【NHK発達障害プロジェクト】 発達障害の子育てに思う、「ありのまま」を受け入れることの難しさ


■障害は敵ではない

また、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。

「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。

「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」

この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。

自閉症は人を閉じ込める殻ではありません
中に普通の子どもが隠れているわけではないのです
自閉症は私が私であること、そのもの
私という人格から切り離すことはできません

「うちの子が自閉症でなければよかった」
「この子の自閉症がよくなりますように」

その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。


「自閉症ではない別の子がよかった」

両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです

彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと…

■何を持って「息子」なのだろう?

【NHK発達障害プロジェクト】 発達障害の子育てに思う、「ありのまま」を受け入れることの難しさ

©Monet - stock.adobe.com


障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。

私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。

でも、1年経った今は、こう思うのだ。

例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。

改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。


最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。

子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。

まちとこ出版社N

NHK 発達障害プロジェクト
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/

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