エトセンス(ETHOSENS)2017年秋冬コレクションが発表された。今シーズンは「LAG is fine」をテーマに、タイムラグ=時間のずれから生まれる“残像”をレイヤーやフォルムの“ズレ”で表現した。伝統的なテーラードスタイルがベースとなり、かっちりとしたジャケットやコートがメイン。ただしジャケットは複数のパーツが幾度にも重なったかのようなデザインで、左部分はコート / 右部分はジャケットといった“ズレ”が生じたウェアも見受けられる。さらにシャツは2重にレイヤーされ、ボタンを留める部分はまるで時空が曲がったかのように不自然に片方に寄っている。パンツの裾もよく見ると、短い丈と長い丈が重ねられており、歩く度に特有の動きを見せた。キーワードである“ズレ”は柄にも表れ、シャツやパンツには長方形や正方形がズレて無秩序に重なるパターンが用いられた。またポンチョには「TIMELAG」の頭文字である「T」をモチーフにしたかのような幾何学風の柄が全面に施されている。素材は秋冬らしいベルベット・スエード・レザーが多用された一方で、シャツやパンツには軽やかなファブリックも混ぜ込んだ。それを融合してスタイリングすることで、ここでもエトセンスが表現するギャップが感じられる。着こなしはジャケットやコートの上から腰周りをキュッと縛られたベルトや、メンズモデルの首にかけられた存在感のあるブラックのチョーカーに加え、軽やかに巻かれたスカーフといったアクセサリー使いが特徴的であった。
2017年03月28日チカ キサダ(Chika Kisada)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月25日(土)渋谷・ヒカリエにて発表された。会場では、山のように積み上げられた長椅子が、ピンクのスポットライトに照らし出される。濃厚なピンクの明かりが放つ甘く気だるい空気感が、どこか脆さを孕んだ退廃的な空間を生み出した。テーマは「記念写真の記憶」。幼い頃からバレエダンサーとして舞台に立っていたというデザイナー自身の経験を投影し、ふわりと膨らむピンク色のチュールやギャザーで、幼い少女のような繊細さやあどけなさを演出。一方で、レザー素材やテーラードを組みあわせ、その甘さの中にキリッとエッジの効いた要素を忍ばせた。それはまるで大人になった女性が心の中に閉じ込めている、少女性と女性性の葛藤を表現したよう。序盤は、”黒とピンク”そして”強さと可憐さ”というを対立する2つのテイストをルックに落とし込んだ。最初に登場したスキンヘッドのモデルが身につけるブラックのブラウスは、たっぷりとあしらわれたギャザーや、ボリュームを持たせた袖口が可憐で可愛らしい。その曲線的なラインとは対照的に、直線的なプリーツの効いたスカートやテーラードパンツを合わせ、ブラック1色のスタイルの中に甘さとシックのリズムを生み出した。ブラックのジャケットは、バスローブのように胸元を大きく開け、ウエストラインをベルトで絞り、女性らしさを強調。一方で、裾部分にはバレリーナのスカートを想起させるチュールをふんだんにあしらった。また、胸元や肩につけられたベルトのようなアクセサリーも登場。フリルのシャツやワンピースに、エッジを効かせている。終盤になると、藍色のルックが展開された。先ほどと同様にフリルやギャザーが多用されているが、しわ加工のされたシルクやベロアなどの緩い素材や、こっくりと落ちついた色味が、アンニュイな印象を感じさせる。透けるような粗いニットチュールが組み合わされたルックは、異なる2つの素材が藍色に溶け合う。そして、フィナーレにはバレリーナのように豊かに広がるピンクのチュールスカートを身につけたモデルが登場。彼女が、ランウェイの中央にあるピアノを弾くというロマンチックな演出でショーは幕を閉じた。
2017年03月28日ロギーケイ(ROGGYKEI)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月25日(土)東京・渋谷ヒカリエにて発表された。会場にはシートが円形に並べられており、壁に吊り下げられた洋服は丸い光で照らされている。これまでもサークルモチーフの服を発表してきたロギーケイの今シーズンのテーマは「共存」だ。人や自然が連なり、協調し合って共存する様を、円環のモチーフを用いることで表現した。登場したルック数はそれほど多くない。モデルは円形のランウェイをゆっくりと2周まわり、1体1体をじっくりと見せてくれる。そうやってじっくりと見るほどに、皺を残した現実味のあるマテリアルの風合いや、ナチュラルな色味、人工的すぎずどこか安心感のあるカッティングといった特徴に気付いてくる。円形に広がるスカートやパンツ、肩から袖口にラウンド形を描くジャケットなどのアイテムに見られるように、服のシルエットでサークルが表現されたことは一目瞭然だ。しかし、それらは完全な円ではない。ここにも、あくまで自然らしく、メカニカルな印象を残さない独特の空気感を見て取ることができるだろう。カラーはブラックを基調としているが、黒は黒でも、素材の質感によって異なる黒色を呈している。例えば、格子状に凹凸した生地は、凹と凸の部分で色が違うし、その生地を用いたブラックのパンツに合わせられた同色のジャケットも、しっとりと光を吸収するような、パンツとは異なるブラックに染まっている。コレクションは、メンズとウィメンズ合同で発表されたが、デザイナーは、服には特にジェンダー区分を設けていないと語った。ウィメンズとメンズでは同じ服でも着た時に違う見え方になるだろうし、その違いにこそ、本コレクションが見せてくれた、無機的ではない人間味のようなものが現れるのだろう。
2017年03月28日ターク(TAAKK)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月25日(土)東京・渋谷ヒカリエにて発表された。今回のテーマは「ボーダレス」。クリエイションのみならず、ショーのあらゆる側面から「壁を取り払う」ことへの拘りを感じた。ブランド設立5年目にして初のファッションウィーク参加となったターク。パリ・ニューヨークでの展示会を経て経験を積んだ森川の表現する「ボーダレス」とはどのようなものであろうか。全体を通してカラーパレットやシルエットに一貫性は感じない。それもそのはず、ルック自体が人種・国籍の様々なモデルに合わせてスタイリングされたからだ。森川は「ルックブックのように服の世界観にモデルを合わせるのではなく、多様なモデルの持つそれぞれの世界観に服を合わせることで、ショーならではのボーダレスを表現したい」と語る。テキスタイルは全てオリジナル。最も良いものが作れる国を幅広く探し、刺繍、ジャガードはうっとりとするような技術の粋を尽くしたものをあつめた。パターンもアニマル、スカーフ柄、タータンチェックなど幅広い柄を大胆にミックス。それでいて煩さを感じさせない絶妙なバランスが保たれている。カラーファーを用いたアイテムにも注目。これらは各メゾンが使い残したリアルファーを再利用して作られているという。グッチ ゴースト(GUCCI GHOST)のトラブル・アンドリュー(Trevor Andrew)のパートナーとして、ジュエリーを作ってきたウィル・ショット(Will Shott)とのコラボレートにより、ブランド初のオリジナルジュエリーも登場した。ウィルのブランドである「www.」のアイテムもランウェイでお目見え。会場にはヒカリエホール間の通路を使用。観客とモデルの間の境界をなくし、服をより身近に見れるようにとの拘りだ。
2017年03月28日ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)の2017年秋冬コレクションが2017年3月25日(土)、渋谷・ヒカリエホールにて発表された。ヨウヘイ オオノ初の東京コレクションでのショー。最初で最後のつもりで臨んだというデザイナー・大野陽平は、スチールや絨毯などの無機質な工業製品をインスピレーション源に洋服作りを進めた。ベルトやロングブーツ、レザーのセットアップはランウェイの光に照らされ煌めく。メッシュのパーカーや、オーガンジーのブラウスと合わせて“透け感”と“メタリック”のバランスを実現させる。柔らかいシャツにキャミソールをレイヤードしたり、パンツに大胆に切り込みを入れ金具で留めたり…女性の身体に合わせたユニークなシルエットを構築。胸の前で布がまとまるデザインのトップスや、腕を覆うレザーのグローブ、スカートが胸まで延長したようなワンピースなど、アイテムそれ自体で成立しているものをいかに崩していくか、を狙っている。無機質さを洋服に落とし込んだとき、それが身体に馴染むように力を添えるのは温かみのあるカラーパレット。柔らかいカーキにブラウンやオレンジのワンピースをスタイリングし、非生物が元になったプロダクトに命を吹き込む。工業製品と異なり本来一人一人キャラクターを持っているはずの女性たちが、今季のアイテムをどのように着るべきか、まで提示したショーだった。
2017年03月28日EAUSEENON(オウシーナン)2017年秋冬コレクションは ”The Inocents” がテーマ。古いホラー映画に登場する女性像を参考に、純粋で騙されやすい主人公が物語の終盤に見せる「成長し、自立していく様」を表現。EAUSEENONが作り出すアイテムは一見すると少女らしさを感じる甘いデザインが特徴ですが、ほのかに匂い立つ妖艶な雰囲気が他の甘さとは違う魅力。まるですっと抜ける花の香りがする、甘さ控えめのミルクティーのような。袖からカメリアの花が咲いたようにフリルが際立つコート、デイジーのスパンコール刺繍が施されたチュールスカートなど、淡い色合いや刺繍、丸みをおびたカッティングやシルエットはヨーロッパなどの子供服のヒストリカルコスチュームから来ています。少女が好むペールトーンの色彩、ビーズ刺繍、花のモチーフなどの組み合わせは幻想的な女性を数多く描く、海外の女流画家が用いた色をヒントに。絵画の様なテキスタイルは油絵を専攻していたデザイナーによるオリジナルプリント。物語が進むにつれ少女から大人の女性に変わっていく心の混乱と成長を、花が溶けていく様子で表現しています。一般参加も可能な2017年秋冬コレクションの展示会と過去シーズンの展示販売会は4月2日まで原宿で開催中。リサーチが詰まったデザインノートを見ながら、ぜひ実物に袖を通してみてください。EAUSEENON 2017AW LOOKEAUSEENON 2017AW imageEAUSEENON水野 惠梨佳が手がけるファッションブランド。幼い頃から絵を描く事が好きで、高校では油絵を勉強する。ファッションの基礎を日本で勉強した後、アントワープでデザインを学ぶ。2015年に自身のブランド EAUSEENON(オウシーナン)を設立。ブランド名の由来は自身の名前でもあるエリカの花から。独自で描いたオリジナルテキスタイル、刺繍を中心としたコレクションを東京、NYを拠点に展開する。HP / Instagram17AW展示会 & サンプルセール会場:atelier sunnyday〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-31-21 ヴィアレット原宿002号室会期 : 3月25日(土)~4月2日(日)11:00~19:00問い合わせ先:EAUSEENON 水野(080-4180-8764 / info@eauseenon.com )※バイヤー・関係者は事前アポイントを推奨※一般入場可能
2017年03月28日リチウム(LITHIUM)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月24日(金)東京・渋谷ヒカリエにて発表された。メンズラインのリチウム オム(LITHIUM HOMME)と、ウィメンズラインのリチウム ファム(LITHIUM FEMME)を合同で発表。ショーには俳優・古川雄輝も登場した。リチウムがショー形式でコレクションを発表するのは2010年以来7年ぶり。6年間、細かいディテールや服の中身をつくり込み、やっと完成してきたと語るデザイナーが見せたのは、極限まで研ぎ澄まされたベーシックの形だった。ベーシックを語る上で欠かさせない“黒”をメインカラーにした服には、無駄な色は混ぜ合わせない。序盤は、ジャケットからパンツまで全てのアイテムが黒一色の、シルエットの美しさがものを言うルックが登場した。コートやジャケットは、若干オーバーなサイズ感。主張するほど大きすぎることはないがニュートラルでもない、現代風のシルエットに落とし込んだパターンテクニックはさすが。ブラック一色のカラーリングも、精巧に作り込んだシルエットの美しさを引き立てる。コレクションに変化を与えたのは、スーベニアジャケットをメインにコーディネートしたルックだ。髑髏や虎、鷹といったモチーフを日本の地名と共に刺繍したこのジャケットは、戦後、外国人のお土産として流行したアウターだ。60年以上スーベニアジャケットの刺繍を続けてきたという群馬・桐生の職人にこの刺繍を施してもらったという。細かい装飾にまで歴史の長い職人の技を落とし込んだのは、永遠の定番性のある服を目指す本ブランドならではの美学だろう。また、ウィメンズは、オーバーシルエットのファーコートや、ファーポケットをアクセントにしたロングコートなど、とりわけデザイン性がプラスされたワードローブだった。ライダースや細身のブラックジャケットなど少し印象の強いアイテムに、レースのトップスを合わせて女性らしさを加えたスタイリングにまとめたのも印象的だった。
2017年03月27日ユキ トリヰ インターナショナル(YUKI TORII INTERNATIONAL)の2017年秋冬コレクションが、東京・恵比寿ガーデンホールにて発表された。一つ一つのルックに注目すると必ず華が存在する。それはアニマル柄のスカーフだったり、ラグジュアリーな首元のファーだったり…グレー、ブラックのスカートにはパステルカラーのジャケットをスタイリングして、より華やかな色彩を加える。それゆえにカラーパレットも多彩に。スモーキーなピンク、グリーンからビビッドなイエローまで。グレーのファーコートは落ち着きのある色だが、モデルの動きに合わせて、色が表情を変え活き活きとしてくる。柄にも着目したい。オリエンタルな雰囲気を感じさせるスカートや、ドットや小花柄、千鳥格子のパターンを変化させたワンピースなどが登場。コレクション終盤には、多くのドレスが姿を表す。オールブラックのドレスはバラが前面に型押しされており、Aラインのシルエットが女性らしさを引き立てる。ラメが入った花柄が布の上を踊るドレスは、まるでおとぎ話に出てくるようなファンシーな雰囲気だ。多種多様な手段で華やかさを演出するショーは、デザイナー・鳥居 ユキのインスピレーションの幅を感じられるものだった。
2017年03月27日ハイク(HYKE)は、2017-18年秋冬ウィメンズコレクションを2017年3月24日(金)東京・中目黒でインスタレーション形式で発表した。シーズンテーマを設けず、何かしらのスタイルや古着を再解釈して新作コレクションを築き上げているハイク。今シーズンはライダースジャケット、フライトジャケット、アウトドアウェアをキーワードとして挙げた。要となるこれら3つのアイテムは、モダンにリデザインされて登場する。袖を切り落としてベストに、ジップを削ぎ落としてプルオーバー型に、上からボアをアタッチさせてラグジュアリーに…アレンジの手法も様々である。ハードなブラックライダースジャケットも、肩章やジップディテールなどで強さの名残を残しつつも、裾をラウンドカットしてボレロ風に仕上げフェミニニティの領域へと足を踏みいれている。シルエットはゆったり、それでいてロングが基本だ。ロングワンピースにはハイネックトップスを重ねてさらにロングパンツを、スカートにはレッグウォーマーを忍ばせて、ロングジャケットを合わせて。差し込まれたボトムスはどれも裾にスリット入りで、足の甲まで覆うスーパーロング仕様。それらを集めたレイヤードは、身体のラインに添わず肌を覆い隠すように複雑で、ある種新型のスーツのような雰囲気を作り出している。かしこまったイメージを作りがちであるセットアップスタイルを調和するのは、様々なアクセサリーたちである。アームウォーマーやネックウォーマーは優し気に微笑みかけ、ストラップの付いたレザーのバックパックは躍動感を放り込んできている。
2017年03月27日ミントデザインズ(mintdesigns)2017年秋冬コレクションが2017年3月24日(金)に東京・青山で発表された。今シーズンは「She is so British...」と題し、英国を感じさせる要素を取り込んだ。ミントデザインズが得意とするオリジナルテキスタイルに、そんなブリティッシュテイストは顔を出した。ウェアにはローズモチーフの柄や、タータンチェック、ストライプといった英国を感じさせるデザインが多用されている。バラ柄はスカートからトップス、コート、ライダース型ジャケットなどのアウターにまで取り入れており、鮮やかなレッドや薄めのグレーカラーで全面にプリント。その上からさらにストライプを重ねたユニークなテキスタイルも登場した。また英国発祥のチェックは「ハウンドトゥース(千鳥格子)」や「タータン」といった柄を採用。ブルー地にレッドやオレンジ、ブラック地にポピー色など、アクセントを効かせたデザインがポイントだ。ワンピースやスカート、トップスをメインに落とし込まれている。足元にもしっかりと英国らしさが表れる。合わせられたのはスコットランド発祥の「ウィングチップシューズ」だ。ミントデザインズの手にかかれば、そんな紳士靴もモダンに変身する。アッパーにはクリーンなホワイトやブラックのほか、インパクトのあるメタリックゴールドを採用し、つま先部分のウィングチップはまるで波のようなデザインにして可愛らしい雰囲気に。同様の装飾はかかとにも表れ、ミントデザインズらしい一足となった。
2017年03月27日ユマ コシノ(YUMA KOSHINO)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月24日(金)東京・渋谷ヒカリエにて発表された。マニッシュでスポーティなアイテムを、マテリアルとパターンの巧みな操作によってラグジュアリーに昇華させた今季のコレクション。テーマを“ARMY COUTURE”とし、ユマ コシノらしい気品にあふれたスタイルを、エレガンスとは相反するミリタリーの要素を用いて引き立てた。ファーストルックを飾ったのは、フレアスリーブが何段も重なったぺプラムのトップスとオーガンザのプリーツスカートだ。歩くたびに布地が揺れ動き、楽し気に遊んでいるような印象を受ける。また、袖全体にボリュームを持たせたジャケットや、袖にも裾にもバルーンの形状を取り入れたトップスなど、空気をはらんで膨らむ楽しいシルエットが一貫してコレクションを彩った。コーディネートは、ベスト、ジャケット、ボンバージャケットなどを重ね着するマニッシュなスタイルがメイン。また、カーキやネイビー、オレンジ、ブラック等のミリタリーカラーによって、アーミーな雰囲気も表現した。これらの、女性らしさとは異なるムードの要素を、多彩な素材を用いて表現したことが、今季のコレクションの真髄だろう。ミリタリー風ジャケットは、光を受けて煌めくリュクスな素材や、高級感あるツイードで仕立てられ、アーミーなカーキ色は、光沢のあるタフタにのせられた。ムードが異なるエレメント同士を、あくまでラグジュアリーなテイストの中において引き合わせる。様々な文化や背景を持ったファッションであっても、ユマ コシノの手にかかれば、すべてがブランドのオリジナルな世界観のもとに完成するのだ。
2017年03月27日ミューラル(MURRAL)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月24日(金)に渋谷ヒカリエで発表された。ぼんやりと会場を照らし出す灯りは、中心に一本の線を描き、それを境目にブルーとオレンジの世界に分けられた。不思議な形をしたランウェイを静かにモデルたちが歩いていく。テーマはノスタルジア。今シーズンは、なつかしさや哀愁という意味を持つこの言葉をミューラルらしく解釈し、“もの寂しさのある温かさ”として表現した。そのために用いたテキスタイルは、オーセンティックなチェック柄や色とりどりの花柄のレース、光沢を放つベルベット。それから、裾のほつれたデニムやラメの輝くニットもそうだ。たくさんの素材を集めたひとつのルックには、そこはかとなくヴィンテージ感が漂う。ディテールに目を向けると、ジャケットやブルゾンの襟元を縁取るように採用されたフリル、コクーンシルエットのコートの肩に咲いたダリアの刺繍などが見受けられ、レトロな風合いに愛らしさを加味していた。背中に大きなハートを配したブルゾンには、同じくハートのモチーフが散りばめられたスカートが合わせられた。これはランウェイの中でもひと際目を引いたスタイルだ。しかし、目を凝らせばハートにはズレがあって、愛にあふれるモチーフどころか、奇妙さを伴うシンボルとしてのせられていたのだった。それは、ミューラルが伝える今シーズンのメッセージの暗示でもあった。最初に不思議な形をしたランウェイと思ったこの会場も実はハート型。あたたかなオレンジと冷ややかなブルーは、会場全体でミューラルの伝えたいノスタルジックを表現していた。
2017年03月27日アキコアオキ(AKIKOAOKI)の2017-18年秋冬コレクションが2017年3月23日(木)、東京・渋谷ヒカリエで発表された。“Primitive(原始的)”をテーマに据え、人間が元々持っている感覚にフォーカス。土臭さや身体的な要素をファッションに落とし込んで行った。デザインにおいて重視したのは、身体と洋服の距離感だ。人の動きに続いてなびく布の動きを表現すべく、前シーズンよりも空気をはらんだデザインを用いた。シャツとプリーツスカートを合わせたようなドレスでは、横に広がるよう広く設定された袖のふんわり感と、スカートのさらりとした質感が絶妙なコントラストを生んでいるルックはこれを象徴すると言えよう。また、原初的な人間の衣装の一つとして想像されるのが、民族衣装だ。ボヘミアン調の民族衣装を引用したエプロンのようなアイテムが特にコレクションで活躍している。トップスの上やドレスの上から着こなされる姿は、前から見るとビスチェのように見え後ろからは紐だけが見える。前後左右どこから見ても印象の違う服に仕上げているのだ。ゆったりとしたルックだけでなく、インナーのようにタイトで薄いトップスも散見。人のシルエットがそのままデザインとなるこのアイテムも、原始的な要素を多分に含んでいる。これらのワードローブの魅力を引き出すべくランウェイは曲がり角を多めに設け、あらゆる角度からメッセージを発信した。
2017年03月26日ディーベック(D-VEC)の2017年秋冬コレクションが2017年3月23日(木)、原宿・キャットストリートをランウェイに発表された。ディーベックは釣り用品の「DAIWA」が永年培ったアパレル機能をベースにした新レーベルだ。雨・風・光の自然環境の中で快適に着用できる機能性とファッション性を融合。快適さと遊び心を取り入れたユニークなプロダクトが披露された。風になびくロングアウターやワンピースは、雨と紫外線を防ぐ「傘」の生地から生まれた斬新なウェアだ。表面に施された迷彩柄のようなデザインは、油彩画風に海をモチーフにしたもの。他にも軽量のテーラードジャケットやスウェットにも同素材が用いられた。イエローやレッドといった鮮やかなカラーのAラインスカートやパンツなどが後に続く。さらに注目したいのは足元。クリーンな印象のホワイトのスリッポンシューズは、釣り用のシューズに使われている技術を落とし込み、ソールに高度なノンスリップゴムを採用した一足。アッパーには帆布生地を使用することで、靴を濡れにくくする撥水性も実現している。そんな機能性を秘めた、ファッショナブルなアウトドアアイテムをストリートテイストに着こなしている点もポイントだ。パーカーを下に忍ばせる着こなしや、アウター×アウターなどのレイヤードスタイルがメイン。そんな着こなしの首元にはチョーカー、頭上にはヘアバンドを合わせていた。
2017年03月26日ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月23日(木)、東京・銀座で発表された。今季のファンタジーは、銀座のど真ん中にある古いブリティッシュパブ「PUB CARDINAL」で綴られた。扉を開けると、そこは日本とは思えない異空間。まさにケイタ マルヤマワールドだ。“トランプゲーム”や“バックギャモン”を楽しむ人、“葉巻とウィスキー”をたしなむ人、“スウィング”のリズムに乗ってダンスを踊る人。みんなが個性的な衣装に身を包んでいる。デザインをするうえで、あげられた“Butterfly Girl”“Swing”“London”を筆頭とする20あまりの言葉が、コレクションノートに書かれていた。それぞれが洋服に反映され、この不思議な世界で溶け合っている。まるでタイムスリップしたかのような時間が流れるこの場所には、フリルが並んだ“ラメのニット”に幾何学的な柄をしたランダムヘムのミモレ丈スカートといった、柄を共存させたスタイルがよく似合う。特に、レトロを表すガングラブチェックは多用された。丸山自身が「シャーロックホームズ ケイタバージョン」と語ったチャイナドレス風のワンピースもそのひとつだ。“スポットライト”を受けて光るスパンコールは、スカラップラインが重なるドレスにあしらわれた。足元のメンズライクなオックスフォードシューズはスリムなラストからできた1足で、今にも“タップダンス”を踊れそうなほど軽やか。そんな風に“ドレスアップ”した彼女とは真逆で、ざっくりとした“手編みのセーター”を着たカジュアルな女性もいる。“ボーイフレンド”のジャケットを借りてきているような女の子は、ラペルにブローチを付けて自分風にアレンジ。一方その隣では、精緻な刺繍をあしらった“ヴィンテージのコート”と、オリエンタルなプリントをあしらったワンピースを合わせて、和洋折衷を感じさせるスタイリングを楽しむ人の姿が。そして、何より今シーズンを語るうえで忘れてはならないのが動物たちの存在。丸山は、イギリスということから派生してハンティングを思い浮かべたという。ワインレッドの“レジメンタルストライプ”のパンツに合わせたシャツには、“キツネ狩り”の様子が描かれている。楽しい時間が過ぎるのは早い。パーティーを終えて、来場者たちはドアを出た瞬間に現実に引き戻される。しかし、皆が楽しい気持ちを持って帰ったはずである。なぜなら、20あまりのキーワードとともに最後に書かれていた言葉は“ハッピーエンド♡”だったのだから。
2017年03月26日ケイスケ ヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2017-18年秋冬コレクションが2017年3月23日(木)、東京・渋谷ヒカリエで発表。ファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)の参加ブランドとして登場した。60年代のファッション写真に魅せられ立ち上げられた今シーズンのワードローブ。当時の写真に写る若い女性たちが放つ、明るくセクシーで楽しげなオーラや笑顔、自由さと50年後に当たる現代の社会に生きる人間を対比しマッチさせ、新たなファッションに昇華させる。当時を代表するブランドたちは、ファッションで明るい未来を作ろうとしていたとデザイナーの吉田は語る。装うことによってたどり着くであろうその未来をケイスケ ヨシダも、その時代を知らなかった身として考え、便利さが格段に向上した現代というフィールドで表現する。モデルたちは髪の毛が硬く整えられ、肌にはシルバーのメイクが施される。機械的に働く現代人の無機質さを表したものだ。表情を失った彼女たちが、生命感に満たされているように見えるのは、他でもない、まとっている洋服たちのエネルギーだ。ベースには、これまで得意としてきた制服のようなシルエットを採用。フーディをジップで開きセーラー服のように見立てているものや、ネイビーのアイテム、チェック柄の配置などスクールテイストな部分は散見される。従来よりも彩度の高いパレットだと感じた人も多いだろう。明暗をあえて不明にしてきたこれまでと違い、“明”に傾けた装いとの向き合い方を配色によっても表しているのである。このコレクションが50年後の未来から見たらどのように映るのか、期待したくなるコレクションとなった。
2017年03月26日ハナエモリ マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit)の2017年秋冬コレクションが2017年3月23日(木)、東京・表参道で発表された。今季のテーマは“Combine”。個々で美しい、異なるものを組み合わせ、共存させることで独立した美しさを目指した。左右で柄が異なったり襟がアシンメトリーなコートや、大胆に入った切れ込みからプリーツが覗くトップスやスカートなど、カッティングや素材にその意識が現れている。カラーブロックで分けられたテキスタイルのワンピースや、折り紙のように胸の前で折られたひだが立体的なドレスなど、直線や曲線が洋服の中で踊る。カラーパレットはスモーキーなカーキやベージュなどアースカラーが中心。会場の照明は衛星のような照明で、ショーの空間は大地と宇宙のコントラストを表現している。曲が大地の息吹のような強いビートに変わると、コレクションの様相もリアルクローズからドレスへ。シャイニーな素材とマットな素材を同系色で組み合わせたものなど、異素材が共存する美しさがより際立つ。目を引くのが幾何学模様や曲線で配された木目。これは、実は本物の木で作られている。デザイナーの天津 憂が自然の年輪を美しいと感じ、ずっと洋服に落とし込みたかったものであるという。黒の布と合わせることで、ハードとソフトの両面性が洋服に面白い質感を生み出していた。
2017年03月26日トクコ・プルミエヴォル(TOKUKO 1er Vol)の2017-18年秋冬コレクションが2017年3月23日(木)、東京・渋谷ヒカリエで発表された。毎シーズン旅からのインスピレーションでテーマを設定する、デザイナーの前田徳子が選んだのは、中央ヨーロッパの国「チェコ」と「ポーランド」だ。コレクションのテーマは「POLSKA」。中欧に漂う中世の息づかいが伝わって来る、表情豊かなワードローブは、楽しげなフォークソングをモデルたちが手をつなぎスキップから観衆の目を釘付けにしていく。伸びやかでムーディな曲へと音楽が変わると、民族的な色彩とシルエットが特徴のドレスが登場。ブラックのブーツを幅広の赤リボンでレースアップすることで、ハードなアイテムをガーリーな印象へと昇華させている。続いて現れるのは、ポーランドの小さな村ザリピエ(ZALIPIE)のザリピエ模様を施したアイテムの数々。村にあったという家々から漂う“おとぎの国”のような雰囲気そのままに、メルヘンな空気を落とし込んだ。総柄や部分柄が目立つコレクションに変化を加えていたのが、ウォヴィチ(ŁOWICZ)の切り絵模様プリントと、トクコ・プルミエヴォルの別ライン「Ligne✳︎J(リーニュ✳︎ジェイ)」から登場した白黒のイメージドット。カラフルなアイテムが続く中、象徴的に色彩を変えていたこれらの2パターンがリズミカルにショーを盛り上げる。圧巻だったのが、フィナーレを飾るお花いっぱいのドレスルック。プリーツとレース、立体的な花形のヘッドアクセサリーなど、もはやお花畑よりも花束よりもより“花”を感じるゴージャスなもので、観ている者それぞれの脳裏に焼きつく圧巻のラストを飾った。
2017年03月26日モト ゴー(MOTO GUO) の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月23日(木)東京・渋谷ヒカリエにて発表された。2017年1月にミラノでもショーを開催したモト ゴー。昔から東京ファッションに憧れていたというデザイナーが披露したのは、日本あるいは世界各国の、ある少年のドキュメンタリーだ。上裸にピンクのショーツという衝撃的なルックで幕を開けたコレクションは、儚いノスタルジックな雰囲気に包まれていた。パジャマを彷彿とさせるピンクやパープルのストライプコットン、背中に背負ったフリル付クッション、トップスとしてスタイリングされたブランケットなどは、子どもの眠りのイメージだろうか。そして、学ランをベースにしたセットアップ、小学生の制帽のような帽子、ジャケットのポケット横に差し込まれた鉛筆、割烹着のように袖口や裾を絞ったリボン、子供が描いたようなイラストの装飾など、あらゆるディテールに、少年時代の記憶を映した要素が繰り返された。素材には、コットンのほか、フェルトやコーデュロイ、ウールなど、柔らかな空気感のものを採用。それらをパステルカラーやファンシーな色合いでカラフルに彩った。パターンは、肩を落としたゆるいシルエットと、制服のようにかっちりとしたシルエットのものが登場し、遊びと学校、2つのシーンを生きる少年の日常を浮かび上がらせた。また、コットンのシャツワンピースにシルエットが同じスカートをまるで1着の服のように重ねたり、ロングシャツの半身に透ける素材を重ね付けしたりする、レイヤードを活かしたデザインも今季の特徴だろう。異素材を重層的に構成していくことによって、一見するとファンキーなワードローブが、完成度の高い独創的なファッションへと昇華されていく。ヴィンテージの要素が昔から大好きだというデザイナーは、過ぎ去った時代の少年たちにとっての日常を、現代人にとっても魅力的に感じられる姿に描き直して見せた。
2017年03月26日ヴィヴィアンノ スー(VIVIANO SUE)とイイミサ(IIMISA)による2017年秋冬コレクションの合同ランウェイショーが、2017年3月23日(木)に渋谷ヒカリエで発表された。アバンギャルドなデザインが特徴のヴィヴィアンノ スー。クチュールとプレタポルテのライン、すべてにおいてコレクションは自然からインスピレーションを得てきた。今シーズンはファー使いで「羽根」を表現し、羽ばたくことで、真の自由を得るといったストーリーを紡ぐ。モデルたちは皆、頭上や顔面に羽根・花・葉を付け、まるで森林から湧き出てきたかのような雰囲気を帯びている。すべてイイミサによって生み出されたオリジナルのヘッドドレスだ。デザイナー自ら染色した鳥羽を、綿糸を用い一羽一羽編み込んでいくことによって表現される華やかさと軽やかさが特徴となっている。ウェアに見られるのは多様なファー使い。グリーン・ブルー・レッド・パープルといったカラフルなファーがコートの背中から袖まで走り、トップスやニットのスリーブにも取り入れられた。ほかにも、ブルー1色でパンツの全面やロング丈のボンバージャケットの前身頃に顔を出す。すべて「リアルファー」を使っているそうだが、本来は捨てるパーツの素材をリサイクル感覚で採用しているため、環境にもしっかりと配慮している。そんなファー使いはアクセサリーにも。ナップザックに加え、巾着・トート・クラッチバッグにも、ふさふさもこもこのウェアと同じ素材が使用され、インパクトあるピースとなっている。そんな強さを感じさせるファーと打ってかわる、レース使いもポイントだ。絡まったバラをモチーフにしたかのようなグリーンレースのドレスや、ブルーのレースがスリーブの裾に顔を出すトップス。他にも、透け感のあるフェミニンなドレスやスリット入りのロングスカートといった女性らしいアイテムにも差し込まれている。ショーの前後に流れたムービーには、ヴィヴィアンノ スーの服を繕うことで、小鳥が力を得て巣立つ姿が描かれていた。「人の目を気にする今の時代、私たちの服を着て、強さを手に入れて生きて欲しい」とデザイナーのヴィヴィアンノ スーは力強く語った。
2017年03月26日コートメール(COTE MER)2017年秋冬コレクションが2017年3月22日(水)に渋谷・ヒカリエで発表された。今シーズンのテーマは「路地裏の美学」。ロサンゼルスやニューヨークで見られる、メインストリートから離れた薄暗いその場所に、デザイナー・佐藤紀夫は美しさを見い出した。そんな路地裏で見られるのは気取らないスタイル。オーバーサイズのデニムジャケット、デニムパンツ、レザージャケットやレザーベストといったストリートウェアがメインだ。ただしそこには、コートメールらしい激しいスタッズ・ペイント・ロゴ使いなどのディテールが光る。中でもスタッズはスターや氷の結晶をモチーフにしたデザインが取り入れられ、スタンダードアイテムが路地裏のギャング風のスタイルに。また、ウェアの背中やパンツの裾にはジップスリット使いが目立つ。開け閉めで表情を変え、歩く度に動きが出る。他にも袖のレースアップデザインも取り入れられていた。アクセサリーで目につくのが「レザーハーネス」。1ルック目から登場したインパクトのある飾りは、オーバーサイズのウェアの上から、大胆にガバッとかぶせてスタイリングされており印象的だ。デザインやカラーも様々で着こなしにアクセントを加えていた。さらに今季は日本ブランドらしく、“着物の生地”を使った服作りに挑戦。レザーブルゾンやジャケットには、紅白金銀の和生地がパッチワークのようにランダムにあしらわれ、見事に洋×和な斬新さを魅せている。
2017年03月25日サポートサーフェス(support surface)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月22日(水)豊洲・Brillia ランニングスタジアムにて発表された。今季、デザイナーはボディと服の関係性に焦点を当て、重量感のある生地で構成される秋冬ファッションの内側から、ボディの気配を感じさせた。ボディの気配を伝えたのは、分量感のあるドルマンスリーブのトップスに代表されるような、布のゆとりが生み出す自然な動きが魅力的な服だ。腕や脇の周辺を自由に揺れ動く布が、身体のラインを隠すようでいて、ボディを暗示する。 また、胸下の切り返し部分に大胆なタックが入れられた黒のワンピースも、大きなシルエットの下にあるボディを意識させ、ほのかな色気を運んだ。カラーパレットは、ブラックやグレー、ダークグリーン、ネイビーといった重厚なカラーが中心。にも関わらず、全体を通して爽やかな印象にまとまっているのは、真っ赤なアネモネを散らした花柄テキスタイルや、ラメのような光沢感とハリ感を出したオリジナルジャカード、キラキラ輝く総スパンコールの生地といった、個性的なマテリアルが服の随所に散りばめられたからだろう。 とりわけ印象的だった素材であるレザーも、リアルレザーより軽くて薄い人工皮革を使用している。それらにボンディングを施したり、光沢感の出る箔を貼ったりし、リアルレザーではあり得ない、軽やかで、表情豊かな効果を生み出す。素材選びやパターンに見られる、何気ないようになされた努力や、表に直接は表れない色気が、真に美しい女性の姿を、私たちに伝えてくれたようなコレクションだった。
2017年03月25日インドネシア発のブランド「ラニ ハッタ(Rani Hatta)」と「バティーク(Bateeq)」の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月22日(水)に東京・渋谷ヒカリエで発表された。アジアンミーツファッショントウキョーの枠で、タイ、ベトナムの2か国に続く発表となったインドネシア。2つのブランドが、現地の伝統を届けにやってきた。先陣を切って登場した「ラニ ハッタ」は伝統的なムスリムファッションをモダンに昇華した。特に目立ったのは、ムスリム女性たちが頭を覆うヒジャブ。タイトなスーツのような被り物と、キャップとタートルネックの組み合わせによって、スポーティーな装いとして一新されている。モノトーンのカラーパレットの中で唯一の柄であったマニッシュなストライプ地にはアイレットが並べられ、クロスした紐がより一層スポーティを強調した。ダウンコートは伝統を崩さぬように薄く仕立てられ、細く取られたキルティングが、紐の交差と相まってより直線的なイメージを生んでいる。それは滑らかな曲線を描く本来のムスリムファッションを覆すようで新鮮に映った。雰囲気が一変して、後半に登場したのがミシェル チョクロサプトロ(Michelle Tjokrosaqutro)手掛けるバティークだ。主役は一目見ただけで分かるバティック柄。滑らかなスカーフのようなテキスタイルにのせられ、随所に現れた。足元にはストラップやベルトの代わりに、同柄のスカーフをさらりと巻いている。オリエンタルなムードを纏いながらも、根本にあるのは伝統をモダナイズすること。だから、提案されているアイテムはシガレットポケットのついたMA-1や、プリーツスカートといったトラディショナルとは正反対に位置するものだ。民族衣装に登場する紐のディテールも現代化され、裾で揺れる細いティアードの延長線上で、あるいは半分に割かれたメンズパンツの架け橋で、密やかに存在している。
2017年03月25日アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月22日(水)、東京・渋谷ヒカリエで発表された。今季のテーマは“BREAK DOWN WALLS. ZIP UP DIFFERENCE”。政治や宗教で日々揺れ動く世界への反抗心を持ちながら、平和を主張したコレクションだ。ショーは、オールブラックのアイテムに身を包んだビートボクサーと、オールホワイトのダンサーのパフォーマンスにより幕を開ける。ビートボックスに合わせて、ダンサーがパントマイムのようなアニメーションダンスを披露。黒の世界と白の世界の壁を壊し2つの世界が一緒になるのを表現していた。2017年春夏コレクションと同様、多数のアイテムに登場したファスナー。ジャケットの背中やハット、ファスナーが曲線で走るトップスに施されており、新しい扉を開く、異なる文化や人をつなぐなどの意味が込められている。袖部分にファスナーが片方だけ付いたアウターは、袖同士を繋ぐことができ、人と人とが手を取って繋がれるアイテムだ。ボリューミーなトップスに対し、ボトムスにはスリムなレギンスなどを合わせ対照的なシルエットを実現。スキニーをスカートとスタイリングし、性差を消す意味合いも込めた。金属で模様がプリントされているエアーオーガンジーは、トップスやキャップの周りでゆらゆらと幻想的に揺れる。オールブラック、もしくはオールホワイトのスタイリングのみで展開されたコレクション。ストリート色が激しいアイテムが並ぶが、ラストはモデル達が交互にランウェイを後にし、白と黒にはっきり分かれた境界が交わりあう、デザイナーの理想とする光景が広がっていた。
2017年03月25日ネーム(Name.)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月21日(火)東京タワーのふもとにあるスタジオアースにて発表された。デザイナーが忙しい毎日を送っている時に目にした、友人の旅先での写真。"妄想旅行(A Delirious Odyssey)"と題された今季のコレクションは、そんな写真を見たデザイナーがイメージした、世界各国の様々な時代のユースカルチャーがテーマとなっている。若者文化の表現は、着こなしによく表れた。メンズのボトムスは、レイヤードスタイルが基本。パンツに膝丈まであるオーバーサイズシャツやニットを重ね、スニーカーをコーディネートすることでストリートモードな雰囲気を作り出す。また、スリランカやモロッコといった旅行先の写真から、デザイナーとアートディレクターの峯崎ノリテルがイメージを膨らませたテキスタイル柄や、80年代イギリスから着想を得たというトラディショナルなチェック柄にも、国際色豊かな発想が表れている。さらに、タートルネックのトップスに、スウェットやジャケット、コートを重ねたり、シャツ、テーラードジャケット、ムートンベストをコーディネートするような、高度な多重レイヤードが披露されたことにも注目。素材は、ムートンやレザー、ウールなど秋冬らしいものがメインで、それらを、ブラックやブラウン、ベージュに近いイエロー、ネイビーなどで染めるカラーリングが気分だ。同じコンセプトに基づいたウィメンズラインも同時発表されたが、ウィメンズには鮮やかなサーモンピンクが主に用いられた。落ち着いたベーシックなカラーをメインとしたコレクションの中で、一際記憶に残るアクセントとなっていた。
2017年03月24日まとふ(matohu)の2017-18年秋冬コレクションが、2017年3月21日(火)東京・増上寺で発表された。まとふがコレクション制作を通して、忘れかけた日本の美意識を現代の目線で取り上げる「日本の眼」シリーズも15回目を迎えた。今シーズンは、江戸時代、町人の間で生まれた美意識「いき」をテーマにしている。制限された当時の社会の中に存在した内に秘めたおしゃれ心と心意気がもし現代にもしあったなら…、現代の「いき」なファッションとは何だろう…、そんな想像力が今季の原動力となった。彼らが見出した、現代の「いき」の条件は3つ。垢ぬけていること、独立心があること、色気があることだ。装飾はそぎ落とされ、女性は女性らしく個性が際立った美しい佇まいは、オリジナルのテキスタイルにのせて表現された。江戸時代中期に流行した縦縞模様は、赤色・青色・橙色様々な色彩で描かれている。どの線も平行をたどる本来の姿とは異なり、線が進むほど細くなったり消えたり太くなったり。波のように変化するラインは、出会いや別れのある人生を比喩的に描いているという。また、縦縞同様にスッとのびた青いラインのパターンは青竹がモチーフ。日本の風景を軽くて柔らかなジャカードに落とし込み、和の心を伝える。シルエットはゆったりとしたロングラインを基調に。ジャケットは身幅をたっぷりと取って、ボトムスはフレアなフォルムに仕立てた。コートは着物のように襟を削ぎ落として、素材・色の重なりを楽しむように異なる色柄を重ねていく。一見地味にみえる無地のコートも、風に揺れると内側から鮮やかな色や織り柄がのぞき、香り立つような色気を魅せる。アクセントとしてレザーアイテムが起用されたのも、江戸時代が着想源だけあって斬新で心地良い。控えめなツヤのレザージャケットやパンツがコーディネートされモダンさへと繋げる。縦縞を意識して制作されたロングピアスも都会的なデザインで、凝縮された現代の美しさが投じられているように映る。
2017年03月24日ヒロコ コシノ(HIROKO KOSHINO)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月21日(火)恵比寿ガーデンホールにて発表された。テーマは、”デカダンス”。「退廃」とも訳されるその言葉は、現実の価値から離れ、時には不協和音を奏でるような脆さを垣間見せながら、象徴的で美しいものを追求する精神を表す。そんなテーマの通り、コレクションは独創的な造形と色彩が幻想的な世界を作り出し、夢の中のように少し不思議で美しい物語を紡いだ。会場の緊張感を煽るようにドラマチックなピアノの音色が鳴り響き、ショーが幕を開けた。まず繰り広げられたのは、灰色や白、黒などの禁欲的なカラーパレットで構成されるルックだ。ニットからパンツ、コートまでグレー1色でまとめたスタイルや、三角やドット柄を全身に細かく敷き詰めたモノクロのドレスが視線を奪う。時折、ディテールに鮮やかなオレンジやブルーを忍ばせ、ハッとするような色彩の効果を誘う。シルエットは、ゆったりとエフォートレスに。ドレープなどが織りなすグニャリとうねるようなフォルムが不安定さを感じさせる。グレーのニットは、肩をカットし、切り口にだらりとドレープを施し、裾はアシンメトリーに仕上げた。また、そんなフォルムと共鳴するように、重ねられたシルバーのネックレスやイヤリングが波打つようなユニークな線を描く。突然、曲調が生き生きとリズミカルなものに変化し、今までの退廃的なムードを覆すような鮮やかな色彩のルックが展開。グリーンやブルー、オレンジといったエネルギッシュなカラーが大胆に組み合わされ、現実離れしたような神秘的な印象を与える。爽やかなグリーンのトップスに大きくあしらわれたフリルは、先ほどまでのダラリと崩れるようなものとは打って変わり、それ自体が自立しているような立体的で有機的なものに。ヒダの内側から異なるカラーを使用し、それがちらりと覗くことで、よりリズミカルさを際立たせる。そしてショーの終盤は、まるで星が輝く夜空を想起させるようなロマンチックなルックが登場した。テーラードが美しいジャケットには、真っ黒の生地に、ストーンを散りばめたゴールドのラインが浮かぶ。裾からはキラキラとグリッターがきらめくチュールをなびかせ、かっちりとしたスーツとのコントラストを生み出した。
2017年03月24日ベトナムのブランド、グエン・コン・チー(Nguyen Cong Tri)が2017年秋冬コレクションを渋谷・ヒカリエで2017年3月21日(火)に発表した。アジアン ファション ミーツ トーキョー ベトナム(Asian Fashion Meets TOKYO Vietnam)」の枠で、唯一2回連続の発表となったグエン・コン・チー。前シーズンは、ベトナムの現地の女性たちの美しさを表現すべく稲作に従事する女性たちを描いたが、近シーズンも現地の女性にフォーカスしている。リヤカーを引いて花を売るベトナムの女性たちが、華やかなコレクションのキーとなった。とは言っても、過酷な労働環境の中で懸命に働く彼女たちの服は元来素朴なもの。だからこそ、カラーはホワイト、ブラック、グレーを主流としニュートラルに抑えられている。しかし彼女たちの働く姿は楽し気だから、その気持ちを反映するかのように、最初は遠慮がちに咲いていた花が時を経て色づき、まるで咲く喜びを謳歌するかの如く飛び出してく。咲き乱れた小さな花はブルゾンの開かれたラグランから飛び出し、花束は逆さ向けられ丸ごとドレスへ変換される。一方で、ベトナムの暑い日差しから体を守るアウターはデフォルメされた。その様相は、女性の小さな体と大きなリアカーがまるで一体化したよう。大きなアウターの背中は花を大きく表現するには最適の場所だった。立体的な刺繍の重なりと、時折見せるクリアな輝きによって変幻自在に姿を変える。花を支える茎を束ねたような長いリブは、洋服たちをより構築的に仕上げるために取り入れられたようだ。入り乱れ、ブルゾンなどは原型を留めるのが精いっぱいというほどにパターンが崩された。さらに女性の儚さを感じさせるランジェリードレスも登場している。それらは、町の喧騒や息苦しさを忘れさせ、人々に安らぎをもたらす彼女たちの存在を体現し、肥大化したアウターやボトムスと対比的に組み合わせられた。
2017年03月24日ハハ(ha ha)の2017-18年秋冬コレクションが、東京ファッションウィーク2日目の2017年3月21日(火)渋谷・ヒカリエにて発表された。毎シーズン、メッセージ性のあるテーマを発信するハハが今シーズン選んだのは、すばり“東京”だ。「NEON TOKYO(ネオン トーキョー)」というテーマのもと、モノが複雑に入り組み、くっついては離れる混沌とした東京の様を、ユニークなアイデアと、蓄光素材や、ビビットな色に染めたファー、クリアPVC素材といった独特な素材使いで表現した。常に変化する東京をファッションで表すために、ハハは、ファッションを服そのものとしてというより、パーツとして捉えた。特にコレクションの序盤に登場したピースは、そのことを明確に示していた。服と分離した大きな付け襟や、袖と側面の身頃が抜け落ちたコート、ボディの中心のみとなった服…。続いて、これらが完成された服として登場する。ピンクやグリーンなどのネオンカラーで塗り分けられたジッパーに、同色のジッパーのついたパーツが繋ぎ合わされ、1着の服となっているのだ。この仕様はただ単に、カスタマイズ可能な服という斬新なアイデアを実現しただけではない。ブランドのコンセプトである“ユニバーサルファッション”、つまり、ハンディを持った人も、健常者も、また、それぞれ異なる体格の人々も、あらゆる人に着られる服を目指すブランドによる、必然的な形であるのだろう。例えば、左右で形状の異なる腕を持つ人が、異なる大きさの腕パーツを用いる必要があるなど、人によって服に求める機能が異なる現実に対応可能な、ユニバーサルなファッションが提案されているのだ。また、様々な色のクルミボタンを全身に並べたジャケットにも、ユニバーサルファッションへの思いが表現されていた。視覚にハンディを持っている人が最も視認可能な色である黄色を文字として並ることで、メッセージが浮き上がるような工夫を施した。あらゆる人々に向けて勇気が出るような語りかけを行った本コレクションは、背中に“東京オリンピック”の文字が書かれたダウンコートで幕を閉じた。2017年から2020年に向かって、混沌とした東京が進むユニバーサルな未来を示しているようだった。
2017年03月24日ハウスコミューン(House_Commune)2017年秋冬コレクションが2017年3月21日(火)・虎ノ門で発表された。今シーズンは、都会に生きる女性の日常という視点で「エレガンス」を再考察。新時代における女性らしさを表現した。シックな「都会的エレガンス」。そんな言葉が思い浮かぶ代表色は、ネイビーではないだろうか。女性らしさと強さ、両方を兼ね揃えるこの色味はコレクションの大部分に見られる。他にもカーキ・グレー・ブラックといったパレットに、サーモンピンクやバーガンディといった女性らしいカラーを挿し込んでコレクションは出来上がっている。「現代女性の持つ内なるパワーを表現した」とコレクションノートに書かれているとおり、強さを感じさせるメンズライクなアイテムやスタイルに絶妙な女性らしさを加えているのが分かる。まるでスーツ生地のようなセットアップはベルトでウエストを強調して着こなしたり、マキシ丈のトレンチコートにはスリットが入り、歩く度に優美な動きを魅せる。無地が多いが、そんな中取り入れられた柄は「レジメントストライプ」と「ペイズリー」。イギリスの軍旗から誕生したというこのストライプ柄は、ネクタイに使われることが多く、メンズライクな要素を採用したかのように感じられる。ただそんな柄もスリットが深く入ったロングスカートやキャミソールといったフェミニンなアイテムに落とし込まれている。ブランドの人気アイテムの1つである「デニム」は、パンツとシャツが発表された。デニムパンツはハイウェストでワイドなシルエット、裾が少しフレアになっているのが特徴。シックなインディゴとカジュアルなブルーの2色だ。そんな着こなしに艶やかさを与えるのは、少しくすんだゴールドとシルバーのアクセサリー。球をモチーフにしたピアス・ネックレス・リングのほか、バングルなどが耳元や手元に光を与える。さらに、マニッシュなフォルムのクラッチバッグには、リングハンドルを採用することで絶妙なバランスに仕上げた。
2017年03月24日