連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
誰が子どもに最初に色をつけるのか【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第12話】
数日前、高校受験をいよいよ目前に控えた息子モーが「覚えた!」と突然、大声をあげた。母さん聞いていてくれよ、というので英単語かと耳を傾けると、前置きもなく、呪文のような言葉を唱え出すモー。
「クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット……よしっ!」
「は?」
全部意味不明だが、特に最後の“……よしっ!”の意味を計りかねて言葉を失っていると、「バンコクの正式名称だよ」と、やれやれと言わんばかりの顔で言うモー。それだけでは飽き足らず、「ピカソの本名も言えるよ? パブロ・ディエーゴ・ホセ……」と再び呪文を唱えて随分誇らしげな様子。受験目前の限られた時間と脳の空き容量とを、なぜバンコクとピカソに費やそうと思ったんだ。なぜそれで“……よしっ!”なんだ。
本人の意志、気付きを尊重したい。……が、今そこに気づく必要ある?ということばかりを得意げに拾い上げてくる、それが子どもである。
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