先天性ミオパチーとは出典 : 「先天性」とは「生まれつき」、「ミオパチー」とは「筋肉に現れる病気」を意味する言葉で、先天性ミオパチーとは、生まれつき筋肉に何らかの異常がある疾患の総称です。日本には1,000人~3,000人の患者がいると考えられているものの、正確な数字は把握できていません。推計によると10万人に3.5~5人が発症するきわめて稀な疾患で、国に難病として指定されています。筋肉にかかわる遺伝子の異常で発症すると考えられており、乳児期に発見される場合や、成人になって診断される場合など、発症時期は人それぞれ違います。乳児期に症状がみられる場合には、体を支える筋肉の張りが弱く、体がくにゃくにゃとしていることが多いようです。幼少期には座ったり歩いたりする運動発達の遅れ、成人期には疲れやすかったり、力が入らなかったりする自覚症状がみられます。先天性ミオパチー(指定難病111)|公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター先天性ミオパチーにはさまざまな病型があります出典 : 先天性ミオパチーは遺伝子の異常が原因で発症しますが、遺伝子検査で病型を分類することはせず、顕微鏡で筋肉の組織を詳しく調べ、その特徴からおもに4つの病型に分類します。同じ遺伝子に異常があっても筋肉組織に共通の特徴がみられない場合もあり、原因となる遺伝子を遺伝子検査で確定することはできても、病型を判別することはできません。また、あらわれる症状も病型ごとに決まっていないことからも、病型を確定する際には筋肉の組織を調べる方法を採用しています。・ネマリンミオパチー先天性ミオパチーのなかでも、発症頻度のもっとも高い疾患です。顕微鏡で筋肉の組織を見ると、糸くずのようなもの(ネマリン小体)が筋繊維の中にあるかどうかでわかります。心臓の筋肉に異常を引き起こすことはほとんどないと考えられています。・セントラルコア病、ミニコア病ネマリンミオパチーの次に発症頻度が高いことで知られています。軽症の方が多く、多くは乳幼児期の発達の遅れから発見されます。顔の筋肉にはあまり異常がみられず、体幹に近い筋肉に異常がみられることが多いため、この病型では側弯症や関節がかたくなってしまうことがあります。筋肉の組織は大きさが均一ではなく、細胞の真ん中にコアと呼ばれる果物の芯のようなものが見えることが特徴です。・ミオチュブラーミオパチー、中心核病遺伝形式から、男性だけに発症すると考えられており、軽症から重症まで症状の程度はさまざまです。筋肉の組織をみてみると、筋肉繊維になる前の段階の筋管細胞(ミオチューブ)に構造が似ていることが特徴です。・先天性筋線維タイプ不均等症、全タイプ1線維ミオパチー筋肉には、赤筋と白筋というふたつのタイプの繊維があります。この病型では、2つの筋肉繊維の量が均等ではなく、サイズも小さいことが分かっています。筋繊維が細く、未熟なことが多いために症状を発症するのではないかと考えられています。・その他、分類不能な先天性ミオパチー詳しい検査をしても病型がわからない場合には、分類不能な先天性ミオパチーと診断される方もいらっしゃいます。先天性ミオパチー(congenital myopathies)|日本筋ジストロフィー協会筋肉の障害や筋力低下をきたす難病『先天性ミオパチー』の新たな原因遺伝子を発見|横浜市立大学先端医科学研究センター市原靖子他/著『悪性高熱症とセントラルコア病』(日臨麻会誌26(2)、2006年)先天性ミオパチーはどんな症状がみられるの?出典 : 以下の2つの症状は、どの病型でも共通しています。・筋力低下、筋緊張の低下、運動発達の遅れ筋力が低下することで、転びやすかったり、階段の昇降がつらかったり、すぐに疲れやすかったりする症状が出ます。乳幼児では、筋肉の張りが弱いために姿勢を保てない症状のほか、首の座りや自立歩行など体を動かす発達に遅れがみられます。・深部腱反射の減弱または消失膝をたたくと、足がぽーんと上がる反射を深部腱反射と呼びます。先天性ミオパチーの人では、この反射が弱いか、もしくは反射がみられません。病型や重症度によって症状や合併症は異なります。以下におもな症状をご紹介します。・顔筋肉の異常:顔にある筋肉が弱いために細長い顔立ちとなり、表情が乏しくなることが多いようです・高口蓋:上あごのドームが高い形をしています・呼吸障害:呼吸不全や、痰が出しにくい症状などがあらわれます・心臓に関連した合併症:心臓が収縮するときに使われる筋肉の異常で心筋症、不整脈などがみられます・関節に関連した合併症:関節がかたくなってしまったり、側弯症など脊椎が変形してしまったりすることがあります・飲み込む障害:飲み込むための筋肉が弱いため、乳児では哺乳障害、離乳期以降では摂食障害がみられることもあります・てんかん:突然意識を失ってしまうなどの「てんかん発作」を合併する場合があります。脳のある部分の神経細胞が、異常な電気を突然発射してしまうことで発作が起きます。どのような発作が起こるかは、電気発射の部分で異なります。・知的障害:てんかんを繰り返すことで知的障害がすすんでしまうこともあります。先天性ミオパチー(指定難病111)|公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センターインターネット講義:神経内科|浜松医科大学第1内科てんかん|厚生労働省各病型では、「重症先天型」「良好先天型」「成人型」と3つの重症度で区分されています。・重症先天型:新生児期から症状があらわれるのが重症先天型です。呼吸をすること、おっぱいを飲むことが自力では難しいので、人工呼吸器や経管での栄養補給が必要となります。・良好先天型:先天性ミオパチーを発症する方の大半は、この良好先天型です。良好先天型では、多くが乳幼児期の運動発達の遅れから発見され、特に首のすわりが遅いことが特徴です。他にも、歩き始めが2~3歳と遅いことが多く、転びやすかったり、階段で手すりを使わないと上り下りできなかったりという特徴がみられます。なお、筋力の低下は進行しないか、進行してもゆっくりであることが分かっています。心臓の筋肉に影響がある場合は少ないものの、呼吸筋が弱いこともあるので呼吸管理は重要です。良好先天型では、本人や周りも気づかないほど軽症のために、大人になってから診断される人もいます。目立った症状がない場合でも、アキレス腱が短い、高口蓋などの症状はあるようです。・成人型:成人になって全身の筋力、もしくは体幹に近い部分の筋力が突然低下してしまい、先天性ミオパチーを発症する場合には成人型に区分されます。なお、肺炎となって診断されることもあるようです。呼吸に関係する筋肉が低下して、飲み込むことが難しくなってしまった結果、誤嚥による肺炎を引き起こして診断につながるのかもしれません。先天性ミオパチー|一般社団法人先天性ミオパチーの会先天性ミオパチー(指定難病111)|公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター石黒 卓、他『呼吸不全と右心不全が初発症状であった成人型ネマリンミオパチーの 1 例』(日呼吸会誌 47(2)、2009年)先天性ミオパチーの原因は?出典 : 遺伝子の異常が原因で、筋肉をつくりだすたんぱく質がうまくつくられない、うまく働かないことで、筋肉の症状として発症します。先天性ミオパチーを発症している人を調べると、筋肉にかかわる遺伝子のひとつが異常が見つかるのが一般的のようです。なお、先天性ミオパチー全体でみてみると、発症にかかわる複数の遺伝子が発見されていますが、研究途上にあるために未解明の部分も多いのが現状です。遺伝子の異常ですので遺伝するものの、原因となる遺伝子の遺伝形式によっては発症しないこともあります。また、突然変異で発症する可能性もあります。ヒトは22対(44本)の常染色体と、1対(2本)の性染色体を持っています。先天性ミオパチーの遺伝形式は、「常染色体優性遺伝」「常染色体劣性遺伝」「X染色体劣性遺伝(性染色体の遺伝形式)」の3つのタイプがあります。同じ遺伝子であっても、「常染色体優性遺伝」と「常染色体劣性遺伝」のどちらかを取る場合があるなど、その遺伝形式はさまざまです。・常染色体優性遺伝:対になっている遺伝子のうち、片方が異常だと発症します・常染色体劣性遺伝:対になっている遺伝子のうち、2つとも異常だと発症します・X染色体劣性遺伝:X染色体上に遺伝子の異常があると発症します。ミオチュブラーミオパチーでの遺伝形式で、男性50%で発症する可能性があり、女性では通常では発症しません。女性の性染色体は「XX型」ですので、両方のX染色体に異常がないと発症しないためです。ただし、XX染色体のどちらかに異常遺伝子を持っている場合には、発症せずに保因者となります。先天性ミオパチー(指定難病111)|公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター先天性ミオパチーかなと思ったら専門家に相談を出典 : さまざまなかたちであらわれる症状に対して適切な処置を行うためにも、先天性ミオパチーを早期に発見することがとても重要です。そこで、幼少期に以下のような症状があれば、まずは小児科で相談をしてみてください。・体がグニャっとしていて首が前に起きない。(右写真)・ジャンプができない。・階段を昇るときに手すりを使う。・床から立ち上がるときに膝を使って立つ。・走ると遅い。・立ち上がるときにおしりをちょっと上げて立つ。先天性ミオパチーを疑う症状|一般社団法人先天性ミオパチーの会だた、先天性ミオパチーは、筋ジストロフィーなど、ほかの筋肉の病気と症状が似ていることも多いこともわかっています。精密検査をしなければ病気を確定できませんので、お近くに小児神経内科の病院があればそちらで相談してみましょう。遺伝カウンセリングで相談することができます。家族や親戚に先天性ミオパチーの方がいらっしゃるなど、不安な方は相談してみるのも良いと思います。遺伝カウンセリングは、大学病院など大きな医療機関に併設されていることが多いので、相談にあたっては紹介状が必要です。まずは、遺伝カウンセリングの希望を受診する医師に伝えましょう。先天性ミオパチーの診断出典 : 医師の診察では、顔立ちの特徴や体の動かし方を診るほか、高口蓋、頸屈筋の筋力低下があるかどうかなどを診るようです。医師の診察にくわえて、血液検査や筋電図検査、心電図、骨格筋画像検査なども行われます。これらの検査結果から、先天性ミオパチーの可能性が考えられる場合には筋肉組織の精密検査を行い、病気の確定と病型を判断します。また、遺伝子解析をしてどの遺伝子に異常がみとめられるのかについても分析します。埜中征哉『ここがポイント! 筋疾患患者の診察』第54回日本神経学会学術大会配付資料|一般社団法人日本神経学会先天性ミオパチーの治療出典 : 遺伝子の異常は、残念ながら現状では治せません。そこで、あらわれている症状や疾患にあわせて治療を進めていきます。筋肉は体全体にあるため、全身に症状があらわれます。そこで、複数の専門科の医師が医療チームを組んで、包括的に治療を行うことが多いようです。難病でもあることから、複数の専門科がそろっている大きな病院での治療が中心となります。・筋力低下の症状筋力が低下するのをできるだけ防ぐ、また今ある筋力量を維持するために、リハビリテーションでの治療が行われます。筋力低下で、歩くことができないなどの場合には人工装具や車いすを使います。・顔筋肉の異常、高口蓋(口の中の空間が広い。上あごのドームが高い)歯に影響が出ることもあるので、歯科治療が必要な場合もあります。・呼吸障害( 呼吸不全、痰が出しにくい)呼吸リハビリテーションを行ったり、非侵襲的人工呼吸器などを使ったりします。(非侵襲的人工呼吸器とは、気管切開をせずに鼻マスクを使って人工呼吸ができる器具のことです。)呼吸にかかわる筋肉に異常がみられると、呼吸障害を引き起こしてしまうため、早期の呼吸リハビリテーションがとても大切です。また、痰を出しやすくすることで、感染症を予防するも目的のひとつです。呼吸リハビリテーション施設の一覧のリンクで、お近くにある施設を探してみてください。呼吸リハビリテーション施設一覧|一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会・心臓が収縮するときに使う筋の機能が低下することで心筋症や不整脈などの合併症がある場合には、薬の処方など内科的処置をします。・関節がかたくなってしまう、側弯症など脊椎が変形してしまう症状には、定期的なリハビリーションで関節を柔らかく保つ、人工装具を使うことなどで対処します。・飲み込むための筋力が弱いと、乳児では哺乳障害・離乳期以降では摂食障害を引き起こします。言語療法や、栄養管理が必要になるかもしれません。・知的障害を併発している場合には、環境作りや療育など、本人にあった支援方法を実践することが大切です。・てんかんがある場合には、薬を服用して予防するといった内科的処置をする必要があります。症状が軽い場合には、日常生活を支障なく送れる人が多いようです。そのため、つらい時でも周囲にあわせなければ・・・と、つい無理をしてしまうこともあるようです。まずは体の負担を増やさないように無理はしないようにしましょう。体の負担が大きい場面、たとえば、長時間歩く遠足、体育の授業などでは、車いすを使う、見学するなどの配慮をしてもらうことも考えてみてください。体育で疲れ果てる、息がしづらくなる時には、もしかしたら呼吸筋の異常があるかもしれません。定期的にかかりつけの医師に相談しましょう。筋疾患では、筋ジストロフィーでの臨床研究が進んでいます。先天性ミオパチーでも、厚生労働省による「難治性疾患制作研究事業」が進められ、研究体制が整備されているところです。また、国立精神・神経医療研究センターが運営する患者登録サイト「Remudy」で、先天性ミオパチーのためのページが2016年8月に起ち上がりました。登録すると、最新の臨床研究や、ワークショップ、治験の情報などを受け取れるようです。Remudy(Registry of Muscular Dystrophy)は、臨床試験/治験を目的として、患者さまと製薬関連企業・研究者との橋渡しをする登録システム神経・筋肉疾患患者登録|国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターこのほか、患者会に登録して、同じ先天性ミオパチーの方とつながりをもち、悩みなどを共有するのも良いかもしれません。先天性ミオパチー|一般社団法人先天性ミオパチーの会先天性ミオパチー患者会以外にも、筋肉疾患全体の患者会があり講演会や交流会が開かれているようです。ミオパチーの会オリーブ先天性ミオパチーの人が受けられる支援出典 : 国の指定難病のなかでも医療費助成の対象です。助成を受けるためには、医療受給者証が必要です。医療受給者証を発行してもらうためには、診断書と必要書類を合わせて、都道府県の窓口に医療費助成の申請をします。なお、「臨床調査個人票」と呼ばれる診断書が必要になるので、まずは医師に相談してください。参考リンク:平成27年7月1日施行の指定難病(新規・更新)|厚生労働省先天性ミオパチーは、小児慢性特定疾病にも指定されているので、通院や入院を問わず18歳未満の子どもの治療には医療費が助成されます。症状や検査の結果によっては、対象と認められない場合がありますので医療機関に相談してください。反対に、「重症」と認められた場合には自己負担金がなくなります。医療費助成のほか、日用生活用具の給付や、ピアカウンセリング(当事者やその家族などとのカウンセリング)も受けられる場合があります。支援内容は、自治体で異なるため、お住まいの地域のの保健センターに相談してみましょう。参考リンク:小児慢性特定疾病の医療費助成について|小児慢性特定疾病情報センター小児慢性特定疾病 重症患者認定基準|小児慢性特定疾病情報センター1ヶ月にかかった医療費の自己負担分が、一定の限度額を超えたときに高額療養費として返金される制度です。所得金額で自己負担分の限度額が異なるので以下のリンクを参照してみてください。高額な医療費を支払ったとき|全国健康保険協会症状によって、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳などの取得も可能です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。障害のある子どもを対象にした国の支援制度です。支給される金額や必要書類は、障害の状態で異なるので、発達ナビでは制度の概要と申請方法を詳しく紹介しています。障害年金は、障害のある方を対象とした国の年金制度のひとつです。申請すると、障害の程度によって決められた一定の金額を毎月受給することができます。制度の概要や申請方法や支給金額などについて詳しく解説していますので、申請をお考えの方は参考になさってください。障害のある人とその家族への税金には、障害者控除などの優遇措置がとられています。障害のある人を対象とした税の優遇制度についてまとめた記事がありますので、ぜひご一読ください。ときには、医療型短期入所(ショートステイ)を利用して家族もリラックスしましょう。医療型短期入所は、重い障害のある人を自宅で介護している場合、医療型の施設に一時的に預けることで、介護している人も休息できるようにするサービスです。レスパイトケアサービス・子どもホスピスとも呼ばれていて、重い障害のある人と家族をともに支援をする動きが増えています。レスパイトとは「休息」「息抜き」「小休止」という意味です。また、親子のお出かけや旅行などのサポートをしているNPO法人もあるようです。親子レスパイトケアとは|特定非営利活動法人 親子はねやすめ家族もしっかり休めるように、施設をいくつか探しておくと良いかもしれません。以下のリンク先で、施設を検索できますので参考になさってください。短期入所(ショートステイ)|独立行政法人 福祉医療機構まとめ出典 : 遺伝子の異常が原因で発症する筋肉の病気、先天性ミオパチーをご紹介しました。非常に希少な疾患ですので、情報も少なくまわりに同じ病気の方がいらっしゃらず不安に感じていることも多いかと思います。分からないことや不安なことがあれば、医療機関で相談してみましょう。また、患者会などに参加し患者さん同士のつながりをもつのも良いかもしれません。国による研究体制が整いつつある段階です。運用が始まった国内の患者登録システムは、国際的な患者登録システムとの連携も想定しているそうです。すでに研究が進んでいる筋ジストロフィーの研究とともに、先天性ミオパチーの治療研究も進むことを願っています。
2017年03月31日結節性硬化症とは出典 : 結節性硬化症とは遺伝子の異常によって皮膚、神経系、腎、肺、骨など全身に良性の腫瘍ができる先天性の疾患です。新生児から大人まで幅広く症状がでることがあり、国が認める指定難病に登録されています。新生児期に心臓に腫瘍ができたり、子どもから大人まで皮膚症状や脳・肺・腎臓などに腫瘍ができたりします。現在のところ、この疾患を根本的に治すための治療法はありません。よって表出した症状への対処療法が主な治療になります。結節性硬化症がある子どもには、てんかんや知的障害が合併して現れる場合が多いです。てんかんや知的障害がない場合は軽度の結節性硬化症と呼ばれ、日常生活に大きな支障を感じることなく生活する人もいます。発症する年齢や性別などによって、問題となる病変が異なるのが特徴です。それでは詳しい症状について紹介していきます。参考:結節性硬化症|難病情報センター子どもの時の結節性硬化症の症状Upload By 発達障害のキホン結節性硬化症では子どもの時に表出する症状と、大人になってから表出する症状があります。上記の図のように、いくつかの症状が同時期に起こることもありますので、常に注意が必要になってきます。それでは、子どもの時に起こりやすい主な症状について紹介していきます。<乳幼児期>◇心臓腫瘍心臓の心房、心室に良性の腫瘍が発生する疾患です。発生する腫瘍の9割が良性ですが、腫瘍の大きさや発生する場所によっては心機能に悪影響を与え、後遺症を残すケースがあります。参考:心臓腫瘍|小児慢性特定疾病情報センター◇てんかん発作てんかんとは慢性的な脳の疾患で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こり、またその発作が繰り返しみられる状態を言います。てんかん発作は突然倒れて意識を失い、けいれんを起こすといったいわゆる大発作だけではありません。体の一部が勝手に動いたり、会話の途中にぼんやりしたと思ったら意識を失っていたりといった症状もてんかんの発作として考えられます。◇知的障害知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。知的障害には軽度知的障害、中度知的障害、重度知的障害、最重度知的障害の4つの障害の程度に分類されています。「知的機能(IQ)」の数値のみによって診断がくだされるという印象がありますが、「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会的適応性などの能力を測る指数とも合わせて診断が下されます。◇白斑(はくはん)白斑は非色素性の皮膚病変で、本来の皮膚色より白い皮膚色が3か所以上に発生します。結節性硬化症患者の87~100%に見られ、出生時から生後数ヶ月以内の早期に表出すると言われています。参考:皮膚病変|結節性硬化症.jp<学童期>◇顔面血管線維腫顔面血管線維腫は白斑と並んで結節性硬化症がある方によく現れる皮膚病変です。皮膚の結合組織成分と血管成分の増加によって良性の腫瘍ができます。鼻部、鼻唇溝部、頬部を中心に顔面の中央部に左右非対称に蝶型に現れます。参考:皮膚病変|結節性硬化症.jp◇脳腫瘍(上衣下巨細胞性星細胞腫)上衣下巨細胞性星細胞腫は側脳室の上衣下層にできる良性腫瘍です。腫瘍はゆっくり増大していくために十分な大きさになるまで発見されないことが多く、小児期には腫瘍が急速に増大することがあるため注意が必要といわれています。増大するとてんかんの悪化、視力障害、認知障害などを引き起こすことがあります。参考:脳病変(SEGA、大脳皮質結節、SEN等)|結節性硬化症.jp◇腎臓腫瘍(血管筋脂肪腫)血管筋脂肪腫は腎臓にできる腫瘍で、結節性硬化症がある方の70~90%にみられます。初発年齢は通常3歳以降にみられ、痛みなどはなく無症状のまま年を重ねるごとに腫瘍は増加します。腫瘍が大きくなりすぎると側腹痛や血尿、しこりが現れ、自然破裂や急性出血による大量出血性ショックや腎機能低下のリスクが高まります。参考:主な腎病変(腎AML)|結節性硬化症.jp◇網膜過誤腫網膜過誤腫は網膜にできる腫瘍のことです。痛みなどは無く視力に影響を与えることはありません。しかしまれに増大して網膜剥離(網膜が破れて視力が低下する疾患)や硝子体出血(出血によって視力低下を招くことがある)などの合併症を伴う場合があります。早期幼児期頃から表出するといわれていて、年を重ねるごとに出現頻度が高くなる傾向があります。その他に結節性硬化症の眼病変として、網膜の白斑に類似した網脈絡膜脱色性の病変や網膜無色素斑などが起こることがあります。参考:眼病変(網膜過誤腫)|結節性硬化症.jp大人になってからの結節性硬化症の症状出典 : 結節性硬化症の大人になってから発症する症状について紹介していきます。◇リンパ脈管筋腫症(LAM)リンパ脈管筋腫症(LAM)は、主に20~40歳の女性に多くLAM細胞と呼ばれる細胞が、肺、リンパ節、腎臓などで、比較的ゆっくりと増える疾患です。LAM細胞が両側の肺に散在して増加し、それに伴ってのう胞と呼ばれる小さな肺の穴が複数生じ、進行した場合は息切れなどが生じます。呼吸不全という状態になり酸素療法が必要になることもあります。リンパ脈管筋腫症は以前「肺リンパ脈管筋腫症」と呼ばれていましたが肺だけの病気ではないので名称が変わりました。参考:リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)|難病情報センター◇多発性小結節性肺細胞過形成(MMPH)多発性小結節性肺細胞過形成(MMPH)は肺内にある2型肺胞上皮細胞が固まることによって腫瘍が発生する疾患です。病変がはっきりと限定されずに、全身や臓器全体など広範囲に広がる状態になります。しかし痛みなどもなく無症状であるために気づきにくい疾患です。リンパ脈管筋腫症と違って男女差はありません。参考:肺病変(肺LAM)|結節性硬化症.jp結節性硬化症の原因出典 : 結節性硬化症は9番目(TSC1)と16番目(TSC2)の遺伝子上に異常があることによって、腫瘍をつくるタンパク質(mTOR)をコントロールできなくなることが原因です。TSC1とTSC2はハマルチンとチュベリンという腫瘍を抑制する機能を持ったタンパク質をつくりだします。mTOR(エムトール)は働きが強くなりすぎると腫瘍をつくりだすため、このハマルチンとチュベリンがうまく働かなくなると腫瘍が表出するのだろうと考えられています。またmTORは腫瘍の他にてんかん、自閉症などの発達障害を発症させる働きもあるといわれています。結節性硬化症の方にてんかんや自閉症などの発達障害がある方が多いといわれているのは、結節性硬化症によってmTORをコントロールすることができなくなるために起こるのではないかと考えられています。参考:結節性硬化症|難病情報センター結節性硬化症は遺伝するの?出典 : 結節性硬化症は両親からもらった遺伝子の中に異常が起こることによって起きる遺伝性の疾患です。疾患を発症する可能性は、男女を問わず50%とされています。しかし調べてみると両親に結節性硬化症の症状が全く見つからないというケースが約60%以上あったことが分かりました。このような場合は両親からの遺伝ではなく、両親の精子または卵子の遺伝子に突然変異が起こり、子どもが発病したと考えられます。突然変異が起こる原因は残念ながらまだ分かっていません。またてんかんや自閉症や知的障害などが発症しない軽度の結節性硬化症がある方の場合、また突然変異によって結節性硬化症になった場合でも同じく50%の確率で遺伝子の異常がみられます。また両親が遺伝子異常を持たずに、突然変異によって結節性硬化症が表出した子どもの次に生まれてくる子どもが罹患する確率は、遺伝子異常がない方の出産とだいたい同じだといわれています。出典:結節性硬化症|難病情報センター結節性硬化症の確定診断はどうやって行うの?出典 : 結節性硬化症は遺伝子検査で診断することができますが、実際は遺伝子検査での病変の検出率は低く、臨床診断に頼らざるをえない状況になっています。症状もバラつきがあり、特殊なものばかりではなく結節性硬化症でなくとも一般的に発症することがあるものがほとんどです。したがって、診断はいくつかの症状の組み合わせによって判断していくことになります。臨床診断の他にもさまざまな検査結果と合わせ医師が総合的に診断を下します。下記の要素をもとに臨床診断を行います。・結節性硬化症であることが確実 :大症状 2つ、または大症状 1つと小症状 2つ・結節性硬化症の可能性が高い :大症状 1つと小症状 1つ・結節性硬化症が疑われる :大症状 1つ、または小症状 2つ以上◇大症状1.顔面の血管線維腫または前額部,頭部の結合織よりなる局面2.非外傷性多発性爪囲線維腫3.3つ以上の白斑(hypomelanoticmacules,threeormore)4.シカグリパンチ(shagreenpatch/connectivetissuenevus)5.多発性の網膜の過誤腫(multipleretinalnodularhamartomas)6.大脳皮質結節(corticaltuber)7.脳室上衣下結節(subependymalnodule)8.脳室上衣下巨大細胞性星状細胞腫(subependymalgiantcellastrocytoma)9.心の横紋筋腫(cardiacrhabdomyoma)10.肺リンパ管筋腫症(lymphangiomyomatosis)11.腎血管筋脂肪腫(renalangiomyolipoma)◇小症状1.歯エナメル質の多発性小腔(multiple,randomlydistributeddentalenamelpits)2.過誤腫性直腸ポリープ(hamartomatousrectalpolyp)3.骨シスト(bonecyst)4.放射状大脳白質神経細胞移動線(cerebralwhitematterradialmigrationlines)5.歯肉の線維腫(gingivalfibromas)6.腎以外の過誤腫(nonrenalhamartoma)7.網膜無色素斑(retinalachromicpatch)8.散在性小白斑(confettiskinlesions)9.多発性腎嚢腫(multiplerenalcyst)結節性硬化症を診断するためには、表出している疾患や症状の根本的な原因が結節性硬化症であることを断定していく必要があります。その際にMRIやCTといった画像検査などを行います。結節性硬化症は遺伝子検査または次の項目を含む一連の検査により診断されます。・脳の磁気共鳴画像診断(magnetic resonance imaging、略してMRI)・コンピューター断層撮影 (computed tomography、略してCTスキャン)・心電図(electrocardiogram、略してEKG)・心エコー図検査・腎臓の超音波検査・目の検査・ウッドランプ(紫外光)の下で皮膚を観察する出典:『結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン』|結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会結節性硬化症の症状かも?と思ったら出典 : 結節性硬化症の症状は多種多様なため特定の医療機関を受診するというよりは、症状に合わせてその都度、最適な医療機関を受診することをおすすめします。結節性硬化症の専門分野は主に脳神経外科、神経内科、皮膚科、小児科、泌尿器科になります。発症している症状によって受診する科目を決めて受診するようにしてください。これまでに紹介した病変に関しては下記を参考にしてみてください。◇てんかん・・・小児科または救急◇知的障害・自閉症などの発達障害の疑いを感じた場合・・・精神科◇顔面血管線維腫・・・皮膚科◇心臓腫瘍・・循環器科◇脳腫瘍・・・脳神経外科、神経内科◇腎臓腫瘍・・・泌尿器科◇肺腫瘍・・・呼吸器科◇網膜・・・眼科などまた日本結節性硬化症学会に記載されている結節性硬化症の専門医リストを受診の参考までに紹介します。参考:結節性硬化症を専門的に診療している医師|日本結節性硬化症学会結節性硬化症によってできる腫瘍は良性が多く、また痛みなどもなく気づきにくいです。日常生活に支障がなければ医療機関を受診することはないため、発見が遅れ治療が困難になるケースも少なからずあります。そのため定期的に検査を受けるなどの注意が必要です。結節性硬化症の治療って?出典 : 結節性硬化症を治す根本的な治療はなく、それぞれの症状に対しての対症療法が基本となります。◇てんかんてんかんの治療は主に薬物療法によって行われます。てんかんは脳の神経細胞が過剰に興奮することで起こります。脳に病変があることによって発作が引き起こされているケースでは病変を手術で取り除くことで、てんかんが完治することがあります。しかし多くの場合は神経細胞が過剰に興奮しやすい体質であったり、取り除けない病変であったりするため薬物療法によって発作を抑える治療を行います。◇白斑・顔面血管線維腫白斑の場合、通常は経過観察となります。しかし美容上、気になる場合は紫外線治療や化粧品などでカバーすることができます。紫外線治療に関しては保険が適用になるものもあるので、医師または専門家に相談してみてください。顔面血管線維腫の場合は機能障害や出血を伴い、美観を損なう症例が治療対象となります。液体窒素療法、レーザー療法、外科的切除などの治療法があります。◇心臓・脳・腎臓・肺におこる腫瘍各部分にできる腫瘍は良性であることが多いのですが、腫瘍が大きくなりすぎると機能に異常をきたすため、多くの場合は腫瘍の切除を行います。各部位や程度によって切除をしない場合もありますので、現場の医師の指示に従ってください。結節性硬化症の医療費助成制度や障害者手帳は受けられるの?出典 : 結節性硬化症では腫瘍ができやすい体質のため一度腫瘍を切除しても再発することがあります。するとその度に医療費がかかり、家計を圧迫しかねません。そこで結節性硬化症の方のための医療費補助制度や障害者手帳などについて紹介していきます。結節性硬化症は国の指定難病にされているため、難病医療費助成を受けることができます。指定難病の医療費の自己負担割合は2割です。また、その他の制度による医療費がすでに1割負担となっている患者さんの場合、負担割合は1割のまま変わりません。難病医療費は世帯の所得に応じた医療費の自己負担上限額(月額)が設定されます。自己負担上限額は、受診した複数の医療機関などの自己負担をすべて合算したうえで適応されます。難病医療費助成制度を利用するためにはお住まいの都道府県へ申請が必要になります。申請方法などは次の厚生労働省のリンクを参考にしてみてください。参考:難病医療費助成制度の対象疾病について|厚生労働省参考:結節性硬化症にかかわる医療制度活用ガイド|ノバルティス ファーマ株式会社障害者手帳は指定難病がある方でも取得することができます。障害者手帳があることで支援の幅が広がるため、取得することをおすすめします。障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つの種類があります。身体障害者手帳は身体障害がある方を対象にしています。精神障害者保健福祉手帳は精神障害や発達障害、てんかんなどがある方を対象にしています。療育手帳は発達障害や知的障害がある方を対象にしています。結節性硬化症はてんかんや知的障害なども発症し、障害の程度によっては身体障害を引き起こす可能性もあります。本人の症状の特性に合わせて必要な手帳を取得することをおすすめします。障害の程度に変化が生じても、障害者手帳は数年ごとに更新されてるため、その都度適切なサービスを受けられます。障害者手帳に関して、相談や申請などの問い合わせ先はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口になります。また障害者手帳に関する詳しい内容は下記を参考にしてみてください。障害者総合支援法によって定められた在宅支援や入所支援、移動支援などがある障害福祉サービスを受けることができます。申請先はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口になります。相談支援なども受けることができるため、子育てや病気のことで困ったことが生じた場合には利用してみてください。参考:『「障害者総合支援法」の対象となる疾病を151に拡大します』|厚生労働省まとめ出典 : 結節性硬化症は表出する症状や程度が人によって異なる先天性の疾患です。さらに腫瘍ができやすい体質のために生涯にわたって腫瘍と付き合っていかなければなりません。症状は全身に起こるので、日ごろから健康診断などを受けて健康状態には気をつけることが大切です。結節性硬化症は遺伝性の疾患のため親が責任を感じることがあるかもしれません。しかし遺伝子の突然変異によって疾患にかかる子どももいます。突然変異は人為的に起こるものではないですし、親である自分を責めることはせず、その子どものために親として何ができるのかを前向きに考えていくことが大切ではないでしょうか。家族だけで抱えこまず、専門機関への受診や相談などを受けるなど、周りを頼りながら病気への備え、適切な対応を心がけていってください。
2017年02月28日米国アトランタ出身のマシュー・マクシーは難聴者の一人として、音楽を通した聴覚障害者と手話のコミュニティを作るために、DEAFinitely Dopeを立ち上げた。仲間たちが、居場所を見つけ、そして楽しめるようにだ。そして彼はHiphopやR&Bに新たな可能性を見出した男でもある。(参照元:DEAFinitely Dope)
2017年02月08日こんにちは、保育士でライターのyossyです。皆さんは、『先天性心疾患』についてどれくらい知っているでしょうか?実は、100人に1人 の割合で先天性疾患の赤ちゃんが産まれてくると言われています。意外に多いですよね。 生後すぐに見つかる場合もあれば、大人になってから気づく人もいるのだとか。今回は、先天性疾患のなかでも最も多い『心室中隔欠損 (しんしつちゅうかくけっそん)』(『心室中隔欠損症』とも言われます)について解説します。●心室中隔欠損は500人に1人の病気先天性心疾患の約20%が心室中隔欠損だと言われており、500人に1人程度に起こる病気 ということになります。具体的に、どういう病気なのかをみていきましょう。心室中隔欠損というのは、左心室と右心室を隔てる筋肉の壁に、生まれつき穴があいている病気のこと。心臓が4つの部屋に分かれていることはご存じのかたが多いでしょう。右心室、右心房、左心室、左心房という4つの部屋があります。心臓はポンプのような役割をしていますが、全身からの血液(酸素が少ない)↓右心房↓右心室↓肺(酸素を取り入れる)↓左心房↓左心室↓全身へという順序で巡っていくのです。全身を巡ると血液中の酸素は減ってしまいますが、右心室から肺に行くことで、また酸素を取り入れているのですね。右心室と左心室は隣り合っていますが、壁があるため、本来直接血液が流れ込むことはありません。しかし、心室中隔欠損の場合はそこに穴があいているので、左心室の血液が右心室へ流れ込んでしまうのです。その結果、心臓は余分な血液を送らなくてはならなくなり、負担がかかってしまいます。●呼吸が速くなる、体重が増えづらい等の症状が出ることも心室中隔欠損の場合、生後1週間程度で心雑音が現れることが多く、1か月健診時に診断されることも多いようです。穴の大きさや位置によっても症状はさまざまですが、心雑音以外の症状が全くと言っていいほどないケースも。穴が小さければ、1~2歳ごろまでに自然閉鎖することも多い と言われています。ただし、・呼吸が速くなる・脈が速い・母乳・ミルクの飲みが悪く、体重が増えづらいといった症状が出る場合もあり、手術が必要になることもあります。手術をすれば、問題なく園生活・学校生活を送れるケースが多いようです。●原因は遺伝子の異常であることが多い妊娠中の風疹感染、タバコやお酒、赤ちゃんに有害な薬などの影響で先天性心疾患になることもありますが、赤ちゃんの遺伝子の異常が原因のケースも多いと言います。症状が軽い場合、通常の生活をしているうえでは気づきにくいケースも多い先天性心疾患。筆者の子の場合は、生後4日目の診察で2つの心疾患がみつかり、そのうちの1つが心室中隔欠損症でした。定期的に検査を受け、3歳を過ぎてから完治の診断を受けています。定期的な診断を受けていれば、異常が出ても早期に発見できるケースが多いはず。医師から心雑音などを指摘されたら、早めに専門医を受診しましょう。【参考リンク】・心室中隔欠損症 | 日本小児外科学会()・心室中隔欠損(VSD) | 国立循環器病研究センター病院()・[73]こどもの心臓病 | 国立循環器病研究センター()●ライター/yossy(フリーライター)●モデル/倉本麻貴(和くん)
2016年11月17日女優を始めてから、東京での1人ぐらしを開始出典 : 編集部:女優を始めたときは、地元の奈良から通われていたんですか?津田:最初はそうですね。お仕事を始めてからは、できるだけ学校も頑張って行こうと思っていました。お仕事で学校を休む必要がある場合も、そもそも不登校だったのでむしろ「仕事」という明確な理由がある欠席はあまり気にならないというか…(笑)編集部:奈良から毎回東京まで通うの、大変そうですね…津田:いや、新幹線に座っているだけなので(笑)長期間講演する舞台が決まったときに本格的に上京しましたが、それからの方が大変でした。編集部:1人暮らしですか?津田:そう、1人ぐらし。21歳ごろかな。それまで親がやっていくれていた家事の大変さと、「1人じゃ何も出来ないんだ」ということを痛感しました。トイレから水が出てきちゃった時は、業者よりも先に父に電話して、「なんや、どしたん」と助けてもらい、指示されるがままトイレのタンクを開けて…と、初めてのことだらけでしたね。編集部:あはは(笑)津田:料理もしてこなかったから、唐揚げをつくったときに火災警報器がなってしまった事もありました!編集部:えっ…でも最初から揚げ物とは、難易度の高い挑戦ですね。津田:いや〜ホントですよね(笑)聞こえないのにわかったフリをしていた。それも、もう出来ない。津田:この1人暮らしのおかけで強くなれました。今も親とは離れて暮らしていますが、もし今近くに親がいたら、息子の市役所も保育園も「着いてきて」って甘えてしまうと思います。やっぱり大勢の中でのコミュニケーションが聞き取れないので…1対1なら「もう少しゆっくりお願いします」と言えるのですが、集団になるとどうしても言えずに「何言っているんだろう」という時間が続いてしまうんです。編集部:そんなときはどうしているんですか?津田:例えば保育園の保護者会とかは、終わって他のお母さん達が帰ったあとに先生に声をかけて、「すいません、もう1回お願いします」と言うようにしています。津田:昔はそれが出来なくて、いつも「わかったフリ」をしていました。アルバイトをしていたときも、店長がスタッフ2,3人に指示をだしたとき、隣の子が「はい」って言ったら、何を言われたのかわかっていなくても、とりあえず私も「はい!」と返事をする。後で「あれ、何注意されたんやっけ」と困ることもしょっちゅうありました。それは舞台の稽古でも同じで、監督に言われたことが聞こえてないのに質問できずに後で困る。小さい頃から、「わかったフリはしないで、ちゃんともう1回聞けばいいんだよ」と親には言われてきたけれど中々できず、社会に出てその大切さを痛感しました。編集部:そうなんですね。津田:「わかったフリ」が私の癖になっていたので、最初の頃は「もう1度教えて下さい」と聞き直すのはとても勇気が必要でした。でも、聞かないと自分が困るし周りにも迷惑かける。だからちょっと勇気を出して聞いておこう。そう思えるようになったのは、1人暮らしのおかげですね。聞こえないことを恥ずかしいと思ってた。変えてくれたのは友人の「手話ってかっこいいね」出典 : 編集部:「自分は聞こえにくいんだな」と気づいたタイミングなど聞いてもいいですか?津田:幼稚園くらいの時は、大人が話しているのが「喋っているんだろうけど、何言ってるのかわからない」という状況でした。でもそれを「聞こえないな」とは思っていなくて、「まだ子どもだから」だと考えていたんです。編集部:あ、なるほど。津田:はい、「大人になるとあんな感じで話すんかな」と思っていました。聞こえる人とのコミュニケーションが家だけだったので、自分が周囲と違うという事に気づいていませんでした。小学校に入り、聞こえる学校とろう学校を行き来する中で「自分は聞こえづらいんだ」と知り、中学に入ってからは「聞こえないことは恥ずかしい」に変わりました。補聴器も、人前で手話をするのも恥ずかしい。編集部:恥ずかしい、ですか。津田:そうですね、そう感じていました。人より聞こえないから補聴器をつける、人より出来ないから手話を使う。でも、少しずつ変わっていきました。学校を卒業して、コンビニや焼き鳥屋さんの店員など接客のアルバイトをしていた頃です。お店に聞こえない友達が来てくれて、自然と手話で接客をしていたら、バイト仲間が「手話ってかっこいいね」と言ってくれたんです。それから恥ずかしいとは思わなくなっていきました。編集部:確かに、私たちからすると「もう1つ言語を持っている」と感じるから、かっこいいなと思うときはありますね。津田:そうですか?嬉しいです。ろう学校のクラスメイトの中には、大学に行く子もいましたし、重複障害があって職業訓練校に進む子もいました。私のようにアルバイトをしていた子は、あまりいなかったと思いますね。
2016年07月25日ある日突然、耳の聞こえが悪くなる、大きな耳鳴りがする…。そのうち治るだろう、と思って放置していると、一生耳鳴りに苦しんだり、耳が聞こえなくなる可能性がある病気があります。耳の片側にだけ聴力の異常が発生する「突発性難聴」。早期に治療しなければ聴力の回復が難しいため、はじめに異常を感じてからの対応が肝心です。突発性難聴の症状と治療法を紹介しましょう。■突発性難聴の原因とは?突発性難聴は年間3~4万人が発症し、どの年代にも起こる病気です。耳の深部にある内耳(ないじ)に炎症や何かの異常が発生して、聴力に影響を及ぼします。疲れやストレス、内耳のウイルス感染や血流障害などによるものと考えられていますが、いまだに原因は不明。内耳は複雑な器官で、詳しいことがわからない「耳のブラックボックス」といわれています。暖かくなる春に突発性難聴を発症する人が多いのは、天候や環境の変化によるストレスが多いためなのだそう。 ■突発性難聴の症状突発性難聴になると、ある日突然、・耳が聞こえなくなる・音が響いて聞こえる・めまいがするなどの異常を感じます。ほとんど患者は片耳にのみ、突発性難聴を発症。まれに耳鳴りなどの異常を感じないまま、聴力が衰えているケースもあります。低音域が聞こえにくくなることが多いので、トラックの振動やパソコンなどのモーター音が左右の耳で同じように聞こえるか、チェックしてみましょう。突発性難聴でおこる症状はさまざまですが、おもに次の症状があらわれます。異常を感じたら、すぐに耳鼻科へ行かなくてはなりません。・風邪をひいたときに感じる耳のつまり(閉塞感)がずっととれない・大きな耳鳴りがやまない■すぐに治療を開始しないと完治は困難めまいの症状があると内科に行く人がいるようですが、必ず耳鼻科で診察を受けてください。治療経験が多い、大きな病院が望ましいです。突発性難聴は早期治療しない限り、完治が難しい病気ですが、発症してから2日以内に治療を開始すれば、聴力回復が望めるのだそう。時間がたつごとに聴力回復の可能性はどんどん失われてしまいます。突発性難聴が完治する確率は、患者全体の3分の1といわれています。遅くても1週間以内には治療をはじめないと、一生耳鳴りが消えない、聞こえないなどの難聴症状が残ることになるのです。突発性難聴の治療方法突発性難聴は、副腎皮質ホルモン剤で内耳の炎症を抑える治療が一般的です。錠剤の処方で外来治療するか、症状によって最長で2週間入院して、副腎皮質ホルモンを点滴投与します。外来、入院とも治療中は安静が必要ですので、家事や育児、仕事は休みましょう。突発性難聴は完治が難しい病気ですが、早期に治療を開始すればもとの聴力を取り戻せる可能性があります。子どもにも発症するケースはあるので、おかしいと思ったらチェックして、ママが気づいてあげることが大切です。
2016年05月10日東北大学(東北大)と防衛医科大学(防衛医大)は1月18日、騒音性難聴に関する遺伝子を発見したと発表した。同成果は、東北大学 加齢医学研究所 遺伝子発現制御分野 本橋ほづみ 教授と防衛医科大学校 松尾洋孝 講師らの研究グループによるもので、1月18日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。日常生活の中で大音を聞いたことがきっかけとなり生じる騒音性難聴は近年、内耳の酸化ストレスの増大が主要な原因であることが明らかにされてきた。このことから、内耳の抗酸化機能を強めることにより騒音性難聴を治療できると考えられるが、有効な薬はこれまでに開発されていない。今回、同研究グループは、酸化ストレス応答や異物代謝などの生体防御機構で中心的な役割を果たしている転写因子NRF2に着目。NRF2を欠損するマウスに強大音を聞かせたところ、聴力の低下が顕著であり騒音性難聴になりやすいことがわかった。また、正常のマウスにNRF2活性化剤をあらかじめ投与してから強大音を聴かせると、聴力の低下が抑制された。これにより、NRF2の働きを強めることは騒音性難聴の予防に有効であることが明らかになった。一方、強大音を聞かせた後にNRF2活性化剤を投与しても、聴力の低下を防ぐことはできなかったという。つまり、内耳が強大音により障害された後になってしまうと、NRF2の働きを強めても効果は小さいと考えられる。また同研究グループは、NRF2活性化剤を投与することにより、内耳では多くの生体防御に関わる遺伝子が誘導されており、酸化ストレスの指標となる過酸化脂質のレベルが低下することを明らかにした。NRF2は、酸化ストレス障害から内耳を保護することで、騒音性難聴を防いだといえる。さらにこの結果を受けて、NRF2の量と騒音性難聴のなりやすさがヒトでも関連するかどうかを調べるため、自衛隊中央病院で健康診断を受検した602人の陸上自衛隊員の聴力検査の結果とNRF2遺伝子の一塩基多型の相関を検討した。この結果、NRF2が少なめになる一塩基多型を持つ人の方が、騒音性難聴の初期症状である4000Hzの聴力低下が多く見られることがわかった。これにより、NRF2遺伝子の一塩基多型をもつ人は、強大音にさらされる前にあらかじめNRF2活性化剤でNRF2の働きを強めておくことで騒音性難聴を予防できる可能性があると考えられる。今回の研究では騒音性難聴を取りあげたが、もうひとつの主要な感音難聴である加齢性難聴でも、内耳の酸化ストレスがその原因であるとされているため、NRF2の活性化により内耳の抗酸化機能を高めることは加齢性難聴の軽減にもつながると期待されると、同研究グループは説明している。
2016年01月19日九州大学はこのほど、マウスをモデル動物として妊娠前糖尿病が胎児に先天性心疾患を引き起こすメカニズムを解明したと発表した。同成果は同大学大学院医学研究院の目野主税 教授、蜂須賀正紘 医師らの研究グループによるもので、9月8日に「米国科学アカデミー紀要」に掲載された。これまでの研究から、妊娠前糖尿病が胎児・新生児に対し、臓器形態の左右非対称性の異常である内蔵錯位を伴う先天性心疾患の発症リスクを増大させることが知られている。臓器の左右非対称性は、胚発生初期に形成される左右軸によって確立されることから、今回の研究ではマウス糖尿病モデルおよび全胚培養によって糖尿病が左右軸・心臓形成に与える影響を解析した。解析の結果、糖尿病雌マウスでは、最初の左右非対象形態形成である心臓ルーピングなどの左右性が逆転した胚が出現し、臓器の左右情報に関わるPitx2という遺伝子の胚左側の発現が消失していた。Pitx2発現消失は、左側臓器形態の右側化および先天性心疾患につながることが知られている。さらに、左右軸異常に至るメカニズムを解析するため、グルコースを高濃度に添加した培養液で高血糖状態のマウス胚を発生させた結果、この高グルコース胚では、左右軸情報が生み出されるノードという構造におけるNodalという遺伝子の活性が激減していた。NodalはPitx2を誘導する遺伝子であるため、その活性が抑制されることが、左右軸形成異常に至る原因であることがわかった。また、Nodalなどの発現を誘導するNotchシグナルも抑制されていたことから、高グルコースは左右軸形成期のNotchシグナルを抑制し、これが妊娠前糖尿病における先天性心疾患を伴う内蔵錯位発症の一因になっている可能性があると考えられるという。同研究グループは「本研究から、ヒトにおいても血糖値の逸脱が一過的であっても先天性心疾患が発生する可能性が示唆されます。また、妊娠前糖尿病では様々な種類の先天異常の発症リスクが高まることが知られていますが、その原因の多くは不明のままです。本研究の知見が、他の局面における高血糖の作用を解明する糸口となり、妊娠前糖尿病における先天異常の予防につながることが期待されます」とコメントしている。
2015年09月14日京都大学は6月5日、先天性骨髄不全症候群の1つである「ファンコニ貧血」の新たな原因遺伝子を同定したと発表した。同成果は京都大学の医学研究科博士課程の平明日香氏、同 高田穣 教授らの研究グループによるもので、6月5日付の科学誌「The American Journal of Human Genetics」で掲載された。「ファンコニ貧血」は1927年にスイスの小児科医によって報告された小児遺伝性疾患で、ユダヤ人に多いとされている。日本では年間10人前後が発症していると推定され、進行性の骨髄不全、急性骨髄性白血病や固形腫瘍の合併、先天奇形や不妊などの症状が発生する。主に欧米での研究によって17種類の原因遺伝子が知られているが、日本では症例集積の仕組みが存在しなかったことから解析が遅れていた。同研究グループは、近年発達が目覚ましいゲノム解析技術を用いて網羅的に原因遺伝子を検索したところ、UBE2Tの変異のある日本人患者を2名を発見した。患者の細胞を詳細に解析した結果、同疾患の原因遺伝子であることが確認された。アジアおよび日本人からの発見と同定は今回が初めてで、研究グループは「同じ遺伝変異が韓国や中国に存在するかどうか、欧米などには存在しないのか、興味ある点である」とコメントしている。また、同疾患の患者への治療として、iPS細胞やゲノム編集技術を利用した遺伝子細胞治療の可能性を今後検討したいとしている。
2015年06月05日順天堂大学と理化学研究所(理研)は3月4日、がん研究所、米・ペンシルバニア大学との共同研究により、「遺伝性難聴」の内で50%以上という最大の割合を占める「GJB2(GAP JUNCTION PROTEIN, BETA-2)変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)」の原因である「GJB2(コネキシン26遺伝子)」変異によるメカニズムを明らかにしたと共同で発表した。成果は、順天堂大 医学部耳鼻咽喉科学講座の神谷和作講師、理研バイオリソースセンターらの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、3月4日付けで科学誌「Journal of Clinical Investigation」に掲載された。聴覚障害は出生児1000人に1人の割合で発症する、先天性疾患の中で最も高頻度に発生する疾患の1つで、その半数以上は遺伝子変異を原因とする遺伝性難聴だ(さらに遺伝性難聴は、まれだが皮膚疾患など難聴以外の症状を伴う「症候群性」と難聴を主症状とする「非症候群性」に分類される)。GJB2変異遺伝性難聴は冒頭で述べたように、その中でも日本においては最大となる50%以上もの割合を占めている。GJB2変異遺伝性難聴は難病に指定されており、常染色体劣性と常染色体優性の遺伝形式を持つ「感音性難聴」で、言語発達や教育にも大きな支障をきたしてしまう。また、現時点では同疾患に対する根本的な治療法や治療薬は存在していない。そして「コネキシン26」は、内耳の細胞間のイオン輸送を行うギャップ結合の構成要素の1つであり、内耳リンパ液のイオン組成を保つことにより音の振動を神経活動へ変換することを可能とする重要な分子だ。画像1は内耳・蝸牛の構造である。画像1の右上は内耳・「蝸牛」の位置で、右下は蝸牛の断面図。蝸牛管と呼ばれる空間は高いカリウムイオン濃度のリンパ液で満たされている。左上は蝸牛管の拡大図だ。音の振動を受けた「有毛細胞」では、リンパ液中の高濃度のカリウムイオンが細胞内に一気に流入することで、振動を電気信号に変換し神経活動を生み出している。このカリウムイオンの流れを表したのが画像1の左中央で、カリウムイオンはギャップ結合により細胞間で輸送され、再びリンパ液に戻されることにより、常に高いカリウムイオン濃度を維持している。つまりイオン輸送ができなければ、このリンパ液のカリウムイオン濃度が下がり、振動によるイオンの流入が起こらないために、音から神経活動への変換ができずに聴覚障害の状態となってしまうというわけだ。画像1の左下は、コネキシンは細胞膜で6個の集合体を形成し、これが隣り合う細胞の集合体と連結することにより、中央に分子の通路を持つギャップ結合を形成する(このギャップ結合は分子量約1000以下の低分子やイオンを濃度勾配によって透過させ、細胞間の物質輸送を可能とする)。なおコネキシンは耳以外にも心筋、眼の水晶体、皮膚など、体のさまざまな場所に存在してギャップ結合を形成しており、心筋のギャップ結合は細胞同士を電気的に結合させ、同期的な興奮伝達を行っている。全身で重要な役割を担っていることから、体のさまざまなコネキシン遺伝子が変異を起こしてしまうと、多くの難治性疾患が引き起こされてしまうというわけだ。またコネキシン26、「コネキシン30」は内耳ギャップ結合の主な構成要素であり、ギャップ結合の集合体(巨大なタンパク質複合体)を「ギャップ結合プラーク」と呼ぶ。なお内耳には、コネキシン26と同等のイオン輸送機能を持つほかのコネキシン分子も豊富に存在しており、コネキシン26の働きだけが低下したとしても、そのイオン輸送機能はある程度補完されることが予想されるという。それにも関わらず、なぜコネキシン26の変異を持つ遺伝性難聴患者が重篤な聴覚障害を示すのか、その原因はわかっていなかったのである。そこで研究チームは今回、コネキシン26変異がどのように難聴の原因となっているのかを調べるため、内耳においてコネキシン26遺伝子が部分的に欠損する新しい疾患モデルマウスを作成して研究を進めたというわけだ。コネキシン26変異を持つ患者は劣性遺伝型と優性遺伝型という異なる2種類の遺伝形式により発症し、類似した症状を示す。この点に注目し、2つの遺伝形式を持つコネキシン26遺伝子改変マウスにおける共通点が詳しく調べられた。その結果、2種類の難聴モデルマウスでは共に内耳の細胞から細胞へイオンを輸送するギャップ結合プラークが劇的に分断され(画像2)、大きさが27%程度にまで縮小し、それに伴いほかのコネキシンの量も33%程度にまで減少することが発見されたのである。これにより内耳のイオン輸送ができなくなり、音の振動を神経の電気信号に変換するための内耳リンパ液の組成が異常になるために難聴になると考えられるという(画像3)。この現象は胎生期から始まり、内耳のギャップ結合プラークの正常構造はコネキシン26の発現に完全に依存して維持されていることが証明された(画像4)。つまりギャップ結合プラークの集積・安定化には正常なコネキシン26が必須であり、変異または欠損があると、このタンパク質複合体は劇的に分断されてしまい、ほかのコネキシンと共に減少していくことが明らかになったというわけだ。そこで研究チームはさらに詳しく調べることにし、その結果、コネキシン26の変異により分断されたギャップ結合プラークの周囲では、分子「カベオリン1」および「同2」の量が増加し、これらが行う「エンドサイトーシス」と呼ばれる細胞膜の取り込みが過剰になることがギャップ結合崩壊の原因である可能性が示唆されたのである(画像5)。加えて、研究チームは患者と健常者のコネキシン26およびほかのコネキシンを同時にヒト培養細胞にて発現させ、ギャップ結合プラークの形状と物質輸送能の変化の解析を実施。すると、患者が持つ変異型コネキシン26やコネキシン26が欠損した状態のギャップ結合プラークは、やはり断片化されており、それに伴い物質輸送能も大きく低下していることが判明したのである(画像8)。画像8は、ヒト細胞と患者・健常者の遺伝子を組み合わせて内耳の病態を再現した際の蛍光顕微鏡画像。ヒト培養細胞に健常者の正常コネキシン26遺伝子および難聴者の変異遺伝子を内耳に存在するほかのコネキシン(コネキシン30)と共に導入することにより、内耳での病態を再現することが可能となった。ヒト遺伝性難聴で検出されているコネキシン26・R75W変異およびコネキシン26欠損状態においては、難聴モデルマウスと同様、ギャップ結合プラークが断片化していることが判明。それに伴い物質輸送能も大きく低下することが確認された。これまでコネキシン26変異型遺伝性難聴は、コネキシン26単独でのイオン質輸送能の低下が原因であると考えられてきたが、今回の研究によりコネキシン26がギャップ結合全体のタンパク質複合体を安定化させる役割を持ち、その働きが異常になった際に起こるギャップ結合複合体の崩壊によって内耳のイオン輸送能が低下することが、GJB2変異型遺伝性難聴の大きな原因になっていることが明らかになったというわけだ。現在のところ、この遺伝性難聴に対しては人工内耳や補聴器の適用があるものの、根本的な治療法、治療薬は存在しない。研究チームでは今回開発されたコネキシン26遺伝子欠損マウスを用いて、iPS由来細胞とコネキシン26の遺伝子治療を組み合わせた難聴治療実験を試行し、すでに有効な成果が得られているという。さらに、今回発見された患者の変異コネキシン26によるギャップ結合プラークの劇的崩壊現象は、培養細胞によっても容易に再現可能なため、この現象を有効性判定に利用すれば判定基準のなかった薬剤スクリーニングが可能になるとする。これらはコネキシン遺伝子の変異に起因する、心臓伝導障害(心疾患)、白内障、掌蹠角化症(皮膚疾患)などの多くの遺伝性・難治性疾患の病態メカニズム解明や創薬スクリーニングの指標としても大いに活用できると考えられるとしている。
2014年03月04日生理学研究所(NIPS)は1月29日、「突発性難聴」を発症した患者に、聞こえが悪くなった耳を積極的に活用するリハビリテーション療法で、聴力がより回復することを明らかにしたと発表した。成果は、NIPSの岡本秀彦特任准教授、同・柿木隆介教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月29日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。突発性難聴は急激に聴力が低下する原因不明の疾患で、日本における受療率は年間1万人当たり約3人で増大傾向が認められている。突発性難聴に対してどの治療法が有効かは判明しておらず、現在主流であるステロイド療法の有効性に関してさえ論争中だ。研究チームは、ヒトの脳活動を「脳磁計」で測定し、病気やリハビリテーションなどにより脳活動がどう変化するかを研究している。今回の研究では、突発性難聴患者に対して新しいリハビリテーション療法を行うことで、その有効性が確かめられた。突発性難聴になるとそれを発症した側の耳が聞こえにくくなるため、正常な耳ばかりを使い難聴の耳は使わなくなってしまう。そうすると、難聴の耳から入力を受けている脳の部位も活動を低下させてしまう。脳は使われないと、その機能がどんどん衰えてしまうのだ。そこで、今回の研究では突発性難聴患者の正常な耳を耳栓で塞いで聞こえにくくした上で、逆に難聴になった耳に音楽をたくさん聴かせるという「病側耳集中音響療法」で、難聴の耳とそれに対応する脳部位の神経活動の活性化が試みられた(画像1)。その結果、通常のステロイド療法に加え病側耳集中音響療法が行われた22名の突発性難聴患者の聴力は、ステロイド単独療法の31名の患者に比べて、よく回復したのである(画像2)。また、生体磁気計測装置「MEG(magnetoencephalography)」を使い、病側耳集中音響療法を受けた内の6名の脳における反応の記録も行われた。片方の耳に音を聞かせると通常反対側の脳活動の方がやや大きくなる(左右差=約0.2)が、入院時はこのような脳活動の左右差がないことが確認されたのである。しかしステロイド+病側耳集中音響療法が行われた後では、約3カ月で、健常人と同様の脳活動の左右差が認められるようになった(画像3)。病側耳集中音響療法により、難聴の耳に対応する脳部位が再活性化したのではないか、と考えられるという。岡本特任准教授は、「これまでは突発性難聴に対しては薬物療法を行い静かに過ごすことが推奨されてきました。しかし、むしろ聞こえにくくなった耳を積極的に使うことで、機能の回復を図るリハビリテーション療法が有効であること、また脳活動の回復にも繋がることを今回の研究により示すことができました。今後も、より効果的な治療法の開発に役立て行きたいと考えています」と話している。
2014年01月30日医師限定のSNS「MedPeer」を運営するメドピア株式会社では、「先天性肥厚性幽門狭窄(きょうさく)症の治療」に関するインターネットリサーチを行った。調査対象はメドピアに会員登録をしている小児科、小児外科の医師で、有効回答数は272件。先天性肥厚性幽門狭窄(きょうさく)症は乳幼児に見られる消化器系疾患で、生後2~3週間ごろからミルクを噴水のように大量に吐くようになる病気。飲んだミルクが胃より先に進まなくなり、栄養を吸収できず体重があまり増えなくなる。原因は胃と十二指腸をつなぐ幽門括約筋周辺の肥大といわれている。小児外科の教科書には手術が第一選択と記載されていることが多く、小児科の教科書には内科的治療(幽門括約筋の弛緩(しかん)剤等の投与)が一般的とされている。では現場では実際、どちらの治療法を用いていることが多いのだろうか。手術と内科的治療それぞれのリスク等を両親に説明し、相談した上で治療法を決定すると答えた医師が28%。症状の深刻さに応じて、内科的治療ではなく手術をしたほうが良い場合は手術となるようだが、一般的には内科的治療が先行する場合が多い。「相談して決める」に次いで「外科の先生に相談した上で、内科的治療を行う」が21%。「入院期間・手術時間もそれ程かからないため、手術を行う」は20%。内科的治療は、手術よりお金も時間もかかるようだ。一方、手術はそれなりに体への負担も懸念される。症状の重さや幽門筋の厚みなど個々の体の特徴をよく医師から聞き、患者側が治療について正しい知識を得た上で、治療法を選択すべきだろう。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月19日スマートフォンや携帯型音楽プレーヤーでヘッドホンを使う人が急増中と言いますが、同時に難聴になる人が増えているというニュースが続いています。そこで、聴覚の仕組みや難聴の予防策について耳鼻咽喉科専門医でとおやま耳鼻咽喉科院長の遠山祐司先生にお話を伺いました。■個人差や体調によっても難聴になりやすさが違う――ヘッドホンやイヤホンによる難聴が多くなっていると聞きますが、先生の病院でも増えていますか。遠山先生ここ1~2年、ヘッドホンで音楽を聴き続けたことによって耳が聞こえづらくなったという患者さんが増えています。以前は「ロック難聴」といってロックのコンサートやディスコの強大音で難聴になるケースがありました。今はヘッドホンやイヤホンで音楽を聴くのが習慣になっていて、突然耳が聞こえづらくなる症状で来院する人が多いんです。大きな音を聞いたあとは、誰もが一時的に耳が遠くなりますが、その後平常の状態に戻ります。また、一般的に言うと、若いうちはもとに戻りやすく、年齢とともに戻りにくくなる傾向にあります。とはいえ、個人差も大きく、その日の体調によっても影響の度合いは大きく左右されます。――ヘッドホンによる難聴は耳のどこを損傷しているのでしょうか。遠山先生聴覚は、音の振動によって鼓膜(こまく)がたわみ、それが耳小骨(じしょうこつ)を通って内耳(ないじ)の内リンパ液をふるわせることから起こります。そしてリンパ液の振動が神経に伝わり、脳へと音を感知する仕組みになっています。ヘッドホン難聴はこの内耳の部分が損傷を受けて発症します。今の医学では、この部分を手術で治すことができないため、保存的加療(服薬や点滴など)をします。■後ろから自転車が近づいてきたことが分かる音量にする――では難聴を防ぐには、どのくらいの音量で聞けばよいのでしょうか。遠山先生例えば、ヘッドホンで音楽を聴きながら歩く場合、「後ろから自転車が近づいてきたことが分かるかどうか」が一つの目安になります。音によって聴覚が損傷を受ける「音響外傷(おんきょうがいしょう)」の一つに「騒音性難聴」があります。これは鉄工所や解体作業場など、慢性的な騒音が原因で難聴になるケースです。労災では勤務場所の騒音レベルは85デシベル以下と規定されています。この85デシベルという音量は、工事現場や電車の騒音と同じレベルで、ヘッドホンで音楽を聴く場合でも、音量がおおよそ85デシベル以下なら問題はないといえます。その目安が後ろからきた自転車に気付くかどうかです。ちなみにロックのコンサートやディスコの音は110~120デシベルで、120デシベルを超えると、人は不快になりうるさいと感じます。火薬類の爆発は140デシベルほどあり、衝撃が大きすぎて、耳の奥から耳全体が痛くなります。■ヘッドホンで音楽を聴く時間はCD一枚程度に――ヘッドホンを使うときに気をつけたほうがよいことを教えてください。遠山先生「ヘッドホン難聴」を防ぐには、耳が疲れたなと思ったら休ませることが肝心です。さらに、聞く時間はCD一枚程度にとどめておくのが無難です。また、ヘッドホンは耳にはめ込むタイプのものよりも、耳全体を覆う形の方が負担は少ないです。あと、寝るときにヘッドホンで音楽を聴きながら眠る人がいますが、それは耳を疲れさせるので止めおきましょう。――よく分かりました。ありがとうございました。若くても耳を酷使しすぎて、難聴を引き起こすこともあるのは本当のようです。ヘッドホンで音楽を聴くときは音量や時間に十分に気をつけましょう。監修:遠山祐司氏。耳鼻咽喉科・気管食道科専門医。医学博士。とおやま耳鼻咽喉科院長。とおやま耳鼻咽喉科TEL: 06-6923-4187大阪市都島区御幸町1-9-1地下鉄谷町線都島駅から徒歩7分藤井空、庄司真紀/ユンブル)
2012年02月08日