連載記事:【親子で楽しむ絵本の時間】
夏の最後の宿題に役立つ! 「夏の昆虫」絵本【親子で楽しむ絵本の時間】 第15回
■セミたちの夏
写真・文:筒井 学/出版社:小学館
「セミたちの夏」
セミは夏の風物詩として広く知られていますが、つかまえて手にとったり、木にとまっている姿を間近で見たり、じっくり観察したことのある人は少ないかもしれません。みずみずしい卵から幼虫が顔をだす瞬間、土にもぐるためにトンネルをほっている様子、久しぶりに地上にでたときの表情…。特に圧倒されてしまうのは、一瞬一瞬のセミの輝きをとらえた写真です。成虫としての2週間の生を余すことなく映した写真は神秘的な美しさを秘め、絵本というより上質な写真集のよう。絵本をキッカケにわが子が昆虫に興味をもつようになった、というママの声も寄せられています。
■バッタさんのきせつ
作:エルンスト・クライドルフ/訳:佐々木 田鶴子/出版社:ほるぷ出版
「バッタさんのきせつ」
作者はクライドルフという詩人画家で、小さな生き物の世界を愛をもって見つめてきたそう。絵本では食べ物や人以外の生き物を擬人化したり、キャラクター化することが多いですが、こちらの絵本ではバッタを「人間」によせることはしません。もしも虫たちの声を耳にする力を手に入れたなら、きっとこんな風におしゃべりしているんだろうなぁと実感できる作品に仕上がっており、それは作者自身の観察眼によるものといえそうです。「ボールなげ」「みはりばん」「夜の音楽」など見開きごとにテーマ性をもってつづられるバッタたちのストーリーは、詩的で独特。自分も一緒にはいりこんでみたくなる世界観が広がっています。
■おいでよ!むしのもり
作:タダ サトシ/出版社:小学館
「おいでよ!むしのもり」
「すいえいたいかい」「まいごのヘラクレスくん」「あきのむしのもり」といった短編3本からなるこちらの絵本は、森に住む虫たちと子どもたちのあたたかな交流が丁寧に描きこまれています。ここでは人間の子どもと森の虫たちが友だちとして時間を共有しており、虫たちの世界を人間のままに感じられるのが新鮮! 互いを思いやる関係性を目にすることもでき、相手への優しい気持ちには人も虫も関係がないことに気づかされます。お話のなかでは「むしが4ひきかくれているよ。さがしてね」といったクイズも盛り込まれており、遊びながら虫たちの世界を体感できる一冊に仕上がっているようです。
夏ならではの昆虫をテーマにした絵本をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。虫そのものの知識が深まる作品もあれば、引き込まれるような世界観を築いている作品も…。興味をもった一冊から、虫たちにふれあってみてくださいね。