寒い時こそ食べたくなる激辛フード。その昔はトウガラシをカイロ代わりに使っていたほどだから、血行促進には打ってつけだ。もしも激辛フードを食べ過ぎたらどうなるのか?からだが熱く感じる程度ならかわいいものだが、度を超すと粘膜の損傷や胃がんにつながる。過剰摂取が続けば脳や神経にダメージを受け重い疾患に悩まされることになるのだ。■辛さは痛さ辛みの代名詞・カプサイシンは、トウガラシ属の植物に含まれる化合物で、炭素、水素、窒素、酸素が原料だ。脂溶性(しようせい)で油やアルコールによく溶けるが、水には溶けにくい性質を持つ。味の基本は甘/酸/苦/塩/辛の5つと言われているが、生理学的には辛味は存在しない。辛さは味ではなく、刺激にすぎないのだ。カプサイシンの場合、知覚神経につながるカプサイシン受容体TRPV1がその刺激を受け止める。これは化学物質や熱による「痛み」と同じだから、辛さ=痛さの図式となる。激辛料理を食べると、口の中が痛いほど辛いと言ってしまうが、これでは「痛いほど痛い」と言ったに等しい。もう少しひねりの効いたコメントを用意するべきだ。カプサイシンの辛さはスコヴィル値であらわされ、値が大きいほど辛い。食品や製品のおよそのスコヴィル値を挙げると、・純カプサイシン(化学合成)…1,600万スコヴィル・トリニダード・スコーピオン・ブッチ・T…146万・ブートジョロキア…100万・ハバネロ…35万・強力な催涙スプレー…20万・タカノツメ…5万・タバスコ(ソース)…2千トリニダード・スコーピオン・ブッチ・Tは、2011年にギネス世界記録に認定された世界一辛いトウガラシだ。激辛を売りした1,400スコヴィルの即席ラーメンでさえ体調を崩す人もいるというから、1,043倍も辛いこのトウガラシは拷問道具以外の何ものでもない。痛さ=刺激と考えると、適量ならプラスに作用する。マッサージや肩たたきと同様に、適度な刺激は血行を促進するので、寒い季節や冷え性には有り難い存在だ。血流の増加は胃粘膜の保護にも役立ち、胃弱や食欲不振を改善する働きもある。■「からい」は「つらい」カプサイシンを過剰に摂取するとどうなるか?辛さは痛さだから、どれぐらいの痛みに耐えられるのかに等しく、プラスよりもマイナスに作用し始める。血行が良くなり汗をかく程度なら問題ないが、それを超えると粘膜を損傷し、内臓疾患につながる。普段から大量に摂取する人は、胃がんの発生率が1.7倍に上昇するとのデータもあるほどだ。アドレナリンも重大な問題だ。辛さを感じると副腎からアドレナリンが分泌され、痛みから脳や神経を守ろうとするのだ。事故やケンカで極度の興奮状態になると痛みを忘れ、ケガに気づかないのもアドレナリンのおかげで、興奮状態がある種の気持ちよさにつながるのだが、心拍数や血圧、血糖値が上昇し身体への負担は大きい。多量に分泌されると脳にダメージを与え、睡眠障害やパニック障害につながる。カプサイシンは引き金に過ぎず直接作用するわけではないが、激辛フードで病気になっては、これこそ痛い話になってしまう。それでもさらにカプサイシンを摂取すると、マイナスの作用しか果たさなくなる。マウスに経口投与すると、体重1kgあたり47,200μg(マイクロ・グラム)でLD50(50%致死量)となり、静脈に注射では400μg/kgで危険が迫る。これを体重60kgの人間に当てはめると、食べた場合は2.83g、静脈に入るとたった0.024gで生命の危機にさらされる計算になる。香辛料なのか毒なのか分からなくなってきた。ただしこのようなことは、現実的には起こり得ない。料理に使われるタカノツメを例にすると、カプサイシンの含有率はおよそ0.17%だから、約1,665gを一気食いするのに相当する。この光景はもはや食事とは呼べず、人体実験にほかならない。それよりも、カプサイシンが着いた手で顔や目に触れ、炎症を起こす方が現実的な心配だ。子(し)いわく、中庸(ちゅうよう)の徳たるや、それ至れるかな。なにごとも節度が重要だ。■まとめ「痛さ」「単位」で検索するとハナゲがヒットする。鼻毛を抜いた痛みを基準に1ハナゲ、2ハナゲと表現すると記されていたのだが、これはまったくのジョークだ。こんな愉快な単位なら、症状を訴えるだけで痛みが和らぎそうだから、ぜひ採用してほしいと思うのは私だけだろうか。(関口寿/ガリレオワークス)
2013年02月24日地球の表面のおよそ71%は海だ。平均水深は3,800mと深く、地球のほとんどは深海が占めている。もしも深海で暮らしたらどうなるのか?土地不足も解消されのびのびと生活できると思ったが、2℃足らずの水温と細胞も破壊する水圧におびえながら、漆黒の世界でじっとし死ぬのを待つしかなさそうだ。■静寂と高圧水深200mまでは浅海(せんかい)、それよりも深いと深海と呼ばれる。海岸や大陸棚(だな)の浅い部分にあたる浅海は海底面積のわずか8%しかなく、残りはすべて深海だ。71%の92%だから地球の65.3%が深海となる計算だ。さらに海水の95%が深海にあるというから、この面積と空間が活用できれば地球は巨大な惑星になるのだが、生物を拒絶するかのように、過酷な条件がそろっている。水深150~200mに届く光は海面のわずか1%にすぎないため、深海では光合成をおこなう植物やプランクトンは生息できない。水深1,000mを超えると完全な暗闇となり、目が退化する、自ら発光する、望遠鏡のような筒型の目を持つなど、生物は独特な進化を遂げる。地上では植物が基盤となるが、深海では落ちてくるプランクトンや魚の死骸(しがい)から始まり、それを食べる生物、その生物を捕食する生物と、独自の食物連鎖がおこなわれているのだ。光の影響を受けないので温度も安定し、日本近傍の太平洋では水深1,000~3,000mで5℃以下、3,000m以下は南極から流れ込んだ1.5℃程度の冷たい海水に満たされている。また、塩分濃度によってわずかながら上下に動くものの、親潮や黒潮のような海流はこの深度に及ばず、表層の海水とはほとんど循環しない。生気も動きもない、孤立した世界が形成されている。最大の脅威は水圧だ。海水の重さが圧力となり、すべてを押しつぶす。深く潜るほどに水圧は増し、およそ10m深まるほどに1気圧高くなる。水深100mまで潜れば10気圧、厳密には海上の1気圧とあわせて11気圧かかり生物の細胞をも圧縮する。人間は300気圧が加わると細胞の破壊、神経障害、さらには身体を構成するたんぱく質さえ変性するというから、生身で泳げば水圧だけでも危険にさらされるので、潜水服か潜水船に頼るしかない。潜水調査船・しんかい6500は、その名の通り水深6,500mまで潜航できる。いかにも潜水艦らしい外観だが、居住エリアは内径2mの球にすぎない。水深6,500mでは681気圧がかかり、1平方cmに681kg、およそ軽トラック1台が乗るのと同じ力が加わるからだ。そのため搭乗員は厚さ73.5mmのチタン合金の球に守られながら潜航し、140mm厚のメタクリル樹脂の窓から外をながめることしかできない。もしも外壁や窓に亀裂が生じたら、浸水してまたたく間に圧死する。強度が足りなければ、搭乗員ごと圧潰(あっかい)する。もっとも簡単な対策は、潜水船の内部を水圧と同じに高める方法だ。内外の圧力が同じなら厚い外壁は不要で、小型の潜水服だって作成可能だ。だが、人間の呼吸の限界は10気圧ほどだから、100mが限界となる。さらに深く潜ると、内部の気圧も高めなければならないので、10気圧を超えて呼吸困難に陥る。スキューバ・ダイビングの世界記録が318.2mだから、それよりも深く潜れない潜水船では、存在理由すらなくなってしまう。頼むぞチタン。人間はぜい弱だ。■エサは有毒ガス植物のない深海でも、大地の恵みで生きるたくましい連中がいる。海底火山から吹き出す硫化(りゅうか)水素をエネルギーとするバクテリアだ。硫化水素は火山ガスに含まれる有毒物質で、温泉のにおいと言えばイメージしやすいだろう。高濃度になると鼻をつく悪臭、さらに高まると腐った卵のにおい、もっと濃くなると皮膚に刺激を感じ、多量に吸い込めば即死する。昨今の調査では、体内に硫黄酸化細菌と呼ばれるバクテリアを取り込み、海底火山の有毒ガスをエサにして生きる生物が多数見つかった。人間には有毒な硫化水素を利用して、鉄と硫黄でできたウロコを足にまとい、100℃近い噴火口で生息する巻き貝・スケーリーフッドなども発見されている。硫化水素の恩恵を得られない生物は、乏しいエサを逃さない工夫が必要なため、全長18mにも巨大化したダイオウイカ、あごと牙が発達したキバハダカ、死肉を食らうヌタウナギ、自分よりも大きな相手も飲み込むアンコウなど独自の進化を遂げている。もしも潜水服が完成しても、一人で外出するのは無謀だ。エネルギーを浪費しないように身をひそめながら、エサであるあなたが近づくのを、深海生物たちが待ち構えているのだから。■まとめ木星の第2衛星・エウロパは、地球外生命体がもっとも期待できる場所と言われている。厚さ3kmの氷に覆われながらも、火山と水があり地球の深海と似ているからだ。もしエウロパに生物がいるなら、人類も深海から生まれたのだろうか?自分の起源を知るのは楽しみだが、有毒な火山ガスを糧に育った祖先に、親近感を持つのは難しそうだ。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月31日大手総合建設会社・大林組が宇宙エレベーター構想を発表した。2050年に運用開始というから楽しみだ。もしも宇宙エレベーターが完成したら、安全に宇宙に行けるに違いない。そう思っていたが、大出力のレーザー光、気圧や温度、ケーブルの切断など、ロケット同様に危険に満ちた旅になるだろう。■10万kmのクモの糸日常生活でエレベーターと言えば、垂直のエレベーター・シャフト内を移動する装置だが、宇宙エレベーターは地上と大気圏外をつなぐケーブルだけで、まわりを囲む構造物はない。ケーブルの片側を地球に固定し、もう一方を宇宙にただよわせる。すると地球の自転で遠心力が働き、たるまずにケーブルが張れるのだ。高度15万kmまで伸ばせばケーブルだけで十分だが、10万kmぐらいでは遠心力が足りないので、端にカウンター・ウェイトと呼ばれるおもりを付けて張力を増す。月から見れば、宇宙から垂れたクモの糸程度の大きさだろうが、このケーブルを伝ってクライマーやシャトルと呼ばれる「かご」が昇降し、人間や荷物を宇宙に運ぶのだ。長さ10万kmを超えるケーブルは、それ自体が膨大な重量となる。自分の重さで切れてしまう破断長は、鋼材ワイヤーが50km、防弾チョッキに使われるケブラーでも200km程度だから役に立たない。そのため、軽くて強靱(きょうじん)なカーボン・ナノ・チューブが最有力候補になっている。通常のエレベーターは、ケーブルが切れてもエレベーター・シャフト内のレールに接触する非常ブレーキが働くが、宇宙エレベーターにはレールがない。ケーブルが切れた場合、高度100km以下ならわずかながら大気があるのでパラシュートなどで対処できるが、100km以上のクライマーは地球に帰還する宇宙船と変わらない。安全に大気圏再突入するには秒速8km以下が目安というから、逆算すると高度250kmが限界で、それより高いと大気中で燃え尽きる公算が大きい。高度5万km以上では地球脱出速度を超えて周回しているので、ケーブルが切れた瞬間にクライマーは宇宙のかなたを目指し旅立つ。有人ボイジャー3号では悲しすぎるので、頑丈なケーブルに期待しよう。地球から見て常に同じ場所に位置するように、静止軌道ステーションは高度3万6,000kmをおよそ3km/秒で周回する。高度400kmの国際宇宙ステーション(ISS)には高すぎるので、移動や補給の拠点となる低軌道ステーションを300~400km地点につくる。人件費から燃料代まであらゆるコストを含めると、退役したスペースシャトルの打ち上げは1回500億円と言われ、運べる荷物は25トン程度だから1kgあたり200万円かかった。もしもISSにミネラルウォーター(2リットル)を届けるなら、送料だけで400万円かかる計算だ。飲料水がピンドンよりも高いなんて、ぼったくりにもほどがある。対して宇宙エレベーターなら、1基の場合は1kg・50万円程度、数基稼働させれば30万円程度に収まるというから圧倒的に安い。完成すれば宇宙開発に拍車がかかることは間違いなしだ。上昇スピードをコントロールできるのもエレベーターのメリットだ。ロケットのGに耐えられない病人でも運べ、微少重力状態の宇宙ステーションでは、重力の支配を受けず治療できる。うつぶせの状態が長時間続く脳外科手術も、宇宙なら患者の負担を大幅に減らすことができるのだ。ただし高度80kmを超えた熱圏は、1,000℃を超えることも珍しくない。しかも昇るほど高温になるやっかいなエリアだから、クライマーの耐久性を考えるとなるべく短時間で通過したいところだ。時速200kmなら低軌道ステーションに2時間で着くが、秒速55.6mで5.7Gかかるので、スペースシャトルより身体に厳しい。宇宙病院を開業すれば大盛況と思ったが、5.7Gでは通院だけで余計に具合が悪くなりそうだ。■動力は殺人光線酸素の少ない宇宙では、エネルギーは電力が妥当だろう。しかし重たいバッテリーをクライマーに搭載したら、運べる貨物が減ってしまう。少なくとも2,000kWと見積もられるクライマーの電力を、どのように供給するかが問題だ。もっとも現実的なのは、地上ステーションからレーザーを発し、クライマーがそれを受け止めて電力に変換する方法だ。レーザーから電力へは約40%と変換効率も良く、およそ5,000kWのレーザーを照射すればクライマーの動力がまかなえる。ただしレーザーは、扱い方を間違えると非常に危険だ。0.4W程度でタバコに火がつき、失明した例もある。日本工業規格「レーザ製品の放射安全基準」では0.5Wを超えると高出力と定義され、もっとも危険なクラス4に分類されているぐらいだから、その1,000万倍のレーザーを浴びたら無事では済まされない。周辺を立ち入り禁止にすれば人的被害は防げるだろうが、鳥を防ぐ方法を考えなければならない。地上ステーションに焼き鳥が散乱するような事態は避けたいものだ。■まとめ宇宙エレベーターは、昇りよりも下りの方が技術的に難しいという。自由落下では20秒ほどで時速700kmに達するため、ブレーキをかけながら下りるのだが、空冷できない宇宙ではブレーキの冷却や排熱が課題となるそうだ。運用までの38年間に、幾多の問題を乗り越えて完成するに違いない。その時はすでに高齢者の一人だが、搭乗が許されるならぜひとも宇宙に行ってみたいものだ。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月31日明光ネットワークジャパンはこのほど、学童保育所「明光キッズ」に「預かりサービス」と「明光義塾の授業」をセットにしたサービスを新設。「明光キッズ石神井公園」と「明光義塾石神井公園教室」にて実施開始した。「明光キッズ」は同社が運営する、小学生の子どもたちが放課後の時間を有意義に過ごすための学童保育所(アフタースクール)。明光義塾は全国で14万名の生徒が通う個別指導学習塾。これまでに多く寄せられていた「授業の後に子どもを預かってほしい」「預かり中に受験対策をしてほしい」という利用者からの要望を受けて、「明光キッズ」に「明光義塾の授業」と「預かりサービス」をセットにして利用できるサービスを新設した。「明光キッズ石神井公園」と「明光義塾石神井公園教室」は、同じ建物の1階と2階に位置し、短時間で安全に教室間の移動が可能となる。同サービスによって、私・国立小学校に通う生徒の補習や、中学校受験の対策などにも対応ができ、より幅広いニーズに応えることができるようになるという。料金は週1回45分授業で月額9,975円。入会金21,000円、教室維持費として月額2,100円が別途かかる。他に週2回、3回、授業時間が90分のプランも用意。また明光キッズのクラブ会員は週1回あたり4,200円が減額され、教室維持費が不要となり、入会金も免除(明光義塾会員も)される。サービスの提供時間は、90分授業で16時30分から19時まで、45分授業の場合は17時15分から19時までとなる。オプションとして、夕食の提供や最長22時までの延長も可能。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月28日ロッテは25日より、個別指導塾の明光義塾とコラボした受験生応援商品「クランキー<受験パック>」を全国発売する。同商品は、チョコの中にサクサク食感のモルトパフが入ったクランキーの個包装に、受験前に見ると元気になれるという15種類の各種デザインを施したもの。中身は通常のクランキーとなっている。個包装デザインは3パターン。今年受験した明光義塾の生徒150名へのアンケートから選ばれた元気がでるメッセージ8種、受験生応援メッセージを書き込めるフレーム4種、解答が受験生を元気づけるようなメッセージになったクイズ3種の、計15種類となる。パッケージは、クランキーの特長であるサクサク食感にかけて「サクサクすすめ、受験生!」というメッセージと、絵馬、桜のイラストなど合格をイメージしたデザイン。12月25日から全国発売。価格はオープン、想定小売価格は198円前後。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月25日秦の始皇帝も愛用していたといわれる不老不死の薬・丹薬(たんやく)。紀元前200年以前から使われていたほど、永遠の命へのあこがれは根強い。もしも不老不死の薬があったら幸せになれるのだろうか?DNAの損傷、ガン、記憶の欠落におびえ、永久に続く時間を孤独に過ごすことになりそうだ。■自爆する遺伝子人間のからだには約60兆個もの細胞があり、日々それらが寿命を迎えて死んでいる。死んだ細胞は老廃物として体外に追い出され、代わりに新しい細胞が生まれる構造は新陳代謝とも呼ばれている。血液を例にすると、体重60kgの人はおよそ4.5リットルの血液があり、そこに含まれる赤血球、白血球なども新陳代謝を繰り返している。酸素と二酸化炭素を運ぶ赤血球の寿命はおよそ120日、一日の生産量は2,000億個にも及ぶ。体内に侵入したバイ菌や異物を排除する白血球は数日、傷口で固まり血液を止める血小板は10日ほどで寿命を迎えるから、新旧の細胞を入れ替えるだけでも大忙しだ。血液以外も、新しい細胞の供給量が減ればその器官の機能低下は免れず、呼吸に必要な肺胞(はいほう)が減れば肺粗鬆(そしょう)症など、生命を脅かす状態を招く。活発な新陳代謝を持続すれば、不老不死の実現に近づくのだろうが、細胞の寿命はあらかじめ決められているというプログラム説がある。染色体にあるテロメアが細胞の寿命に大きく関係しているのだ。テロメアが長いと長寿に、短くなると短命になるのだが、人工的に短くしても、何世代かあとの子孫にならないとはっきりした差が生じないとのデータもあり、残念ながら完全には解明されていない。DNAの損傷も大きな問題だ。DNAが傷ついたまま細胞分裂すると新たな細胞に正しい遺伝情報が伝わらず、異常細胞が生まれてしまうのだ。これを防ぐのがp53遺伝子で、DNAのダメージを察知すると正常に治るまで細胞分裂をストップし、異常細胞の発生を食い止める。万が一に異常細胞が生まれてしまっても、やはりp53遺伝子が検知しその細胞を自爆させる。ただし、細胞分裂を止めたり新たな細胞を自爆させれば老化が進むので、不老不死にとってp53遺伝子は悪者に他ならない。もしp53遺伝子がなければ不老不死は実現できるのか?たしかに細胞分裂はひたすら続き、自爆することもないから老化は防げるのだろうが、日焼けや放射線でDNAが損傷しても、それを蔓延させてしまう。全身が異常細胞に埋め尽くされ、ガン人間として永遠の余生を過ごすハメになるのだ。ありがとうp53遺伝子。今夜も安心して眠れそうだ。■日々これ勉強新たな細胞を生み出さない細胞もある。代表的なのは神経細胞で、子供のころは活発に分裂して成長するが、成人になるとほとんど活動せず老化への一途をたどるのだ。脳の場合は死滅による細胞の減少や、リポフスチンという色素が付着し、萎縮(いしゅく)し機能が低下する。もし脳細胞が新陳代謝するとどうなるのか?古い細胞が新たな細胞に置き換われば、いつまでも高性能を発揮できるのだろうが、同時に記憶も失われ、すべてを忘れていくことになる。記憶は、ニューロンと呼ばれる神経細胞同士がからみ合い、生み出されるネットワークによって保存されているので、新たな細胞に置き換わってしまうとネットワークも組み直さなければならないからだ。対策は、自分が誰だか忘れないうちに自伝を作り、毎日それを覚え直す以外ない。それでも記憶は日々薄れ、数年たてばオリジナルの記憶や経験は完全になくなる。すべての脳細胞が新旧入れ替われば、自伝に書かれた記録以外に自分を知る手だてはない。自伝を読んで記憶を取り戻すのは、他人のプライバシーをのぞき見るような気分だろう。起源も経験も思い出もなく、ひたすら記憶を記憶し直す。こんな日々を繰り返しながら生き続ければ、やがて自我を失い生き続ける意味も失うだろう。■まとめ丹薬の材料は水銀で、薬どころか毒にすぎない。多くの死亡例があるにも関わらず、17~18世紀にも使用例があるというから恐るべき執念だ。過度な飲酒も脳の萎縮(いしゅく)を早めるそうだから、年末年始も飲み過ぎには注意したい。一足早いが、読者のみなさんが良い年を迎えられるように。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月23日西日本や九州でセアカゴケグモによる被害が増加している。オーストラリア原産の毒グモで、体長1センチほどながら、かまれて死んだ人もいるというから恐ろしい。もしも外来生物が攻めてきたらどうなるか?在来種を根絶し、生態系を狂わせ、毒や病気をまき散らし、恐怖に満ちた生活を強いられることになるだろう。■触ると危険な食用生物外来生物とは、もともと日本に存在しない動植物を指し、わかっているだけでも2,000種を超えるといわれている。そのうち、日本の生態系、ひとの生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの(可能性を含む)を特定外来生物と呼ぶ。2004年に公布された外来生物法によって飼育や輸入が規制され、生きている状態であれば、卵、種子、器官も該当する。特殊な動植物に思えるかもしれないが、アライグマ、ハリネズミ、ウシガエル、ボタンウキクサなど聞き覚えのある名前も多い。また、被害に関する情報不足や、生態系への影響が不明確なため指定されていないが、特定外来生物の候補となっている要注意外来生物もあり、ミドリガメやフェレット、グッピーなどが名を連ねている。対して、甚大な被害や影響をおよぼす動植物は侵略的外来種と区分され、日本/世界ともにワースト100リストが存在する。日本のワーストリストにはヤギ、ドバト、ニジマス、ハルジオン、ヒメジョオンなど身近な動植物も含まれているから驚きだ。中でも強烈な生物を紹介しよう。まずはアフリカマイマイだ。東アフリカ原産で、成長すると殻の高さが20センチほどになる世界最大級のカタツムリは、落ち葉や生葉、動物の死骸(しがい)や菌類もエサにする雑食性で、農作物を手当たり次第に食べつくす。乾燥すると半年以上も仮眠で過ごすことができ、気温20℃以上なら10日周期で100~1,000個もの卵を産む。現在は輸入が禁止されているので要注意外来生物にすぎないが、餌食となった在来種は少なくない。これだけでもやっかいな害虫なのだが、広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)という寄生虫を媒介するから迷惑だ。感染すると幼虫が脳や脊髄(せきずい)に侵入し、好酸球性髄膜脳炎(こうさんきゅうせいずいまくのうえん)を引き起こすのだ。2週間ほどの潜伏期の後に、激しい頭痛、麻痺(まひ)、けいれん、こん睡の症状があらわれ死亡することもある。触れるだけでなく、はった跡からも感染する。アフリカマイマイがはった野菜を食べて感染することもあるので油断できない。アフリカマイマイが日本にきたのは1930年ごろで、目的はなんと食用。きちんと熱処理すれば問題なく、本場フランスでもエスカルゴの代用品として食されているのだが、この話を思い出すと食欲が失せそうだ。世間を騒がせているアカゴケグモは、α-ラトロトキシンという神経毒で運動神経系と自律神経系を侵す。咬(か)まれた直後はほとんど痛みを感じないが、1時間ほどたつとうずくような痛みが始まる。数時間後には全身に広がり、頭痛、おう吐、呼吸困難などの症状があらわれる。数日で軽減するが、ひとによっては数週間続き、進行性の筋肉まひに発展する場合もあるから楽観視できない。16歳以下の子供や持病のある高齢者には死亡例があるので、病院で血清を打ってもらうのが無難だ。■見えない攻撃日本の侵略的外来種ワースト100には27種もの植物が挙げられ、中でも極悪なのはオオブタクサだ。北アメリカ原産のオオブタクサはキク科ブタクサ属の一年草で、北海道から九州まで広く分布し高さ3mにも成長する。8~10月に花をつけ大量の花粉を産生するのだが、これが風でまき散らされブタクサ花粉症の原因となるのだ。第二次世界大戦後に、アメリカから持ち込まれた物資に付着していたのが始まりと言われ、現在はすっかりと日本に帰化したオオブタクサは、スギ、イネに次ぐ3大花粉症の原因となる。直径6mmの大きな種子が風で運ばれ、広範囲に分布し続けるから根絶は難しい。ひとの生活を脅かすオオブタクサは、植物ながらも侵略の名にふさわしい攻撃力を持っている。■まとめマングースはハブ駆除のために持ち込まれたが、役目を果たさないどころか絶滅危惧(きぐ)種のヤンバルクイナの脅威となり、いまや駆除対象となっている。長い年月をかけてその地に宿った生態系は、自然の奇跡と呼ぶべきだ。安易な操作を続ければ、やがて人間が駆除される日が来るに違いない。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月16日正義と真実を守るため、日夜戦い続けているスーパーマン。最新作「Man of Steel」は、2013年夏に日本公開というから待ち遠しい。もしもスーパーマンが実在したら、どれだけ頼もしいだろうか。しかし、彼の活躍を見返してみると、衝撃波、エックス線、ケタ外れのパワーで地球を破壊しているようにしか思えない。正義のヒーローどころか、最強のテロリストと呼ばれるだろう。■時間よ止まれスーパーマンは1938年にコミックに登場した架空の人物である。自称・身長6フィート4インチ(=約193cm)、体重225ポンド(=約102kg)、容姿、言語、食生活などは人間に酷似しているが、クリプトン星(架空)からやって来た生粋(きっすい)のエイリアンである。平時はクラーク・ケントを名乗りデイリー・プラネット社の記者を務め、有事の際には地球を救う正義のヒーローになる。銃弾をはね返す強靱(きょうじん)な肉体、至近弾を見切る動体視力、飛翔、透視など、人間にない身体能力は実に羨ましい。ただし、地球に存在しない能力だけに、使い方を間違えると周囲に危険がおよぶ。映画を見返すと、そこかしこに破壊活動が見られた。シリーズ3作目の「スーパーマン3」では、ボウリングのピンをくしゃみで破壊する。DVDで確認すると、少年が投じて2秒後にレーン中間に達したボールを、くしゃみで吹き飛ばし0.8秒後にピンに到達する。くしゃみのエネルギーがすべて伝わり、ボールを加速し続けたと仮定しよう。ファウル・ラインからピンまで約18メートルなので、ボールは残り9メートルを毎秒16.8メートル/秒ずつ加速し、最終的には秒速17.9メートルに達する。時速64.5kmでピンが粉砕されるか疑問だ。もしファウル・ラインに置いたボールをくしゃみで吹き飛ばしたら、ボールはレーンを1.46秒で駆け抜け、秒速24.5メートル、時速88.3kmでゴールに達する。これならピンどころか、設備も破壊できそうだ。少年が使ったボールを8ポンド(=約3.62kg)とすると、500円硬貨(7g)なら秒速785.7メートルで吹き飛ばせるエネルギーだ。マッハ2.31のコインなら、銃弾よりも殺傷力は高いだろう。スーパーマンが花粉症になったら、とにかく逃げるのが一番だ。飛翔能力も危険に満ちている。1作目の「スーパーマン」では、いとしのロイスを救うために地球を逆回転させ、時間を戻すシーンがある。そんなことをしても無駄無駄無駄なのに。速度を上げながら地球を周回し、目測では自転停止まで20秒間に25周する。周回軌道を高度1,000メートルと仮定すると、平均速度は58,090km/秒、光速の2割弱に達する。人工衛星なら軌道を保てず宇宙のかなたに吹き飛ぶだろうが、彼にはケプラーの法則は通用しないようだ。舞台となるカリフォルニア・サンアンドレアス断層を北緯35度とすると、地表の物体は時速1,372kmで移動していることになり、減速する20秒間は約2Gでつんのめることになる。耐えられないGではないが、以前ご紹介したように大気との速度差、津波、なだれのように押し寄せる移動物で、地球は壊滅する。意中の女性を救いたい気持ちはわかるが、代償があまりにも大きすぎる。■究極の暗殺者2006年公開の「スーパーマン・リターンズ」でも強烈なシーンが見られた。会社のエレベーター・シャフトから垂直に飛び出すスーパーマンは、およそ6秒で音速を超え、衝撃波で空に波紋を生み出す。これも等加速度運動なら、上空およそ1.2kmでのできごとになる。わずか1,200メートルからの衝撃波は窓ガラスをことごとく割り、エレベーター・シャフトに発生した音速の上昇気流が、社内の人も物も天高く吹き上げる。デイリー・プラネット社は凄惨な殺人現場と化すはずだ。透視能力はさらに怖い。Xレイ・ビジョンとも呼ばれ、鉛を透過できないことから、エックス線が使われていると推測される。経済産業省の資料によると、日常生活で受ける放射線量は以下の通りだ。・胸部X線集団検診(1回・0.02秒)…0.05mSv(ミリ・シーベルト)・東京~ニューヨーク航空機旅行(往復)…0.2mSv・1年間に浴びる自然放射線(世界平均)…2.4mSv・CTスキャン(1回)…6.9mSv・臨床症状が確認される全身被ばく…200mSv少なく見積もって、透視能力を胸部エックス線診断ぐらいと考えると、使うたびに毎秒2.5mSvを浴びせることになる。1秒で1年分超、80秒で相手を病院送りにできる。同作では、エレベーターに乗ったロイスを透視するシーンがある。およそ11秒見つめ、27.5mSv、彼女に3.6回のCTスキャンを受けさせた計算となる。ただし、30メートルほど離れた場所から、エレベーターの金属扉、ビルの構造体を貫いて透視できたので、もっと強力なのかもしれない。もし10倍なら、ロイスが自力でエレベーターを下りることはないだろう。証拠は何も残さない。仕掛け人の鑑(かがみ)だ。■まとめ今年10月、クラーク・ケントはデイリー・プラネット社を退職した。どうやら会社の方針と合わなかったらしい。今後も地球の平和維持活動を続けてくれれば有難いのだが、その際は周囲の安全に留意しつつ、ますますのご活躍をお祈り申し上げる。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月09日猛暑が続いたこの夏、西日本では平年の2倍の雷が観測された。空気を引き裂くようなごう音と閃光(せんこう)を見るたびに、自然の偉大さと脅威を感じる。もしもカミナリに打たれたらどうなるか?高確率で死に至るのはご存じのとおりだが、やけど、壊死(えし)、内臓破裂で凄惨な死を遂げる。直撃を免れても、近くにいるだけで分岐雷と爆風で深刻なダメージを負うことになる。■10兆ワットの電池雷は上昇気流によって生じた雲から発生する。雲は、雲粒(うんりゅう)とよばれる直径0.02mmほどの水滴や氷(氷晶)が主成分で、直径2mm以上の雨やあられも混在している。暖気と冷気が入りまじる内部では、雲粒と雨/あられがぶつかり合い、摩擦で電気エネルギーが発生する。雲粒はプラスに、雨/あられはマイナスに、逆のエネルギーを帯びる。雲粒と雨/あられにはクーロン力が働き、磁石のN/S極のように引かれあうので、放っておけば電気エネルギーを打ち消しあいゼロになる。自演乙。しかし、軽い雲粒は上昇気流に乗って上方に、重い雨/あられは雲底(うんてい)へと分離する。両極に分かれた雲は、巨大な電池へと生まれ変わるのだ。電気エネルギーを蓄えた雷雲は、その矛先を地表へと向ける。まず、マイナスに帯電した雲底が、静電誘導によって直下の地表をプラスに帯電させる。次に雲底から地表に向けて電子が飛び出す。空気分子と衝突しながら電子は高温高密度のプラズマを生じ、ステップトリーダと呼ばれる光の道を作りだす。弱い閃光(せんこう)を放ちながら地表へと向かうが、真下に向かうとは限らない。空気は電気抵抗が大きく、雷にとって非常に流れにくい場所だからだ。目安として1mm飛ぶのに3,000Vが必要となるので、温度/湿度の条件がよく流れやすい経路を選びながら進む。場合によっては枝分かれし、どこに落ちるかは雷のみぞ知る。ステップトリーダが地上100メートルほどに達すると、地表からプラスの電荷が飛び出しストリーマが生じる。まるでステップトリーダの到着を待ちきれず迎えにゆくように。やっと出会えた両者は雷雲と地表を結ぶ架け橋となり、強い閃光(せんこう)をともなった主雷撃を導く。規模にもよるが、1億ボルト、10万アンペア、10兆ワットが相場だ。手間、燃料、排気なしの三拍子そろった雷発電は、発生から百万分の1秒でピークを迎え、百万分の80秒で生涯を終える。10兆ワットの響きとは裏腹に、究極の一発屋で終わる。そのため充電には不向きで、たとえ利用できても300kwh程度、平均世帯一か月分の電力量にしかならないらしい。そもそもどこに落ちるかわからないので利用しようがない。■1,000アンペアの脅威人体に与える影響はどうか?直流/交流を問わず身近なものをみてみると、市街地の電線が6,600V、静電気はおよそ10,000V、東海道新幹線が25,000V、発電所が500,000Vと、日常生活は高電圧で満ちあふれている。昔、ガソリン車の点火回路(およそ15,000V)で感電したときはエアガンで撃たれたような痛みを感じたが、何の支障もなく過ごしている。電圧だけなら、人間は意外とタフにできているようだ。問題は電流だ。1万ボルトに耐えられても、わずか数アンペアで死へと誘(いざな)う。ある実験によると、人体に流れる電流が0.01A(アンペア)を超えると筋肉の自由が利かなくなり、払いのけられることができないという。映画やドラマで、けいれんしながら感電し続けるシーンを見るが、まさにその状態に陥るのだ。人間の電気抵抗は、内部が300オーム、皮膚は1平方センチあたり1万~10万オームで、乾燥ぐあいによって大きく変わる。たとえ最大の10万オームでも、1億ボルトが加わると単純計算で1,000アンペア(=1億ボルト÷10万オーム)流れる。0.01Aを致死量とすれば10万倍。苦しまずに済むなら感謝すべきかもしれない。雷が直撃すると、ジュール熱によるやけどや電流斑(はん)が生じ、抵抗の大きい皮膚のまわりを伝わって植物の根のような電紋(もん)が残る。上半身に被雷すると脳/心臓にダメージを与え、致死率は一気にアップする。からだがぬれていれば、蒸発した水分が爆風と化し、衝撃波は内臓破裂や頭がい骨骨折など体内を破壊する。たとえ直撃しなくても、近くにいれば側撃(そくげき)は免れない。直撃した人から放たれる分岐雷に打たれ、爆風で吹き飛ばされ、踏んだりけったりの死にざまとなる。これが、人生というものであったのか?よし!それならもう一度!■まとめ稲妻の文字通り、古来・日本では、雷は生物の成長をうながすと考えられていた。現代ではシイタケ栽培に利用され、高電圧を与えると大きく育つという。太古の地球では、雷がアンモニアやメタンをアミノ酸へと変え、生命を創り出した。稲妻こそが我が母となるのだが、あまり仲良くするのはやめておこう。1億ボルトの抱擁(ほうよう)で吹き飛ばされるのは、できれば避けたいものだ。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月09日超大質量恒星が断末魔に放つガンマ線バースト。それは宇宙で最も明るく、最も強力な殺人光線だ。もしもガンマ線バーストが地球を直撃したらどうなるのか?電磁波がオゾン層と送電網を破壊し、大気汚染と酸性雨が植物を枯らし、深海や地中の生命までもがミューオンに奪われる。6度目の大量絶滅を、心ゆくまで堪能することになる。■ブラックホールの一撃恒星は自らを燃料にして光と熱を発している。以前、太陽の最後をご紹介したが、水素からヘリウム、炭素へと核融合を進めるプロセスはほかの恒星も同じだ。太陽の場合、水星と金星を飲み込むほどに巨大化したのち、白色矮(わい)星となって一生を終える。中心核(コア)は炭素へ変わっているが、エネルギーを使い果たし核融合できなくなった太陽は収縮し、くすぶりながら生涯を終える。太陽より質量の大きい恒星は豊富なエネルギーにものを言わせ、炭素から酸素、ネオン、マグネシウムへと核融合を進める。ケイ素や鉄に進むと、太陽とはケタ違いに高密度なコアが形成される。どんなに大質量の恒星でも、エネルギーを使い果たせば収縮するのは同じだが、高密度すぎるコアは自分の重力に耐え切れず、重力崩壊を起こすのだ。太陽の8倍ぐらいの恒星は、いったん中心に向かって収縮したのちに、はじめるように外側へ広がり超新星爆発を起こす。10~20倍クラスになると電子が原子核に押し込まれ、原子そのものが崩壊し、中性子星と呼ばれる流動体へと変化する。さらに質量が大きくなると、核は急激に収縮し、外層を残したまま中心にブラックホールが生まれる。宇宙で一番やっかいなヤツが、星の中に誕生するのだ!外層はブラックホールに飲み込まれながらも、自転に引きずられてドーナツ状に変形する。自転が高速だと降着(こうちゃく)円盤と呼ばれるうずに変わる。CDメディアの穴にビー玉サイズのブラックホールを押し込んで、コマのように回転させたような状態だ。降着円盤は一体ではないので、高速で回転する中心付近は、遅い外周部と摩擦が生じて高温となる。遠心力を利用して飛び出そうとしても、外側の物体がジャマして脱出できない。重力、遠心力、回転、摩擦の4重苦は、降着円盤のエネルギーを高め続ける。やがて限界を超えた降着円盤は、角速度の遅い自転軸に活路を見いだす。そして渾身の力を振り絞り、ジェットと化して両極から飛び出す。「ガンマ線バースト、自転軸上に照準」ブラックホールの強大な重力を逃れたジェットは、ほぼ光速で外層を突き破る。その衝撃波は火の玉、ガンマ線、磁場を生み出し、高エネルギーのビームに生まれ変わる。「対星戦闘。ブラックホール指示の目標、打ちぃかた始めっ!!」そして地球に襲いかかる。太陽の百京(=10の18乗)倍ものエネルギーが、光の束となって地球に降り注ぐ。10秒、20秒、そして消える。長くても1~2分程度で、これを浴びてもあなたが蒸発したり、海が干上がることはない。何が起きたのか?と考える必要はない。「おまえは、もう死んでいる」のだから。■最凶の素粒子7,500光年離れたりゅうこつ座・イータ星は2つの恒星から成り立つ連星で、合わせて太陽の100倍の質量を誇る。イータのような大質量恒星こそが、ガンマ線バーストの源となるのだ。もしもイータのGRBが地球を直撃したらどうなるのか?まず電磁波が送電網に大電流を誘導し、発電所・変電所を破壊する。強固なシールドがない限り、放送局やデータセンター、携帯の基地局は壊滅、コンピューターや家電ももちろん全滅だ。やがて制御不能になった人工衛星が次々と墜落し、地上は火の海となる。閃光(せんこう)はオゾン層を破壊し、紫外線/エックス線/ガンマ線を地上へと導く。大気を通過する宇宙線は窒素を分解し、呼吸器に深刻なダメージを与える二酸化窒素や硝酸を生み出す。動物はおろか植物も生きられない。直撃側は死の半球と化すのだ。とどめはミューオンだ。大気中の分子に当たった宇宙線は、細胞やDNAを破壊する素粒子を生み出す。中でも有害なミューオンは水深1,500mまで透過し、800mの岩盤をも貫くから海中や地下の生命をも根絶する。たとえ生き延びられたとしても、ガンや染色体異常で悲惨な末路をたどるだけだ。■まとめ過去5億年間に、地球は5回の大量絶滅を経験した。そのうちオルドビス紀末の大量絶滅は、ガンマ線バーストが原因という説が強く、6,000光年以内の恒星から発射されたと考えられている。もしイータに狙われても、地球が滅びるのは7,500年後だ。宇宙の広さを感じながら、太古の光で死ねるなんて、壮大な死にかたに感謝すべきかもしれない。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月02日明光ネットワークジャパンが展開する個別指導塾「明光義塾」は27日、NHN Japanが運営する無料通話・無料メールスマートフォンアプリ「LINE(ライン)」内のスタンプショップに明光義塾オリジナルスタンプを掲載し、無料で提供を開始した。「LINE」アプリ内の「スタンプショップ」より、「個別指導の明光義塾ダルマはかせ」のスタンプを選択し、ダウンロードする。スタンプの掲載期間は11月27日~12月24日。ダウンロード後、180日間利用することができる。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月29日日本を代表するSF作家・小松左京氏の「夜が明けたら」では、突然の地震と停電から異変を感じ、のちに地球の自転が止まったことに気づく人々の様子が描かれていた。もしも自転が止まったら、このような穏やかな状態ではいられない。巨大な慣性力による津波や暴風、温度差、宇宙からの高濃度放射線で、地球は完全に崩壊することになるだろう。■-47Gの破壊力地球は北極上空から見て反時計回りに自転している。1日をちょうど24時間、赤道1周を40,000kmとすると、赤道上に立った人間は、宇宙から見れば時速1,667kmで移動していることになる。1秒間に463m。とんでもない速さだが、大気を含め周囲の物体も同じ速さで移動しているので、その人は速度を感じない。走っている電車のなかと同じで、飛び上がっても後ろに着地することはない。地球の自転が止まればこの人も止まるのは自明の理だが、減速時に強い慣性力が生じるので、止まり方が問題だ。満員電車で急ブレーキがかかると、乗客はなだれのように進行方向に流されるのと同様に、短時間で減速するほどに強い慣性力が生じるのだ。この慣性力はGであらわされ、1Gは自分の重さを意味する。体重60kgの人は、2Gなら120kg分の力が加わることになる。赤道上の人は秒速463mで等速直線運動していると考え、自転が完全に停止するまでの時間(秒)から慣性力(G)を計算すると、・1秒…47.2G・10秒…4.72G・60秒…0.79Gとなる。1秒では自重の47倍の慣性力が生じる。減速よりも衝突と呼ぶのがふさわしい状況だ。慣性力は建物や山を崩壊し、津波を発生させる。万が一にでも地面から離れてしまうと、猛スピードで地表を転げまわることになるので注意しよう。もっとも、地面もいっしょに吹き飛ばされているだろうから、しがみついても役に立たないだろうが。4.72GはF1、0.79Gなら乗用車のフルブレーキ相当なので、これならなんとかなりそうだ。そう信じて何かにしがみつき、完全に停止するまで必至で耐えぬこう。ただし大気にも慣性が働きすぐには止まらない。地表が静止すると速度差で突風が生じ、物体を巻き込んで土石流の体を成す。努力むなしく押し流され、風と共に去りぬ。もしも自転の停止が予測できたら、北極か南極に避難しよう。その場で回転しているだけの地軸上なら、強烈な慣性力を受けずに済むからだ。■地磁気の減少で放射線にさらされる?自転が止まった地球は、昼夜2つの半球に分かれる。地軸のように、太陽とは無関係に一定方向を向いたままなら1年に1回自転するのと同じになるが、これでも半年ずつの灼熱(しゃくねつ)と極寒を繰り返すにすぎない。気候はもちろん陸地や海洋も、現在とはかけ離れた過酷な星へと生まれ変わる。太陽風の存在も忘れてはいけない。放たれるプラズマが人体に有害なことは過去にご説明したとおりで、現在は地磁気に守られているものの、自転が止まれば地磁気もなくなる可能性が高いからだ。地磁気の発生はまだ完全に解明されていないものの、もっとも有力なのは地球ダイナモ理論だ。この説では地球の核(コア)の回転によって電気が生じ、磁力を発生させているという。鉄を主成分とする高温で流体のコアは半径約3,500km、そこに流れる電流は30億A(アンペア)に及ぶと考えられている。この説は地球を発電機に見立てた理論だから、コアを回転させるエネルギーが必須となる。それは地球の自転とコアの対流によると考えられているので、自転が止まれば発電量の減少はまぬがれず、最悪ゼロになる。地磁気の消失は太陽風の進入を許し、地表が電磁波やプラズマにさらされることを意味する。オーロラが各地で見られるようになったら終焉の始まりだ。同時に、地球をドーナツ状に取り巻くバン・アレン帯も消失する。バン・アレン帯は地磁気にとらえられた陽子/電子などの高エネルギー粒子に満たされ、地表の自然放射線の1億倍以上強いことから放射線帯とも呼ばれている。地球を放射線から守るためのバリアーといえよう。もし地磁気がなくなりこのバリアーも消失すると、高濃度の放射線は容赦なく地表に降り注ぐ。電磁波/プラズマに放射線が加われば、地球は無敵の殺人マシンと化す。放射線は太陽からとは限らないから、夜半球に逃げても効果はない。さよなら人類。■まとめ地球の自転は0.000015秒/年とわずかながら減速し続けている。1日が25時間になるのが1億8千万年後なので気の遠くなる話だが、このまま続けば「夜が明けない」日が来るのは時間の問題だ。ゆっくり減速すれば強烈な慣性力を受けずに済むので、それだけで感謝すべきかもしれない。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年09月23日個別指導塾「森塾」の経営など行っているスプリックスは、運営する塾講師アルバイトの求人サイト「塾講師JAPAN」をリニューアルし、2月16日からの半年間で、掲載教室数が6,000件を突破したと発表した。同サイトは、都市部に偏りがちな塾講師アルバイトの募集案件を、全国から幅広く掲載している。8月30日12時の時点で、6,368件の教室が掲載されているという。なお、リニューアルでは、1回のエントリーで複数案件への一括応募できる「一括応募機能」や、塾側の募集ニーズに柔軟に対応できるよう、塾側からスカウトができる「スカウト機能」、ゆるキャラ「Jこうし」による情報提供などの機能が追加されている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月03日IPパートナーズは、従来にないカルチャースクールのポータルサイトとして、美人の先生が教える「美人塾」のサービスを開始した。「美人塾」とは、美人の先生が教える「おけいこ・習い事」情報をWebでチェックし、資料請求や申し込みができるサービス。美人塾は「自身の身も心も美しくポジティブに」がモットー。内面も外見も美しい女性にレッスンを受け、自らもすてきになりたいという価値観の人が、美人の先生が教えるレッスン・おけいこに特化した情報を探すことができる。また複数の先生によるワークショップの開催も予定している。現在の取り扱い分野はヨガ・ピラティス、ダンス、料理、アート、その他。対象地域は首都圏および近郊。今後は取り扱い分野の拡大(語学、資格等)および全国への展開も行っていくという。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月25日「もしタイムマシンがあったら、行きたいのは過去?未来?」「何歳で結婚する?」といった現実的な質問じゃないだけに、夢が広がる話題ですよね。もしもこの世にタイムマシンがあったとすると、過去と未来、どちらの方が人気なのでしょう?そして行きたい時代は?アンケートしてみました。調査期間:2010/10/23~2010/10/29アンケート対象:COBS ONLINE会員有効回答数 432件(ウェブログイン式)Q.行ってみたいのは、過去、未来どっち?・過去……58.6%・未来……41.4%どうやら、過去に行ってみたい人の方が多いようです。単純に自分の生まれる前の世界を見てみたい人もいれば、歴史を変えたい、なんていう危険な意見も!ちなみに、未来に行ってみたい派は、未来の自分を見たいという純粋な(?)欲求もあれば、ひともうけしたいという金の亡者もいました!では、過去に戻るとすればどの時代が人気なのでしょうか?第3位明治時代「明治維新後の激動の時代を見てみたいから」(26歳/男性)第2位平安時代「本当に"麻呂(まろ)"のような人たちがモテていたのか」(26歳/女性)第1位江戸時代「お侍さんを見てみたい」(30歳/女性)歴史上でもっとも票数を集めたのは、江戸時代。265年続いた歴史はあなどれません。ちなみに、ランキングには反映しませんでしたが、自分の学生時代という意見も多かったです。青春をもう一度味わいたいのか、はたまた、やり残したことがあるのでしょうか。未来で行ってみたい時期については幅があったのですが、一番遠い未来で、1,000年後でした。「世界がどうなってるか知りたい」(22歳/女性)とのことです。見てみたいような、見たくないような。また、多かったのが【5~30年後】という回答。「自分の予想と違う未来だったら変えられそうだから」(23歳/女性)「結婚とか仕事とか子どもとか、今悩んでいることが解決していそうだから」(22歳/女性)以前、占いで結婚生活があまり良くないと言われた私も、未来が気になって仕方がありません。過去に行けば、どこかで踏み間違えた自分を軌道修正できるかもしれないし、未来に行けば、これからの自分を軌道修正していけるかもしれないし。あ、どっちにしろ軌道修正は必要なんだ(って、あらためて思いました)。つまりは現状に満足できていないのか!?う~ん、でももし本当に行けるとしたら、保証された未来なんてつまらないので(と、少しカッコつけつつ……) 、歴史を変えないように気をつけながら、過去に行って思い出の人にもう一度会って話をしてみたいです。皆さんは、どの時代に行ってみたいですか?(栗本千尋+プレスラボ)【関連リンク】【コラム】永遠の問題!?ドラえもんの道具が手に入るとしたら何をする?【コラム】2ちゃんねる至上最悪のタブー!?~都市伝説サイバー編~【ランキング男性編】過去にもらったバレンタインデーのチョコレートの最高数ランキング
2010年12月02日