連載記事:「幸せ力」の育て方
子どもが将来、幸せになるために必要な力とは?(「幸せ力」の育て方 Vol.1)
自分の子どもが大人になったとき、「勉強はできるけれど、就職できない」「就職したけれど、仕事がつらくて病気になりそう」「収入は高いけれど、友だちがいなくて孤独」などという状態にはなってほしくありませんよね。
子どもが将来、幸せになるためには、どんな能力が必要なのでしょうか。
子どもの言語習得や発達心理について研究を行っている、内田伸子先生にお話を伺いました。
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子どもが幸せに生きるために必要な創造力は、生後10ヵ月から育っている
「生きていくうえで大切なのは、創造的想像力です」と内田先生は言います。
創造的想像力とは、知識や体験から何かをイメージし、そこからまた新しい何かを生み出す力のことです。
「子どもの想像力が働き始めるのは、生後10ヵ月ごろからです。
この頃にはイメージが誕生し、『見立て遊び』や『延滞模倣』が見られるようになります。
見立て遊びとは、見ているものとは別のものをイメージして遊ぶことです。
たとえば、つみきを車に見立てて動かしますよね。
延滞模倣とは、見たり聞いたりしたことをイメージとして頭の中に入れ、時間が経ってから思い出してマネをすることです。たとえば、お母さんがブラシで髪をとかしているのを見て、あとから自分の髪にブラシを当てたりします」
1歳に満たない早い時期から、子どもは遊びの中で想像力を発揮しているようです。
「想像力」は「生きる力」になる
「想像力が豊かな人は、生きる力が大きいと思っています」と内田先生は言います。
そう思うきっかけになったのは、ユダヤ人医師ヴィクトール・フランクルの著作『夜と霧—ドイツ強制収容所の体験記録』(みすず書房、1961年)を読んだことだったそうです。
「フランクルは第二次大戦のときにドイツ・ナチスに捕えられ、強制収容所でつらい体験をしました。
囚人たちは水のようなスープとパンのかけら一個で強制労働させられ、体が弱ってくると毒ガス室に連れて行かれる。そんな過酷な状況の中で生き残ることができたのは、想像力の豊かな人たちだけでした」
体力のある人ではなく、場合によっては繊細とも思える想像力の豊かな人たちが生き残ることができたのはなぜでしょうか。