出版社生まれの香水「湖畔の画集」“静かな湖のほとり”を表現、みずみずしい果実と花々の香り
流れることのない水。静止したまま空の色をうけ、刻々とその表情を変える水面を眺めていると、しんと心がしずまり、あらゆる雑念が息をひそめる。心がざわめいてどうにもならないとき、わたしはあの湖に会いにゆく。
それはとある街の一角からはじまる。花々にかこまれた小径を歩いてゆくと、やがて森に入り、さらに歩いてゆくと、とつぜん、視界が湖の風景でいっぱいになる。いつだって胸うたれる。湖畔にたたずみ、風に頬をなでられながら水面のゆらめきに視線をゆだねる。
ここじゃなくてはだめだ、という場所が誰にもあるのだと思う。
わたしの場合はこの湖だ。
湖畔に寄り添うように、小さなホテルが佇んでいる。ラウンジには壁を埋めつくすほどにたくさんの画集が並んでいて、訪れる人を心待ちにしているような風情がある。
部屋からは湖が一望できる。陽がおちてからの夜の底みたいな湖の荘厳さに息をのみ、そして朝、陽をうけてゆらめく水面と空の青さをのみこんだような色彩にみとれる。
ベッドにもどって、シーツにくるまって、大きな画集をゆっくりと開く。しずかな、どこまでもしずかなひととき。
そんなひとときを感じたいとき、わたしは「湖畔の画集」