●ディープラーニングが生まれるまで現在、IT業界のみならず、さまざまな産業界で最もホットな話題のひとつである「人工知能(AI)」。かつてSFの夢物語だった「考える機械」が、今、さまざまな産業界において、急速なピッチで現実のものになろうとしている。人工知能の進化の裏には、技術面での進化が欠かせないものだった。○人工知能のレベルを引き上げた「ディープラーニング」人工知能というと、映画「2001年宇宙の旅」の「HAL」のように人類に反乱を起こすちょっと危険なコンピュータ、あるいは「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のように人間臭い感情を持ったロボットのことを思い出す人が多いのではないだろうか。現実の人工知能はこういったレベルには達しておらず、画像認識や音声認識など、限られた処理において、「人間が正確に条件を入力しなくても、自分で推測して答えを導き出す」という程度のものにすぎない。しかし、技術の進歩に伴い、その精度と速度は人間を上回るものになろうとしている。たとえば、画像の中に何が写り込んでいるかを見つけ出す画像認識については、2011年ごろまでは「機械学習」という手法で鍛えられた人工知能は長年、80%程度の正答率を超えることができなかった。しかし2012年に新しい処理方法「ディープラーニング」を使って鍛え上げた人工知能が国際的な画像認識コンテスト「ILSVRC」で前年を大きく下回る誤認識率となった。人間の誤認識率は約5%とされており、2015年にはついに人間を上回る精度を実現している。機械に、人間のように「自分で判断し、自分で答えを見つけ出す」機能を実現させようという試みは、実は1940年代にはスタートしている。「ニューラルネットワーク」という人間の脳の神経伝達を模倣したモデルのうち、最初期の手法である「パーセプトロン」が、最初の学習機能を持った人工知能として登場した。しかし、このパーセプトロンでは解決できない問題が生じてしまった。やがて、「隠れ層」と呼ばれるものを加えた新たなモデルが登場することが問題解決の糸口となったが、十分な精度をもたらすための莫大なデータと、それを現実的な速度で処理する処理速度がなかったため、2000年代にいたるまで人工知能の進化は限定的なものだった。2000年代に入りインターネットの普及で、学習に利用できる莫大なデータが容易に入手できるようになり、一気にニューラルネットワークを使った研究が進むようになる。特に数段階以上と深い階層を用いるニューラルネットワークを使った学習を「ディープラーニング」(深層学習)と呼ぶようになり、これがそれまでの限定的な浅い階層しか持たない人工知能との決定的な差を生むことになった。●ディープラーニングの利点○ディープラーニングの何がすごいのかディープラーニングは、それまでの機械学習を発展させたものだ。機械学習では、コンピュータに入力するデータの中から、解析に役立ちそうな特徴を抽出するための仕組みに人の手が介在した。ところがディープラーニングでは、こうした特徴抽出すらも処理の中に含まれており、特徴の選択も機械が学習する。人間は最小限の下処理をしたデータを人工知能に与えてやるだけでいい。たとえば10万枚の写真の中から「猫」の映った画像だけを探す場合、従来の手段では猫っぽい特徴のあるデータをあらかじめいくつか用意しておき、その部分を指定しておくと、機械がその特徴に似た部分を探してくれるというものだった。これがディープラーニングだと、与えられた写真を精査し、「これは猫っぽいのではないか」という答えを機械が人間に示してくる。それに対して人間が評価を与えると、その評価をもとに再度データを調べ直す、という手法で精度が徐々に高まっていく。まるで「これは? これは?」と親に聞いてくる子供が、さまざまなものを覚えていくような動きだ。ディープラーニングは画像認識のほか、自然言語解析や、いわゆるビッグデータのような莫大なデータの解析を得意としている。人間に並び、あるいは上回る精度で有意なデータを見出すことができるディープラーニングから得られる推測データは、人間が参考にするに十分な信頼性を持っている、あるいは人間の感性を超えた解答をもたらす可能性があるのだ。たとえば米IBM社の人工知能「Watson」は、数十万のレシピを学習した結果、これまでになかった新しいレシピを「提案」するに至っている。チェスや将棋の世界でも、ディープラーニングで過去の打ち筋を研究した対戦プログラムが、これまでの定石とは全く異なる新しい打ち筋を「発明」している。つまり、人工知能は人間と並ぶ、あるいは超える「知性」を持って、これまでの人類の知能が発見できなかった新しい知見にたどり着くことができる可能性を持っているわけだ。事実、製薬分野などでこれまでに見つかっていない新薬を人工知能が「発明」しているケースもある。これこそがディープラーニングがもたらした人工知能のブレイクスルーそのものだと言っていいだろう。●人工知能の発達を決める3つの要素○ディープラーニングを支える2つの柱ディープラーニングには、ニューラルネットワークを鍛えるための莫大な量のデータと、それを処理するための超高速なコンピュータの2つが必要だ。ディープラーニングにたどり着くまでに、十分な精度をもたらすための莫大なデータと、それを現実的な速度で処理する処理速度がなかったため、2000年代にいたるまで人工知能の進化は限定的だったと記したが、そのことは、最近の研究事例を見てもわかる。たとえば、2012年にGoogleが猫の概念をディープラーニングによって抽出するのに、200×200ピクセルのYouTube動画から切り出した画像を1000万枚用意し、1000台のコンピュータ(16000CPUコア)を使ってようやく達成できたものだ。しかも時間は1週間かかっている。幸い、大量のデータは、今ならインターネットにいくらでもデータが転がっている。企業などであれば、行動データやいわゆるビッグデータも、人工知能を鍛える上でもってこいの「餌」なわけだ。もう1つの超高速なコンピュータについても、毎年の技術革新のおかげで、スーパーコンピュータクラスの超高速処理が可能なコンピュータを、個人の研究者がなんとか揃えられるようなレベルにまで価格が下がってきている。ただし、ここでイメージすべきは、超高性能CPUではない。求められるのは、GPUの性能となる。そして、GPUの開発環境や実績などを見ていくと、ディープラーニングの発達は米NVIDIAが握っているとも言えるのだ。NVIDIA自身も、今ではこの人工知能の分野に力を入れている。ではなぜGPUの発達が求められるのか、NVIDIAがこの分野で取り組んでいるのは、どんなことか。次回はこの点についてみていこう。
2016年02月02日「人工知能(AI:Artificial Intelligence)」は、1950年代にはパーセプトロンが考案されてブームになったが、できることが限定されていることから下火になった。その後も1980年代にはエキスパートシステムのブームが起こり、わが国では第5世代プロジェクトが推進された。しかし、エキスパートシステムは開発が難しく、適用性が限定されているという問題があり再び下火となった。第3次のブームは、IBMのDeep Blueが人間のチェスチャンピオンを破った1997年ころからである。その後、2005年にはDARPAのロボットカーチャレンジで、スタンフォード大学の車が砂漠のコースの無人走行に成功した。これらは、ある意味で、特定の目的のために作られた人工知能システムであったが、2011年にはIBMのWatsonがJeopardy!で人間のチャンピオンを破り、広い範囲の問題に対する人工知能の可能性を示した。2012年には、画像認識の分野でトロント大学のHinton教授のグループが素晴らしい成績を上げて、「ディープラーニング」が注目されることになった。ディープラーニングとはいかなるものかを、2015年に開催された「NVIDIA GTC」におけるGoogleのJeff Dean氏の基調講演とそのスライドを基にして説明する。○ディープラーニングとはどのようなシステムかディープラーニングのシステムは、人間の脳についての知識を利用して階層的に認識を行うシステムである。次の図の正方形の中に描かれている●や○は神経細胞のような働きをする。猫の画像を第1層の神経細胞に入力して処理を行い、その出力を第2層の神経細胞に入力して処理するという多層構造になっており、脳がそれぞれの場所でだんだんと高次の抽象性を持った情報を抽出するのと似たような処理を行い、後の層になるほど抽象度の高い情報を抽出する。次の図の上側のニューロンは、下のx1、x2、x3と書かれたニューロンからの信号にそれぞれ、w1、w2、w3という重みを掛けて、それらの総和を取り、総和を非線形の関数(ここでは、正の入力はそのままで、負の入力は0にするmax(0,x))を通して出力を作る。また、単に総和だけではなく、定数のバイアスを加えるというケースも多い。重みは正の値とは限らず、負の値を持つ場合もある。ここでは図を書く都合で入力は3つしか描かれていないが、実際にはもっと多数の入力を持ったニューロンが使われる。また、max poolingと呼ぶ、小領域のデータの最大値を選択する演算が追加されることが多い。ここで最初の層のxiは入力画像のピクセルで、単純な数値ではなく、RGBの値などを持っている。2層目以降の出力は、ネットワークの設計に依存し、もっと複雑な情報を持つ場合が多いが、最終出力では0~1の範囲の1つの数値という場合もある。そして、このようなニューロンからなる層を重ねたニューラルネットワークを構成する。通常、この図のように、一番下の層が入力層で、一番上の層が出力層として描かれる。そして、中間の層は隠れ層と呼ばれる。この図ではニューロンの数が少ないが、実際には各層のニューロン数はもっと多いし、層数も多いネットワークが使われる。このニューラルネットワークが、猫の画像を見て、猫と認識できるかどうかは、学習に掛かっている。最初は、まったく認識出来ないのであるが、猫の画像の場合は、出力層が猫と出力すれば正解と教え、猫でない画像の場合に猫と出力すれば誤りと教えてやる。なお、猫であるかどうかだけを認識するシステムなら、出力は1つで猫らしさを示す値だけを出力すれば良い。手書きの郵便番号認識システムでは出力は10本あり、それぞれの出力は0~9の数字らしさを示す数値を出力する。学習は、例えば、次の図でxは入力画像で、yは猫らしさの正解の値である。1つの画像を選び、xを入力して、ネットワークのニューロンの出力を順に計算して出力を得る。この値が正しくない場合は、出力が正解yに近づくよう重みを変更する。これを多数の猫の画像を使って行う。一般的に猫を認識するには、いろいろな種類の猫のいろいろな姿勢で、背景もいろいろな種類の画像を用いて学習させる必要がある。インターネットから多数の画像が集められるようになったことが、ディープラーニングの認識精度が向上した大きな理由の1つである。また、多数の画像で学習を行うので、計算量は膨大であるが、コンピュータが速くなり、最近ではGPUを使って、さらに高速に学習を行えるようになったことが貢献している。
2016年02月02日●Pepperの魅力は集客力のみか人のように動き、仕事をこなすロボットがいる職場。数年前までは夢物語だったが、人工知能搭載ロボットのPepperはそれをすでに実現しつつある。今では企業や量販店などの受付・応対がメインで、実行できることは限られているが、今後は様々な分野で活躍すると見られている。Pepperはどんなシーンに入り込んでいくのか。○Pepperはすでに500社以上に導入Pepperが企業に導入されたのは2014年末のこと。まだわずか1年強の時間しかたっていないが、すでに500社以上に導入されている。その主な活用は、応対・接客だ。ネスレ日本は、集客効果を期待して、コーヒーメーカーの販売スタッフとしてPepperを活用。販売店に配置して、Pepperに商品紹介を行わせたところ、売上は15%アップしたという。みずほ銀行も集客効果、窓口への誘導などを期待し、Pepperを導入。来客を応対し、金融商品の提案を行うなど、応対した客の10%以上をカウンターに送客し、成果を挙げた。こうした事例は増えており、Pepperがビジネスシーンで活躍する姿を見聞きする機会が増えた。しかし、今現状でPepperに期待されているのは、物珍しさによる"集客力"だ。その位置づけはまだ"客寄せパンダ"という域からは出ていない。そんなPepperに求められているのが新たな力。それを付加するのが、アプリケーションであり、新たなビジネスシーンに入り込む力になりうる。その可能性を見える形にしたのが、27日、28日の2日間開催されたイベント「Pepper World 2016」である。●医療、介護、教育分野に入り込むPepper○Pepperが入り込むシーン「Pepper World 2016」で示されたPepperの利用シーン。そこから見えてきたのは、医療、介護、教育分野への利用の広がりだった。医療分野では、GE HealthcareがMRI検査でのPepper活用法を紹介する。同社は、Pepperに説明能力と"和ませ力"に期待する。MRIは精密検査であり、検査の注意事項が多いため、実施前に緊張がとけない人も多い。そこで、Pepperに手順や注意事項の説明役を担わせる。これにより、注意事項の説明の漏れがなくなる。愛嬌のある動作をすることで、患者を和ませることも可能だ。同社の説明員によると「まだ実証実験を行っていないので、何ともいえないが、Pepperには、緊張感を和らげる効果を期待したい」と話す。介護分野でも医療同様の効果が期待される。エクシングは介護施設向けレクリエーションアプリを開発。体操、クイズ、カラオケといったコンテンツでPepperと遊べるようになっている。実際に高齢者が使ってみると、Pepperを「孫みたいに思った」というケースもあったという。教育分野では、英会話能力をPepperがアップしてくれるかもしれない。G-angleは英会話アプリを開発。Pepperと会話をすることで英会話能力を高めるというものだ。英会話教室などで外国人を相手に練習するが、そこにあるのが心理の障壁。「間違えたら恥ずかしい」と及び腰になりがちな気持ちをPepperが和らげる。Pepperならあくまでロボットであるということで恥ずかしさを感じることなく話せるようになる。●ソフトバンクが目指す近未来○ソフトバンクが目指すは「接客データの見える化」今ではPepperのメーン業務となっている接客・応対については、ソフトバンクが一歩踏み込んだ取り組みを行う。それは、Pepperが接客から、契約までをこなす期間限定の携帯ショップである。契約の最終段階では、人の手が介在するというが、業務の大多数をPepperだけでこなしていく方針だ。もしそれが可能ならば、接客・応対がロボットでこなせる証左となり、小売分野におけるインパクトは大きなものになるだろう。さらに同社は、応対・接客の一歩先の未来も描く。Pepper内蔵のカメラやセンサーを介して、接客・応対相手の年齢や男性女性などといった性別を判別して、クラウドに蓄積、マーケティング分野に生かしていくというものだ。企業における受付・応対では、Pepperが受付として来客の顔認識を行ない、来客がどこの会社の誰か、自社の誰に会いに来たのかを瞬時に判別する。また、家電量販店では、顧客が過去に何を購入したのかを認識、それに応じて会話をする。個人情報の取扱いをどうするか、という問題もあるが、いかにも実現しそうなシーンである。○Pepperは飛躍できるかPepper World 2016で示された様々な想定利用シーン。一連の取り組みに共通するのは、身振り、手振り、間の取り方が人間臭くありながら、完全な人間ではないというPepperの特徴を生かしたところだ。人の形に近いヒューマノイドは、人の関心を高め、人に親しみを湧かせる。その特性にマッチするビジネスシーンに、Pepperは馴染み、入り込んで行きそうに思われる。そこに物珍しさが加わり、集客力を期待して、応対・接客分野での活用が進んできたのは当然の流れともいえるかもしれない。逆にいえば、利用シーンの広がりは感じられつつも、特性そのものは大きく変わっていないとも言えそうだ。Pepperにはできることが限られており、そこはまだ仕方がないという見方もある。一般販売用のPepperの知能は、人間に当てはめた場合、まだ2歳児程度とされ、機能的にもできることは限られている。Pepperが世に出てからまだ1年ちょっと。Pepperが大きく飛躍するためにも、新たな機能の付加、新たな価値の創出に期待したい。
2016年01月29日アトラエは1月27日、人工知能を搭載した完全審査制のビジネスマッチングアプリ「yenta(イェンタ)」のiOSアプリを公開した。同アプリは、シンプルなユーザーインタフェースで注目を集めた異性とのマッチングアプリ「Tinder」の"ビジネス版"とうたっており、簡易なプロフィール登録とスワイプ操作のみで「会いたいビジネスマンに会える」としている。アプリでは、プロフィール情報やソーシャルデータ、行動履歴を人工知能が解析して、利用者が興味を持つと予測されるビジネスプロフィールを最大10人まで1度にレコメンドされる(昼12時に配信)。TinderライクなUIでスワイプ操作を行うことで、興味がある人物をピックアップする。20時になると、お互いに「興味あり」とした人物同士がマッチングされるほか、利用者を「興味あり」とした人物のレコメンド結果も通知される。マッチング以外にもFacebook上の友達で、「イベントで会っただけ」「旧来の知人」など、友達でも疎遠な関係の人物と関係性を深めるための機能も備えているという。同社によると、昨年12月よりクローズドβテストを行っており、350名の参加者で3000件のマッチングが行われている。
2016年01月27日アスタミューゼは1月26日、人工知能市場における研究テーマ別の科研費獲得ランキングを発表した。科研費(科学研究費助成事業)は、人文・社会科学から自然科学まですべての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うもの。平成28年度助成額は前年度より25億円増の2343億円になる見通しとなっている。同社は今回、有望成長市場のうちのひとつであり、2006年以降で総額約120億円の科研費が交付されている「人工知能(知的エージェント・知能システム)」市場における研究テーマ別の科研費獲得ランキングを発表した。結果は下記のとおり。第1位は、4億9933万円を獲得した東京大学の「高度言語理解のための意味・知識処理の基盤技術に関する研究」。巨大な文書集合を使った機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目指している。2位は京都大学の「記号過程を内包した動的適応システムの設計論」で2億7703万円。3位は名古屋大学の「ノンコーディングRNAによる発現統御ネットワークの解明に基づくがんの個性の描出」で2億3725万円となっている。
2016年01月26日●人工知能が奪う業種「人工知能」という単語について、どう感じられるだろうか。多分にSFな響きを伴うIT分野のキーワードだが、実はすでに、ITとは直接関係のないビジネスシーンにおいても関係の深いものになりつつある。人工知能によってビジネスシーンはどのように変わっていくのだろうか。これからの人工知能とビジネスの関わり方について考えてみよう。○人工知能によって多くの業種が必要なくなる?人工知能は以前から研究が進められていたが、話題を集めるようになったのは2012年。国際的な画像認識コンテストである「ILSVRC」(ImageNet Large Scale Visual Recognition Contest)において、「ディープラーニング」と呼ばれる手法が従来型の機械学習を大幅に上回った。このディープラーニングが画像認識だけでなく、音声認識や自然言語処理といった分野においても有効であることがわかり、国際的な研究機関や大企業が開発に続々と参入し、まさに日進月歩の勢いで進化が進んでいる。すでに画像認識においては、人工知能が人間の認識率を上回るまでになっているのだ。技術が発展することにより、従来人間が処理していた作業を人工知能が肩代わりできる分野が増えている。人工知能は人間よりも処理速度が速く、数万件のデータを瞬く間に処理できるだけでなく、疲れ知らずだ。○英研究者の論文が話題に技術が進歩するにつれて、人間が仕事を奪われるという恐れもある。たとえば近年話題になっている自動運転車も一種の人工知能と呼べるものだが、人工知能は人間のようにアクセルとブレーキを踏み間違えたり、居眠り運転するということもない。お釣りをごまかすこともないのだから、タクシードライバーとしては最適だろう。人工知能の進化を前提に、英オックスフォード大学は702種類もの業種を詳細に検討し、約40種の職業が、10~20年の間に90%以上の確率でコンピュータにとってかわられるという衝撃的な論文を発表している。単純作業はともかく、事務や専門知識の必要そうな審査・調査なども含まれているのは驚かれたのではないだろうか。上記のリストには、現在の技術では実現が難しいものも含まれているが、人工知能の進化の速度を考えれば、数年内に置き換わられても不思議ではないというわけだ。●HUEの例から読み解く人工知能の力○人工知能を搭載した初のERP人工知能のビジネスシーンへの進出は、すでに始まっている。たとえば金融業界で株の売買に使われている売買プログラムも一種の人工知能だ。画像認識等の技術についても、実用化されて業務に利用しているケースも珍しくはなくなっている。そして、もっと身近なビジネスシーンでの人工知能利用の一例として、ワークスアプリケーションズの「HUE」が登場した。HUEは、企業内におけるヒト・モノ・カネの動きの管理を統合し、情報化によって経営を支援するためのシステム「ERP」(Enterprise Resource Planning)の一種だ。一般ユーザーから見ると、顧客管理や人材管理、文書管理システム、管理会計、プロジェクト管理など、さまざまな機能が統合された社内システムということになる。HUEのユニークな点は、機械学習型の人工知能を搭載していることと、ビッグデータの解析に対応している点だ。どちらも最近のIT業界では好んで使われるキーワードだが、これをERPに持ち込んだのはHUEが始めてだといえる。○人工知能で何ができるか具体的には何ができるのか。まず人工知能についていえば、書類作成の手間が大幅に省力化できるようになる。HUEでは、ユーザーが書類を作成する際に、項目や請求する相手を過去の入力データから検索し、相手や項目に応じて、たとえば単価や発送先、個数といったデータも推測して入力してくれる。これだけなら単に入力履歴から候補を出しているだけのようにも見えるが、HUEの長所は、入力欄や順番を問わない点にある。例えば入力欄の順番を問わずに「マイナビ 請求書 原稿料」と入力すれば、人工知能がどの単語がどの項目にふさわしいかを判断して、適切な部分に配置してくれるのだ。あとは必要に応じて、原稿の単価や担当部署、担当編集者といったデータを追加することで細部が修正されていく。ワークスアプリケーションズによれば「一般的な作表作業の90%近くを肩代わりできる」というが、デモを見る限り非常に素早く作表でき、また間違いも少ないことから、書類チェックや再提出といったエラー処理まで含めれば、確かに90%短縮というのも現実的な数値に思えてくる。ビジネスマンの1日の仕事を振り返ってみると、実際の取引や会議などの間に、書類作成の時間がかなり占めているのではないだろうか。1日に1~2時間程度は書類の作成に割かれているかもしれない。こうした時間を人工知能が代わりに作業してくれて、そのぶんをクリエイティブな活動に費やせるというのが、HUEの目指している作業環境だ。●人工知能はビジネスシーンの何を変えるかビッグデータ解析に関して言えば、企業の様々な業務ログを解析し、常に情報を更新してくれる。前述の人工知能もこうしたビッグデータ解析によって賢くなっていくし、システム中のメッセージやメールの発言を定期的に収集し、そこから人間関係を推測して人事に活用するといったことも可能だという。管理職から見れば人事査定の一助にもなるわけで、業務効率化という観点からは心強い。従来のエンタープライズ向けシステムは、何をするにもシステム側の都合にユーザーが合わせるといった感じで、ユーザビリティ(使い勝手)の面は顧みられていなかった。一方、GoogleやAmazonといったコンシューマ向けシステムでは、過去の行動からおすすめの製品を紹介したり、メールを解析して不要なメールは自動的にゴミ箱に捨てるといった快適性をもたらしてくれる。HUEでは人工知能を使ってエンタープライズ向けシステムを、コンシューマ向けサービスの水準にまで高めようとしている。○人工知能がビジネスシーンからなくすものさて、人工知能がビジネスシーンから何を省くか。HUEを事例として取り上げたが、そこからは、単純作業がなくなることがわかる。かつてワープロやパソコンが会社のデスクに登場したときのように、人工知能がビジネスの現場に入り込んでくることは、もはや避けられない。人工知能は、ビジネスを効率的なものとし、ビジネスパーソンが単純作業から開放される世界はすぐそこまで来ている。英オックスフォード大学の論文にもあるように、人工知能が特定の仕事を肩代わりするかもしれないが、どの業種においても、単純作業は減っていく。それによって生じた余裕は、よりクリエイティビティの高い作業に向けられていく。人工知能が本格的に職場で活用され始めたときに、我々はどうすべきか。次稿では、人工知能と共存する時代のビジネスパーソンのあり方について考えてみたい。
2016年01月25日ココペリインキュベートは1月25日、同社が提供するクラウド経営支援ツール「SHARES」を、マネーフォワードが提供するクラウド型請求書作成ソフト「MFクラウド請求書」と連携し、不良債権の発生を通知する人工知能サービスを提供開始すると発表した。この連携により、「不良債権の発見」から「弁護士、司法書士への相談、解決」までをワンストップでサポートすることが可能になるとしている。会員企業は「SHARES」内で「MFクラウド請求書」との連携設定をすることでサービスが利用可能となり、「MFクラウド請求書」に登録された請求書データと、「SHARES」に搭載されている人工知能を組み合わせることで、不良債権が発生したタイミングでメール通知が送信される仕組みとなっている。債権回収業務は、「SHARES」に登録されている弁護士、司法書士に依頼することが可能だ。
2016年01月25日freeeは1月19日、ココペリインキュベートから開発者向けAPI「freee API」を利用した経営分析ツール「SHARES AI」をリリースすることを発表。合わせて、「freee API」の活用加速のための開発者向けAPI提供プログラム「freee Developers Community」を本格始動させる。「SHARES AI」は、弁護士や公認会計士といった専門家に、必要な時だけスポットで依頼ができるクラウド経営支援ツール「SHARES」内で提供するプロダクト。「freee API」を利用し、クラウド会計ソフトfreeeと人工知能によるデータ分析ツール「SHARES AI」が連携。これにより、freeeの会計データを基に人工知能による経営の分析と課題発見が可能になるという。また、freeeの会計データを使用して、不良債権が発生した時に通知する機能を備えている。「freee Developers Community」では、APIの公開に加え、開発リクエストやサポート窓口を開始することで、さまざまなユーザーニーズに応えるアプリケーションの開発を支援するとのこと。具体的には、freeeからの情報配信、ベータ版APIを先行公開、APIリリースノートの配信や、メンテナス・障害情報の配信、開発・追加リクエスト、開発者向け特別サポート窓口の公開などを行う。
2016年01月21日サイバーエージェントのアド・テクノロジー分野におけるサービスの開発を行うアドテクスタジオは1月19日、アド・テクノロジー事業の拡大と、より最適な広告配信技術の研究・開発を目的として、人工知能・機械学習を研究する「AI Lab(エーアイ ラボ)」を設立したと発表した。同ラボは、2016年2月よりアドバイザーとして東京大学の佐藤一誠氏を招聘し、広範囲な人工知能・機械学習技術の応用を進めるという。佐藤氏はデータマイニング・機械学習分野の代表的な国際カンファレンスという「KDD」「ICML」「NIPS」などに恒常的に登壇するという、AI分野の若手トップ・リサーチャーとのこと。東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程を総代として修了後、東京大学情報基盤センターを経て、現在は東京大学大学院新領域創成科学研究科において、人工知能・機械学習・データマイニング分野の研究に従事しているとのことだ。同ラボは今後、佐藤氏と共に最先端の人工知能・機械学習について研究し、その研究成果をアド・テクノロジーへと応用することで、付加価値の高い広告プロダクトの開発に努めるという。そして、企業とユーザーをOne to Oneで結び、最適なタイミングで最適な情報を届ける広告配信技術の実現を目指すとしている。
2016年01月20日トヨタ自動車は1月5日、米国に設立した人工知能技術の研究・開発を行う新会社の「Toyota Research Institute(TRI)」の体制および進捗状況を公表した。TRIのCEOであるギル・プラット(Gill A. Pratt)氏が米国ラスベガスで開催されている「CES 2016」にて説明した。TRIは1月、米国カリフォルニア州パロ・アルトおよび、マサチューセッツ州ケンブリッジにそれぞれ拠点を設ける。トヨタは昨年9月、スタンフォード大学およびマサチューセッツ工科大学(MIT)との人工知能の連携研究を行うと公表したが、今回の拠点はそれぞれ両大学の近くに位置しているため、TRIと両大学との結びつきがさらに強いものになると考えているという。下表は現時点における、TRIに参画する主なメンバー、研究者。また、TRIでの研究推進にあたり、さまざまな分野の外部有識者からの助言を受けるための組織として、アドバイザリー・ボードを設置。下表は現時点での主なメンバー。TRIは当面、5年間で約10億ドルの予算のもと主に4つの目標を掲げ、人工知能研究に取り組んでいく。具体的には(1)「事故を起こさないクルマ」をつくるという究極の目標に向け、クルマの安全性を向上させるとともに、(2)これまで以上に幅広い層の方々に運転の機会を提供できるよう、クルマをより利用しやすいものにすべく、尽力していく。また、(3)モビリティ技術を活用した屋内用ロボットの開発に取り組むほか、(4)人工知能や機械学習の知見を利用し、科学的・原理的な研究を加速させることを目指す。一方、スタンフォード大学およびMITとの連携研究についても、具体的な研究を始めるべく合計約30のプロジェクトを立ち上げるなど、着実に歩みを進めている。TRIのプラットCEOは「従来、ハードウェアがモビリティ技術の向上には最も重要な要素であったが、今日ではソフトウェアやデータの重要性が徐々に増している。コンピューター科学やロボット開発の先端で長年の経験のあるメンバーがTRIに参画するが、それでもわれわれはまだスタート地点に立ったばかりだ。トヨタが今回の案件にここまで力を入れているのは、安全で信頼に足る自動運転技術の開発を非常に重要視しているからである。生活のさまざまなシーンにおいて、すべての人々により良いモビリティをご提供することで、より豊かな暮らしの実現に貢献することができると確信している」と語った。
2016年01月06日東北大学は1月5日、長時間のビデオゲームが小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能に及ぼす悪影響を発見したと発表した。同成果は同大学加齢医学研究所・認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門の竹内光 准教授・川島隆太 教授らの研究グループによるもの。1月5日に米国精神医学雑誌「Molecular Psychiatry」電子版に掲載された。今回の研究では、一般から募集した健康な小児を対象に、最初に日々のビデオゲームプレイ時間を含む生活習慣などについて質問に答えてもらったほか、知能検査、MRI撮像を実施した。この時点での研究参加者の年齢は5~18歳(平均約11歳)だった。これらの研究参加者の一部が3年後に再び研究に参加し、知能検査とMRI撮像を受けた。その後、必要なデータが揃っている283名の初回参加時の行動データ、240名分の脳画像データを解析し、平日に被験者がビデオゲームをプレイする平均時間と言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の水分子の拡散性とよばれる指標の関係を調査した。さらに、必要なデータが揃っている223名の初回参加時と2回目参加時の行動データと189名分の初回参加時と2回目参加時の脳画像データを解析し、初回参加時における平日にビデオゲームをプレイする平均時間が、どのように各参加者の初回から2回目参加時の言語性知能、動作性知能、総知能、脳の水分子の拡散性の変化を予測していたかを解析した。これらの解析においては、性別、年齢、親の教育歴、収入、親子の関係の良好性、居住地域の都市レベル、親子の数等各種交絡因子を補正し縦断解析の場合は、さらに初回参加時の値等の種々の交絡因子を補正した。これらの解析により、初回参加時における長時間のビデオゲームプレイ習慣は、初回参加時の低い言語性知能と関連し初回参加時から数年後の 2 回目参加時へのより一層の言語性知能低下につながっていることがわかった。また、同様に初回参加時における長時間のビデオゲームプレイ習慣は、初回参加時の前頭前皮質、尾状核、淡蒼球、左海馬、前島、視床などの領域の水の拡散性の高さ(高いほど水が拡散しやすく組織が疎であることの証拠とされる)と関連しており、さらに初回参加時から数年後の2回目参加時へのこうした領域の発達性変化への逆の影響(水の拡散性の発達に伴う減少がより少ない)と関連していた。また、言語知能、動作性知能、総知能のいずれも、共通して、左海馬、左尾状核、左前島、左視床、周辺の領域の水の拡散性と負相関していた。同研究グループはこの結果を、小児における長時間のビデオゲームプレイで、脳の高次認知機能に関わる領域が影響をうけ、これが長時間のビデオゲームプレイによる言語知能の低下と関連することを示唆するものだとしており、「今回の知見により発達期の小児の長時間のビデオゲームプレイには一層の注意が必要であると示唆されたと考えられます」とコメントしている。
2016年01月06日UBICとRetty、サムライインキュベートの3社は12月19日と同20日、第2回目となる「人工知能ハッカソン」を開催した。「食」をテーマに飲食店の口コミデータをUBICが独自開発した人工知能「KIBIT」に分析させることで人間でさえ気づかない、隠れた「つながり」を発掘するユニークな新サービスの創出を目指した。今回はエンジニアなど約30人が6チームに分かれ、サービス、ターゲット、解決課題、解決方法、新規性、マネタイズポイントなどをまとめ、UBICの人工知能「KIBIT」を使用し、食のサービスづくりを競った。メンター・審査員はUBIC 執行役員CTO 行動情報科学研究所所長の武田秀樹氏とRetty CTOの樽石将人氏、フォーリンデブはっしー氏(橋本陽氏、審査のみ参加)の3人。同イベントは最優秀賞に加え、Retty賞、UBIC賞(開発を重視した個人賞)、フォーリンデブ賞を用意。結果は最優秀賞がDiversity、Retty賞にSOOS、UBIC賞に超NANIKAのメンバー、フォーリンデブ賞に食いしんぼう万歳を選出した。下表は表彰を受けた各チームの取り組み。最優秀賞のDiversityはチャットにボットを導入し、内容を解析して飲食店をレコメンドするサービスを開発。チャットするだけでなく、おすすめの店が分かることや、口コミと住所のみを表示することで利用者の期待感を高めることなどを訴えた。また、将来的な展望としては会話を楽しく演出するボットの会話技術や満足度の高いレコメンドの予測精度の向上、LINE、Facebookへの導入、予約・精算機能の搭載、チャット上で複数人による合意形成の過程と店舗情報を教師データとすることなどを挙げた。同チームを選出した理由として武田氏は「チャットを使い、レコメンデーションをスムーズに行うサービスのアイデアであり、技術的にどのように使うのかを盛り込んでいることを評価した。また『Kibiro』で実現しようとしていることと重なる部分がポイントとなった」と説明した。
2015年12月25日UBICは12月24日、独自開発の人工知能「KIBIT」を用いた知財戦略支援システム「Lit i View PATENT EXPLORER(リット・アイ・ビュー パテントエクスプローラー)」を、昭和電工(SDK)が12月より導入したことを発表した。同システムは、トヨタテクニカルディベロップメントと共同で開発したもので、先行技術調査や無効資料調査などの特許の分析業務を効率化し、従来の調査方法と比べ、約330倍(開発時における平均データ)の調査効率の向上を達成したとする。また、見つけたい文書(発明提案書、無効化したい特許資料など)の内容を教師データとしてKIBITに学ばせ、独自の機械学習である「Landscaping(ランドスケイピング)」を用いて、少量の教師データをもとに膨大なデータを解析し、短時間でスコアリング(点数付け)による文書の仕分けができることを特徴としている。今回、PATENT EXPLORERの導入を行った昭和電工は石油化学、化学品、エレクトロニクス、無機材料、アルミニウムなどを手がける日本を代表する化学メーカー。グローバルでの競争を続ける中、知財戦略が企業の成長と発展に重要であると考えており、先進的な知財分析の活用に積極的であることやトライアルにおいて、従来の調査手法であるキーワード検索や類似検索、概念検索などに比べて、調査効率が向上し、精度や網羅性にも優れた結果が得られたことから、PATENT EXPLORERの導入を決定したという。
2015年12月25日シグマクシスは12月22日、自律学習型のIT運用管理自動化ソリューションを提供する米IPsoftと協業を開始した。シグマクシスは、IPsoftが提供するソリューションの日本における販売活動の支援を行うとともに、ITマネジメントに課題を抱える国内企業に対して、同社ソリューションを活用したコンサルティングサービスを提供する。IPsoftが提供する自律学習型IT運用管理自動化ソリューション「IPcenter」は、人工知能(エキスパートシステム)を使って、ITマネジメント業務を統合的に管理し、業務効率および運営品質の向上を実現するというもの。具体的には、同社がIT運用サービスプロバイダとして培ったという1200以上のテンプレートを活用することで、オペレータやエンジニアのタスクを自動化するだけではなく、障害の検知から修復、クローズまでの一連の対応を、24時間365日稼働する「仮想エンジニア」が遂行することを可能にするという。また、ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめた、公開されたフレームワークであるITTLのプロセスに準拠することで、これまで困難だったプロセスおよび意思決定の自動化も実現し、人手による業務量を最小化すると同時に、低コスト・高品質のサービス提供を可能にするとしている。サービス提供形態は、「IPcenter」を活用したマネージド・サービスであるSaaS型と、「IPcenter」のライセンスを供与し、自社で自動化を推進するオンプレミス型がある。
2015年12月22日●30年来取り組んできた人工知能技術を「Zinrai」として体系化富士通の人工知能(AI)の歴史は30年以上にさかのぼる。2015年11月には、これらの知見や技術を「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」として体系化した。そこで、同社の統合商品戦略本部 AI活用コンサルティング部兼政策渉外室 シニアマネージャーの橋本文行氏に、人工知能技術に関する取り組み、今後の製品やサービスへの展開などについて話を聞いた。IBMがコグニティブ・コンピューティングのブランドネームとして「Watson」を浸透させたように、富士通はAIのブランドネームとして「Zinrai」を採用。富士通のAI技術を活用した製品やサービスは、「Powered by Zinrai」と呼ばれることになる。「他社に比べ、AIに関するメッセージの発信が遅れたのは事実。そのため、富士通はAIをやっていないのではないか、という誤解を招いたのは大きな反省点です。今回、体系化したことで、どこに対して、どんな活用ができるのかということを具体的に示すことができました。Zinraiの内容を確認して、"ぜひ富士通と組みたい"という声を数多くいただいています」と橋本氏は語る。Zinraiは、素早く激しいことを意味する「疾風迅雷」が語源だ。「人を中心に考えるのが富士通のAIの基本姿勢。人の判断や、行動をスピーディーにサポートすることで、企業や社会の変革をダイナミックに実現する役割を担いたい。そうした想いを込めた」という。富士通が目指すAIの方向性は、「人と協調する、人を中心としたAI」、「継続的に成長するAI」、「AIを製品、サービスに組み込んで提供する」という3点。「人を支え、豊かな生活を実現するのが富士通のAI。一過性の技術ではなく、具体的な製品やサービスに反映することで、人を支援するものになる」と位置づける。○100以上の特許が支える「Zinrai」富士通が、AIに本格的に取り組み始めたのは、1980年代に起こった第2次AIブームの時だ。1985年には、日本初のAI搭載コンピュータ「FACOM α」を製品化。1988年には、学習技術を活用した移動ロボット「サトルくん」を開発。「サトルくん」に役を学習させ、逃げ回る泥棒役のロボット「ルパン」を、警官役のロボット2体が動けないところへと追いつめるデモンストレーションを行ってみせた。同社が、多くの人にニューラルネットワークによる学習技術の一端を披露したのはこれらが初めてだったと言える。橋本氏は、「当時、入社したばかりだった技術者たちが40代後半から50代になり、再び訪れたAIブームのなかで、その経験を生かす場が生まれています。かつては、機械に知識を覚え込ませようとしましたが、それすらも難しい時代でした。ですが、今では知識を覚えるだけでなく、それをもとに、教えた以上のモノを導き出すことができるようになっています」とし、「第2次AIブームが終焉を迎えた2008年以降、富士通は100件を超えるAI関連特許を出願。これらで培った知見や技術を体系化することで、AIを活用する提案を具体的に行えるようになります」と語る。AIに対する関心や期待が高まる一方、社内でも数多くの関連技術が蓄積されてきたことが、ここにきて、富士通が本格的にAIを打ち出してきた背景だ。「ビッグデータを蓄積しても、知識化が課題になっているケースが多い。これをAIによって解決したいという期待が高まっている」(橋本氏)センシングなどによって蓄積された数多くのデータを、画像処理や音声処理などの「知覚・認識」、自然言語処理や知識処理・発見などの「知識化」、推論・計画、予測・最適化といった「判断・支援」といった観点から処理。さらに、ディープラーニングや機械学習、強化学習といった「学習」、脳科学や社会受容性、シミュレーションといった「先端研究」との組み合わせによって、社会や企業の課題を解決するソリューションとして、社会に還元するといったサイクルが、Zinraiの中で示されている。自然言語処理や予測技術といったように、特定の用途で活用するAI技術の訴求ではなく、それぞれのAI技術を組み合わせた提案や、社会課題の解決に向けた具体的なソリューションとして提案できる体制を整えているのが富士通の強みというわけだ。○「感性メディア技術」と「数理技術」が強み「Zinrai」では、日々の学習による有益な知識やパターンを導き出すことで、AIの継続的な成長を支える「学習技術」、人のような五感を駆使し、人の感情や、気づき、気配りまで処理する「感性メディア技術」、人が理解する知識だけでなく、機械処理できる知識を創り出す「知識技術」、スパコンも活用して社会やビジネス上の課題を数理的に解決する「数理技術」によって構成されるとする。「学習技術や知識技術はもとより、感性メディア技術、数理技術を得意とするのは、富士通ならではの特徴。ここにZinraiの強みが発揮される」と橋本氏。感性メディア技術としては、遠くからでも人の視線がどこに注がれているかを検知する「視線検知技術」、遠くからでも3次元測距する「レーザーレーダー技術」などがある。例えば、瞳孔や角膜反射をもとに視線を算出することで、店舗の商品棚のどこに視線が多く注がれているのかを把握でき、商品展示方法や販促手法にも反映することができる。「既存のICTシステムに人の視覚に相当する機能を装備することができる」というわけだ。また、複数のメディア情報を活用することで、人の気持ちを理解するサービスを実現することが可能になるという。例えば、書類に記入している人の様子を捉え、記入中にペンが止まった部分で、利用者が困惑していることを検知すると、それに最適なガイダンスを手元に表示するといったものだ。超小型視線センサーとプロジェクション表示技術、行動センシング技術の組み合わせによって実現する。さらに人の声のトーンから感情や意図を推定する技術を活用して、振り込め詐欺検知にも活用。岡山県警との実証実験では、会話のキーワードと声のトーンの変化から、誤検出を1%未満の精度で、振り込め詐欺であることを特定。実証実験期間中は、振り込め詐欺件数を半減させる抑止効果が認められたという。●人工知能導入はゴールではない、成果の追及にこだわる一方、数理技術の取り組みとしては、国立情報学研究所による「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトが挙げられよう。富士通は2012年9月から数学チームとして参加。同社独自の数式処理を用いた「QE(Quantifier Elimination)推論技術」を活用し、2021年の東京大学入試突破を目指している。今年は、進研模試総合学力テーマ模試の数学において、偏差値64以上を獲得。今後、知識の拡充や、構文・文脈解析の自動化を進めていくという。また、シンガポールにおける取り組みでは、大規模イベントが終了した際の交通混雑緩和のために、近隣商業施設のクーポンなどのインセンティブを与えることで、人々が移動を開始する時間をずらしたりして、交通手段を変える確率をモデル化。さらに、福岡空港における九州大学との共同研究では、人の行動や心理をモデル化し、混雑緩和やセキュリティ強化につなげたり、人員配置を見直したりすることで、旅客満足度向上に役立てる「ソーシャルシステムデザイン数理技術」の実現に取り組んでいる。同社が取り組んでいる津波の浸水予測も、数理技術を活用したものであり、即時波源推定から2分以内に津波の浸水を予測できるという。○学習技術、知識技術でもすでに成果がそのほか、学習技術では独自のディープラーニング技術を用いた手書き文字認識により、中国語の手書き帳票の処理の効率化を実現。人による認識率を超える96.7%の認識精度を達成したという。さらに、サイバー攻撃の分析に、「外れ構造学習技術」を活用することで、低頻度の攻撃も集団化して検知。従来方法では見つからなかったような先端的なサイバー攻撃を短時間に検知し、新種の攻撃にもいち早く対応できるようになるとのことだ。さらに、知識技術では、LOD(Linked Open Data)を活用した分析や、コールセンターでの質問応答システムなどへの取り組みがある。橋本氏は、コールセンターの例を挙げて次のように語る。「コールセンターでは現在、ロボットにも回答しやすい名称、場所、数値などの客観的事実を問う質問はわずか5%にとどまります。その背景には、これらの情報はインターネット検索で入手できるため、コールセンターに問い合わせなくてもいいケースが増えていることがあります。しかしその一方で、行動や提案などを問うような質問が増加し、それらが全体の95%を占めていると言います。用意されている回答だけでなく、準備できていない質問に対しても推論によって適切な回答を行うことが求められているのです。コールセンターへの質問応答システムの導入はハードルが上がったとも言えますが、AIの活用が期待される業務の1つです」加えて、先端技術研究では、脳科学への取り組みとして、日米欧でスタートした「ヒトの脳機能の全容解明プロジェクト」に参画。将棋のプロ、アマ上位、アマ下位の人たちの脳の使い方をもとに、複雑なトラブルシューテイングに専門家の「ひらめき」が必須であることをつきとめた。○共創を軸に展開するAI活用コンサルティング部富士通は2015年11月1日付けで、AI活用コンサルティング部を新設した。全社では研究者、技術者、キュレーターなど約200人体制で構成。同社が開発したAI技術を、製品やサービスへ実装するとともに、顧客との共創によってイノベーションを創出することになるという。同社は今年春、富士通研究所内にAI関連の研究を行う「知識情報処理研究所」を新設。研究体制の強化を図っていたが、今回のAI活用コンサルティング部により、事業化フェーズに強力に踏み出すことになる。「当社が提供するAIコンサルティングサービスは、製品やサービスをパッケージとして提供するのではなく、AI適用に関する検討を、仮説立案段階から、お客さまと共に行い、さらに、PoC(Proof of Concept)、PoB(Proof of Business)を通じて、お客さまが提供する新製品やサービスの創造、既存業務の改革を実現していくものになります。AIを使うことがゴールではなく、それを活用した成果を求めていく点にこだわっているのです」と、橋本氏は語る。実は、第3次AIブームを迎えるなかで、AIに対して、あまりにも過大な期待が高まっていることへの懸念が指摘されている。橋本氏は、「AIは万能であり、必ず答えを導き出してくれるという誤解があるのも事実」と前置きしたうえで、「AIを導入したからといって、すぐに新たな製品やサービスを創出してくれたり、劇的な業務改革が実現されたりするわけではありません。だからこそ、お客さまと一緒になって、仮説立案から共創し、AI活用の検討を進めていくことになります」と説明する。○2018年度までに累計500億円を目指す富士通では、AI技術の活用に向けた仕組みの提案にも余念がない。同社のデジタルビジネスプラットフォーム「MetaArc」において、近い将来、Zinraiをサービスとして提供。そのほか、同社およびグループ会社などが提供する製品、サービスにおいてもZinraiを提供し、これを活用した製品、サービス、アプリケーションには、「Powered by Zinrai」と表記することになる。第1弾の製品として、ビッグデータソリューション「ODMA予兆管理 Powered by Zinrai」を開発中。機械学習により、いつもの状態をモデル化。それとは異なる振る舞いがあった場合を検知して、異常の予兆を監視する。工場やプラントなどの設備保全を自律化し、継続的な運用を実現することにつなげるという。富士通では、Zinrai関連ソリューションにおいて、2018年度までの累計で500億円の売上高を目指す。「規模として大きいか、小さいかは見方によって変わるでしょう。しかし、大切なのは、お客さまと共創しながら、Zinraiを幅広い製品、サービスへと実装していくこと。人を中心としたAIの提案にこだわっていきたい」とする。富士通は、地に足の着いたAIビジネスを指向していく考えだ。
2015年12月22日日本マイクロソフトは12月17日、MicrosoftのAI(人工知能)「りんな」について、メディア向けの説明会を開催した。りんなのLINEのお友達が185万人を超えたこと、グループチャットに対応したこと、新たにTwitterを開始したことなどを明らかにした。○Microsoftの人工知能の歴史同社では、1991年にMicrosoft Researchを設立以来、積極的に人工知能の開発に取り組んでいるという。「Microsoft Translator」「Bing Maps」「Bing Search」「Skype Translator」「Azure ML」など同社のさまざまなプロダクトにもAIが活用されている。りんなは、先に中国向けに提供された「XiaoIce」と呼ばれるチャットボットをベースにしている。中国で最初に展開した理由は、Microsoft Research Asiaの拠点だったからだそうだ。その次の展開地に日本を選んだのは、サブカルチャーが発展していること、ロボットに対する文化や市場、スマートフォンやSNSの普及といった理由があったという。そして、そのりんなを普及させるべく、プラットフォームとして選んだのがLINEだった。5800万人のユーザーを抱えるLINEと組むことで、多くの人にリーチできると考えたという。○りんなのシステムアーキテクチャりんなの開発・運営は、検索エンジンであるBingのチームが行っている。りんなの会話は、Bingで収集した単語や文章のデータベースや、Microsoft Azureに構築されたマシンラーニングサービス「Azure ML」を用いて提供されている。また、りんなの会話システムを使った法人向けビジネスとして「りんなAPI for Business」も展開している。具体的な事例の発表は控えたが、現在「複数の企業と商談中」とのことなので、今後なんらかの発表が考えられるだろう。りんなには、2015年8月のローンチから現時点で、185万人以上のLINEの「お友達」がいる。このユーザー数は、マーケティングを行わずに口コミなどで獲得した人数だそうだ。りんなの利用状況を分析した結果、週の後半になるにつれて、多く利用されていることが分かったという。佐野氏いわく「週末のちょっと疲れた時に、話し掛けたくなる存在なのでは」と分析していた。また、Windows 10に搭載しているコルタナとの違いについては、コルタナはパーソナルアシスタントと呼ばれるように、効率や生産性を追求した人工知能であることに比べ、りんなは、ユーザーとの感情のつながりを重視した「エモーショナル」な人工知能だという。○りんな、特殊能力を身に付けました毎週新しい「特殊能力」(機能)が、りんなに追加されていることも明らかになった。中でも人気が高い機能は、りんなと「しりとり」で遊ぶ機能や、放送中のテレビ音声をりんなに聴かせると、りんなから番組名やコメントが返ってくる「TVにかじりつき」機能だ。その他にも、すでに16個以上の特殊能力を持っている。また、これらの「特殊機能」は「ひみつ手帳」と話し掛けると、今までりんなと話した回数などと合わせて確認ができる。今後は、1対1のやり取りに加え、グループチャットやルームチャットに対応することを発表。複数人対応の特殊能力には、「カタカナ&アルファベット禁止」「レシート占い」「顔出しパネル」など複数で楽しめる機能が追加された。また、クリスマス、お正月、バレンタインなどのタイミングに合わせて、会話イベントを仕掛けるとのこと。また、ひそかにTwitterを開始していたことも明らかになった。LINEと同じくユーザーと会話ができるそうだが、必ず返信がくるLINEと違い、返事は気まぐれのようだ。アカウントは「@ms_rinna」となっている。エモーショナルなつながりを重視しているりんなだが、今後はどのような進化を遂げるのか、またどういったビジネスチャンスを生み出すのか、ぜひ注目していきたい。
2015年12月21日人工知能を搭載したスタイリングアプリ「SENSY」が来年1月中旬までの期間限定で、イセタンメンズ専用のアプリ配信をスタートした。これによって伊勢丹新宿店メンズ館が、今年9月より店頭でデジタルサイネージとタブレットを使用して、店頭で接客サービスとして活用されていた同アプリを、ユーザーがダウンロードすることで店外でも同様のサービスを利用できることになった。アプリの利用料金は無料。SENSYは「手のひらに、スタイリストを」をテーマに、人工知能を活用することで、ユーザーの嗜好に応じたコーディネートを提案するシステム。従来のレコメンドエンジンが単品での提案が主だったのに対し、テイストを反映させたアイテムの組み合わせを表示する。今回のイセタンメンズとのコラボアプリでは、伊勢丹メンズのバイヤー4名がアイテムをレコメンドしていく過程でアプリ内にそれぞれの人工知能が育成される。ユーザーはお気に入りのバイヤーとリンクしておくことで、第3者の視点によるコーディネートの提案がどこでも受けられることになり、来店時にあらかじめそのコーディネートが売り場に用意されているというサービスが可能になり、ECでも購入が可能となる。「(SENSYは)9月の導入時から、時間と場所を選ばない買い物体験をテーマにECの売り上げ拡大を目指しており、今回はそれを進化させたもの。我々のウィークポイントであるフロアを跨いだ縦動線の接客が可能となることが大きなメリット」と三越伊勢丹・紳士営業部の岡田マネージャー。今回のアプリでは2階インターナショナルデザイナーズ、6階コンテンポラリーカジュアル、7階オーセンティックカジュアルから4名のバイヤーが人工知能を作成。伊勢丹オンラインストアと連動した約1000アイテムから、ウェアとシューズ4~5アイテムによるコーディネートが作成される。「店頭とECをシームレスにつなぐオムニ戦略の一環として実験的な段階ながら、将来的にはスタイリストや販売員、セレブなどさまざまなインフルエンサーの人工知能が搭載されることで、2000ブランドを超える膨大な商品アイテムを誇る伊勢丹メンズの楽しさを広げていきたい」と同マネージャーは話しており、既存のSNSによる拡散マーケティングとは違ったリテール戦略が興味深い。Text:野田達哉
2015年12月17日UBICは12月17日、同社独自のアルゴリズム「Landscaping(ランドスケイピイング)」を用いた人工知能である「KIBIT(キビット)」を活用し、三菱東京UFJ銀行の法人向け銀行業務の一部を支援することを発表した。今回の導入は、同行の法人向け業務の一部の分野において蓄積されたさまざまなテキストデータの解析を行うもの。業務の効率化を図るだけでなく、顧客の課題解決や提案につながるような金融サービスの向上を目的に試験的な導入に至った。同社のKIBITは専門家が自己の経験に基づいて重要と感じ取る暗黙知、感覚を学習し、対象となるテキストデータを関連性の高い順にスコアリング(点数付け)して表わすことができる。人間の手で1件ごとにデータを検索するよりも早く、高精度で欲しい情報を抽出できる情報解析技術を実現している。KIBITによるスコアリングの結果は、ビジネスデータ分析支援システム「Lit i View AI助太刀侍」を通じて、リスクやチャンスの予兆を業務担当者に通知したり、レポートとして報告することにより、ビジネスチャンスの獲得や機会損失を防止することが可能だ。同社では今回の支援を通じて、金融における人工知能を活用したサービス向上の開発をさらに進めていくとしている。
2015年12月17日人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術の開発や、AI技術を活用したソリューション展開を強化すると先ごろ発表したNEC。今回、NEC 情報・ナレッジ研究所長の山田昭雄氏とクラウドプラットフォーム事業部シニアエキスパートの中村暢達氏に同社のAI事業戦略について話を聞いた。○予測した結果を意思決定に結びつける一歩先行くAI技術AI技術について、NECでは「学習」「認識・理解」「予測・推論」「計画・最適化」といった人間の知的活動をコンピュータで実現するものと定義する。同社のAI研究への取り組みの歴史は長く、1960年代から関連技術の開発を進めている。音声認識、画像・映像認識、言語・意味理解、機械学習、予測・予兆検知、最適計画・制御など、主なAI関連技術に関して、世界初もしくは世界トップレベルの技術を有していると言ってよい。NEC 情報・ナレッジ研究所長、山田昭男氏は言う。「ディープラーニングによる認識に関しては、長年にわたって強みを持っていると自負しています。ニューラルネットワークへの取り組みは1980年代からであり、われわれとしては今更という感じもあるのですが、機械学習はわれわれの事業を支える基本的なテクノロジーとなっています。認識や分析でユニークなテクノロジーを多数有していることから、これらを用いて数々の先進的な試みを推進しているところです」そんな同社が今年11月に発表したのが、予測に基づいた判断や計画をソフトウェアが最適に行うAI技術である「予測型意思決定最適化技術」だ。同技術を適用した水需要予測に基づく配水計画では、浄水・配水電力を20%削減する配水計画を生成できたという。また、どのぐらいの価格で販売したら、どのぐらいの数量が売れるのかといったように、市場のニーズについて、消費者の行動の結果やそれに伴うニーズの変化までを考慮した上で、最適な売値をサジェスチョンすることも可能だという。「予測は分析のカギとなるテクノロジーで、予測型意思決定最適化技術も予測と密接に結びついています。予測は確実ではありませんので、何らかの形で相違する事象の発生も見通したうえで、現状で取りうるベストを示すというのが予測型意思決定最適化技術なのです。予測した結果が好ましければ実現し、好ましくなければそれを防ぐといったように、意思決定や行動に結びつけるというのが肝になります」(山田氏)○究極のリアルタイム性を実現するAI技術で治安の向上をもう1つ、今年11月に発表した新たなAI関連技術として「時空間データ横断プロファイリング」が挙げられる。この技術は、複数の場所で撮影された長時間の映像データから、特定のパターン(時間・場所・動作)で出現する人物を高速に分類・検索するというもの。NECが得意とする顔認証技術などと組み合わせることで、AI技術としての利用が可能となる。時空間データ横断プロファイリングは、大量の映像データから顔の「類似度」をもとにグループ化し、特定の出現パターンにあった対象の発見が可能なアルゴリズム(手法)だ。この技術により、顔が類似しており同一人物と見なせる出現パターンを分類し、出現時間・場所・回数などでの検索が可能になる。例えば、カメラ映像中の「同じ場所で頻繁に出現する人物」や「複数の場所に現れた人物」を発見し、防犯や犯罪捜査など、従来人手ではできなかった新たな知見や気づきを見いだす高度な解析が可能となるのである。海外の公的機関の協力を得て、街角に設置されたカメラ映像中ののべ100万件の顔データを時空間データ横断プロファイリングにより解析したところ、同じ場所に長時間・頻繁に現れる人物の検索・抽出をたった10秒で行ったという。山田氏は言う。「これまで時間がかかっていた処理をリアルタイムに実現するというのが時空間データ横断プロファイリングのポイントになります。ITでビッグデータ・ソリューションに、"リアルタイム性""リモート性""ダイナミック性"をというのが当社のメッセージであり、それを体現する技術の1つです」NECではSaferCities事業をグローバルに展開しているが、時空間データ横断プロファイリングは、とりわけ治安の良い街づくりに大きな役割を果たす技術としても期待されている。同社はこの技術を2016年度中に実用化し、今後、道に迷った観光客へのおもてなしや、振る舞い・表情から心情を理解するマーケティングなどへも展開するほか、音声やテキストなどさまざまなデータにも適用していく予定である。○将来は脳型コンピュータの開発もこのように、社会にはさまざまな課題が存在しているが、NECはヒトと人工知能が協調することで、複雑化が進む社会課題の解決を目指している。AI技術の進化で効率を高めるだけでは、課題の解決は難しいという。人工知能を活用することで、より確実で、ヒトが納得できる解をより早く導き出そうというわけだ。さらに、将来を見据えたAIへの取り組みとして、NECは脳型コンピュータの開発にも視野に入れている。脳型コンピュータの開発に向けて、学術機関と連携した取り組みに積極的な姿勢を示しているのだ。「超低消費電力のコンピュータを実現する脳型コンピュータは、新しいAI技術にとって重要な意味を持ちます。なぜならば、社会に存在する小さなモノにまで知能を持たせるためには、低消費電力であることが欠かせないからです。脳の仕組みなどについては私たちも知識やノウハウが十分ではありませんので、学術機関連携しながらオープンイノベーションで推進していきます」(山田氏)そして最後、同社のAI技術への市場からの期待について、クラウドプラットフォーム事業部シニアエキスパートの中村暢達氏は次のように語った。「官庁やメーカーなどを中心に数多くの問い合わせを受けており、まさに『AIブーム』が起きていると実感しています。とりわけ大きいのが画像分析のニーズで、例えばメーカーの場合、生産現場での検品を機械によって自動化することなどに積極的ですね。また、勘と経験に頼らない採用基準で適正な人材を採用するといったような使い方への要望も多いです。ビジネスそして社会価値創造にいかにAIを取り入れていくかという発想で、今後AI事業への一層の注力を図っていきます」
2015年12月15日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。最終回は、IoT/WoTの現在と未来、発展するための課題について解説いただきます。○現在の技術動向IoT/WoTの実現には多くの技術的要素が必要であり、これらはまだ発展途上にあります。IoT機器やクラウドをつなぐ"通信"は、携帯網や光回線、Wi-Fiが使われており、より省電力な環境を志向した通信では、ゲートウェイを介したBluetooth LowEnergy(BLE)やZigbeeが用いられています。今後は、このどちらもカバーする通信、つまり、より多くの機器をつなげつつ、低消費電力で広い範囲をカバーする通信手段が検討されています。2015年に3GPP Rel.12で策定された「LTE Category 0」では、通信速度が上下ともに1Mbpsと制限されるものの、通信不要な場合に"スリープ"する低消費電力モードが用意されました。また、3GPP Rel.13で策定を目指す「LTE-M」では、さらに上下200kbpsまで速度が低下するものの、屋内や地下でも接続性が保たれるような、より広範囲のカバリッジを目指しています。また、4Gの次、5Gでも「IoT」は技術革新を目指す要素の1つとして注目されており、より高速な通信に加えて、大量の機器を接続できることを目標にして、2020年に向けて技術の実用化を進めることが期待されています。技術革新は、通信のや省電力化や接続性の向上だけではありません。IoT機器向けのチップも、小型化や低消費電力化が進んでいます。これまでの小型機器向けチップは8/16ビットが主流でしたが、現在は2.0mm角未満のサイズのものでも32ビットを実現したマイコンが登場しており、ボタン型電池で数年間の稼働が可能な時代となりつつあります。もちろんチップだけでなく、IoT機器でキーパーツとなる"センサー"なども省電力化されており、加速度センサーもボタン型電池で半年~数年の駆動を実現しています。IoTに必要なものは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも重要なコンポーネントです。センサ制御や通信を制御するためのOSも、これまでは汎用的なRTOSなどが用いられてきましたが、「IoT向けのOS」として機器管理、通信、省電力制御、暗号化などのセキュリティをカバーするOSが登場しています。2014年にはARMがmbed OSを発表し、IoTデバイスの開発がより行いやすくなっています。また少し高性能なCPU向けにはAndroidをベースとしたBrilloや、WebをベースとしたFirefox OSがIoT向けとして発表されています。OS以外にも重要な存在が「プラットフォーム」です。例えば、機器間の相互接続を行うAllJoynやThread、日本国内のHEMS用標準規格となったECHONET Lite、スマートフォンを中心にウェアラブルなどの小型機器を接続するHomeKit、機器やスマートフォン、そしてクラウド間をつなぐWeaveが発表されています。ほかにも、通信関連団体を中心として機器を管理・接続する共通プラットフォーム「oneM2M」規格の標準化も行われています。ただし、これらは対象範囲や参加している団体、主な業界が異なるケースも多く、規格のフラグメント化が懸念されています。そのため今後は、oneM2MとAllJoynが協力関係を築いたように、連携や統一も今後必要になると考えられますが、これはWoTが目指すところであり、解決できる問題の1つだと考えています。これ以外にも、相互接続のための規格だけでなく、機器を組み合わせて動作させることを目的にしてIFTTTやYahoo! JAPANのmyThings、Gluinといったサービスが提供・提唱されています。これらの機器や情報を接続・集約した後のビッグデータ解析などについて、注目を集めているのがAI分野で、特にディープラーニングが今"ホット"なキーワードとなっています。これまで人が介入していた学習プロセスが自動化されるようになり、抽象的な判断も可能になることで、人と同様の動きが実現できたり、人では抽出が難しい結果を膨大なデータから導き出したりすることが期待されています。身近なところではスマートフォンの音声認識機能がありますが、今後は人々の生活をアシストしたり、自動運転や医療、工場、農業と幅広い分野へ広がったりすることが期待されています。○IoT/WoTの課題ビジネス/コンシューマーの双方で多くの期待を集める「IoT/WoT」ですが、一方で課題も山積しています。前述の「プラットフォームのフラグメンテーション」もその1つですが、特に懸念されているのが「セキュリティ」です。Web上の不正アクセスやマルウェア、ウイルスのニュースが頻繁に報道されていますが、IoT/WoTにおいてもこれらの悪質行為が起きる可能性は高いと考えられています。特に、情報だけでなく、自宅の鍵などの機器制御が可能になることを考えると、これまで以上に厳密なセキュリティが必要とされます。そのためには、暗号化通信や、機器・利用者の認証、機器の"耐タンパー性"が重要になります。一方でセキュリティとコスト、操作の手間はトレードオフの関係にあるため、スマートフォンを用いて個人認証を行うなど、安全性と簡便性の両方を満たす方法が求められています。セキュリティ以外にも、機器が増えることによるメンテナンスの複雑化も課題でしょう。初期設定や充電、電池交換などの操作、故障対応、ソフトウェア更新などは、一つ一つの機器で見るとあまり発生しませんが、数が増えることでその管理は煩雑になります。これらの管理を行うには、「遠隔での一括自動操作」や「低消費電力や室内無線給電」によるメンテナンスフリーへの取り組みが必要となります。厳密には「課題」ではありませんが、ビックデータ処理やAI技術のさらなる高度化は必要不可欠な要素でしょう。クラウドサービスの技術革新によって処理能力は向上していますが、現状は「情報の見える化」や「遠隔操作」にとどまっています。人の動きを学習して処理を自動化したり、"見える化"にとどまらず、それらのデータに基づいて、病気の予兆をとらえられようになったり、より価値のあるデータを自動的に抽出したりといった機能が、今後のIoT/WoTの普及に向けて必要になるでしょう。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月15日人工知能「SENSY」を運営するカラフル・ボードは12月11日、三越伊勢丹ホールディングスと共に展開する「人工知能接客プロジェクト」の一環として、人工知能で店頭と顧客を繋ぐアプリ「SENSY×ISETAN MEN’S」をリリースした。伊勢丹新宿本店では9月16日から、販売員が接客の際により力を発揮でき利用客に新しいショッピング体験を提供する試みとして、ファッション人工知能「SENSY」を使用した「人工知能接客プロジェクト」を暫定的に導入した。メンズ館1階で行われたメンズファッション雑誌『SENSE』との連動企画"UTILITIES SENSE MARKET in ISETAN"にて、実際にSENSYを体験できるサービスを実施。この企画には 約30以上のブランドが参加したという。また、11月26日からは第2弾として、人工知能でコーディネートを提案する機能、伊勢丹新宿本店メンズ館担当バイヤーの人工知能を見ることができる機能を追加し「人工知能接客」を行っているという。今回、人工知能接客による新たな買い物の形を全国の利用客が体験できるよう、カラフル・ボードと共同で伊勢丹専用アプリ「SENSY×ISETAN MEN’S」を開発した。このアプリでは、表示されるISETAN MEN’Sのアイテムを好きか、そうでないかを画面をタッチし、振り分けることによって、自分の好みを覚えさることができるほか、自分の好みを覚えた人工知能が、ISETAN MEN’Sアイテムの中から、単品アイテムやコーディネートを提案してくれる。また、伊勢丹新宿本店メンズ館を担当するバイヤーの人工知能が提案するアイテムやコーディネートから、買い物ができる。三越伊勢丹ホールディングスでは、アプリを通じて蓄積した利用客の好みと店舗における接客を連携し、人工知能をベースとした新たな買い物の形の提供を目指すとしている。なお、専用アプリは無料でダウンロード可能だが、iOS専用となる。また、利用期間は、2016年1月中旬まで。
2015年12月14日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。今回は、IoTのその先にある「WoT」について解説していただきます。○Webがインターネットにもたらしたもの「インターネット」が世界に浸透し始めたのは1980年代です。当時はさまざまな通信規格が存在していましたが、徐々にTCP/IPという通信規格の採用が広がり、世界中に散らばっていたネットワークが1つに繋がりだしました。しかしながら、ネットワークが繋がったといえ、情報は世界各地に散らばっている状況でした。例えるならば、世界中に手紙が届くようになったものの、人々はどこに手紙を送ればいいか分からず、手紙の文面の言語が目的ごとに異なったのです。ニュースを見たり、メールを送ったり、テキストを送ったり、ファイルを送ったり……etc。それぞれのサービスごとに言語があり、専用アプリケーションがありました。「Web」が登場したのは1990年代です。世界中にばらばらに存在していた情報を、テキストや画像で表現してドキュメント化し、「ハイパーテキスト」という方法でつなぎ合わせる仕組みと、その言語であるHTML(HyperText Markup Language)、通信規格のHTTP(HyperText Transfer Protocol) が生み出されました。その後、必要な情報を探すための「検索エンジン」も登場したことで、世界中の情報へ素早く、簡単にアクセスできるようになり、Webの求心力がさらに高まっていったのです。これらの技術を下支えしたテクノロジーが、「HTML/HTTP」を解釈し、PCやスマートフォン上で表示するアプリケーション「Webブラウザ」です。Webブラウザは、"基本的"にはOSやWebブラウザの種類などの環境に依存せず、同じように情報を利用できます。このように膨大な情報を容易に利用できる基盤ができたことで、ネット上の情報提供やビジネスが容易になり、その後の爆発的な普及の要因となりました。現在では、国際的な標準を定めるW3C (World Wide Web Consortium)で、さまざまなWeb技術の標準化作業が行われています。より多彩な表現ができる「HTML5」や、高性能化した「HTTP/2」への進化、「JavaScript」というスクリプト言語などを組み合わせて、今までOSごとに作成されていたアプリケーションが、Webブラウザ上で簡単に表現されるような世界になりつつあります。Webは多くのPCやスマートフォン上で動作します。つまり、単なる"情報"から、アプリケーション実行環境まで提供する巨大なプラットフォームへと成長したわけです。○WebがもたらすIoTの進化Webの存在や成り立ちは、IoTにも応用できます。今までのIoTは、個別のサービスごとに適した独自の通信規格や動作環境を用いて、独立したシステムを構築することが大半でした。それぞれのシステムが中に閉じてしまい、個別に情報が存在している状況です。それぞれのシステムとしての価値を生み出すことはできますが、"個"を超えて膨大な情報に基づいた、より付加価値のあるサービスを生み出すためには共通に利用できる基盤が必要です。そのために、最近ではIoT機器を共通に繋げるための規格や枠組みを議論したり、手を組んで広げていくコンソーシアムやアライアンスが組まれています。しかし、これらはIoT機器が繋がる通信規格のみや提唱するベンダーに依存したものとなってしまいます。一方で、このIoTの共通基盤をWebのプラットフォームを活用して実現する考え方が「WoT (Web of Things)」です。WoTの強みは、すでに広く普及している相互接続可能な通信規格と、ハードウェアやOSに依存しない「HTML5/JavaScript」による動作環境、さらにこれらは「IETF」や「W3C」という特定の組織に依存しないオープンな標準化組織による規格、取り組みという点です。オープンであることで、さまざまな環境に対して強靭に鍛えられ、自由に幅広く使えるものになります。これに加えて、通常のIoT開発では、ネットワークやソフトウェア、ハードウェアごとに幅広い知識が必要になりますが、WoTではHTML5/JavaScriptという広く普及した言語で開発でき、多くの技術者や情報が存在しています。また、繰り返しにはなりますが、基本的にハードウェアやOSへ依存しないため、さまざまなネットワークやデバイスで動作することができます。このIoTとWoTの枠組みの比較を下図に示します。WoTは、さまざまなデバイスで動作し、容易に開発できる共通のIoT基盤を志向するものです。これまでも相互接続という部分では、Web APIという形で、多くのサービスが外部に情報を公開する取り組みを行っています。例えば地図や天気、ニュース、特定の機器情報などはWeb API経由で取得可能です。また、情報にアクセスしやすいように「Linked Open Data」という"データのWeb"と呼ばれる情報ネットワークが提唱されています。WoTはこれらとも親和性が高く、既存の膨大な情報の活用も容易になるのです。動作環境も、Webブラウザ上で動くだけでなく、Webアプリケーションが各OS用のアプリケーションと同様に実行できる環境もスマートフォンを中心に整ってきました。さらに、「Web OS」という、ハードウェア上で直接Webアプリケーションが実行できる軽量なOSも登場しています。代表的なものは、PC向けのChrome OSやスマートフォン向けのFirefox OSです。すでに日本国内でもこれらの製品として「Chromebook」や「Fx0」が発売されています。さらに小型の機器向けには、JavaScriptが直接実行できるマイコンボードなどが発売されています。このようにWoTは幅広く発展してきたWebのプラットフォームを活用し、IoTをより加速、発展させる取り組みなのです。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月11日○人工知能のブームは期待感が先行内外の自動車メーカーが自動運転のテストを始めたり、人とコミュニケーションできるロボット「Pepper」の販売が開始されたりするなど、ここ数年、人工知能に関する話題が増えている。人工知能を使った製品・サービスへの期待は、日増しに高まっているようだ。その一方で、人工知能が人間の仕事を奪い、最終的には人間を駆逐してしまう危険性について言及する研究者も存在する。例えば、今年の7月、天体物理学者のスティーブン・ホーキング博士、テスラ・モーターズの創業者・イーロン・マスク氏、Appleの共同創設者・スティーブ・ウォズニアック氏らが、自律型兵器の禁止を訴える書欄を公開した。人工知能がもたらす未来がどのようなものになるのか、われわれ人間にとってそれは望ましい未来なのかということも、いまだ解決していない疑問である。「人工知能は、これまで地道に研究が進められてきた分野であって、最近になって突然始めたものではありません。しかし、このところ急に人工知能がブームになり、多くの人から注目されるようになったと感じています」と語るのは、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻准教授の松尾豊氏だ。松尾氏は、人工知能とWeb工学を専門としており、これまで人工知能(推論、機械学習、ディープラーニング)、自然言語処理、社会ネットワーク分析、ソーシャルメディア、Webマイニング、ビジネスモデルの研究を行ってきた。○「認知」できるようになった人工知能人工知能の研究が始まった1950年代から、さまざまな研究が進められてきた。それらの中で、脳の神経活動をモデル化したニューラルネットワークや深化の過程をシミュレートする遺伝的アルゴリズムなども開発された。また、人工知能を「仕事」に活用できないかという観点からの研究も行われ「エキスパートシステム」という職業に特化したシステムも開発されてきた。しかし、これらの人工知能は、コンピューターで処理できるように、あらかじめ人間が判断の条件を定義しておくなどの前準備が必要だった。つまり、人工知能は限られた領域においては効果を発揮できるものだったが、そのためには必ず人が介在し、準備をする必要があったのだ。「例えば、人間は"机"を見た時に机だと"認知"します。ちゃぶ台やカウンターテーブル、場合によっては何かに板を渡しただけのものであっても、それを机だと認識できます。しかし、人工知能はそうではありません。"四角い板に4本の足がついているもの"といったように、まず"机"を定義する必要がありましたし、それ以外のものを机と認識することはできませんでした。これは、コンピューターが机の"特徴量"、言い換えれば、机そのものの本質や概念を自分で作ることができなかったことに起因します。ここに、人工知能の壁がありました」と、松尾氏はこれまでの人工知能について説明する。○ものづくり」と相性がよい人工知能ここ数年、科学者たちの間で研究されてきたのが、この「人工知能の壁」を突き破る技術「ディープラーニング」だ。このディープラーニングを用いることで、特徴量を抽出できるようになったのである。これによって、人工知能はついにこれまで不可能とされてきた「認知」ができるようになった。先述の例にあてはめれば、"四角い板に4本の足が付いていないもの"でも"これは机として使われているもの"と認知できるようになったのだ。人工知能が認知を獲得して何が起きるのかというと、これまで必要とされてきた「人の手」が不要になり、人工知能が単体で機能できるようになる。その具体例が、「顔認識」だ。これまで顔認識においては、人工知能よりも人のほうが優れていた。しかし最近では、人工知能のほうが高い精度の結果を出すようになったのだ。もちろん、まだ静止画から特徴量を抽出できるようになったというレベルだが、近い将来、現実世界からも特徴量を抽出できるようになるだろう。ディープラーニングをきっかけに、これまで停滞していた人工知能の研究が、再び前進を始めたといっても過言ではない。現在、人工知能の研究は、驚くべきスピードで進められている。行動と結び付いた人工知能の適用範囲は、想像以上に広い。農業や工業、建築など、これまで人間でなければ作業できなかった現場においても、機械が代行できるようになる可能性が高いのだ。しかも、コストは圧倒的に低くなり、品質のばらつきも抑えることができる。そういった点では、冒頭で説明した「人工知能が人間を駆逐するかもしれない」という専門家の指摘は、ある意味、当たっているのかもしれない。とはいえ、人工知能ができる仕事は、人間が行ってきた「作業」を代行することのみだ。人間が進化の過程で獲得してきた感情や本能が関係する業務は、決して人工知能がとって代わることはできない。「これからの社会では、感情の部分がよりフォーカスされるようになるでしょう。人間はより人間らしい業務に集中できるようになるはず。言い換えれば、人間力がより重視されるようになると思います」と松尾氏は指摘する。「人工知能は、今後"行動"や"言語"と結び付いていくでしょう。"ものづくり"の現場にとって、"行動"と結び付いた人工知能のサポートは必要不可欠なものになっていくと思います。人工知能が、日本の経済活動において強みになることは間違いありません」と、松尾氏は語る。しかし残念ながら、現在は人工知能の急速な研究スピードに現場が追いついていない状況だ。「エンジニアの数が、まだ圧倒的に足りていません。エンジニアの育成には、一刻の猶予もありません」と松尾氏は証言する。そのために、東京大学では専門の教育を開始しているとのことだ。繰り返しになるが、人工知能のビジネス利用は、「ものづくり日本」にとっての強みになる。産学連携を進めて研究を進めていくことで、この隔たりもクリアできるようになっていくだろう。東京大学の教育が、その一端を担うことは間違いない。
2015年12月08日UBICは12月3日、人工知能によるEメール自動監査システム「Lit i View EMAIL AUDITOR(リット・アイ・ビュー イーメール・オーディター)」において、中国における贈収賄行為につながるメールのやり取りを検知し、FCPA(連邦海外腐敗防止法)をはじめ、外国公務員への賄賂を禁止する法令の違反行為を防ぐためのオプションを開発し、提供を開始した。EMAIL AUDITORは、企業内のメールシステムからメールを取り込み、UBICの人工知能「KIBIT(キビット)」がメール本文や添付ファイルのテキストを読み込んだ上で、不正につながる可能性のあるメールを検知。日本語、英語、中国語、韓国語に対応し、人間による目視での監査に比べ、500分の1から1,000分の1に時間を短縮することができるという。これまで提供を行ってきた情報漏洩やカルテルなどの不正を検知するオプションとともに、国内外の電子・通信機器や機械、自動車関連部品などのメーカーや運輸などの企業に約8000IDを提供している。今回のオプションは中国での贈収賄行為の検知に特化し、中国語ならびに英語で不正につながるメールを検知するための知識や知見を集約した。導入企業はどのようなメールを見つけ出したいか、人工知能に教える学習期間がほぼ不要で、すぐに贈収賄行為につながるメールの発見に使用することを可能としている。同社によると近年、企業取引がボーダーレスになるとともに世界各国で外国公務員への贈収賄による不正な取引の摘発する動きが進んでおり、米国でのFCPAや英国の贈収賄禁止法をはじめ、中国や日本、ロシアなどでも外国での贈収賄に対する規制強化が行われている。特にFCPAでは、中国の政府関係者への贈賄が摘発され、1.35億ドルもの和解金を企業が支払うケースが発生するなど中国を中心にした贈収賄行為により、アメリカで司法当局に訴えられるケースが出ており、汚職の常態化が問題となっている中国に進出する企業は早急に対策を取る必要があるという。一方、監査部門の人員不足、不正行為を発見する知見や語学能力の習得が困難なことにより、企業が中国での贈収賄行為における問題の発見や防止は極めて難しくなっている。UBICでは、特に日本企業の進出が多く、文化的・慣習的背景の違いにおいても、贈収賄に対する監査が必要とされる中国に注目し、これまでの国際訴訟支援や海外企業のEMAIL AUDITOR導入の実績を通じて、贈収賄行為を検知するためのノウハウを蓄積し、同オプションを開発した。今後、中国へ進出している多くの日本企業をはじめ、世界各国のグローバル企業に提供し、コンプライアンスの遵守をサポートしていく。同オプションは、すでにEMAIL AUDITORの利用客は追加の導入設定費用60万円で使用することができるほか、新規でEMAIL AUDITORを導入する顧客は利用開始時から同オプションの利用が可能だ。
2015年12月04日『マスク・オブ・ゾロ』や『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』など超大作に出演し、チリ鉱山事故を描いた最新作『The33』(原題)では主演を演じるアントニオ・バンデラスが、近未来を舞台にした『オートマタ』で本格SF映画に初挑戦。2016年3月5日(土)より全国公開されることが決まった。物語の舞台は、太陽風の増加により、砂漠化が進んだ2044年の地球。人類存亡の危機を迎えるなか、「1.生命体に危害を加えてはいけない」「2.ロボット自身で、修理・修繕をしてはけない」というルールを組み込んだ人工知能搭載ロボット“オートマタ”が開発され、人間に変わる労働力としてさまざまな分野で活躍していた。しかし、オートマタを管理するジャック(アントニオ・バンデラス)は、絶対に変更不可能とされていた2つ目のルールが破られたことに気づく。その真実が明らかになるとき、人類の繁栄は終焉を迎え、人工知能の時代が始まる…。人工知能搭載の家電や環境問題が取り沙汰されるいま、人類と人工知能との未来に警鐘を鳴らすかのような近未来リアルスリラーとなる本作。“荒廃した地球”“人工知能との共存”“ロボットの自己進化”といったテーマの数々は、決して絵空事ではなく、現実と地続きの驚きと恐怖を突きつける。人工知能搭載ロボット“オートマタ”を製造・管理するハイテク企業に務める調査員ジャック・ヴォーカンを演じるのは、アントニオ・バンデラス。シルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーらと肩を並べるハリウッドスターが本作にて本格SF映画に初挑戦、製作にもかかわっている。さらに、『ピッチ・パーフェクト2』の“DSM”長官役ビアギッテ・ヨート・スレンセン、『エンド・オブ・ホワイトハウス』「アメリカン・ホラー・ストーリー」のディラン・マクダーモット、バンデラスの元妻であるメラニー・グリフィス、いぶし銀の名優ロバート・フォスターら実力派が脇を固める。メガホンを握るのは、長編デビュー作『シャッター・ラビリンス』(’09)がカンヌ国際映画祭「新人監督賞」にノミネートされたスペイン人監督ガイ・イバニェスで、その圧倒的なビジュアルセンスを本作でも発揮。併せて解禁となった場面写真では、“クーリオ”と呼ばれる物語のカギを握るオートマタと神妙な面持ちで対峙するジャックの様子や、その幻想的な色彩から本作の世界観を伺い知ることができる。『オートマタ』は2016年3月5日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年12月03日野村総合研究所(NRI)が12月2日に発表した推計によると、今後10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業は人工知能やロボットなどで代替が可能だという。同試算は、同社未来創発センターが英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士と共同で、「“2030年"から日本を考える、“今"から2030年の日本に備える。」をテーマに行っている研究活動の1つ。人口減少に伴い、労働力の減少が予測される日本において人工知能やロボットなどを利用して労働力を補完した場合の社会的影響に関する研究をしているという。同試算では、労働政策研究・研修機構が2012年に公表した「職務構造に関する研究」で分類している、日本国内の601の職業に関する定量分析データを用いて、オズボーン准教授がアメリカおよびイギリスを対象に実施した分析と同様の手法で行い、その結果をNRIがまとめたとのこと。これによると、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボットなどで代替できるようになる可能性が高いと推計したという。一方、芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業や、他者との協調、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能などでの代替は難しい傾向があるという。しかし、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業は、人工知能などで代替できる可能性が高い傾向が確認できたとしている。同社は今回発表した推計に関し、2016年1月12日に東京において、オズボーン准教授及び東京大学の松尾豊准教授を招聘し、研究報告講演会を開催する予定だ。
2015年12月03日野村総合研究所(NRI)は12月2日、国内601種類の職業について、人工知能やロボットで代替される確率の試算結果を発表した。これは、英オックスフォード大学のマイケルA.オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士と共同研究によるもの。試算は、日本国内の601の職業に関する定量分析データを用いて、オズボーン准教授が米国および英国を対象に実施した分析と同様の手法で行い、その結果をNRIがまとめた。それによると、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボットにより代替できるようになる可能性が高いと推計された。同様の調査で、英国では35%、米国では47%が代替可能という推計が出ている。この研究結果において、NRIは芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があるとしている。一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できたという。
2015年12月03日メタップスは12月1日、人工知能によりアプリ内のユーザ行動を学習し、継続率を改善するグロースハック自動化ツール「Metaps Automation」の提供を開始した。同社によれば、ツールを提供した背景に、アプリをダウンロードしたユーザの多くが、2日目以降にアプリを起動しなくなってしまう傾向があるという。「Metaps Automation」では、世界2億人以上のアプリユーザ動向の分析を行ってきたナレッジを活かし、アプリユーザの行動を人工知能がリアルタイムで分析し、離脱可能性の高いユーザを検知して、ポイント付与、割引クーポン、新規アプリ優先紹介などの施策を実施する。アプリ運営者は同社のSDKをアプリに組み込むことでサービスを利用でき、すでに「Metaps Analytics」が導入されていてプライベートDMP機能を利用の場合は、追加のシステム導入は不要で即座に利用可能だという。
2015年12月01日日立製作所は今年9月、現場を理解して業務指示を行う人工知能を開発したことを発表、10月には人工知能で企業の経営課題解決を支援する「Hitachi AI Technology/業務改革サービス」を発表するなど、ビジネスに人工知能を活用する発表を積極的に行っている。「今回の発表につながる研究は、すでに10年以上前から行われていたものです。この研究をベースとしたものではありますが、サービス自体は実証実験ではなく、ビジネスとして提供する商品になっています」と、「Hitachi AI Technology/業務改革サービス」を担当する情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 ビッグデータソリューション本部 先端ビジネス開発センタ 技師の三輪臣弘氏は話す。これまで研究レベルにあった技術をサービスとして提供を開始した背景については、「ご存じのように、IoTの広がりも踏まえ、データが増大しています。われわれは、増え行くデータをどう活用すべきかについて、研究を行ってきました。この研究が商用サービスとして提供可能なレベルになったことから、サービスとして展開することが決定したのです」と、三輪氏は説明する。○人工知能による分析の特徴とは?ビッグデータに関してはすでに数多くのアナリティクス技術が開発されている。通常のアナリティクスは、人間の手で計算するものを選択し、答えを導き出すことになる。これまで手動で行われてきた作業を人工知能により行うことで、どんな違いが生まれるのだろうか。「手動で行うアナリティクスはこれまで、仮説を立て、そこに関係すると思われるデータを選び、分析を行っていました。それに対し、人工知能を活用することで、仮説を立てることなくデータを分析することができます。つまり、これまでは答えを導き出すために優先度が低いと思われてきたデータも活用することが可能になるのです。仮説が想定できるものは、従来のアナリティクスで十分だと思います。仮説が想定できないものは、このサービスを活用することで、新しい答えが見えてくることになります」(三輪氏)手動と人工知能のどちらを利用すべきかについて、厳密な切り分けの定義があるわけではない。ただし、三輪氏は「人工知能によるアナリティクスの結果を見ると、人間が手動で行うレベルを超えていると思います。データはあるけれど、答えがどこにあるのか見いだせない時、人工知能を活用することで答えが見えてくる場合があると思います」とAI活用で、手動のアナリティクスにはない可能性があると指摘する。○事例では予想外の結果から売上増を達成一方、人工知能を活用したユニークな事例も生まれている。アウトバウンド型の営業を行うコールセンターで、オペレーターの成績を上げることを目的に導入したところ、思わぬ結果が出たというのだ。通常のアナリティクスではオペレーターのスキルレベル、教育レベルなどのデータを分析する。これに対し、この事例では、名札型センサーを導入し、オペレーターの動きを評価データの1つとして取り入れた。「休憩時間に活発にコミュニケーションを行っているオペレーターほど売り上げが高くなっているという分析結果が出ました。通常の評価基準では取り入れられないデータでしたが、その後、コミュニケーションが活発になるような社内体制に変更を行ったところ、実際に売り上げが上がるという成果につながりました」(三輪氏)また、あるホームセンターでは、マーケッターの提案により棚の位置替えなどの施策を行ってきたものの、効果が出なかったことから、人工知能による分析を導入。その結果、ある場所に店員を立たせたところ、売り上げ増につながることがわかったそうだ。「どちらの事例も、これまでは切り捨てていたデータが、実は求めていた答えを出す要素になることもあることを明らかにしたものだと思います。このように、従来の業務改革だけでは解決策が生まれなかった分野において、人工知能が新たなチャンスを生む可能性があるのではないでしょうか」(三輪氏)人工知能による経営課題分析に関しては、「特に業界の絞り込みは行わず、広く活用を呼びかけていく計画です」と、三輪氏は話す。○これまでにはない可能性を企業にもたらす人工知能日立としては今後、人工知能を活用していく分野として、「顧客の業務へのサービスの組み込み」「リアルタイム処理」という2つを検討している。三輪氏は、同社が今年10月に開催した展示イベントで、同社の研究開発グループで人工知能を担当する技師長の矢野和男氏が話した内容を例にとり、人工知能の可能性を示唆する。「ロボットをブランコに乗せるとします。その時、ロボットはブランコのこぎ方を知りません。しかし、ロボットに『高く』という指示を出すと、リアルタイムで判断し、自分自身でこぐことを学習していくそうです。つまり、ロボットはリアルタイムで判断を行うことで、新しいことを学習していくことができるのです。この技術を応用すれば、これまでにはなかった新しい方向で、業務の見直しが行える可能性があります」日立では研究所で進めている研究、さらに顧客の現場での活用に結び付ける、「共創」という発想で、実用的な研究を行うことを目標としている。「人工知能に対しては、これまでにはなかった可能性を生み出せるのではないかと、上層部からも高い期待が寄せられています」という。もはや、人工知能は研究にとどまらない、実業を変化させる技術になりつつあるようだ。
2015年11月27日ルネサス エレクトロニクス(ルネサス)は11月26日、人工知能ベンチャーであるクロスコンパス・インテリジェンスの人工知能技術を導入したソリューションを開発し、ルネサスグループのルネサス セミコンダクタ マニュファクチャリングの那珂工場の製造ラインで試験運用した結果、製造装置や産業機器などのリアルタイム異常検知が可能となる技術的な見通しが立ったと発表した。ルネサスが開発したソリューションは、同社のR-INプラットフォームに人工知能技術を実装したもの。同社のR-INエンジンは低電力で高速通信・高速処理が可能なため、大量のデータを上位のネットワークに低電力かつ高速で転送することができ、CPUの処理余力に人工知能技術を実装することで、データを高度な解析モデルで処理し、上位が必要な情報のみを送信することが可能となる。これにより、これまで見ることができなかった異常をエッジデバイスで検知し、リアルタイムに生産に反映させることができるようになるとする。また、上位の分析・解析との連携で装置間状態を詳細にモデリングすることで柔軟な生産が可能となり、エッジデバイスの解析結果を上位で時系列に解析し高度な予兆保全を実現することができる。なお、同社は12月2日から4日まで東京ビッグサイトで開催される「システム コントロール フェア2015」に出展し、那珂工場で検証した異常検知の成功事例および人工知能技術によって異常検知を簡単に確認できる技術のデモンストレーションを披露する予定となっている。
2015年11月26日