「病は気から」と言われますが、この目には見えない「気」。古来中国では生命力の源だと考えられています。冬本番に備え体調管理に努めたい今日この頃。でも年末に向けて忙しく、頭も体もパンク状態!さらには疲れていてもパソコン、スマホで頭がギンギンに冴えて寝付けなかったり、眠りが浅くて翌朝疲れが抜けないというアナタ。明日があるのに、困る〜!ご安心ください。動きはゼロ、型を習う必要もナシ。寝る前のほんの少しの時間でいい、寝たまんま気持ちいい〜「気」の力を利用した安眠リフレッシュ法をお伝えします。取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 9病は気から。気のせい。本気を出せ! 気持ちがいい。科学の世界とはいっても、当たり前のように言い交わされる目に見えない「気(正字は、氣)」なるもの。改めて「気」っていったいなんなのでしょう。気、って何?古来、中国思想や医学では、生命力の源となる物質のことを「気」と呼んでいました。それは宇宙に惑星や恒星を配置して動かしている力、地球上に生命を誕生させて育む力。すべてがこの「気」と呼ばれるエネルギーの成せる技だと考えられています。それに加えて日本語の「気」は「気のせい」「気持ち」など心理的、情緒的なニュアンスも含んでいます。また文字通り”気が病む”とする病気は、中国医学では「気」の流れがスムーズにいかないのが原因だと考えられています。そして「気」のめぐりを良くして健康になるための方法が、気功。『黄帝内経(こうていだいけい)』というもっとも権威のある最古の医学経典によれば、気功には病気の予防、治療、延命という3つの効果があるとされています。「気」の力は科学的にも効果あり!そんな医療気功のなかで、姿勢、呼吸、瞑想などによって体の内側の「気」を活性化するというのが「内気功」です。内気功は科学的にもその効果が研究されています。例えばハーバード大学が出したレビュー論文でも、心拍数(1)、血圧(2)、ストレスホルモンを下げ(3)、体の免疫機能を向上させる(3、4)とあります。とはいえ早朝に公園で気功を、なんて「気」合いは入らない。本を読みながら型を習うのもなおさら面倒くさい。ということで、今回はなーんにも動かなくてオッケー! 寝たまんまできる「気」持ちいい〜イメージ療法「内観法」をご紹介します。安眠できる、寝たまんま「内観法」5つのポイント。1. 布団に入ったら、両脚を伸ばしてしっかりと揃える。2. 「最悪眠れなくても死にはしない」とリラックスする。3. 全身の「気」をへそ下から指2本分ぐらいの場所(気海)、へそから握りこぶし一つ分下の場所(丹田)、腰、股、足裏とどんどん足先に向かって流れていくと一心でイメージする。4. 3を繰り返し、しばらくすると足先がポカポカ温かく感じられるように。5. 温かく感じたときはほとんど入眠状態。気づいたら翌朝です!ところで赤ちゃんや小さな子どもに触れていると、眠くなる前に手足が温かくなっていると感じませんか。この状態を「頭寒足熱」と言いますが、血行が十分に働いて手足の末端まで行きわたり、頭が涼しくなっていないと眠れないもの。一方で現代の暮らしは、スマホやパソコンなど「気」が頭に上る習慣が中心となっています。そこで意識的に「気」を下へ向かわせるようにイメージして、巡らせるのがポイント。心に強く描けば、体はそれに従ってくれます。丹田を温め、困難への免疫力をつける。ところで気功では丹田(へそから握りこぶし一つ分下の場所)は大変重要な役割を担っています。のぼせた頭を鎮めるために、両手をここに重ねて当て、吸った息を吐き下ろして下腹を膨らませながら丹田が温かくなっていくのを体感するというテクニックもあります。これを丹田の気といいますが、病気の免疫力になるとも考えられています。加えて”肚が坐る”という表現もありますが、丹田に心を鎮めて集中することで、不運や困難にフラットに対処できる動じない精神力を養うとも考えられています。こちらは通勤電車でもオフィスでも手軽にできるエネルギーチャージ法なので、ぜひ毎日の生活に楽しみながら取り入れてみてくださいね。土居彩編集者、翻訳者。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にて、畏怖の念について研究するダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、13世紀の道元禅師を初めて英訳し欧米に伝えた禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。恩人たちに支えられ続けながら、会社を辞めて渡米奮闘したドタバタな当時の様子を綴ったananweb連載『会社を辞めて、こうなった』も。[1] M. S. Lee, M. S. Lee, E. S. Choi, and H. T. Chung, “Effects of Qigong on blood pressure, blood pressure determinants and ventilatory function in middle-aged patients with essential hypertension,”American Journal of Chinese Medicine, vol. 31, no. 3, pp. 489–497, 2003. [2] M. S. Lee, M. S. Lee, H. J. Kim, and E. S. Choi, “Effects of Qigong on blood pressure, high-density lipoprotein cholesterol and other lipid levels in essential hypertension patients,” International Journal of Neuroscience, vol. 114, no. 7, pp. 777–786, 2004. [3] H. Ryu, H. S. Lee, Y. S. Shin et al., “Acute effect of Qigong training on stress hormonal levels in man,” American Journal of Chinese Medicine, vol. 24, no. 2, pp. 193–198, 1996. [c] [4] J. M. Manzaneque, F. M. Vera, E. F. Maldonado et al., “Assess- ment of immunological parameters following a Qigong training program,” Medical Science Monitor, vol. 10, no. 6, pp. CR264– CR270, 2004.
2019年11月11日秋の訪れを感じる季節になりましたが、寒暖差やストレス、生活リズムの乱れなどにより、自律神経のバランスが崩れると心身共に疲れを感じやすくなります。自律神経と呼吸の関係自律神経系はホメオタシス(恒常性)維持の為、意志とは関係なく常に働いています。主に内臓や皮膚に分布し、心臓、消化器、血管、汗腺などの働きを調整し、2つの相反する作用を持つ交感神経と副交感神経があります。交感神経は身体を活発に働かせ、副交感神経は睡眠や休養時に働き、この2つはバランスをとりあっています。自律神経の不調は、この二つの神経系のバランスがとれなくなった時に、疲れる、良く眠れない、汗をかきやすくなるなどの症状が現れます。現代社会はストレスを感じやすく、交感神経が活発になりがちです。副交感神経の働きを優位にし、ストレスを開放し、自律神経のバランスを整えましょう。呼吸と生活リズムを整える事は、自らを整えるだけでなく、周り(自然)と調和する事に繫がります。ゆったりとした呼吸、動作、自然と調和した生活リズムを心がけると、肉体的な疲れやイライラなど精神的な疲れが軽減されます。現代人は、呼吸が浅くて速いと言われています。浅い呼吸は精神的なストレスや運動不足で気が上がっている状態です。イライラすると呼吸が浅くなるので、呼吸をゆったりさせ、気を下げるように意識しましょう。呼吸は、自律神経の働きと密接に関係し、特に呼気(吐き出す息)は副交感神経の働きを高めます。長く深く吐く事を意識して、心身共にリラックスしましょう。丹田呼吸法丹田という「おへそ」のすぐ下(膀胱の周辺)に位置し、生命エネルギーをつかさどる場所を意識して行う呼吸法です。緊張したりストレスを感じている時は、肩に力が入り、頭に気が集中しているので、この呼吸法を行うと心身共にリラックスします。丹田呼吸法を行う前に身体を振ったり、肩の上げ下げを行い、身体の力を抜いてから行うと良いでしょう。① 丹田に軽く手を添えて、意識しながら呼吸します。② まずは、口からゆっくりと息を吐き出し、お腹と背中をくっつける気持ちで息を吐き切ります。③ 息を吸う時は、添えた手を軽く意識しながら丹田を膨らませるようにして鼻からゆっくり大きく吸い込み、これを繰り返します。*丹田に気をおさめる事を意識しながら行いましょう。*ゆっくりと長くお腹で行うのがコツです。意識的にゆっくりと深く呼吸をする事で自律神経が安定し、リラックスした心身の状態になります。*落ち込んだ時や、気分を切り替えたい時などにも、是非取り入れて下さい。疲れていたり嫌な事があると、下を向き呼吸が浅くなります。吐く事は浄化を促すので、嫌な事があったら呼吸と共に吐き出しましょう。笑顔でいると副交感神経がUPしリンパ球が活性化し、免疫力が高まると言われています。疲れたり嫌な事があった時こそ口角を上げ、リラックスしていきましょう。生活リズムを整えるには現代生活では、夜中でも明るく快適に過ごせるので、意識しないと自然に即した生活のリズムで過ごすことは難しかもしれません。夜型の生活になると体内時計が乱れ、疲れを感じやすくなったり、ホルモンバランスが乱れ女性周期が不安定になったり、心身の不調をきたしやすくなります。忙しかったり暑いと、シャワーだけで済ます方が多いと思いますが、疲れている時こそ湯船に浸かって心身の疲れを癒してから入眠すると睡眠の質が高まります。夜の入浴は、ぬるめの湯の方が副交感神経を優位に働かせる事が出来ます。逆に朝は、やや熱めの湯にすると交感神経が優位に働き、やる気のスイッチが入ります。ただし、血圧の高い方は、注意しましょう。スマートフォンやテレビなどから発するブルーライトの光には、交感神経を優位にし、寝つきが悪くなったり、睡眠の質を妨げてしまうので、寝る前の使用を控えたり、ブルーライトをカットするような工夫をすると良いでしょう。早めに就寝し、朝にスッキリ目覚められると、身体の中から活力が漲り、一日を活動的に過ごす事ができます。自律神経のバランスを整えて、ストレスに負けない心と身体を目指しましょう!監修・文章/宮本そのみ(管理栄養士)
2018年10月11日日々穏やかでありたいなと思いながらも、気づけば色々なことに追われ気持ちばかりが前へ前へ。そんなときポンと肩を叩いて「ほら、深呼吸!」なんて言ってもらえたら、ふと楽になりますよね。どうやら呼吸はわたしを整えるヒントになってくれそうです。 そんなわけで記念すべき第1回目は、いつも無意識でくり返している「呼吸」を習いに「呼吸ラボラトリー」を主宰するアマミヤアンナさんを訪ねました。 レッスンが開かれているのは表参道の小さなアトリエ。 「まずは吐くことを意識してくださいね」畳のうえに寝ころんで軽くストレッチをした後、障子越しに差し込む柔らかな光のなかで、静かにレッスンがはじまりました。 「ふだん無意識にしている呼吸を丁寧に感じていきます。吐くことってあまり意識しないですよね?」 たしかに呼吸と言われると、まず思い切り息を吸いますね。でも吸うときに体は緊張し、吐くときにゆるむのだそう。今日は体をゆるませることが目的なので、吐くことをしっかり意識します。 「鼻からゆっくり吐いてください。吐くときお腹をへこませます。そして吐き切ったらお腹の力を抜きます。力を抜けば必要な分、ちゃんと息が入ってくるから吸おうとしないで、ただゆっくり息を吐いていきますよ」 丁寧に指導してくれるアマミヤさん 鼻だけで息を吐いて、同時にお腹をへこませて、、、手順を頭でなぞりながら集中してくり返していると、「あ、がんばらないで下さいね」とアマミヤさん。「呼吸で体も心もゆるんでいく、というのが目的ですからね、がんばったら意味ないです。笑」 ドキッ!知らぬ間にがんばっていました。マジメな人が多いから、はじめはだいたいがんばっちゃうのだそう。慣れてくると一連の流れが自然にくり返せるようになります。 吐くことで副交感神経が優位に働き、自律神経を整えてくれるのだとか。 自律神経というのは、自分の意志と関係なく働いている神経で血管や内臓の動き、消化や呼吸なども司っているそう。そのなかで呼吸だけが自分の意志でコントロールできるため、呼吸を活用することで、乱れた自律神経を整えることができる、というわけ。 息を吐くと、心が静まり、感情から離れることができるといいます。感情から離れると、自分を客観的に見ることができるそう。 なんだか私とても疲れていたな、とか。私いまイライラしている!とか。そういうことに気がつくと、体はそれを手放していく準備に入るようです。 寝ころんでの呼吸が終わったら、今度は座って呼吸します。 用意された小さなブロック(代わりに座布団を半分に折ったものでも)に座ってあぐらをかきます。あぐらが難しい人は正座でも大丈夫。そして骨盤の真ん中にある仙骨という骨をグイッと立てます。これがスイッチオンの合図。その上へと連なる背骨(頚椎、胸椎、腰椎)全部で24個をひとつずつ積み重ねていくイメージで姿勢を整えていきます。 最後は頭頂部が天とつながるイメージ。そして仙骨からは地を突き抜けて地球のまん中と繋がるイメージ。だから天と地の真ん中に自分がいる感じですね。 イメージするということも大切なのだそう。あ、そうそう呼吸のあいだは目をつぶっていますよ。 まずは鼻で吐きながらお腹全体をへこませていきます。吐いたら力を抜きます。それをくり返すこと1分ほど。続いては丹田を意識します。 丹田とはおへそから9センチ下にあるエネルギーの出入口。体のなかで大切なポイントです。今度はそこを背中に引き寄せながら息を吐きます。吐いたら力を抜く。それをくり返していると、体がポカポカしてきました。 途中でアマミヤさんがそっと背中に触れてくれました。手を当ててしばし。すると、あ、そこ強ばっていたな、と気づきます。 気づいたら、手の温かさとともにそこが少しずつゆるんでいくのがわかりました。そして、その部分に呼吸が広がっていく感じがしたのです。私が息を出し入れしていた容器が、ふと1.5倍くらいに膨らんだ感じで、胸が楽になりました。 冷えとりをしているアマミヤさんの足元 呼吸の醍醐味は「気づくこと」なのだそう。いつも意識していなかったところにスポットが当たって、私けっこう緊張していたんだな、とか、私こんなことしてみたかったんだよな、とか。 小さな気づきが変化をもたらし、新しい自分に出会うきっかけになることも。忙しくて、文字通り心を亡くしている自分に気づくと、自分に少しやさしくしてあげられるかもしれません。呼吸をきっかけに心と体がバランスを取りもどすと、心がしっとりとして穏やかになれるのだとか。 「呼吸は何の道具もいらないから、いつでもどこでもやれる。そしてタダというのもいいですよね!」とアマミヤさん。 心がざわついた時など、まずは1分だけでもお試しを。目を開けたとき、ふと口角が上がって、パッと視界が明るくなっているかもしれませんよ。 「呼吸ラボラトリー」師匠 加藤俊朗先生の「呼吸のノート」はレッスンでも使用中。 アマミヤさんが制作に関わっている書籍やノートが教室の片隅に。こちらもオススメです!
2018年07月02日