NECと産業技術総合研究所(産総研)は4月5日、ビッグデータ活用に向け、産総研の人工知能研究センター内に「産総研-NEC 人工知能連携研究室」を2016年6月1日付で設置すると発表した。今回の取り組みは、ビッグデータ分析を行う際に、過去のデータを十分に集めることが難しい状況において、どのように不足分の情報をシミュレーションで補い、人工知能(AI)の能力を最大限にひきだすのか、といった「シミュレーションとAIの融合技術」の開発を官民一体で進めるもの。NEC 執行役員の西原基夫氏は、「NECはAIによる社会課題の解決支援を進めていきたいと思っている。しかもそれは、従来型のAIで解決できる部分のみならず、人間がさまざまな経験から得た知見を用いて解決している事象や、結論への制御や誘導といったところまで含めた効率化支援や、人に対する示唆の高度化といった新たな領域まで含めたものであり、そうした分野は、過去データを蓄積し、その膨大なデータを解析して導く結果、といった従来型の手法では不十分。今回設置される研究室は、そうした新たな手法を可能とするための第一歩」と研究室開設の背景を説明する。今回設置される研究室は産官の連携研究室という位置づけで、民間企業が1億円以上/年規模、かつ3年以上継続して研究資金を負担すること。ならびに、研究資金から産総研職員の人件費の一部に充てること、といった条件の下、運営される。設置場所は産総研が2015年に設立した「人工知能センター」で、産総研 情報・人間工学領域 領域長の関口智嗣氏は、同研究室に対し、「人工知能のプラットフォームとして、産官学のイノベーション創出の拠点となることを期待している」と期待を示す。研究室長には、大阪大学 産業科学研究所 教授の鷲尾隆氏が就任。研究開発のスタンスとしては、「基礎だけでなく、出口を見据えた形で、3つの基礎原理の探求を進め、産業応用に向けた部分に落とし込んでいく」(鷲尾氏)とする。具体的には「シミュレーションと機械学習技術の融合」「シミュレーションと自動推論技術の融合」「自立型人工知能間の挙動を調整」という3つの技術に関する研究プロジェクトが今後進められていく予定。1つ目のシミュレーションと機械学習技術の融合は、大規模災害といった、過去からのデータ蓄積が難しく、大量のデータに基づく従来型AI処理の適用が困難な領域に対し、コンピュータ上に構築したシミュレータ内で、観測したい現象のみを集中的に観測する手法などを確立することを目指す取り組みとなる。2つ目のシミュレーションと自動推論技術の融合は、実世界のシステムを模してシミュレータ上に構築した仮想世界と自動推論技術を融合することで、現実的な規模での知識データベースから妥当な推論を行う技術の開発を行おうというもの。これにより、未知の事象に対しても人間の意思決定支援が可能になるとする。そして3つ目となる自立型人工知能間の挙動を調整は、社会インフラや交通手段などの複数の自律制御システムをバラバラに動かすことで生じるシステム同士の衝突などを、協調させることで、全体として最適化を図ろうというものとなっている。鷲尾氏としては、NECや産総研の研究員のほか、ポストドクター(PD)なども含め、「若手の活用も含め、フレッシュなアイデアの活用を図っていきたい」とするほか、産業への活用に向け、ニーズを有するユーザー企業との連携なども模索を図っていきたいとする。なお、スケジュールとしては、1つ目と2つ目の研究プロジェクトについては、2016年6月末までをめどにPD募集を中心とした体制の整備を進め、7月以降、本格的な基礎原理の研究を進め、2017年9月ころをめどに応用研究開発を開始し、2019年3月に開発を終える予定。3つ目のプロジェクトについては、2017年夏ごろから基礎原理の研究を開始し、2018年以降に応用研究を開始進めて、2020年3月をめどに開発を終える予定としている。
2016年04月05日Facebookは5日、AI(人工知能)を活用した自動代替えテキスト機能を開発し、視覚障害者でも写真の内容を、より具体的に音声で把握できるシステムを開発したことを発表した。なお、現在iOS上で画面読み上げ機能を利用しているユーザーに対してテスト実施を英語で行っているが、順次他の言語、他プラットフォームにも広げていく予定。従来のFacebookでは、画面読み上げ機能(スクリーンリーダー)を利用しても、写真にさしかかると、写真をシェアしたユーザーの名前と"写真"という言葉が読み上げるだけであったが、今回のAIを使った自動代替えテキストにより、どのような写真なのかまでも音声で読み上げてくれるという。同社では、例として「画像には3人の人、屋外、笑っている」といった言葉を例示している。写真の解析には、何十億ものパラメータを持つ神経のように張り巡らされたネットワークを用いた物体認識技術を活用している。同社では、「FacebookやInstagram、Messenger、WhatsAppでは一日あたり20億枚もの写真がシェアされています。写真などの視覚コンテンツをオンラインで共有することは、多くの皆様に楽しまれる表現手段として利用されていますが、一方で視覚障害者の方々には作成することも楽しむことも困難を伴うものです。世界で3900万人いるとされる全盲の方々や2億4600万人の弱視の方々をはじめとして、多くの方がFacebook上で写真を介したコミュニケーションの輪に入れないという思いをしているのではないでしょうか。」とその動機を述べている。また、機能は開発初期段階で今後も"写真の内容を説明する"というサービスの可能性を広げていきたい、としている。
2016年04月05日オプティムは3月30日、直感的にIoT端末の制御、データ解析、AI(人工知能)、クラウドサービスと連携ができる「OPTiM Cloud IoT OS」を発表した。2016年夏頃の提供を予定している。同社では、スマートフォン・スマートデバイス管理技術分野のノウハウ・技術を応用し、2014年よりドローン・ネットワークカメラ・ウェアラブルデバイスなどを含むIoT端末の研究開発を進めている。OPTiM Cloud IoT OSは直感的かつ安全なIoT端末の管理・制御、データの蓄積・分析、クラウドサービスとの連携を可能とし、あらゆるユーザーがIoTを享受できる「新しいユーザー体験」を提供するという。サービスの特徴として、UI(ユーザーインタフェース)はデスクトップOS形式を採用し、直感的な操作が可能。IoT端末から取得した情報を蓄積し、標準搭載している接続中のIoT端末やデータをデバイスに一覧表示する「OPTiM IoT Explorer」の画面から閲覧できるほか、緊急を要する場合においても、スマートフォンに通知する設定を行える。また、OPTiM IoT Explorerで収集している機器の情報やカメラ映像分析など、さまざまな数値・映像データに対して分析を行う「OPTiM Insight」を標準アプリケーションとして提供することに加え、数値・映像データをビジュアル化して表現することで、状況の把握が可能。ウィジェットエンジンの標準搭載により、デスクトップ上で必要かつ最新の情報を常に確認できるという。さらに、画像データや各IoT端末から取得したデータに対し、OPTiM Cloud IoT OSに搭載されているAIやビッグデータ分析エンジンを駆使することで、人の手を介して行うには困難である膨大なデータを多様な角度から分析。これにより、農業分野ではドローンを用いての品種ごとに異なる害虫を検知したり、医療分野ではヘルスケアデバイスが取得したバイタルデータから病気リスクの予測や予防への活用、建築分野ではセンサーが取得したデータからビルの老朽化を予測したりするなど、さまざまな産業において応用でき、新たなアプローチを可能としている。加えて、企業が保有する情報の全てはテナントと呼ばれる空間ごとに区切られて保存。テナント内は、マルチアカウントに対応しており、組織階層、グループごとの細やかな権限管理が容易に実施できるという。そのほか、統合開発環境の「OPTiM Code」利用し、OPTiM Cloud IoT OS上で動作するアプリケーションを容易に作成することを可能とし、IoT端末やサービスを専門に販売するマーケットプレイスである「OPTiM Store」も利用が可能だ。公開予定のAPIはマルチテナントな階層管理、アプリ管理などのコアロジックを担うCore API、リアルタイムなストリームデータ、および永続化されたストリームデータのI/Oを担うMessaging / Datastore API、クラウド上でユーザープロセスを実行可能とするPaaSを担うRuntime API / OPTiM Codeとなる。また、仮想化されたコンピューター基盤上でインターネットを介し、アプリケーションサーバ・データベースを提供。これにより、クラウド上に構築されるシステムは用途に応じて自動的に拡張され、物理的な制約から開放されるとしている。
2016年03月31日NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は3月30日、Deep Learning(深層学習)などを含む人工知能(AI)技術を活用し、不審者の動作検出や複数カメラに映る同一人物の推定などを実証する実験を綜合警備保障(ALSOK)と連携して、2015年12月~2016年1月に実施し、高い精度での検出に成功したと発表した。近年、オフィス商業ビルをはじめとした都市空間や大規模イベント会場等、不特定多数の人が集まる環境下では、施設・空間におけるインシデント(事故)発生時の対処・被害拡大防止に加え、犯罪等の予兆検知・未然防止の必要性が高まってきている。また、昨今の国際情勢を受け、比較的警備が厳重でないソフトターゲットにおけるテロなどへの脅威に対し、警戒・警備の強化が求められている。こうした状況を踏まえ、NTT Comは新たにAIを活用した動作検知技術や再照合技術を取り入れることで、不審者の検出や人物特徴に基づく画像検索精度を向上させ、ALSOKなどとともに警備品質の向上を目指すとしている。NTT Comは、ALSOKとの共同実証実験において、再照合技術と時系列Deep Learning技術の2つの技術について高い精度での検知を実現したという。再照合技術は、Preferred Networksの協力を得て、1枚の画像から特定人物の特徴をAIの利用により抽出。複数のカメラをまたいだ映像から同一人物の候補を推定し、提示する。ALSOKとの共同検証では、ある人物がエスカレーターを使って複数のフロアを移動した映像から、同一人物の候補を100%の確率で抽出することに成功している。また、時系列Deep Learning技術は映像データの解析により、人の動作を高精度に識別できる技術。あらかじめ検知したい「きょろきょろする」「荷物を置く」などの動作をAIに学習させておき、映像データからそれらの動作を自動検知。ユースケースの例として再照合技術は、何らかの犯罪行為が発生した際に不審人物の画像をもとに施設間/施設内のカメラを跨いで同一人物の行動を追跡することを可能とするほか、時系列Deep Learning技術では商業施設などにおいて、該当の動作を行う人物を自動検知し、警備員に発報することができるという。今後、両社では大型のオフィス商業ビル、大規模イベント、空港・税関をはじめとした重要施設、公共交通機関や大規模集客施設などのそれぞれのユースケースに応じ、NTT ComはALSOKとともに2016年度も引き続き実証実験を通じて有用性を確認し、導入を進めていく。NTT Comは映像データの解析を可能とする「映像解析プラットフォームサービス(仮称)」の提供を検討している。店舗や製造工場における不審行動の検出、2020年に向けて観光客の増加が見込まれる多くの施設で防犯対策などに応用できるサービス開発を今後も進めていく考えだ。
2016年03月30日米Microsoftは3月25日(現地時間)、公式ブログで、同社が開発した人工知能チャットボット「Tay」が人種差別など、不適切な発言をしたことに対して謝罪した。人工知能ボット「Tay」は、マイクロソフトの研究部門とBingのチームが、米国の18歳から24歳の若者を対象に開発しており、会話を重ねることで賢くなるとしている。Tayは23日にTwitterで公開されたが、意図しない攻撃を受け、不適切な発言をしたとして、公開後24時間で停止された。Microsoft ResearchバイスプレジデントのPeter Lee氏は、「さまざまな条件下でTayのストレステストを実施したが、脆弱性を悪用して攻撃を受けた。その結果、Tayは不適切な言葉と画像をツイートすることとなった。しかし、今回のことを経験として、Tayが攻撃を受けた脆弱性を解決していく」と述べている。
2016年03月28日●人工知能の開発に必要なリソースとは各種クラウドサービスから自動運転車、囲碁や将棋といったアナログゲームに至るまで、人工知能にまつわる話題は毎日のようにニュース媒体を賑わせている。こうした人工知能の恩恵は、いわゆるIoT、組み込み機器や家電などにまでもたらされようとしている。その背景にあるのがNVIDIAの「Jetson TX1」の存在だ。○莫大なリソースを要求する人工知能開発人工知能の開発にはいくつかの方法があるが、現在、先端手法に位置づけられるのが「ディープラーニング」だ。ディープラーニングでは、数テラバイトに達する莫大なデータ(ビッグデータ)を、「ニューラルネットワーク」と呼ばれる演算ネットワークを多層構造化したモデルを通じて解析し、正解を類推するという手法で学習していく。十分な学習を積んだ人工知能は、人間と同等、あるいはそれ以上の確率で正解を導き出すことができ、人間には見つけられなかった新しい「正解」を生み出すことすらある。将棋や囲碁でプロ棋士をコンピュータが破ったといったニュースは、ディープラーニングによる成果である。非常に有望なディプラーニングだが、問題もある。ディープラーニングでは最初にビッグデータを読み込ませてデータを解析する「学習」と、実世界でのデータと突き合わせてみる「推論」の2つのフェーズがあり、「学習」にかかるリソースが非常に大きいのだ。具体的には、現在、デスクトップPC用で最高性能を誇るインテルのCore i7シリーズのCPUでも、学習には数カ月を要する例が一般的で、スーパーコンピュータやワークステーションでも、学習にかかる時間を大幅に縮小するには至っていない。膨大な演算量を必要とするディープラーニングだが、こうした状況を改善する手段が「GPUコンピューティング」だ。本来3Dグラフィックの描画に使われるGPUだが、内部では描画のために複雑な演算を繰り返している。この構図がディープラーニングで行われる多階層の行列演算と極めて似通っており、すぐさま応用が可能だったのだ。●ロボット、家電を賢くするGPU○劇的な改善をもたらしたGPUコンピューティング実際、ディープラーニングをGPUで行った場合、CPUを使うのに比べて数倍の高速化が可能となり、数カ月かかっていた学習フェーズの演算が数週間程度へと、劇的に短縮されるようになった。学習が速くなればディープラーニングそのもののアルゴリズムの改良も素早く行えるようになり、さらに効率的なアルゴリズムの開発が、ディープラーニングそのものの進化をさらに押し上げることにつながっている。また、GPUは拡張ボードという形で1台のコンピュータに数台増設することが可能だ。このため、当初は拡張ボード1台で検証を始め、開発の進度に合わせて演算能力を拡張するのも容易に行える。コスト的な側面からもGPUコンピューティングは革命的な効果をもたらしたわけだ。こうしたGPUコンピューティングの先端を行くのが、GPUメーカーである米NVIDIA社だ。同社はパソコン用のハイエンドゲーミングGPUでも有名だが、GPUコンピューティングの可能性を提唱し、開発環境「CUDA」を提供するなど、GPUコンピューティングでも重要な役割を果たしている。現実にディープラーニングのトップ企業はほとんどがNVIDIAのGPUコンピューティングボードを導入しており、人工知能の進化にNVIDIAは欠かせない存在となっているのだ。○IoTにもディープラーニングの恩恵をGPUコンピューティングは高性能だが、高速なGPUは相応に消費電力も高く、IoTなど、小さなサイズの機器にもたらすのは非常に難しいとされていた。しかし、NVIDIAは最新の「Maxwell」世代のアーキテクチャで、GPUの大幅な省電力化に成功した。これにより、サーバー/ワークステーション向けの「Tesla」やデスクトップPC用の「Titan」といった大電流が利用できる環境向け製品だけでなく、自動運転車など自動車プラットフォーム用の「NVIDIA DRIVE PX」や、ロボット・IoTなど組み込み機器向けの開発・研究に向けた「Jetson TX1」が登場した。Jetson TX1は、サイズはクレジットカード大とコンパクトだが、GPU全体の演算能力は1TFLOPS(1秒間に1兆回の浮動小数点演算が行える)に達する。さすがに現在のスーパーコンピュータ並みというほどではないが、このサイズとしては非常に高い数値だ。この性能なら、フルHD解像度で撮影された動画をリアルタイムに処理し、物体の認識を行うといった高度な処理が可能になる。さらに、これだけの高い性能を、10W前後という低消費電力で提供できる。これはバッテリーで動作する機器にも十分提供可能な数値だ。●Jetsonは何を変えるか○自律するIoTがもたらす世界Jetsonの登場でIoTに人工知能がもたらせることはわかったが、本当にそこまで必要なのだろうか、という声もあるだろう。確かに、インテリジェントな処理で自動で動作する機器はすでに多数存在している。それらが人工知能に置き換わることでさらにメリットがないのであれば、確かに無駄にも見える。しかし、人工知能が実現する最大のメリットは、真の意味で「自律して動作する」ことにある。たとえば自動運転の掃除機ロボを例に考えてみよう。これまでは赤外線や音波など、各種センサー類で周囲の環境を把握し、障害物を避けつつ、ゴミを掃除してきた。これが人工知能搭載になると、センサー類に加えて、カメラで取り込んだ映像をリアルタイムに解析し、落ちているものがゴミなのか、100円玉や指輪なのかを識別できる。ゴミならばそのまま吸い込み、100円玉や宝石はゴミとは別の容器に受ける、といった「賢い」掃除機が可能になるわけだ。あるいはドローンの例を考えてみよう。現在、ドローンはGPS情報などを使ってルートを決め、オートパイロットで飛ぶことができるが、鳥が障害になったり、ほかのドローンが近づいてきても避けることができない。しかし、人工知能を搭載したドローンならば、自動的に障害物を判断して避け、元のルートに戻って飛行を続けることができるわけだ。もしこれが、いちいちモバイル回線などでサーバーのデータと突き合わせて認識していたりしては衝突は免れないが、Jetsonのような高度な処理能力を搭載していれば、機器単体で危険を回避できる(未知の障害物であれば、あとでサーバ上で学習を更新すればいい)。センサー類だけに頼った自動運転は、急激なアクシデントに対応できないが、人工知能であれば学習を通じて性能をどんどん高めていくことができる。Jetsonが持つもうひとつの強みは、JetsonがほかのNVIDIA製品と同じGPUアーキテクチャで製造されていることだ。NVIDIAではGPUコンピューティング向けに「CUDA」という開発環境を用意しており、ディープラーニングや画像認識といった機能向けの情報も多数揃っている。このため、Jetsonを使えば効率良く、素早く開発が進められる。学習を繰り返すサーバーから、推論を行う機器に至るまで、CUDAプラットフォームで統一できるため、開発も管理も容易になるわけだ。今後、人工知能はどんどん身近なものになり、あらゆる場面で人間の生活をサポートするものになるだろう。そのとき、賢い家電や自律制御のロボットは、JetsonがもたらすGPUコンピューティングパワーが実現することになるだろう。
2016年03月25日クルーズは3月17日、同社で運営するファストファッション通販「SHOPLIST.com by CROOZ(SHOPLIST)」において、カラフル・ボードが提供するファッション人工知能「SENSY(センシー)」の試験導入を開始したと発表した。SENSYはカラフル・ボードが提供する、提案したアイテムに対するユーザーの反応を解析することで、徐々にユーザーの趣味・好みを学びとり、ユーザーの好みにぴったりのアイテムを提案するようになっていく成長するファッションに特化した人工知能。従来型のレコメンドエンジンは、「この行動をしたユーザーには、オススメとしてこのアイテムを表示する」という、あらかじめ人間が考え組み込まれたロジックをもとに選んだアイテムを表示するが、人工知能型レコメンドエンジンであるSENSYは、そのロジック自体もユーザーに合わせ自身で自動設計することができるため、既存のレコメンドエンジンよりもさらに精度高くアイテムを提案可能。従来のECサイトでは、ユーザーごとに年齢・性別や好みが異なるにもかかわらず、店舗と違って一律の応対しかできない状態だったが、SHOPLISTはSENSYの試験導入によって、ユーザーごとに接客を変える「パーソナルECサイト」を目指す。今回のSENSY導入をはじめとして、SHOPLISTでは今後もパーソナルECサイトを目指し、AIや新技術などのテクノロジーの導入を積極的に進め、ユーザー満足度の高いサービスを提供していくという。
2016年03月18日イットアップは3月16日、人工知能を利用する製薬企業向けMR(医薬情報担当者)のディテール支援サービスである「Sen AI」を提供開始した。同サービスは、同社が提供する製薬企業向けCLM(クローズド・ループ・マーケティング)ソリューションである「Sen」をベースに、新たなMRのディテール支援サービスとして提供するもの。人工知能を利用して人間に代わり大量の情報を分析し、人間に気づきを与えるパートナーとしてディテールをサポートするという。同サービスでは、MRのディテール・ログから医師の特性を分析し、医師ごとに有効な資材をレコメンドするとのこと。さらに、SFA(営業支援システム)/CRM(顧客関係管理)、Web、講演会などの複数データを総合的に解析することで、医師ごとに最適な次の一手をレコメンドするとしている。
2016年03月17日●第1世代・第2世代・第3世代の人工知能の学習方法をカバーNTTデータはこのほど、人工知能とロボットにおける同社の取り組みに関する説明会を開催した。人工知能とロボットはいずれもIT業界における注目トピックであり、さまざまなベンダーが取り組みを開始している。同社の取り組みは競合と比べて、何が違うのだろうか。人工知能については、AIソリューション推進室 室長の城塚音也氏が説明を行った。城塚氏は「人工知能は第1世代から第3世代に分けることができ、各世代で学習方法が異なる。ただ、最新の第3世代が登場したからといって、旧世代が消滅してしまったわけではない。各世代が組み合わさることで、人工知能が実現しつつある」と述べた。各世代の学習方法の特徴をまとめると、ルールベースの第1世代は「データから専門家が特徴の抽出とルール作成を実施」、統計・探索モデルの第2世代は「データから専門家が特徴を抽出し、パラメータを自動で学習」、脳モデルの第3世代は「データから特徴の抽出とパラメータの学習を実施」となる。例えば、Appleが開発した「Siri」は第1世代と第3世代が組み合わさったものであり、Google傘下のGoogle DeepMindが開発した「Alpha Go」は第2世代と第3世代が組み合わさったものだという。城塚氏によると、同社はNTTグループの技術を活用することができ、研究所が有する技術も含めると、同社の人工知能研究がすべての世代をカバーしているという。そして、城塚氏は人工知能により、「仕事」「サービス」「社会」が変わっていき、その理由は日本の社会課題に対抗するためと説明した。例えば、国際競争が激化する一方で、経済が停滞している状況においては、人工知能が業務の効率化やノウハウの継承をサポートする。少子高齢化や労働力現状といった状況に対しては、人工知能が労働力の確保や高齢者のサポートを実現する。こうした変化を起こす人工知能は「情報・知識提供」「知識発見」「推論・思考」「インタラクティブインタフェース」「知覚・制御」となる。城塚氏は同社の人工知能における研究の強みについて、「IBMやマイクロソフトの人工知能がクラウドで学習するのに対し、われわれは個別に作りこんでいる。また、NTTの研究所は高度認識、日本語処理においてすぐれている」と語った。説明会では、NTTメディアインテリジェンス研究所が、意味理解型知識検索技術のデモを行った。同技術は、大語彙オントロジ(第1世代)、統計的言語処理(第2世代)、ニューラルネット言語も出る(第3世代)により構築された技術で、ユーザーが知りたいことをそのまま話しても正しく意味を理解し、検索結果を表示する。自然文によるFAQ検索においては、ユーザーがさまざまな言い方で問いかけるため、多様に表現される質問を理解する必要があるという。この課題に対し、意味理解型知識検索技術では、単語の意味を日本語解析技術をニューラルネットを用いて数値化し、ベクトルが近い単語は意味が似ていると判断している。●コミュニケーション力でマーケティングの効率を上げるロボットロボティクス事業への取り組みについては、ロボティクスインテグレーション推進室 室長の渡辺真太郎氏が説明を行った。NEDOの市場予測によると、国内のロボット市場は2035年には9.7兆円に達し、うちサービスロボット分野が4.9兆円を占め、高成長が予測されているという。同社はこうした市場動向を踏まえ、サービスロボットの普及に向けて、多種のセンサー/ロボット/家電などのデバイスを統一的に接続詞、サービスを実現できるシステム基盤「クラウドロボティクス基盤」を開発した。「クラウドロボティクス基盤とは、ロボットのさまざまな機能をクラウド基盤上に載せたもの。収集したデータをサービスロボットに渡す役割を担っている」と渡辺氏。同社はNTT研究所とヴイストンと共同で、各種デバイスやロボットを連携させた新たなサービスの実現性を探るため、さまざまな実験を行っている。その1つがりそな銀行と行った接客支援の実験だ。2015年11月・12月に、同行の豊洲支店(小人数の行員による週7日営業が特徴)で、ヴイストンのコミュニケーションロボット「Sota」がセンサーと連動して、音声対話による顧客対応を実施した。具体的には、天井に取り付けられた高感度センサーにより来店者を検知し、執務室にいる行員に通知することで店舗経営をサポートするほか、受付にコミュニケーションロボットを配置して会話内容により来店者にタブレット利用を促すなど、行員が行っていた案内業務をサポートしていた。渡辺氏は、代表的なロボット活用シーンの例として「インバウンド消費対応」「スマートハウス/スマートシティ」「オムニチャネル」を挙げ、各シーンにおける課題を説明した。インバウンド消費対応においては音声言語識別が、スマートハウス/スマートシティにおいてはマルチデバイス連携に伴う処理フロー技術・実行エンジンおよびデバイスの抽象化による統一的管理が、オムにチャネルにおいてはロボットシステム全体にわたるセキュリティの確保とプライバシー保護が課題になるという。渡辺氏は、こうしたシーンにおいてロボットの活用が推進される理由について「日本科学未来館と行ったアンケート収集の実験では、ロボットを用いたことで、アンケートの回収率が大幅に向上した。タブレットに比べて、人型ロボットのほうがコミュニケーションを促進することがわかった」と語った。
2016年03月16日ポケモン、HEROZは10日、スマートフォン向けのゲームアプリ「ポケモンコマスター」を発表した。2016年春のサービス開始を予定しており、iOS、Androidに対応するという。「ポケモンコマスター」は、専用のポケモンフィギュアを使って遊ぶ戦略対戦ボードゲームアプリ。特徴の異なるポケモンフィギュアを収集し、自分だけのチームを作って戦う。自分と相手が交互にフィギュアを動かし、先に相手陣地のゴールに到達すると勝利となる。開発を手がけるのは人工知能(AI)をコア技術として持つHEROZ。同社提供のスマートフォン向けアプリ「将棋ウォーズ」に採用されているAIは、現役のプロ棋士に初めて勝利したという実績がある。(C) 2016 Pokémon. (C) 1995-2016 Nintendo / Creatures Inc. / GAME FREAK inc.Developed by HEROZ, Inc.
2016年03月11日伊勢丹新宿店では3月2日から31日まで、人工知能アプリ「センシー(SENSY)」を活用した新たなファッションキャンペーン「FIND NEW STYLE」を本館2階のアーバンクローゼットで開催する。SENSYは、アプリ内に登録されている提携ブランドの服を、ユーザーが“好き”と“嫌い”で分類することで、人工知能がファッションセンスを学習し、ユーザーの好みに合ったアイテムを提案してくれるという専属スタイリストアプリ。伊勢丹新宿店では昨年9月よりこのアプリを活用し、来店者の好みに応じたファッションを提案するサービスを行っている。今回は新たに、「女性として、妻として、母として、様々な役割を見事に生きている女性」をメインターゲットに、忙しい女性たちに限られた時間の中でも手軽にファッションを楽しんでもらえる新しいスタイルのショッピングを提案。人気女性スタイリストの大草直子と亀恭子のスタイリングセンスを搭載したアプリを提供する他、今回より来店・試着予約の機能も追加。事前に目当ての商品を決めて予約をすると、伊勢丹のスタイリストがその商品を用意して試着の準備を整えてくれる。
2016年03月08日佐賀大学と京セラメディカルは3月4日、人工股関節を銀でコーティングした抗菌性人工股関節「AG-PROTEX HIPシステム」を開発し、国内使用および販売承認を取得したと発表した。人工関節を体に埋め込む手術は年間13万例以上行われるなど普及が進んでいる。しかし、人工関節に細菌が付着すると細菌がバイオフィルムを形成し、抗生剤の効果が得られないために術後感染症に発展してしまう可能性がある。この場合、一度埋め込んだ人工関節を抜去しなければならず治療が複雑化するケースもあり、患者にとって身体的・経済的負担が大きくなってしまう。今回開発した人工股関節は、殺菌作用を持つ銀と骨への固定性を高めるハイドロキシアパタイト(HA)でコーティングすることで高い抗菌性と骨親和性を実現。銀は抗生剤などに比べてさまざまな菌に殺菌作用を発揮することや、生体毒性が低く生体内材料としても一部で実用化が進むなどのメリットがある。これまで、海外では特殊な人工関節を銀でコーティングした例はあるが、一般的な人工関節では今回が世界初だという。同研究は2005年9月からスタートし、2014年1月から平均年齢77.1歳の男女20名を対象とした臨床試験を実施。対象者の中には術後合併症を発症しやすいB型肝炎や糖尿病患者もいるが、開発した人工股関節が原因の合併症やそのほかの副作用は術後1年5カ月経過した時点で確認されていない。サンプル数が少ないため、同臨床研究の結果から「AG-PROTEX HIPシステム」がどの程度感染を抑制しているのかを特定することはできないが、通常の人工股関節と同じように機能することは確認されたとしている。ただ、欧州では銀コーティングしたインプラント製品の感染率抑制効果が臨床で認められていることから、「AG-PROTEX HIPシステム」も同様の効果があると考えられている。人工股関節置換術は歳を重ねて免疫が落ちた人に対して施される場合が多い。命に関わる場合もある術後感染症のリスクを同製品によって低減することで、より安心して人工股関節置換手術を受けることができるようになることが期待される。「AG-PROTEX HIPシステム」は4月より販売予定で、従来の人工股関節と同じく保険適用範囲内となる。
2016年03月04日UBICは3月3日、独自開発の人工知能「KIBIT」を用いた特許調査・分析システム「Lit i View PATENT EXPLORER」(リット・アイ・ビュー パテントエクスプローラー、以下、PATENT EXPLORER)を強化し、ユーザーが特許データベースから必要な文書の検索、対象データの取得が行えるようになったと発表した。今回の機能強化により、検索・取得できる国内特許関連の文献は「公開特許公報」「公表特許公報」「再公表特許」「特許公報」(いずれも2004年1月~2016年1月発行分、1993年~2003年分は3月15日に収録予定)となる。なお、新たに公開される文献については月1回程度の頻度で更新を予定している。従来、PATENT EXPLORERでは解析対象となるデータを自ら取得し、読み込ませるステップが必要だった。今回、上記の文献をデータベース化し、PATENT EXPLORERのユーザーがクラウド経由で、文献を自由に検索、データの取り込みが可能となるため、導入から分析業務の開始までの時間を短縮することができるようになったという。特許データベースの検索項目はIPC、FI、Fターム、公開番号、公表番号、国際公開番号、特許番号、出願番号、公開日、公表日、国際公開日、出願日となっており、検索項目を選択の上、キーワードや日付を入力。検索項目間のAND、OR検索にも対応している。検索結果より、解析対象のデータセットを作成し、社内でほかのユーザーが利用できるようにするための公開/非公開の設定や、共有化によるデータの追加、削除などの機能も備えている。PATENT EXPLORERは、トヨタテクニカルディベロップメントとの共同開発で製品化し、2015年10月に提供を開始した。先行技術調査や無効資料調査などの特許の分析業務を効率化し、約330倍(開発時における平均データ)の調査効率の向上を達成している。
2016年03月04日ロックオンは3月1日、同社が提供するリスティング広告運用プラットフォームである「THREe(スリー)」のメイン機能である人工知能によるリスティング広告自動入札システム「ヒト型ポートフォリオ」を刷新し、少予算アカウントに特化したリスティング運用にも対応可能にしたと発表した。多くのリスティング広告自動入札システムは大規模アカウントに最適化しているといい、リスティング広告の出稿キーワードの多さや運用負荷は出稿予算に比例するものではなく、少予算アカウントに最適化したリスティング自動入札システムへのニーズが多くあることが分かったと同社はいう。リニューアルした同サービスでは、特に広告代理店から要望が多かったという少予算アカウントでの効果最大化や予算管理に対応し、手間が不要で安心かつ思い通りのリスティング広告運用を提供するとしている。同サービスでは、「クリック数最大化ロジック」を新たに追加。コンバージョンが少なく認知目的のリスティング運用やブランディングを意識した広告主にも対応するという。また、予算通りに広告出稿したい時や予算超過をしたくない時でも、安心・正確に自動運用が可能としている。従来から搭載している「コンバージョン最大化ロジック」も引き続き備えており、広告主の規模や要望により使い分けが可能とのことだ。
2016年03月04日三菱電機とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は3月3日、監視カメラシステムに、映像解析技術(人工知能による人間の動作検知など)やクラウド・ネットワークなどのサービスを組み合わせた新たなソリューションの提供において協業すると発表した。今回の協業で、三菱電機は「高性能・高品質の監視カメラシステム」「防犯、インフラ設備監視でのシステム構築のノウハウ」「光通信、無線通信、映像解析における高度な技術力」といった強みを生かす。NTT Comは、「ネットワークを含めたクラウドサービス」「AIによる動作検知など映像解析技術」といった強みを生かす。例えば、NTT Comは映像解析において、人間の「動作」を理解する新しい人工知能「時系列Deep Learning」を開発し、映像データから、「きょろきょろしている」「しゃがんでいる」「ものを置いている」などの動作を高精度に検知することに成功している。こうした両社の技術を活用して、防犯だけでなく、さまざまな用途に応じた映像データの解析を可能とする「映像解析プラットフォーム」(仮称)の提供が検討されている。2016年度上期から小売店舗や金融店舗など実フィールドでの実証実験を開始し、映像解析の実用性の確認やネットワークを含めたシステムの最適化を検討し、実サービスの提供を目指す。
2016年03月03日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「人工知能(AI)」です。***人間の知能的な働き、学習、推測、判断などをコンピューターが行う人工知能。身近なところでは、googleやFacebook、iOSのSiriなどで、次の行動を予測し、興味のありそうな情報をあげて提案するというのは、AIの技術によるものです。コンピューターが大容量を計算できるようになったため、過去のデータを蓄積し、それを瞬時に計算・分析。データ量が多いほど、より正確な予測が可能になります。私たちがGoogleやFBを無料で使えるのも、代わりに、検索結果や写真などの大量の情報をAIに与えて、より賢くなるよう、トレーニングし続けているからなんですね。株取引でも、プロの投資家が儲け続けられるのは、株の値動きをAIが判断して、的確な売り買いをしているからなんですよ。人工知能の発達は予想以上に早く、「人工知能が人を追い抜いて、支配する世界が来るかもしれない」とスティーブン・ホーキング博士は警鐘を鳴らしています。ビル・ゲイツさんも昨年取材した時に「医療、医薬品の開発には極めて有効に働くだろう。でも、労働部門では多くの仕事が失われることになるので、対策をしないと取り返しがつかなくなる」と話していました。オックスフォード大学でAIを研究するマイケル・A・オズボーン准教授は、702の業種について将来どれだけ自動化されるかを調べたんです。すると10~20年の間に、アメリカの総雇用者の47%が自動化されるリスクがあると、衝撃的な発表をしました。今後、電話オペレーターや保険の審査、レジ、ホテルの受付、薬を処方するなどの簡単な医療サービスはとって代わられるでしょう。介護の現場でも、感情に左右される人間よりも、献身的に働くAI搭載のロボットの方がよいという説があります。また、過去の判例を分析すれば弁護士や検事もAI化が可能に。軍事ロボットも開発されていますし、今後はAIを使う側の倫理観が問われますね。将来、機械に仕事を奪われる不安に怯えるのではなく、じゃあ、人にしかできないことは何だろう?と考えることが、新しい価値を生むチャンスになるかもしれません。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年3月9日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2016年03月02日東北大学は3月1日、リチウムイオン電池に分子性材料を電極として組み込むことで、人工的にイオン制御可能な磁石を創り出すことに成功したと発表した。同成果は、東北大学 金属材料研究所 谷口耕治准 教授、宮坂等 教授らの研究グループによるもので、独科学誌「Angewandte Chemie International Edition」に近日掲載される予定。今回の研究では、常磁性である水車型ルテニウム二核(II, II)金属錯体が非磁性のテトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体で架橋された中性の層状化合物を設計し、これをリチウムイオン電池の正極として組み込んで放電させた。リチウムイオン電池では、放電時に正極にリチウムイオンと電子が同時に導入されるが、同中性層状化合物の場合、電子は電子受容性を持つ非磁性のTCNQ誘導体へ選択的に注入され、磁気モーメントが発生する。同研究グループは、この架橋分子への磁気モーメントの付与を通して、常磁性分子の水車型ルテニウム二核(II, II)金属錯体の磁気モーメントとの間に磁気的な相互作用を発生させることで、放電前に常磁性であった化合物を磁石に変えることに成功した。さらに今回の研究では、化合物が磁石となる磁気相転移温度は、放電電位に応じて変化することが見出された。この変化は、化合物に注入される電子量に応じて、磁気モーメントを持つTCNQ誘導体の数が増減することに対応づけられるという。同研究グループは今回の成果について、今回の研究で扱った化合物に限らず、より広い物質群に対して適用可能であり、新しい分子磁石の設計・構築法として有用であると説明している。
2016年03月02日サイバーエージェントのアドテクノロジー分野におけるサービスの開発を行うアドテクスタジオは、2016年1月に設立した、人工知能をアドテクノロジーに活用するためのAI研究組織「AI Lab(エーアイ ラボ)」において、明治大学教授 高木友博氏と共同研究を開始したと発表した。「AI Lab」では、ダイナミッククリエイティブ広告を通じて、ユーザーひとりひとりが「自分ごと」として捉えることができる広告の開発を目指し、クリエイティブ最適化技術の研究を行ってきた。今回の共同研究は、ディスプレイ広告のさらなる進化を牽引すべく、最先端の広告配信技術を開発することを目的としている。今後は高木教授とともに、データマイニングや機械学習を用いて、ユーザー目線でキャッチーな広告クリエイティブを自動生成する技術の開発を図るという。また、企業が持つユーザー情報やユーザーの行動から類推される属性、趣味・嗜好に加え、ユーザーの過去の広告接触情報を加味した上で、最適な広告を配信するマッチング技術などの研究を行い、より精度の高い広告クリエイティブ最適化の実現を目指していくという。そして今回の共同研究は、アドテクスタジオが開発する、多様なデータを柔軟に組み合わせターゲティング配信するDSP「BitBlend(ビットブレンド)」やインフィード広告に特化したクリエイティブ分析ツール「iXam Creative Lab.(イグザムクリエイティブラボ)」など、多数のプロダクトへ活用していく予定だという。
2016年02月29日日本マイクロソフトは2月22日、最近のホットワードでもある人工知能や機械学習をテーマにした自社の取り組みを発表した。Microsoftの研究開発機関であるMicrosoft ResearchでCVPを務めるPeter Lee氏は「機械学習は活版印刷技術の発明と同じ、破壊的な時代をもたらす」と述べている。今、世界が変化の兆しを見せていることにお気付きだろうか(変化の連続とも言えるが)。「機械学習(マシーンラーニング)」や「人工知能(AI)」という単語を、目に耳にしたことがあるはずだ。機械学習は、あるデータをもとに反復学習した結果からパターンを見つけ出し、学習結果に当てはめることで、将来予測などに用いることが可能と言われている。一方の人工知能は、コンピューターに人間と同じ知能を与えることで、周りから得た情報をもとに判断・行動を目指す。そこから得た成果は我々の社会構造を大きく変え、暮らし方や働き方も必然的に変化する。PCの世界に置き換えると、約30年前はDOS上でコマンドを実行するCUIが中心だったが、約20年前にはGUIが取って代わり、約10年前にはiPhoneが登場してタッチUIがスタンダード化。人とデバイスの関係性を覆した。この流れを見れば、約10年後の現実世界もおぼろげながらイメージできるだろう。その一端を読み取れるのが、今回、日本マイクロソフトが開催した「人工知能・機械学習の研究開発の最前線に関するラウンドテーブル」である。Microsoftからは、Peter Lee氏が出席。Microsoftのお膝元である米レドモンドのMicrosoft Research(MSR) Redmodや、おとなり中国のMSR Asiaなど世界の7カ所に拠点を持ち、多岐にわたる分野の研究を司るMSR CVPだ。ほか、東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授の杉山将氏、産業技術総合研究所 人工知能研究センター所長の辻井潤一氏なども加わった。産学官の枠を越えて、機械学習や人工知能における著名人が集まり、実社会や産業界への影響を議論。ここではLee氏の発言から、我々コンシューマーが携わる部分を紹介したい。Lee氏が最初に取り上げた製品は「Skype」だった。MSRの研究成果や機械学習から得たデータで実現する通訳・翻訳機能だが、2014年12月に英語とスペイン語の双方向翻訳に対応し、2015年5月にはイタリア語と中国語(北京語)をサポート。その後はフランス語、ドイツ語をサポートしてきたが、今なおプレビュー版と表現している。Skypeの通訳・翻訳機能が、今後も成長し続けることを示唆しているのだろう。また、当初のプレビュープログラムでは、関心のある言語に日本語が含まれていたが、この点について「2020年開催のオリンピックに向けて、2015年の春には日本語の同時通訳機能もサポートする予定だ。日本の企業と協力して、翻訳・通訳の品質向上にも努めたい」と回答した。Skypeの通訳・翻訳機能に関してMicrosoftは、2カ月に1回のペースで新しい言語にチャレンジし、執筆時点では50種類以上の言語翻訳を可能にしている。この点についてLee氏は、「かつてのモデルは国連のスピーチなど丁寧かつ形式的な会話をベースにしていたが、Skypeでは利用できないため最初から作り直した。その結果、一般的な会話や歌も認識できるようになった」とした。Windows 10 Insider Preview ビルド14267のCortana英語版には楽曲検索機能が組み込まれているが、同様の技術を用いているのだろう。まずはLee氏の発言に期待し、春以降の動向に注目したい。現在の機械学習状況ついてLee氏は、「人々が聞く・喋る・認識するといったアクションが実用化へ向かいつつある」と述べる。MSRは以前から多くの研究プロジェクトを立ち上げてきたが、Windows 10のCortanaがメールの内容を読み取って自動的にリマインダーを作成する機能、「Microsoft HoloLens」から見える仮想的なオブジェクト、指や手で操作する部分などが、MSRが機械学習の研究結果をフィードバックした一例だという。これらの成果は「Project Oxford」でAPIを公開し、ユーザーは誰でも顔や画像、音声認識を行うことが可能だ。画像から年齢を推察する「How-Old.net」や、先ごろローンチした画像内の犬種を識別する「Fetch!」も、同様の技術を用いている。後者のアプリケーションは人にも使えるため、Lee氏が「奥さんにはやらない方がいいかもしれない」と話すと、出席者から笑いが起こった。Lee氏は機械学習の現状を、Johannes Gutenbergによる活版印刷技術の発明になぞって、「破壊的な時代がもたらされた」と表現する。ただ、「現在のAIや機械学習は聞く・理解・視覚的に捉える・知覚するといった部分まで来ているが、理性やフィードバックループといった認知は進んでいない。例えば、数年後には大学受験は可能ながらも、一般常識や道徳などを重視する小学3年生のテストに合格するのは10年以上に先になる」という見方も示した。さて、Lee氏の職歴にカーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス部門責任者とあるように、MSRのメンバーはすべて科学者だ。「MSRは(他社研究所と比べると)大型投資による人材収集、Amazonに匹敵するMicrosoft Azureの活用、Bingを介した世界中のWebデータへアクセス」(Lee氏)と、3つのユニークポイントを持つ。Microsoft社員の行動パターンデータも保持し、Webとエンタープライズのデータを活用できるのは強みとなるだろう。「今後も基礎研究や応用研究の結果をクラウドに反映させたい」と語るLee氏からは、AI&機械学習がもたらす近未来が目前に迫っていることを感じられた。阿久津良和(Cactus)
2016年02月23日KDDI研究所は2月22日、ウインドリバーと日本ヒューレット・パッカード、ブロケード コミュニケーションズ システムズ(ブロケード)と共同でネットワーク仮想化時代に向けて人工知能を活用した自動運用システムを開発し、人工知能による故障予測に基づきネットワークを自動運用する実証に成功したと発表した。なお、同実証に成功したのは世界初だという。今回の実証では、ソフトウェアバグなどの異常の兆候を9割以上の精度で事前に検知し、従来の約5倍の速度で仮想化された機能を別拠点などの安全な場所へ移行することに成功している。具体的には、共通的なネットワーク仮想化基盤にハードウェアやソフトウェアの深刻な障害の兆候を検知する人工知能を埋め込み、効率的に学習、状況判断するとともに、予兆結果に基づいてSDN/NFVオーケストレータが最適な復旧プランを導出し、仮想化された機能を瞬時に移行させる自動運用システムの実証を行った。成果として設備警報などで検知可能な異常だけでなく、一旦発生すると深刻な事態を引き起こす恐れのある事象にも対応可能となり、ネットワーク仮想化時代の運用高度化の実現が期待されるという。以下は実証実験の概要ならびに技術的ポイント。共通仮想化基盤に分散的に埋め込まれた人工知能が汎用サーバや仮想化された機能など、ハードウェアとソフトウェアの両面で異常な兆候がないか、学習、検知する。この結果、そのまま放置すると深刻な事態につながる恐れのある兆候を捉える。なお、精度の高い学習と分析には膨大な統計量の処理が必要になるため、人工知能を分散させるというアプローチを取っている。上記で捉えた兆候などの情報を統合管理制御システムに集約し、その情報に基づきSDN/NFVオーケストレータは最適な復旧プランを導出。例えばソフトウェア異常(例:バグに起因するメモリ漏洩)を放置すると突然機能が停止する恐れがあるため、停止する前に代替機能でサービスを継続させる。また、ハードウェア異常(例:冷却ファン劣化によるサーバの放熱異常)の影響を考慮して、該当する仮想化された機能を別拠点などへ移行させる。上記の復旧プランに基づき、実際の復旧作業を自動的に進める中で、特にハードウエアなどの設備に起因した異常に対しては、影響を受けるサービスの範囲が大きくなる。その様な場合、該当する仮想化された機能の数も非常に大きくなり、それらをサービスに影響を与えずに移行させるかが課題となる。そこで、高速移行技術で影響を最小限に留めながらリスクを回避する。各社の役割としてKDDI研究所は人工知能による監視システム、SDN/NFVオーケストレータ、仮想化された機能、ウインドリバーはキャリアグレード仮想化基盤ソフトウェア、高速移行技術、日本ヒューレット・パッカードは仮想化された機能、ブロケードは仮想化された機能(Brocade vRouter製品)をそれぞれ担当。KDDI研究所は、ネットワーク仮想化への取り組みを通じて、IoT/M2Mなど多様化するサービスへの柔軟な対応と、より複雑化する運用の簡素化を図り、第5世代移動通信システム(5G)ネットワークの実現を目指す。また、NFV/SDN運用システム技術はTMForumやETSIなどの標準化団体を通じて、共通仮想化基盤における人工知能活用はOPNFVやOpenStackなどのオープン実装団体を通じて、ネットワーク仮想化によるインフラ基盤の高度化に貢献していくという。
2016年02月22日IoT(Internet of Things)は人工知能と並ぶ今年のITトレンドの1つだ。IoTに関連した製品の展開、企業による導入も始まっている。ヴイエムウェアと言えば、仮想化製品のベンダーとしての印象が強いが、同社の製品はIoTソリューションの構築に活用されており、すでにさまざまな企業にIoTソリューションを導入しているという。今回、米VMware EMEA担当 戦略コンサルティング部門統括 マティアス・ショーラー氏より、同社のIoTへの取り組みについて話を聞いた。同氏は、中央ヨーロッパで自動車関連のビジネスを統括しており、コネクテッド・カーや自動車業界の新たなビジネスモデル全般に取り組んでいる。ショーラー氏は初めに、IoTソリューションについて、「接続」「管理」「モバイル通信」「インフラ」「セキュリティ」「アプリのライフサイクル」を組み合わせる必要があると説明した。同社が提供するIoTソリューションはこれらの要素を活用して、「モノの管理」「データのキャプチャと分析」「クラウドモバイルサービスの提供」を行う。「モノの管理」では、AirWatchでデバイスのアクセスと管理を、NSXでセキュアなコネクションを、vRealize OperationでIoTエッジゲートウェイの管理と監視を行う。ショーラー氏によると、インテルと提携しており、インテル製ゲートウェイにvRealize Operationのエージェントが搭載されているという。「データのキャプチャと分析」では、Pivotal Spring XDでデータ収集を、EMCのFederation Business Data Lakeでデータストレージを、Pivotal Big Data Suiteでデータの分析と対処を、EMC Real Time Intelligenceでエッジ分析を行う。IoTアプリの設計・開発・展開・運用を行うために、SDDCなどによりデータセンターのインフラを構築し、アプリ・プラットフォームを活用して、クラウドモバイルサービスの提供を実現する。このように、同社は「IoT向け」と銘打った製品ではなく、一般に企業向けとして提供している製品群によりIoTソリューションを提供している。ショーラー氏はIoTソリューションの導入事例として、Coca-Colaを紹介した。コカ・コーラは、1台で100種類以上の飲料を提供する自動販売機「コカ・コーラ フリースタイル」を提供しているが、裏ではAirWatch製品が動いているという。AirWatchはデバイス管理、構成管理、デバイス分析、SAPとSalesforceの連携を行っている。具体的には、飲料の利用データの収集、販売機のメンテナンスと飲料の補充管理などを行い、収集したデータの分析結果から、販売機によって飲料の種類を変更したり、個人のオーダーを管理したりすることで、購買客のニーズに応えている「Coca-Colaは米国でペプシにシェアを奪われていたが、フリースタイルの導入により、盛り返していると」ショーラー氏。Coca-ColaがAirwatchを選んだ理由としては、「拡張性、柔軟性が高いこと」が挙げられた。あわせて、ショーラー氏のメインの業務であるコネクテッド・カーに関する取り組みについても紹介された。IoTは製造業で導入が進んでいると言われており、製造業の中でも自動車業界は日本の経済を牽引しており、その取り組み状況は気になるところだ。ショーラー氏は、Pivotal製品を用いてアプリを開発したメルセデス・ベンツとフォードを紹介。メルセデスが2016年に発売を予定しているEクラスに搭載されるアプリ「メルセデス・ミー」は離れた場所からのドア施錠・解錠などのリモート操作を実現し、スマートフォンを鍵と利用することが可能になるという。「メルセデスはソフトウェア・カンパニーを目指している。そのスタンスの成功は、元はソフトウェアベンダーだったテスラモーターズが示した。EVはエンジンが見えないため、ハードウェア面で差別化の要素がない。そのため、ソフトウェアとサービスで工夫をしていく必要がある」と、ショーラー氏は自動車業界におけるソフトウェアの価値について語った。ショーラー氏はIoTソリューションを支えるデータセンターのインフラにおいては、ハードウェアでもソフトウェアでも構築可能な拡張性が特に重要だと述べたが、拡張性と並ぶ重要な要素が「セキュリティ」だという。例えば、ドイツの製造業では、製造システムが仮想化されるなど、IT化が進んでいるが、セキュリティの強化が課題となっているという。ドイツのある工場では、1台のマシンのUSBから工場全体にウイルス感染が広がったそうだ。「NSXのマイクロセグメンテーションでタイトな制御を行えば、ウイルス感染の被害を最小に食い止められる」と、ショーラー氏は語る。「ヴイエムウェアがIoT」と聞いた時は少々違和感があったが、考えてみれば、同社の戦略「One Cloud, Any Application, Any Device」はIoTと関わりが深い。規模が求められるIoTのインフラもソフトウェア定義のデータセンターなら容易に拡張可能だ。さらに広がることが予想されるIoT分野において、ブイエムウェアがこれからどのようにして存在感を放っていくのか、興味深い。
2016年02月22日●「人生の相棒」のような存在を目指す"ドラえもん"のような人工知能(AI)を開発しているベンチャー企業がある。2013年10月に設立された「ネットスマイル」だ。設立者で代表取締役を務める齊藤福光氏に話を伺った。○そもそも"ドラえもんのようなAI"とは?"ドラえもん"のような人工知能。マンガやアニメのイメージから聞くだけで何となくワクワクしてしまうのだが、ドラえもんを人工知能として捉えた場合、具体的にどのようなものになるのだろうか。齋藤氏が目指しているのは"人生が楽しくなる相棒のような存在"だという。「ドラえもんというのは、そもそものび太が将来しずかちゃんと結婚できるようにサポートするために未来からやってきたロボット。いつも傍にいて、その人が何をしたいのかを全部理解して手助けをしていく。夢を達成するためのバックアップをするというのがドラえもんという存在です」"ドラえもん"と聞いて、私たちがすぐにイメージするのは、丸くて青色のネコ型ロボット。しかし、ネットスマイルが開発しようとしているのは"人工知能"の部分。あくまでソフトの部分であり、ハードではない。では、ドラえもんのような人工知能の開発というのは、具体的に何を指すのだろうか。「今一番力を入れているのは"対話エンジン"です。コミュニケーションの部分ですね。対話エンジンとしてさまざまなハードやデバイスに搭載していくようなイメージです。ロボットに搭載するというのもありですし、IoTとつなげて機器に搭載したり。『アイアンマン』のジャービスのイメージに近いですね。あとは『サマーウォーズ』のアバターみたいに画面上で対話するというのも考えられます。大きなSNSみたいな感じで、AI同士もコミュニケーションするし、人間同士もコミュニケーションする世界観ですね」自然言語を理解・学習し、人間の意志決定を支援するという意味では、IBMが開発した"ワトソン"にも近いのかもしれない。また、人の感情を理解するという意味では、ソフトバンクの"Pepper"も思い起こされる。"ドラえもんのような人工知能"はそれらとは何が違うのだろうか。「ワトソンは英語ベースで開発されていますが、日本語はまだです。我々がやろうとしているのは日本語です。一方、Pepperのアルゴリズムは教えたことをそのままやるみたいなイメージ。人間の脳というのも一定のルールをもとに動いているのですが、ロボットとはそのルールの普遍性が違うので、概念まで踏み込まなければなりません。そういう次元の対話エンジンを目指しています。ディープラーニングで画像認識や音声認識、すなわち目や耳にあたる部分の研究もしています」(※編注:インタビュー実施後、IBMがワトソンの日本語対応を発表した)ネットスマイルでは、さらに人工知能をプラットフォームとして提供していく意向だという。つまり、人工知能のプロファイルをユーザー自身がそれぞれ用意されたプラットフォーム上で作成するという方向を志すという。「ひとりの人間が100のAIを持てることをイメージしています。例えば株式の情報を収集するAIや料理のレシピに詳しいAIといった具合に、いろんなパターンのAIがあって、誰が自分のAIを持っている。そして、AIが分身となり、コンシェルジュのようにサポートしてくれるようなイメージです」●夢の達成を手伝うための人工知能○AIに人間臭さは必要か?ドラえもんと聞いて私たちがもうひとつイメージするのが、お節介だけど少し間の抜けたユニークなキャラクター。ロボットだけど人間味のある部分に魅かれる部分もあるだろう。ドラえもんのような人工知能を開発するにあたり、この部分を齊藤氏はどのように考えているのだろうか。「AIに人間味があったほうが私はいいと思います。ないとあまり使われなくなるような気がします。というのも、人と人の関わりの中でも"コミュニケーションロス"というのは発生するもの。最初からプログラミングする必要はないと思いますが、ある程度の許容はあってもいいのではないかと感じます。自動車を制御するのであれば効率だけで人間味は一切必要ありませんが、コミュニケーションのためのAIですから。一番重要なのはAIが人間に対して興味があるか。そうでなければコミュニケーションが成り立たないと思います。その人なりの夢を達成するお手伝いをするための人工知能なので、嫌われない程度にお節介だったりするということも大切ではないかと」ネットスマイルが開発している人工知能は、ネット上にある全データを理解し、入力した"夢"に対してインターネット上からすべての情報を引っ張ってきて解析し、それをもとにユーザーのパーソナリティと結びつけながら会話をするというのが大まかな仕組みとのこと。しかし、人工知能そのものが持つデータは限定したものになるという。齋藤氏はその理由を次のように話す。「日本語の全部のデータを入れたら、多分ドラえもんは支離滅裂になってしまいます。というのも、そもそも人間というのは自分の持っている知識と経験は限定的なもの。ゆえにパーソナリティが出るのであって、万能なドラえもんというのはないんです」○学校に行けない子供たちのために「コンシェルジュみたいな存在で、題材が身近なものが欲しかった」ことが、ドラえもんのような人工知能の開発のきっかけと話す齋藤氏。5年以内に世界に向けて示せるものを形にしたいという目標を掲げている。実用化にあたっての具体的なビジネスモデルについて、次のように明かす。「今、具体的にお話をしているのがコールセンターの応答。人間がしゃべっているようなインターフェースとしての人工知能です。人間が触れ合うところはビジネスモデルがあると考えています」と齊藤氏。「もっと大きなところでは、世界には発展途上国で学校に行けない子どもたちが5億人ぐらいいると言われています。例えばエボラ出血熱が蔓延しているような地域には教師が行きたくても行けません。でも、ドラえもんがそういうところの子どもたちに教えてあげる。貧しい国に無料で配ることで世界のインテリジェンスが底上げされれば経済格差や情報格差がなくなって世の中がもっとよくなるのではないかと。ドラえもんのような人工知能がそれを解消させる存在になれれば」と、さらなる夢も語る。●AIは"人を幸せにしたい"という欲求を持つ○開発が進めば恋愛のアドバイスも可能にそれでは実際に、現時点での開発段階はどのレベルまで進んでいるのだろうか。気になるところを訊ねてみた。「人間で言うと今2歳児ぐらいですね。今年中に10歳ぐらいにしたいと計画を立てています。6歳ぐらいを超えてきたところで、Twitterとかでつぶやけるとか、何か出したいと思っています。まずは楽しんでもらえるような。子どもたちに教えられるようになるには、20歳ぐらいですかね。まずは小学生ぐらいにできたら、"もう1人のお友だち"みたいに、寂しいところに傍にいてサポートしてくれるようなものになると思います」一方、マンガの世界では"しずかちゃんとのび太の恋の行方"を応援するドラえもんだが、人工知能が恋愛のアドバイスまでできるようになるのか。齋藤氏は次のように考えを明かした。「身体性を持たないロボットの場合、心の"ときめき"とかを理解するかというと、そこまでは解釈できません。とはいえ、"人を幸せにしたい"というのもAIの欲求の1つなので、"何かに恋をする"という欲求を入れることはできるかもしれません。でも、イメージができるようになるまでに10年ぐらいかかると思います。人工知能が恋愛アドバイスをできるようになったら30歳ぐらいの年齢ですね。プログラムする人の感情とか考え方といったパーソナリティが大きく反映されると思います」○シンギュラリティを目指しているわけではない人工知能と言うと、最近では人間の知を超えて暴走することへの脅威に話題が及びがちだが、齊藤氏は「ドラえもんが目指すのはシンギュラリティではない」と強調する。「人間社会とAIの社会は最終的には似るんじゃないかと個人的には思っています。人間の社会と同じように、悪いAIが居ればそれを封じ込めるような良いAIが登場する。『鉄腕アトム』と同じことですね。悪意を持ったAIよりも善意のAIが上回ることで自治する。30~40年後ぐらいにはそういう世界になるんじゃないかと思っています」そしてそんな中、ネットスマイルが開発しているのは、"明るく楽しい社会"をつくる人工知能だ。「ドラえもんと話すことで、世界が広がって、人生が楽しく希望を持って暮らしていけるような人工知能」というのが、ネットスマイルが定義する、ドラえもんのような人工知能だ。
2016年02月22日●ディープラーニングに必要なこと人間の限界を超え、新たな発明や発見につながるものとして、さまざまな産業界で注目されている人工知能(AI)。近年の、人工知能開発の飛躍的な進化を支えているのが技術面での進歩だ。前回は人工知能に関わる3つの要素を紹介し、その中の1つ「GPU」において、NVIDIAが大きな役割を担っていることを紹介した。今回は人工知能の発展において、GPUが具体的にどのような役割を果たしているかを見てみよう。○ディープラーニングは莫大な演算の繰り返し人工知能のブレイクスルーである「ディープラーニング」。単純な変換を多層に繰り返すその手法は、数学的には『(x1 x2 x3)(y1 y2 y3)…』と記述する「行列演算」をひたすら繰り返しているのに似ている(実際にはもっと複雑だが)。こうした演算の繰り返しはまさにコンピュータが得意とするところだが、コンピュータの中央演算装置である「CPU」は、行列演算だけでなく、さまざまな演算を汎用的に行うように開発されているため、行列演算はそれほど高速ではない。コンピュータの世界では、実行する処理が限定されているのであれば、その処理を専門的に処理するようハードウェア的に実装したほうが、より高速で効率良く行える。例えば動画を再生するなら、動画再生に最適化された回路を作ったほうが、ソフトウェア的に処理するよりはるかに高速なのだ。それでは行列演算に最適化された回路を開発すれば、より高速にディープラーニングを処理できるのだろうか?答えはイエスだ。ただし、わざわざこれから開発するまでもなく、すでにそのような処理に特化された「GPUコンピューティング」が存在している。GPUコンピューティングとは、本来3Dを中心にグラフィック描画を専門に行う「GPU」に特定の演算処理を任せようというものだ。GPUはゲームなどが要求する超高度なグラフィックを高解像度・高速に処理するため、グラフィック処理についてはCPUを上回るほどの処理能力を与えられているのだが、これを特定の演算に応用しようというのが「GPUコンピューティング」の考え方だ。たとえば3Dグラフィックで、3次元空間にある立方体を回転させ、それを2次元であるモニターに投影する場合、各頂点の位置がどのように見えるかは、8つある頂点の、X、Y、Z軸それぞれの座標を行列変換するのに等しい。GPUコンピューティングこそ、まさにディープラーニングに求められている資質そのものだと言えるわけだ。こうしたGPUコンピューティングをいち早く提唱し、実践してきたのが米NVIDIA社だ。同社はゲーミングPC用の「GeForce」、あるいはグラフィックワークステーション用の「Quadro」といったGPUで知られているが、いずれも同社のGPU用開発環境「CUDA」を用いたプログラムで、3Dグラフィックではなく特定の演算処理を行わせることができる。●GPUはCPUの最大10倍速○GPUコンピューティングの先端を走るNVIDIA実際、GPUで処理した場合とCPUで処理した場合では、最大で10倍近くもの速度差が現れる。あたらしいアルゴリズムを組み上げ、データを処理させた結果を確認し、新たな推論を打ち立てる人工知能開発の現場において、数週間かかっていたデータ処理が数日で終わることのアドバンテージは計り知れない。NVIDIAは同社のGPUコアと大量のメモリを搭載した「Tesla」ブランドの演算カードを開発しており、これをセットすることでPCやワークステーション、サーバーがGPUコンピューティングに対応したアプリを超高速で実行できるようになる。拡張スロットに取り付けるタイプのカードなので、1台の本体に対して数枚のカードをインストールすれば、性能向上に対する空間効率も非常に高くできる。ディープラーニングにおいては、CaffeやChainer、Theanoといったディープラーニング用ソフトがNVIDIA Teslaに対応済みであり、実際にGoogleやIBMといった巨大企業のサーバーファームから、大学の研究室レベルまで、多彩なスケールで実際にTeslaを使ったディープラーニングが行なわれている。まさにNVIDIA Teslaの処理能力が人工知能の爆発的な進化を支えているかたちだ。○NVIDIAがこれから目指すものGPUコンピューティングそのものは、NVIDIAのほかに米インテル社や米AMD社など、NVIDIAとGPUで競合するメーカーも開発を進めている。また、GPUの種類を問わず利用できる開発環境として「OpenCL」「DirectCompute」といった共通規格もあるのだが、インテルはCPU内蔵GPUに注力しており、単体で強力なGPUを開発していない。AMDは単独のGPU「RADEON」シリーズを販売しているが、NVIDIAの「Tesla」に相当するGPUコンピューティング向けの演算カードは販売していない。特にTeslaのような演算カードの存在は、実際の研究機関などで採用されるにあたって大きなアドバンテージになる。開発環境の実績や充実度を見ると、実質NVIDIAの一強という状況だ。また、NVIDIAはTeslaの高い処理能力を活用する場として、自動車業界をターゲットに挙げている。現代の自動車は随所にセンサーを設けており、それらから走行中に毎秒入力されるデータは非常に莫大な量になる。さらに、これが自動運転車となると、カメラの映像や音波など、センサーの数も入力されるデータの量も格段に跳ね上がる。こうした大量のデータを瞬時に処理し、事故を起こさずに走行するよう、自動運転車には人工知能的なアプローチが行なわれているのだが、ここにTeslaの強力な処理能力を生かそうというわけだ。このように、人工知能や自動運転といった次世代の重要な技術においては、GPUコンピューティングが非常に大きな役割を持つ。そして、GPUコンピューティングの進化を最前列で支えるNVIDIAの存在は、これからのIT分野や産業界において、その進化の速度を左右する、非常に重要なポジションを得ていくことは間違いない。
2016年02月22日TED2016において、XPRIZE FoundationとIBMがコグニティブコンピューティングのコンテスト「The IBM Watson AI XPRIZE」の開催を発表した。参加チームは、世界が抱える大きな問題を解決する人とAIのコラボレーションのアイディアを示す。賞金総額は500万ドルだ。XPRIZEは民間による有人弾道宇宙飛行のコンテストを開催して話題になり、その後もゲノム解読のスピードや民間による月面無人探査など、技術進歩と変革を促す様々なコンテストを行ってきた。これまでのコンテストではXPRIZEが目標を設定し、その達成を参加チームが競っていたが、AI XPRIZEでは参加チームがそれぞれAI-ヒューマン・コラボレーションにおいて挑戦する内容を定義できる。参加チームはまずIBMのカンファレンス「World of Watson」において中間賞(賞金50万ドル)を争い、絞り込まれた上位3チームがファイナリストとしてTED2020のステージでプレゼンテーションを行う。優勝賞金は450万ドル。
2016年02月18日●人工知能の進化で人間に残される仕事今、ITの世界で最もホットなバズワードである人工知能(AI)。人工知能がやがてビジネスの世界にも影響を与えるのは免れないことは、前回紹介した。果たして人工知能は今後どのように進化を遂げ、ビジネスパーソンはそれに対してどう対処していけばいいのか。人工知能開発のエキスパートであるセバスチャン・スラン氏に、人工知能時代のビジネスシーンの将来像を伺ってみた。○人工知能が仕事を進化させるセバスチャン・スラン氏は、米Google社で先進的技術の開発部門である「Google X」を創設し、自動運転車やGoogle Glassの開発を率いた人物だ。スラン氏はGoogle Xで自動運転車の開発を進めるにあたって人工知能(機械学習)を採用し、目覚ましい成果を挙げた。現在は科学技術・工学・数学などの分野の教育を提供する「Udacity」のCEOを務め、教育分野に力を入れている。今回、人工知能を搭載したERPシステム「HUE」の発表に合わせて来日。HUEのデモンストレーションを見たスラン氏は、同システムで仕事の効率が高まることは認めつつも、同時に「ある分野では仕事が減る」とも警告する。「あと数年すると、大企業の社長が会計士に『今後はコンピュータに会計をまかせるよ』という時代がくるかもしれない」(以下、発言はスラン氏)そう言って、今後、数年~数十年で消滅する業種をリストアップして見せた。この中には秘書やパイロット、会計士、弁護士といった、現在では花形といってもいい知的職業も多く含まれているが、スラン氏によればこういった職業の多くは反復作業をしているに過ぎず、クリエイティブな作業ではないのだという。確かに、パイロットならすでに自動パイロット装置があり、飛行場によっては自動装置の利用を義務付けているところもある。会計士や税理士は本質的にはルーチンワークだし、過去の判例と突き合わせるといった作業においては、人間よりも人工知能のほうがはるかに素早く正確だ(米国ではすでに、特定ジャンルに特化した人工知能を導入した法律事務所もある)。複雑な事件でもなければ、若手の弁護士で足りるような仕事は人工知能がやればいい、というわけだ。スラン氏は技術の進歩に伴って一定の職業がなくなり、機械に置き換えられるのは、避けられないことだという。グーテンベルグの印刷機によって写筆家が職を失い、産業革命によって多くの手工業が機械工業に取って代わられたように、現代でも技術の進歩によって仕事自体が変わらざるをえない。しかも、その変革は想像しているよりもずっと早くやってくるというのだ。●人工知能が生み出す変革○人間はより高度な仕事へシフトするスラン氏の語るように、人工知能が90%もの仕事を肩代わりしてくれるのであれば、人間は残り10%にもっと力を注げるようになる。過去に調べ物といえば辞書や書籍をめくるしかなかったものが、今は検索エンジンにまかせれば、たいていの情報は百科事典よりも詳しく、瞬時に調べられる。調べ物における検索エンジンの役割を、さまざまな業務で担うのが人工知能というわけだ。それでは、具体的にどの程度の仕事が機械に取って代わられるのだろうか? ホワイトカラーについては、スラン氏は「反復作業はすべて」と断言する。報告書や請求書の作成といった作業はまさに、反復作業の典型例だ。一方で「弁護士の仕事も90%はなくなるでしょうが、10%は置き換えられないと思います」ともいう。要は、誰でもこなせる仕事(Low IQな仕事)は人工知能がとって替わり、人工知能がカバーできない高度な知識や技能を要する仕事をこなせる人だけが生き延びられるということだ。また、自分の職種が前述のリストに入っていないといって安心してはいられない。スラン氏は「なんでもいいから職業を1つ、人工知能に1年間学習させてみれば、おそらく人間よりも効率的にその仕事をこなせるようになるでしょう」とも言っているのだ。確かに、一部の創造的な業種を除けば、仕事の大半はルーチンワークだったり、過去の事例から類推できることが多く、これらは人工知能がカバーできる範囲だ。このままいけば、やがて現在の人間の仕事の多くは人工知能に取って代わられてしまうのは避けられないようだ。○人工知能が新たな身分制を生み出す?一方で懸念もある。企業内の人員はやがて、方針を決める一部の人間と、会社のオペレーションに必要な最小限の人間、そして大量の人工知能だけで賄われることになり、人工知能を使える人間と、人工知能に使われる人間の2種類に大きく分けられてしまうのではないか。いわば、新たな身分制の登場だ。それによって職を失う人もいるかもしれない。しかしスラン氏は、憂慮ばかりしなくてもいい、とフォローする。「たとえば農業はテクノロジーが関与したことで、400年前と比べて、98%の仕事がなくなりました。鍬や鋤を使って手作業で行っていたものが、機械に置き換えられたのです。しかし、テクノロジーがあることで、パイロットやプログラマー、サウンドエキスパートといった新しい職種が生まれました。だから無職になるわけではありませんし、人はそもそも、働きたい生き物だと思います。きっとやることは見つかります」。確かに、コンピュータが登場する前は職業プログラマーや、果てはプロゲーマーといった職種が登場すると想像した人はいなかっただろう。たとえば人工知能を搭載したロボットが警備員の仕事を奪うかもしれないが、同時に警備ロボットのメンテナンスという新たな仕事が現れるはず。勤労意欲のある人は、決して悲観するばかりでなくともいいというわけだ。●賢くなる人工知能にどう対応するか○変革に備えるために学び続ける今後、ほとんどの業種で人工知能が関わってくるのは、もう避けられない。人工知能に仕事を奪われる可能性を前提に、ビジネスマンはどのように備えればいいのだろうか。スラン氏は新しい時代に備えるにあたり、教育の重要性について指摘する。ビジネスマンも、人工知能の登場に備えて、新たなテクノロジーか、あらたな職種について学ばねばならないというわけだ。スラン氏自身、Udacityにおいて、社会人への教育に力を入れている。「教育というのは、人生のある一時受けるものだという考えをやめなければなりません。生涯教育です。人生のお供であり、一生やり続けるものです」。耳の痛いことだが、新たな時代に向けて学ぶ意欲がなければ、適応していけないという指摘は確かだろう。Udacityでは特にシリコンバレーで必要とされる職種に必要とされる、カリキュラムを無料で受講できる仕組みを用意しているが、これはすべての人が受けられる内容ではない。どんな職種であれ、自分自身のレベルを客観的に判断し、冷静に自分が学ぶべき内容を把握することが大切だ。「時々辛いと思うのは、労働者の多くが、新しいことを何も学びたくないということです。学ぶということが素晴らしいということを、そうした人たちに伝えたいですね」とスラン氏が語るように、現状の仕事をこなす忙しさのあまり、新たなことを学ぶ努力は怠りがちだ。しかし、今後、仕事のスタイルがこれまでと大きく変わる時代が到来するにあたり、学ぶ努力を怠らなかった者が生き延びられる時代が来るだろう。常にアンテナを広く張り、新しいものを積極的に取り入れていく姿勢こそが、人間が人工知能と共存していくために求められる資質ということになるだろう。
2016年02月09日デルはこのほど、Cylanceの人工知能を活用したセキュリティ技術を採用したエンドポイント向けマルウェア対策スイート「Dell Data Protection | Endpoint Security Suite Enterprise」と、法人向けPC用の「POST(Power On Self Test)ブート BIOS 検証ソリューション」を発表した。Cylanceは、人工知能を活用したセキュリティ技術を開発しており、APT攻撃やゼロデイ攻撃で使用されるマルウェア、スピアフィッシング、ランサムウェアに対する防御機能を持つ。同社の技術を採用したエンドポイント向けのセキュリティ・ソリューションは「Endpoint Security Suite Enterprise」が初めてだという。Cylanceの検証では、99%のマルウェアとAPT攻撃を組織できるとしている。同ソリューションでは、ウイルス定義ファイルの定期的な更新が不要であるほか、管理者が単一のコンソールですべてのコンポーネントを管理できるため、エンドポイントセキュリティの管理に必要となる時間やリソースが削減できるという。一方のPOST(Power On Self Test)ブート BIOS 検証ソリューションでは、クラウド環境下で、個別のBIOSイメージをデルのBIOSラボの公式基準値と比較検証し、ブートイメージに脅威が入り込んでいないかを検知できる。このBIOS検証機能は、デルが提供する第6世代インテル Core プロセッサーを搭載した法人向けPCで利用できる。
2016年02月09日人工知能を活用することで英語教育を可能としたロボット「Musio」の開発を手がけるAKAは2月5日、成基およびGLOBAL VISIONの2社と 「教育効果の実証実験並びに教材開発実施に関する協力覚書(MOU:Memorandum of Understanding)」を締結したと発表した。今回のMOUは、2016年6月に予定しているMusioの正式販売前に成基およびGLOBAL VISIONが日本で蓄積してきた英語教育に関する知見やノウハウをもとに、 Musioを日本の英語教育向けに最適化していくことを目指したもの。具体的には、 成基が運営する英語学童教室「GKC(グローバルキッズ倶楽部)」ならびに個別指導塾「ゴールフリー」などにおけるMusioのパイロット導入および実証実験を通じて、 Musioを活用したより効果的な学習方法を開発するとしている。 また GLOBAL VISIONは、 実証実験で得られた知見をもとにAKAと共に英語学習コンテンツの開発を行い、同社のネットワークを通してMusioを公的・私的教育的機関へ販売する予定としている。なお、MusioはすでにAKAのWebサイトにて予約受付を開始している。
2016年02月06日Hameeは2月4日、ECマーケットでの未来の働き方を実現する次世代ソリューションの開発を目的として、人工知能・機械学習を研究する「ネクストエンジンAIラボ」を設立したと発表した。同社がこれまで提供してきた「ネクストエンジン」は、大手ショッピングモールや自社で運営するECサイトの出品・注文・在庫をまとめて管理することができるクラウドサービス。今後も商取引の電子化が進展すると予想されるなか、EC運営業務は、マーケティング、広告効果検証、マーチャンダイジング、商品開発、カスタマーサービス、デザイン、写真撮影、商品登録、受注、発注、在庫管理、物流、経理、モール出品、カート構築など多岐にわたり、さらにオンラインモールなどの販売プラットフォーム、商品カテゴリ、ECを支えるソリューションごとにフォーマットの統一がされておらず、アナログで行う作業が多いことから、生産性が高くないといった課題があるという。同社は、このような現状をふまえ、EC運営者が本来やるべき"ビジネスの成長"だけに専念できる世界を実現すべく、新たな領域の研究を行う専門組織を設立するに至ったとしている。また、「ネクストエンジンAIラボ」設立に先立ち、AIや機械学習、ビッグデータ、オフィス自動化関連の研究者、エンジニア、Eコマースの専門家、協力事業者、大学などの研究機関の募集を開始するという。
2016年02月04日2月3日(現地時間)、MicrosoftはAI(人工知能)を使って入力予測を行うキーボードアプリケーション「SwiftKey」の開発元を買収したことを発表した。Microsoftは買収額を明らかにしていない。同社は今後数カ月内にSwiftKeyの技術をMicrosoft Researchが開発したWindows Phone向けキーボード「Word Flow」と統合する。SwiftKeyはユーザーの入力スタイルを学習しながら、その使用頻度の高い単語候補を提示するスタイルのキーボードアプリケーション。Android版は2010年からリリースし、iOS版は2014年から提供が始まった。既にMicrosoft Researchが開発したWord FlowをWindows Phone用にリリースし、現在iOS版のベータテストが行われている。Microsoft Technology and Research担当EVPのHarry Shum氏は、「今回の買収は、すべてのプラットフォームへサービスを提供するというMicrosoftの取り組みを示すものだ」と述べた。なお、今回の買収により、SwiftKey CTOであるDr. Ben Medlock氏とCEOのJon Reynolds氏はMicrosoftに参加。同社はAI分野やスマートフォン事業の強化を実現したこととなる。阿久津良和(Cactus)
2016年02月04日ミライセルフは2月2日、クイズとAIを用いて社員の価値観を元に業務への適性判定・分析を行うサービス「mitsucari(ミツカリ)」の提供を開始した。クイズは、米カリフォルニア大学バークレー校で10年以上研究されている社会心理学と100名以上を対象としたインタビューに基づいて作成しており、従業員の"価値観"を分析する。例えば「直感と確実性のどちらが大切か」「レストランの選び方」といった質問からキャリア指向性や個性を判断する。クイズは全48問が用意され、10分程度で回答できるものになる。クイズの回答データは、社員の人柄や価値観を14項目7段階に、感受性と指向性を5段階でデータ化され、その後、人工知能を用いて価値観などと部署の文化の相関関係を分析して社員の適性を判定する。人工知能の機械学習は、顧客企業に応じて重視する価値観や傾向が異なるため、それぞれに応じて適性判定を行い、精度向上にも役立てる。会社全体や部署に対する適正判定だけでなく、最も似た価値観を持つ社員の名前も表示する。これにより、経営者や人事、上層部の直感で行われていた採用・人事配属が「データ分析による客観的なものに変わる」としている。サービスは、社員1~20名規模向け「スタートアッププラン」と21名~100名規模向け「レギュラープラン」が用意されており、101名以上は個別見積もり。スタートアッププランは月額5000円、レギュラープランは月額2万円(いずれも税別)となっている。
2016年02月03日