連載記事:「幸せ力」の育て方
子どもの能力を伸ばす、幼稚園や保育園選びのポイント(「幸せ力」の育て方 Vol.10)
前回、幼稚園や保育園の保育形態の違いが、子どもの学力格差につながるという話をしました。
さらに、保育形態の違いは、運動能力にまで影響を及ぼしてしまうのだそうです。
保育形態の違いによって学力や運動能力に差が出てしまうのはなぜか、発達心理学や保育学が専門の内田伸子先生にお話を伺いました。
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幼児期に運動指導を受けている子どもは、かえって運動能力が低い
「東京学芸大学の杉原隆先生が、全国9,000名3~5歳の子どもを対象に、運動能力に関する調査を実施しました。
すると、体育の時間を設けている幼稚園や保育園に通っている子どものほうが、子どもの自主性や主体的な遊びを大切にしている子ども中心の保育の幼稚園や保育園に通っている子どもたちよりも運動能力が低いという結果になりました。
さらに、運動の指導を受けている子どもたちは、運動嫌いになっていることが多かったのです」
運動指導を受けることで、かえって運動能力が下がってしまうとは、驚きの事実です。
なぜ、そんなことになってしまうのでしょうか。
「特定の部位を動かす運動をまるで強制的なトレーニングのようにくり返していると、それ以外の動きをする機会を失います。
さらに、運動のための説明を聞いている時間が長く、肝心の動き回る時間が少なくなっていることも問題です。
また、トレーニングのように行う運動は面白くありませんから、子どもは飽きてしまいます。またこのトレーニングについていけない子どもはつらくなり、落ちこぼれてしまうのです。
そのうえ、子どもは5歳ころになると、『展示ルール』が確立されてきます。展示ルールとは、他者の気持ちを考えて自分のふるまいを決めるルールのことです。つまり他人の目を気にしはじめるのです。
すると、友だちより自分ができないことは嫌だと思うようになります。そして、運動嫌いになってしまうのです」