親指で皮膚をなぞるだけ!鍼灸師が勧める「8の字マッサージ」とは
「私たちの体は上下や左右のバランスが保たれており、そのバランスが崩れたときに不調となって現れます。そんなとき、皮膚に8の字をそっとなでるように描くことで体調を整えることができます」
こう話すのは、アジアン・ハンドセラピー協会理事で鍼灸師の松岡佳余子さん。松岡さんは手指鍼といって手のツボを刺激するマッサージや鍼を行っているが、皮下にあるツボだけでなく、表面の皮膚そのものを優しくマッサージすることでも不調を整えることができるという。
「中医学では体の上下左右のバランスが整っていることが重要だとされています。たとえば、『頭寒足熱』というように、体の末端にまでしっかりと血流が循環していればバランスがとれた状態なのですが、上半身に血が上がりすぎたり、下半身に血が下りたまま上がらなくなったりすると、さまざまな不調を発します。腰痛や肩こり、ひざ痛といったこりや痛みもその兆候のひとつです」(松岡さん・以下同)
松岡さんによれば、手は全身の縮図となっており、それぞれ全身の臓器や部位に対応する、「反射区」がある。8の字マッサージは、手の反射区を8の字になでることで、反射区に対応する臓器や部位の不調を改善することができるというものだ。
反射区は、手のひら側が体の前面、手の甲側が体の背面、中指の指先が頭と対応する。
そして、中指の第1関節と第2関節の間が首、その下が肩となる。そのまま手の甲側にうつり、脊柱、腰椎、仙骨と下りていく。手のひら側には内臓が詰まっている。さらに人さし指と薬指が手・腕、親指と小指が足となり、手の形状が全身と対応している。
■上下左右がシンメトリーな8の字でバランスを整える
【基本的なやり方】
・痛みがある側の甲を反対側の手でマッサージする。
・力を入れず、親指でなでるように8の字を描く。左回りに10回ほどマッサージしたあと右回りに10回マッサージする。
基本的な8の字マッサージは、親指をメインに指を使って反射区に8の字を描く。
このとき、マッサージは強く押すのではなく、該当する部分を優しく触れる程度になでるだけ。一方向に何度か行ったら逆方向にも行う。基本的には、痛みのある側の手に、たとえば腰の右側に痛みがあれば右手、左側にあれば左手の反射区をマッサージするとよい。両手は太ももの上に置いて、テレビを見ながらなど、リラックスモードで「ながら作業」で行うと心もほぐれやすくなる。ハンドクリームやマッサージオイルなどを使ってもよい。
それにしてもなぜ「8」の字なのだろうか。
「8は上下左右がシンメトリーで非常にバランスがとれた形です。反射区に8の字にマッサージをすることで、全身のバランスが整えやすくなるという考え方なのです」
今回、腰痛、ひざ痛など中高年女性の多くが悩まされている症状への8の字マッサージを紹介しよう。
【腰痛】
自分では手の届かない腰へのマッサージは、手の甲にするのが便利。手の甲は全体的に背中~腰の反射区で、もちろん親指でもいいが、マッサージする範囲が広いので、人さし指、中指、薬指の3本を使ったほうが効果的。左回りに10回ほど行ったら逆回転の右回りに。
「皮膚の表面は、強く押したりもんだりするよりも、フェザータッチで軽く触れるほうが脳に刺激を与え、筋肉をリラックスさせる作用もあるようです。特に手の甲は手のひらに比べてモノに触れる頻度が低いのでより敏感です。優しく優しくマッサージしてみてください」
【ひざ痛】
ひざ痛には小指の第2関節を中心に8の字マッサージ。右ひざが痛ければ右手の小指に、ひざの内側が痛ければ、小指の内側、外側が痛いならば外側。少しずつずらしながら8の字を描くのもいい。
【首、肩が痛いとき】
首、肩の反射区は中指。第1関節あたりが首で、そこから下へいくと肩周辺。第1関節から指の付け根にかけて8の字を描く。手の甲側だけでなく側面もマッサージするとよい。
【股関節痛】
股関節の痛みには薬指と小指の手の甲の付け根の部分を優しくマッサージ。くるっと手を返して、手のひら側にも範囲を広げてやってみよう。
「8の字マッサージのよさは、副作用の心配もなく、どこででもすぐに安全にできることです。少し体のバランスが崩れたなというときや痛みがあるときは、手の甲を全身に見立てて優しくマッサージしてみてください」
簡単にできるので、痛みや不調があれば、早速実践してみよう。
【PROFILE】
松岡佳余子
アジアン・ハンドセラピー協会理事。鍼灸師。著書も多数