カンヌ映画祭のコンペティション部門でバイオレンス映画『アウトレイジ』が上映される“快挙”を成した北野武監督が、このほどシネマカフェほかの合同インタビューに応じ、本作に込めた思いから人間行動論までを語った。今回の暴力映画は「たまに食べたくなったカツ丼」新作は、ここ最近の3作『TAKESHIS’』、『監督・ばんざい!』、『アキレスと亀』と打って変わり、バイオレンスへの原点回帰とも言われる9年ぶりの力作。常に意表をついて周囲を驚かせる北野監督らしく、秀でたエンターテイメント作品として仕上がった。「前3作から“ゴダール病”とでも呼べるような自省的な内容の作品にはまっちゃって、先進的なアートとかワケ分かんないこと考えてやったら完全に失敗して、ダメだこりゃ、と。次、何やろう?と思ったら、暴力映画を全然撮っていないなって思って。食べ物と同じで、たまにはカツ丼食いたいな、と。ただ『ソナチネ』とかと比較されて、『何も進歩していない』とか言われるのは嫌だから、もうエンターテイメントだ!観客全員が喜べるようなものを撮ろうってなった。次に思いついた暴力シーンを書き出して、そっからストーリーを逆算したの。コイツはこう来てこう死ぬ、とか、こんな死に方はしないだろって。で、またひっくり返していって、こうなると思ったら大間違いだとか、ここで(観る側を)騙すとか、いろいろ考えて。そしたら完全にエンターテイメントだなって言える作品ができた」。5月のカンヌ国際映画祭ではコンペ上映され、激しい賛否両論で話題を振りまいた。ホラー、ファンタジーを好むティム・バートン監督が審査委員長を務めた賞レースでは賞を逃したものの、芸術性を好む同映画祭のメーン部門でヤクザもののバイオレンス・エンターテイメントが上映されただけで“珍事”だった。「海外のアート的なフェスティバルとかとは関係ねぇなと思ったら、急にカンヌとか呼ばれてしまって、これは結構大騒ぎになるぞ、って思ってたら、案の定、賛否両論になっちゃって。だから『ざまあみやがれ、こんな映画をコンペに選んだのはそっちなんだから、俺は知らないよ』って言ったんだけど。悪口言う人と褒める人と正反対で、まあまあっていう人がいなくて、いいか悪いかはっきりしていたね。でもまあ狙い通りだった。ショックな映画だろうな、とは思っていたから」。“全員悪人”をテーマに暴力団組織内部の抗争を描く同作では、自身、新たな試みとして主演と言えるキャラクターを7〜8人描く群像劇に挑戦。さらに北野組常連の俳優陣をキャスティングせず椎名桔平、三浦友和、國村隼、小日向文世、北村総一朗ら初タッグの俳優を揃えたのも新趣向。中でもインテリヤクザに扮した加瀬亮の怪演が、前評判を呼んでいる。「英語を使うシーンが途中からいっぱいあるインテリヤクザ役があって、英語も話せる役者を探していたら加瀬くんが来た。けど、普段の雰囲気からはどう見てもヤクザに見えないじゃない。どうしよう、と思ってメイクさんと相談して、オールバックにして、眉毛を剃ってみたり、結構苦労した。最終的に四角くて細いサングラスをかけさせたり。それでも『コノ野郎、バカ野郎』って怒鳴り合っている場面で、加瀬くんも入ってきて同じ台詞言っても全然怖くない。だから、この人は無口にしよう、でも、ひとつキレたら殴り出すという風に、徹底的に暴力に寄せた。キレたら怖い奴に設定に変えて台本を書き直して、かなり悪い奴に仕上がった。やっぱりパッと印象に残るようになったと思うし、うまいこといったかなって思うよね」。とはいえ、抗争の中心人物として動くのは、ビートたけし演じる、大友組の組長・大友。『戦場のメリークリスマス』を機に、俳優としても国内外で高い評価を得ているが、自身では顔をクシャクシャにして照れ笑いしながら厳しく自己評価する。「俺は基本的には演技、上手くないからねぇ。へたくそだから、しゃべんない方がいいもん。しゃべるとね、怪しいんだ俺は。『バカ野郎』なんて言ったら、単なる松村(邦洋)のモノマネになっちゃう。『ダンカン、バカ野郎』(松村さんによる、たけしさんのモノマネ)と変わってないって。『てめえ、何言ってんだ、バカ野郎』(本作の台詞)と同じだったっていう。だからできるだけ、怒鳴らないようにしようと思ったけど、みんなが怒鳴っているから、しょうがなくて怒鳴っていると、ふと我に返って、コレ、松村がモノマネするときと俺と、変わってないじゃないか、って(笑)」。大きな見どころのひとつが、バイオレンス描写の過激さ故に北野映画特有のバイオレンスと笑いが繋がって楽しめる感覚だ。「今回、あんまりにも描写が痛くてなぜか笑ってしまう。っていうか、これだけ追い込まれると人間笑うんだなって。編集していても順撮りじゃないから始めは気がつかなくて、ある程度繋がってくるとバカ笑いしちゃうシーンが出てきた。アレ?これ、お笑い映画撮っちゃった、参ったなーと思ったら、編集マンの人が『これだけ痛ければ笑いますよ、喜劇じゃないけど笑わずにはいられない状態になりますもの、これ』って。大丈夫かなって思っていたら、その感覚は世界共通で、カンヌでも観客がバカ笑いしてた。バカ笑いしている割にはみんな暴力映画って言っているわけ」。登場人物たちは、裏切り、騙し合いを続ける。北野監督の考える、人間の悪は?「悪っていうのは人間社会が進化する過程において、人間本来の欲望を規制するために、社会が悪と決め付けたこととも考えられる。例えば、人間が成長してある程度、性的能力とか体に備わって意識するようになったときには、ほかの奴を殴ってでも女を取るのが、生物として本能的だと思うよ。でもそれ、社会として成り立つために、悪=犯罪という括りを付けないと、人間社会自体が成り立たないというだけ。オットセイが周りの奴をかみ殺して十何匹もメスのオットセイをはべらせてハーレム作っているのを『恥ずかしくないのか、お前は。もっと女を分け与えろ、それじゃオットセイの社会は成り立たない』って言ったって、しょうがないじゃない。それは考えてないだけだもん。人間だったら少し頭が発達してきたから、弱者を救うことによって、全体的に盛り上げようとすることで、性とか食べ物の欲望とかそういうものを、独りよがりに行使することを悪としただけ。それがなきゃ、美味いものを食っている奴を後ろからぶん殴って、気絶している間に食って帰っちゃえばいいんだから。それは誰でもしたいと思うよ」。人間は欲望に抑制の効かない未完成な存在そういった悪とキッチリ一線ひけない人間の未熟さも明確に指摘する。「人間ってのは未完成な動物で、こういう暴力映画っていうと暴力は社会に対して悪影響があるんじゃないでしょうか?って言う。だけど拍手して観ている奴がいる。悪いことなら止めるんだけど止めないんだよ。食べ物でも何で腹いっぱい食っているんだ?肝臓壊したり糖尿になったり、体に悪いのになぜ食うかと言うと、頭と体のバランスが人間って全然取れていない。教えてくれないんだよ、体から信号出ていないんだもん。『それ以上食うと体に悪いです』なんて絶対言わないでしょ?だから食っちゃうの。それだけ人間ってね、欲望に対しては規制が効いていない、だからすごい未完成な動物なんだよ」。劇中、数人、生き残るワルがいる。現実社会で生き残るために必要なことは?「多分、グループがあってそこで生き残ろうとする。だから葛藤があるんじゃない?このグループじゃないところにポンと出ちゃえばいい。そうすればこのグループからしたらその人、関係ないだから、客観的に見たらその人、生き残っているってことじゃん、もしかしたらね。漫才ブームのときに一番最初に漫才辞めたの俺なんだもん、もう終わりだと思って。B&Bとかみんなそこにいたけど、俺、ポンと外に出ちゃった。で、結果的にブームはなくなって、たけしと紳助が漫才ブームを生き抜いたって言われるんだけど。俺、TVの次に、今度ラジオに行っちゃった。TV界からラジオに行っただけなんだけど、たけしはお笑いから生き抜いたってことになる。で、次に映画に行っちゃった。TVのタレントから俺だけ映画に行ったら、また生き抜いた、みたいなことを言われる。要するにグループの中に属さないってことじゃないかな。そうすりゃ生き抜いたことになる。怪しいんだけど、俺」。騙す、騙される、どっちが好き?の問いに、「あーあ」と嘆くような口調と優しい笑顔で答えた。「俺ら、騙す商売だからなぁ。騙す商売だけど、騙されることによってプラスマイナスゼロにしているところ、あるよね。よく騙されるの、騙してもらったお金、騙されてぼられているだけだよ」。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:アウトレイジ 2010年6月12日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2010『アウトレイジ』製作委員会■関連記事:モナもシビれた!北野監督作『アウトレイジ』女性座談会ランキング企画!シネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5社長になってほしい俳優といえば?【カンヌレポート 最終回】バルデム受賞にペネロペ涙!最高賞はタイ作品山本モナと“男たち”を語ろう!『アウトレイジ』女性限定試写会&座談会に10組20名様ご招待【カンヌレポート 04】たけし、批評家の採点は辛口も観客からは5分の拍手の嵐
2010年06月10日エレン・ペイジ主演の『ローラーガールズ・ダイアリー』で初めてメガホンを握ったドリュー・バリモアの動画インタビューが到着した。4歳での映画デビューを皮切りに数々の映画に女優として参加してきた彼女だが、“監督”として描きたかったものは――?映画は、田舎で母親が望む通りに生きてきた少女が、“格闘技”と言えるような激しさを持つ“ローラーゲーム”に出会い、新たな自分を発見していく姿を描いた作品。ドリューはこの映画を通じて「メッセージを送りたい」と言う。「自分自身を発見すること。手の届かないゴールなんてない。限界なんてないのだということを信じるの。女の子にできないことはないと信じているわ」。天才子役として名声を手にし、その後、紆余曲折を経て、いまなおハリウッドで活躍を続けるドリューの言葉だからこそ、重みを持つ。また、ドリューは主演のエレンを絶賛!「彼女には自信と力強さがある。この役の彼女は一味違うわ。魅力的で素晴らしい女性なの。弱さもセクシーさも、お転婆なところもあって…」とその魅力を挙げてくれた。悩んだり、周囲とぶつかり合ったりしながらも少しずつ成長し、“自分”を見出していく主人公・ブリスの姿から、ドリュー自身の生き方が垣間見えてくる。『ローラーガールズ・ダイアリー』は5月22日(土)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開。※こちらの特別映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:ローラーガールズ・ダイアリー 2010年5月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開© 2009 BABE RUTHLESS PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved.
2010年05月21日母娘3人組音楽ユニット「矢島美容室」の母マーガレット、長女ナオミ、次女ストロベリーがこのほどインタビューに応じ、主演映画『矢島美容室THE MOVIE〜夢をつかまネバダ〜』にまつわるプライベートと素顔を語った。同ユニットのプロデューサーのとんねるずとDJ OZMAからのスカウトを機に、消息不明の父・徳次郎を探す目的で故郷・米ネバダ州を出て2008年9月に来日。フジテレビ系バラエティ「とんねるずのみなさんのおかげでした」を中心に音楽活動中。同作は、ネバダ州を発つことになるまでの一家のエピソードを描いた、父と日本のファンに向けた“ラブレター”だ。本作誕生について、現在12歳のストロベリーは「なぜ私たちが日本に来たかをまだ知らない方が多いから、知ってもらいたかった。全編、ネバダ州勝浦、ネバダ州調布で撮りました」とつぶらな瞳で説明。マーガレットが「これはあたしたちのドキュメンタリー。あたしたちを取材して台本にしてもらいました」と話すと、ストロベリーが「細かい脚本は沢木耕太郎さんに書いてもらいました」と冗談を交えて嬉しそうに付け足す。ナオミは「私たちは映画が大好き。ドラマや漫画の原作モノが多い中、オリジナルストーリーで、ただ泣かせるのではないリアルなドラマを、不況の日本を明るくできるようにミュージカル要素を取り入れてみました」と言い、「好きな映画は『ビー・バップ・ハイスクール』。出てくるツッパリがほとんど素人ながら全国の中高生に夢を与えたってことに当時衝撃を受けました。『ヤングマガジン』(講談社刊)でキャストの募集を見ていたけど、自分の先輩も応募しちゃったりして。やられキャラだったケン坊が地元では結構なワルだった、という情報もキャッチしております」と日本映画フリークな一面も。マーガレットは「私の一番好きな映画は『ジョーズ』、2位は『タワーリング・インフェルノ』」。ストロベリーは「私は『愛人/ラマン』、将来ああいう男を翻弄する素敵な女性になりたい」と一家の趣味は多彩。明るい笑顔の裏で、ネバダ州時代にそれぞれ乗り越えた悩みがあり、本作で前向きなメッセージとして描いている。恋愛と友情の板挟みになったストロベリーは「人間はこうやって成長していく。楽しいことがあればつらいこと、つらいことがあればまた楽しいことがある。『禍福はあざなえる縄のごとし』、最近覚えた日本語です」とニッコリ。ビターな恋愛を経験したナオミ「このようなルックスでございますから、今回のテーマは全国の顔に恵まれない子供たちに、ブスでもがんばれば主演女優になれる、という夢を与えること。それでいつかは素敵な人と巡り合える。『蓼食う虫も好き好き』、最近覚えた日本語です」と瞳をキラキラ。すかさずマーガレットが「意味は、いいヘアメイクアップ・アーティストを雇え、です」と解説すると、ナオミは「そうです。スクリーミング・マッド・ジョージにお願いしています」。ストロベリーは「私はメイ牛山」。マーガレットには「私はIKKO」と言い、「IKKOのすっぴんも見ましたが、私もいけるんじゃないかと思って、遅咲きのゲイになろうかと。もっと繊細になりたいわ。まず韓国から化粧品を売り出します、サイドビジネス?そう、家族が食べていくためにね」と“シングルマザー”の憂いをチラリ。一家のいま、一番の願いは父・徳次郎との再会。だが現在、「会えていないです」(ストロベリー)、「音信不通」(ナオミ)、「代官山で一回見かけて、サッといなくなった。絶対あれパパよ」(マーガレット)という状況。言いたいことは?「けじめをつけてもらいたい。逃げ惑っている感じがするので」(ナオミ)。まだ見ぬ父を囲んだ一家団欒を心待ちにしている。日本に来てまもなく2年。姉妹は健やかに成長しているよう。ナオミが「元々はステージの上に憧れているものの内向的なところがあったんですけど、日本の方々の優しさに触れて、ようやく自分のことを解放できるようになってきたかなって」と精神的に成長。だが「日本のお料理が美味しすぎて最近少し太っちゃって」とお年頃の悩みも。マーガレットから「この子、年頃なので最近、六本木によく行ってまして」と苦笑いながら温かい眼差しを向けられ「外国人の方がたくさんいるので、自分も気楽にいられるので」とテレ笑い。ナイーブな素顔ものぞかせた。音楽活動、映画出演に続き、3人の活躍のステージはまだまだ広がり続けそうだ。3人は、雑誌創刊にも興味津々のご様子。ナオミは「ファッションからセクシーなグラビアまで、写真の撮り下ろしも自分でやって、素敵なコラムもある、往年の宝島のようなカルチャー誌、作れたらいいな、と真剣に考えています。昔、『ホットドッグ・プレス』(講談社刊)で育ったところがありますので北方謙三さんの連載、『試みの地平線』を復活させるような」。ストロベリーは「日本に来て非常に驚いたのは非常にリアルな性描写の雑誌や映像が多い。そういうものが私たち未成年にすぐ目に入る場所に置いてあったり氾濫しているので、抑制するために『漫画エロトピア』(1973〜2000年発行の官能劇画誌)を作りたい!漫画だったら大丈夫」と提案。マーガレットも「映像だとリアル過ぎて何が本当か分からないですからね」。ナオミも「情操教育されましたね。ロマンのある雑誌」と同意見。ストロベリーは「ドキドキしましたね〜、ああいうものをもう一度」と胸を膨らましていた。(text:Yoko Saito)矢島美容室動画メッセージ■関連作品:矢島美容室 THE MOVIE 〜夢をつかまネバダ〜 2010年4月29日より全国にて公開© 矢島美容室プロジェクト■関連記事:自己紹介から暴走! 矢島美容室から独占動画メッセージ到着好きな日本語は…?設定無視? 矢島美容室が携帯で過激トーク 「矢島Bee容室」配信&主題歌ビデオも山本裕典、大東俊介らが前宙、バク転…新体操演技を初披露阿部寛山下達郎の音声メッセージに「本当に山下さん?」“ストロベリー”石橋貴明、メイサに抱きつき暴走矢島美容室イベント
2010年04月27日空気感のある映画──とても曖昧な表現に捉えられるかもしれないが、『スイートリトルライズ』という映画にはそんな“空気感”という言葉がよく似合う。ある1組の夫婦の物語、危険なラブストーリーなど、どんな作品であるかを簡単に説明することはできる。けれど、空気感のある映画という表現にはかなわないような…。なぜ空気感なのか?という答えは、矢崎仁司監督の映画監督としての佇まいのなかに隠されていた。「僕自身が好きな映画は夫婦の話が多いんです。だから、いつか自分も夫婦の話を撮ってみたいなと思っていて。江國香織さんの原作を読んだとき、いいチャンスだなと思いました。原作の登場人物を生身の人で動かしてみたいかどうか、それが自分にとって映画化したいかどうかの決め手でもあって、この原作を読んだときにそう思えたんです」。監督がずっと描きたかった夫婦の映画は、江國香織の原作との出会いで実現したというわけだ。だが、この物語に登場する瑠璃子と聡の夫婦を“少し変わっている”と感じる人も多いはず。中谷美紀、大森南朋に会って感じたことテディベア作家の妻・瑠璃子、IT企業に勤める夫・聡。どこにでもいる幸せな夫婦に見えるが、2人の間に小さな溝、小さな違和感、小さなすれ違いがあり、それが互いを別の恋に走らせる。そんな夫婦を中谷美紀、大森南朋の2人の俳優が演じている。キャスティングの決め手となったのは、監督がいつも大切にしている“感覚”。「僕はいつも頭のなかをニュートラルにした状況で原作を読むんです。プロデューサーから事前に“この俳優はどうか?”と提案されてもあまり考えない。絶対にこの役はこの人と決めつけるのではなく、実際に会ったときに自分がどう感じるのかが大切なんです。極力ニュートラルでいたいと思っています」。そして、「僕は本当にラッキーな人間」と笑みをこぼしながら、中谷美紀と大森南朋との出会いを語る。「中谷さんと大森さんに会ったとき、すぐに『あっ瑠璃子だ!』、『あっ聡だ!』と感じました。中谷さんに関しては、会う前に彼女の過去の作品をいくつか観ていましたが、実際の彼女の印象はスクリーンで見る印象と全く違っていて。僕が感じたのは、とても品のある美しさを持った孤高な人だなと。彼女のその美しさ、それだけは絶対に映像として映し撮らなければならないと心に刻んだんです。大森さんはプライベートで会うとヒゲを生やしていたりして、わりとラフな人。聡のようにスーツにネクタイというかっちりしたイメージではなかった。でも、絶対に他人に見せない部分、さわってはいけない部分というのが彼のなかにあって、それが僕のなかでは聡につながったんです」。ただ、聡と恋に落ちるしほ役の池脇千鶴だけは例外だった。「ニュートラルにしようと思っていても、原作を読みながら頭の中でしほが池脇さんとして動いているんです。どうしても池脇さんが思い浮かんでしまう。もし彼女にしほ役を引き受けてもらえなかったらどうしようかと(苦笑)。引き受けてもらえて嬉しかったですね」。監督の代表作である『ストロベリーショートケイクス』(’06)に彼女が配役されていたことも少なからず影響しているのだろうが、やはりその感覚に従うのも矢崎監督らしさだ。僕の映画にテーマはないまた、あえてテーマを用意しないのも矢崎映画の特徴。作家であれば、何か伝えたいことがあり、それを言葉や映像にすることはごく自然なこと。けれど、忘れてはならないのは矢崎仁司監督は感覚に重きを置く監督であること。「理解には興味がない。極端な言い方をするとストーリーにも興味がない」と断言する。「映画を観た人が普段忘れていたことを思い出すことができたら、それで十分なんです。普段忘れている感情の記憶に届くものは空気感でしかない。物語からは記憶は届かないんです。例えば、今回の作品で言うと、瑠璃子と聡の気まずい空気感を“知っている”と感じた瞬間に、その人の過去の想い出がよみがえってくる。それで十分。でも、最近は説明過多な映画が多いと思っていて。本来、映画は美術館で絵を見て何かを感じるように、感じるもの。だから、絵画に添えられているキャプションを読んだり音声解説を聞いたりしながら理解するものではないと思っているんです。映画も同じ。ストーリーが分からないと映画を楽しんだことにならないと思っている人がいるとしたら、それはとても悲しいこと。映画館の暗闇で感じたことが全て、観客ひとりひとりが感じてくれたことが全て。僕が作る映画はそういうものなんです」。自分の映画に「テーマはない」と言うが、感じること──監督が繰り返すこの言葉こそがテーマであり、観客はタイトルの「小さくて甘い嘘」についても深く考える、いや、感じるだろう。そして最後に投げかけた質問は、この映画を通じて監督は嘘をつくことについてどう感じているのかということ。矢崎監督、生きていくうえで嘘は必要ですか?「僕がこうして映像の世界にいるのは、嘘のなかにしか真実がないと思っているからです。だから、嘘はとても大切」。この言葉の真意は、もちろん『スイートリトルライズ』の中に…。(text:Rie Shintani)大森南朋インタビュー:coming soon中谷美紀インタビュー:coming soon■関連作品:スイートリトルライズ 2010年3月13日よりシネマライズほか全国にて公開© 2009 江國香織/「スイートリトルライズ」製作委員会■関連記事:中尾彬夫妻、30年前の結婚3年目をふり返り「仕事してた記憶しかない…」『ニューヨーク,アイラブユー』公開記念恋愛力アップグッズを合計8名様プレゼント狗飼恭子×大森美香トークショー付き『スイートリトルライズ』女性限定試写会に30組60名様ご招待『スイートリトルライズ』ポスター解禁2人の姿から感じるのは寂しさ?それとも…小栗旬初監督作引っさげ北海道に!ゆうばり国際映画祭ラインナップに注目
2010年02月24日こんにちは。整理収納アドバイザーの佐々木奈美です。子育てをしていると「子供のためになるものを」とついいろいろと買ってしまうのもの。気づけば家の中にカラフルなものやキャラクターものが増え、好きなインテリアから遠ざかってしまう…なんてことも。子供のものも、きちんとかわいいデザインものを選びたいですよね。今日ご紹介するのは、FORNEさんの知育ポスター。子供のこともしっかり考えながら、ママ目線でもうれしいデザインです。絵本のようなイラストで、暮らしに「あそぶ」時間を。子供の知育おもちゃは、世の中にかわいいものがいっぱい増えてきたけれど、ひらがな表やカタカナ表はなかなかいいものが見つからず…。知育ポスターは景品や付録でいただくことも多いものですが、キャラクターものだったり、紙製でお風呂には使えなかったり…と、 “ちょうどいい”ものが押さえづらい。ママと子供どちらにもピントが合うデザインのものを見つけるのが至難の業でした。ママたちが本当に欲しいのは、暮らしに楽しく使えるもの。FORNE(フォルネ)さんの知育ポスターは、カラフルすぎず、落ち着いた色味のデザインです。モノトーンほど極端ではなく、ほのぼのとしたやわらかさを感じる色づかいが魅力的。それはまるでインテリアポスターのような存在感。イラストも一つ一つが丁寧にデザインされていて、子育ての中、暮らしの中で目にするものたちが、ほっこりとしたデザインで並んでいます。絵本の中で出てくるようなものから、暮らしの一コマで目にするようなものまで。子供と眺める時間に、目尻が下がるような愛くるしいイラストばかり。忙しい時間にも、つい足を止めてしまう。子供と対話する時間をつくってくれるような、そんな知育ポスターです。FORNEは「つくる あそぶ しる をくらしのなかに」をコンセプトに、子供と大人が楽しめるものづくりをするプロダクトブランド。まさに、子育ての時間を育んでくれるアイテムですね。もうインテリアを諦めなくていい!部屋をおしゃれに飾る知育ポスター。わが家がお迎えしたのは、「あいうえお」、「カタカナ」、そして少し小ぶりな「ABC」。他にも「数字」や「掛け算」、「日本地図」があります。子供たちのお勉強部屋には、リビング横の和室を使っているのですが、「和室インテリア×子供部屋」の方程式はなかなか難しく、ミスマッチな組み合わせだからこそアイテム選びに腕が鳴ります。子供たちの学習道具入れにかごを使ったり、木の家具を使ったりと、ここは私のこだわりがたくさん詰まっています。一方の子供たちも、自分の好きな色のランドセル、チェアを選んで、自分のスペースづくりを学んでいる場所。FORNEさんの知育ポスターは、シックな色使いがこの和室にぴったりだと思い、チャコールグレーをベースに男の子らしい子供部屋にシフトできました。4月から小学生になる末っ子三男。「あいうえお」と「カタカナ」がデスク前の壁にあると安心するようで、お勉強に取り組み中。がんばる光景にかわいいポスター。ほっこり。しばらくは新1年生のサポート役として、末っ子三男を助けてくれそう。デスクパッドの下に敷く、こんな方法も。ダイニングテーブル用の透明テーブルマットをカットして、学習デスクに敷いているのですが、こんなふうにデスクを着替えさせることもできます。キャラクターものはちょっと…というママに、おすすめです。兄弟にお下がりOK!水でくっつくからお風呂にも貼れる。お風呂の時間は、子供とゆっくり対話できる貴重な時間。この時間を、いろんなことを教える場にするといいんですって。お風呂は、知育ポスターを貼るのにぴったりな場所なのです。ゆっくり湯舟に使って、数字を数えたり、ABCのうたを歌ったり、日本地図を覚えたり。FORNEの知育ポスターで、お風呂に広がる世界は楽しさいっぱい。お風呂に貼るとモダンなイメージに。和室とまた違った雰囲気で、インテリアを楽しんでいます。ポスターの紙は丈夫で破れにくく、防水性のある素材。水でお風呂の壁にくっつくから、何度でも剥がすことができます。兄弟で、上の子に使ってしばらく保管しておいて、次は下の子の時に…という使い方も。また、上の子用に「日本地図」、下の子用に「ひらがな」という貼り方も、家族みんなで楽しめそうです。カラーもいろいろなので、お風呂の模様替え感覚で楽しむのもいいですね。ママもうれしい、おしゃれな知育ポスター。子育ての時間を育みながら、インテリアも楽しんで、親子のしあわせ時間がもっと増えますように。 【ご紹介したアイテム】大判タイプは「あいうえお」「カタカナ」「数字」「日本地図」の4種類から。ほっこりするイラストが、親子の学習時間を楽しく育んでくれます。⇒ FORNE 知育ポスター B4/フォルネ 【ご紹介したアイテム】小ぶりサイズは「ABC」と「掛け算」。やわらかなデザインで楽しくお勉強できる知育ポスターです。⇒ FORNE 知育ポスター B3/フォルネ nami sasaki整理収納アドバイザー。夫と三兄弟と5人暮らし。毎日の暮らしを楽しむ工夫探しが好き。収納で暮らしを心地よく。
2001年12月05日家事と仕事の両立。一番大切にしたい子育ての時間。時間はいくらあっても足りず、その中で自分の時間は減っていくばかり…。子育てをするようになってそんなふうに焦っていました。自分の時間だって充実させたいし、ママが自分の世界を持っていた方が育児もうまくいく。何も考えずにだらだらと家事を進めていた私がそう思うようになったのは、収納を整え始めた頃から。子育て中心の生活にさらに仕事を持つようになり、そこで思い知った時間の大切さ。そして、暮らしと仕事との時間のバランス。今日は、整理収納アドバイザーとして収納を整えることで得た、時間の整え方についてお話ししたいと思います。収納を整えたことで、時間も整うようになった、うれしいお話。家事の引き算をする暮らしの軸は子育て。仕事を始めるにあたり悩んだのが、子育てベースの生活に、仕事時間をどうやって作るかということ。当時、末っ子はまだ2歳。長男小4、次男小1という、まだまだ手のかかる男の子3人の、週末ワンオペ育児真っ只中!という時期でした。これ以上時間をつくるのは無理。「それなら、家事の引き算をしよう。」発想を変えて、家事の無駄な動きをカットしていきました。手を抜くのだけど、それは「質の引き算」ではなく、無駄な作業を省くという意味の「量の引き算」。全ての家事において無駄な作業を減らして、より効率的なものになるよう、徹底的に家事計算をしました。洗濯物を取り込む家事を20分短縮!例えば、毎日の洗濯物。洗濯物を取り込んだら、きれいに畳んでそれぞれの引き出しに丁寧に収めるというのが、夕方の家事の一つですよね。座って畳み始めると作業に取られる時間は30分。やってもやっても山のようにある洗濯物に、引き出し収納をやめ、10分で終わる家事に変えました。洗濯物をハンガーから取ったら、立ったまま、ひらりと折り畳んでボックスへポイっ!使用頻度の高い衣類は、引き出しにはおさめないことに。家族が開ける度にぐちゃぐちゃなる引き出しには、ストック衣類だけを収納。衣類は衣替えの度に、必要のないものを手放していき、必要最低限しか持たないように数も減らしました。たくさんあっても結局着ているものはいつもお気に入りばかりだから。使っていないものに、自分の仕事を費やす作業は「引き算」したのです。作業で浮いた時間は20分!これがなんともうれしいご褒美時間となるのです。「行ったり来たり」を減らす「家事の引き算」でポイントとなるのが、家事動線の短縮。家事の中での、行ったり来たりを減らすだけで、ずいぶん体と時間の負担を減らすことができます。例えばキッチンでいつもの位置に立って、その場から歩くことなく道具が取れたら、ずいぶんラクだと思いませんか?立ったまま必要な道具に手が届き、行ったり来たりの動作がなくなるだけで、動作の交差がなくなり、動きがシンプルに変わります。よく使うものは、立ち位置から届く場所に収納し、あまり使わないものは使いにくい収納スペースに。こうして自分に動きやすい場所の収納を整えることで、コンパクトに効率化させることができるのです。まさにこれが収納の力。便利でおしゃれな道具にも頼るのも手。これは市販の醤油にかぶせる、醤油カバー。醤油さしを管理するのが苦手な私は、市販の卓上醤油を活用。パッケージを隠し、そのままテーブルに置いても気にならないデザインにしてくれるカバーなのですが、これのおかげで、お醤油を補充する手間と洗う手間まで省けているのです。家事計算をして生み出した時間は、私のぶん。小さな時間を積み重ね、浮いた時間を足し算していくと、別の活動ができる大切な時間に変えることができます。「この家事、無駄になってるんじゃないかな?」そう感じたら、思い切って家事の引き算。収納を整えて、新しい時間を見つけてみてくださいね。 ■暮らしのはなし 連載:整理収納アドバイザーのお片付けノート nami sasaki整理収納アドバイザー。暮らしのまんなかにはいつも散らかし三兄弟。毎日の暮らしを愉しむ工夫探しがすき。収納で家事を心地よく。
2001年12月05日