君が23歳という若いコンビ。2人がコンビを組んだきっかけも若さゆえでしょうか、SNSの相方募集掲示板で知り合ったというから驚きです。たける君は実際に数人と会ったものの、“誰も組んでくれない人”が集まる掲示板ではとにかく変な人が多く、気の合う人と出会えなかったとか。その中でお互いいちばん常識もあり、ちゃんと最初に敬語を使えたという基本的な理由で組むことになったそうです。 たける君はネタは書けず、お笑いをやるというより、ただ人気者になりたくてこの世界に入ってきた楽天家タイプ。一方のショーゴ君はネタ担当でお笑いに貪欲だけれど少し陰もある性格。コンビで性格が対照的なのは互いの弱点を補える強みになりますが、ショーゴ君はかなり尖っていたとか。 ある日突然丸刈りになっていたので理由を聞くと「おもしろいことやるのに髪、いらんやろ」と答えたり、たける君が同世代の芸人のネタを見て笑っていると「ほかの芸人のネタを見て笑うな!」と言っていたそう。しかし、テレビに出ている芸人さんのネタを生で見て、「みんなすごいわ!」と感動し、尖らず吸収しようと思い直したそうです。 そんな2人は新年早々、去年ブルゾンちえみのブレークのきっかけとなった番組『ぐるナイおもしろ荘』に出演!今年の夏は東京ホテイソンが24時間マラソンを走っているかも!?
2018年01月15日漫画と音楽という異色のコラボレーション・コンサート『手塚治虫生誕90周年イベント岩代太郎×浦沢直樹マンガ シンフォニー(MANGA SYMPHONY)「○」』が、2018年3月31日(土)東京芸術劇場 コンサートホールにて開催される。チケットは、1月14日(日)より一般販売。先駆け2017年12月21日(木)より先行予約受付(抽選)がスタートする。『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』など、数々の名作を生み出した故・手塚治虫が生誕90周年を迎える。アニバーサリーイヤーとなる2018年、『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」をリメイクした『PLUTO』などで手塚治虫文化賞マンガ大賞を2度受賞した、人気漫画家・浦沢直樹が新企画を始動させる。タッグを組むのは、ジョン・ウー監督作品や菅田将暉とヤン・イクチュン主演『あゝ、荒野』などの映画音楽を手掛ける作曲家の岩代太郎だ。コンサートは2部構成になっており、第1部は手塚アニメからピックアップした歴代名曲を東京フィルハーモニー交響楽団が演奏。さらに、浦沢直樹と岩代太郎によるトークイベントも予定している。続く第2部では、岩代太郎が本公演の為に描き下ろしたスコアを展開。その音楽に合わせて披露されるのが、浦沢によるライブドローイングだ。全8楽章の交響楽に合わせて、ステージ上のスクリーンには、1本の線から完成作品へと変化していく姿が映し出される。【イベント詳細】手塚治虫生誕90周年イベント岩代太郎×浦沢直樹MANGA SYMPHONY「○」開催日時:2018年3月31日(土)17:15開場 / 18:00開演会場:東京芸術劇場 コンサートホール住所:東京都豊島区西池袋1丁目8-1出演:音楽・指揮岩代太郎/作画・奏画浦沢直樹演奏:東京フィルハーモニー交響楽団チケット価格(全席指定):S席 7,800円、A席 7,300円※4歳以上チケット必要※価格はすべて税込。チケット発売日:2018年1月14日(日)※12月21日より先行予約受付
2017年12月24日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『伊集院光とらじおと』/TBSラジオで毎週月〜木曜日8時30分〜放送中 『伊集院光とらじおと』は、首都圏の聴取率調査で全番組中1位を記録したことがあるTBSラジオの人気帯番組。各曜日に個性的なコーナーがありますが、火曜日に放送されているのが「俺の5つ星」です。 リスナーの思い出に残る飲食店を捜索するコーナーなんですが、何十年も前の個人的な記憶に基づいた情報なので、当然インターネットで調べてもわかりません。お店も当時あった場所にないことがほとんど。そこで、リスナーから情報を募っていきます。 面白いのが「投稿者にとっての5つ星店が、他の誰かにとっても思い出のお店だった」という形が多いこと。いろんな場所でいろんな人の記憶に残っている情報が、ラジオを通じて繋がっていき、曖昧だった記憶が再構築されていくんです。最終的に関係者に辿り着けることもあれば、途中で情報の糸が途切れてしまうこともあります。お店の主人が廃業されていたり、料理の再現をお願いしても「当時の美味しかった記憶に応えられない」と断られることもあって、“ほろ苦さ”も少し感じられるコーナーです。 最近で印象的だったのはザ・クロマニヨンズの真島昌利さんがゲストに来た回。真島さんは「花小金井にあったおにぎり屋」を探していました。三十数年前、1人暮らしをしていた真島さんは毎日このおにぎりを食べていたそうなんです。 「真島さんと同じおにぎりを食べてたかと思うとジタバタする」というファン、真島さんの中学時代の同級生などから情報が集まって、おにぎりの種類や包装の仕方、お店があった時期、店舗の表記がカタカナ、海苔はなしで三角形の型で作られていたことなど明らかになっていきます。そして、当時のお店の情景や状況が明確になり、真島さんの記憶も甦っていきます。 ここで、事前に行われた近隣への聞き込み調査の末に、店主と接触できたことが明らかに。おにぎり屋は’06年に閉店していて、今は別の仕事に就かれていました。レシピも残っていないとのこと。でも、真島さんの気持ちに触れ、11年ぶりにおにぎりを作ることを快諾してくれました。スタジオにおにぎりが運ばれてきて、真島さんは放送中に思い出の味を再び口にします。真島さんはそのおにぎりを見た瞬間から涙ぐみ、泣きながら食べていました。「こういうパーツで思い出って一気に来ますよね。水門が開いちゃうわ」という伊集院さんの言葉が印象的でした。 あくまでもラジオは音声だけなので、リスナーはその思い出の料理を目にすることはできません。ただ、いろんな人たちの思い入れを聴くだけで、不思議とありありと思い浮かぶようになるんですよね。食べたことないけど、自分の思い出のように感じられる。そして、無性にお腹が減る。そんな素敵なコーナーです。
2017年12月21日(C)ウラモトユウコ/小学館 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介! 【最推しマンガ】『fit!!!』ウラモトユウコ著・小学館 今の職業につき、家で仕事をするようになって、つくづく運動不足を実感する。肩こりも腰痛も、いつしか身近な存在だ。運動しなきゃ、と思いはするものの、フィットネスのガラス越しに身体を動かす人たちを見ては、やっぱりわたしには無理だ、と引き返すような日々。 けれど今回、『fit!!!』を読み、やっぱり通おうかなあという気持ちが生まれたのは事実である。メインの登場人物は女性三人だ。ラーメン食べ歩きが趣味で、その界隈ではちょっとした有名人でもあるテンポ。美人だし、美にも意識的であるが、自分の身長の低さがコンプレックスのサナ。フィットネスで先生として働き、エアロビ教室などを受け持っているユイ。 テンポがフィットネスに通いはじめた理由は、代謝を上げて、ラーメンをいっぱい食べるため。サナは、筋肉をつけ、さらには姿勢を改善して身長を伸ばすため。まるっきり違うタイプの二人が、優しいユイ先生のアドバイスを参考にしながら、フィットネスに通い、そこで交流を深めていく。時に新たな出会いなどもありながら。 この物語の中に、大事件は起きない。三人がそれぞれに何かに気づいたり、何かを思ったり、体重が少し変動したり、他人からはわからないほどの変化をしたりもするけれど、いずれも些細なことだ。 だからこそ引き込まれる気がした。ここに自分がいてもおかしくないと思わせてくれる空気感。あるいは反対に、テンポがやサナやユイは、わたしたちと駅前ですれ違ったりしているのかも、なんてつい想像してしまいたくなる。 親しみやすさには、設定の妙や、とても見やすくかわいらしい絵(ちなみに作者のウラモトユウコさんはイラストレーターとしても活躍中で本の装画などもよく手がけている)はもちろん、登場人物たちのウエアも関係しているかもしれない。彼女たちが身につけているウエアにはアシックスのマーク。作品を読んだあと、実物を探してみるという楽しみ方もおすすめしたい。 その道の頂点を極めたような人の姿勢や行動力に感動することもあるけれど、ふとすれ違った、自分とそう変わらなく見える人の一面が、動き出すきっかけとなることも多い。フィットネスに限らなくても、何かを始めたくなる。『fit!!!』は自分を、いつもとは少し違う場所に連れていってくれる作品になるはずだ。
2017年12月18日小学館のマンガアプリ「マンガワン」で連載中のONEによるコミックを、濱田龍臣主演で実写化する「モブサイコ100」。この度、主人公を取り巻くキャラクターを演じる俳優陣が決定した。超能力バトルに加え、少年の成長物語という王道の青春ドラマでありながら、ギャグ満載のコメディとシリアスなシーンが絶妙に絡み合い、特撮やVFXを駆使した壮大な超能力バトルシーンが見どころとなっている本作。おかっぱ頭の内気で目立たない超能力少年・影山茂夫(通称:モブ)を務める濱田さんをはじめ、与田祐希(「乃木坂46」)、波岡一喜が本作に出演することがすでに発表されている。今回発表されたのは、モブを取り巻く登場人物を演じる望月歩、荒井敦史、山谷花純、モロ師岡。『真田十勇士』では映画と舞台で真田大助役を演じ、「母になる」にも出演していた望月さんが演じるのは、成績優秀でスポーツも万能、生徒会に所属しているモブの弟・律。「いろんな想いを閉じ込めてる律くんをどう演じようか…」と日々奮闘中だと言う望月さんは、「すごく笑いが絶えない現場で毎日毎日楽しいですし、そんな素敵な場所のおかげで律として成長していると思います。期待してください!」とコメント。また『リアル鬼ごっこ4』『ガチバン』の荒井さんが演じるのは、自分が世界の中心だと思っている超能力者で、黒酢中の裏番長・花沢輝気。原作を読んで大笑いしたと明かす荒井さんは、「キャラクターたちも物凄く魅力的で生身の人間が演じたらどうなるのか、花沢を演じるプレッシャーもありますが…楽しみながら大胆に挑戦しております。是非お楽しみに!」とメッセージを寄せた。部の存続のためにモブを勧誘する、脳感電波部の部長・暗田トメを演じるのは、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」や連続テレビ小説「あまちゃん」の山谷さん。オファーを受けた際、「新しい扉を開かねば演じられない子」と直感したと言う山谷さんは、「約3年ぶりに坂本監督とご一緒でき、挑戦的な役を演じられ胸一杯です。全てを振り切り、私というフィルターを通して生きるトメが皆さんにどう届くのかいまからとても楽しみです」と撮影を楽しみにしている様子。そして、モブ行きつけのタコ焼き屋のおやじ役を、大河ドラマからミステリー、コメディ作品と幅広い作品に出演するモロさんが演じる。脚本を読み、「ゆる~いなぁ」と感じたと言うモロさんは、それゆえ「私の芝居も全く緊張感のない力の抜けた演技を心掛けました。でも、手を抜いた訳ではありませんよ」と明かし、「きっと肩の力を抜いて頭の中を空っぽにして楽しめる作品になっていると思います!」とドラマについて話している。そのほか、超能力者を集め超能力を覚醒させることを目的とした研究機関「覚醒ラボ」のメンバーも発表。創設者・密裏賢治役を久保田悠来、白鳥大地・海斗の超能力兄弟役を塩野瑛久と福山康平、同じく超能力者・黒崎麗役を坂ノ上茜が演じる。木ドラ25「モブサイコ100」は2018年1月18日(木)より毎週木曜日深夜1時~テレビ東京にて放送。※Netflixでは1月12日(金)より配信、BSジャパンでは1月23日より毎週火曜日23時~放送。(cinemacafe.net)
2017年12月13日(C)2017 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc. 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介! 【最推し海外ドラマ】『ビッグ・リトル・ライズ』 今年を代表するドラマのひとつが、オスカー女優のニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンという映画スターが豪華共演の『ビッグ・リトル・ライズ』。企画から制作まで、女優陣が自身でプロダクションを率いて手がけたミステリーの傑作です。 軸となるのは、ニコールとリースが演じるママ友、セレステとマデリン、引っ越してきた若いシングルマザーのジェーンの3人。世話好きなマデリンは再婚してパートで働く2人の子持ち、弁護士だったが現在は専業主婦の美女セレステは、夫はイケメン&エリートで双子の母親、一方のジェーンは子どもの父親について語らず、わけありの様子。小学校で起きたいじめ問題に端を発して、親同士を二分するゴリゴリとした軋轢は加速していき、徐々にママ友たちの裏の顔が明らかに。 序盤は、女性なら“あるある”満載で「こういう人いるよねえ」とうなずきまくり。やがて、子育ての悩みからセックスレス、日常的に女性が経験するセクハラ、モラハラからDVまで、女性たちが抱える問題ががっつりと描かれる展開は、なかなかヘビーです。 特に、誰もが羨む完璧な人生を歩んでいると思しきセレステ。荒っぽいセックスを夫も自分も好んでいる、夫と自分は対等だと思っていたのに、実はこれがDVなのだと認識していくくだりでは、息を詰めて呼吸をするのも忘れてしまうほど。聡明で思慮深い女性が、なぜDVの被害者となってしまうのかを、これほどリアルに伝えたドラマは、見たことがありません。 本作のテーマを象徴するシーンはほかにも。セレステが久々に弁護士に復帰した際に、自分が仕事を楽しんだことに罪悪感を覚えながら、心の奥から絞り出すようにして「母親業だけじゃ足りない」と吐露する姿に、思わず落涙。子どもにも恵まれ、何不自由ない生活を送りながら、不満を感じる自分を責め続けてきたセレステの言葉は、現代に生きる多くの女性の気持ちを代弁しているかのよう。 原作は、オーストラリアの人気作家によるベストセラー『ささやかで大きな嘘』。冒頭で、6カ月後に誰かが何者かによって殺された事実が掲示され、最後まで謎を引っ張る仕掛けは、日本でいうと湊かなえ作品のようなテイストも。ドラマの脚色は重くなりすぎずコミカルさもあって、最終話で明らかとなる殺人事件のてん末は、意外で痛快。思いがけず胸のすくような幕切れに。きっとわけもなく涙がこぼれてしまうはず。
2017年12月11日