連載記事:「幸せ力」の育て方
早すぎる英語教育は子どもの知能を遅らせる(「幸せ力」の育て方 Vol.4)
子どもを英語の得意な子にしたいと考えるママが増えています。
赤ちゃんのころから英語の教材や絵本に触れさせたり、英語で保育を行う幼稚園やインターナショナルスクールに通わせたりといった早期英語教育は本当に必要なのでしょうか。
子どもの言語習得や発達心理について研究を行っている内田伸子先生にお話を伺いました。
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幼児期に覚える単語と、大人が使う単語は違う
「幼児期の英語教育には反対です。母国語の土台ができていないところで、第二言語を習得しても意味がありません」と内田先生はきっぱり言います。
内田先生は、米国スタンフォード大学の心理学部と言語学部の客員研究員として、第二言語としての英語習得の過程について研究されました。
そのとき、幼児期にニューヨークに住んでいた子どもたちに、英語でお話をつくってもらう実験を行ったそうです。
「小学生なのに『doggy(ドギー)』などといった赤ちゃん言葉を使う子どもたちがいました」
doggy(ドギー)は、日本語でいうと「ワンワン」に当たります。
「幼児期に覚えた単語をそのまま使い続けているのですね。そうした子たちは、ネイティブの子どもたちに笑われ、逆に自信を失うことになっていました」
早くから覚えた英語が、英語への苦手意識を植え付ける原因になってしまっては、子どもがかわいそうですね。
日本語の土台がない状態で英語を覚えると、偏差値が低くなる
トロント大学の言語心理学者カミンズと日本語教育教授の中島和子さんは、日本からカナダに移住した子どもたちの英語習得過程についてさまざまな角度から検討しました。カナダ移住年齢が何歳でも英語の発音や聞き取り能力は1年半で現地並みになります。しかし、あまり注目されていない学習言語である「英語読解能力」については年齢との関連が出てきました。
●3~6歳に移住した子ども
最初の立ち上がりはいいけれど、その後の伸びが悪くなります。
現地の子ども並みの英語読解能力を手に入れるまで、約8~11年半の月日がかかります。
●7~9歳に移住した子ども
約2年半で現地の子ども並みのレベルになります。
●10~12歳に移住した子ども
7~9歳で移住した子どもたちよりは1年ほど余分にかかりますが、「英語読解能力」の達成度は最も高かったのです。
それだけではありません。小学生の時期に、日本の小学校のテキストでしっかり勉強した子どものほうが、すべての教科の成績がよかったのです。