経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子さんの新著『誰も書かなかった世界経済の真実~地球経済は再び斬り刻まれる~』(アスコム)をご紹介します。『通商』というテーマを軸に、世界経済の真実、グローバル経済の今とこれからが、わかりやすくまとめられています。タイトルの「誰も書かなかった」は「誰も書けなかった」という意味でもあり、私たち誰もが理解していなかった真実と言えます。同書は、その真実が明快に解析された珠玉の一冊です。鈴木 : 浜先生にはこれまでに何度か取材させていただいてるのですが、いずれもテーマは『通貨・ユーロ』についてでした。それが今回は『通商』がテーマ。読ませていただくと、先生の深い造詣と熱い思いが伝わってきます。『通商』をテーマとされた背景には、「満を持して!」という意識がおありだったのでしょうか?浜 : 満を持して…と言えば確かにそうだと言えるかもしれません。私は常々「FTA」や「TPP」に対する世の中の解釈が間違っている、解説される方々も勘どころがハズレている、と感じていました。また、皆さんの関心が「通商」から「通貨」へと変わっていくなかで、実は、「通商」の領域で本当に怖い事態が起こりつつあるということをお伝えしたいと思っていました。それで、時あたかも「TPP」議論が注目を集め始めたこのあたりで、全面的に『通商』にフォーカスし、その実像と怖さを追求してみたいと考えたのです。鈴木 : その狙いについては、同書のプロローグ部分に託されていますね。鈴木 : プロローグを読むだけで、グローバルに行き交うマネーの変遷、地球サイズでの「通商」と「通貨」の攻防・関係性を俯瞰して捉えることができます。「通商」と「通貨」は、本来、車の両輪であるべきなのですよね。浜 : はい。「通商」はモノの世界。「通貨」はおカネの世界。この双方の足並みが揃わなければ、安定的な共生が成立しないのです。今は、おカネの世界が、モノの世界よりも大きくなりすぎ、国々の依存関係を壊す撹乱要因になっています。鈴木 : このいびつな関係性については、常に目配りしておく必要性があるわけですね。そうしたなか、今日のグローバル経済において、各国が共存していくことのできる通商・貿易関係とはいったいどのような形を指すのか? 現状の通商風景の問題点はどこにあるのか? その点を探るべく、第1章では、TPP・FTA・EPA各々の内容や関係性が丁寧にまとめられていますね。鈴木 : TPP交渉の対象分野は24分野もあり、多岐に渡っていますね。日本政府の整理・分類によれば21分野に上ります。浜 : そうなのです。日本での報道のされ方を見ていると、主に農産物中心のイメージに偏りがちですが、それではTPPの全貌は見えてきません。鈴木 : 交渉分野は「物品市場アクセス」「電気通信サービス」「金融サービス」「投資」「環境」「労働」「知的財産」に至るまで多種多様な業種・業界が対象となっています。改めて驚きました。ぜひ同書を読んで読者の皆さんにも確認してもらいたいと思います。浜 : まず、TPPが単なる日本農業の保全問題ではないということをご理解いただきたいですね。鈴木 : 各々の通商形態とその実態を把握できたところで、第2章からはタイムスリップの旅が始まりますね。この発想がおもしろくて読みやすい!浜 : ありがとうございます(笑)。通商の歴史書というのは、どうしても読みづらい難しい書になりがちなのですが、できる限り、読者の皆さんの頭に入りやすい表現の仕方を試みました。史実を整理しやすくするために、タイムスリップした時代ごとに区切って「世界経済史年表」も付けています。鈴木 : 本当にわかりやすかったです。そのタイムスリップですが、まずは第2章、WTO(World Trade Organization : 世界貿易機関)が誕生した1995年へと向かいますね。そこではWTOの前身がGATT(関税と貿易に関する一般協定)であること、最も今的であるはずのWTOがグローバル化の進展により、今や取り残された存在になってしまった経緯と理由が明かされています。この第2章を読んで、WTOがうまくいかない時代状況や、実際にいくつかの問題点があるにしろ、FTAやTPPで細かく貿易区域が限定され始めている今こそ、WTOが掲げる自由貿易の基本理念に立ち返るべきなのではないか、と改めて考えさせられました。鈴木 : この相互関係という言葉と互恵関係と言う言葉はとてもよく似ていますが、実は根底の部分で、その意味が違ってくるのですね。浜 : そうなのです。相互主義というのは、奪い合いの論理、それに対して互恵主義は分かち合いの論理と言えます。つまり相互主義は、市場においてどれだけのシェアを奪い取ることができるのかを考えること、一方、互恵主義は市場をいかにうまく皆で分かち合いシェアできるかをおもんばかること。奪い合いの対象として、マーケット用語で言うところの占有率のシェアと、フェイスブックなどで浸透している分かち合いを意味するシェアとの間には、大きな違いがあります。奪い合いのシェアの意識が強まれば、それは地球経済を斬り刻み、占有率を高める行動につながっていくことになります。鈴木 : EPA、FTA、TPPは、各国同士の奪い合い、国々が自国の占有率を高めるためのシェア意識と言えそうですね。この「シェア」については、第3章において1948年、第4章で1930年代へと遡る旅をした後、第5章にて、浜先生の見解を述べていらっしゃいます。これまで転倒、倒錯、混迷してきた「通商」の世界の未来に向けて、その解決策が見出されていきますね。浜先生らしい発想だなぁと感じました。私がまさに「惚れた!」ご意見でもあります。鈴木 : まとめとなる第5章では、そもそも市場というものが、弱肉強食のジャングルの世界なのか、ということについても触れていらっしゃいます。浜先生はそこは違うのではないかという考えをお持ちですね。浜 : はい。ジャングルという世界は、淘汰の世界であるのは確かですが、調和を保った共生の世界でもあるわけです。つまりあらゆる生き物たちが、各々に一定の役割を果たし、生態系の循環が形成されている世界です。強者だけが他の全てを食べ尽くし生き残ったとしたら、そのうちに生態系は滅びてしまいます。本来の共生・互恵の関係はジャングルの世界でも成立しているのです。グローバル・ジャングルの共生の論理を多くの人たちが知り、そこから今、そしてこれからの時代に合った理念・解決策を見出すことができれば、と思っています。鈴木 : その理念探しのマラソンのゴールを読者の皆さんにも目指してほしいものですね。今日は忙しい中、ありがとうございました。浜 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月01日2012年1月10日(火)より、インターネットショッピングサイト「ファミマ.com」にて、陸前高田市の酒蔵・酔仙の本醸造生原酒「初酒槽」が、浜のミサンガとセットで発売される。新酒にかける想い・陸前高田「酔仙」2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、陸前高田市の蔵が壊滅・流失してから3ヶ月後の6月、酔仙は一関市千厩町での操業再開にあたって動き出していた。撤去、移転、そして新酒の仕込みと、凄まじいスピードで復興へ踏み出した酔仙。激動の中でつくられた震災後初となる新酒「雪っこ」に続き、本醸造生原酒「初酒槽」が、この度めでたく出荷に至った。復興の願いを込めて作られた「浜のミサンガ」最初にこの漁網を見つけたのは三陸町・越喜来の漁網工場だった。倉庫にあった未使用の漁網を使い、ミサンガデザイナーやプロジェクトチーム、そして津波で仕事を失った地元の浜のお母さんたちと試行錯誤の上、ようやく生まれた「浜のミサンガ」。当初は一部地域でしか生産されていなかったが、今では岩手県沿岸の5つのエリアで作られるようになった。その中から「酔仙」と同じ陸前高田市近辺のお母さんたちが編んだものを特別に用意してもらい、彼女達の復興への想いと誓いをミサンガに込めて届ける。再び気仙の地へ戻る事を誓い復興を進めていった酒蔵・酔仙の「初酒槽」と、三陸のお母さんたちの試行錯誤が詰まった「浜のミサンガ」。あなたはこのコラボレーションを手にしたとき、何を思いながら見つめ、そして味わうだろうか。商品に関するお問い合わせ: ファミマ.com
2012年01月10日俳優の岡田将生が11月19日(土)、主演作『アントキノイノチ』の初日舞台挨拶を東京・有楽町の丸の内ピカデリーで行った。この日はメガホンをとった瀬々敬久監督が、岡田さんへの感謝の手紙を読み上げたり、共演した榮倉奈々、原田泰造、松坂桃李から花束をプレゼントされたりと“サプライズ”の連続。感極まった岡田さんは思わず号泣し「何なんだよ、みんな、ちくしょう…。本番前、みんなそっけないな、話しかけてくれないなと思っていたら、こういうことだったんですね」と言葉を詰まらせていた。「そろそろお時間です」と司会者が舞台挨拶を締めくくろうとした瞬間、スッと手紙を取り出した瀬々監督。「岡田くんは基本的に天然でボケキャラ。でも撮影中は助けられることも多く、特に震災が起こって大変だったときも、岡田くんの笑顔と無邪気な会話に癒された。現場を引っ張ってくれたし、純粋な気持ちで映画に取り組むことの大切を教えてくれた」と感謝の言葉を述べると、早くも岡田さんの目からは大粒の涙が…。「岡田くんの純粋な気持ちが、映画を助けてくれた」(榮倉さん)、「(取材などで)岡田くんのことを小学2年生って言ってゴメン。もう立派な大学生になったよ」(原田さん)、「大切な友情を築くことができた。ぜひ、また共演しましょう」(松坂さん)と共演者からも温かい言葉が贈られ、岡田さんは感無量の面持ちだ。岡田さんは涙をぬぐいながら、「この映画に参加できて、本当に良かった。監督やキャスト、スタッフ、それに家族や友人に支えられた。撮影中に震災があり、『このまま撮影していていいのかな』って悩んだこともあったが、命の大切さや人と人との繋がりを届けられると信じて、やり遂げることができました」と挨拶。その間も涙が止まることはなく、「俺、今日、泣いてばっか!」と感情を爆発させた。さだまさしの同名小説を原作に、ある事件を機に心を閉ざしながら生きる2人の男女(岡田さん、榮倉さん)が、遺品整理業の現場で、死者が人知れず遺したもの、そこに込められた思いに触れることで“イノチ”の尊さにふれていく姿を描く。第35回モントリオール世界映画祭で、革新的かつ質の高い作品に授与される「イノベーションアワード」を受賞し、第16回釜山国際映画祭の“アジアの窓”部門での上映も大反響を呼ぶなど、早くも国際的な評価を集めている。この日は本作の公式サイトで一般公募された“とびきりの笑顔”の写真約1万枚で構成されたモザイクアートもお披露目された。『アントキノイノチ』は全国にて公開中。■関連作品:アントキノイノチ 2011年11月19日より全国にて公開© 「アントキノイノチ」製作委員会■関連記事:9割の人が絆について考えたと回答!『アントキノイノチ』グッと来るシーンは…?“命”の繋がりを考える『アントキノイノチ』特製メモを5名様にプレゼント岡田将生のサプライズプレゼントに榮倉奈々、思わずウルリ岡田将生インタビュー自らの「生きる意味」と向き合った『アントキノイノチ』シネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5(第20回)“ほっとけない男子”俳優は?
2011年11月21日主演作『アントキノイノチ』の公開を控える俳優の岡田将生が、メガホンをとった瀬々敬久監督とともに取材に応じ、作品への思いや今後の目標を語った。その他の写真第35回モントリオール世界映画祭で、革新的かつ質の高い作品に授与されるイノベーションアワードを受賞し、第16回釜山国際映画祭の“アジアの窓”部門での上映も大反響を呼ぶなど、早くも国際的な評価を集める本作。岡田自身も、海外の映画人と交流する機会を得て「とても刺激になりました。海外の方と接して思うのは、もっと自分自身が日本や社会のことを知らなくちゃということ。海外進出?今は目の前にある仕事を一生懸命やるだけですが、たくさんのことを吸収し、自分から何かを発信できる俳優になりたい」と抱負を語る。原作はさだまさしの同名小説。ある事件を機に、心に大きな傷を抱えた青年・杏平(岡田)が父の紹介で働き始めた遺品整理業の現場で、残された遺品とそこにある故人の思いに触れ“イノチ”の尊さを見つめる。「自分にとって大切な作品。台本を呼んで、すぐにこの役をやりたいと思ったんです。漠然とした未来を前に、『自分はこれからどうなるのか』『どうやって生きていけばいいのか』という杏平の不安が、僕自身もとてもリアルに感じられたからですね」(岡田)。そんな岡田の魅力を、瀬々監督は「若い世代にありがちな『こう見られたい』という自意識がなくて、何より素直。だから現場での実感を感じ取って、邪念のない生々しい演技を見せてくれる」と分析する。「ジョニー・デップ的なカメレオン俳優だと思う。今度は岡田君が、カメレオン役をやれば?」(瀬々監督)、「監督はいつもそうやって、ふざけるんだから」(岡田)。前作『ヘヴンズ ストーリー』が第61回ベルリン国際映画祭で二冠に輝くなど、海外からも注目を浴びる瀬々監督は、「無縁社会や孤独死といった、今の日本が抱える問題を描いたつもりだったが、海外での反応に触れ、作品のテーマが世界共通で共有できるものだと確信した」と自信を深める。岡田、瀬々監督ともに海外で真っ向勝負できる『アントキノイノチ』に対する手応えは十分だ。「海外の作品って、基本的に視点がポリティカル。一方、日本映画はどこか自分探しに終始している気がする。震災を機に“内への意識”が強くなっているのかもしれないが、今こそ社会的なテーマと向き合うべき時期だし、この作品にはその可能性がある」(瀬々監督)、「海外の、特に若い人は社会のことをすごく考えているんです。今、日本の人はそういうところに目を背けているのかなと思う。僕自身、社会的なテーマを扱う作品にどんどん参加したいですね」(岡田)。『アントキノイノチ』11月19日(土)全国ロードショー取材・文・写真:内田涼
2011年11月16日榮倉奈々、岡田将生からの突然のプレゼントに涙!11月10日、映画「アントキノイノチ」公開を記念し、都内で開催されたセレモニーに、主演した榮倉奈々、岡田将生が出席した。榮倉と岡田は「アントキノイノチ」公開を記念するため一般公募された【ラブレターツリー】の設置セレモニーに出席。岡田からの突然ののクリスマスプレゼントに、榮倉が涙ぐむ場面があった。岡田からのサプライズプレゼントはスノードーム岡田からの榮倉へのサプライズプレゼントは、劇中の印象的なシーンで登場する観覧車の模型が入ったスノードームだった。映画コムによると岡田は「2月から一緒にやってきましたが、すごく助けられました。本当に一緒にやれてよかったし、また違う作品でも会えたらうれしい。ありがとうございました」と照れくさそうに感謝の言葉を榮倉に伝え、スノードームを手渡した。榮倉の瞳に涙が思いがけないプレゼントに驚いた様子の榮倉は、涙を静かにぬぐい「(作品への)思いが強いだけに、全てのことに100%届けようと一緒にがんばってきたのでうれしいです。ありがとう。恥ずかしい(笑)」と感激で一杯の胸の内を語ったという。映画「アントキノイノチ」とは?歌手のさだまさしによるベストセラー小説を映画化。遺品整理業という特殊な仕事を通して「命」の重さ、人と人が繋がる尊さを描いた作品だ。また、榮倉は「アントキノイノチ」の公式サイトで「生きるということ、社会と関わるということ。日々、自問自答しながら前進したいと望む姿は同世代として、とても興味深いです。瀬々監督も岡田将生くんも初めてご一緒させていただくので、どんな風にコミュニケーションを取って撮影が進んでいくのか、今から楽しみです。」と、コメントを残している。「アントキノイノチ」初日舞台挨拶のお知らせ●11月19日(土)●場所:丸の内ピカデリー11回目 午前9:20の回、上映終了後/2回目 お昼 12:50の回、上映前●[登壇者]岡田将生、榮倉奈々、原田泰造、松坂桃李、瀬々敬久監督(以上すべて予定)●場所:MOVIX亀有1回目12:30の回、上映終了後/2回目15:45の回、上映開始前●[登壇者]岡田将生、榮倉奈々、松坂桃李、瀬々敬久監督(以上すべて予定)「アントキノイノチ」公式サイトより元の記事を読む
2011年11月12日「一生懸命、自分の中から言葉を探してる」と岡田将生は言った。作品や役柄についてではなく、そのときのインタビューについて語った発言なのだが、俳優・岡田将生の生き方そのものを表していると言える。10代の頃から誰もが羨むような輝かしい成功の階段を上り続けてきたように見えるが、その陰で常にもがき、自らと向き合ってきた。だからこそ、映画『アントキノイノチ』で演じた主人公の杏平に対して、まず何より感じたのは強い共感だった。壊れた心を少しずつ再生していく杏平を演じながら岡田さんは何を探し、何を伝えようとしたのか?その内なる思いを明かしてくれた。10代の自分とリンクした、杏平の心の葛藤映画冒頭、裸で民家の屋根の上に座り込み虚空を見つめる岡田さんの姿が映し出される。高校時代のある出来事がきっかけで、心を壊してしまった杏平。22歳の岡田さんは、自らが10代の頃から感じてきた思いを重ね合わせながら物語と向き合っていった。「ふと『何でおれは生きてるんだろう?』とか『これからどんな大人になって、どういう社会で生きていくんだろう?』ということを考えることが10代のときから僕自身ありました。漠然とした不安を感じながら俳優という仕事をさせてもらって、その中で僕はこの仕事が好きだと気づいて続けられている。でも杏平くらいの頃は何も分からずにいて、そのリアルさに『おれもそうだったな』とリンクしました」。ある悪意に疲弊し自ら命を絶った友人。その悪意の矛先が今度は自分に向けられることへの恐怖と戸惑い。そして期せずして発見した己の内にある憎悪と周囲の無関心――。そうしてバラバラになった心を、杏平は遺品整理業という仕事を通じて再生させていく。こうしたひとつひとつの心の動きを岡田さんは丁寧に演じている。「僕自身、いじめられた経験もあるし、それがどんなにつらくて嫌なことか分かっています。僕はまだ22歳ですが、そういうところを若い人にきちんと伝えたいと思ったし、『分かりたい』って思う自分がいました。何より、生に対してもがき、苦しんでいる姿、少しずつ杏平が前に進んでいく姿がいいなと思えたんです」。演技の面でポイントとなったのは杏平が生まれつき抱えている吃音(きつおん)。杏平の周囲との距離感やもどかしい思いが伝わってくる。一方で岡田さんは「映画を観る方に届いたらいいなと思った大切なセリフ」に関しては監督に対し、あえて吃音を含ませずにストレートに表現することを提案したという。「榮倉(奈々)さん演じるゆきが過去を告白するシーンでの、杏平の『自分がどうして生きてるか分からない』というセリフはすごく好きで、それを吃音で言うべきかどうか悩みました。あとは文化祭で杏平がみんなに問いかけるシーン。あの心からの叫びでも吃音が出てないです。あのセリフを噛んで言ってしまうと、ただもがいている一人の生徒に見えてしまい、(周囲への思いが)伝わらないと思ったんです」。ちなみに全編を通じて岡田さんのモノローグが入るのだが、こちらも吃音はなく、落ち着いた口調で語られている。物語の中でもがき、葛藤する杏平とは違う人物のようにも感じられるが…。「あのモノローグは現在よりもずっと先の杏平という設定で、少し達観した立場から語ってるんです。僕は最初、そういう風に思ってなかったんですが、監督から成長した杏平が過去をふり返るような形にしてほしいと言われて『あぁ、なるほど』と思いました」。「これまで良い出会いがたくさんあったし、それを必然と思いたい」先述の榮倉さん演じるゆきの告白のシーンを「『いま生きてるんだな』、『息して、目の前の人と話してる』というのを感じながらその場にいた」と述懐。ゆきと杏平の出会いをこんな言葉で説明する。「杏平にとってはいい時期に巡り合えた同じ傷を抱えた女性。巡り合わせなのかなと思えました。原作の小説や台本を読んだときから僕は親のような気持ちで『お前、ゆきちゃんと出会えて本当によかったな』って思ってました(笑)。それは巡り合うべき人だったし、傷をなめ合うのではなくて、一緒に一生懸命考えて、“生きていく”ということを見出せる人。僕自身、これまで良い出会いがたくさんあったし、それを必然と思いたい。色々なところに行って色々な人と会って、新たな発見を求めている自分がいるんです。それはいまでも思っているし、だからこそ現場が好きなんです」。「終わったときは寂しくて、永島杏平という役から離れるのが嫌だなと素直に思えた」と岡田さん。クランクアップを迎えたその足で美容院に直行して髪を切り、気持ちを切り替えたというエピソードからも役柄への強い思い入れがうかがえる。ゾクリとするような歪んだ笑みを浮かべて悪意を体現した昨年の『悪人』、己の内の悪意と憎悪に押し潰されて心を壊していく今回の『アントキノイノチ』と、強く役柄を引きずってしまいそうなヘビーな作品で際立った存在感を放っているが、出演作品を決める基準は?「僕自身は作品選びにはタッチしてないです。ただ、マネージャーや事務所の人には『こういう作品をやってみたい』ということは普段から少し伝えています(笑)。20歳を超えてから、高校生を離れて次のステップとして社会派というか、メッセージ性の強い作品に携わりたいという思いはありましたね。いまも違うジャンルの映画を観ると『こういうのをやってみたい』とか思います。いまは…しばらく恋愛映画から離れていたんですが、『ラブ・アクチュアリー』を観て幸せになったので(笑)、ハッピーエンドのラブストーリーをやりたいと言ってます」。探しているのはきっと言葉だけではない。時に疾走し、立ち止まり、泣いて、叫んでまた歩き出し…。岡田将生の旅はまだまだ終わらない。(photo:Yoshio Kumagai/text:Naoki Kurozu)■関連作品:アントキノイノチ 2011年11月19日より全国にて公開© 「アントキノイノチ」製作委員会■関連記事:岡田将生のサプライズプレゼントに榮倉奈々、思わずウルリシネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5(第20回)“ほっとけない男子”俳優は?【TIFFレポート】岡田将生&原田泰造通訳付き映画祭公式上映にハイテンション!【TIFFレポート】映画祭開幕!ミラジョヴォら美しき女優陣のファッションに釘づけ岡田将生、釜山映画祭でサイン攻め!『アントキノイノチ』への特別な思い明かす
2011年11月10日映画『アントキノイノチ』が10月24日(月)、東京国際映画祭で公式上映され、主演の岡田将生と榮倉奈々、原田泰造、瀬々敬久監督が舞台挨拶に登壇した。遺品整理業者で働くことになった青年・杏平が同僚の少女・ユキとの出会いや様々な現場での経験を通じて“生”の意味を問い直し、壊れた心を再生させていく姿を描く。英語通訳付きの映画祭での公式上映とあって岡田さんはハイテンションで「I’m Masaki Okada」と英語で挨拶。映画の内容にちなんで「いま『ありがとう』と伝えたい相手は?」と尋ねられると「すごく恥ずかしいんですが、いまここ(客席)に家族が来てるんです。いつも支えてくれてありがとう」と照れくさそうに語り、会場は温かい拍手に包まれた。榮倉さんは同じ問いに「私は現場でいろんな人と出会うことがすごく好きなんです。だからこの作品のスタッフや関係者のみなさんに『ありがとう』と伝えたい」と思いを語った。原田さんは「財布の中は2千円。原田泰造です!」「大好物はジャスミンティー。原田泰造です!」、「銀座・原宿・六本木〜原田泰造です!」と歌いながら自己紹介。通訳によって英語に訳されるのを聞いてご機嫌だった。監督は3月11日の大地震で映画を作る気持ちが揺らいだことを明かしつつ「瓦礫を拾っている人の姿を見て『作らなきゃ』と思い直した」と告白。最後に、岡田さんは「難しいことは分かりませんが、この映画は人と人の繋がりを描いています。僕自身、この仕事を通じて『誰かと繋がっていたい』と思うようになりました。みなさんにも同じ気持ちになってもらえたら嬉しいです」と語り、舞台挨拶は幕を閉じた。東京国際映画祭は10月30日(日)まで六本木ヒルズほか都内各所で開催中。『アントキノイノチ』は11月19日(土)より公開。特集「東京国際映画祭のススメ2011」■関連作品:第24回東京国際映画祭 [映画祭] 2011年10月22日から10月30日まで六本木ヒルズをメイン会場に都内各所にて開催© 2011 Tokyo International Film Festival All Rights Reserved.アントキノイノチ 2011年11月19日より全国にて公開© 「アントキノイノチ」製作委員会■関連記事:【TIFFレポート】加瀬亮、デニス・ホッパーの息子と朝4時までの付き合いを明かす【TIFFレポート】山田孝之、司会者に「本当の恋愛って何ですか?」と逆質問【TIFFレポート】小栗旬「毎日、逃げ出したいと思ってた」と監督経験を述懐【TIFFレポート】映画祭開幕!ミラジョヴォら美しき女優陣のファッションに釘づけ“笑い”から読み解く!東京国際映画祭コンペティション部門の楽しみ方
2011年10月24日6日(木)に開幕した第16回釜山国際映画祭の“アジアの窓”部門で13日、岡田将生と榮倉奈々が主演した『アントキノイノチ』が上映され、岡田と瀬々敬久監督が舞台あいさつに登壇した。その他の写真『アントキノイノチ』は、過去のある出来事がトラウマとなり心を閉ざしてしまった杏平(岡田)とゆき(榮倉)が“遺品整理業”という職業を通して出会い、次第に心を通わせて生きる勇気を取り戻していく姿を描いた作品で、第35回モントリオール世界映画祭では“イノベーションアワード”を受賞した。岡田は自身の主演作『雷桜』(廣木隆一監督)で昨年も釜山国際映画祭に参加しており、今回で二度目。満席となった会場で岡田が韓国語であいさつをすると場内からは歓声があがった。岡田は「吃音という病気を抱える主人公を悩みながら演じた」と撮影を振り返り、「僕自身これまでは、演じてきた役は全て自分とは違う、自分だと思ってほしくない、と子供のような気持ちを持っていたが、今回は(主人公)永島杏平を岡田将生として見てもらってもいい。今回は1番僕なのではないかと思っている」と話した。瀬々監督は「“遺品整理業”と言うのは日本に実際ある仕事です。撮影中に震災が起こり、がれきの中から遺品や写真を探すということがたくさんあって、あらためて人間は人と人とのつながりや関係性を求めているのだと感じた。人とのつながりを大切にするような社会になるように、この映画を観ていただけたら。人と人との間、国と国との間も、他人のことを思い、気づかうことでもっといい世界になると思う。日本と韓国も、もっとよりよい関係になれたらと思います。カムサハムニダ」と語った。『アントキノイノチ』11月19日(土)全国ロードショー
2011年10月14日先日より開催中の第16回釜山国際映画祭で、日本から出品された『アントキノイノチ』の3度目の上映が10月13日(木)に行われ、上映後には主演の岡田将生と瀬々敬久監督が舞台挨拶に登壇。熱烈な韓国の観客の質問に答えた。歌手のさだまさしの手による小説を映画化した本作。高校時代のある出来事がきっかけで心が壊れてしまった主人公が、遺品整理業に従事する中で少しずつ再生していくさまを描く。8月にはモントリオール世界映画祭に出品され「イノベーションアワード」を受賞するなど海外の注目も高く、この日も客席は超満員。上映後に舞台挨拶の実施がアナウンスされると多くの観客がステージ前方に殺到し会場は熱気にあふれた。昨年の『雷桜』に続き、主演作を携えて釜山再訪となった岡田さん。モントリオールではフランス語で挨拶を決めたが、この日は「みなさん、こんばんは。岡田将生です。映画はいかがでしたか?心に響くものがあったならとても嬉しいです。韓国最高!釜山最高!」と韓国語で挨拶し喝采を浴びた。映画は、岡田さん演じる心が壊れてしまった杏平が、家の屋根の上に全裸で座り、眼下の街を眺めるという衝撃的なシーンでスタートするが、このシーンの撮影について問われると岡田さんは「とても寒かったです。住宅街だったので知らない方が通ったりするとビックリされてました」と明かし、会場の笑いを誘った。一番印象的なシーンとして、榮倉奈々演じるゆきと共にラブホテルに入るシーンを挙げ「脚本では最後、自分が泣くことにはなってなかったのですが、なぜか分からないですが、とても感情があふれてしまいました。だからこのシーンが最も愛着がありますね」と己の内からわき上がってきた感情について語った。韓国では岩井俊二監督の『Love Letter』が非常に人気があり、観客からは同作にも登場し、『アントキノイノチ』にも出てくる「元気ですか?」というセリフについての質問も。瀬々監督は「韓国では『Love Letter』が有名なので、その質問は絶対来ると思ってました。私は『Love Letter』も観てます。『元気ですか?』は日本のプロレスラー、アントニオ猪木さんの決め台詞なので使っています。そして、この映画の撮影中に地震が起こりました。いま、日本は大変なんですけれど、その中でみんなに『元気ですか?』とメッセージを訴えたい映画を作ろうと思いました」と説明。客席に向けて「元気ですかー!?」と叫んだ。本作以前より、岡田さんは韓国で最も人気の高い俳優のひとり。観客からこれまでの出演作の中で最も自分に近い役柄は?と問われると「僕自身、これまではいつも、いままでやってきた役は全部、自分とは違うと思って演じてきました。それは自分を見せるのがとても恥ずかしくて、これを自分だと思ってほしくなかったという子供のような気持ちからきたものです。それが今回は永島杏平として見てもらってもいいし、岡田将生として見てもらってもいいと思っています。今回が1番“僕”なのではないかと思っています」と本作に込めた特別な思いを明かしてくれた。監督は映画の根底にある、人と人の繋がりが希薄になった社会に関して「いまの世界で共通する問題だと思っています」と語り、「この映画を作りながら思ったのが、他人のことをどれくらい思ってあげられるか。若い頃はみんな、自分のことで一生懸命なんですが、そればかりでなく、他人のことを思い、気遣う。そういうことでもっといい世界になるかと思います。人と人との間、国と国との間にもあると思います。日本と韓国もより良い関係になれたらいいと思います。カムサハムニダ(ありがとう)」と“繋がり”の重要性を訴えた。舞台挨拶終了後には観客がステージに殺到し、岡田さんにサインや握手を求める姿も。改めて岡田さんの韓国での人気の高さを証明した。『アントキノイノチ』は11月19日(土)より全国にて公開。■関連作品:アントキノイノチ 2011年11月19日より全国にて公開© 「アントキノイノチ」製作委員会■関連記事:岡田将生×榮倉奈々主演『アントキノイノチ』独占試写会に35組70名様をご招待海外での活躍に期待する俳優は?「acteur」最新号を5名様にプレゼント「平清盛」岡田将生による白髪交じり&ヒゲの源頼朝の姿が解禁!岡田将生&榮倉奈々、トロフィーの重みで受賞を実感!『アントキノイノチ』モントリオールで高評価岡田将生は仏語でスピーチ決めた!
2011年10月14日第35回モントリオール世界映画祭でイノベーションアワードを受賞した『アントキノイノチ』の受賞報告会見が30日に松竹本社で行なわれ、瀬々敬久監督、主演の岡田将生と榮倉奈々が登壇した。その他の写真『アントキノイノチ』は、さだまさしの同名小説が原作。過去のある事件がきっかけで生きることに希望を見出せなくなった男女が“遺品整理業”という職業を通して出会い、生きる勇気を取り戻していく姿を描く。イノベーションアワードは、“その年の映画祭で最もインパクトを与え、革新的で質の高い作品”に贈られる賞で、岡田と榮倉は19日(現地時間)のプレミア上映会と記者会見に出席した。瀬々監督は「3月以来、死と生があり、僕たちはその渦中にいるんだと、第三者的に物事を見るのではなく、ど真ん中で僕たちは生きていると、ダイレクトに伝わったのだと思う」と話し、岡田は「僕の演じた役は、自分と重なる部分もあって非常に思い入れのある作品になった」とコメント。榮倉は「監督の哲学と私たち若い世代の感覚が合わさったいろいろなものの融合で“イノベーション(革新)”と言ってもらえたと理解している」と述べ、ふたりとも「一般の方々と一緒に自分の出ている作品を観る機会はないので反応がわかって良い経験になった」と現地での出来事を振り返った。瀬々監督は「僕たちは日本のことを描いていると思っていたが、世界に共通する問題でもあると改めて気付かされた。この作品のテーマでもある“人と繋がっていく”という意味も含めて今回の受賞は第1のスタートとなった。若いふたりの目線で死と生を見続けた作品なので、ぜひ未来を担う若者に見ていただきたいのだ!と思っております」と力強くPRした。『アントキノイノチ』11月19日(土)全国ロードショー
2011年08月30日さだまさし原作「アントキノイノチ」(幻冬舎刊)の映画化が決定し、岡田将生と榮倉奈々という若手実力派の初共演が実現することになった。共に昨年、日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞し、各分野で大活躍する2人が、無縁社会をテーマに暗い過去を背負う男女をいかに演じるのか?メガホンを取るのは、最新作『ヘヴンズストーリー』が第61回ベルリン国際映画祭において、国際批評家連盟賞とNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)をダブル受賞した瀬々敬久監督。早くも新たな日本映画の傑作が生まれそうな予感だ。高校時代の事件をきっかけに、心を閉ざしてしまった永島杏平(岡田さん)は、遺品整理業という仕事を通じて、“命”の現場に立ち会うことに。そこで久保田ゆき(榮倉さん)と出会い、お互いに魅かれあうが、杏平がゆきの衝撃的な過去を知ったことを機に、彼女は忽然と姿を消してしまう。『告白』、『悪人』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した岡田さんは、「原作を先に読ませて頂いて、心温まるお話で、一気に読んでしまいました。演じる永島杏平という役は、心に問題を抱えていて、いままで演じたことのない役に挑戦させて頂くので、いままで以上にしっかり演じていきたいと思っています」と役者としてさらなる境地を目指すと宣言。初共演となる榮倉さんについては「榮倉さんはいろいろな作品に出ているのを観ていて、とても素晴らしい女優さんだと思っていますので、いまから撮影が待ち遠しいです」と期待を寄せた。一方、これまで明るく快活なイメージが強かった榮倉さんは、「生きるということ、社会と関わるということ。日々、自問自答しながら前進したいと望む姿は同世代として、とても興味深いです」と、こちらも新境地といえる役柄に、静かな闘志を燃やす。岡田さんとの初共演、そして瀬々監督との初仕事に「どんな風にコミュニケーションを取って撮影が進んでいくのか、いまから楽しみです」と早くも胸が高鳴っている様子だ。瀬々監督は、本作と『ヘヴンズストーリー』には共通点があると言い、「日本人はどこへ向かっていくべきなのか…。『ヘヴンズストーリー』はそういうことを考えながら、作った作品。そして『アントキノイノチ』では無縁社会と言われ、人と人とのつながりが希薄になっている現代に、日本人はどう生きていくのか?そしてどうやって新しい希望を見つけていけばいいのかということを描きたいと思っている」と、国際舞台で高い評価を獲得した瀬々監督が、改めて“日本”という自分たちの足元を見つめ、新たな問題提起に挑む決意を固めたようだ。『アントキノイノチ』は3月1日(火)にクランクイン。山口県や静岡県、関東近郊でのロケを経て、4月のクランクアップを予定している。『アントキノイノチ』は2011年秋、公開。■関連作品:アントキノイノチ 2011年秋、全国にて公開
2011年02月22日