実践! 子育てコーチング ~中級編~(ママが楽になる母親コーチング特集5)
「差し出されたものをもらう」というアクノレッジメント
「承認」の中には、「もらう」という行為も含まれる。「もらう」というと、なんだか受け身的な行為のような印象があるが…。
「『心を込めて、感謝の気持ちを表現しながら、もらう』ことは、意識して働きかけようという意志があって、初めて可能になります。自分が差し出したものを相手が喜んで『もらって』くれる、それは人にとって最もうれしい瞬間なんですね」と、あべさん。
子どもが表現したものを「もらう」例として、あべさんの娘さんがピアノのレッスンに通い始めた時のエピソードを紹介しよう。
娘は一目で先生を気にいってしまった。いかにも芸術家という風情のある女の人で、エネルギッシュで、ユーモアがある。
初回のレッスンの最初に、先生は娘の名前を確かめると一瞬目を閉じて「いいお名前ねー。先生、ちはるちゃんってお名前の生徒さん、初めてよ」と、本当にうっとりしながらこの名前を味わってくれた。先生の前に立っている娘が、体を左右に揺らして照れながらも、喜んでいるのが伝わってきた。
次の週、娘が先生に小さい手紙を渡すと、先生は「うわぁー」と言ったきり、穴のあくほどその小さいメモを見つめる。「ちはるちゃんありがとう」と一人ごとのように呟くと、また見入っている。やっと顔を上げると、「これはここに飾っておこうね」と譜面台の上にメモを乗せてレッスンを始めてくれた。
「差し出されたものをもらう」ことは、働きかけるスキルである。そんな視点をもつと、普段の生活が、今までとは違って見えてくるかもしれない。
子育てコーチング特集も、次回はいよいよ、最終回。
リクエストするスキルを学びます。
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