子供の睡眠時間の理想は? 睡眠不足の影響と改善方法
■寝不足が引き起こすこと
――睡眠不足って漠然と「良くない」と思っている人も多いかと思うのですが、具体的に子どもの睡眠不足はどんな影響がありますか?
「世の中には5時間睡眠で平気な人もいるし、7時間寝ないとダメな人もいます。そこは個人差優先でいいと思います。でも、子どもは寝ないと脳が回復しません。長い目で見た時、睡眠は子どもの意欲や感情のコントロールに影響します。気持ちをコントロールできるのは『前頭前野(ぜんとうぜんや)』と呼ばれるところですが、ここは睡眠不足にいちばん弱い部分なんです。だから睡眠不足が続くとイライラしたりするわけですね。」
――大人もそうですよね。
「眠りを充実させるには、日中の活動も充実していないとダメです。
今、眠りをおろそかにしているなら、習いごとや勉強が大事と考えているのと同じように眠りの優先順位をもうちょっとあげてほしいなと思います。」
■寝相よりも考えたい「子どもの生活リズム」
――早く寝かせようと思っても、実際に行動に移すのは簡単なようで難しいですよね。「もう少しでパパが帰ってくるから起きてる!」なんて言われたり、夫に子どもをお風呂に入れてもらいたかったりで。
「ヨーロッパの子どもの寝る時間が、なぜ遅くならないのかを考えてみると『子ども』と『大人』の時間をしっかり分けているからなんです。子どもを寝かすためにベビーシッターをやとって、大人は外に食事に行く。大人の楽しみは大人のもの、そういう文化があるんですね。
子どもが寝るときはベビーシッターでいい。子どもは寝なきゃいけない。大人は大人の楽しみを満喫する、そういう文化。
でも、日本ってお父さんが帰ってきてお風呂にいれ、『川の字』になってみんなで寝る。そういう文化ですよね。」
――文化の違いもあるんですね。
「現代は、子どもの睡眠への優先順位が下がっているように思えます。優先度を上げたいのは、子どもの生活リズムです。」
――食事も寝るのも毎日、家族そろって…。子どもの睡眠を優先的に考えれば「この生活スタイルを守らねば」と無理に縛られなくていいのかもしれませんね。
今回は、子どもの睡眠時間から、夜に眠くならないときの対処など、具体的な方法まで聞くことができました。
印象的だったのは「子どものことも大事だけど、お母さんもがんばるために寝てくださいね」という鈴木先生の言葉。日本の女性は本当に短眠なんだそうです。
「今日もよく寝たな~」と毎日言えるくらい、お母さんこそしっかり睡眠をとっていきましょう!
<取材先>
医学博士 鈴木みゆき先生独立行政法人 国立青少年教育振興機構理事長
日本睡眠学会所属。前和洋女子大学こども発達学類教授。2001年「子どもの早起きをすすめる会」を小児科医2人と設立し、「子どもの早寝・早起き」の重要性を広める活動をおこなっている。3人のお子さんを育てあげ、現在はお孫さんが2人。日本音楽著作権協会正会員。趣味は「遊び歌をつくること(作詞)」でNHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」等に詞を提供。
「ありがとう」あの頃のあなたがいるから今の私たちがいる【謎の痛みで救急外来に駆け込んだ話 Vol.65】