連載記事:「幸せ力」の育て方
子どもの能力を伸ばす、幼稚園や保育園選びのポイント(「幸せ力」の育て方 Vol.10)
運動能力を高め、運動を好きになる方法
「運動能力を高めるために大切なことは、自由遊びです。
子どもは遊びを通して、走ったり、登ったり、運んだり、自由にたくさんの種類の運動を経験します。それが運動能力を高めることにつながるのです。
体を使って楽しく遊べるよう、ときどき保育者が誘ってあげるといいですね。たとえば、あひるさんになって向こうまで行こうとか、踏み台を使って高いところにあるものを取るのを手伝うとか」
それなら運動を楽しみながら、運動能力を伸ばしていけますね。
運動神経と学力を伸ばすポイントは「自由保育」
「この調査結果から、杉原先生は、遊びを大切にする自由保育(※1)がいいとおっしゃっています。
私たちが行った子どもの学力に関する研究結果もまったく同じでした。
自由保育を行っている幼稚園や保育園に通っている子どもの語彙得点は非常に高く、一斉保育(※2)を行っている幼稚園や保育園に通っている子どもの語彙得点は低く、その差は年齢が高くなるほど開いていくことがわかっています。(詳しくは
前回の記事をご覧ください)」
(※1) 自由保育とは:自由遊びの時間が長く、子どもが主体となって自発的にやりたいことに取り組む、子ども中心の保育形態のこと。放任とは違い、子どもの自主性を尊重しつつも、幼児期に学んでほしい目標や狙いを達成できるよう保育士が誘導する。国立大学附属幼稚園や公立幼稚園や私立幼稚園の一部、社会福祉法人の保育所では子ども中心の保育であり、子どもたちは好きな遊びに主体的に取り組み保育者は援助者として子どもの学びに寄り添い、子どもが困っているとき助けてあげる「わき役」である。
(※2) 一斉保育とは:全員に同じこと(体育や音楽、お絵かきなど)をさせる、カリキュラム中心の保育形態のこと。小学1年生の準備教育や英会話などを取り入れ、体操選手をつくるということなどを教育目標にかかげる私立幼稚園や私立保育園の一部にみられる。
遊びを通して子どもは学習するのですね。
「そういうことです。幼児にとって遊びとは『自発的活動』であり、頭がイキイキと活発に働いている状態です。扁桃体が快感状態にあるので、吸収力が大きくなるのです」
考える力と運動能力を高められるよう、子どもをたくさん遊ばせてあげましょう。
(佐々木月子)
今回取材に協力してくださったのは
内田 伸子先生
十文字学園女子大学特任教授・お茶の水女子大学名誉教授・学術博士。
専門は発達心理学、認知心理学、保育学。国立教育政策研究所「幼児の論理的思考の発達調査プロジェクト会議」(主査)、最高裁「裁判員制度の有識者会議」(委員)、文化庁国語審議会委員なども務めるほか、NHK Eテレの「おかあさんといっしょ」の番組開発やコメンテーター、ベネッセの子どもチャレンジの監修、しまじろうパペットの開発、創造力知育玩具「エポンテ」(シャチハタ)の開発なども担当。著書は、『発達心理学―ことばの獲得と教育』(岩波書店)、『よくわかる乳幼児心理学』(ミネルヴァ書房)、『
子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。
国際バカロレア初等教育プログラム導入幼稚園。3つの特徴と3つの教育効果。