煮物や汁物を作るときによく使う手法で、落し蓋をすると良いというのは耳にしたことがある人もいるかもしれません。ただ、改めて考えてみると落し蓋をすると料理にどんな効果をもたらしているのかあまり知らない人も多いはず。そこで今回は、落し蓋をする効果やポイントについてくわしく紹介します。家に落し蓋がない人でも、代わりになるものがたくさんありますのでぜひ参考にしてくださいね!■落し蓋はなぜ必要なの?そもそも、落し蓋をすると料理にどんなことが起こるのでしょうか?まずは落し蓋の効果からみていきましょう。・煮汁が全体に行きわたり味が染み込む落し蓋をすると、沸騰した煮汁が蓋にはねかえって対流ができます。その対流で煮汁が全体的に行きわたり味を均一に染みこませるのです。また煮物を作るとき、調味料が多いほうが味つけがしっかりとするのではないかとお考えの方もおられるかもしれません。しかし、実は煮物は煮るときに素材に味が染みこむのと同時に、素材のうまみが外に溶けだしてもいるのです。つまり、調味料の味はしっかりついても、素材の味がぼやけてしまいます。これを防ぐには、なるべく煮汁は少ないまま煮こむのがポイントです。落し蓋は少ない煮汁でしっかり味をしみこませるはたらきをするんですね。・材料の煮崩れが少ない落し蓋は、食材を過度にひっくり返したり、混ぜなくても均一に火を通す効果があります。つまり、箸などで具材をあまり触らずに調理ができるのです。そのため食材の煮崩れも少なくてすみ、見た目もきれいな煮物料理ができます。特に魚料理は触ると身が崩れやすいので、落し蓋は大変便利ですよ。・魚の嫌な臭いを逃がしてくれる落し蓋は、通常の蓋とちがって密封状態にされません。そのため、臭いが鍋の中にこもるのを防ぎ、嫌な臭いを外に逃す役割もあります。魚や肉料理では食材特有の生臭さを逃してくれて、おいしい煮物ができあがりますよ。・水分の蒸発を防ぐしばらく煮こんでいると、少しずつ煮汁が蒸発して焦げてしまった経験はありませんか?落し蓋がないままだと水分が急激に蒸発して焦げついたり、味つけが濃くなったりすることがあります。落し蓋は水分の蒸発をゆるやかにしてくれるので、煮つめすぎを防ぐことができます。・必ずしもないといけないものではない落し蓋のメリットを紹介しましたが、実際には落し蓋がなくても煮物はつくれます。つまり、必ずしも落し蓋をしなければならないわけではありません。ただ、落し蓋がないと上記のように水分が蒸発したり、味つけにムラができてしまうことは頭に入れておいてくださいね。■落し蓋の種類落し蓋にはいろんな素材や種類、形があります。次は落し蓋を種類ごとに紹介します。それぞれのメリットとデメリットがありますので、購入するときはいろいろ比較して選んでみてくださいね。・木製木製のタイプは昔から使われていて、料亭などでプロがよく愛用している素材です。木製の適度な重さが、煮崩れの防止に役立ちます。また、木製の大きな特徴は、熱伝導が低いためじっくりと均一に食材に熱を入れることができる点です。ただし、木製は手入れが少しに大変なのが難点。におい移りや、カビが発生しやすいので注意しましょう。・金属製金属製は、主にステンレスの素材が主流です。重さはありますが耐久性が高く、手入れしやすいのが大きな特徴で、におい移りや色移りする心配がありません。また、熱伝導率が高いため、調理中はかなり高温になりますので火傷には十分気をつけてくださいね。・シリコン製シリコン製は軽くて柔らかいのが大きな特徴です。収納もしやすくて、デザインも豊富なのでかわいらしい調理器具が好きな人におすすめです。もちろん機能性も高く、軽くても落し蓋の役割はきちんと果たします。ただ、シリコンのデメリットは色移りがしやすいということ。トマトやナスといった色素が濃い食材を調理するのは不向きなので、避けたほうがいいでしょう。■落し蓋の代用品落し蓋にはいろんな効果があることはわかりましたが、ご家庭によっては落し蓋がないという人もいるかもしれません。もちろん購入するのも良いですが、実はご家庭にあるもので、落し蓋と同じはたらきをしてくれるものがあります。次は、落し蓋と同じ効果がある代用品について紹介します。今回紹介するのはほとんど使い捨てできるので、衛生面もばっちりですし、アウトドアやバーベキューなどにも使えますのでぜひ参考にしてくださいね。・クッキングシートお菓子作りでよく使うクッキングシートは、使いきれず余っている人もいるのではないでしょうか?実はクッキングシートは、落し蓋の代わりに使えるのです。作り方はクッキングシートを鍋のサイズに切って複数穴を開ければOK。クッキングシートは熱に強くて食材とくっつく心配もありません。ただし、クッキングシートは軽すぎて浮いてしまうのが難点です。対策としては、耐熱性のある軽めの皿を上におくといいでしょう。・アルミホイル落し蓋の代用品としてもっともポピュラーなのがアルミホイルです。作り方はあらかじめアルミホイルをくしゃくしゃにさせて、後はクッキングシートと同様の手順でつくれます。アルミホイルにシワをつくることで、煮物から出たアクがシワにたまり、アク取りの役割まで果たしてくれます。ただ1つ注意したいのは、アルミホイルは長時間料理に触れていると、アルミの成分が溶けだして味に影響がでてしまう恐れがあります。そのため長時間煮こむ料理には使用しない方が無難でしょう。・キッチンペーパーキッチンペーパーも落し蓋として代用ができます。こちらはキッチンペーパーを二重に重ねるだけでOK。煮汁を吸って程よい重さになり、ちゃんと落し蓋として使えます。また、煮汁からでた余分な油も吸ってくれるので、ヘルシーに仕上がりますよ。キッチンペーパーは耐水性の高い厚手のものを使用するといいでしょう。・ラップラップも落し蓋として代用できますが、使用するときはいくつか注意が必要です。まず、鍋に直接触れるとラップが溶けてしまう恐れがあります。ラップが溶けると料理にも影響がでますし、最悪の場合火事につながるかもしれません。また、ラップは軽くて薄いため、食材が動いて煮崩れする可能性があります。クッキングシートと同様に、ラップの上に皿を置くなどして工夫しましょう。・軽めの皿鍋の大きさに合えば、軽めのお皿でも落し蓋の代わりになります。あまり重すぎると具材がつぶれてしまうので、軽くて平たい皿がおすすめです。必ず耐熱性のものを使用しましょう。また、取っ手がないので、使った後は火傷にじゅうぶん気をつけて取りだしてくださいね。■落し蓋の代用は食べ物でもできる!前述のとおり、台所の身近なグッズでも落し蓋と同じ効果が得られますが、食べ物でも代用できるのをご存知でしょうか?次は落し蓋の代わりになる食べ物について紹介します。・キャベツ実はキャベツをそのまま蓋のように置くだけで落し蓋と同じような役割をします。煮物と同時進行で蒸しキャベツもできますし、煮物と一緒に食べてもおいしくて一石二鳥のテクニックですね!・キャベツを落し蓋にする方法キャベツを落し蓋として利用するのはとても簡単。方法はキャベツを具材の上に数枚置くだけでOK!外側の葉の方が固くて大きいので、落し蓋として使いやすくておすすめです。また煮ている間にキャベツに火がとおり、固かった部分が柔らかくなり、食べやすくなるのも嬉しいですね。■落し蓋をする際の注意点落し蓋も使い方を誤るといろんなトラブルが起こります。次は落し蓋を使うときの注意点について説明します。・安全や衛生面を考慮する落し蓋は料理に直に触れる調理器具です。落し蓋自体が清潔でないと料理に直接影響を及ぼしますので、落し蓋はきちんと洗ってから使用しましょう。また使用するときは火傷にもじゅうぶん気をつけてくださいね。・木製の落し蓋は水にさらしてから使う落し蓋の中でも、特に手入れが必要な素材が木製のものです。木は水を吸う特性があり、乾燥したまま使うと煮汁やアクを吸ってしまい、におい移りやカビが繁殖する原因になります。こういったトラブルを避けるため、木製の落し蓋は使用する前は必ず水でさらして、あらかじめきれいな水を吸わせておきましょう。・使い終わったらすぐに洗うどんな素材の落し蓋でも、使い終わったら料理からすぐに取りだして洗いましょう。洗わずに放置してしまうと、蓋についた煮汁を吸って、におい移りや色移りする可能性があります。いつでも衛生的で安全に使用できる行動が大切ですなんですね。■落し蓋がなければ代用品で!おすすめ煮物レシピさて最後は、落し蓋を使った方がおいしく調理できるおすすめのレシピを3つ紹介します。落し蓋はどんな素材でもOKですし、なければ代用品でも大丈夫なので参考にしてくださいね。・肉じゃが(3人前)材料(2人分)豚肉(薄切り)100gしらたき(糸コンニャク)100gジャガイモ2個玉ネギ1個ニンジン1/4本キヌサヤ4枚だし汁300ml・砂糖大さじ1・みりん大さじ2・薄口しょうゆ大さじ2サラダ油適量七味唐辛子少々下準備肉は食べやすい大きさに切る。しらたきはサッと水洗いし、食べやすい長さに切ってザルに入れ、熱湯をまわしかけ、しっかり水気をきる。ジャガイモは皮をむき、4つに切って面取りし、水に放ってザルに上げる。玉ネギは幅1cmに切る。ニンジンは皮をむき、乱切りにする。キヌサヤは筋を引き、分量外の塩を入れた熱湯でゆでて水に取る。粗熱が取れたら、斜め半分に切る。作り方手順1:鍋にサラダ油を中火で熱し、豚肉の色が白っぽくなるまで炒め、ジャガイモ、玉ネギを加えて炒め合わせる。油がまわったら、だし汁を加えてアクを取りながら10分位煮る手順2:<調味料>の材料とニンジン、しらたきを加え、煮汁がなくなるまでさらに煮る。器に盛り、キヌサヤを散らし、七味唐辛子を振る煮物の定番料理である肉じゃがは、味が染み込みにくく煮崩れしやすい食材です。そんな肉じゃがも落し蓋を使えば、しっかりと味が染みこみ煮崩れも防止できますよ。代用品としてアルミホイルを使うときは、調理後にすぐに取りだしてアルミの成分が溶けだすのを防ぐようにしましょう。・かぼちゃの煮物材料(2人分)カボチャ1/8個ベーコン2枚サヤインゲン4~5本・塩少々しらたき(糸コンニャク:小)1パックショウガ1/2片・酒大さじ3・みりん大さじ2・砂糖大さじ2・しょうゆ大さじ3だし汁(または水)200mlサラダ油大さじ1.5下準備カボチャは種とワタを取り、3cm角くらいの大きさに切る。ベーコンは幅2~3cmに切る。サヤインゲンは軸側を少し切り落とし、塩を入れた熱湯でゆでて水に取る。粗熱が取れたら水気をきって、長さ2cmに切る。しらたきはザク切りにし、たっぷりの水と鍋に入れて強火にかける。煮たったら1分ゆでてザルに上げ、水洗いして水気をきる。ショウガは皮をむき、せん切りにする。作り方手順1:フライパンにサラダ油を入れて強火にかけ、ショウガ、カボチャ、ベーコンを炒める。全体に油がまわったら、しらたきを炒め合わせる手順2:全体に混ざったらだし汁を加える。煮たってきたら<調味料>の材料を加える。再び煮たったら落とし蓋をして火を弱め、煮汁が少なくなるまで煮含める。器に盛り、サヤインゲンを散らすかぼちゃもじゃがいと同様に味が染みこみにくく煮崩れしやすいので、落し蓋が活躍する料理です。落し蓋をすることで熱伝導が早くなり、時短にもつながりますよ。ほかの煮物と比べて砂糖が多く使われているので、焦げつきには注意しましょう。・カレイの煮付け(3人分)材料(2人分)カレイ(切り身)2切れゴボウ1/2~1本ブロッコリー1/4株ショウガ1/2片・だし汁150ml・酒大さじ2・砂糖大さじ1・みりん大さじ1.5・しょうゆ大さじ1.5下準備カレイは身の厚い部分に切り込みを入れる。ゴボウはたわしできれいに洗い、長さ4cmに切る。太いものは半分、または4つに切り、水に放つ。ブロッコリーは小房に分け、熱湯でサッとゆでてザルに上げる。ショウガは皮をむき、薄切りにする。作り方手順1:鍋、または深めのフライパンに<煮汁>の材料を入れて火にかけ、煮たったらショウガ、カレイの表側(茶色い側)を上にして並べ、強火にかける手順2:煮たったら中火にし、水きりしたゴボウを加え、落とし蓋をして煮汁が半量になるまで、15~20分煮る手順3:ブロッコリーを加え、煮汁をからめて器に盛り合わせるカレイのような身が柔らかい魚料理を作るときは具材をあまり触らないことが原則です。極力触らずに味を染みこませるためには、落し蓋がおすすめ。少ない煮汁で、魚に触れることなく均一に味を染み込ませてくれますよ。■落し蓋で煮物料理をワンランクアップさせよう!落し蓋は煮物料理をぐっとおいしくしてくれる優れた調理器具です。もし、家になくてもいろんな物で代用できるのでご家庭でも取り入れやすいのも嬉しいですね。落し蓋を使って煮物料理をワンランクアップさせてみましょう!
2021年04月13日