持久力の高い高齢者は作業記憶も優れる:新たな脳内メカニズムを解明
次に、高齢者において有酸素能力と課題成績、脳活動の関係性を見ると、有酸素能力が高い高齢者ほど、高齢者特有の脳活動(若年成人では課題中に活動が見られなかった脳領域の活動)が活発で、それが課題成績の高さ(高難度条件の反応時間)と関連している可能性が示されました。
言語性Nバック課題(2バック条件)中の脳活動
【まとめ】
本研究で、高齢者は若年成人に比べて、前頭前野の広範囲を代償的に動員して高難度の課題を遂行しており、有酸素能力の高い高齢者では、より前頭前野の代償的な活性度が高く、これにより、有酸素能力の低い高齢者より優れた作業記憶能力を発揮している可能性を確認しました。本研究の成果は、なぜ有酸素能力の高い高齢者の作業記憶能力が高いのか、という疑問にこたえる脳機能メカニズムの解明に寄与する可能性があります。今後、運動トレーニングによる有酸素能力、作業記憶能力、脳活動の変化の関係性を見ることで、これらの因果関係が解明されることが期待されます。
【発表論文】
掲載誌 : Imaging Neuroscience
タイトル: Neural mechanisms of the relationship between aerobic
fitness and working memory in older adults: an fNIRS study
著者 : Kazuki Hyodo, Ippeita Dan, Takashi Jindo,
Kiyomitsu Niioka, Sho Naganawa, Ayako Mukoyama,
Hideaki Soya, Takashi Arao
DOI番号 :
https://doi.org/10.1162/imag_a_00167
【用語解説】
※1. 有酸素能力:全身持久力とも呼ばれ、長時間にわたり一定の強度の運動を続けることができる能力。