猛暑のピークが過ぎても、なんとなく寝苦しい毎日。なかなか眠れなかったり、夜中に起きてしまったり……。ぐっすり眠って、翌朝は爽快(そうかい)に目覚めたい!そこで、元オリンピック・ショートトラックスピードスケートの選手で、現在は「健康と美容」についてのキャスターを務め、睡眠改善インストラクターの資格を持つ勅使川原郁恵(てしがわら・いくえ)さんに、快適に眠るための工夫をうかがいました。■ハーブティーとストレッチで疲れをとる現役時代は試合の遠征で日本各地や世界中を飛び回っていた勅使川原さん。現在も出張でホテル暮らしが多い毎日だとか。そこで、枕がかわってもぐっすり眠るコツを聞いてみました。「環境が変わると精神が不安定になって眠れないときもあるので、遠征先にはお気に入りのハーブティーを持参しました。私がよく飲んでいたのは、ストレスを緩和する効果のあるオレンジブロッサムティー、不眠症に効果のあるカモミールティー、不安や疲れを解消するローズティーです。これらは眠りに良い作用があると認められていますので、睡眠改善インストラクターとしてもおすすめします」(勅使川原さん)また、試合前夜の緊張時などは、腹式呼吸が効果的だったそう。そこで、具体的な方法をうかがうと、「あおむけに寝て、足を肩幅に開き、手のひらを下にしてリラックスした状態で行います。息を鼻から吸っておなかにたっぷり空気を入れ、口から細長く吐きながら、おなかをへこませるようにして、息を出し切ります。疲れを全部呼吸で吐き出すイメージです。眠れない、寝つきが悪いときは、深呼吸を繰り返してください。良い眠りにつくには自律神経の一つである副交感神経を働かせるとよいのですが、深呼吸を繰り返すことは、気持ちを落ち着かせて副交感神経に働きかけることになります」(勅使川原さん)また、「深呼吸後に、ストレッチをプラスして疲れをとるのもおすすめです」と、勅使川原さんが実践していたストレッチを教えていただきました。(1)背中周りのストレッチベッドや布団の上で体操座りをします。つま先をしっかり手でつかみ、ゴロ~ンと後ろに倒れて背中を床につけ、またゴロ~ンと起き上がります。背骨全体をローリングするつもりで。3回を1セットとして、2セットぐらいが目安です。(2)骨盤周りのストレッチベッドの上であおむけに寝ます。ひざを曲げて足で山を作ります。両足をぴったりくっつけ、もも、ひざ、ふくろはぎが離れないようにして右に倒し、ウエストをねじるようにします。顔は天井を向いたままで、肩が床から離れないように注意しましょう。左も同様に行い、左右3回ずつを1セットにして、2~3セットが目安です。(3)足首のストレッチあおむけで寝ます。足首を前後、左右に傾けて伸ばし、また、右回り、左回りにぐるりと回します。合計3回を1セットとして、2~3セットが目安です。「回数はあくまで目安です。これは眠りのためのストレッチなので、回数やセット数は自分がしたいだけ行ってください。途中でウトウトとすればそのまま眠ってください」と勅使川原さん。どれも簡単にできるので、今晩から試せそうです。■寝室の空気を入れ替え、湿度にも注意してまた、現役引退後に睡眠改善インストラクターの資格を取得したという勅使川原さんに、暑くて寝苦しい夜の暑さ対策を聞いてみました。「人間は、体の中心部の体温が下がらないと寝付けません。温かいお風呂に入って体の芯まで温まってしまうと、かえって寝付けなくなってしまうのです。そこで、体温を下げるには、手や足の先などから熱を放出させるのが手っ取り早いので、タオルケットを体全体にかけるのではなく、手と足の先をタオルケットから外に出すようにしてみてください」(勅使川原さん)また、勅使川原さんが言うには、寝付くためには「湿度も重要」だそうで、「寝室の湿度は50~55%にすると快適に眠ることができます。暑い時期は、敷布団と背中が接する部分の相対湿度が90%を上回ってしまうことがあります。通気性のよいパジャマを着る、シーツやタオルケットも汗を吸う素材のものにする、部屋の空気の入れ替えをよくする、布団であれば敷布団の下にすのこを敷くなど、湿気対策を行うとよいでしょう」とのことです。これらを試しても眠れないときは、勅使川原さんは次のようにアドバイスをします。「無理に眠ろうとするのではなく、焦らずに、布団に横になって目をつむって体が疲れない姿勢で、ゆっくりと時間を過ごすとよいでしょう。熟睡できずに脳が起きている感じがしても、体だけは休めるように心がけてください」これからは、眠れないからと言って、テレビをつけたり、インターネットをしたり、コンビニにおやつを買いに行ってしまわないよう、心にとめておきたいと思います。監修:勅使川原郁恵氏。ショートトラック・スピードスケートの種目で‘98年長野五輪、2002年ソルトレークシティー五輪で入賞、さらに’06年トリノ五輪と、3度のオリンピック出場を果たす。現役を引退後、朝日新聞ウォーキンググランプリのプリンセスウォーカー、(社)日本ウオーキング協会のウォーキング親善大使などを経て、多くの企業のウォーキング・アドバイザーを務めながら、メディアや講演など多方面で活躍中。トップアスリートとしての実績、トレーニングのノウハウを生かし、「年代を問わない美と健康」を提唱する。著書の『ウォーキングでナチュラル美人ダイエット』(扶桑社 1365円)は、ウォーキングでけんこう骨や骨盤、精神面などへ働きかける方法とその効果をわかりやすく解説した好評の一冊。(下関崇子/ユンブル)【関連リンク】【コラム】睡眠直前の熱風呂はNG。内科医が教える生体リズムとは?【コラム】眠るときのクセは?無防備な睡眠時の実態【コラム】内科医に聞く。精神的ストレスや体の不調を感じたらどうすればいい?
2011年08月22日