パナソニックは12月24日、独自の伸縮自在な樹脂技術を採用した「ストレッチャブル樹脂フィルム」を開発したと発表した。絶縁材料である同フィルムとあわせて、透明電極材料、配線用導電ペーストも提供していくという。これまでのフレキシブル材料では折り曲げができるものの、折り畳みや伸縮が難しいという課題があった。またウレタン樹脂やゴム系のストレッチャブル材料では密着性、耐熱性、脆化などの課題があった。今回開発された同フィルムは、伸張ともとの形状に復元が可能な絶縁材料で、自在な折り曲げや、さまざまな自由曲面へ適応できる。たとえば、衣服や体に付けるなど、あらゆる形に追従できる柔らかく、しなやかなエレクトロニクスデバイスが実現でき、ウェアラブル、センサ、ディスプレイ、ロボットなど幅広い分野での展開が見込まれる。なお同製品は、2016年1月13日から15日まで東京ビッグサイトで開催される「第17回 プリント配線板EXPO(PWB EXPO)」に出展される。
2015年12月24日東京大学と科学技術振興機構(JST)は12月1日、磁性絶縁体の金属-絶縁体転移が微小磁場でも制御可能であることを示したと発表した。同成果は、東京大学 物性研究所のTian Zhaoming 日本学術振興会外国人特別研究員、小濱芳允 特任助教、冨田崇弘 研究員、金道浩一 教授、中辻知 准教授らの研究グループによるもので、11月30日付けの英科学誌「Nature Physics」オンライン版に掲載される。通常の物質は温度や磁場を変化させても、絶縁体から金属へ、もしくは金属から絶縁体へと性質が大きく変化することはない。しかしながら物質の中には、「金属-絶縁体転移」とよばれる相転移により、金属状態から絶縁体状態へと電気的な性質が変化するものがある。近年、絶対零度で起こる量子相転移に伴う金属-絶縁体転移についての研究が注目されているが、絶縁体の絶縁性は通常、磁場に対して強靭で、このような量子相転移に伴う金属-絶縁体転移を外部磁場により制御することは、ほとんど不可能だと考えられていた。今回、同研究グループは、希土類と遷移金属のハイブリッド型磁性体であるパイロクロア化合物Nd2Ir2O7の単結晶を育成し、電気的特性を高磁場下かつ極低温で評価したところ、磁場で誘起される金属-絶縁体転移を観測することに成功した。この金属-絶縁体転移は多くの特徴を持っており、たとえば磁場を加える方向を変えることでも転移の出現を制御することができる。今回用いたNd2Ir2O7においては「近藤カップリング」と呼ばれるNdとIr間の相関によりエネルギーギャップが開いているが、この近藤カップリング機構によるエネルギーギャップがNdの磁気的な構造に敏感であるため、Ndの磁気構造を磁場により変化させることで金属-絶縁体転移を制御できることがわかった。今後、Nd2Ir2O7のような希土類元素と遷移金属元素のハイブリッド型磁性体は、金属-絶縁体転移を利用した次世代メモリやセンサーへの応用に期待されるという。
2015年12月01日理化学研究所(理研)は10月30日、絶縁性の高い磁性体「磁性絶縁体」において磁壁が金属的性質を持つことを、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を用いて観測することに成功したと発表した。同成果は創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの藤岡淳客員研究員と上田健太郎研修生、創発物性科学研究センターの十倉好紀センター長、米国スタンフォード大学のジーシュン・シェン教授らの国際共同研究グループによるもので、10月29日付の米科学誌「Science」に掲載された。今回の研究では、絶縁性を持ち磁気的界面の伝導性の比が最も高い磁性絶縁体であるパイロクロア型イリジウム酸化物「ネオジウムイリジウム酸化物(Nd2Ir2O7)」表面の伝導特性を、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を利用し評価した。磁場をかけずに温度を下げるゼロ磁場冷却を行った後、温度が上昇していく昇温過程でインピーダンスを測定すると、常に磁性をもつ金属である常磁性金属から強い反磁性をもつ絶縁体である反強磁性絶縁体への転移温度以下ではインピーダンスは急に増加し、最低温では三桁ほど大きな値を示す。このとき、絶縁性の高い固体中に、磁壁の金属的性質といえる100nm以下の幅を持つ細線状の金属状態がランダムに分布しているのが観測された。一方、9Tの磁場を加えて温度を下げる磁場冷却を行った後に磁場をゼロに戻してから、昇温過程のインピーダンスを測定すると、ゼロ磁場冷却時よりもインピーダンスの増加が大きくなり、最低温においては二桁以上大きな値を示した。このとき、顕微鏡画像では磁壁の金属的性質を示す細線が消えており、磁場によって磁区がひとつに揃えられることで磁壁が消失することが分かった。同研究グループは今後、固体中における磁性と電子状態に関する基礎的な理解を深めていくとともに、金属的磁壁を利用した新しい磁気メモリーの実現につながることが期待できるとしている。
2015年10月30日STMicroelectronicsは12月16日、ガルバニック絶縁とアナログロジック回路を1チップに集積したシングルチャネルゲートドライバ「STGAP1S」を発表した。同製品は、STの次世代ゲートドライバ「gapDRIVE」の最初の製品であり、独自のプロセス技術であるBCD(バイポーラ・CMOS・DMOS)に、チップ上に絶縁層を生成する技術を組み合わせることで、より高度なシステム統合を実現している。さらに、同製品の高耐圧レールは、その他の回路に干渉することなく最大1500Vまで対応できるため、産業機器、600V/1200Vの高電圧インバータ、太陽光発電システム用インバータ、無停電電源装置に適したロバスト性を備えている。また、信号伝播遅延時間を100nsに抑えており、高精度PWM信号の伝送が可能なのに加え、集積されているドライバ段は、最大5Aのシンクまたはソース電流とレールツーレール出力に対応しており、大型IGBTやワイドバンドギャップのSiC MOSFETなどのパワースイッチに使用される負駆動電圧を可能とする。そして、±50V/nsを超える高いコモンモード過渡電圧耐性により、絶縁層での通信の信頼性と、安全な動作が確保されている他、独立したシンク出力とソース出力が、設計の柔軟性を向上させると同時に、外付け部品の削減に役立つという。加えて、SPIポートを内蔵しており、コントロールロジック設定とステータスモニタのための業界標準ホスト接続を提供する。ホスト側ではこのインタフェースを通じて豊富なデジタル診断機能を利用できるため、システム保護と信頼性がさらに強化される。この他、同製品には、過酷な動作環境下においても信頼性を最大限に高めるさまざまな保護機能が搭載されている。例えば、トランジスタの予期しないターンオンを防止するパワー段のアクティブミラークランプ、短絡回路状態でパワースイッチを保護する不飽和検知機能、危険な電圧オーバーシュートを防止するコレクタ-エミッタ過電圧保護および出力2レベルターンオフ機能、加熱保護機能、低電圧ロックアウト(UVLO)および過電圧ロックアウト(OVLO)、過電流検知専用センサピンなどが含まれている。なお、パッケージは小型のSO24W。価格は1000個購入時で約3ドルとなっている。
2014年12月17日Texas Instruments(TI)は12月1日、高い過渡電圧から電子機器を保護するデジタルアイソレータ「ISO7842」ファミリと絶縁型デルタシグマ型モジュレータ「AMC1304」ファミリを発表した。「ISO7842」ファミリは、業界最高クラスの絶縁特性を実現した強化アイソレータで、最低40年の全製品寿命期間にわたって1500Vrmsの動作時ブレークダウン電圧に耐える絶縁特性を提供する。一方、「AMC1304」は、シャント電流によるモニタリング向けに、絶縁特性の強化と同時に、クラス最高レベルの精度と業界最小クラスの消費電力を実現する。具体的には、「ISO7842」ファミリは、DIN V VDE 0884-10規格に基づく、8000V(最大値)の過渡過電圧の強化絶縁特性を提供する。さらに、UL1577規格に基づく5700Vrmsの絶縁定格を提供し、ULレコグナイズドコンポーネントやDIN V VDE 0884-10認証の取得に必要な5000Vrms(代表値)の定格値を超過達成している。また、競合製品を最大50%上回る、業界最高クラスの1500Vrmsの動作電圧を提供する他、100kV/μsと高いCMTI(コモンモード過渡耐性)を提供し、ノイズの多い動作環境下で通信の信頼性を向上させる。加えて、1万2800VPEAKと業界最高のサージ電圧保護定格により、瞬間的な高電圧パルスに対する耐性を実現し、電子デバイスを電圧スパイクから保護する。そして、100Mbps超のデータレートで高精度のタイミングと低ジッタを実現している。一方の「AMC1304」ファミリは、オフセット誤差が150μV(最大値)、ゲイン誤差が±0.3%で、業界最高クラスのDC性能を提供する。温度ドリフトは業界最小クラスで、-40℃~+125℃の全動作温度範囲で高い精度を実現している。さらに、AC性能は、モータ制御における最小限の歪みやノイズを実現する。また、消費電力は1次側が7mA(最大値)、2次側が5mA(最大値)である他、入力電圧範囲は±50mVで、システムの総合消費電力を最大80%低減している。加えて、同ファミリのうち4品種は、LDO(低ドロップアウト)レギュレータを集積し、レギュレーションを行っていない電源にもモジュレータの接続が可能。モジュレータインタフェースとsincフィルタを集積した同社のC2000 Delfino「TMS320F2837x」や「TMS320F2807x」の各マイコン製品との組み合わせにより、複数のアナログ信号の高精度で高効率な取得が可能になり、システム性能を向上できる。この他、7000V(ピーク値)の強化絶縁耐圧、1万Vのサージ耐圧、1000Vrmsと1500Vdcの動作電圧を提供する。耐圧性能については、UL 1577規格のULレコグナイズドコンポーネントやDIN V VDE 0884-10認証要件に適合している。なお、「ISO7842」は強化絶縁デジタルアイソレータ製品ファミリの最初の製品で、4チャネルを有する。今後、1、2、3チャネル製品も追加される予定。「ISO7842」は現在量産出荷中で、その他の製品は2015年第1四半期に供給開始の予定。また、LDOとCMOSインタフェースを集積したデルタシグマ型モジュレータ「AMC1304M25」と「AMC1305L25」は、±50mV~±250mVの入力電圧範囲に対応した7品種で構成されている。「AMC1304M25」と「AMC1305L25」はサンプル出荷中で、量産出荷は2015年初めに開始される予定。そして、これらの製品のパッケージはSOIC-16DW。価格は1000個受注時で「ISO7842」が3.49ドル、「AMC1304M25」が3.80ドル、「AMC1305L25」が3.50ドルとなっている。
2014年12月02日